【実施例】
【0104】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0105】
なお、以下において「モル分率」とは、イオン性両親媒性物質及び非イオン性両親媒性物質の総モル数に対する、イオン性両親媒性物質のモル数を言う。
【0106】
<フィタントリオール及びジラウロイル酸グルタミン酸リシンナトリウムを用いた乳化>
[親水性微粒子の合成]
室温下で、ペンタンジオール2gに、フィタントリオール(PHT)とジラウロイル酸グルタミン酸リシンナトリウム(DLGL)30質量%水溶液を添加し、溶液を得た。ここで、PHT及びDLGLの質量を計1gに固定して、PHT:DLGL質量比を0.9:0.1(DLGLモル分率0.01),0.8:0.2(DLGLモル分率0.03),0.7:0.3(DLGLモル分率0.05),0.6:0.4(DLGLモル分率0.07),0.5:0.5(DLGLモル分率0.11),0.4:0.6(DLGLモル分率0.15),0.3:0.7(DLGLモル分率0.22),0.2:0.8(DLGLモル分率0.32),0.1:0.9(DLGLモル分率0.52),DLGL質量1g(DLGLモル分率1)に変更した。室温下で、この溶液に精製水97gを添加し、撹拌することにより親水性微粒子の水分散液を得た。
【0107】
得られた親水性微粒子の水分散液について、動的光散乱法により測定し、ヒストグラム解析を行い、親水性微粒子の平均粒径を求めた。表1に、DLGLモル分率と得られた親水性微粒子の平均粒径の比を示す。
図1は、親水性微粒子の平均粒径(nm)対DLGLモル分率プロットであり、表1を図としたものである。
【0108】
【表1】
【0109】
PHT:DLGLモル比を変更して得られたそれぞれの親水性微粒子の分散液について、ゼータ電位を測定した。
図2は、分散液中の親水性微粒子のゼータ電位対DLGLモル分率のプロットである。DLGLモル分率が0.01〜0.11においては、DLGLの割合の増加にしたがって、負の電荷が増加することが分かった。これは、DLGLの割合が増加するにしたがって、DLGLが有する負電荷が親水性微粒子の表面に増加することによるものであると考えられる。一方で、DLGLモル分率について0.11からさらにDLGL量が増加すると、ゼータ電位は略一定となる。これは、親水性微粒子の表面のDLGL量が一定量を超えると、DLGL単独の物性が優先して現れるためと考えられる。このことは、親水性粒子中には、イオン性両親媒性物質を特定の比率を超えて複合できないことを意味している。なお、通常の一成分から構成されるベシクルに、その構成成分以外のイオン性両親媒性物質を混合させた場合でも、一定比率までしか混合できないことが分かっている。また、極少量(例えばモル分率0.03)のDLGLを添加した場合にも、ゼータ電位が変化することから、PHTとDLGLが複合されたことが分かった。
【0110】
[溶媒の影響の検討]
室温下で、PHT 0.5gをグリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール又はペンタンジオールのいずれかの溶媒2gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液を0.5g添加し、溶液を得た。この溶液を室温下で撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。
【0111】
表2に、それぞれの溶媒を用いて得られた親水性微粒子のヒストグラム解析により求めた平均粒径、及びゼータ電位を示す。グリセリン、1,3−ブタンジオール及びジプロピレングリコールを用いた場合、白色透明の分散液が得られた。また、ペンタンジオールを用いた場合、透明の分散液が得られた。このように、用いる溶媒を変化させることで、得られる親水性微粒子の粒径を制御できることが分かった。
【0112】
【表2】
【0113】
[メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタンの分散処理]
(実施例1)
室温下で、PHT1gをペンタンジオール4gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液1g(DLGL 0.3g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル分率0.11)。次いで、この溶液を撹拌した精製水84gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン(平均粒径0.9μm)10gを滴下した。得られた液体は、白色の分散液であった。なお、この分散液中、PHT:DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン=1:0.3:4:84.7:10(質量比)である。
【0114】
(比較例1)
室温下で、撹拌した精製水77.7gに、ペンタンジオール4g及び30質量%DLGL水溶液8.3g(DLGL 2.49g)を滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン(平均粒径0.9μm)10gを滴下した。得られた液体は、白色の分散液であった。なお、この分散液中、DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン=2.49:4:83.51:10(質量比)である。
【0115】
実施例1及び比較例1において得られた分散液を、製造してから1時間後に光学顕微鏡により観察した。
図3は実施例1において得られた平均粒径0.9μmのメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン分散液の光学顕微鏡写真図である。また、
図4は比較例1において得られた平均粒径0.9μmのメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン分散液の光学顕微鏡写真図である。PHT及びDLGLにより形成された親水性微粒子により得られた実施例1の分散液(
図3参照)は、DLGLのみにより形成された親水性微粒子により得られた比較例1の分散液(
図4参照)に比べ、酸化チタンが均一に分散していることが分かった。
【0116】
