特開2020-629(P2020-629A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-629(P2020-629A)
(43)【公開日】2020年1月9日
(54)【発明の名称】内視鏡処置補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20191206BHJP
   A61B 17/02 20060101ALI20191206BHJP
【FI】
   A61B17/29
   A61B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-124401(P2018-124401)
(22)【出願日】2018年6月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2018年5月10日〜2018年5月12日 第95回日本消化器内視鏡学会総会 グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール(東京都港区高輪3−13−1)〔刊行物等〕 2018年5月11日〜2018年5月12日 第80回日本消化器内視鏡技師学会 ベルサール渋谷ファースト(東京都渋谷区東1−2−20)
(71)【出願人】
【識別番号】505193151
【氏名又は名称】豊永 高史
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊永 高史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA04
4C160GG24
4C160GG29
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】内視鏡下で視野を確保することができる内視鏡処置補助具を提供する。
【解決手段】内視鏡処置補助具1は、病変部Lを把持した後に内視鏡Eから分離される内視鏡用クリップ装置11のクリップ13に装着される。内視鏡処置補助具1は、外筒シース3と、外筒シース3に挿通された内筒シース4と、内筒シース4内に配設され先端部が外筒シース3から突出する線状部材6と、内筒シース4を外筒シース3に対して相対的に進退自在とする操作手段7とを備え、線状部材6は、外筒シース3から突出する部分の先端部が該突出する部分の基端部に結びつけられ線状部材6に沿って摺動自在の結び目6aを備え、結び目6aにより該突出する部分に形成される環状部6bを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病変部を把持した後に内視鏡から分離される内視鏡用クリップ装置のクリップに装着される内視鏡処置補助具であって、
剛性を備えるチューブからなる外筒シースと、該外筒シースに挿通された内筒シースと、該内筒シース内に配設され先端部が該外筒シースから突出する線状部材と、該内筒シースを該外筒シースに対して相対的に進退自在とする操作手段とを備え、
該線状部材は、該外筒シースから突出する部分の先端部が該突出する部分の基端部に結びつけられ該線状部材に沿って摺動自在の結び目を備え、該結び目により該突出する部分に形成される環状部を備えることを特徴とする内視鏡処置補助具。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡処置補助具において、前記線状部材は基端側に係合部を備え、前記内筒シース内に内嵌された接続パイプの基端側に該係合部が係合することにより抜け止めされていることを特徴とする内視鏡処置補助具。
【請求項3】
請求項1記載の内視鏡処置補助具において、前記外筒シースの先端に挿着された、該外筒シースより硬質の硬質材料からなる先端チップを備えることを特徴とする内視鏡処置補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡処置補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消化管等における早期腫瘍等の病変部を切除する手技として、内視鏡下に高周波ナイフ等で病変部の全周を切開した後、さらに粘膜下層を剥離させることにより病変部を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術が知られている。
【0003】
