【解決手段】光量調節装置は、光を通過させる開口2bを有するベース部材2と、ベース部材に対して、光通過方向に直交する方向に移動して開口に対して進退する第1の絞り羽根4,7と、ベース部材に対して、光通過方向に直交する面内で回転して開口に対して進退する第2の絞り羽根5,6,8,9と、ベース部材に取り付けられ、第1および第2の絞り羽根を駆動する駆動部1とを有する。ベース部材は、第1の絞り羽根に形成された溝部に係合して該第1の絞り羽根をその移動方向にガイドする突起部2d,2eを有する。第2の絞り羽根は、該突起部を中心として上記面内で回転する。
前記羽根群は更に、前記ベース部材に対して、前記光軸直交方向を含む面内で前記光軸直交方向とは異なる方向に移動して前記開口部の中心に対して進退する一対の第3の絞り羽根を有し、
前記一対の第3の絞り羽根は、前記動力伝達部材の他方側に設けられた前記第2の伝達部に係合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
図1には、本発明の実施例1である光量調節装置(第1の光量調節装置および第2の光量調節装置)としての絞り装置を分解して示している。また、
図2は該絞り装置を、絞り羽根4〜9により形成される絞り開口を光が通過する方向(光軸方向)から見て示している。なお、
図2では、
図1中に示すカバー板10を取り除いた状態を示している。さらに、
図3には、
図2に示した絞り装置を斜めから見て示している。また、これらの図において絞り装置の上下方向であって長手方向が、「光通過方向に直交する方向」に相当し、以下の説明では光軸直交方向という。また、これらの図における絞り装置の左右方向を幅方向という。
【0013】
これらの図において、ベース部材としての地板2には、光を通過させる固定開口2bが形成されている。地板2は、プレス加工や樹脂成形等によって製作されている。
【0014】
該地板2の外面(光軸方向一方の面)のうち、固定開口2bから下方向に離れた位置には、絞り駆動部1が取り付けられている。絞り駆動部1は、例えば、不図示のロータマグネットと、該ロータマグネットと一体で回転する出力軸1aと、通電されてロータマグネットを回転させる磁力を発生する不図示のコイルにより構成される電磁駆動モータである。また、ステッピングモータであってもよい。
【0015】
絞り駆動部1の出力軸1aは、地板2を貫通して地板2の内面側に突出している。そして、該出力軸1aには、駆動レバーとしての駆動アーム3が圧入によって取り付けられている。駆動アーム3は、固定開口2bから下方向に離れて位置する軸回りにおいて、出力軸1aとともに所定の角度範囲で回動する。駆動アーム3は、樹脂成形等によって製作されている。なお、出力軸1aと駆動アーム3とを一体形成することも可能である。
【0016】
駆動アーム3は、出力軸1aの位置を挟んだ両側の先端に、絞り羽根4〜9を駆動するための伝達部としての羽根駆動ピン3i,3jを有する。羽根駆動ピン3iは、回転絞り羽根6、リニア絞り羽根7および回転絞り羽根8の3枚の絞り羽根に係合している。また、羽根駆動ピン3jは、リニア絞り羽根4、回転絞り羽根5および回転絞り羽根9の3枚の絞り羽根に係合している。
【0017】
なお、絞り駆動部1と駆動アーム3を地板2の外面側に配置し、駆動アーム3に形成された羽根駆動ピン3i,3jを、地板2を貫通させて該地板2の内面側に突出させるようにしてもよい。
【0018】
このように、本実施例では、絞り駆動部1の出力軸1aに直接取り付けられた(または一体形成された)1つの駆動アーム3に2つの羽根駆動ピン3i,3jを設け、同一(共通)の羽根駆動ピン3iに、1枚のリニア絞り羽根(第1の絞り羽根)7と2枚の回転絞り羽根(第2の絞り羽根)6,8を係合させている。また、他の同一(共通)の羽根駆動ピン3jに、1枚のリニア絞り羽根(第1の絞り羽根)4と2枚の回転絞り羽根(第2の絞り羽根)5,9を係合させている。そして、このように複数(2つ)の羽根駆動ピン3i,3jのそれぞれに3枚ずつの絞り羽根が係合した駆動アーム3を回動させることで、2枚のリニア絞り羽根4,7を光軸直交方向に移動させ、かつ4枚の回転絞り羽根5,6,8,9を光軸に直交する面(以下、光軸直交面という)内で回転させる。これにより、これら6枚の絞り羽根4〜9によって、円形に近い多角形状の絞り開口を形成するとともにそのサイズ(径)を変化させる。
【0019】
以上の構成を採用することで、特許文献2のように、絞り開口の周囲に配置された駆動リング(環板)を回転させ、該駆動リングにおける互いに異なる駆動軸部によって直進絞り羽根や回転絞り羽根を駆動する場合に比べて、絞り装置の小型化に有利でありながらも、良好な形状の絞り開口を形成することができる。
【0020】
なお、リニア絞り羽根4,7が光軸直交方向に移動するとは、リニア絞り羽根4,7が光軸直交方向に直進(平行移動)する場合だけでなく、幅方向に揺動したりシフトしたりしながら光軸直交方向に移動する場合も含む意味である。
【0021】
11はアームカバーであり、駆動アーム3と絞り羽根4(〜9)との間に配置されて、駆動アーム3と絞り羽根4(〜9)との不必要な接触を防止する。アームカバー11は、プレス加工や樹脂成形等により製作されている。駆動アーム3と絞り羽根4との間に十分なクリアランスがあるときには、アームカバー11はなくてもよい。
【0022】
カバー板10は、地板2との間に絞り羽根4〜9が移動する空間を形成するように地板2に取り付けられる。カバー板10は、地板2に形成された固定開口2bに対応する開口10bを有する。カバー板10は、プレス加工や樹脂成形等により製作されている。カバー板10の内面(地板側の面)には、絞り羽根4〜9との摺動抵抗を低減するための不図示のレールが形成されている。
【0023】