実施例1及び比較例1において得られた分散液を、サンプル瓶に移し、4週間静置した。
図5は、実施例1及び比較例1において得られた分散液の4週間静置後の写真図である(写真左:実施例1、写真右:比較例1)。実施例1の分散液においては、4週間静置後も良好な分散状態を維持していたのに対し、比較例1の分散液においては、4週間静置後には白色の粉体の沈降が確認された。
【0117】
[メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタンの分散処理]
(実施例2)
室温下で、PHT1gをペンタンジオール4gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液1g(DLGL 0.3g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル分率0.11)。次いで、この溶液を撹拌した精製水84gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン(平均粒径0.6μm)10gを滴下した。得られた液体は、白色の分散液であった。なお、この分散液中、PHT:DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン=1:0.3:4:84.7:10(質量比)である。
【0118】
(比較例2)
室温下で、撹拌した精製水77.7gに、ペンタンジオール4g及び30質量%DLGL水溶液8.3g(DLGL 2.49g)を滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン(平均粒径0.6μm)10gを滴下した。得られた液体は、白色の分散液であった。なお、この分散液中、DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン=2.49:4:83.51:10(質量比)である。
【0119】
実施例2及び比較例2において得られた分散液を、製造してから1時間後に光学顕微鏡により観察した。
図6は実施例2において得られた平均粒径0.6μmのメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン分散液の光学顕微鏡写真図である。また、
図7は比較例2において得られた平均粒径0.6μmのメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化チタン分散液の光学顕微鏡写真図である。PHT及びDLGLにより形成された親水性微粒子により得られた実施例2の分散液(
図6参照)は、DLGLのみにより形成された親水性微粒子により得られた比較例2の分散液(
図7参照)に比べ、酸化チタンが均一に分散していることが分かった。
【0120】
実施例2及び比較例2において得られた分散液を、サンプル瓶に移し、4週間静置した。
図8は、実施例2及び比較例2において得られた分散液の4週間静置後の写真図である(写真左:実施例2、写真右:比較例2)。実施例2の分散液においては、4週間静置後も良好な分散状態を維持していたのに対し、比較例2の分散液においては、4週間静置後には白色の粉体の沈降が確認された。
【0121】
[メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化鉄の乳化処理]
(実施例3)
室温下で、PHT1gをペンタンジオール4gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液1g(DLGL 0.3g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル比0.11)。次いで、撹拌した精製水89gに、この溶液を滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化鉄(平均粒径7μm)5gを滴下した。得られた液体は、赤色の分散液であった。なお、この分散液中、PHT:DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化鉄=1:0.3:4:89.7:5(質量比)である。
【0122】
(比較例3)
室温下で、撹拌した精製水82.7gに、ペンタンジオール4g及び30質量%DLGL水溶液8.3g(DLGL 2.49g)を滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化鉄(平均粒径7μm)5gを滴下した。得られた液体は、赤色の分散液であった。なお、この分散液中、DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化鉄=2.49:4:88.51:5(質量比)である。
【0123】
実施例3及び比較例3において得られた分散液を、製造してから1時間後に光学顕微鏡により観察した。
図9は実施例3において得られたメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化鉄分散液の光学顕微鏡写真図である。また、
図10は比較例3において得られたメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾酸化鉄分散液の光学顕微鏡写真図である。PHT及びDLGLにより形成された親水性微粒子により得られた実施例3の分散液(
図9参照)は、DLGLのみにより形成された親水性微粒子により得られた比較例3の分散液(
図10参照)に比べ、酸化鉄が均一に分散していることが分かった。
【0124】
実施例3及び比較例3において得られた分散液を、サンプル瓶に移し、4週間静置した。
図11は、実施例3及び比較例3において得られた分散液の4週間静置後の写真図である(写真左:実施例3、写真右:比較例3)。実施例3の分散液においては、4週間静置後も良好な分散状態を維持していたのに対し、比較例3の分散液においては、4週間静置後には白色の粉体の沈降が確認された。
【0125】
[メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾タルクの乳化処理]
(実施例4)
