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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-62732(P2020-62732A)
(43)【公開日】2020年4月23日
(54)【発明の名称】放電加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23H 7/02 20060101AFI20200331BHJP
   B23H 1/02 20060101ALI20200331BHJP
【FI】
   B23H7/02 Z
   B23H1/02 D
   B23H7/02 S
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-197256(P2018-197256)
(22)【出願日】2018年10月19日
(11)【特許番号】特許第6558818号(P6558818)
(45)【特許公報発行日】2019年8月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】坂口 昌志
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB05
3C059CB02
3C059CC07
3C059CE06
3C059CF05
(57)【要約】
【課題】加工精度の低下が生じてから対処するまでに要する時間を抑えることができる放電加工装置を提供すること。
【解決手段】放電加工によって被加工物を加工する放電加工装置であって、所定時間毎に放電加工装置の温度を測定する温度センサと、温度センサの測定結果から、現温度環境下にて放電加工を行った場合に得られる被加工物の加工精度を判定するための指標となる温度環境診断指数の値を算出し、温度環境診断指数の値と所望の加工精度を得るために推奨される温度環境診断指数の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて放電加工装置周辺の現温度環境が所望の加工精度を得るために適当か否かの度合を示す判定結果を出力する制御装置と、基準値および判定結果が記憶された記憶部と、を備え、温度環境診断指数は、温度と時間の変数を含む指数である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電加工によって被加工物を加工する放電加工装置であって、
所定時間毎に前記放電加工装置の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサの測定結果から、現温度環境下にて放電加工を行った場合に得られる前記被加工物の加工精度を判定するための指標となる温度環境診断指数の値を算出し、前記温度環境診断指数の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記温度環境診断指数の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記放電加工装置周辺の現温度環境が所望の加工精度を得るために適当か否かの度合を示す判定結果を出力する制御装置と、
前記基準値および前記判定結果が記憶された記憶部と、
を備え、
前記温度環境診断指数は、温度と時間の変数を含む指数であることを特徴とする放電加工装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記判定結果に基づき算出された1つの総合判定結果を出力することを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記判定結果を改善するための対処方法が記憶され、
前記制御装置は、算出された前記判定結果に対応する前記対処方法を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記温度環境診断指数は、前記放電加工装置の基準温度の所定期間における平均値である平均基準温度変化幅、前記放電加工装置の上部と下部の温度差の最大最小差の所定期間における平均値である平均上下温度差変動幅、および、前記基準温度の最大変化率の所定期間における平均値である平均基準温度変化率のうちの少なくとも1つ以上を含んでいることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の放電加工装置。
【請求項5】
前記制御装置は、一年を通して最も前記基準温度の平均値が高い所定期間の前記基準温度差の平均値と、最も前記基準温度の平均値が低い所定期間の前記基準温度の平均値との差である平均基準温度差を算出し、前記平均基準温度差の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均基準温度差の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて加工精度の低下が発生する可能性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の放電加工装置。
【請求項6】
前記制御装置は、所定期間における前記放電加工装置の平均稼働率を算出し、前記平均稼働率の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均稼働率の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記判定結果の信頼性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の放電加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工によって被加工物を加工する放電加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工装置や形彫り放電加工装置などの放電加工装置は、周辺の環境および放電加工装置そのものの調整が行われた状態で所望の場所に設置される。そのため、放電加工装置を設置した当初は、人為的な要因以外で加工精度の低下が生じる可能性は低い。
