【解決手段】生体刺激用磁場発生装置は、磁性材料で形成されたコア2と、コア2の一部に巻回されたコイル3と、を備える。コア2は、併設された少なくとも二対の脚部20b、21bを有し、二対の脚部20b、21bのそれぞれに、互いに交差するギャップ部20c、21cが設けられている。コイル3は、二対の脚部20b、21b及びギャップ部20c、21cのそれぞれとの間で第1磁路を形成する第1コイル部3aと、第2磁路を形成する第2コイル部3bと、を有する。第1コイル部3aと一対の脚部によって第1磁路上にある第1方向の磁場を発生させ、第2コイル部3bと他方の一対の脚部によって第2磁路上にある第2方向の磁場を発生させ、第1方向の磁場と第2方向の磁場とを合成した磁場によって生体を刺激する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本明細書では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に設定するものであり、本発明に係る製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0012】
<<概要>>
まず、本実施形態に係る磁場発生装置(生体刺激用磁場発生装置)1の概要について、
図1及び
図2を主に参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る磁場形成部Mの正面図、
図2は、磁場形成部Mの平面図である。
【0013】
本発明の実施形態に係る生体刺激用磁場発生装置(磁場発生装置1)は、磁性材料で形成されたコア2と、コア2の一部(脚部20b及び脚部21b)に巻回されたコイル3と、を備える。
コア2は、併設された少なくとも二対の脚部20b、21bを有する。
二対の脚部20b、21bのそれぞれに、互いに交差するギャップ部20c、21cが設けられている。
コイル3は、二対の脚部20b、21b及びギャップ部20c、21cのそれぞれとの間で第1磁路を形成する第1コイル部3aと、第2磁路を形成する第2コイル部3bと、を有する。
第1コイル部3aと一対の脚部20bによって第1磁路上にある第1方向(
図3に示すX方向)の磁場を発生させ、第2コイル部3bと他方の一対の脚部21bによって第2磁路上にある第2方向(
図3に示すY方向)の磁場を発生させる。そして、第1方向の磁場と第2方向の磁場とを合成した磁場によって生体を刺激することを特徴とする。
【0014】
ここで、「磁場を発生させ」とは、磁場を発生させる能力を有していればよく、実際に磁場を発生させている状態でなくてもよい。
また、「合成」とは、第1方向の磁場と第2方向の磁場とのうち一方の磁場がゼロである場合にも成立するものとする。つまり、この場合、他方の磁場が合成磁場と等しくなる。
【0015】
上記構成によれば、第1方向の磁場と第2方向の磁場との大きさを調整することで、ギャップ部における各種方向の合成磁場によって、生体を刺激することができる。
つまり、第1方向の磁場の大きさと、第2方向の磁場の大きさを調整することで、装置自体を動かさずに、生体に対するコア2の当接状態を維持しながら、印加する磁場の方向を変えることができる。このため、コア2の端面を皮膚に食い込ませて、生体のより深い位置にコア2を配置した状態で印加する磁場の方向を変えることができる。
【0016】
そして、各種方向の磁場を生体内に印加することによって、生体内で発生する誘導電流によって、任意の方向に延在する神経細胞を好適に刺激することができる。
なお、三対の脚部及びこれに巻回されたコイルを備えるように構成し、第1方向の磁場及び第2方向の磁場の双方に垂直な磁場を生じさせ、これを合成するようにして、生体に対する深さ方向の磁場の位置を変更可能としてもよい。
【0017】
<構成>
本実施形態に係る磁場形成部M、及び磁場形成部Mを備える生体刺激用磁場発生装置(磁場発生装置1)の構成について、
図1及び
図2に加え、
図3及び
図4を主に参照して説明する。
図3は、コア2の上側斜視図、
図4は、磁場発生装置1の構成を説明する説明図である。
【0018】
(磁場形成部について)
磁場形成部Mは、後述する電源回路CP1、CP2から供給される交番電流によって磁場を形成する部位であり、
図1及び
図2に示すように、コア2と、コア2の一部に巻回されたコイル3と、から構成されている。
【0019】
(コアについて)
コア2は、
図2に示すように、コイル3から生じた磁束をギャップ部20c、21cに案内して、ギャップ部20c、21cにおいて磁束を生じさせるものである。本実施形態に係るコア2は、大きさの異なる2つの角張ったU字型の第1コア部20と第2コア部21とを備える。