前記内視鏡的粘膜下層剥離術では、粘膜下層の剥離が進行するに従って病変部が動きやすくなるため、十分な視野が得られず、穿孔、出血等の偶発症を招くことがある。そこで、内視鏡の鉗子チャンネルに挿通して装着されるクリップ装置を利用して、病変部を把持することにより内視鏡下の視野を確保することが検討されている。前記クリップ装置としては、例えば、内視鏡の鉗子チャンネルを介して体腔内に挿入される挿入部と、挿入部の先端に分離自在に装着されるクリップとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−36003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の前記クリップは、病変部を把持した後、挿入部から分離されて病変部に留置されることにより止血等の用途に用いられるものに過ぎず、該クリップを用いて内視鏡下における視野を確保する内視鏡処置補助具の開発が望まれる。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑み、内視鏡的粘膜下層剥離術を行う際に、内視鏡下で視野を確保することができる内視鏡処置補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の内視鏡処置補助具は、病変部を把持した後に内視鏡から分離される内視鏡用クリップ装置のクリップに装着される内視鏡処置補助具であって、剛性を備えるチューブからなる外筒シースと、該外筒シースに挿通された内筒シースと、該内筒シース内に配設され先端部が該外筒シースから突出する線状部材と、該内筒シースを該外筒シースに対して相対的に進退自在とする操作手段とを備え、該線状部材は、該外筒シースから突出する部分の先端部が該突出する部分の基端部に結びつけられ該線状部材に沿って摺動自在の結び目を備え、該結び目により該突出する部分に形成される環状部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の内視鏡処置補助具は、前記線状部材の前記外筒シースから突出する部分の先端部が該突出する部分の基端部に結びつけられて、該線状部材に沿って摺動自在の結び目が形成され、該突出する部分に環状部が形成されている。従って、前記操作手段を操作して前記内筒シースを前記外筒シースに対して後退させることにより、前記環状部の大きさを絞る(窄ませる)ことができる。
【0009】
そこで、本発明の内視鏡処置補助具は、前記内視鏡用クリップ装置のクリップを前記線状部材の先端部に備えられた環状部に挿通し、前記操作手段を操作して該環状部の大きさを絞る(窄ませる)ことにより該クリップに装着される。
【0010】
前記クリップは、病変部を把持した後に前記内視鏡から分離されるが、このとき本発明の内視鏡処置補助具は、前記環状部により前記クリップに装着されている。そこで、前記クリップが前記内視鏡から分離されたときには、前記操作手段により前記内筒シースを基端側に引くことにより、該クリップ及び該クリップが把持している病変部を手前側に牽引することができる。
【0011】
或いは、前記操作手段により前記内筒シースに対して前記剛性を備えるチューブからなる外筒シースを相対的に前進させて前記クリップに当接し、そのまま押動することにより、該クリップ及び該クリップが把持している病変部を先端側に押し込むことができる。
【0012】
この結果、本発明の内視鏡処置補助具によれば、内視鏡下における視野を確保することができる一方、前記病変部を固定することができる。
【0013】
ところで、前記線状部材は前記内筒シース内で基端部が前記操作手段まで延設されていると、前記クリップ及び前記病変部を牽引する際に負荷が掛かり、該線状部材が延びてしまうことが懸念される。そこで、本発明の内視鏡処置補助具において、前記線状部材は、基端側に係合部を備え、前記内筒シース内に内嵌された接続パイプの基端側に該係合部が係合することにより抜け止めされていることが好ましい。このようにすることにより、前記線状部材の長さを短くすることができ、前記牽引する際の負荷により該線状部材が延びることを抑制することができる。
【0014】
また、前記外筒シースは剛性を備えるチューブからなるものの、前記クリップに比較すると柔らかく、該クリップに当接することにより変形することが懸念される。そこで、本発明の内視鏡処置補助具は、前記外筒シースの先端に挿着された、該外筒シースより硬質の硬質材料からなる先端チップを備えることが好ましい。本発明の内視鏡処置補助具によれば、前記外筒シースの先端に挿着された前記先端チップが前記クリップに当接されるので、該外筒シースの先端が該クリップに当接して変形することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の内視鏡処置補助具の構成の一部を切り欠いて示す説明的断面図。
