【解決手段】本発明は、内燃機関及びモータを使用して車輪を駆動する車両の駆動装置であって、車両(1)の前部に配置され、車両を駆動するための駆動力を発生する内燃機関(12)と、車両の前輪(2b)に設けられ、前輪を駆動するインホイールモータ(20)と、このインホイールモータを駆動するための電気エネルギーを蓄積したバッテリ(18)及びキャパシタ(22)と、キャパシタからの電力をインホイールモータに供給するワイヤハーネス(22a)と、を有し、インホイールモータには、直列に接続されたバッテリ及びキャパシタから電力が供給され、キャパシタは、車両の幅方向において、内燃機関とインホイールモータとの間に配置されていることを特徴としている。
上記内燃機関は、各気筒が上記車両の前後方向に配列されるように配置されると共に、上記配列の一方の側に吸気マニホルドが設けられ、他方の側に排気マニホルドが設けられており、上記キャパシタは、上記内燃機関の上記吸気マニホルドが設けられている側に配置されている請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
上記キャパシタは、第1キャパシタ及び第2キャパシタから構成され、上記第1キャパシタは上記内燃機関と上記車両の右側前輪との間に配置され、上記第2キャパシタは上記内燃機関と上記車両の左側前輪との間に配置されている請求項1記載の車両駆動装置。
上記バッテリは、上記車両の前後方向に延びるように、上記車両の下部に設けられたトンネル部の中、又は上記車両の後部に配置されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータによる車両の駆動は、走行中に二酸化炭素を排出しないため、年々強化される排出ガス規制をクリアするためには有利であるが、バッテリに蓄積可能な電気エネルギーに限界があり、十分に長い航続距離を確保することが困難である。このため、車両用の駆動装置として、モータと共に内燃機関を搭載したハイブリッド駆動装置が広く普及している。また、このようなハイブリッド駆動装置においても、走行中の二酸化炭素排出量を低減するためには、主としてモータによる駆動力を利用する必要がある。
【0006】
このように、モータの駆動力を主体とする車両駆動装置では、十分な走行性能を確保するために、モータにより十分な駆動力を得る必要がある。モータにより十分な駆動力を得るためには、高電圧でモータを作動させる必要がある。即ち、低電圧でモータを駆動した場合には駆動に要する電流が過大なものとなり、送電系統のインピーダンスを極めて小さくすることが要求される。しかしながら、モータを高電圧で作動させる場合には、モータに高電圧を供給する電気系統を電気的に十分に絶縁する必要があり、この絶縁材が車両の全体的な重量を増加させ、車両の燃費を悪化させるという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、モータを比較的高電圧で駆動しながら、電力供給系統を絶縁する絶縁材による重量の増加を抑制することができる車両駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、内燃機関及びモータを使用して車輪を駆動する車両の駆動装置であって、車両の前部に配置され、車両を駆動するための駆動力を発生する内燃機関と、車両の前輪に設けられ、前輪を駆動するインホイールモータと、このインホイールモータを駆動するための電気エネルギーを蓄積したバッテリと、インホイールモータを駆動するための電気エネルギーを蓄積したキャパシタと、キャパシタからの電力をインホイールモータに供給するワイヤハーネスと、を有し、インホイールモータには、直列に接続されたバッテリ及びキャパシタから電力が供給され、キャパシタは、車両の幅方向において、内燃機関とインホイールモータとの間に配置されていることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、車両の前部に配置された内燃機関が車両を駆動するための駆動力を発生すると共に、車両の前輪に設けられたインホイールモータが前輪を駆動する。バッテリ及びキャパシタは、インホイールモータを駆動するための電気エネルギーを蓄積する。インホイールモータには、直列に接続されたバッテリ及びキャパシタから電力が供給され、ワイヤハーネスがキャパシタからの電力をインホイールモータに供給する。キャパシタは、車両の幅方向において、内燃機関とインホイールモータとの間に配置されている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、直列に接続されたバッテリ及びキャパシタからインホイールモータに電力が供給されるので、バッテリ単体で駆動する場合よりも高電圧でインホイールモータを駆動することができ、駆動電流を低く抑えることができる。また、キャパシタからの電力をインホイールモータに供給するワイヤハーネスには比較的高い電圧が印加されるので、絶縁耐圧を高くしておく必要がある。しかしながら、インホイールモータへの電力の供給は、車両の前部に配置された内燃機関と前輪に設けられたインホイールモータとの間に配置されたキャパシタから行われるため、電力を供給するためのワイヤハーネスを短くすることができる。これにより、ワイヤハーネスの絶縁耐圧を高くしたとしても、重量の増分は少なくなり、絶縁材による重量の増加を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、キャパシタは、車両の側方から見て、少なくとも一部が前輪と重なる位置に配置されている。