【0003】
しかしながら、当該装置の設置年数がある程度経過すると、放電加工装置周辺の温度環境の変化に起因する熱変位や設置誤差など、放電加工装置を設置した当初には想定する必要のなかった様々な要因によって、予期しない加工精度の低下が生じることがある。
【0004】
そこで、例えば、温度環境の変化に起因する熱変位によって生じた加工精度の低下に対して、特許文献1では、発熱源の影響を受けて互いに時定数の異なる温度変化をする少なくとも2箇所における機体の温度変化を検出し、この検出された各温度変化を合成して、工作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する合成温度変化を演算し、この合成温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて加工誤差を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2838198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、設置年数が経過した放電加工装置に発生する加工精度の低下の要因は、上述したように様々である。従って、特許文献1に記載のような具体的な対処を行う以前に、加工精度の低下が発生した原因を特定することが非常に困難となる。
【0007】
そのため、作業者が現地に出向いて一つひとつ原因を調査していかなければならず、問題が生じてから原因を特定して対処するまでに長時間を要していた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、加工精度の低下が生じてから対処するまでに要する時間を抑えることができる放電加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の放電加工装置は、放電加工によって被加工物を加工する放電加工装置であって、所定時間毎に前記放電加工装置の温度を測定する温度センサと、前記温度センサの測定結果から、現温度環境下にて放電加工を行った場合に得られる前記被加工物の加工精度を判定するための指標となる温度環境診断指数の値を算出し、前記温度環境診断指数の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記温度環境診断指数の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記放電加工装置周辺の現温度環境が所望の加工精度を得るために適当か否かの度合を示す判定結果を出力する制御装置と、前記基準値および前記判定結果が記憶された記憶部と、を備え、前記温度環境診断指数は、温度と時間の変数を含む指数であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、加工精度の低下が生じた際、温度環境診断指数を算出して判定することにより、現温度環境の加工精度への影響度を容易に把握することができる。これにより、加工精度の低下が生じる主要因の一つである温度環境が原因となって加工精度の低下が生じたか否かの切り分けを即座に行うことができる。より具体的には、温度環境診断指数の判定結果が芳しくない場合、加工精度の低下の原因は、温度環境である可能性が高い。従って、作業者は、放電加工装置周辺の温度環境の改善を試みる。また、例えば、温度環境診断指数の判定結果が良好である場合、加工精度の低下の原因は、温度環境ではない可能性が高い。従って、作業者は、温度環境以外の放電加工装置周辺の環境および放電加工装置そのものの状態確認を試みる。これにより、従来のように加工精度が低下した原因を一から調査していく場合と比較して、加工精度の低下が生じる原因を限定することができるため、問題が生じてから原因を特定して対処するまでの時間を抑えることができる。
【0011】
第2の発明の放電加工装置は、前記第1の発明において、前記制御装置は、前記判定結果に基づき算出された1つの総合判定結果を出力することを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、制御装置は、判定結果に基づき算出された1つの総合判定結果を出力する。これによれば、1つの総合判定結果のみを確認することにより、加工精度の低下の原因が温度環境なのか否かをより簡潔に一目で判断することができる。
【0013】
ここで、例えば、加工精度の低下の原因が設置誤差である場合、加工の際に生じるずれ量は一定の値となるため対処が容易である。それに対して、加工精度の低下の原因が温度環境に起因する熱変位である場合、加工の際に生じるずれ量は装置本機の温度変化に伴って刻一刻と変化するため対処が難しい。
【0014】
第3の発明の放電加工装置は、前記第1または2の発明において、前記記憶部には、前記判定結果を改善するための対処方法が記憶され、前記制御装置は、算出された前記判定結果に対応する前記対処方法を出力することを特徴とするものである。
【0015】
本発明では、記憶部には、判定結果を改善するための対処方法が記憶され、制御装置は、算出された判定結果に対応する対処方法を出力する。判定結果(および総合判定結果)に加えて、これまでの経験則に基づく温度環境の具体的な改善方法を提示することにより、特に対処が難しい温度環境によって生じた加工精度の低下に対して素早く的確に対応することができる。
【0016】
第4の発明の放電加工装置は、前記第1〜3の何れかの発明において、前記温度環境診断指数は、前記放電加工装置の基準温度の所定期間における平均値である平均基準温度変化幅、前記放電加工装置の上部と下部の温度差の最大最小差の所定期間における平均値である平均上下温度差変動幅、および、前記基準温度の最大変化率の所定期間における平均値である平均基準温度変化率のうちの少なくとも1つ以上を含んでいることを特徴とするものである。
【0017】
本発明では、温度環境診断指数は、放電加工装置の基準温度の所定期間における平均値である平均基準温度変化幅、放電加工装置の上部と下部の温度差の最大最小差の所定期間における平均値である平均上下温度差変動幅、および、基準温度の最大変化率の所定期間における平均値である平均基準温度変化率のうちの少なくとも1つ以上を含んでいる。