本実施例の絞り装置は、前述したように駆動アーム3を回動させることで絞り開口径を変化させることができ、さらに絞り開口を完全に閉じる(閉じきる)ことができる。このため、本実施例の絞り装置は、シャッタ動作を行うことも可能である。つまり、本実施例の絞り装置は、絞りシャッタ装置として使用することもできる。
【0024】
リニア絞り羽根4は、その下端に形成された駆動長孔部4jにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3jと摺動可能に係合している。また、リニア絞り羽根4に光軸直交方向に延びるように形成されたガイド長孔部(ガイド溝部ともいう)4c,4dにはそれぞれ、地板2に形成された突起部としての軸部(ピン部又はボス部ともいう)2c,2dが摺動可能に係合している。長孔部4fは、地板2に形成された軸部2fを回避した逃げ形状である。
【0025】
駆動アーム3が上述した所定の角度範囲で回動すると、リニア絞り羽根4は、
図4に示すように、駆動長孔部4jにて羽根駆動ピン3jから駆動力を受け、ガイド長孔部4c,4dがそれぞれ、軸部2c,2dによってガイドされながら光軸直交方向に移動する。
【0026】
リニア絞り羽根7は、その下端に形成された駆動長孔部7iにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3iと摺動可能に係合している。また、リニア絞り羽根7に光軸直交方向に延びるように形成されたガイド長孔部(ガイド溝部ともいう)7f,7eにはそれぞれ、前述した地板2の軸部2fおよび同様に地板2に形成された突起部としての軸部(ピン部又はボス部ともいう)2eが摺動可能に係合している。長孔部7cは、地板2の軸部2cを回避した逃げ形状である。
【0027】
駆動アーム3が上述した所定の角度範囲で回動すると、リニア絞り羽根7は、
図4に示すように、駆動長孔部7iにて羽根駆動ピン3iから駆動力を受け、ガイド長孔部7e,7fがそれぞれ、軸部2e,2fによってガイドされながら光軸直交方向に移動する。
【0028】
一方、回転絞り羽根5は、その下部に形成された駆動カム溝部5jにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3jと摺動可能に係合している。また、回転絞り羽根5に形成された回転中心孔部5dには、地板2に形成された回転中心部(回転中心軸部)としての軸部2dが回転可能に係合している。すなわち、軸部2dは、前述したようにリニア絞り羽根4のガイド長孔部4dと摺動可能に係合して該リニア絞り羽根4をその移動方向にガイドする機能だけでなく、回転絞り羽根5の回転中心孔部5dに係合して該回転絞り羽根5の回転中心を形成する機能をも有する。
【0029】
さらに、回転絞り羽根6は、その下部に形成された駆動カム溝部6iにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3iと摺動可能に係合している。また、回転絞り羽根6に形成された回転中心孔部6eには、地板2に形成された回転中心部(回転中心軸部)としての軸部2eが回転可能に係合している。すなわち、軸部2eは、前述したようにリニア絞り羽根7のガイド長孔部7eと摺動可能に係合して該リニア絞り羽根7をその移動方向にガイドする機能だけでなく、回転絞り羽根6の回転中心孔部6eに係合して該回転絞り羽根6の回転中心を形成する機能をも有する。
【0030】
駆動アーム3が上記所定の角度範囲で回動すると、回転絞り羽根5,6は、
図5に示すように、駆動カム溝部5j,6iが羽根駆動ピン3j,3iから駆動力を受け、回転中心孔部5d,6eに係合した軸部2d,2eを中心として光軸直交面内で回転(旋回)する。この回転の速さは、駆動カム溝部5j,6iの形状によって調整可能である。
【0031】
また、回転絞り羽根8および回転絞り羽根9はそれぞれ、その下端部に形成された駆動カム溝部8i,9jにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3i,3jと摺動可能に係合している。回転絞り羽根8,9に形成された回転中心孔部8d,9eにはそれぞれ、地板2に形成された回転中心部(回転中心軸部)としての軸2d,2eが回転可能に係合している。すなわち、軸部2d,2eは、前述したようにリニア絞り羽根4,7のガイド長孔部4d,7eと摺動可能に係合して該リニア絞り羽根4,7をその移動方向にガイドする機能だけでなく、回転絞り羽根8,9の回転中心孔部8d,9eに係合して該回転絞り羽根8,9の回転中心を形成する機能をも有する。
【0032】
駆動アーム3が上記所定の角度範囲で回動すると、回転絞り羽根8,9はそれぞれ、
図5に示すように、駆動カム溝部8i,9jが羽根駆動ピン3i,3jから駆動力を受け、回転中心孔部8d,9eに係合した軸部2d,2eを中心として光軸直交面内で回転(旋回)する。この回転の速さは、駆動カム溝部8i,9jの形状によって調整可能である。
【0033】
そして、駆動アーム3の回動位置に対する回転絞り羽根5,6,8,9の回転位置、つまりは絞り開口の形状を、それぞれの回転絞り羽根5,6,8,9に形成された駆動カム溝部5j,6i,8i,9jの形状を調整することで適宜設定することができる。これにより、
図6の下段右側に示す開放絞りから同上段中央に示す小絞りまでの各絞り状態において、絞り羽根4〜9の開口形成用縁部4b,5b,6b,7b,8b,9bによって絞り開口を形成することができる。絞り開口は、円形である開放開口を除き、円形に近いほぼ正六角形の形状を有する。さらに、前述したように、本実施例の絞り装置は、
図6の上段左側に示すような閉じきりも可能である。
【0034】