このように構成された本発明によれば、キャパシタが、車両の側方から見て、少なくとも一部が前輪と重なる位置に配置されているので、インホイールモータに電力を供給するワイヤハーネスを更に短くすることができ、絶縁材による重量の増加を更に抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、内燃機関は、各気筒が車両の前後方向に配列されるように配置されると共に、配列の一方の側に吸気マニホルドが設けられ、他方の側に排気マニホルドが設けられており、キャパシタは、内燃機関の吸気マニホルドが設けられている側に配置されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、内燃機関の吸気マニホルドが設けられている側にキャパシタが配置されているので、内燃機関の排気の熱によりキャパシタが加熱されるのを抑制することができ、熱によるキャパシタの経年劣化を抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、キャパシタは、吸気マニホルドの下方に配置されている。
一般に、気筒が直列に配列された内燃機関の吸気マニホルドの下方には空間があり、上記のように構成された本発明によれば、吸気マニホルドの下方にキャパシタが配置されているので、エンジンルーム内のスペースを有効に活用してキャパシタを配置することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、キャパシタは、第1キャパシタ及び第2キャパシタから構成され、第1キャパシタは内燃機関と車両の右側前輪との間に配置され、第2キャパシタは内燃機関と車両の左側前輪との間に配置されている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、第1キャパシタが内燃機関と右側前輪との間に、第2キャパシタが内燃機関と左側前輪との間に夫々配置されているので、第1、第2キャパシタと各インホイールモータとの間の距離を更に短くすることができ、絶縁耐圧を高めることによる重量の増加を更に抑制することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、内燃機関は、車両の後輪を駆動するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、内燃機関が車両の後輪を駆動し、各インホイールモータが前輪を駆動するので、前輪と後輪の駆動機構が互いに干渉することがなく、簡単な構造で内燃機関及びモータを使用した車両駆動装置を構成することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、バッテリは、車両の前後方向に延びるように車両の下部に設けられたトンネル部の中、又は車両の後部に配置されている。
このように構成された本発明によれば、バッテリがトンネル部の中又は車両の後部に配置されているので、バッテリを収容するスペースを十分に確保することができる。また、このようにバッテリを配置することにより、バッテリとキャパシタを直列に接続する配線は比較的長くなる場合があるが、上記配線は比較的低電圧であるため、絶縁材による重量の増加を抑制することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、キャパシタの最大の端子間電圧は、バッテリの端子間電圧よりも高く構成されている。
このように構成された本発明によれば、キャパシタの最大の端子間電圧が、バッテリの端子間電圧よりも高く構成されているので、キャパシタを直列に接続することにより、バッテリの端子間電圧を大きく嵩上げすることができる。この結果、比較的低電圧のバッテリを使用しながら、高い電圧でインホイールモータを駆動することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両駆動装置によれば、モータを比較的高電圧で駆動しながら、電力供給系統を絶縁する絶縁材による重量の増加を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による車両駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
