【解決手段】模擬運転装置1のコントローラ6は、ユーザMの視野欠損情報データと模擬映像データとを記憶し、模擬映像データをスクリーン8上に表示する模擬映像表示制御を実行する。コントローラ6は、模擬映像表示制御の実行中、ユーザMの視点O、視野欠損情報データ及び模擬映像データ内の物体の映像が同一映像内においてユーザMの視点Oを中心とする状態で互いに関連付けられた関連付け映像データを記憶し、模擬映像表示制御の終了後、関連付け映像データをスクリーン8上に再生表示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、視覚機能低下者が車両を実際に運転した場合、フィリングインと呼ばれる脳の補完機能を発揮しながら、車両の前方の交通状態を視認する状態になる。そのため、上記特許文献1の模擬運転装置により、視覚機能低下者が視覚機能低下模擬モードを体験した場合、自身が実際に運転しているときの見え方と異なってしまうことで、その体験時の視認状態を自身の運転時の視認状態とは認めないおそれがある。その結果、視覚機能低下者が、自身の運転時の危険性を的確に把握することができないという問題が生じてしまう。また、模擬運転装置に限らず、視覚機能低下者が、自身の視覚機能低下に起因する危険性を的確に把握できる装置が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、視覚機能低下者が運転時などの危険性を的確に把握することができる模擬運転装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の模擬運転装置1は、出力インターフェース(プロジェクタ7、スクリーン8)と、模擬車両を運転するためにユーザMによって操作される操作手段(ハンドル3、アクセルペダル4、ブレーキペダル5)と、ユーザMによる操作手段の操作状態を取得する操作状態取得手段(操舵角センサ11、アクセルセンサ12、ブレーキセンサ13)と、ユーザMの視野欠損の発生状態をユーザMの視野領域と関連付けたデータである視野欠損情報データを記憶する視野欠損情報データ記憶手段(コントローラ6)と、模擬走行環境を映像化した模擬映像データを記憶する模擬映像データ記憶手段(コントローラ6)と、ユーザMによる操作手段(ハンドル3、アクセルペダル4、ブレーキペダル5)の操作状態に応じて、模擬映像データ記憶手段に記憶された模擬映像データを出力インターフェース(プロジェクタ7、スクリーン8)に表示させる模擬映像表示制御を実行する模擬映像表示制御手段(コントローラ6)と、模擬映像表示制御の実行中、ユーザMの視点Oを取得する視点取得手段(視線検出装置10)と、模擬映像表示制御の実行中、ユーザMの視点O、視野欠損情報データ及び模擬映像データ内の物体の映像が同一映像内においてユーザMの視点Oを中心とする状態で互いに関連付けられたデータを、関連付け映像データとして記憶する関連付け映像データ記憶手段(コントローラ6)と、模擬映像表示制御の終了後、関連付け映像データ(
図7〜10)を出力インターフェース(プロジェクタ7、スクリーン8)に再生表示させる映像再生制御を実行する映像再生制御手段(コントローラ6)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この模擬運転装置によれば、ユーザによる操作手段の操作状態が取得され、ユーザによる操作手段の操作状態に応じて、模擬映像データ記憶手段に記憶された模擬映像データを出力インターフェースに表示させる模擬映像表示制御が実行される。さらに、模擬映像表示制御の実行中、ユーザの視点が取得され、ユーザの視点、視野欠損情報データ及び模擬映像データ内の物体の映像が同一映像内においてユーザの視点を中心とする状態で互いに関連付けられたデータが、関連付け映像データとして記憶される。そして、模擬映像表示制御の終了後、関連付け映像データを出力インターフェースに再生表示させる映像再生制御が実行される。この場合、視野欠損情報データは、ユーザの視野欠損の状態をユーザの視野領域と関連付けたデータであるので、模擬映像表示制御の実行中、模擬映像データ内の物体がユーザの視野欠損が発生している視野領域と重複する状態が発生したときには、映像再生制御の実行中、そのような重複状態が再生表示されることになる。それにより、ユーザは、模擬映像データ内の物体が自身の視野欠損が発生している視野領域と重複することで、模擬映像データ内の物体が実際には見えなくなる状態が発生していたことを確認することができる。その結果、視野欠損が発生し、視覚機能が低下したユーザは、自身の運転時の危険性を的確に把握することができる(なお、本明細書における「操作状態を取得」及び「視点を取得」などの「取得」は、センサなどによりこれらを直接検出することに限らず、これらの値を他のパラメータに基づいて算出することを含む)。