以上説明したように、本実施例の絞り装置では、リニア絞り羽根4,7および回転絞り羽根5,6,8,9を、駆動リング等の絞り開口の周囲で回転する部品を用いることなく1つの駆動アーム3を回動させることで移動又は回転させる。このため、絞り装置を長手方向(光軸直交方向)と幅方向とにおいて小型化することができ、さらに光軸方向での厚みを薄くすることができる。
【0035】
また、リニア絞り羽根4,7をガイドする軸部2d,2eを回転絞り羽根5,6,8,9の回転中心を形成する軸部としても用いることにより、地板2に形成する軸部の数を減らすことができる。その結果、各絞り羽根に軸部との干渉を回避するための逃げ形状を設ける必要をなくし、各絞り羽根の形状の単純化や自由度の増加による小型化が可能となる。したがって、絞り装置のさらなる小型化も可能となる。
【0036】
さらに、本実施例では、軸部2d,2eと羽根駆動ピン3i,3j(駆動レバー3)とが、リニア絞り羽根4,7の移動方向のうち固定開口2b(又は絞り開口)に対して一方の側(各図では下側)にまとめて設けられている。これにより、地板2における固定開口2bに対して反対側(各図では上側)の形状や構造を単純化することができ、これに対応して絞り装置の特に上側部分を小型化することができる。
【実施例2】
【0037】
図7には、本発明の実施例2である絞り装置(第1の光量調節装置および第2の光量調節装置)を分解して示している。本実施例の絞り装置は、
図1に示した絞り装置に、絞り開口を通過する光量を減衰させるNDフィルタ12を絞り開口に対して進退可能に設けたものである。
図7において、
図1に示した構成要素と同じ構成要素には、
図1中の符号と同符号を付して説明に代える。
【0038】
13はNDフィルタ12を保持するND保持板である。ND保持板13は、カバー板10を挟んで絞り羽根4〜9とは反対側に配置されている。14はカバー板10との間にND保持板13を移動させる空間を形成する外カバー板であり、地板2に取り付けられる。
【0039】
外カバー板14には、ND駆動部17が固定されたサブ地板16が取り付けられる。ND駆動部17は、例えば、不図示のロータマグネットと、該ロータマグネットと一体で回転する不図示の出力軸と、通電されてロータマグネットを回転させる磁力を発生する不図示のコイルにより構成される電磁駆動モータである。またステッピングモータであってもよい。
【0040】
ND駆動部17の出力軸には、NDアーム15が圧入されて取り付けられており(一体形成されていてもよい)、該NDアーム15の先端に駆動ピン15aを有している。駆動ピン15aは、外カバー板14を貫通して、ND保持板13の下端部に形成された駆動長孔部13aと係合する。また、ND保持板13に光軸直交方向に延びるように形成されたガイド長孔部13c,13dにはそれぞれ、地板2に形成された軸部2c,2dが摺動可能に係合している。
【0041】
ND駆動部17によってNDアーム15が回動されると、ND保持板13は、駆動長孔部13aにて駆動ピン15aから駆動力を受け、ガイド長孔部13c,13dがそれぞれ軸部2c,2dによってガイドされながら光軸直交方向に移動する。これにより、NDフィルタ12が絞り開口に対して進退する。
【0042】
なお、ND保持板13は、リニア絞り羽根4,7と同様に、揺動しながら光軸直交方向に移動される構成でもよい。
【0043】
このように、実施例1にて説明した構成は、NDフィルタを備えた絞り装置にも適用することができる。NDフィルタ12で絞り開口を覆うことで、絞り開口をあまり小さく絞らなくても光量を減少させることができるので、いわゆる小絞り回折による画質の劣化を回避することができる。また、ゴーストやボケの形状も円形に近い形状とすることができるので、より自然な画質の画像を得ることができる。
【実施例3】
【0044】
図8には、本発明の実施例3である絞り装置(第1の光量調節装置)としての絞り装置を分解して示している。
【0045】
本実施例の絞り装置の基本的な構成は、実施例1と同じであり、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。ただし、実施例1では、駆動アーム3の同一の羽根駆動ピン3iにリニア絞り羽根7と2枚の回転絞り羽根6,8を係合させ、他の同一の羽根駆動ピン3jにリニア絞り羽根4と2枚の回転絞り羽根5,9を係合させた場合について説明した。これに対して、本実施例では、駆動アーム3に第1の羽根駆動ピン3i′,3j′と第2の羽根駆動ピン3i,3jを設けている。
【0046】
そして、第1の羽根駆動ピン3i′をリニア絞り羽根7の下端における、実施例1よりも幅方向内側にシフトした位置に形成された駆動長孔部7i′に摺動可能に係合させ、第2の羽根駆動ピン3iを回転絞り羽根6,8の駆動カム溝部6i,8iに摺動可能に係合されている。また、第1の羽根駆動ピン3j′をリニア絞り羽根4の下端における、実施例1よりも幅方向内側にシフトした位置に形成された駆動長孔部4i′に摺動可能に係合させ、第2の羽根駆動ピン3jを回転絞り羽根5,9の駆動カム溝部5i,9iに摺動可能に係合されている。
【0047】
そして、本実施例でも、駆動アーム3を回動させることで、2枚のリニア絞り羽根4,7を光軸直交方向に移動させ、かつ4枚の回転絞り羽根5,6,8,9を光軸直交面内で回転させることができ、これら6枚の絞り羽根4〜9によって円形に近い多角形状の絞り開口を形成するとともにそのサイズ(径)を変化させることができる。
【0048】
なお、本実施例においても、実施例2のようにNDフィルタを絞り開口に対して進退可能に設けてもよい。
【実施例4】
【0049】
図9には、本発明の実施例4である光量調節装置(第1および第2の光量調節装置)としての絞り装置を分解して示している。また、
図10は該絞り装置を、絞り羽根4〜9により形成される絞り開口を光が通過する方向(光軸方向)から見て示している。なお、