本実施形態に係る一例としての第1コア部20及び第2コア部21のそれぞれは、磁性材料で構成された電磁鋼板が積層され接着剤で接合されて構成されている。
【0020】
コア2(第1コア部20及び第2コア部21のそれぞれ)は、
図3に示すように、各一対(計二対)の脚部20b(21b)と、各一対の脚部20b(21b)同士を接続する接続部20a(21a)と、を備える。
二対の脚部20b、21bにおける接続部20a、21a同士は、ねじれの位置に配置されており、二対の脚部20b、21bの端面は同一平面上にある。ここで「二対の脚部20b、21bの端面」とは、磁束を放出する部位であり、脚部20b、21bにおける接続部20a、21aとは逆側にあり、脚部20b、21bの延在(巻軸)方向に交差する方向に延在する端面(本実施形態においては上面)をいう。
この構成について換言すると、二対の脚部20b、21bの端部間にある
図2に示すギャップ部20c、21cは、同一の仮想平板状にあり、かつ、それぞれのギャップ方向が直交するように、第1コア部20と第2コア部21とが組み合わせられている。
【0021】
図3に示すように、一対の脚部20bの上端部を結ぶ方向を第1方向としてのX方向とし、一対の脚部21bの上端部を結ぶ方向を第2方向としてのY方向として、後に説明する。
なお、本実施形態に係る第1方向としてのX方向と、第2方向としてのY方向は直交しているが、本発明は、このような構成に限定されず、第1方向と第2方向とがギャップ部20c、21cにおいて交差していればよく、その角度は任意に設定可能である。
【0022】
このように、接続部20a、21a同士がねじれの位置に配置されており、二対の脚部20b、21bの端面が同一平面上にあることで、独立した磁路を形成しつつ、同一平面内に磁束の放出部を揃えることにより磁場の方向の制御を正確に行うことが可能となる。
特に、本実施形態に係るコア2のように、電磁鋼板が積層されて構成される場合には、接着剤で接合された接合界面がギャップとなることにより、電磁鋼板の面方向には磁束が流れることはできるが、厚さ方向には流れることができない。
このため、第1コア部20の接続部20aと第2コア部21の接続部21aとが交差せずに、接続部20a、21a同士がねじれの位置に配置されていることで、両方の磁束を流すことができるようになる。
【0023】
本実施形態に係るコア2は、上記のように積層された電磁鋼板によって構成されていることにより、汎用の電磁鋼板を用いることができるため、安価にコア2を製造可能となる。
なお、第1コア部20及び第2コア部21は、角張ったU字型のものに限定されず、例えば、丸みを帯びたU字型のものや、脚部20b、21b両方の上端部からギャップ部20c、21cを狭める方向に延在する端部を有してC字型に形成されているものであってもよい。
【0024】
(コイルについて)
コイル3は、一例として平角線の絶縁被覆銅線で形成されたエッジワイズコイルであり、第1コア部20の一対の脚部20bに巻回された第1コイル部3aと、第2コア部21の一対の脚部21bに巻回された第2コイル部3bと、で構成されている。
第1コイル部3aは、一対の脚部20bに巻回される2個の螺旋部3aaと、螺旋部3aaの底部を連結する連結部3abと、によって構成されている。第1コイル部3aは、2個の螺旋部3aaと連結部3abとによって、底面視8の字状に形成されている。2個の螺旋部3aaは、磁路の閉ループ方向が同一である巻線方向で、
図2に示すように、一対の脚部20bのそれぞれに巻回されている。
【0025】
同様に、第2コイル部3bは、一対の脚部21bに巻回される2個の螺旋部3baと、螺旋部3baの底部を連結する連結部3bbと、によって構成されている。第2コイル部3bは、2個の螺旋部3baと連結部3bbとによって、底面視8の字状に形成されている。2個の螺旋部3baは、磁路の閉ループ方向が同一である巻線方向で、
図2に示すように、一対の脚部21bのそれぞれに巻回されている。
【0026】
このように、第1コイル部3a及び第2コイル部3bは、脚部20b、21bに巻回されていると、接続部20aに巻回されているものと比較して、脚部20b、21bの端部の外方への磁束密度を高めることができるため好適である。しかしながら、このような構成に限定されず、第1コイル部3a及び第2コイル部3bは、第1コア部20又は第2コア部21との間で磁路を形成できればよく、接続部20a、21aに巻回されている構成であってもよい。