【0009】
本発明において、模擬映像表示制御の実行中、模擬車両と模擬走行環境内の他の物体との接触及び接触寸前の少なくとも一方の模擬的な危険状態が発生したか否かを判定する危険状態判定手段(コントローラ6)と、映像再生制御の実行中又は終了後、危険状態判定手段による模擬的な危険状態の発生判定結果(
図12)を出力インターフェース(プロジェクタ7、スクリーン8)に表示させる危険状態表示手段(コントローラ6)と、を備えることが好ましい。
【0010】
この模擬運転装置によれば、模擬映像表示制御の実行中、模擬車両と模擬走行環境内の他の物体との接触及び接触寸前の少なくとも一方の模擬的な危険状態が発生したか否かが判定され、映像再生制御の実行中又は終了後、模擬的な危険状態の発生判定結果が出力インターフェースに表示される。それにより、視覚機能が低下したユーザは、自身の車両運転時における危険状態の発生の有無を的確に把握することができる。
【0011】
本発明において、模擬映像表示制御の実行中、模擬映像データ内の物体が視野欠損情報データにおける視野欠損の発生領域と重なる重複状況の発生状態を表す重複状況パラメータ(危険指標値Xref)を取得する重複状況パラメータ取得手段(コントローラ6)と、 重複状況パラメータと、模擬車両と模擬走行環境内の他の物体との接触及び接触寸前の少なくとも一方の模擬的な危険状態が発生する可能性を表す危険度合との間の相関性を表す相関性モデル(
図11)を記憶する相関性モデル記憶手段(コントローラ6)と、相関性モデル及びユーザMの重複状況パラメータを用いて、ユーザMの車両運転時の危険度合を判定する運転時危険度合判定手段(コントローラ6)と、映像再生制御の実行中又は終了後、運転時危険度合判定手段による車両運転時の危険度合の判定結果(
図13)を出力インターフェース(プロジェクタ7、スクリーン8)に表示させる運転時危険度合表示手段(コントローラ6)と、をさらに備えることが好ましい。
【0012】
この模擬運転装置によれば、模擬映像表示制御の実行中、重複状況パラメータが取得され、相関性モデル及びユーザの重複状況パラメータを用いて、ユーザの車両運転時の危険度合が判定される。この重複状況パラメータは、模擬映像データ内の物体が視野欠損情報データにおける視野欠損の発生領域と重なる重複状況の発生状態を表すものである。また、相関性モデルは、重複状況パラメータと模擬車両と模擬走行環境内の他の物体との接触及び接触寸前の少なくとも一方の危険状態が発生する可能性を表す危険度合との間の相関性を表すものである。したがって、そのような相関性モデル及びユーザの重複状況パラメータを用いることにより、ユーザの車両運転時の危険度合を精度良く判定することができる。さらに、映像再生制御の実行中又は終了後、運転時危険度合判定手段による車両運転時の危険度合の判定結果が出力インターフェースに表示されるので、視覚機能が低下したユーザは、自身の車両運転時における危険度合を的確に把握することができる。
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明の映像制御装置は、出力インターフェース(プロジェクタ7、スクリーン8)と、ユーザの視野欠損の発生状態をユーザの視野領域と関連付けたデータである視野欠損情報データを記憶する視野欠損情報データ記憶手段(コントローラ6)と、物体を含む動画映像データを記憶する動画映像データ記憶手段(コントローラ6)と、動画映像データ記憶手段に記憶された動画映像データを出力インターフェースに表示させる動画表示制御を実行する動画表示制御手段(コントローラ6)と、動画表示制御の実行中、ユーザの視点を取得する視点取得手段(視線検出装置10)と、動画表示制御の実行中、ユーザの視点、視野欠損情報データ及び動画映像データ内の物体の映像が同一映像内においてユーザの視点を中心とする状態で互いに関連付けられたデータを、関連付け映像データとして記憶する関連付け映像データ記憶手段(コントローラ6)と、動画表示制御の終了後、関連付け映像データを出力インターフェースに再生表示させる映像再生制御を実行する映像再生制御手段(コントローラ6)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この映像制御装置によれば、動画映像データ記憶手段に記憶された動画映像データを出力インターフェースに表示させる動画表示制御が実行される。その動画表示制御の実行中、ユーザの視点が取得され、ユーザの視点、視野欠損情報データ及び動画映像データ内の物体の映像が同一映像内においてユーザの視点を中心とする状態で互いに関連付けられたデータが、関連付け映像データとして記憶される。そして、動画表示制御の終了後、関連付け映像データを出力インターフェースに再生表示させる映像再生制御が実行される。この場合、視野欠損情報データは、ユーザの視野欠損の状態をユーザの視野領域と関連付けたデータであるので、動画表示制御の実行中、動画映像データ内の物体がユーザの視野欠損が発生している視野領域と重複する状態が発生したときには、映像再生制御の実行中、そのような重複状態が再生表示されることになる。それにより、ユーザは、動画映像データ内の物体が自身の視野欠損が発生している視野領域と重複する状態、すなわち動画映像データ内の物体が実際には見えなくなる状態が発生していることを確認することができる。その結果、視野欠損が発生し、視覚機能が低下したユーザは、自身の歩行時などの危険性を的確に把握することができる。
