【解決手段】 加速器用高周波カプラは、外導体と、外導体の内周側に設けた内導体と、内導体の内部に内導体の軸線方向に移動自在に設けたロッドと、ロッドの先端部と前記内導体との間を気密に保持するベローズと、内導体の内部に設けて前記ロッドを支持するセラミックス製の支持部材と、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、一実施形態について詳細に説明する。なお、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
まず、
図1〜
図3を参照して、第1実施の形態について説明する。第1実施の形態にかかる加速器用高周波カプラ20は、大型加速器に装着されるものであり、大型加速器では、超伝導化をはかる為、起動時には室温、運転時には液体He(ヘリウム)温度相当になる。
図1に示すように、加速器用高周波カプラ20は、加速器の空洞(キャビティ)側のCold(コールド)側導体部21と、加速器の空洞側から離れたWarm(ウォーム)側導体部23とに区画されている。
Cold側導体部21は、加速器の空洞と同じく超伝導の臨界温度にするために液体He温度相当の極低温に維持される部分であり、高周波が伝送されてくる導波管側(高周波入力側)に向かって本体の温度は常温に近づいていく。
Warm側導体部23は、常温領域である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、Cold側導体部21には、Cold側外導体(外導体)4と、Cold側内導体(内導体)1と、ロッド12と、支持部材13aが設けられている。
Cold側内導体1はCold側外導体4の内周側に設けられている。
Cold側内導体1及びCold側外導体4は、Cold側高周波窓5を介してそれぞれ対応するWarm側内導体6及びWarm側外導体9に連結されている。
Cold側内導体1、Cold側外導体4及びロッド12は金属材製であり、例えばステンレス鋼材製である。
【0011】
Cold側内導体1内は、加速器の空洞内と同じく超高真空(10
-8 Pa(パスカル)相当)が維持されている。Cold側高周波窓5よりも上流側、すなわち高周波が伝送されてくる導波管側に向かって本体の温度は常温に近づいていくが、Warm側導体部23に設けてあるWarm側高周波窓8までのCold側内導体(内導体)1及びWarm側内導体6は液体窒素温度相当に保たれ、Cold側高周波窓5とWarm側高周波窓8の間の空間は超高とはいかなくても相応の真空圧力に保たれている。
加速器用高周波カプラ20は高周波入口部から先端の空洞挿入部までの間で常温から液体He温度まで温度勾配を持つことになるので、特に軸方向の熱収縮に対応できるように、Warm側内導体6及びWarm側外導体9には、Warm側ベローズ7a、7b、10が設けてある。Warm側ベローズ7a、7b間には中間シリンダ14が設けられている。
【0012】
Warm側導体部23にはWarm側ベローズ10の外周側に外導体支持ロッド11が設けてあり、この外導体支持ロッド11でWarm側外導体9支えることにより差圧によって圧壊しないような構成としている。
Cold側内導体1及びWarm側内導体6は、加速器用高周波カプラ20の中心軸Xと同軸に設けており、正面視ドーナツ型円板形状をしたCold側高周波窓5及びWarm側高周波窓8の中心穴部5a、8aにロウ接合されて気密が維持できるようにしてある。
【0013】
ロッド12は、Cold側内導体1及びWarm側内導体6の内部に亘って、これらの軸線X方向に移動自在に設けてある。ロッド12の先端部にはアンテナ部2が設けてある。アンテナ部2は、Cold側内導体1の加速器空洞側端1aから突出して設けてあり、アンテナ部2とCold側内導体1との間にはCold側ベローズ3が気密状態で伸縮自在に取り付けてある。
【0014】
ロッド12には、Cold側内導体1内でロッド12を支持するセラミックス製の支持部材13aが設けてある。
第1実施の形態では、Cold側内導体1において、1つの支持部材13aが、加速器空洞側端1aに近接した位置に配置されている。
支持部材13aはロッド12に固定されている。ここで、支持部材13aの形状及び固定について説明する。
【0015】
図3(b)に示すように、支持部材13aは円盤状のセラミック板材の対向する両側部を直線状に切除して形成してあり、正面視で中央部にロッド12の挿通孔18(
図3(a)参照)が形成してあると共に、外周には円弧部16と直線部17を有する。この外周形状により、Cold側内導体1の内周面1cと直線部17との間に空間19が形成されている。空間19はCold側内導体1内を真空引き用の空間として用いることができる。また、空間19を形成することにより、支持部材13aとCold側内導体1とが接触する場合でも接触面積を少なくでき、摩擦抵抗を低減できる。
また、
図3(a)に示すように、支持部材13aの角部は面取り26がしてあり、Cold側内導体1の内周面1cとの引っ掛かりや傷を防止している。
【0016】
次に、支持部材13aとロッド12の固定について説明する。ロッド12には、その軸線方向で支持部材13aを挟む位置にそれぞれ溝24が形成されており、各溝24にCリング15を嵌め込んで支持部材13aをロッド12に止めている。
【0017】
次に、本実施の形態にかかる加速器用高周波カプラ20の作用効果について、説明する。
