特開2020-63213(P2020-63213A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-63213(P2020-63213A)
(43)【公開日】2020年4月23日
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20200331BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20200331BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200331BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20200331BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200331BHJP
【FI】
   A61K8/06
   A61K8/87
   A61K8/73
   A61Q1/00
   A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-196333(P2018-196333)
(22)【出願日】2018年10月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】木崎 寿美子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB212
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC02
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】
高分子物質を用いた、経時安定性の良好な水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】
疎水変性ポリエーテルウレタンと、ジェランガムと、キサンタンガムを含有する水中油型乳化組成物に関する。さらには、乳化剤として界面活性剤を配合せずとも、安定性の良好な水中油乳化組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水変性ポリエーテルウレタンと、ジェランガムと、キサンタンガムを含有する水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子物質を用いた乳化方法として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いた乳化方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
疎水変性ポリエーテルウレタンを配合した皮膚外用剤は独特の弾力感を有するため、美容液などに活用されている(特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−140342号公報
【特許文献2】特開2009−215283号公報
【特許文献3】特開2000−234085号公報
【特許文献4】特開2013−82663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いた乳化方法では、高分子の構造だけでは乳化安定性を維持することが困難であった。そこで、本発明においては、新たな高分子物質を用いた、経時安定性の良好な水中油型乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
疎水変性ポリエーテルウレタンと、ジェランガムと、キサンタンガムを含有する水中油型乳化組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化組成物は、経時安定性が良好であるという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
本発明の水中油型乳化組成物は、疎水変性ポリエーテルウレタンと、ジェランガムと、キサンタンガムを含有する。
【0010】
本発明の水中油型乳化組成物に配合する疎水変性ポリエーテルウレタンは、親水基部を骨格とし、末端に疎水性部分をもつ両親媒性コポリマーであり、水性媒体中でコポリマーの疎水性部分同士が会合し増粘作用を示すものであれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表わされるもの等が挙げられる。
【0011】
R1−{(O-R2k−OCONH−R3[−NHCOO−(R4−O)n−R5hm (1)
【0012】
上記式(1)中、R1、R2およびR4は、互いに同一でも異なっても良い炭化水素基を表し、R3はウレタン結合を有していても良い炭化水素基を表し、R5は直鎖、分岐鎖または2級の炭化水素基を表し、mは2以上の数であり、hは1以上の数であり、kおよびnは独立に0〜1000の範囲の数である。R1、R2およびR4の炭素数は2〜4、R3の炭素数は1〜10、R5の炭素数は8〜36であることが好適である。またmは好ましくは2、hは好ましくは1であり、kは1〜500が好ましく、100〜300がより好ましい。またnは1〜200が好ましく、10〜100がより好ましい。
【0013】
上記一般式(1)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンは、例えば、R1−[(O−R2k−OH]mで表される1種または2種以上のポリエーテルポリオールと、R3−(NCO)h+1で表される1種または2種以上のポリイソシアネートと、HO−(R4−O)n−R5で表される1種または2種以上のポリエーテルモノアルコールとを反応させることにより得ることができる。
【0014】
この場合、一般式(1)中のR1〜R5は、上記反応に用いるR1−[(O−R2k−OH]m、R3−(NCO)h+1、HO−(R4−O)n−R5により決定される。これら3つの構成成分の仕込み比は、特に限定されないが、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルモノアルコール由来の水酸基と、ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の比が、NCO/OH=0.8:1〜1.4:1であることが好ましい。
【0015】