【0027】
(全体構成について)
磁場発生装置1は、コイル3に交番電流を供給可能とするように、直流電源4をそれぞれ備える2回路の電源回路CP1、CP2と、交番電流の供給を制御する制御部Cと、を備える。電源回路CP1、CP2のそれぞれは、直流電源4が接続された第1回路C1(C3)と、磁場形成部Mが接続された第2回路C2(C4)と、で構成されている。
第1回路C1(C3)は、直流電源4と、直流電源4に接続された回路内の通電のオンオフを切り替えるスイッチ部5と、充電電流の大きさを調整する調整抵抗6と、充電用のコンデンサー7と、に接続されている。
第2回路C2(C4)は、LC回路であり、コンデンサー7と、コンデンサー7に接続された回路内の通電のオンオフを切り替えるスイッチ部8と、磁場形成部Mに供給する電流の大きさを調整する調整用抵抗9と、に接続されている。
【0028】
磁場発生装置1の作動方法としては、まず、制御部Cは、電源回路CP1、CP2に設けられたスイッチ部5をオンにして、第1回路C1(C3)によりコンデンサー7を規定電圧に充電する。コンデンサー7への充電が完了したら、スイッチ部5をオフにする。
次に、スイッチ部8をオンにして、コンデンサー7に充電された電気を磁場形成部Mのコイル3に放電する。第2回路C2(C4)にLC共振の電流が繰り返し流れ、コイル3(磁場形成部M)から磁場が放出されることになる。
(制御部について)
次に、制御部Cの機能について、
図4に加えて、
図5及び
図6を主に参照して説明する。
図5は、制御部Cの機能図、
図6は、筋電位センサ10で検出された電位に基づいて磁場方向を決定する機能を有する制御部Cの機能図である。
本実施形態に係る制御部Cは、充電指示部Caと、放電指示部Cbと、磁場方向決定部Cdと、電流比率調整部Ceと、位相差決定部Cfと、を有する。
【0029】
充電指示部Caは、スイッチ部5に対して信号S1を送信して、コンデンサー7への充電及び充電解除の指示をする機能を有する。
放電指示部Cbは、スイッチ部8に対して信号S2を送信して、磁場形成部Mへの放電及び放電解除の指示をする機能を有する。
磁場方向決定部Cdは、ギャップ部20c、21cにおける磁場の方向を決定する。
電流比率調整部Ceは、磁場方向決定部Cdによって決定された磁場方向に基づき、第1コイル部3a及び第2コイル部3bに対する電流比率を調整する機能を有する。具体的には、電流比率調整部Ceは、電源回路CP1及び電源回路CP2のそれぞれに設けられた調整用抵抗9の抵抗値を調整する信号S3を調整用抵抗9に送信することで、第1コイル部3a及び第2コイル部3bを流れる電流比率を調整する。
位相差決定部Cfは、磁場方向決定部Cdによって決定された磁場方向に基づき、第1コイル部3a及び第2コイル部3bに対する電圧の位相差を決定する。
【0030】
特に、制御部Cは、電流比率調整部Ceにより、電源回路CP1から第1コイル部3aに供給する交番電流の大きさと、電源回路CP2から第2コイル部3bに供給する電流の大きさとの比率を制御可能である。
このように、制御部Cが、第1コイル部3aに供給する交番電流の大きさと、第2コイル部3bに供給する交番電流の大きさとの比率を制御することで、後述するように磁場の方向を調整することができる。
【0031】
特に、一方の電源回路CP1の出力は、第1コイル部3aと第2コイル部3bの一方である第1コイル部3a、他方の電源回路CP2の出力は、第1コイル部3aと第2コイル部3bの他方である第2コイル部3bに接続されている。
このように、磁場発生装置1は、2回路の電源回路(CP1、CP2)を備えることで、第1コイル部3aと、第2コイル部3bに対して、同時に大きな電流を供給することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態においては、直流電源4をそれぞれ備える2回路の電源回路CP1と電源回路CP2とによって、第1コイル部3aと第2コイル部3bへの電流の供給量を調整しているが、このような構成に限定されない。例えば、直流電源4を一つ備える1回路の電源回路において、第1コイル部3aと第2コイル部3bへの電流の供給を分配する構成であってもよい。
【0033】
磁場発生装置1は、
図6に示すように、生体内部の電位(筋電位等の神経細胞の電位)を検出するセンサ(筋電位センサ10)を更に備えるようにしてもよい。
例えば、制御部Cは、電流比率調整部Ceにより、センサ(筋電位センサ10)で検出された電位に基づいて、第1コイル部3aに供給する電流と、第2コイル部3bに供給する電流との比率をフィードバック制御により制御する。