【0018】
第5の発明の放電加工装置は、前記第1〜4の何れかの発明において、前記制御装置は、一年を通して最も前記基準温度の平均値が高い所定期間の前記基準温度差の平均値と、最も前記基準温度の平均値が低い所定期間の前記基準温度の平均値との差である平均基準温度差を算出し、前記平均基準温度差の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均基準温度差の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて加工精度の低下が発生する可能性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とするものである。
【0019】
本発明では、制御装置は、一年を通して最も基準温度の平均値が高い所定期間の基準温度差の平均値と、最も基準温度の平均値が低い所定期間の基準温度の平均値との差である平均基準温度差を算出し、平均基準温度差の値と所望の加工精度を得るために推奨される平均基準温度差の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて加工精度の低下の発生可能性の度合を示す判定結果を出力する。これにより、現温度環境下において加工精度の低下が発生する可能性を判断することができる。
【0020】
第6の発明の放電加工装置は、前記第1〜5の何れかの発明において、前記制御装置は、所定期間における前記放電加工装置の平均稼働率を算出し、前記平均稼働率の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均稼働率の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記判定結果の信頼性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とするものである。
【0021】
本発明では、制御装置は、所定期間における放電加工装置の平均稼働率を算出し、平均稼働率の値と所望の加工精度を得るために推奨される平均稼働率の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて判定結果の信頼性の度合を示す判定結果を出力する。これにより、上記判定結果の信頼度を判断することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加工精度の低下が生じてから対処するまでに要する時間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係るワイヤ放電加工装置の装置本機の全体概略図である。
図2】3つの温度環境診断指数、装置本機稼働率および平均基準温度差の判定を行う各装置の制御を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、ワイヤ放電加工装置の装置本機100は、走行装置1と、結線装置2と、ワイヤガイドユニット3と、図示しない加工電源装置および相対移動装置と、排出装置4と、制御装置8などを有している。
【0025】
走行装置1、結線装置2、ワイヤガイドユニット3、および、相対移動装置などが設置された部位を装置本機100と称する。装置本機100は、結線装置2を経てワイヤガイドユニット3へとワイヤ電極WEを導く走行装置1などが設けられたヘッド10と、被加工物WPが加工される加工槽および被加工物WPに対してワイヤ電極WEを相対移動させる相対移動装置などが設けられたベッド20と、ヘッド10とベッド20とを接続するコラム部30とからなる。装置本機100は、上から順に、同装置本機100の上部に設けられたヘッド10、同装置本機100の中部に設けられたコラム部30、同装置本機100の下部に設けられたベッド20の順に並ぶように配置されている。
【0026】
ヘッド10、コラム部30およびベッド20には、装置本機100の上部、中部、下部の温度をそれぞれ所定時間毎に継続的に測定する温度センサ5,6,7が取り付けられている。なお、装置本機100の中部に位置するコラム部30に設置された温度センサ6によって測定された温度を装置本機100の基準温度とする。
【0027】
走行装置1は、供給装置11と、張力装置12とからなる。供給装置11は、ワイヤ電極WEを加工間隙GPに供給する手段である。供給装置11は、リール11Aと、ワイヤボビン11Bと、サーボプーリ11Fと、ブレーキ11Mとを含む。ただし、ワイヤボビン11Bは、所定長のワイヤ電極WEを軸心に巻き回して貯留している交換可能な消耗品である。ワイヤボビン11Bは、リール11Aに装填されて回転する。
【0028】
リール11Aは、張力装置12がワイヤボビン11Bからワイヤ電極WEを連続的に引き出す速度に合わせて回転する。ブレーキ11Mは、例えば、トルクモータまたはパウダクラッチである。ブレーキ11Mは、リール11Aの回転軸に直結して設けられ、リール11Aの回転方向に対して反対方向にリール11Aが回転可能な範囲で負荷をかけることによってワイヤボビン11Bの空転を阻止する。サーボプーリ11Fは、自重によってワイヤ電極WEの張力の変動に合わせて上下に移動して、ワイヤボビン11Bから供給される走行するワイヤ電極WEの振動を吸収する。
【0029】
張力装置12は、ワイヤ電極WEをワイヤボビン11から繰り出して順次加工間隙GPに送り出す手段である。また、張力装置12は、回転装置14との間で加工間隙GPに供給されるワイヤ電極WEに所定の張力を付与する手段である。張力装置12は、駆動ローラ12Aと、従動ローラ12Bと、ピンチローラ12Cと、サーボモータ12Mとを含む。歪ゲージ12Tは、張力検出器である。リミットスイッチ12Lは、断線検出器である。
【0030】
駆動ローラ12Aは、ワイヤ電極WEをワイヤボビン11Bから引き出して加工間隙GPに送り出す送出ローラと、ワイヤ電極WEに所定の張力を付与するテンションローラとを兼用する。ワイヤ電極WEは、従動ローラ12Bとピンチローラ12Cとによって駆動ローラ12Aの外周を遠回りするように巻き回される。駆動ローラ12Aは、サーボモータ12Mによって回転する。制御装置8は、歪ゲージ12Tによって検出される張力に基づいてサーボモータ12Mの回転速度を制御して、張力を一定に維持する。