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明の模擬運転方法は、ユーザMによる操作手段の操作状態を取得し、ユーザMの視野欠損の発生状態をユーザMの視野領域と関連付けたデータである視野欠損情報データ(
図3)を記憶し、模擬走行環境を映像化した模擬映像データを記憶し、ユーザMによる操作手段の操作状態に応じて、模擬映像データを出力インターフェース(プロジェクタ7、スクリーン8)に表示させる模擬映像表示制御を実行し、模擬映像表示制御の実行中、ユーザMの視点Oを取得し、模擬映像表示制御の実行中、ユーザMの視点O、視野欠損情報データ及び模擬映像データ内の物体の映像が同一映像内においてユーザMの視点Oを中心とする状態で互いに関連付けられたデータを、関連付け映像データとして記憶し、模擬映像表示制御の終了後、関連付け映像データ(
図7〜10)を出力インターフェースに再生表示させる映像再生制御を実行することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る模擬運転装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態の模擬運転装置1は、ユーザMが運転シート2に着座して模擬運転を行う4輪車両タイプのものであり、模擬車両の一部として、運転シート2、ハンドル3、アクセルペダル4及びブレーキペダル5を備えている。
【0018】
このハンドル3は、模擬運転中、模擬車両の進路を変更するときに、ユーザMによって操作される。このハンドル3には、操舵角センサ11(
図2参照)が設けられており、この操舵角センサ11は、模擬運転中のユーザMによるハンドル3の操舵角を検出して、それを表す検出信号をコントローラ6に出力する。
【0019】
また、アクセルペダル4は、模擬運転中、模擬車両を加速させるときなどに、ユーザMによって操作される。このアクセルペダル4には、アクセルセンサ12(
図2参照)が設けられており、このアクセルセンサ12は、ユーザMによるアクセルペダル4の踏み込み量を検出して、それを表す検出信号をコントローラ6に出力する。
【0020】
さらに、ブレーキペダル5は、模擬運転中、模擬車両を制動するときに、ユーザMによって操作される。このブレーキペダル5には、ブレーキセンサ13(
図2参照)が設けられており、このブレーキセンサ13は、ユーザMによるブレーキペダル5の踏み込み量を検出して、それを表す検出信号をコントローラ6に出力する。
【0021】
なお、本実施形態では、ハンドル3、アクセルペダル4及びブレーキペダル5が操作手段に相当し、操舵角センサ11、アクセルセンサ12及びブレーキセンサ13が操作状態取得手段に相当する。
【0022】
さらに、模擬運転装置1は、コントローラ6、プロジェクタ7、スクリーン8及び視線検出装置10などを備えている。この視線検出装置10(視点取得手段)は、ユーザMの眼球の運動に基づいてユーザMの視線を検出し、それを表す検出信号をコントローラ6に出力する。コントローラ6は、この視線検出装置10の検出信号に基づき、ユーザMの視点Oを決定する。なお、以下の説明では、視線検出装置10及び上述した3つのセンサ11〜13をまとめて「各種センサ10〜13」という。
【0023】
コントローラ6は、ノート型パソコンタイプのものであり、ストレージ、メモリ及びキーボード(いずれも図示せず)などを備えている。このコントローラ6のストレージ及びメモリ内には、模擬運転制御用の、プログラム、映像データ及び音響データなどが記憶されている。
【0024】
また、後述する模擬運転制御の実行開始前には、ユーザMの視野欠損情報データが外部からコントローラ6に入力され、メモリ内に記憶される。この視野欠損情報データは、ユーザMの視野欠損の発生状態をユーザMの視野領域毎に示すデータであり、例えば医療機関などの検査結果に基づいて作成される。したがって、視野欠損情報データは、模擬運転を実行する際、ユーザ毎に異なるデータがコントローラ6に入力される。
【0025】
この視野欠損情報データは、例えば、