図2は本実施形態の車両駆動装置を搭載した車両の前部を前方から見た透視図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による車両駆動装置を搭載した車両1は、運転席よりも前方の、車両の前部に内燃機関であるエンジン12が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2aを駆動する所謂FR(Front engine, Rear drive)車である。また、後述するように、後輪2aは主駆動モータによっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪2bは、副駆動モータによって駆動される。
【0024】
車両1に搭載された本発明の第1実施形態による車両駆動装置10は、後輪2aを駆動するエンジン12と、後輪2aに駆動力を伝達する動力伝達機構14と、後輪2aを駆動する主駆動モータ16と、バッテリ18と、前輪2bを駆動する副駆動モータ20と、キャパシタ22と、制御器である制御装置24と、を有する。
【0025】
エンジン12は、車両1の主駆動輪である後輪2aに対する駆動力を発生するための内燃機関である。本実施形態においては、エンジン12として直列4気筒エンジンが採用されており、車両1の前部に配置されたエンジン12が動力伝達機構14を介して後輪2aを駆動するようになっている。また、本実施形態において、エンジン12は、直列に並ぶ4つの気筒が車両1の前後方向に配列される所謂「縦置き」にされている。さらに、
図2に示すように、エンジン12の気筒の配列に対し、一方の側に吸気マニホルド12aが設けられ、他方の側に排気マニホルド12bが設けられている。本実施形態においては、車両1の前方から見て、エンジン12の右側に吸気マニホルド12aが設けられ、左側に排気マニホルド12bが設けられている。即ち、
図2におけるエンジン12の右側が「吸気側」となり、エンジン12の左側が「排気側」となっている。
【0026】
動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16が発生した駆動力を主駆動輪である後輪2aに伝達するように構成されている。
図1に示すように、動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16に接続された動力伝達軸であるプロペラシャフト14a、及び変速機であるトランスミッション14bを備えている。エンジン12及び主駆動モータ16から延びるプロペラシャフト14aは、車両1の前後方向に延びるように、車両下部の幅方向中央に設けられたトンネル部15の中を通ってトランスミッション14bに接続されている。また、プロペラシャフト14aは、筒状に形成されたトルクチューブ14cの中に収容されている。
【0027】
主駆動モータ16は、主駆動輪に対する駆動力を発生するための電動機であって、車両1の車体上に設けられ、エンジン12の後ろ側に、エンジン12に隣接して配置されており、車体側モータとして機能する。また、主駆動モータ16に隣接してインバータ16aが配置されており、このインバータ16aにより、バッテリ18の直流電圧が交流電圧に変換されて主駆動モータ16に供給される。さらに、
図1に示すように、主駆動モータ16はエンジン12と直列に接続されており、主駆動モータ16が発生した駆動力も動力伝達機構14を介して後輪2aに伝達される。或いは、主駆動モータ16を動力伝達機構14の途中に接続し、動力伝達機構14の一部を介して駆動力が後輪2aに伝達されるように本発明を構成することもできる。また、本実施形態においては、主駆動モータ16として、48Vで駆動される25kWの永久磁石電動機(永久磁石同期電動機)が採用されている。
【0028】
バッテリ18は、主として主駆動モータ16を作動させる電気エネルギーを蓄積するための蓄電器である。さらに、本実施形態においては、バッテリ18として、48V、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ(LIB)が使用されている。また、
図1に示すように、本実施形態において、バッテリ18は車両下部に設けられたトンネル部15の中に配置されている。或いは、変形例として、
図1に想像線で示すように、車両1の後部にバッテリ18を配置することもできる。
【0029】
次に、
図2に示すように、インホイールモータである副駆動モータ20は、副駆動輪である前輪2bに対する駆動力を発生するように、車両1のバネ下に、前輪2b各輪に設けられている。本実施形態においては、前輪2b各輪はダブルウイッシュボーンタイプのサスペンションで支持され、アッパアーム8a、ロアアーム8b、スプリング8c、及びショックアブソーバ8dにより懸架されている。また、副駆動モータ20はインホイールモータであり、前輪2b各輪のホイール内に夫々収容されている。従って、副駆動モータ20は、車両1の所謂「バネ下」に設けられて前輪2bを夫々駆動するように構成されている。また、
図1に示すように、各副駆動モータ20には、キャパシタ(CAP)22からの電流が、インバータ20aにより交流に変換されて夫々供給される。さらに、本実施形態においては、副駆動モータ20には減速機構である減速機が設けられておらず、副駆動モータ20の駆動力は前輪2bに直接伝えられ、車輪が直接駆動される。また、本実施形態においては、各副駆動モータ20として、17kWの誘導電動機が夫々採用されている。