図2図1のII部拡大図。
図3】Aは線状部材の環状部にクリップを挿通した状態と、内視鏡用クリップ装置の作動を示す斜視図、Bは環状部をクリップに装着した状態を示す斜視図。
図4】Aは本発明の内視鏡処置補助具をクリップに取着した内視鏡を病変部に接近させた状態を示す説明的断面図、Bは病変部を把持したクリップを内視鏡から分離した状態を示す説明的断面図、Cは本発明の内視鏡処置補助具を取着したクリップで病変部を牽引する状態を示す説明的断面図、Dは本発明の内視鏡処置補助具を取着したクリップで病変部を押し込む状態を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の内視鏡処置補助具1は、中空円筒状の把持部2と、把持部2の先端側に接続された外筒シース3と、外筒シース3に挿通された内筒シース4と、外筒シース3の先端に挿着された先端チップ5と、内筒シース4内に配設された線状部材6と、把持部2の内面に沿って摺動自在とされた操作部7とを備えている。
【0018】
把持部2は、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等により形成されており、外筒シース3は、例えばポリエチレン樹脂等の剛性を備える材料からなるチューブにより形成されている。内筒シース4は、例えばテトラフルオロエチレン樹脂等の外筒シース3に対し摺動性に優れる材料により形成されており、先端チップ5は、例えばポリアセタール等の外筒シース3より硬い硬質材料により形成され、基端部が外筒シース3に挿着されている。
【0019】
線状部材6は、ポリアミド樹脂等からなり、内筒シース4及び先端チップ5に挿通されている。線状部材6の先端部は、先端チップ5から突出する部分の先端側で、該突出する部分の基端側に結びつけられて、線状部材6に沿って摺動自在の結び目6aを形成しており、線状部材6は結び目6aにより該突出する部分に環状部6bが形成されている。また、線状部材6は、基端部に結び目6cを備えており、結び目6cは内筒シース4に内嵌されている接続パイプ4aの基端部に係合されて抜け止めされている。
【0020】
操作部7は、例えばABS樹脂等からなり、円柱状体からなり先端側が把持部2内に配設される摺動部6aと、把持部2の外部で摺動部6aの基端側に接続され全体としてT字状を形成するレバー部6bとを備える。摺動部6aは把持部2の内周面との間にシリコーンゴム製のOリング6cを備えている。
【0021】
次に、本実施形態の内視鏡処置補助具1の使用方法について説明する。
【0022】
図3に示すように、内視鏡処置補助具1を使用するときには、まず、環状部6bをクリップ装置11のクリップ13に装着する。クリップ装置11は、内視鏡の鉗子チャンネル(図示せず)に挿通される挿通部(図示せず)の先端に接続され、外筒管12と、外筒管12の先端に設けられたクリップ13とを備えている。
【0023】
クリップ13は、例えば板バネからなり、互いに離間する方向に付勢されている1対のアーム部14a,14bと、アーム部14a,14bの先端部に設けられた把持部15a,15bとを備えている。アーム部14a,14bは基端側で連結されており、図3Aに仮想線示するように外筒管12を先端側に移動させることにより、アーム部14a,14bが互いに近接する方向に移動され、把持部15a,15bの間に病変部等を把持する。
【0024】
環状部6bをクリップ13に装着する際には、まず、図3Aに示すように、アーム部14a,14bの一方、例えばアーム部14aを環状部6bに挿通する。次いで、レバー部7bを引くことにより、線状部材6の結び目6aが相対的に先端側に移動し、環状部6bが窄ませられて、アーム部14aに結びつけられる。
【0025】
次に、図3Bに示すように、内筒シース4に対して外筒シース3を相対的に前進させてアーム部14aに当接させる一方、外筒シース3の先端部を収納部として該収納部に内筒シース4及び環状部6bを収納する。このようにすることにより、環状部6bがアーム部14aに固定して装着される。
【0026】