図10では、
図9中に示すカバー板10を取り除いた状態を示している。
図10の左図は、中間絞り状態を示している。
図10の右図は、絞り開放(最大絞り開口)状態を示している。さらに、
図11には、カバー板10を取り除いた絞り装置を斜めから見て示している。
【0050】
本実施例の絞り装置の基本的な構成は、実施例1と同じであり、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。ただし、本実施例は、リニア絞り羽根7の形状が実施例1とは異なる。
【0051】
本実施例でも、実施例1と同様に、駆動アーム3に2つの羽根駆動ピン3i,3jを設け、同一の羽根駆動ピン3iに、1枚のリニア絞り羽根(第1の絞り羽根)7と2枚の回転絞り羽根(第2の絞り羽根)6,8を係合させている。また、他の同一の羽根駆動ピン3jに、1枚のリニア絞り羽根(第1の絞り羽根)4と2枚の回転絞り羽根(第2の絞り羽根)5,9を係合させている。そして、駆動アーム3を回動させることで、2枚のリニア絞り羽根4,7を光軸直交方向に移動させ、かつ4枚の回転絞り羽根5,6,8,9を回転させて、これら6枚の絞り羽根4〜9によって円形に近い多角形状の絞り開口を形成するとともにそのサイズ(径)を変化させる。
【0052】
ここで、本実施例では、リニア絞り羽根7に、
図10の左図に示すように、開放絞り状態において、地板2の固定開口2bよりも内側に開放絞り開口を形成するための円形の開口7bが形成されている。開口7bの径は、固定開口2bよりも小さい。こりにより、絞り開放状態において、リニア絞り羽根7の開口7bによって絞り開口基準径を形成することができる。
【0053】
一般に、絞り羽根としては、遮光性のある板金材あるいはプラスチック材を絞り開口を形成するための形状に加工したものが利用されるが、強度と遮光性を確保するためには少なくとも0.2〜0.3mm程度の厚みが必要である。ところが、携帯電話機等の小型の電子機器にて使用されるカメラの撮影レンズは、その全長が数ミリ程度まで小型化されているため、絞り羽根もその小型の撮影レンズ内のスペースに配置可能なようにより薄型化が要求されている。したがって、板金板あるいはプラスチック材により形成される絞り羽根では、強度や遮光性の点でこの要求に対応することができない。また、0.2〜0.3mm程度の厚さでも、絞り羽根のエッジ部での反射によるゴーストやフレアを発生させる。
【0054】
特開2006−72151号公報等にて開示されているように、絞り羽根のうち開口の周囲の領域のみを薄くしたり、開口の端縁部を面取りしたり、開口を形成する薄板の内周面に光の反射を抑える表面処理を施したりすることで、絞り羽根を薄肉化しつつゴースト/フレアの発生を防止することも考えられる。しかし、このような絞り羽根でも、絞り羽根としての強度を保つためにある程度の厚みが必要であるため、絞り装置としての薄型化や小型化には限界がある。
【0055】
この点、本実施例では、可変絞り開口を形成する絞り羽根の1つであるリニア絞り羽根7が、開放絞り開口を形成する開口7bを有する(すなわち、固定絞りを兼ねる)ことで、絞り開口基準径を決める固定絞り部材を廃止することが可能となり、この結果、絞り装置の薄型化や小型化が可能となる。しかも、開口の端縁部を薄肉化することができるため、ゴースト/フレアの低減に有効である。
【0056】
しかも、本実施例は、絞り開口の周囲に配置された駆動リングを回転させ、該駆動リングにおける互いに異なる駆動軸部によってリニア絞り羽根や回転絞り羽根を駆動する場合に比べて、絞り装置の小型化に有利でありながらも、良好な形状の絞り開口を形成することができる。
【0057】
なお、本実施例では、リニア絞り羽根7によって地板2の固定開口2bの内側に開放絞り開口を形成する場合について説明したが、他の絞り羽根4〜6,8,9のいずれによって開放絞り開口を形成してもよく、また複数の絞り羽根によって開放絞り開口を形成してもよい。すなわち、リニア絞り羽根4,7と回転絞り羽根5,6,8,9のうち少なくとも1つによって開放絞り開口を形成すればよい。例えば、リニア絞り羽根4のみで開放絞り開口を形成する場合は、リニア絞り羽根4に開放絞り開口に対応する円形の開口を形成すればよい。また、駆動カム溝部5j,6i,8i,9jの形状の設定により、回転絞り羽根5,6,8,9を組み合わせて開放絞り開口を形成することも可能である。
【0058】
以上のように構成された絞り装置において、駆動アーム3が所定の角度範囲で回動すると、
図12に示すように、リニア絞り羽根4は、駆動長孔部4jにて羽根駆動ピン3jから駆動力を受け、ガイド長孔部4c,4dがそれぞれ、軸部2c,2dによってガイドされながら、光軸直交方向に移動する。また、リニア絞り羽根7は、駆動長孔部7iにて羽根駆動ピン3iから駆動力を受け、ガイド長孔部7e,7fがそれぞれ、軸部2e,2fによってガイドされながら光軸直交方向に移動する。
【0059】
さらに、回転絞り羽根5,6,8,9は、
図13に示すように、駆動カム溝部5j,6i,8i,9jが羽根駆動ピン3j,3iから駆動力を受け、回転中心孔部5d,6e,8d,9eに係合した軸部2d,2eを中心として光軸直交面内で回転(旋回)する。この回転の速さは、駆動カム溝部5j,6i,8i,9jの形状によって調整可能である。
【0060】
これにより、
図14に示すように、小絞り状態(上段中央の図)から開放絞りの直前の状態(右左下の図)までの各絞り状態においては、絞り羽根4〜6,8,9の開口形成用縁部4b,5b,6b,8b,9bとリニア絞り羽根7の開口7bの縁部の一部とによって円形に近いまたはほぼ正六角形の絞り開口を形成することができる。
【0061】
そして、
図14中の右下の図に示す開放絞り状態では、