図3に示すように構成される。同図に示す視野欠損情報データの場合、ユーザMの視点(注視点)Oを中心として、左上19個、左下19個、右上19個及び右下19個の計76個の視野領域が設定されている。また、これらの視野領域は、無感度域31、低感度域32、中感度域33及び高感度域34の4段階の感度領域に区分されている。
【0026】
この無感度域31は、図中の黒塗りで示す領域であり、ユーザMの網膜が感度をほとんど有してない領域に相当する。また、高感度域34は、図中の白抜きで示す領域であり、ユーザMの網膜が正常な感度を有している領域に相当する。さらに、低感度域32及び中感度域33は、いずれもグレーの色合いで示す領域である。低感度域32は、無感度域31と中感度域33との間の感度を有しており、中感度域33よりも濃いグレーの色合いで示されている。また、中感度域33は、低感度域32と高感度域34との間の感度を有している領域である。なお、視野領域の総数及び感度領域の段階数は、上記に限らず、両者の数を増減して構成することが可能である。
【0027】
このコントローラ6では、オペレータによってキーボードなどの入力部が操作されることにより、後述する模擬運転制御などが実行される。この模擬運転制御の実行中、コントローラ6は、上述した各種センサ10〜13の検出信号に基づいて、映像信号及び音声信号をプロジェクタ7及びスピーカ(図示せず)に出力する。それにより、プロジェクタ7及びスピーカの動作状態が制御される。
【0028】
また、コントローラ6は、模擬運転制御の実行中、上記視野欠損情報データを模擬映像中の交通参加者及び信号などの映像に重ね合わせることにより、動画映像データである視野映像データ(
図7〜10参照)を作成し、これをメモリ内に記憶する。
【0029】
なお、本実施形態では、コントローラ6が、視野欠損情報データ記憶手段、模擬映像データ記憶手段、模擬映像表示制御手段、関連付け映像データ記憶手段、映像再生制御手段、危険状態判定手段、危険状態表示手段、重複状況パラメータ取得手段、相関性モデル記憶手段、運転時危険度合判定手段及び運転時危険度合表示手段に相当する。
【0030】
一方、プロジェクタ7は、上述した模擬運転制御の実行中、映像信号がコントローラ6から入力されると、それに伴って、模擬走行映像をスクリーン8上に表示する(
図5参照)。また、プロジェクタ7は、後述するように、模擬運転制御の実行後に再生制御が実行されたときには、上述した模擬運転制御中にコントローラ6内に記憶された視野映像データをスクリーン8上に表示する(
図7〜10参照)。なお、本実施形態では、プロジェクタ7及びスクリーン8が出力インターフェースに相当する。
【0031】
次に、
図4を参照しながら、模擬走行制御について説明する。この模擬走行制御は、ユーザMによる模擬走行状態を制御するものであり、コントローラ6によって所定の制御周期で実行される。
【0032】
まず、模擬走行中フラグF_RUNが「1」であるか否かを判定する(
図4/STEP1)。この判定が否定であるときには(
図4/STEP1…NO)、模擬走行制御の開始動作が実行されたか否かを判定する(
図4/STEP2)。この場合、模擬走行制御の開始動作は、オペレータによるコントローラ6の入力部の操作によって実行される。
【0033】
この判定が否定であるとき(
図4/STEP2…NO)には、そのまま本処理を終了する。一方、この判定が肯定であるとき(
図4/STEP2…YES)には、模擬走行制御を実行すべきであることを表すために、模擬走行中フラグF_RUNを「1」に設定する(
図4/STEP3)。
【0034】
このように模擬走行中フラグF_RUNを「1」に設定したとき、又は前述した判定が肯定(
図4/STEP1…YES)で、前回以前の制御タイミングにおいて模擬走行中フラグF_RUNが「1」に設定されていたときには、模擬映像表示制御を実行する(
図4/STEP4)。
【0035】
この模擬映像表示制御では、前述した各種センサ10〜13の検出信号及びコントローラ6内の模擬運転制御用の映像データに基づいて、例えば、
図5に示すような動画映像20がプロジェクタ7によってスクリーン8上に表示される。この動画映像20は、模擬車両の前方の走行環境を表すものであり、具体的には、ユーザMの視点Oを中心として、模擬車両の走行ライン21、交通参加者[他の車両22や歩行者(図示せず)]及び信号機23などが表示される。
【0036】
次に、音響制御を実行する(
図4/STEP5)。この音響制御では、前述した模擬運転制御用の音響データに基づいて、音響信号がスピーカに供給される。それにより、例えば、模擬車両の走行音、エンジン音及びブレーキ音などがスピーカから出力される。
【0037】
次いで、視野映像データをコントローラ6のメモリ内に記憶する(
図4/STEP6)。前述したように、この視野映像データは、動画映像データであり、例えば、