本実施形態の内視鏡処置補助具1では、環状部6bをクリップ13に装着する操作を内視鏡を体腔内に挿入する前に体外で行うことができるが、内視鏡の把持鉗子で内視鏡処置補助具1を把持して体腔内に挿入し、内視鏡的に患部近傍まで案内した後、環状部6bをクリップ13に装着することもできる。
【0027】
また、環状部6bをクリップ13に装着する操作を内視鏡を体腔内に挿入する前に体外で行った場合には、クリップ13及びクリップ13に装着された環状部6bを含む線状部材6を内視鏡用フード内に収容した状態で体腔内に挿入し、患部近傍まで案内することが好ましい。このようにすることにより、クリップ13により不用意に体腔内の組織等を傷つけることを防止することができる。
【0028】
次に、図4Aに示すように、クリップ13に環状部6aが装着された内視鏡処置補助具1を内視鏡Eと一緒に、例えば食道等の消化管内に挿通し、病変部L近傍に案内する。消化管は、概ね、体腔側から順に粘膜、粘膜下層、筋層の3層からなり、病変部Lは粘膜にある。
【0029】
病変部Lを切除する際には、まず、病変部Lの周囲にマーキングを施し、次いで粘膜下層に対して局注を行うことにより病変部Lをポリープ状に盛り上げる。そして、内視鏡Eの鉗子チャンネルに備えられた高周波ナイフK等により、マーキングに沿って病変部Lの周囲の粘膜を切開する。図4Aは、病変部Lの周囲の粘膜が切開された状態を示す。
【0030】
次いで、高周波ナイフKにより病変部Lの下部の粘膜下層を切開することにより病変部Lを粘膜下層から剥離するが、剥離の進行に伴って病変部Lの可動性が増大し、内視鏡E下における視野が狭まり、特に剥離する部分の視界が妨げられるようになる。そこで、クリップ装置11を病変部Lに接近させ、図4Bに示すように、アーム部14a,14bの把持部15a,15bの間に病変部Lを把持させる。クリップ13に病変部Lを把持させたならば、次に、クリップ13を内視鏡Eから分離する。クリップ13の内視鏡Eからの分離は、例えば、クリップ13の基端部と前記挿通部との間に脆弱部を設けておき、該挿通部を基端側に引いて該脆弱部を破断させることにより行うことができる。
【0031】
内視鏡Eから分離されたクリップ13は、アーム部14aに装着された環状部6bにより、内視鏡処置補助具1により操作することができるようになる。そこで、図4Cに示すように内視鏡処置補助具1を操作して、クリップ13及び病変部Lを内視鏡Eから離間する方向に牽引することにより、内視鏡Eの視野を確保することができる一方、病変部Lを固定することができるので、高周波ナイフKによる粘膜下層の切開を容易に行うことができる。
【0032】
また、内視鏡処置補助具1は、外筒シース3の先端に挿着された硬質材料からなる先端チップ5がクリップ13のアーム部14aに当接されているので、図4Dに示すように、必要に応じて外筒シース3ごと先端側に移動させ、外筒シース3を形成するチューブの剛性によりクリップ13を先端側に押し込むことにより、病変部Lを内視鏡Eの先端から体腔の奥側に移動させることも可能である。
【0033】
この後、病変部Lの下部の粘膜下層の切開が完了し、病変部Lが剥離されたならば、内視鏡処置補助具1を操作することにより剥離された病変部Lを体外に取り出して回収することができる。
【0034】
尚、本実施形態では、クリップ13に環状部6bが装着された内視鏡処置補助具1を内視鏡Eと一緒に食道等の消化管内に挿通する際に環状部6bを窄ませるようにしているが、このようにすると内筒シース4が内視鏡Eの先端部と干渉することがある。そこで、環状部6bを窄ませることなく、内視鏡処置補助具1を内視鏡Eと一緒に食道等の消化管内に挿通し、病変部L近傍に案内したのち、環状部6bを窄ませるようにしてもよい。
【0035】
また、図4Bに示すようにクリップ13を内視鏡Eから分離した後、上述のように、内視鏡の把持鉗子で内視鏡処置補助具1を把持して体腔内に挿入し、内視鏡的に患部近傍まで案内した後、環状部6bをクリップ13に装着する際には、アーム部14aに環状部6bを装着する代わりに、内視鏡Eから分離されたクリップ13の基端部に装着するようにしてもよい。環状部6bをクリップ13の基端部に装着する操作は、環状部6bをアーム部14aに装着する場合と同様にして行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
1…内視鏡処置補助具、 3…外筒シース、 4…内筒シース、 5…先端チップ、 6…線状部材、 6a…結び目、 6b…環状部、 7…操作手段、 11…クリップ装置、 13…クリップ。
図1
図2
図3
図4