【0030】
キャパシタ22は、副駆動モータ20によって回生された電力を蓄積するように設けられている。
図1及び
図2に示すように、キャパシタ22はエンジン12の吸気側の側部に、車両1の幅方向において、エンジン12と副駆動モータ20の間に配置される。また、
図2に示すように、キャパシタ22からの電力は、車両1の前輪2b各輪に設けられた副駆動モータ20に、ワイヤハーネス22aを介して夫々供給される。さらに、キャパシタ22は、バッテリ18よりも高い電圧で電荷を蓄積するように構成されると共に、副駆動輪である左右の前輪2bの間の領域内に配置される。即ち、キャパシタ22は、車両の側方から見て、少なくとも一部が前輪2bと重なる位置に配置されると共に、エンジン12の吸気マニホルド12aが設けられている側に、吸気マニホルド12aの下方に配置されている。主としてキャパシタ22に蓄積された電力により駆動される副駆動モータ20は、主駆動モータ16よりも高い電圧で駆動される。
【0031】
図1に示すように、制御装置24は、エンジン12、主駆動モータ16、及び副駆動モータ20を制御して、電動機走行モード及び内燃機関走行モードを実行するように構成されている。具体的には、制御装置24は、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等によって構成することができる。
【0032】
次に、
図3乃至
図6を参照して、本発明の第1実施形態による車両駆動装置10の電源構成、及び各モータによる車両1の駆動を説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による車両駆動装置10の電源構成を示すブロック図である。
図4は、本実施形態の車両駆動装置10において、キャパシタ22に電力が回生された場合における電圧の変化の一例を模式的に示す図である。
図5は、本実施形態の車両駆動装置10において使用されている各モータの出力と車速の関係を示す図である。
【0033】
図3に示すように、車両駆動装置10に備えられているバッテリ18とキャパシタ22は直列に接続されている。主駆動モータ16にはバッテリ18の電力が供給され、副駆動モータ20には直列に接続されたバッテリ18とキャパシタ22から電力が供給される。即ち、主駆動モータ16はバッテリ18の基準出力電圧である約48Vで駆動され、副駆動モータ20はバッテリ18の出力電圧とキャパシタ22の端子間電圧を合算した48Vよりも高い電圧で、最大120Vの電圧で駆動される。このように、キャパシタ22の最大の端子間電圧はバッテリ18の端子間電圧よりも高く設定されている。また、キャパシタ22には副駆動モータ20に供給する電気エネルギーが蓄積され、副駆動モータ20は、常にキャパシタ22を介して供給された電力によって駆動される。
【0034】
また、主駆動モータ16にはインバータ16aが取り付けられており、バッテリ18の出力を交流に変換した上で永久磁石電動機である主駆動モータ16が駆動される。一方、キャパシタ22の出力(バッテリ18とキャパシタ22を直列に接続した電圧)はインバータ20aに入力され、インバータ20aは、入力された直流電圧を交流に変換した上で、各副駆動モータ20が夫々要求する電力を出力し、各副駆動モータ20が駆動される。
【0035】
さらに、車両1の減速時等には、主駆動モータ16及び各副駆動モータ20は発電機として機能し、車両1の運動エネルギーを回生して電力を生成する。主駆動モータ16によって回生された電力はバッテリ18に蓄積され、各副駆動モータ20によって回生された電力は主としてキャパシタ22に蓄積される。
【0036】
また、バッテリ18とキャパシタ22の間には電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ26aが接続されており、この高圧DC/DCコンバータ26aはキャパシタ22に蓄積された電荷が不足しているとき(キャパシタ22の端子間電圧が低下したとき)、バッテリ18の電圧を昇圧してキャパシタ22に充電する。一方、各副駆動モータ20によるエネルギーの回生により、キャパシタ22の端子間電圧が所定電圧以上に上昇した場合には、キャパシタ22に蓄積された電荷を降圧してバッテリ18に印加し、バッテリ18の充電を行う。即ち、副駆動モータ20によって回生された電力はキャパシタ22に蓄積された後、蓄積された電荷の一部が、高圧DC/DCコンバータ26aを介してバッテリ18に充電される。
【0037】
さらに、バッテリ18と車両1の12V電装品25の間には、低圧DC/DCコンバータ26bが接続されている。車両駆動装置10の制御装置24や、車両1の電装品25の多くは12Vの電圧で作動するので、バッテリ18に蓄積された電荷を低圧DC/DCコンバータ26bにより12Vに降圧して、これらの機器に供給する。
【0038】
次に、
図4を参照して、キャパシタ22に対する充電及び放電を説明する。