図7〜
図10に示すように、ユーザMの視点Oを中心として、動画映像20内の交通参加者(例えば他車両24)及び信号機23の画像データを視野欠損情報データに重ねたものとなる。
【0038】
その後、重複時間を記憶する(
図4/STEP7)。この場合、重複時間としては、第1〜第3重複時間t1〜t3が記憶される。この第1重複時間t1は、模擬走行制御の実行中、交通参加者及び信号機などが視野欠損情報データにおける無感度域31に位置することで、両者の重複状態が発生したときの発生時間の積算値である。
【0039】
また、第2重複時間t2は、模擬走行制御の実行中、交通参加者及び信号機などが視野欠損情報データにおける低感度域32に位置することで、両者の重複状態が発生したときの発生時間の積算値である。さらに、第3重複時間t3は、模擬走行制御の実行中、交通参加者及び信号機などが視野欠損情報データにおける中感度域33に位置することで、両者の重複状態が発生したときの発生時間の積算値である。
【0040】
次に、危険発生回数を記憶する(
図4/STEP8)。この危険発生回数の記憶処理は、以下に述べるように実行される。まず、模擬走行制御の実行中、模擬車両が交通参加者及び障害物と接触する接触事故が発生したか否か、及び、模擬車両が交通参加者及び障害物と接触しそうになった危険状態や信号無視の状態などのヒヤリハット状態が発生したか否かが判定される。そして、接触事故が発生したときには、その発生回数を積算することによって、事故発生回数が算出される。また、ヒヤリハット状態が発生したときには、その発生回数を積算することによってヒヤリハット回数が算出される。その後、事故発生回数及びヒヤリハット回数が、危険発生回数としてコントローラ6のメモリ内に記憶される。
【0041】
次いで、模擬走行が終了したか否かを判定する(
図4/STEP9)。この場合、模擬運転制御用の映像データが最後まで再生表示されたとき、又は、模擬走行の実行中であっても、何らかの理由により、オペレータによるコントローラ6の入力部の操作によって、模擬走行の中止動作が実行されたときに、模擬走行が終了したと判定される。
【0042】
この判定が否定であるとき(
図4/STEP9…NO)には、そのまま本処理を終了する。一方、この判定が肯定であるとき(
図4/STEP9…YES)には、模擬走行制御を終了すべきであることを表すために、模擬走行中フラグF_RUNを「0」に設定する(
図4/STEP10)。その後、本処理を終了する。
【0043】
次に、
図6を参照しながら、再生表示制御について説明する。この再生表示制御は、前述した視野映像データを再生表示するとともに、模擬走行中における危険発生回数などを表示するものであり、模擬走行制御の実行後、コントローラ6によって所定の制御周期で実行される。
【0044】
同図に示すように、まず、判定結果表示フラグF_DISPLAYが「1」であるか否かを判定する(
図6/STEP21)。この判定が否定であるとき(
図6/STEP21…NO)には、再生制御実行フラグF_PLAYが「1」であるか否かを判定する(
図6/STEP22)。
【0045】
この判定が否定であるとき(
図6/STEP22…NO)には、オペレータによるコントローラ6の入力部の操作によって、再生動作が実行されたか否かを判定する(
図6/STEP23)。この判定が否定であるとき(
図6/STEP23…NO)、そのまま本処理を終了する。
【0046】
一方、この判定が肯定であるとき(
図6/STEP23…YES)、すなわち再生動作が実行されたときには、それを表すために、再生制御実行フラグF_PLAYを「1」に設定する(
図6/STEP24)。
【0047】
次いで、映像再生制御を実行する(
図6/STEP25)。この映像再生制御では、模擬走行制御の実行中にコントローラ6のメモリ内に記憶された視野映像データが、例えば、
図7〜10に示すように、スクリーン8上に再生表示される。この場合、視野映像データは、連続再生や静止画のコマ送り再生などの手法によって再生表示される。
【0048】
この
図7は、他車両24の画像がユーザMの視野領域に入る前の状態を示しており、
図8は、時間の経過に伴い、他車両24の画像が
図7に示す状態からユーザMの視野領域における無感度域31に入った状態を示している。すなわち、他車両24の画像と無感度域31が互いに重複した状態を示している。なお、
図8においては、理解の容易化のために、無感度域31内の他車両24が白い破線で示されているが、実際の視野映像データでは、無感度域31内の他車両24は表示されない状態となる。
【0049】
また、
図9は、信号機23の画像が中感度域33に入っている状態を示しており、
図10は、時間の経過に伴い、信号機23の画像が