室温下で、PHT1gをペンタンジオール4gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液1g(DLGL 0.3g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル分率0.11)。次いで、この溶液を撹拌した精製水84gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾タルク(平均粒径13μm)10gを滴下した。得られた液体は、白色の分散液であった。なお、この分散液中、PHT:DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾タルク=1:0.3:4:84.7:10(質量比)である。
【0126】
(比較例4)
室温下で、撹拌した精製水77.7gに、ペンタンジオール4g及び30質量%DLGL水溶液8.3g(DLGL 2.49g)を滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾タルク(平均粒径13μm)10gを滴下した。得られた液体は、白色の分散液であった。なお、この分散液中、DLGL:ペンタンジオール:精製水:メチルハイドロジェンポリシロキサン修飾タルク=2.49:4:83.51:10(質量比)である。
【0127】
実施例4及び比較例4において得られた分散液を、製造してから1時間後に光学顕微鏡により観察した。
図12は実施例4において得られたメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾タルク分散液の光学顕微鏡写真図である。また、
図13は比較例4において得られたメチルハイドロジェンポリシロキサン修飾タルク分散液の光学顕微鏡写真図である。PHT及びDLGLにより形成された親水性微粒子により得られた実施例4の分散液(
図12参照)は、DLGLのみにより形成された親水性微粒子により得られた比較例4の分散液(
図13参照)に比べ、タルクが均一に分散していることが分かった。
【0128】
実施例4及び比較例4において得られた分散液を、サンプル瓶に移し、4週間静置した。
図14は、実施例4及び比較例4において得られた分散液の4週間静置後の写真図である(写真左:実施例4、写真右:比較例4)。実施例4の分散液においては、4週間静置後に沈降が見られたが、分散している比較例4の分散液においては、4週間静置後には白色の粉体の沈降が確認された。
【0129】
[スクワランの乳化処理]
(実施例5)
室温下で、PHT1.4gをペンタンジオール4gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液0.6g(DLGL 0.18g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル分率0.05)。次いで、この溶液を撹拌した精製水84gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、スクワラン10gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、この分散液中、PHT:DLGL:ペンタンジオール:精製水:スクワラン=1.4:0.18:4:84.42:10(質量比)である。
【0130】
(比較例5)
室温下で、撹拌した精製水73.5gに、ペンタンジオール4g及び30質量%DLGL水溶液12.5g(DLGL 3.75g)を滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、スクワラン10gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、DLGL:ペンタンジオール:精製水:スクワラン=3.75:4:82.25:10(質量比)である。
【0131】
実施例5及び比較例5において得られた乳化物を、サンプル瓶に移し、1週間静置した。
図15は、実施例5及び比較例5において得られた分散液の1週間静置後の写真図である(写真左:実施例5、写真右:比較例5)。実施例5の乳化物においては、1週間静置後も良好な分散状態を維持していたのに対し、比較例5の乳化物においては、1週間静置後には白色の液状物の沈降が確認された。
【0132】
<テトラヒドロファルネシル酢酸グリセリル及びジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムを用いた乳化>
[流動パラフィンの分散処理]
(実施例6)
室温下で、テトラヒドロファルネシル酢酸グリセリル0.6gをペンタンジオール2.0gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液0.4g(DLGL 0.12g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル分率0.084)。次いで、この溶液を撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、流動パラフィン100gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、テトラヒドロファルネシル酢酸グリセリル:DLGL:ペンタンジオール:精製水:流動パラフィン=0.6:0.12:2.0:97.28:100(質量比)である。
【0133】
[MCT油の分散処理]
(実施例7)
室温下で、テトラヒドロファルネシル酢酸グリセリル0.6gをペンタンジオール2.0gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液0.4g(DLGL 0.12g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル分率0.084)。次いで、この溶液を撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、MCT油100gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、テトラヒドロファルネシル酢酸グリセリル:DLGL:ペンタンジオール:精製水:MCT油=0.6:0.12:2.0:97.28:100(質量比)である。
【0134】
実施例6及び実施例7において得られたエマルションを、製造してから1時間後に光学顕微鏡により観察した。
図16、