このように、制御部Cがフィードバック制御を行うことで、各方向に延在する複数の神経線維に対して、方向を変えて好適に刺激を付与することができる。
【0034】
<磁場の向きについて>
次に、第1コイル部3aと第2コイル部3bに印加される電圧比に対する磁束の向きの変化について、
図7から
図13を参照して説明する。
図7(a)は、第1コイル部3aにのみ正方向の交流電圧を印加したときの電圧比と位相角との関係を示す図、
図7(b)は、ギャップ部20c、21cにおける合成磁場を示す図である。
図8(a)は、第1コイル部3a及び第2コイル部3bに大きさの異なる交流電圧を印加したときの電圧比と位相角との関係を示す図、
図8(b)は、ギャップ部20c、21cにおける合成磁場を示す図である。
図9(a)は、第2コイル部3bに交流電圧を印加したときの電圧比と位相角との関係を示す図、
図9(b)は、ギャップ部20c、21cにおける合成磁場を示す図である。
図10(a)は、第1コイル部3a及び第2コイル部3bに位相角が180度異なる交流電圧を印加したときの電圧比と位相角との関係を示す図、
図10(b)は、ギャップ部20c、21cにおける合成磁場を示す図である。
図11(a)は、第1コイル部3aにのみ逆方向の交流電圧を印加したときの電圧比と位相角との関係を示す図、
図11(b)は、ギャップ部20c、21cにおける合成磁場を示す図である。
図12(a)は、第1コイル部3a及び第2コイル部3bに位相角が90度異なる交流電圧を印加したときの電圧比と位相角との関係を示す図、
図12(b)は、ギャップ部20c、21cにおける合成磁場を示す図である。
図13(a)は、第1コイル部3a及び第2コイル部3bに位相角が70度異なる交流電圧を印加したときの電圧比と位相角との関係を示す図、
図13(b)は、ギャップ部20c、21cにおける合成磁場を示す図である。
【0035】
上記の図面からわかるように、コイル3に生じる電圧は位相角が大きくなるにつれて減衰している。本実施形態においては、交流電源からの交流電流よりも低い電流をコイル3に供給するため、直流電源4からの電流をコンデンサー7にチャージして、それを放電してコイル3に電流を供給する方式を採用しているためである。
なお、コイル3に印加する電流の大きさが問題とならない場合には、交流電源を磁場形成部Mに直接接続する構成であってもよい。
【0036】
制御部Cが、放電指示部Cbにより、電源回路CP1の通電をオンにするようにスイッチ部8を切り替えて、電源回路CP2の通電をオフにしたままにした場合、
図7(a)に示すように、X方向にのみ交流電圧が生じ、Y方向には交流電圧が生じない。この場合、ギャップ部20c、21cに、
図7(b)に示すように、X方向にのみ往復する磁束(合成磁場)が生じることになる。
【0037】
また、制御部Cが、電流比率調整部Ceによって信号S3を調整用抵抗9に発信することにより、電源回路CP1、CP2の調整用抵抗9の抵抗値を調整し、電圧比(電流比)を調整する。一例として、X方向の第1コイル部3aとY方向の第2コイル部3bとの電圧比(電流比)を、0.6:0.4とする。そして、制御部Cが、放電指示部Cbによって信号S2をスイッチ部8に発信することにより、電源回路CP1、CP2の通電をオンにするようにスイッチ部8を切り替える。すると、
図8(a)に示すように、X方向及びY方向に交流電圧が生じ、その比は0.6:0.4となる。この場合、ギャップ部20c、21cに、
図8(b)に示すように、X方向から約34度(tan
-1(0.4/0.6))傾いて、正負方向に往復する磁束(合成磁場)が生じることになる。
【0038】
また、制御部Cが、放電指示部Cbにより、電源回路CP2の通電をオンにするようにスイッチ部8を切り替えて、電源回路CP1の通電をオフにしたままにした場合、
図9(a)に示すように、Y方向にのみ交流電圧が生じ、X方向には交流電圧が生じない。この場合、ギャップ部20c、21cに、
図9(b)に示すように、Y方向にのみ往復する磁束(合成磁場)が生じることになる。
【0039】
また、制御部Cが、位相差決定部Cfにより、X方向の第1コイル部3aとY方向の第2コイル部3bとの交流電圧の位相差を180度と決定したとする。換言すると、制御部Cが、X方向の第1コイル部3aとY方向の第2コイル部3bとの電圧比を、−0.5:0.5に決定したとする。この場合、制御部Cは、位相差が180度となるタイミング(半周期分の時間差)で、放電指示部Cbによって信号S2を各スイッチ部8に発信して、電源回路CP1、CP2の通電をオンにするようにスイッチ部8を切り替える。この場合、