図9に示す状態からユーザMの視野領域における無感度域31に入った状態を示している。すなわち、他車両24の画像と無感度域31が互いに重複した状態を示している。なお、
図10においては、理解の容易化のために、無感度域31内の信号機23が白い破線で示されているが、実際の視野映像データでは、無感度域31内の信号機23は表示されない状態となる。また、以上の
図7〜10においては、理解の容易化のために、他車両24及び信号機23以外の風景画像が省略されている。
【0050】
これらの
図8,10に示すように、他車両24及び信号機23の画像がユーザMの無感度域31と重複した場合、ユーザMは、模擬運転中、他車両24及び信号機23を実際には視認していない状態が発生していたことを理解/把握できる。以上のように、映像再生制御を実行した後、本処理を終了する。
【0051】
一方、前述した判定が肯定(
図6/STEP22…YES)で、再生制御実行フラグF_PLAYが「1」であるときには、視野映像データの映像再生が終了したか否かを判定する(
図6/STEP26)。この場合、視野映像データが最後まで再生表示されたときに、模擬走行が終了したと判定される。
【0052】
この判定が否定であるときには(
図6/STEP26…NO)、前述したように、映像再生制御を実行する(
図6/STEP25)。その後、本処理を終了する。
【0053】
一方、この判定が肯定(
図6/STEP26…YES)で、視野映像データの映像再生が終了したときには、それを表すために、再生制御実行フラグF_PLAYを「0」に設定する。これと同時に、危険発生回数などを表示すべきであることを表すために、判定結果表示フラグF_DISPLAYを「1」に設定する(
図6/STEP27)。
【0054】
次いで、重複割合を算出する(
図6/STEP28)。この場合、重複割合としては、第1〜第3割合の3つの値が算出される。この第1割合は、模擬走行制御の実行中、他車両や信号機などが無感度域31と重複した割合であり、具体的には、前述した第1重複時間t1の模擬走行制御の総実行時間t_allに対する百分率[(t1/t_all)×100]として算出される。
【0055】
また、第2割合は、模擬走行制御の実行中、他車両や信号機などが低感度域32と重複した割合であり、具体的には、前述した第2重複時間t2の模擬走行制御の総実行時間t_allに対する百分率[(t2/t_all)×100]として算出される。さらに、第3割合は、模擬走行制御の実行中、他車両や信号機などが中感度域33と重複した割合であり、具体的には、前述した第3重複時間t3の模擬走行制御の総実行時間t_allに対する百分率[(t3/t_all)×100]として算出される。
【0056】
次いで、下式(1)により、危険指標値Xrefを算出する(
図6/STEP29)。
【数1】
【0057】
この式(1)において、m1〜m3は、重み係数であり、1≧m1>m2>m3>0が成立するように設定される。上式(1)に示すように、危険指標値Xrefは、模擬走行制御の実行中、他車両や信号機などが無感度域31、低感度域32及び中感度域33と重複した度合に対して、重み付けを実施した値として算出される。すなわち、危険指標値Xrefは、重複状況の発生状態を表す重複状況パラメータとして算出される。また、上記の重み係数m1〜m3は、例えば、視野欠損が発生している多数のユーザにおいて、前述したように模擬走行制御を実行したときの統計結果や、それらのユーザの実際の事故歴などに基づいて設定される。
【0058】
次に、危険度判定を実行する(
図6/STEP30)。具体的には、上記のように算出した危険指標値Xrefに応じて、
図11に示すマップを検索することにより、ユーザMの運転時の危険度(以下「運転危険度」という)が、「低」、「中」、「高」のいずれの領域にあるかを判定する。この危険度は、模擬運転中のユーザが接触事故及びヒヤリハットの少なくとも一方を発生させる可能性の高低を表すものである。
【0059】
また、同図において、X1,X2は、X1<X2が成立するように設定される所定しきい値であり、これらの所定しきい値X1,X2は、例えば、視野欠損が発生している多数のユーザにおいて、前述したように模擬走行制御を実行したときの統計結果や、それらのユーザの実際の事故歴などに基づいて設定される。
【0060】
その後、危険発生回数を表示する(
図6/STEP31)。具体的には、模擬走行制御中におけるユーザMの事故の発生回数及びヒヤリハットの発生回数が、
図12に示す状態でスクリーン8上に表示される。この場合、事故及びヒヤリハットの一方の発生回数を表示してもよい。
【0061】
次いで、運転危険度を表示する(
図6/STEP32)。具体的には、ユーザMの模擬走行制御中における、前述した無感度域31、低感度域32及び中感度域33の重複割合の算出結果と運転危険度の判定結果が、