図12の左図にも示したように、リニア絞り羽根7の開口7bが、地板2の固定開口2bよりも径方向内側において開放絞り開口を形成する。
【0062】
また、本実施例の絞り装置は、
図14の左上の図に示すように、閉じ切りも可能である。
【0063】
以上説明したように、本実施例の絞り装置は、各絞り羽根を、駆動リング等の絞り開口の周囲で回転する部品を用いずに、1つの駆動アーム3を駆動させることで移動または回転させるため、絞り装置を長手方向および幅方向において小型化でき、さらに光軸方向での厚みを薄くすることができる。
【0064】
なお、本実施例では、絞り羽根4〜9に孔部や溝部を形成し、駆動アーム3や地板2に形成されたピンをこれら孔部や溝部に係合(挿入)する場合について説明したが、絞り羽根にピンを設け、これを駆動アームや地板に形成された孔部や溝部に挿入する構成を採用することも可能である。
【実施例5】
【0065】
図15には、本発明の実施例5である絞り装置を分解して示している。本実施例の絞り装置は、
図9に示した絞り装置に、絞り開口を通過する光量を減衰させるNDフィルタ12を絞り開口に対して進退可能に設けたものである。
図15において、
図9に示した構成要素と同じ構成要素には、
図9中の符号と同符号を付して説明に代える。
【0066】
13はNDフィルタ12を保持するND保持板である。ND保持板13は、カバー板10を挟んで絞り羽根4〜9とは反対側に配置されている。14はカバー板10との間にND保持板13を移動させる空間を形成する外カバー板であり、地板2に取り付けられる。
【0067】
外カバー板14には、ND駆動部17が固定されたサブ地板16が取り付けられる。ND駆動部17は、例えば、不図示のロータマグネットと、該ロータマグネットと一体で回転する不図示の出力軸と、通電されてロータマグネットを回転させる磁力を発生する不図示のコイルにより構成される電磁駆動モータである。またステッピングモータであってもよい。
【0068】
ND駆動部17の出力軸には、NDアーム15が圧入されて取り付けられており(一体形成されていてもよい)、該NDアーム15の先端に駆動ピン15aを有している。駆動ピン15aは、外カバー板14を貫通して、ND保持板13の下端部に形成された駆動長孔部13aと係合する。また、ND保持板13に光軸直交方向に延びるように形成されたガイド長孔部13c,13dにはそれぞれ、地板2に形成された軸部2c,2dが摺動可能に係合している。
【0069】
ND駆動部17によってNDアーム15が回動されると、ND保持板13は、駆動長孔部13aにて駆動ピン15aから駆動力を受け、ガイド長孔部13c,13dがそれぞれ軸部2c,2dによってガイドされながら光軸直交方向に移動する。これにより、NDフィルタ12が絞り開口に対して進退する。
【0070】
また、ND保持板13は、リニア絞り羽根4,7と同様に、揺動しながら光軸直交方向に駆動される構成でもよい。
【0071】
本実施例でも、開放絞り状態においては、実施例4にて説明したように、リニア絞り羽根7に形成した開口もしくは他の絞り羽根4〜6,8,9に形成した開口や開口形成用縁部よって、地板2の固定開口2bよりも径方向内側に、該固定開口2bよりも径が小さい開放絞り開口を形成する。
【0072】
そして、本実施例では、NDフィルタ12で絞り開口を覆うことで、絞り開口をあまり小さく絞らなくても光量を減少させることができるので、いわゆる小絞り回折による画質の劣化を回避することができる。また、ゴーストやボケの形状も円形に近い形状とすることができるので、より自然な画質の画像を得ることができる。
【実施例6】
【0073】
図16には、本発明の実施例6である光量調節装置(第2の光量調節装置および第3の光量調節装置)としての絞り装置を分解して示している。また、
図17は該絞り装置を、絞り羽根4〜9により形成される絞り開口を光が通過する方向(光軸方向)から見て示している。なお、
図17では、
図1中に示すカバー板10を取り除いた状態を示している。さらに、
図18には、
図17に示した絞り装置を斜めから見て示している。また、これらの図において絞り装置の上下方向であって長手方向が、「光通過方向に直交する方向」に相当し、以下の説明では光軸直交方向という。また、これらの図における絞り装置の左右方向を幅方向という。
【0074】
これらの図において、ベース部材としての地板2には、光を通過させる固定開口2bが形成されている。地板2は、プレス加工や樹脂成形等によって製作されている。該地板2の外面(光軸方向一方の面)のうち、固定開口2bから下方向に離れた位置には、絞り駆動部1が取り付けられている。絞り駆動部1は、例えば、不図示のロータマグネットと、該ロータマグネットと一体で回転する出力軸1aと、通電されてロータマグネットを回転させる磁力を発生する不図示のコイルにより構成される電磁駆動モータである。また、ステッピングモータであってもよい。
【0075】
絞り駆動部1の出力軸1aは、地板2を貫通して地板2の内面側に突出している。そして、該出力軸1aには、駆動レバーとしての駆動アーム3が圧入によって取り付けられている。駆動アーム3は、固定開口2bから下方向に離れて位置する軸回りにおいて、出力軸1aとともに所定の角度範囲で回動する。駆動アーム3は、樹脂成形等によって製作されている。なお、出力軸1aと駆動アーム3とを一体形成することも可能である。
【0076】
駆動アーム3は、出力軸1aの位置を挟んだ両側の先端に、絞り羽根4〜9を駆動するための伝達部としての羽根駆動ピン3i,3jを有する。羽根駆動ピン3iは、回転絞り羽根6、リニア絞り羽根7および回転絞り羽根8の3枚の絞り羽根に係合している。また、羽根駆動ピン3jは、リニア絞り羽根4、回転絞り羽根5および回転絞り羽根9の3枚の絞り羽根に係合している。