上記一般式(1)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンの中でも、ポリエチレングリコールの両末端をデシルテトラデシルアルコールで修飾した構造を有し、平均重量分子量が約5万程度(GPC法)のものが好適に用いられる。このような疎水変性ポリエーテルウレタンとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)−240/デシルテトラデセス−20/ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)コポリマー等が挙げられる。このPEG−240/デシルテトラデセス−20/HDIコポリマーはアデカノールGT−700としてADEKA(株)から販売されている。なお、疎水変性ポリエーテルウレタンは種々のものを組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の水中油型乳化組成物における疎水変性ポリエーテルウレタンの含有量は、特に限定されないが、水中油型乳化組成物全量に対し0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%配合する。
【0017】
本発明で用いるジェランガムはブドウ糖を基質として細菌Pseudomonas elodeaの純粋培養によって得られるヘテロポリサッカライドであり、通常化粧料に配合しうるものでは種類を問わない。かかるジェランガムとしては、市販の商品名ゲルコゲルシリーズ(CP Kelco社製)が例示される。
【0018】
ジェランガムは、水中油型乳化組成物に対し0.001〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%配合する。
【0019】
本発明で用いるキサンタンガムは炭水化物をXanthomonas campetrisで発酵して得られる多糖類であり、通常化粧料に配合しうるものでは種類を問わない。かかるキサンタンガムとしては、市販の商品名ケルトロールシリーズ、ケルデントシリーズ(以上CP Kelco社製)、エコーガムシリーズ(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、ノムコートZシリーズ(日清オイリオグループ社製)、Rhodicare S(ローディア日華)等が例示される。
【0020】
キサンタンガムは、水中油型乳化組成物全量に対し0.1〜1質量%配合することが好ましい。
【0021】
本発明は、水中油型乳化組成物であり、油性成分を含有する。かかる油性成分としては特に限定されず、例えば、アボカド油,アルモンド油,オリーブ油,マカデミアンナッツ油,ヒマシ油,ツバキ油,ホホバ油,ゴマ油,サフラワー油,大豆油,パーシック油,綿実油,ヒマワリ油,アマニ油,カカオ脂,ヤシ脂,モクロウ,カルナウバロウ,キャンデリラロウ等の植物性油脂類、卵黄油,タートル油,ミンク油,タラ肝油,サメ肝油,オレンジラフィー油,牛脂,豚脂,羊脂,ミツロウ,鯨ロウ,ラノリン等の動物性油脂類、硬化油類、流動パラフィン,ワセリン,イソパラフィン,セレシン,スクワラン,スクワレン,パラフィン,マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ラウリン酸,ミリスチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,ベヘニン酸,ウンデシレン酸,ラノリン脂肪酸,イソステアリン酸,リノール酸,リノレン酸,エイコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸等の脂肪酸類、ラウリルアルコール,セチルアルコール,パルミチルアルコール,ミリスチルアルコール,ステアリルアルコール,オレイルアルコール,ベヘニルアルコール,ラノリンアルコール,水添ラノリンアルコール,ヘキシルデカノール,オクチルドデカノール等の高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプロピル,ステアリン酸ブチル,オレイン酸デシル,ミリスチン酸ミリスチル,ミリスチン酸オクチルドデシル,ラウリン酸ヘキシル,ジオレイン酸プロピレングリコール,モノステアリン酸プロピレングリコール,モノステアリン酸エチレングリコール,トリミリスチン酸グリセリン,酢酸ラノリン,乳酸セチル,乳酸ミリスチル,ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル,リンゴ酸イソステアリル,トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル,2−エチルヘキサン酸セチル,テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット,ジカプリン酸ネオペンチルグリコール,イソノナン酸イソノニル,イソステアリン酸イソブチル,トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン,オレイン酸オレイル,イソノナン酸イソトリデシル,テトライソステアリン酸ペンタエリトリット,イソブタン酸イソステアリル,ダイマー酸ジイソプロピル,テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット,テトライソステアリン酸ペンタエリトリット,ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル,トリイソステアリン酸グリセリル,トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル,トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン,イソノナン酸イソトリデシル,テトライソステアリン酸ペンタエリスリット,トリエチルヘキサン酸エリスリチル,ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル,パルミチン酸2−エチルヘキシル,トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等のエステル類、ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明は水中油型乳化組成物であり、水性成分を含有する。かかる水性成分としては、例えば、水、上記以外の水膨潤性増粘剤、保湿剤、防腐剤、分散剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等が挙げられる。
【0023】
本発明の水中油型乳化組成物は、金属酸化物微粒子や有機紫外線吸収剤を配合することにより、日焼け止め化粧料として使用することができる。
【0024】