図13に示す状態でスクリーン8上に表示される。その後、本処理を終了する。
【0062】
一方、前述した判定が肯定(
図6/STEP21…YES)で、判定結果表示フラグF_DISPLAYが「1」であるとき、すなわち前回以前の制御タイミングにおいて、危険発生回数及び運転危険度が表示されていたときには、判定結果表示が終了したか否かを判定する(
図6/STEP33)。具体的には、オペレータによるコントローラ6の入力部の操作によって、判定結果表示の終了動作が実行されたときに、判定結果表示が終了したと判定される。
【0063】
この判定が否定であるとき(
図6/STEP33…NO)には、前述したように、危険発生回数及び運転危険度を表示した後、本処理を終了する。
【0064】
一方、この判定が肯定であるとき(
図6/STEP33…YES)には、判定結果表示が終了したことを表すために、判定結果表示フラグF_DISPLAYを「0」に設定する(
図6/STEP34)。その後、本処理を終了する。
【0065】
以上のように、本実施形態の模擬運転装置1によれば、ユーザMの視野欠損の状態をユーザMの視野領域と関連付けた視野欠損情報データ(
図3)がコントローラ6に入力された後、模擬走行制御が実行される。その模擬走行制御の実行中、視線検出装置10によってユーザMの視点Oが検出され、ユーザMの視点Oと、視野欠損情報データと、模擬映像データ内の物体の映像とが同一映像内においてユーザMの視点Oを中心とする状態で互いに関連付けられたデータが関連付け映像データ(
図7〜10)として作成され、コントローラ6のメモリ内に記憶される。
【0066】
そして、模擬走行制御の終了後、映像再生制御が実行される。この映像再生制御では、関連付け映像データがスクリーン8上に再生表示される。この関連付け映像データは、前述したように、視野欠損情報データと、ユーザMの視点O及び模擬映像データ内の他車両24及び信号機23などの映像が同一映像内においてユーザMの視点Oを中心とする状態で互いに関連付けられたデータである。したがって、ユーザMは、模擬映像データ内の他車両24及び信号機23などが自身の視野欠損が発生している視野領域と重複する状態、すなわち模擬映像データ内の他車両24及び信号機23などが実際には見えなくなる状態が発生していることを確認することができる。その結果、視野欠損が発生したユーザすなわち視覚機能が低下したユーザMは、自身の運転時の危険性を的確に把握することができる。
【0067】
また、模擬走行制御の実行中、模擬車両と模擬走行環境内の他の物体との接触事故及びヒヤリハット状態が発生したか否かが判定され、映像再生制御の終了後、その発生回数がスクリーン8上に再生表示される(
図12)。それにより、視覚機能が低下したユーザMは、自身の車両運転時における危険状態の発生の有無を的確に把握することができる。
【0068】
さらに、模擬走行制御の実行中、危険指標値Xrefが算出され、危険指標値Xref及びマップ(
図11)を用いて、ユーザMの車両運転時の危険度合が判定される。この危険指標値Xrefは、危険指標値Xrefは、他車両や信号機などが無感度域31、低感度域32及び中感度域33と重複した度合に対して、重み付けを実施した値として算出されるので、模擬映像データ内の他車両や信号機などが視野欠損情報データにおける無感度域31、低感度域32及び中感度域33と重なる重複状況の発生状態を表すものとなる。また、マップは、危険指標値Xrefと運転時の危険度合との相関性を適切に表すものとして作成されている。したがって、そのような危険指標値Xref及びマップを用いることにより、視覚機能が低下したユーザMの車両運転時の危険度合を精度良く判定することができる。
【0069】
これに加えて、映像再生制御の終了後、他車両や信号機などが無感度域31、低感度域32及び中感度域33と重複した重複割合と、運転危険度が
図13に示すようにスクリーン8上に表示されるので、視覚機能が低下したユーザMは、自身の車両運転時の危険度合を的確に把握することができる。
【0070】
なお、実施形態は、模擬車両として4輪車タイプのものを用いた例であるが、これに代えて、様々な模擬車両を用いてもよい。例えば、模擬車両として、2輪車、3輪車及び6輪以上の車両を用いてもよい。
【0071】
また、実施形態は、出力インターフェースとして、プロジェクタ7及びスクリーン8を用いた例であるが、本発明の出力インターフェースはこれらに限らず、模擬映像データ及び関連付け映像データを表示できるものであればよい。例えば、出力インターフェースとして、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ、3Dホログラム装置、ヘッドマウントディスプレイを用いてもよい。
【0072】