図1に示すように、Cold側内導体1及びWarm側内導体6には、先端部にアンテナ部2を設けたロッド12が軸線X方向に移動自在に設けてあり、加速器用高周波カプラ20を大型加速器に装着したときに、ロッド12を軸線X方向に移動してアンテナ部2の位置を調整する。
ロッド12には、Cold側内導体1内に配置した支持部材13aを設けているので、ロッド12の撓みを防止できる。
特に、本実施の形態では、ロッド12は、アンテナ部2とCold側ベローズ3の重量を受けるが、支持部材13aによりCold側内導体1に支持されるので、このような偏心した荷重がかかる場合でもロッド12の撓みを確実に防止できる。
【0018】
図3(a)に示すように、支持部材13aはロッド12に固定してあり、Cold側内導体1内を移動可能であるから、ロッド12を移動してアンテナ部2の位置決めをした後にも、ロッド12やCold側内導体1の伸縮の影響を受けない。
支持部材13aはロッド12に形成した溝24にCリング15を嵌めて固定しているので、セラミック材であっても鋼材製のロッド12に容易に固定できる。
図3(b)に示すように、支持部材13aは、正面視において外周に円弧部16と直線部17を有する形状として、Cold側内導体1の内周面1cと直線部17との間に真空引き用の空間19を形成しているので、支持部材13aが真空引きの邪魔にならない。支持部材13aはCold側内導体1の内周面1cとの間に空間19を形成することにより、支持部材13aとCold側内導体1とが接触する場合でも接触面を少なくでき、摩擦抵抗を低減できる。
支持部材13aは、セラミックス製としているので、大電力高周波による高い温度の発熱があってもロッド12と融着しないと共に冷却時の変形が少ない。
【0019】
以下に他の実施の形態について説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には、同一の符号を付して、その部分の詳細な説明を省略する。
図4を参照して、第2実施の形態について説明する。
この第2実施の形態では、Cold側内導体(内導体)1には、その加速器空洞側端1aと高周波入力側端1bとの間に間隔をあけて2つの支持部材13a、13bを設けている。
支持部材13a、13bはいずれも上述した第1実施の形態と同様にしてCリング15(
図3参照)でロッド12に固定されている。
【0020】
この第2実施の形態によれば、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができると共に、ロッド12は複数の支持部材13a、13bで支持しているので、ロッド12の変形防止を更に高めることができる。
更に、支持部材13bは、Cold側内導体(内導体)1の高周波入力側端1bから離れた位置に設けているので、ロッド12に伸縮が生じても高周波入力側端1bが干渉するのを防止できる。
【0021】
図5及び
図6を参照して、第3実施の形態について説明する。
この第3実施の形態では、第1実施の形態と同様にCold側内導体(内導体)1内には1つの支持部材13aを設けているが、支持部材13aはCold側内導体(内導体)1の内周面1cに固定しており、支持部材13aにロッド12を挿通していることが第1実施の形態と異なっている。
即ち、
図6に示すように、支持部材13aの固定は、Cold側内導体(内導体)1の内周面1cに間隔をあけて形成した一対の溝27、27を形成して、各溝27、27にCリング29を嵌めて支持部材13aを固定している。
ロッド12は支持部材13aの中心に形成した挿通孔18を移動自在にしてある。
この第3実施の形態によれば、第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0022】
図7を参照して、第4実施の形態について説明する。
この第4実施の形態では、Cold側内導体(内導体)1に2つの支持部材13a、13bを固定していることが第3実施の形態と異なっている。
一方の支持部材13aは、第3実施の形態と同様に、Cold側内導体(内導体)1の内周面1cに形成した各溝27、27にCリング29を嵌めて支持部材13aを固定している(
図6参照)。
図7に破線で抜き出して示すように、他方の支持部材13bは、Cold側内導体(内導体)1の高周波入力側端1bに加速器空洞側から当接して配置し、高周波入力側端1bから支持部材13bの巾寸法分離れた位置に形成した溝33にCリング35を嵌めて固定してある。即ち、支持部材13bは、Cold側内導体(内導体)1の高周波入力側端1bとCリング35とに挟まれて固定されている。
尚、他方の支持部材13bにも一方の支持部材13aと同様に、その中心にロッド12が挿通する挿通孔37が形成されている。
この第4実施の形態によれば、上述した第2実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0023】
上述した一実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0024】
例えば、上述した各実施の形態において、支持部材13a、13bの形状は正面視、多角形にして、多角形の辺部がCold側内導体(内導体)1の内周面1cとの間に空間19を形成するようにしても良い。
第1及び第2実施の形態において、支持部材13a、13bをロッド12に固定する方法は、キー溝を形成してキー溝に楔を嵌めて固定しても良い。同様に、第3及び第4の実施形態においても、Cold側内導体(内導体)1の内周面1cにキー溝を形成してキー溝に楔を嵌めて固定しても良い。