【0077】
なお、絞り駆動部1と駆動アーム3を地板2の外面側に配置し、駆動アーム3に形成された羽根駆動ピン3i,3jを、地板2を貫通させて該地板2の内面側に突出させるようにしてもよい。
【0078】
このように、本実施例では、絞り駆動部1の出力軸1aに直接取り付けられた(または一体形成された)1つの駆動アーム3に2つの羽根駆動ピン3i,3jを設け、同一(共通)の羽根駆動ピン3iに、1枚のリニア絞り羽根(第1の絞り羽根)7と2枚の回転絞り羽根(第2の絞り羽根)6,8を係合させている。また、他の同一(共通)の羽根駆動ピン3jに、1枚のリニア絞り羽根(第1の絞り羽根)4と2枚の回転絞り羽根(第2の絞り羽根)5,9を係合させている。そして、このように複数(2つ)の羽根駆動ピン3i,3jのそれぞれに3枚ずつの絞り羽根が係合した駆動アーム3を回動させることで、2枚のリニア絞り羽根4,7を光軸直交方向に移動させ、かつ4枚の回転絞り羽根5,6,8,9を回転させて、これら6枚の絞り羽根4〜9によって円形に近い多角形状の絞り開口を形成するとともにそのサイズ(径)を変化させる。
【0079】
以上の構成を採用することで、特許文献2のように、絞り開口の周囲に配置された駆動リング(環板)を回転させ、該駆動リングにおける互いに異なる駆動軸部によって直進絞り羽根や回転絞り羽根を駆動する場合に比べて、絞り装置の小型化に有利でありながらも、良好な形状の絞り開口を形成することができる。
【0080】
なお、リニア絞り羽根4,7が光軸直交方向に移動するとは、リニア絞り羽根4,7が光軸直交方向に直進(平行移動)する場合だけでなく、後述するように幅方向に揺動(回転)したりシフトしたりしながら光軸直交方向に移動する場合も含む意味である。
【0081】
11はアームカバーであり、駆動アーム3と絞り羽根4(〜9)との間に配置されて、駆動アーム3と絞り羽根4(〜9)との不必要な接触を防止する。アームカバー11は、プレス加工や樹脂成形等により製作されている。駆動アーム3と絞り羽根4との間に十分なクリアランスがあるときには、アームカバー11はなくてもよい。
【0082】
カバー板10は、地板2との間に絞り羽根4〜9が移動する空間を形成するように地板2に取り付けられるカバー板である。カバー板10は、地板2に形成された固定開口2bに対応する開口10bを有する。カバー板10は、プレス加工や樹脂成形等により製作されている。カバー板10の内面(地板側の面)には、絞り羽根4〜9との摺動抵抗を低減するためのレール10mが形成されている。
【0083】
本実施例の絞り装置は、前述したように駆動アーム3を回動させることで絞り開口径を変化させることができ、さらに絞り開口を完全に閉じる(閉じきる)ことができる。このため、本実施例の絞り装置は、シャッタ動作を行うことも可能である。つまり、本実施例の絞り装置は、絞りシャッタ装置として使用することもできる。
【0084】
以下、各絞り羽根についてより詳細に説明する。絞り羽根4〜9は、プレス成形や樹脂成形等により製作される。また、絞り羽根4〜6,8,9には、静電気による隣り合う絞り羽根同士の貼り付きを防止したり互いの摺動抵抗を軽減したりするために、エンボス4k,5k,6k1,6k2,8k,9kが形成されている。
【0085】
リニア絞り羽根4は、第1の係合部である円形の駆動孔部4jにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3jと回転可能に係合している。また、リニア絞り羽根4に光軸直交方向に延びるように形成された第2の係合部としてのガイド長孔部4cには、地板2に形成されたガイド部(ガイド軸部)としてのガイドピン2cが摺動可能に係合している。
【0086】
駆動アーム3が上述した所定の角度範囲で回動すると、リニア絞り羽根4は、駆動孔部4jにて羽根駆動ピン3jから駆動力を受け、駆動孔部4jが係合した羽根駆動ピン3jを中心に回転移動し、ガイド長孔部4cがガイドピン2cによってガイドされながら、光軸直交方向に駆動される。
【0087】
このとき羽根駆動ピン3jは、出力軸1aを中心として円弧を描くように移動するため、リニア絞り羽根4は、ガイドピン2cによって光軸直交方向にガイドされながら該ガイドピン2cを中心として幅方向に揺動する。すなわち、リニア絞り羽根4は、地板2の下端に達して固定開口2bに対して退避したときには、リニア絞り羽根4の駆動孔部4jは、固定開口2bの中心と出力軸1aとを結ぶ線に近づく側に引き込まれるように揺動する。このため、本実施例では、
図19に示す地板2の右側の角部2rを、リニア絞り羽根4が揺動せずに単に直進移動する場合よりも内側(出力軸1a側)に引っ込んだ円弧状に形成でき、その分、地板2を小さくすることができる。
【0088】
また、リニア絞り羽根4が揺動せずに単に直進移動する場合は、駆動孔部4jを長孔とし、地板2に設けるガイドピン2cを2つにして直進移動できるようにし、リニア絞り羽根4に形成するガイド長孔部4cも2つ必要になる。しかしながら、本実施例では揺動しながら光軸直交方向に駆動されるため、地板2に設けるガイドピン2cを1つにすることができるので、リニア絞り羽根4に形成するガイド長孔部4cも1つになり、この結果、リニア絞り羽根4を小さくすることができ、その分さらに地板2を小さくすることができる。したがって、絞り装置の小型化が可能となり、該絞り装置を搭載したカメラや交換レンズ等の光学機器も小型化することができる。
【0089】
リニア絞り羽根4のガイドピン2cを中心とした揺動の速さは、ガイド長孔部4cをカム溝形状に形成することによって調整が可能である。また、リニア絞り羽根4が揺動せずに単に直進移動する場合に比べ、本実施例では、ガイド長孔部4cのカム溝形状の調整によって、良好な絞り開口形状を得るための絞り開口の形状の補正も可能である。