さらに、実施形態は、操作手段として、ハンドル3、アクセルペダル4及びブレーキペダル5を用いた例であるが、本発明の操作手段は、これらに限らず、模擬車両を運転するためにユーザによって操作されるものであればよい。例えば、模擬車両が2輪車タイプのときには、スロットレバー及びブレーキレバーなどが操作手段に相当する。
【0073】
一方、実施形態は、操作状態取得手段として、センサ11〜13を用いた例であるが、本発明の操作状態取得手段はこれらに限らず、ユーザによる操作手段の操作状態を取得するものであればよい。例えば、操作手段が2輪車のスロットレバー及びブレーキレバーである場合には、これらの操作量を検出するセンサを用いてもよい。
【0074】
また、実施形態は、視点取得手段として、視線検出装置10を用いた例であるが、本発明の視点取得手段は、これに限らず、ユーザの視点を検出するできるものであればよい。
【0075】
さらに、実施形態は、模擬映像表示制御手段及び映像再生制御手段として、ノート型パソコンタイプのコントローラ6を用いた例であるが、本発明の模擬映像表示制御手段及び映像再生制御手段はこれに限らず、模擬映像表示制御及び映像再生制御を実行するものであればよい。例えば、模擬映像表示制御手段及び映像再生制御手段として、デスクトップ型パソコン及び制御回路などを用いてもよく、パソコンとサーバを組み合わせて用いてもよい。
【0076】
また、実施形態は、重複状況パラメータとして、危険指標値Xrefを用いた例であるが、本発明の重複状況パラメータはこれに限らず、模擬映像データ内の物体が視野欠損情報データにおける視野欠損の発生領域と重なる重複状況の発生状態を表すものであればよい。例えば、重複状況パラメータとして、式(1)の右辺第1項(m1・t1/t_all)のみや、値t1/t_all、右辺の第1項と第2項の和[(m1・t1/t_all)+(m2・t2/t_all)]を用いてもよく、3つの比t1/t_all,t2/t_all,t3/t_allを用いてもよい。また、第1〜第3重複時間t1〜t3を重複状況パラメータとして用いてもよい。
【0077】
一方、実施形態は、相関性モデルとして、
図11のマップを用いた例であるが、本発明の相関性モデルはこれに限らず、重複状況パラメータと危険度合との間の相関性を表すものであればよい。例えば、相関性モデルとして、重複状況パラメータと危険度合との間の相関性を直交座標軸上に表した線図を用いてもよい。
【0078】
また、実施形態は、事故及びヒヤリハットの発生回数(
図12)を、映像再生制御の終了後に表示した例であるが、これを映像再生制御の実行中に表示してもよい。その場合、事故及びヒヤリハットの発生回数を、これらが発生する毎にインクリメントするように構成してもよく、最初から総発生回数を表示するように構成してもよい。
【0079】
さらに、実施形態は、運転危険度及び重複割合(
図13)を、映像再生制御の終了後に表示した例であるが、これを映像再生制御の実行中に表示してもよい。その場合、運転危険度及び重複割合を、重複状態が発生する毎に再演算するように構成してもよい。
【0080】
一方、実施形態の前述した模擬運転装置1において、模擬車両に関連する構成3〜5及びセンサ11〜13を省略することにより、本発明の映像制御装置を構成してもよい。その場合、プロジェクタ7及びスクリーン8が出力インターフェースに相当し、視線検出装置10が視点取得手段に相当する。さらに、コントローラ6が視野欠損情報データ記憶手段、動画映像データ記憶手段、動画表示制御手段、関連付け映像データ記憶手段及び映像再生制御手段に相当する。
【0081】
この映像制御装置では、コントローラ6のメモリ内には、前述した模擬運転制御用の映像データに代えて、通常の風景映像などの動画データが記憶されている。そして、ユーザの前述した視野欠損情報データがメモリ内に記憶された後、前述した
図6の模擬走行制御に代えて、動画表示制御が実行される。
【0082】
この動画表示制御では、コントローラ6のメモリ内の動画データが、プロジェクタ7を介して、スクリーン8上に表示される。そして、動画表示制御の実行中、前述した視線検出装置10の検出信号からユーザの視点が取得され、前述した
図4のSTEP6と同様に、視野映像データがコントローラ6のメモリ内に記憶される。この視野映像データは、ユーザの視点Oを中心として、動画映像内の物体の画像データを視野欠損情報データ(例えば
図3)に重ねたものとなる。
【0083】
このように動画表示制御を実行した後、前述した映像再生制御(
図6/STEP25)と同様に、映像再生制御が実行される。それにより、ユーザは、前述した
図7〜10と同様に、風景映像内の物体が、ユーザの視野領域における無感度域31、低感度域32及び中感度域33などに重複する状態を確認することができる。その結果、視覚機能が低下したユーザは、自身の歩行時などの危険性を的確に把握することができる。