図10(a)に示すように、X方向及びY方向に交流電圧が生じ、その比は−0.5:0.5となる。換言すると、X方向及びY方向に位相角が180度ずれた交流電圧が生じる。
この場合、ギャップ部20c、21cに、
図10(b)に示すように、X方向から約45度傾いて、正負方向に往復する磁束(合成磁場)が生じることになる。
図10に示すように、第1コイル部3aに印加する電圧と、第2コイル部3bに印加する電圧の位相を異ならせることで、よりバリエーションに富んだ磁場刺激を生体に付与することができる。
【0040】
また、制御部Cが、位相差決定部Cfにより決定した位相差により、X方向のみ反転した交流電圧が生じるようにした上で、放電指示部Cbにより、電源回路CP1の通電をオンにするようにスイッチ部8を切り替えた場合、
図11(a)に示すように、X方向にのみ反転した交流電圧が生じ、Y方向には交流電圧が生じない。この場合、ギャップ部20c、21cに、
図11(b)に示すように、X方向にのみ反転して往復する磁束(合成磁場)が生じることになる。
【0041】
上記のように、インパルス状の交番電流を発生する電源回路を2回路(電源回路CP1、CP2)備え、それぞれの出力が第1コイル部3a(X方向)と第2コイル部3b(Y方向)に接続されている。それぞれの電源回路CP1、CP2の出力のオンオフを制御することにより、合成磁場を、X方向に対して0度(X:Y=1:0)から90度(X:Y=0:1)まで変えることができる。更にいずれか一方の位相を反転させたり、調整用抵抗9を操作して電圧比を調整することにより、合成磁場はX方向に対して90度(X:Y=0:1)以上180度(X:Y=−1:0)まで変えることができる。磁界は交番磁界であるので、0度から180度まで変えられれば全方向を網羅することができる。
【0042】
また、制御部Cが、位相差決定部CfによりX方向の第1コイル部3aとY方向の第2コイル部3bとの交流電圧の位相差を90度と決定したとする。この場合、制御部Cは、位相差が90度となるタイミング(四分の一周期分の時間差)で、放電指示部Cbによって信号S2を各スイッチ部8に発信して、電源回路CP1、CP2の通電をオンにするようにスイッチ部8を切り替える。この場合、
図12(a)に示すように、X方向及びY方向に交流電圧が生じる。
この場合、ギャップ部20c、21cに、
図12(b)に示すように、向きが螺旋状に変動しつつ、コンデンサー7からの放電による減衰により縮径する磁束が生じることになる。
【0043】
また、制御部Cが、位相差決定部CfによりX方向の第1コイル部3aとY方向の第2コイル部3bとの交流電圧の位相差を70度と決定したとする。この場合、制御部Cは、位相差が70度となるタイミングで、放電指示部Cbによって信号S2をスイッチ部8に発信して、電源回路CP1、CP2の通電をオンにするようにスイッチ部8を切り替える。この場合、
図13(a)に示すように、X方向及びY方向に交流電圧が生じる。
この場合、ギャップ部20c、21cに、
図13(b)に示すように、向きが螺旋状に変動しつつ、コンデンサー7からの放電による減衰により縮径する磁束が生じることになる。位相差の違いにより、
図12(b)に示す磁束の形状と比較して、
図13(b)の磁束は、第1象限及び第3象限の値が大きくなる一方、第2象限及び第4象限の値が小さくなっている。このような構成によれば、刺激を付与したい領域に適した形状に、磁気刺激の領域を変化させることができる。
【0044】
図12及び
図13に示すように、X方向の交流電圧とY方向の交流電圧の位相を異なるものとし、その位相の差の絶対値を180度未満の任意の値とすることで、螺旋状の軌跡で磁場刺激を生体に付与することができる。換言すると、X方向の交流電圧とY方向の交流電圧との位相の差の絶対値を0度及び180度以外の値にすることで、螺旋状の軌跡で磁場刺激を生体に付与することができる。
【0045】
上記実施形態に係る磁場発生装置1によれば、磁場発生装置1を移動させることなく、電源回路の制御だけで、磁場を印加する対象物の平面に対して、様々な方向の磁場を容易に印加することができる。そして、平面上あらゆる方向の磁場を印加できることから、磁場を印加する対象物の組織に対して均等に磁場を印加することができ、磁場印加の効果を最大限にすることができる。
【0046】
<第1変形例>
上記実施形態に係る磁場形成部Mのコア2は、角張ったU字型の第1コア部20と第2コア部21とが組み合わされて構成されていたが、本発明はこのような構成のものに限定されない。