【0090】
回転絞り羽根5は、第3の係合部である駆動カム溝部5jにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3jと摺動可能に係合している。また、回転絞り羽根5に形成された第4の係合部である回転中心孔部5dには、地板2に形成された回転中心部(回転中心軸部)としての回転中心ピン2dが回転可能に係合している。
【0091】
駆動アーム3が所定の角度範囲で回動すると、回転絞り羽根5は、
図19に示すように、駆動カム溝部5jが羽根駆動ピン3jから駆動力を受け、回転中心孔部5dが係合した回転中心ピン2dを中心として光軸に直交する面(以下、光軸直交面という)内で回転(旋回)する。この回転の速さは、駆動カム溝部5jの形状によって調整可能である。また、駆動カム溝部5jの形状によって絞り開口の形状の補正も可能である。
【0092】
回転絞り羽根5には、回転絞り羽根8に係合する回転中心ピン2eを貫通させ、該回転中心ピン2eとの干渉を回避するための長穴部5eが形成されている。回転中心ピン2eを長穴部5eを貫通させるようにすることで、回転絞り羽根5の形状をその強度を確保できる形状とすることができるとともに、回転中心ピン2eを地板2に効率良く配置することができる。また、長穴部5eを回転絞り羽根5に形成することで、該回転絞り羽根5を軽量化することができ、シャッタ動作に有効である。
【0093】
回転絞り羽根6は、第3の係合部である駆動カム溝部6iにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3iと摺動可能に係合している。また、回転絞り羽根6に形成された第4の係合部である回転中心孔部6fには、地板2に形成された回転中心部(回転中心軸部)としての回転中心ピン2fが回転可能に係合している。
【0094】
駆動アーム3が所定の角度範囲で回動すると、回転絞り羽根6は、
図20に示すように、駆動カム溝部6iが羽根駆動ピン3iから駆動力を受け、回転中心孔部6fが係合した回転中心ピン2fを中心として光軸直交面内で回転(旋回)する。この回転の速さは、駆動カム溝部6iの形状によって調整可能である。また、駆動カム溝部6iの形状によって絞り開口の形状の補正も可能である。
【0095】
リニア絞り羽根7は、第1の係合部である円形の駆動孔部7iにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3iと回転可能に係合している。また、リニア絞り羽根7に光軸直交方向に延びるとともに幅方向にリフトを有するように形成された第2の係合部としてのガイドカム溝部7hには、地板2に形成されたガイド部(ガイド軸部)としてのガイドピン2hが摺動可能に係合している。
【0096】
駆動アーム3が所定の角度範囲で回動すると、リニア絞り羽根7は、
図19に示すように、駆動孔部7iにて羽根駆動ピン3iから駆動力を受け、駆動孔部7iが係合した羽根駆動ピン3iを中心に回転移動し、ガイドカム溝部7hがガイドピン2hとの係合によって幅方向にシフトおよび揺動しながら光軸直交方向に駆動される。リニア絞り羽根4と同様に、リニア絞り羽根7が幅方向に揺動することで、
図19に示す地板2の左側の角部2rを、リニア絞り羽根7が揺動せずに単に直進移動する場合よりも内側(出力軸1a側)に引っ込んだ円弧状に形成することができ、その分、地板2を小さくすることができる。絞り装置を搭載する光学機器のレンズ鏡筒部の断面は円形であることが一般的であるため、左右の角部2rを円弧形状に形成できることで、レンズ鏡筒部(つまりは光学機器)の小型化に有効である。
【0097】
リニア絞り羽根7のシフトおよび揺動の速さは、ガイドカム溝部7hのカム溝形状により調整が可能である。その他の動きは、リニア絞り羽根4と同様である。
【0098】
回転絞り羽根8および回転絞り羽根9は、第3の係合部である駆動カム溝部8i,9jにて、駆動アーム3の羽根駆動ピン3i,3jとそれぞれ摺動可能に係合している。また、回転絞り羽根8,9に形成された第4の係合部である回転中心孔部8e,9gには、地板2に形成された回転中心部(回転中心軸部)としての回転中心ピン2e,2gがそれぞれ回転可能に係合している。
【0099】
駆動アーム3が所定の角度範囲で回動すると、回転絞り羽根8,9はそれぞれ、
図20に示すように、駆動カム溝部8i,9jが羽根駆動ピン3i,3jから駆動力を受け、回転中心孔部8e,9gが係合した回転中心ピン2e,2gを中心として光軸直交面内で回転(旋回)する。この回転の速さは、駆動カム溝部8i,9jの形状によって調整可能である。また、駆動カム溝部8i,9jの形状によって絞り開口の形状の補正も可能である。回転絞り羽根9には、回転絞り羽根5と同様に、回転絞り羽根8に係合する回転中心ピン2eを貫通させ、該回転中心ピン2eとの干渉を回避するための長穴部9eが形成されている。
【0100】
前述した地板2の左右の角部2rは、回転絞り羽根5,6,8,9の回転のタイミングをそれぞれの駆動カム溝部5j,6i,8i,9jの形状で適宜調整することによって、より内側に引っ込むように形成することができ、レンズ鏡筒のさらなる小型化に有効である。
【0101】
そして、駆動アーム3の回動位置に対する絞り羽根4〜9の移動または回転位置を、それぞれに形成されたガイド長孔部4c、ガイドカム溝部7hおよび駆動カム溝部5j,6i,8i,9jの形状で調整することができる。これにより、
図21に示すように、開放絞り(右上の図)から小絞り(左下の図)までの各絞り状態において、絞り羽根4〜9の開口形成用縁部4b,5b,6b,7b,8b,9bによって円形に近いまたはほぼ正六角形の絞り開口を形成することができる。また、前述したように、本実施例の絞り装置は、