図4に示すように、キャパシタ22の電圧は、バッテリ18によるベース電圧と、キャパシタ22自体の端子間電圧の合計となる。車両1の減速時等には、各副駆動モータ20により電力の回生が行われ、回生された電力はキャパシタ22に充電される。キャパシタ22への充電が行われると比較的急激に端子間電圧が上昇する。充電によりキャパシタ22の電圧が所定電圧以上に上昇すると、高圧DC/DCコンバータ26aによりキャパシタ22の電圧が降圧され、バッテリ18への充電が行われる。
図4に示すように、このキャパシタ22からバッテリ18への充電は、キャパシタ22への充電よりも比較的緩やかに行われ、キャパシタ22の電圧は適正電圧まで比較的緩やかに低下される。
【0039】
即ち、各副駆動モータ20により回生された電力は一時的にキャパシタ22に蓄積され、その後、バッテリ18へ緩やかに充電される。なお、回生が行われる期間によっては、各副駆動モータ20による電力の回生と、キャパシタ22からバッテリ18への充電がオーバーラップして行われる場合もある。
一方、主駆動モータ16によって回生された電力は、バッテリ18に直接充電される。
【0040】
次に、
図5を参照して、本発明の第1実施形態による車両駆動装置10における車速と各モータの出力の関係を説明する。
図5は、本実施形態の車両駆動装置10において、車両1の速度と、各速度における各モータの出力の関係を示すグラフである。
図5において、主駆動モータ16の出力を破線で示し、1つの副駆動モータ20の出力を一点鎖線で、2つの副駆動モータ20の出力の合計を二点鎖線で、全てのモータの出力の合計を実線で示している。なお、
図5は、車両1の速度を横軸とし、各モータの出力を縦軸として示しているが、車両1の速度とモータの回転数には一定の関係が存在するので、横軸をモータ回転数とした場合でも、各モータの出力は
図5と同様の曲線を描く。
【0041】
本実施形態においては主駆動モータ16には永久磁石電動機が採用されているため、
図5に破線で示すように、モータ回転数が低い低車速域で主駆動モータ16の出力が大きく、車速が速くなるにつれて出力可能なモータ出力が減少する。即ち、本実施形態において、主駆動モータ16は、約48Vで駆動され、1000rpm程度まで最大トルクである約200Nmのトルクを出力し、約1000rpm以上で回転数の増加と共にトルクが低下する。また、本実施形態において、主駆動モータ16は、最低速域において約20kW程度の連続出力が得られ、最大出力約25kWが得られるように構成されている。
【0042】
これに対して、副駆動モータ20には誘導電動機が採用されているため、
図5に一点鎖線及び二点鎖線で示すように、低車速域では副駆動モータ20の出力は極めて小さく、車速が速くなるにつれて出力が増大し、車速約130km/h付近で最大出力が得られた後、モータ出力は減少する。本実施形態において、副駆動モータ20は、約120Vで駆動され、車速約130km/h付近で1台当たり約17kW、2台合計で約34kWの出力が得られるように構成されている。即ち、本実施形態において、副駆動モータ20は、約600乃至800rpmでトルクカーブがピークをもち、最大トルク約200Nmが得られる。
【0043】
図5の実線には、これら主駆動モータ16及び2台の副駆動モータ20の出力の合計が示されている。このグラフから明らかなように、本実施形態においては、車速約130km/h付近で最大出力約53kWが得られており、この車速における、この最大出力でWLTP試験において要求される走行条件を満足することができる。なお、
図5の実線では、低車速域においても2台の副駆動モータ20の出力値が合算されているが、実際には低車速域では各副駆動モータ20が駆動されることはない。即ち、発進時及び低車速域においては主駆動モータ16のみで車両が駆動され、高車速域で大出力が必要とされたとき(高車速域で車両1を加速させるとき等)のみ2台の副駆動モータ20が出力を発生する。このように、高回転領域で大きな出力を発生することができる誘導電動機(副駆動モータ20)を、高速域のみで使用することにより、車両重量の増加を低く抑えながら必要なとき(所定速度以上での加速時等)に十分な出力を得ることができる。
【0044】
次に、
図6を参照して、本発明の第1実施形態の車両駆動装置10に採用されている副駆動モータ20の構成を説明する。
図6は、副駆動モータ20の構造を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、副駆動モータ20は、ステータ28と、このステータの周囲で回転するロータ30から構成されたアウターロータタイプの誘導電動機である。
【0045】
ステータ28は、概ね円板状のステータベース28aと、このステータベース28aの中心から延びるステータシャフト28bと、このステータシャフト28bの周囲に取り付けられたステータコイル28cと、を有する。また、ステータコイル28cは電気絶縁液室32に収納されており、この中に満たされた電気絶縁液32aに浸漬され、これにより沸騰冷却される。
【0046】