【0031】
結線装置2は、ワイヤ電極WEを張架するための手段である。実施の形態のワイヤ放電加工装置の結線装置2は、送出ローラ2Aと、ガイドパイプ2Bと、カッタ2Cとを含んでなる。送出ローラ2Aは、送出モータ2Mによって回転してワイヤ電極WEを送り出す手段である。ガイドパイプ2Bは、ワイヤ電極WEの先端を上側ワイヤガイドユニット3Aまで案内する手段である。ガイドパイプ2Bは、ガイドパイプ保持箱2B1に内包されている。カッタ2Cは、ワイヤ電極WEを切断する手段である。カッタ2Cは、ワイヤ電極WEを溶断する加熱ローラのような他のワイヤ電極WEを切断する手段に置き換えることができる。
【0032】
ワイヤガイドユニット3は、上側ワイヤガイドユニット3Aと、下側ワイヤガイドユニット3Bとからなる。上側ワイヤガイドユニット3Aは、ワイヤ電極WEを位置決めして案内するワイヤガイド3A1と、ワイヤ電極WEに給電する通電体3A2と、被加工物WPと被加工物WPから切り抜かれた中子WP1との間の加工間隙1GPに対してワイヤ電極WEに同軸に下方向に向けて加工液噴流を供給する噴流ノズル3A3とを一体化してなるアセンブリである。下側ワイヤガイドユニット3Bは、ワイヤ電極WEを位置決めして案内するワイヤガイド3B1と、被加工物と被加工物から切り抜かれた中子との間の加工間隙GPに対してワイヤ電極WEに同軸に上方向に向けて加工液噴流を供給する噴流ノズル3B2とを一体化してなるアセンブリである。
【0033】
加工電源装置は、加工間隙GPに所望の波形とピーク電流値を有する放電電流パルスを連続して供給する手段である。相対移動装置は、ワイヤ電極WEと被加工物WPとを水平2軸方向に相対移動させる手段である。相対移動装置は、ワイヤ電極WEと被加工物WPに対して傾斜させるテーパ装置を含む。
【0034】
排出装置4は、加工に供されて消耗した使用済のワイヤ電極WEを加工部位から回収する手段である。排出装置4は、被加工物WPから垂直に張架されるワイヤ電極WEの送行経路に対してオフセットを与えるとともに送り出されるワイヤ電極WEの進行方向を転換するアイドリングローラ4Aと、ワイヤ電極WEを流体で搬送する搬送装置4Bと、ワイヤ電極WEを巻き取る巻取ローラ4Cと、使用済のワイヤ電極WEを回収するバケット4Dとを含む。
【0035】
制御装置8は、ワイヤ放電加工装置の動作を制御する手段である。制御装置8と、走行装置1、結線装置2、加工電源装置および相対移動装置との間は、それぞれ1以上の信号線で接続されている。制御装置8は、演算部8bの出力部から送られた命令に基づき、予め決められているシーケンス動作を被加工物WPに対して実行させる。
【0036】
ところで、ワイヤ放電加工装置の設置年数がある程度経過すると、周辺の温度環境の変化に起因する装置本機100の熱変位や設置誤差など、ワイヤ放電加工装置を設置した当初には想定する必要のなかった様々な要因によって、予期しない加工精度の低下が生じることがある。このような場合、出来るだけ早急に対処して問題を解決する必要がある。しかしながら、設置年数が経過したワイヤ放電加工装置に発生する加工精度の低下の要因は、上述したように様々であり、具体的な対処を行う以前に、問題が発生した原因を特定することが非常に困難である。そのため、作業者が現地に出向いて一つひとつ原因を調査していかなければならず、問題が生じてから原因を特定して対処するまでに長時間を要していた。
【0037】
そこで、本実施形態では、装置本機100の上部、中部、下部にそれぞれ取り付けられた温度センサ5,6,7による温度測定結果から算出される温度環境診断指数を用いて、現温度環境が所望の加工精度を得るために適当か否かを判定することにより、加工精度が低下した原因を限定する。以下、温度環境診断指数について詳細に説明する。
【0038】
温度環境診断指数は、現温度環境下にてワイヤ放電加工を行った際に得られる被加工物WPの加工精度を判定するための指標である。温度環境診断指数は、温度と時間の変数を含む指数として表される。温度環境診断指数は、例えば、平均基準温度変化幅と、平均上下温度差変動幅と、平均基準温度変化率である。
【0039】
平均基準温度変化幅は、一日毎の基準温度の最大変化幅の各月の平均値である。平均基準温度変化幅は、ΣΔTを各日の装置本機100の中部に位置するコラム部30に取り付けられた温度センサ6によって測定される基準温度の最大変化幅のひと月当たりの合計値とし、Dを当該月の装置本機100の可動日数として、(ΣΔT)/Dと表される。
【0040】
平均上下温度差変動幅は、一日毎の装置本機100の上部と下部の温度の最大最小差の各月の平均値である。平均上下温度差変動幅は、ΣΔ(Tu−Tb)を各日の装置本機100の上部に位置するヘッド10部に取り付けられた温度センサ5によって測定される温度と装置本機100の下部に位置するベッド20部に取り付けられた温度センサ7によって測定される温度との最大最小差のひと月当たりの合計値とし、Dを当該月の装置本機100の可動日数として、{ΣΔ(Tu−Tb)}/Dと表される。
【0041】
平均基準温度変化率は、一日毎の基準温度の最大変化率の各月の平均値である。平均基準温度変化率は、ΣMAXΔThを各日の基準温度の1時間当たりの最大温度変化のひと月当たりの合計値とし、Dを当該月の装置本機100の可動日数として、(ΣMAXΔTh)/Dと表される。
【0042】
本実施形態では、上述した計算式に基づき算出される3つの温度環境診断指数と、所望の加工精度を得るために推奨される各温度環境診断指数の基準値との差分から、3つの温度環境診断指数に対する判定結果をそれぞれ算出する。そして、それらの判定結果に基づき算出される総合判定結果から加工精度への温度環境の影響度を測ることにより、加工精度が低下した原因を限定する。
【0043】
温度環境診断指数の判定結果および総合判定結果は、評価の高い順に、A判定、B判定、C判定の3つのうちの何れかとして提示される。
【0044】