図21の左上の図に示すように、閉じ切りも可能である。
【0102】
以上説明したように、本実施例の絞り装置は、各絞り羽根を、駆動リング等の絞り開口の周囲で回転する部品を用いずに、1つの駆動アーム3を駆動させることで移動または回転させるため、絞り装置を長手方向および幅方向において小型化でき、さらに光軸方向での厚みを薄くすることができる。
【0103】
なお、本実施例では、絞り羽根4〜9に孔部や溝部を形成し、駆動アーム3や地板2に形成されたピンをこれら孔部や溝部に係合(挿入)する場合について説明したが、絞り羽根にピンを設け、これを駆動アームや地板に形成された孔部や溝部に挿入する構成を採用することも可能である。
【0104】
また、図示はしないが、本実施例の絞り装置においても、実施例4にて説明したように、開放絞り状態において、リニア絞り羽根7に形成した開口もしくは他の絞り羽根4〜6,8,9に形成した開口や開口形成用縁部よって、地板2の固定開口2bよりも内側に、該固定開口2bよりも径が小さい開放絞り開口を形成するようにしてもよい。これにより、絞り装置の薄型化や小型化、さらには開口の端縁部の薄肉化によるゴースト/フレアの低減を図ることができる。
【実施例7】
【0105】
図22には、本発明の実施例7である絞り装置を分解して示している。本実施例の絞り装置は、
図16に示した絞り装置に、絞り開口を通過する光量を減衰させるNDフィルタ12を進退可能に設けたものである。
図22において、
図16に示した構成要素と同じ構成要素には、
図16中の符号と同符号を付して説明に代える。
【0106】
13はNDフィルタ12を保持するND保持板である。ND保持板13は、カバー板10を挟んで絞り羽根4〜9とは反対側に配置されている。14はカバー板10との間にND保持板13を移動させる空間を形成する外カバー板であり、地板2に取り付けられる。
【0107】
外カバー板14には、ND駆動部17が固定されたサブ地板16が取り付けられる。ND駆動部17は、例えば、不図示のロータマグネットと、該ロータマグネットと一体で回転する不図示の出力軸と、通電されてロータマグネットを回転させる磁力を発生する不図示のコイルにより構成される電磁駆動モータである。またステッピングモータであってもよい。
【0108】
ND駆動部17の出力軸には、NDアーム15が圧入されて取り付けられており(一体形成されていてもよい)、該NDアーム15の先端に駆動ピン15aを有している。駆動ピン15aは、外カバー板14を貫通して、ND保持板13と係合する。ND保持板13は、地板2に形成されたガイドピン2cと回転中心ピン2dとによって光軸直交方向にガイドされる。ND駆動部17によってNDアーム15を回動させると、ND保持板13が光軸直交方向に直進移動し、NDフィルタ12が絞り開口に対して進退する。
【0109】
また、ND保持板13はリニア絞り羽根4、7と同様に、揺動しながら光軸直交方向に駆動される構成でもよい。
【0110】
このように、実施例6で説明した構成は、NDフィルタを備えた絞り装置にも適用することができる。NDフィルタ12で絞り開口を覆うことで、絞り開口をあまり小さく絞らなくても光量を減少させることができるので、いわゆる小絞り回折による画質の劣化を回避することができる。また、ゴーストやボケの形状も円形に近い形状とすることができるので、より自然な画質の画像を得ることができる。
【0111】
また、図示はしないが、本実施例の絞り装置においても、実施例4にて説明したように、開放絞り状態において、リニア絞り羽根7に形成した開口もしくは他の絞り羽根4〜6,8,9に形成した開口や開口形成用縁部よって、地板2の固定開口2bよりも内側に、該固定開口2bよりも径が小さい開放絞り開口を形成するようにしてもよい。
【実施例8】
【0112】
図23には、実施例1〜7にて説明した絞り装置を搭載した光学機器としてのビデオカメラ(撮像装置)の概略構成を示している。
【0113】
21はビデオカメラのレンズ鏡筒部である。該レンズ鏡筒部21内には、変倍レンズ32、実施例1,2の絞り装置20およびフォーカスレンズ29を含む撮影光学系が収容されている。
【0114】
25はCCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される撮像素子である。撮像素子25は、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換して電気信号を出力する。絞り装置20の絞り開口を変化させたりNDフィルタを進退させたりすることで、撮像素子25上に形成される被写体像の明るさ(つまりは撮像素子25に到達する光量)を適正に設定することができる。
【0115】
撮像素子25から出力された電気信号は、画像処理回路26にて種々の画像処理を受ける。これにより、映像信号(ビデオ出力)が生成される。
【0116】
コントローラ22は、不図示のズームスイッチがユーザにより操作されることに応じて、ズームモータ31を制御し、変倍レンズ32を移動させて変倍(ズーミング)を行わせる。また、コントローラ22は、映像信号のコントラストを検出し、該コントラストに応じてフォーカスモータ28を制御し、フォーカスレンズ29を移動させてオートフォーカスを行う。
【0117】
さらに、コントローラ22は、映像信号のうち輝度情報に基づいて、絞り装置20の絞り駆動部1(およびND駆動部17)を制御して光量を調節する。これにより、撮影時のボケやゴーストを自然な形状にすることができ、高画質の映像を記録することができる。また、レンズ鏡筒部に内蔵された絞り装置20が小型であるので、レンズ鏡筒部およびビデオカメラ全体の小型化を図ることができる。
【0118】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。