ロータ30は、ステータ28の周囲を取り囲むように概ね円筒状に構成されており、一端が閉塞された概ね円筒形に構成されたロータ本体30aと、ロータ本体30aの内周壁面に配置されたロータコイル30bと、を有する。ロータコイル30bは、ステータコイル28cが生成する回転磁界により誘導電流が発生するように、ステータコイル28cに対向するように配置されている。また、ロータ30は、ステータ28の周囲で円滑に回転するように、ステータシャフト28bの先端に取り付けられたベアリング34によって支持されている。
【0047】
ステータベース28aは、車両1の前輪を懸架する懸架機構(図示せず)によって支持されている。一方、ロータ本体30aは、前輪2bのホイール(図示せず)に直接固定されている。ステータコイル28cには、インバータ20aによって交流に変換された交流電流が流され、回転磁界が生成される。この回転磁界によりロータコイル30bに誘導電流が流れ、ロータ本体30aを回転させる駆動力が発生する。このように、各副駆動モータ20により生成された駆動力は、直接、各前輪2bのホイール(図示せず)を回転駆動する。
【0048】
本発明の第1実施形態の車両駆動装置10によれば、直列に接続されたバッテリ18及びキャパシタ22からインホイールモータである副駆動モータ20に電力が供給されるので(
図3)、バッテリ18単体で駆動する場合よりも高電圧で副駆動モータ20を駆動することができ、駆動電流を低く抑えることができる。また、キャパシタ22からの電力を副駆動モータ20に供給するワイヤハーネス22aには比較的高い電圧が印加されるので、絶縁耐圧を高くしておく必要がある。しかしながら、副駆動モータ20への電力の供給は、車両1の前部に配置された内燃機関であるエンジン12と前輪2bに設けられた副駆動モータ20との間に配置されたキャパシタ22から行われるため、電力を供給するためのワイヤハーネス22aを短くすることができる。これため、ワイヤハーネス22aの絶縁耐圧を高くしたとしても、重量の増分は少なくなり、絶縁材による重量の増加を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態の車両駆動装置10によれば、キャパシタ22が、車両1の側方から見て、少なくとも一部が前輪2bと重なる位置に配置されているので(
図1)、副駆動モータ20に電力を供給するワイヤハーネス22aを更に短くすることができ、絶縁材による重量の増加を更に抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態の車両駆動装置10によれば、エンジン12の吸気マニホルド12aが設けられている側にキャパシタ22が配置されているので(
図2)、エンジン12の排気の熱によりキャパシタ22が加熱されるのを抑制することができ、熱によるキャパシタ22の経年劣化を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の車両駆動装置10によれば、吸気マニホルド12aの下方にキャパシタ22が配置されているので(
図2)、エンジンルーム内のスペースを有効に活用してキャパシタ22を配置することができる。
【0052】
さらに、本実施形態の車両駆動装置10によれば、エンジン12が車両1の後輪2aを駆動し、各副駆動モータ20が前輪2bを駆動するので(
図1)、前輪2bと後輪2aの駆動機構が互いに干渉することがなく、簡単な構造で内燃機関及びモータを使用した車両駆動装置10を構成することができる。
【0053】
また、本実施形態の車両駆動装置10によれば、バッテリ18がトンネル部15の中に配置されているので(
図1)、バッテリ18を収容するスペースを十分に確保することができる。また、このようにバッテリ18を配置することにより、バッテリ18とキャパシタ22を直列に接続する配線は比較的長くなる場合があるが、上記配線は比較的低電圧であるため、絶縁材による重量の増加を抑制することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の車両駆動装置10によれば、キャパシタ22の最大の端子間電圧が、バッテリ18の端子間電圧よりも高く構成されているので(
図4)、キャパシタ22を直列に接続することにより、バッテリ18の端子間電圧を大きく嵩上げすることができる。この結果、比較的低電圧のバッテリ18を使用しながら、高い電圧で副駆動モータ20を駆動することができる。
【0055】
次に、
図7及び
図8を参照して、本発明の第2実施形態による車両駆動装置を説明する。
図7は、本発明の第2実施形態による車両駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
図8は、本発明の第2実施形態による車両駆動装置の電源構成を示すブロック図である。本実施形態による車両駆動装置は、キャパシタの構成及び配置が上述した第1実施形態とは異なっており、その他の構成は第1実施形態と同一である。従って、ここでは、本実施形態による車両駆動装置の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