総合判定結果としてA判定が提示された場合、作業者は、「現温度環境は所望の加工精度を得るために好ましい環境であり、加工精度への影響度は低い」と判断し、温度環境を除くワイヤ放電加工装置周辺の環境の改善およびワイヤ放電加工装置そのものの状態確認を試みる。また、総合判定結果としてB判定が提示された場合、作業者は、「現温度環境は所望の加工精度を得るために改善の余地がある環境であり、加工精度への影響度は低くもなく高くもない」と判断し、温度環境を含むワイヤ放電加工装置周辺の環境の改善および放電加工装置そのものの状態確認を試みる。また、総合判定結果としてC判定が提示された場合、作業者は、「現温度環境は所望の加工精度を得るために改善すべき環境であり、加工精度への影響度は高い」と判断し、ワイヤ放電加工装置周辺の温度環境の改善を試みる。
【0045】
所望の加工精度を±5μmに設定した場合の温度環境診断指数の基準値と、算出された温度環境診断指数と基準値との差分に対応する判定結果を以下に示す。
【0046】
平均基準温度変化幅の基準値は、2度以下に設定される。算出された平均基準温度変化幅が2度以下のとき、すなわち、算出された平均基準温度変化幅と基準値との差分が0のとき、平均基準温度変化幅の判定結果はA判定となる。算出された平均基準温度変化幅が2度より大きく3度より小さいとき、すなわち、算出された平均基準温度変化幅と基準値との差分が0より大きく1度より小さいとき、平均基準温度変化幅の判定結果はB判定となる。算出された平均基準温度変化幅が3度以上のとき、すなわち、算出された平均基準温度変化幅と基準値との差分が1度以上のとき、平均基準温度変化幅の判定結果はC判定となる。
【0047】
平均上下温度差変動幅の基準値は、2度以下に設定される。算出された平均上下温度差変動幅が2度以下のとき、すなわち、算出された平均上下温度差変動幅と基準値との差分が0のとき、平均上下温度差変動幅の判定結果はA判定となる。算出された平均上下温度差変動幅が2度より大きく3度より小さい値のとき、すなわち、算出された平均上下温度差変動幅と基準値との差分が0より大きく1度より小さいとき、平均上下温度差変動幅の判定結果はB判定となる。算出された平均上下温度差変動幅が3度以上のとき、すなわち、算出された平均上下温度差変動幅と基準値との差分が1度以上のとき、平均上下温度差変動幅の判定結果はC判定となる。
【0048】
平均基準温度変化率の基準値は、1度以下に設定される。算出された平均基準温度変化率が1度以下のとき、すなわち、算出された平均基準温度変化率と基準値との差分が0のとき、平均基準温度変化率の判定結果はA判定となる。算出された平均基準温度変化率が1度より大きく3度より小さい値のとき、すなわち、算出された平均基準温度変化率と基準値との差分が0より大きく2度より小さいとき、平均基準温度変化率の判定結果はB判定となる。算出された平均基準温度変化率が3度以上のとき、すなわち、算出された平均基準温度変化率と基準値との差分が2度以上のとき、平均基準温度変化率の判定結果はC判定となる。
【0049】
総合判定結果は、例えば、A判定を3ポイント、B判定を2ポイント、C判定を1ポイントとして、3つの温度環境診断指数の判定結果の合計ポイントによって算出される。より具体的には、3つの温度環境診断指数の判定結果の合計ポイントが8以上9以下のとき、総合判定結果はA判定となる。3つの温度環境診断指数の判定結果の合計ポイントが5以上7以下のとき、総合判定結果はB判定となる。3つの温度環境診断指数の判定結果の合計ポイントが3以上4以下のとき、総合判定結果はC判定となる。
【0050】
また、本実施形態では、総合判定結果に加えて、3つの温度環境診断指数のうち、判定結果がC判定となったものに対して、現温度環境を改善するための具体的な対処方法を示すコメントを提示する。以下、C判定となった場合に提示されるコメントの一例を示す。
【0051】
平均基準温度変化幅の判定結果がC判定となった場合に提示されるコメントは、例えば、「一日の温度変化が大きい傾向にあります。補正機能の最適化を行いますか?→Yes/No」である。なお、補正機能とは、温度センサ5,6,7が検出した温度データから機械本機100各部の伸び率を推算し、それを打ち消す方向に機械本機100の軸の位置を補正する機能である。
【0052】
平均上下温度差変動幅の判定結果がC判定となった場合に提示されるコメントは、例えば、下部の温度が安定しており、上部の温度変動が大きい場合、「上空の気温変化が大きいです。ダクト設置・換気扇設置をご検討ください。」であり、上部の温度が安定しており、下部の温度変動が大きい場合、「足元の気温変化が大きいです。扉の開閉に注意し、ついたてやビニルカーテンの設置をご検討ください。」である。
【0053】
平均基準温度変化率の判定結果がC判定となった場合に提示されるコメントは、例えば、「急激な室温変化が見られます。補正機能の最適化をおこないますか。→Yes/No」である。
【0054】
また、本実施形態では、過去一年間を通しての温度環境の加工精度への影響度を示す指標である平均基準温度差、並びに、3つの温度環境診断指数および平均基準温度差の判定結果の信頼度を示す指標である装置本機稼働率について判定を行う。
【0055】
平均基準温度差は、一年を通して最も平均基準温度が高い月の平均基準温度と最も平均基準温度が低い月の平均基準温度との差である。平均基準温度差は、ΣTを所定時間毎に測定される基準温度のひと月当たりの合計値とし、Mを当該月の装置本機100の可動時間として、(ΣT)/Mと表される。
【0056】
ここで、ワイヤ放電加工を行う環境は、一年を通して可能な限り温度変動が小さいことが望ましく、平均基準温度差が小さいほど加工精度の低下が生じにくくなる。従って、平均基準温度差の判定結果を確認することにより、現温度環境下において加工精度の低下が生じる可能性を判断することができる。
【0057】
平均基準温度差の基準値は、3度以下に設定される。算出された平均基準温度差が3度以下のとき、すなわち、算出された平均基準温度変化幅と基準値との差分が0のとき、平均基準温度差の判定結果はA判定となる。算出された平均基準温度差が3度より大きく6度より小さい値のとき、すなわち、算出された平均基準温度差と基準値との差分が0より大きく3度より小さいとき、平均基準温度差の判定結果はB判定となる。算出された平均基準温度差が6度以上のとき、すなわち、算出された平均基準温度差と基準値との差分が3度以上のとき、平均基準温度差の判定結果はC判定となる。