金属酸化物微粒子としては特に限定されないが、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛から選択される1種又は2種を用いることが一般的である。金属酸化物微粒子は、そのまま本発明の乳化組成物に配合することも可能であるが、シリコーン油、エステル油、水性成分に予め分散させたものを用いることも可能である。また、金属酸化物微粒子を板状粉体の表面に被覆した粉体及びかかる粉体を表面改質剤で改質した粉体を用いることもできる。
【0025】
有機紫外線吸収剤の種類は特に限定されず、公知の有機紫外線吸収剤を制限無く使用できる。このような公知の有機紫外線吸収剤として、例えばパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル等のケイ皮酸誘導体;パラアミノ安息香酸(以下、「PABA」と略記する)、エチルPABA、エチル−ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル−ジメチルPABA、グリセリルPABA等のPABA誘導体;ホモサラート、エチルヘキシルサリチラート、ジプロピレングリコールサリチラート、TEAサリチラート等のサリチル酸誘導体;ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−3またはオキシベンゾン、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−5、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−8、ベンゾフェノン−9、ベンゾフェノン−12等のベンゾフェノン誘導体;3−ベンジリデンショウノウ、4−メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ等のベンジリデンショウノウ誘導体;アニソトリアジン、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6−トリス(ジイソブチル−4’−アミノベンザルマロナート)−s−トリアジン、2,4−ビス−〔{4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル〕−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス〔4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕−1,3,5−トリアジン等のトリアジン誘導体;フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム等のフェニルベンゾイミダゾール誘導体;ドロメトリゾールトリシロキサン、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)等のフェニルベンゾトリアゾール誘導体;アントラニル酸メンチル等のアントラニル誘導体;ジメトキシベンジリデンオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル等のイミダゾリン誘導体;ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン等のベンザルマロナート誘導体;1,1−ジカルボキシ(2,2’−ジメチルプロピル)−4,4−ジフェニルブタジエン等の4,4−ジアリールブタジエン誘導体;オクトクリレン、2−〔4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル〕安息香酸ヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンなどが挙げられる。有機紫外線吸収剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
有機紫外線吸収剤を配合する場合の配合量は1〜20質量%が好ましい。1質量%未満では充分な日焼け止め効果を得ることができず、20質量%を超えるとべたつきや、皮膚への一次刺激性が高まるなど、使用感に悪影響を及ぼす。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物は、通常水中油型乳化組成物に使用される界面活性剤を乳化剤として使用することなく、安定な水中油型乳化組成物を得ることができる。
【0028】
本発明の水中油型乳化組成物は、コロイドミル、高圧ホモジナイザーのような特殊な乳化装置を用いずとも、通常のホモジナイザー、ディスパーを用いて乳化することができる。
【0029】
本願発明の水中油型乳化組成物には、上述の必須成分、任意成分の他に、必要に応じて通常水中油型乳化組成物に配合される、水性成分、保湿剤、色素、界面活性剤、紫外線吸収剤、増粘剤、美容成分、香料、高分子物質、防菌防微剤、アルコール類、粉体、スクラブ剤、生体由来成分等を適宜配合することができる。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物は、例えば、ローション剤、乳剤等流動性のある剤型や、流動性を有しない軟膏等の剤型で用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0032】
まず、調製した水中油型乳化組成物の評価方法を説明する。
【0033】
[乳化状態]
調製した水中油型乳化組成物の乳化状態は、乳化直後の状態を目視で観察した。
均一な乳化状態を保っているものを「○」
やや分離気味なものを「△」
分離しているものを「×」
としてそれぞれ評価した。
【0034】
[安定性]
調製した水中油型乳化組成物をマヨネーズ瓶に充填し50℃の恒温槽にて1ヶ月間静置した後、状態を目視で観察した。
均一な乳化状態を保っているものを「○」
やや分離気味なものを「△」
分離しているものを「×」
としてそれぞれ評価した。
【0035】
以下の実施例では、ジェランガムとしてケルコゲルHMを、キサンタンガムとしてエコーガムTを、疎水変性ポリエーテルウレタンとしてアデカノール GT−700をそれぞれ使用した。
【0036】
【表1】
【0037】
水溶性高分子としてジェランガム、キサンタンガム、疎水変性ポリウレタンから選択される1種又は2種を用いた比較例においては経時で乳化状態を保つことが困難であり、初めから乳化できないものもあった。これに対し、本発明の実施例にかかるジェランガムとキサンタンガムと疎水変性ポリエーテルウレタンを併用した実施例1は、乳化直後の乳化状態、経時安定性ともに良好であった。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】