次に、第1変形例に係るコア22を備える磁場形成部M1を、
図14から
図16を主に参照して説明する。
図14は、第1変形例に係る磁場形成部M1の正面図、
図15は、第1変形例に係る磁場形成部M1の平面図、
図16は、第1変形例に係るコア22の上側斜視図である。
【0047】
(磁場形成部について)
磁場形成部M1は、
図14及び
図15に示すように、コア22と、コア22の一部に巻回されたコイル23と、から構成されている。
(コアについて)
本変形例に係るコア22は、
図16に示すように、後述する第1コイル部23a及び第2コイル部23bの二対が巻回される4本(二対)の脚部22bと、脚部22b同士を接続するベース部22aと、を備える。二対の脚部22bは、断面矩形状に形成されており、共通のベース部22aの上面から上方に延在している。
ここで、第1コイル部23aと第2コイル部23bの二対が巻回される機能面から二対の脚部22bというが、本例に係る4本(二対)の脚部22bは、同一の形状を有し、ベース部22aの四隅の上方に均等に配設されている。
コア22は、金属磁性粉末を樹脂と共に圧縮成形した方向性のない圧粉磁心、あるいはフェライト磁性体で形成されており、板状の磁性体であるベース部22aの上面の四隅から、棒状の磁性体である4本の脚部22bを上方に突出するように成形したものである。
【0048】
上記のように、共通のベース部22aから二対の脚部22bが延在していることで、上記実施形態に係る、組み合わせられて構成されるコア2と比較して、コア22を安定した形状にすることができる。
このように形成されたコア22は、対角方向に対向する一対の脚部22bを1つの磁気回路として、2つの磁気回路が形成されており、磁気回路の一部は共有され、磁気回路は内部で直交している。
【0049】
特に、4本(二対)の脚部22bのうち隣接する脚部22bは、互いに平行に延在して対向する対向面22dを有する。
このように、隣接する脚部22bが、平行に延在して対向する対向面22dを有し、脚部22bの角部分が対向していないことで、これらの間に配設されるコイル23として幅広のコイルを使用することが可能となる。このため、コイル23の直流抵抗を下げることができるため、その性能を高めることができる。さらに、隣接する脚部22bのそれぞれに巻回されたコイル23同士を密着して配設しやすくなり、磁束漏れを抑制して、磁束密度を高めることができる。
【0050】
なお、対向面22dは、本例に係る隣接関係にある脚部22bの全てに設けられていると、全体的として密着して配設することができるため好適であるが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、4本の脚部22bの一方向に延在する法線を有する対向面22dのみが互いに平行に延在していてもよい。このような構成であっても、少なくとも一方向において密着して配設することができるため、互いに平行な対向面22dを有しないものと比較して、磁束漏れを抑制して、磁束密度を高めることができる。
【0051】
(コイルについて)
コイル23は、一例として平角線の絶縁被覆銅線で形成されたエッジワイズコイルであり、対角の位置にある一対の脚部22bに巻回された第1コイル部23aと、他の対角の脚部22bに巻回された第2コイル部23bと、で構成されている。
第1コイル部23aは、一対の脚部22bに巻回される2個の螺旋部23aaと、螺旋部23aaの底部を連結する連結部23abと、によって構成されている。第1コイル部23aは、2個の螺旋部23aaと連結部23abとによって、底面視8の字状に形成されている。2個の螺旋部23aaは、磁路の閉ループ方向が同一である巻線方向で、
図15に示すように、一対の脚部22bのそれぞれに巻回されている。
【0052】
同様に、第2コイル部23bは、他の一対の脚部22bに巻回される2個の螺旋部23baと、螺旋部23baの底部を連結する連結部23bbと、によって構成されている。第2コイル部23bは、2個の螺旋部23baと連結部23bbとによって、底面視8の字状に形成されている。2個の螺旋部23baは、磁路の閉ループ方向が同一である巻線方向で、
図15に示すように、他の一対の脚部21bのそれぞれに巻回されている。
【0053】
特に、第1コイル部23a及び第2コイル部23bのそれぞれは、矩形状に巻回された巻線によって形成されて、その内縁に断面矩形状の孔23cが形成されており、孔23cに二対の脚部22bのそれぞれが通されていることで二対の脚部22bに取り付けられている。