【0058】
平均基準温度差の判定結果がC判定となった場合、上述した3つの温度環境診断指数と同様に、現温度環境を改善するための具体的な対処方法を示すコメントを提示する。平均基準温度差の判定結果がC判定となった場合に提示されるコメントは、例えば、「季節による温度差が大きい傾向にあります。室温設定の見直しを提案します。→12月から3月:+1〜+2℃/6−8月:−1〜−2℃」である。
【0059】
装置本機稼働率は、一日毎の装置本機100の稼働時間の各月の平均値である。装置本機稼働率は、Hをひと月の装置本機100の稼働時間とし、Dを当該月の装置本機100の可動日数として、H/Dと表される。
【0060】
ここで、上述したように、温度センサ5,6,7は、所定時間毎に装置本機100の各部の温度測定を行う。従って、装置本機稼働率が高く、装置本機100の稼働時間が長いほど、より多くの温度測定結果をもとに算出された判定結果が得られるため、その信頼性が高くなる。以上より、装置本機稼働率の判定結果を確認することにより、温度環境診断指数の判定結果の信頼度を判断することができる。
【0061】
装置本機稼働率の基準値は、8時間以上に設定される。算出された装置本機稼働率が8時間以上のとき、すなわち、算出された装置本機稼働率と基準値との差分が0のとき、装置本機稼働率の判定結果はA判定となる。算出された装置本機稼働率が7時間より長く8時間より短いとき、すなわち、算出された装置本機稼働率と基準値との差分が0より大きく1時間より短いとき、装置本機稼働率の判定結果はB判定となる。算出された装置本機稼働率が7時間以下のとき、すなわち、算出された装置本機稼働率と基準値との差分が1時間以上のとき、装置本機稼働率の判定結果はC判定となる。
【0062】
次に、表1に示す3つの温度環境診断指数、装置本機稼働率および平均基準温度差の2017年の各月の算出結果を参照しつつ、2018年1月に加工精度の低下が生じた際に提示される総合判定結果およびコメントについて説明する。
【0063】
【表1】
【0064】
温度環境診断指数および装置本機稼働率の判定は、加工精度が低下した月の直近の算出結果をもとに行われる。具体的には、例えば、2018年の1月中旬に加工精度の低下が生じた場合、加工精度の低下が生じるまでの2018年1月の算出結果をもとに判定を行ってもよい。或いは、その前の月である2017年12月の算出結果をもとに判定を行ってもよい。以下では、3つの温度環境診断指数および装置本機稼働率については、2017年12月の算出結果をもとに2018年1月の判定を行い、平均基準温度差については、2017年1月から2017年12月までの算出結果をもとに2018年1月から遡って直近の一年間を通しての判定を行うものとする。
【0065】
2017年12月の3つの温度環境診断指数の算出結果は、平均基準温度変化幅が2.5、平均上下温度差変動幅が3.1、平均基準温度変化率が2.0である。従って、2018年1月の平均基準変化幅の判定結果はB判定、平均上下温度差変動幅はC判定、平均基準温度変化率はC判定となる。さらに、3つの温度環境診断指数の判定結果の合計ポイントが4ポイントであるため、温度環境診断指数の総合判定結果はC判定となる。従って、作業者は、「現温度環境は所望の加工精度を得るために改善すべき環境であり、加工精度への影響度は高い」と判断し、ワイヤ放電加工装置周辺の温度環境の改善を試みる。より具体的には、3つの温度環境診断指数のうちC判定となった平均上下温度差変動幅および平均基準温度変化率について、提示された上記コメントに基づき対処する。
【0066】
また、2018年1月から遡って直近の一年間、すなわち、2017年1月から12月までの一年間を通しての平均基準温度差の算出結果は8.2であり、平均基準温度差の判定結果はC判定となる。従って、作業者は、「年間を通しての温度変化が大きく、季節によっては加工精度の低下が生じやすい」と判断することができる。従って、平均上下温度差変動幅および平均基準温度変化率と同様に、提示された上記コメントに基づき対処する。
【0067】
また、2017年12月の装置本機稼働率の算出結果は12.8であり、2018年1月の装置稼働率の判定結果はA判定となる。従って、作業者は、「提示された2018年1月の総合判定結果は信頼性が高い」と判断することができる。
【0068】
上述した判定を行う際の各装置の制御および動作について、図2に示すブロック図を参照しつつ説明する。
【0069】
温度センサ5,6,7は、装置本機100の上部、中部、下部の温度をそれぞれ所定時間毎に測定する。温度センサ5,6,7によって測定された装置本機100の各部の温度は、制御装置8の記憶部8aに記憶される。制御装置8の演算部8bは、記憶部8aに記憶された上記計算式に基づき、3つの温度環境診断指数、装置本機稼働率および平均基準温度差を算出する。より具体的には、制御装置8の演算部8bは、記憶部8aに記憶された装置本機100の中部の温度である基準温度、および、装置本機100の稼働日数を上記計算式に当てはめることにより、平均基準温度変化幅および平均基準温度変化率を算出する。また、制御装置8の演算部8bは、記憶部8aに記憶された装置本機100の上部と下部の温度、および、装置本機100の稼働日数を上記計算式に当てはめることにより、平均上下温度差変動幅を算出する。また、制御装置8の演算部8bは、記憶部8aに記憶された装置本機100の稼働時間、および、装置本機100の稼働日数を上記計算式に当てはめることにより、装置本機稼働率を算出する。また、制御装置8の演算部8bは、記憶部8aに記憶された基準温度、および、装置本機100の稼働時間を上記計算式に当てはめることにより、平均基準温度差を算出する。制御装置8の演算部8bは、算出された3つの温度環境診断指数、装置本機稼働率および平均基準温度差と記憶部8aに記憶されたそれぞれの基準値とを比較し、その差分から判定結果を算出する。制御装置8の演算部8bは、3つの温度環境診断指数の判定結果をもとに総合判定結果を算出し、装置本機稼働率および平均基準温度差の判定結果とともに出力してモニタ9に表示させる。さらに、3つの温度環境診断指数および平均基準温度差のうちの何れかの判定結果がC判定となった場合、制御装置8の演算部8bは、対応する上記コメントを記憶部8aから出力し、モニタ9に表示させる。