図7に示すように、本発明の第2実施形態による車両駆動装置を搭載した車両100は、運転席よりも前方の、車両の前部に内燃機関であるエンジン12が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2aが駆動される。また、後輪2aは主駆動モータによっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪2bは、副駆動モータによって駆動される。本実施形態の車両駆動装置110は、後輪2aを駆動するエンジン12と、後輪2aに駆動力を伝達する動力伝達機構14と、後輪2aを駆動する主駆動モータ16と、バッテリ18と、右側の前輪2bを駆動する第1副駆動モータ120と、左側の前輪2bを駆動する第2副駆動モータ121と、第1キャパシタ122と、第2キャパシタ123と、制御器である制御装置24と、を有する。
【0057】
上述した第1実施形態においては、1つのキャパシタ22から、左右の各副駆動モータ20に電力が供給されていた(
図3)。これに対し、本実施形態においては、
図7に示すように、エンジン12の両側に第1、第2キャパシタが備えられており、左右の第1副駆動モータ120、第2副駆動モータ121に夫々電力を供給するように構成されている。即ち、車両100の前部に配置されたエンジン12と、右側の前輪2bとの間には第1キャパシタ122が配置され、エンジン12と左側の前輪2bとの間には第2キャパシタ123が配置されている。また、第1キャパシタ122及び第2キャパシタ123は、何れも、車両100の側方から見て、少なくとも一部が前輪2bと重なる位置に配置されている。
【0058】
また、第1キャパシタ122、第2キャパシタ123に夫々隣接して、第1インバータ120a、第2インバータ121aが設けられている。第1インバータ120aは、第1キャパシタ122からの電力を交流に変換して第1副駆動モータ120に供給する。また、第2インバータ121aは、第2キャパシタ123からの電力を交流に変換して第2副駆動モータ121に供給する。
【0059】
次に、
図8に示すように、第1キャパシタ122及び第2キャパシタ123のマイナス側の端子は、夫々バッテリ18のプラス側の端子に接続されている。これにより、第1キャパシタ122とバッテリ18、及び第2キャパシタ123とバッテリ18は、夫々電気的に直列に接続される。さらに、第1キャパシタ122の出力端子(プラス側の端子)は第1インバータ120aに接続され、第1キャパシタ122からの電力が交流に変換されて第1副駆動モータ120に供給される。同様に、第2キャパシタ123の出力端子(プラス側の端子)は第2インバータ121aに接続され、第2キャパシタ123からの電力が交流に変換されて第2副駆動モータ121に供給される。また、第1、第2キャパシタの出力端子とバッテリ18のプラス側端子の間には、高圧DC/DCコンバータ26aが接続されており、第1、第2キャパシタとバッテリ18との間で相互に充電可能に構成されている。
【0060】
この構成により、
図7に示すように、第1キャパシタ122からの電力は、第1インバータ120aによって交流に変換され、第1ワイヤハーネス122aを介して、インホイールモータである第1副駆動モータ120に供給される。同様に、第2キャパシタ123からの電力は、第2インバータ121aによって交流に変換され、第2ワイヤハーネス123aを介して、インホイールモータである第2副駆動モータ121に供給される。このため、第1、第2副駆動モータに夫々電力を供給する第1ワイヤハーネス122a及び第2ワイヤハーネス123aを極めて短くすることができる。これにより、第1、第2ワイヤハーネスが、高電圧を伝送するために絶縁耐圧の高い絶縁材で被覆されたとしても、絶縁材による重量の増加を少なく抑えることができる。
【0061】
本発明の第2実施形態の車両駆動装置110によれば、第1キャパシタ122がエンジン12と右側の前輪2bとの間に、第2キャパシタ123がエンジン12と左側の前輪2bとの間に夫々配置されている。この結果、第1、第2キャパシタとインホイールモータである第1、第2副駆動モータとの間の距離を更に短くすることができ、ワイヤハーネスの絶縁耐圧を高めることによる重量の増加を更に抑制することができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、エンジン及び主駆動モータの動力がプロペラシャフトによって伝達され、後輪が駆動されていたが、主駆動モータに相当するモータを備えていない車両駆動装置に本発明を適用することもできる。また、上述した実施形態においては、エンジンの駆動力により後輪が駆動されていたが、エンジン及びインホイールモータによって前輪が駆動される車両駆動装置に本発明を適用することもできる。
【0063】
さらに、上述した実施形態においては、エンジンの出力軸がプロペラシャフトに連結されていたが、原動機の直後にトランスミッション等を配置し、トランスミッション等の出力軸がプロペラシャフトに連結されるように、本発明を構成することもできる。