このような構成によれば、第1コイル部23aと第2コイル部23b、並びに第1コイル部23a及び第2コイル部23bと二対の脚部22bとを密着させ、磁束漏れを抑制することができる。
【0054】
<第2変形例>
上記実施形態に係る磁場発生装置1は、
図4に示すように、直流電源4をそれぞれ備える2回路の電源回路CP1、CP2を含んで構成されていたが、本発明はこのような構成に係るものに限定されない。
次に、第2変形例に係る生体刺激用磁場発生装置(磁場発生装置1A)について、
図17〜
図19を主に参照して説明する。
図17は、第2変形例に係る磁場発生装置1Aの構成を説明する説明図である。
図18は、パルスごとに交番電流を流す端子T1、T2を選択する機能を有する制御部の機能図、
図19は、第1コイル部3a及び第2コイル部3bに供給する電流の割合を決定する機能を有する制御部Cの機能図である。
【0055】
生体刺激用磁場発生装置(磁場発生装置1A)は、コイル3に交番電流を供給可能とするように、直流電源4を1つ備える1台の電源回路(第1回路C1及び第2回路C2から構成される電源回路CP1)と、交番電流の供給を制御する制御部Cと、電源回路における1個の電流の出力を切り替えるスイッチ(スイッチ部8)と、を備える。
制御部Cは、1パルス又は数パルスごとに交番電流を流す対象を第1コイル部3aと第2コイル部3b(X方向)とにスイッチ部8(Y方向)で切り替える。
具体的には、制御部Cは、交番電流のパルスをカウントするカウンタCcのカウント値を取得して、第1コイル部3aの端子T1に交番電流を流すか、第2コイル部3bの端子T2に交番電流を流すかを選択するT1、T2選択部Cgを備える。制御部Cは、T2選択部Cgの選択により、第1コイル部3aの端子T1又は第2コイル部3bの端子T2に交番電流を流すように、スイッチ部8に対して信号S4を発信する。このようにして、時分割により、インパルス状の交番電流を、第1方向(X方向)の磁場と第2方向(Y方向)の磁場を交互に生じさせる。
【0056】
ここで、「交互」とは、磁場の発生のタイミングが異なることを意味し、磁場が完全に異なるタイミングで生じているものに限定されず、一部同じタイミングで生じているものであってもよい。
また、カウンタCcは、制御部Cの外部に設けられるものであっても、内部に設けられるものであってもよい。
【0057】
このような構成によれば、パルスごとに電流を流す対象を切り替えることで、電源回路を複数必要とせず、異なる方向の磁場を印加する際の同期が容易となる。さらに、出力電流の分割と位相反転の制御を1パルス又は数パルスごとに行うことによって、磁場発生装置1Aを移動するのではなく、磁場の印加方向を変えたり、複数の方向の磁場を連続して印加することができる。
【0058】
上記各コイル部3a、3bへの交番電流の印加間隔は、各コイル部3a、3bの消磁時間よりも短いと好ましい。このような構成であれば、各コイル部3a、3bの磁場の発生タイミングが重なることになるため、励磁した各コイル部3a、3bの磁場同士を足し合わせる(合成する)ことができる。
なお、制御部Cは、パルスごとに出力電流の制御を行うことの他に、時間ごとに出力電流の制御を行うようにしてもよい。
【0059】
その他、制御部Cは、1台の電気回路(第1回路C1及び第2回路C2から構成される電源回路CP1)から生じた交番電流を、第1コイル部3a(X方向)と第2コイル部3b(Y方向)に対して供給する割合を決定する電流割合決定部Chを備えるものでもよい。
例えば、制御部Cは、電流割合決定部Chによって決定した割合で電流を印加するように、スイッチ部8に対して信号S4を発信する。そして、不図示のトランジスタを備えるスイッチ部8により、第1コイル部3a(X方向)と第2コイル部3b(Y方向)に対して電流を印加するようにしてもよい。
このとき発生する磁場を、分割の割合に応じて、X方向に対して0度(X:Y=1:0)から90度(X:Y=0:1)まで変えることができる。更にいずれか一方の位相を反転させて任意の割合で分割することにより、発生磁場を、X方向に対して90度(X:Y=0:1)以上180度(X:Y=−1:0)まで変えることができる。磁界は交番磁界であるので、0度から180度まで変えられれば全方向を網羅することができる。
【0060】
さらに、磁場発生装置1Aは、
図6に示したものと同様に、生体内部の電位を検出するセンサ(筋電位センサ10)を更に備えるようにしてもよい。
例えば、制御部Cは、電流割合決定部Chにより、センサ(筋電位センサ10)で検出された電位に基づいて、第1コイル部3aに供給する電流と、第2コイル部3bに供給する電流との割合をフィードバック制御により制御する。