【0070】
(作用・効果)
本実施形態では、加工精度の低下が生じた際、3つの温度環境診断指数の判定結果に基づき算出された総合判定結果をモニタ9に表示する。これにより、現温度環境の加工精度への影響度を容易に把握することができるため、加工精度の低下が生じる主要因の1つである温度環境が原因となって問題が発生したか否かの切り分けを即座に行うことができる。従って、従来のように加工精度が低下した原因を一から調査していく場合と比較して、加工精度の低下が生じる原因を限定することができるため、問題が生じてから原因を特定して対処するまでの時間を抑えることができる。
【0071】
また、3つの温度環境診断指数の何れかがC判定となった場合、当該温度環境診断指数について、温度環境を改善するための対処方法を示すコメントをモニタ9に表示する。総合判定結果に加えて、これまでの経験則に基づいた温度環境の具体的な改善方法を提示することにより、温度環境によって生じた精度低下に対して素早く的確に対応することができる。
【0072】
また、平均基準温度差について判定を行う。これにより、現温度環境下において加工精度の低下が発生する可能性を判断することができる。
【0073】
また、装置本機稼働率について判定を行う。これにより、提示された総合判定結果および平均温度差の判定結果の信頼度を判断することができる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0075】
本実施の形態では、平均基準温度変化幅、平均上下温度差変動幅および平均基準温度変化率の3つの温度環境診断指数により温度環境の判定を行う場合について記載したが、3つの温度環境診断指数のうちの少なくとも一つによって温度環境を判定しても構わない。例えば、平均温度差変動幅および平均上下温度変動幅によって温度環境を判定しても構わない。或いは、平均温度差変動幅のみによって温度環境を判定しても構わない。この場合、総合判定結果を算出することなく、温度環境診断指数の判定結果を提示して現温度環境の加工精度への影響度を判断しても構わない。なお、温度環境の判定における3つの温度環境診断指数の優先順位は、優先度の高い順に、平均基準温度変化幅、平均上下温度差変動幅、平均基準温度変化率の順である。
【0076】
また、所望の加工精度を±5μmに設定した場合について記載したが、所望の加工精度は、例えば、±5μmよりも高い精度、或いは、±5μmよりも低い精度に設定しても構わない。所望の加工精度が±5μmよりも高い場合、基準値およびA判定となる差分は上述した値よりも小さくなる。また、所望の加工精度が±5μmよりも低い場合、基準値およびA判定となる差分は上述した値よりも大きくなる。
【0077】
また、判定結果は、A判定、B判定、C判定の3段階で判定されると記載したが、2段階、或いは、4段階以上で判定しても構わない。
【0078】
また、判定結果は、「A」、「B」、「C」の何れかとしてモニタ9に表示されると記載したが、例えば、「優」、「並」、「劣」などと表示しても構わない。
【0079】
また、判定結果は、「A」、「B」、「C」などの文字によりモニタ9に表示されると記載したが、例えば、「青」、「黄」、「赤」などの異なる色の光、或いは、異なる音によって提示しても構わない。
【0080】
また、ワイヤ放電加工装置に本発明を適用する場合について記載したが、例えば、形彫り放電加工装置等、その他の放電加工装置に対して本発明を適用しても構わない。
【符号の説明】
【0081】
1 走行装置
2 結線装置
3 ワイヤガイドユニット
4 排出装置
5 温度センサ
6 温度センサ
7 温度センサ
8 制御装置
8a 記憶部
8b 演算部
9 モニタ
10 ヘッド
20 ベッド
30 コラム部
100 装置本機
WE ワイヤ電極
WP 被加工物
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2019年4月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電加工によって被加工物を加工する放電加工装置であって、
前記放電加工装置の上部、中部、下部にそれぞれ取り付けられ、所定時間毎に前記放電加工装置の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサの測定結果から、現温度環境下にて放電加工を行った場合に得られる前記被加工物の加工精度を判定するための指標となる温度環境診断指数の値を算出し、前記温度環境診断指数の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記温度環境診断指数の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記放電加工装置周辺の現温度環境が所望の加工精度を得るために適当か否かの度合を示す判定結果を出力する制御装置と、
前記基準値および前記判定結果が記憶された記憶部と、
を備え、
前記温度環境診断指数は、温度と時間の変数を含む指数であって、前記放電加工装置の中部に取り付けられた前記温度センサによって測定された基準温度の最大変化幅の所定期間における平均値である平均基準温度変化幅、前記放電加工装置の上部に取り付けられた前記温度センサによって測定された温度と前記放電加工装置の下部に取り付けられた前記温度センサによって測定された温度との温度差の最大最小差の所定期間における平均値である平均上下温度差変動幅、および、前記基準温度の最大変化率の所定期間における平均値である平均基準温度変化率のうちの少なくとも1つ以上を含んでいることを特徴とする放電加工装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記判定結果に基づき算出された1つの総合判定結果を出力することを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記判定結果を改善するための対処方法が記憶され、
前記制御装置は、算出された前記判定結果に対応する前記対処方法を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記制御装置は、一年を通して最も前記基準温度の平均値が高い所定期間の前記基準温度差の平均値と、最も前記基準温度の平均値が低い所定期間の前記基準温度の平均値との差である平均基準温度差を算出し、前記平均基準温度差の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均基準温度差の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて加工精度の低下が発生する可能性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の放電加工装置。
【請求項5】
前記制御装置は、所定期間における前記放電加工装置の平均稼働率を算出し、前記平均稼働率の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均稼働率の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記判定結果の信頼性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の放電加工装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
第1の発明の放電加工装置は、放電加工によって被加工物を加工する放電加工装置であって、前記放電加工装置の上部、中部、下部にそれぞれ取り付けられ、所定時間毎に前記放電加工装置の温度を測定する温度センサと、前記温度センサの測定結果から、現温度環境下にて放電加工を行った場合に得られる前記被加工物の加工精度を判定するための指標となる温度環境診断指数の値を算出し、前記温度環境診断指数の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記温度環境診断指数の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記放電加工装置周辺の現温度環境が所望の加工精度を得るために適当か否かの度合を示す判定結果を出力する制御装置と、前記基準値および前記判定結果が記憶された記憶部と、を備え、前記温度環境診断指数は、温度と時間の変数を含む指数であって、前記放電加工装置の中部に取り付けられた前記温度センサによって測定された基準温度の最大変化幅の所定期間における平均値である平均基準温度変化幅、前記放電加工装置の上部に取り付けられた前記温度センサによって測定された温度と前記放電加工装置の下部に取り付けられた前記温度センサによって測定された温度との温度差の最大最小差の所定期間における平均値である平均上下温度差変動幅、および、前記基準温度の最大変化率の所定期間における平均値である平均基準温度変化率のうちの少なくとも1つ以上を含んでいることを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明では、加工精度の低下が生じた際、温度環境診断指数を算出して判定することにより、現温度環境の加工精度への影響度を容易に把握することができる。これにより、加工精度の低下が生じる主要因の一つである温度環境が原因となって加工精度の低下が生じたか否かの切り分けを即座に行うことができる。より具体的には、温度環境診断指数の判定結果が芳しくない場合、加工精度の低下の原因は、温度環境である可能性が高い。従って、作業者は、放電加工装置周辺の温度環境の改善を試みる。また、例えば、温度環境診断指数の判定結果が良好である場合、加工精度の低下の原因は、温度環境ではない可能性が高い。従って、作業者は、温度環境以外の放電加工装置周辺の環境および放電加工装置そのものの状態確認を試みる。これにより、従来のように加工精度が低下した原因を一から調査していく場合と比較して、加工精度の低下が生じる原因を限定することができるため、問題が生じてから原因を特定して対処するまでの時間を抑えることができる。また、温度環境診断指数を放電加工装置の中部に取り付けられた温度センサによって測定された基準温度の最大変化幅の所定期間における平均値である平均基準温度変化幅、放電加工装置の上部に取り付けられた温度センサによって測定された温度と放電加工装置の下部に取り付けられた温度センサによって測定された温度との温度差の最大最小差の所定期間における平均値である平均上下温度差変動幅、および、基準温度の最大変化率の所定期間における平均値である平均基準温度変化率のうちの少なくとも1つ以上とすることにより、加工精度が低下した要因が放電加工装置周辺の温度環境か否かを正確に判定することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
の発明の放電加工装置は、前記第1〜の何れかの発明において、前記制御装置は、一年を通して最も前記基準温度の平均値が高い所定期間の前記基準温度差の平均値と、最も前記基準温度の平均値が低い所定期間の前記基準温度の平均値との差である平均基準温度差を算出し、前記平均基準温度差の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均基準温度差の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて加工精度の低下が発生する可能性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とするものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
の発明の放電加工装置は、前記第1〜の何れかの発明において、前記制御装置は、所定期間における前記放電加工装置の平均稼働率を算出し、前記平均稼働率の値と所望の加工精度を得るために推奨される前記平均稼働率の基準値とを比較し、その差分の大きさに応じて前記判定結果の信頼性の度合を示す判定結果を出力することを特徴とするものである。