このように、制御部Cがフィードバック制御を行うことで、各方向に延在する複数の神経線維に対して、方向を変えて好適に刺激を付与することができる。
【0061】
上記各実施形態は、以下の技術思想のいずれかを包含する。
(1)磁性材料で形成されたコアと、
前記コアの一部に巻回されたコイルと、を備え、
前記コアは、併設された少なくとも二対の脚部を有し、
該二対の脚部のそれぞれに、互いに交差するギャップ部が設けられており、
前記コイルは、前記二対の脚部及び前記ギャップ部のそれぞれとの間で第1磁路を形成する第1コイル部と、第2磁路を形成する第2コイル部と、を有し、
前記第1コイル部と一対の脚部によって前記第1磁路上にある第1方向の磁場を発生させ、前記第2コイル部と他方の一対の脚部によって前記第2磁路上にある第2方向の磁場を発生させ、前記第1方向の磁場と前記第2方向の磁場とを合成した磁場によって生体を刺激することを特徴とする生体刺激用磁場発生装置。
(2)前記コイルに交番電流を供給する電源回路と、
前記交番電流の供給を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記電源回路から前記第1コイル部に供給する前記交番電流の大きさと、前記電源回路から前記第2コイル部に供給する電流の大きさとの比率を制御可能である(1)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(3)生体内部の電位を検出するセンサを更に備え、
前記制御部は、前記センサで検出された電位に基づいて、前記第1コイル部に供給する電流と、前記第2コイル部に供給する電流との比率をフィードバック制御により制御する(2)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(4)前記コイルに交番電流を供給する2回路の電源回路と、
前記交番電流の供給を制御する制御部と、備え、
一方の前記電源回路の出力は、前記第1コイル部と前記第2コイル部の一方、他方の前記電源回路の出力は、前記第1コイル部と前記第2コイル部の他方に接続されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(5)前記第1コイル部に印加する電圧と、前記第2コイル部に印加する電圧と、は位相が異なる(1)から(4)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(6)前記位相の差の絶対値は、180度未満である(5)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(7)前記コイルに交番電流を供給する電源回路と、
前記交番電流の供給を制御する制御部と、
前記電源回路の出力を切り替えるスイッチと、を更に備え、
前記制御部は、1パルス又は数パルスごとに前記交番電流を流す対象を前記第1コイル部と前記第2コイル部とに前記スイッチで切り替えて、前記第1方向の磁場と前記第2方向の磁場を交互に生じさせる(1)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(8)前記コアは、前記各一対の脚部同士を接続する接続部を備え、
前記二対の脚部における前記接続部同士は、ねじれの位置に配置されており、
前記二対の脚部の端面は同一平面上にある(1)から(7)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(9)前記コアは、前記脚部同士を接続するベース部を備え、
前記二対の脚部は、共通の前記ベース部から延在している(1)から(7)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(10)前記二対の脚部のうち隣接する脚部は、互いに平行に延在して対向する対向面を有する(1)から(9)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(11)前記二対の脚部は、断面矩形状に形成されており、
前記第1コイル部及び前記第2コイル部のそれぞれは、矩形状に巻回された巻線によって形成されて、その内縁に断面矩形状の孔が形成されており、該孔に前記二対の脚部のそれぞれが通されていることで前記二対の脚部に取り付けられている(1)から(10)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。