図17はそれぞれ実施例6、実施例7において得られたエマルションの光学顕微鏡写真図である。いずれのエマルションにおいても、油分が均一に分散していることが分かった。
【0135】
実施例6及び実施例7において得られた分散液を、サンプル瓶に移し、1ヶ月静置した。
図16は、実施例6及び実施例7において得られた分散液の1ヶ月静置後の写真図である(写真左:実施例6、写真右:実施例7)。いずれの分散液でもエマルション粒子のコアセルベーションが僅かに見られたが、乳化状態を維持していることが分かった。
【0136】
<フィタントリオール及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドを用いた乳化>
[親水性微粒子の合成]
室温下で、PHT及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)をエタノール2gに溶解させ溶液を得た。ここで、PHT及びCTACの質量を計1gに固定して、PHT:CTAC質量比を0.97:0.03(CTACモル分率0.03),0.94:0.06(CTACモル分率0.07),0.9:0.1(CTACモル分率0.11),0.7:0.3(CTACモル分率0.33),0.3:0.7(CTACモル分率0.73),0:1(CTACモル分率1)に変更した。室温下で、この溶液を撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。なお、PHT:CTAC=0.3:0.7、0:1の場合、親水性微粒子は得られなかった。
【0137】
得られた親水性微粒子の水分散液について、動的光散乱法により測定し、ヒストグラム解析を行い、親水性微粒子の平均粒径を求めた。表3に、CTACモル分率と得られた親水性微粒子の平均粒径の比を示す。
【0138】
【表3】
【0139】
また、PHT:CTACモル比を変更して得られたそれぞれの親水性微粒子の分散液について、ゼータ電位を測定した。
図18は、分散液中の親水性微粒子のゼータ電位対CTACモル分率のプロットである。CTACモル分率が0.03〜0.31の範囲においては、CTACの割合の増加にしたがって、正の電荷が増加することが分かった。これは、CTACの割合が増加するにしたがって、CTACが有する正電荷が親水性微粒子の表面に増加することによるものであると考えられる。一方で、CTACモル分率について0.31からさらにCTAC量が増加すると、PHTがCTACによって可溶化されたと考えられる。
【0140】
[スクワランの分散処理]
(実施例8)
室温下で、PHT 1.05g及びCTAC 0.45gをエタノール3gに溶解させ溶液を得た(CTACモル分率0.31)。次いで、この溶液を撹拌した精製水85.5gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、スクワラン10gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、PHT:CTAC:エタノール:精製水:スクワラン=1.05:0.45:3:85.5:10(質量比)である。
【0141】
[エチルヘキサン酸セチルの分散処理]
(実施例9)
室温下で、PHT 1.05g及びCTAC 0.45gをエタノール3gに溶解させ溶液を得た(CTACモル分率0.31)。次いで、この溶液を撹拌した精製水85.5gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、エチルヘキサン酸セチル10gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、PHT:CTAC:エタノール:精製水:エチルヘキサン酸セチル=1.05:0.45:3:85.5:10(質量比)である。
【0142】
実施例8及び実施例9において得られた分散液を、製造してから1時間後に光学顕微鏡により観察した。
図19、
図20はそれぞれ実施例8、実施例9において得られたエマルションの光学顕微鏡写真図である。いずれの分散液においても、油分が均一に分散していることが分かった。
【0143】
実施例8及び実施例9において得られた分散液を、サンプル瓶に移し、4週間静置した。
図21は、実施例8及び実施例9において得られたエマルションの4週間静置後の写真図である(写真左:実施例8、写真右:実施例9)。いずれのエマルションでもエマルション粒子のコアセルベーションが僅かに見られたが、乳化状態を維持していることが分かった。
【0144】
<フィタントリオール及びラウリル硫酸ナトリウムを用いた乳化>
[親水性微粒子の合成]
室温下で、PHT及びラウリル硫酸ナトリウム(SLS)をペンタンジオール2gに溶解させ溶液を得た。ここで、PHT及びSLSの質量を計1gに固定して、PHT:SLS質量比を0.97:0.03(SLSモル分率0.03),0.94:0.06(SLSモル分率0.07),0.9:0.1(SLSモル分率0.11),0.7:0.3(SLSモル分率0.33),0.3:0.7(SLSモル分率0.73),0:1(SLSモル分率1)に変更した。室温下で、この溶液を撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。なお、PHT:SLS=0.3:0.7、0.1:0.9の場合、親水性微粒子は得られなかった。
【0145】
得られた親水性微粒子の水分散液について、動的光散乱法により測定し、ヒストグラム解析を行い、親水性微粒子の平均粒径を求めた。表4に、SLSモル分率と得られた親水性微粒子の平均粒径の比を示す。
【0146】
【表4】
【0147】
また、PHT:SLSモル比を変更して得られたそれぞれの親水性微粒子の分散液について、ゼータ電位を測定した。
図22は、分散液中の親水性微粒子のゼータ電位対SLSモル分率のプロットである。SLSモル分率が0.03〜0.33の範囲においては、SLSの割合の増加にしたがって、負の電荷が増加することが分かった。これは、SLSの割合が増加するにしたがって、SLSが有する負電荷が親水性微粒子の表面に増加することによるものであると考えられる。一方で、SLSモル分率について0.33からさらにSLS量が増加すると、PHTがSLSによって可溶化されたと考えられる。
【0148】
[スクワランの分散処理]
(実施例10)
室温下で、PHT 1.05g及びSLS0 .45gをペンタンジオール3gに溶解させ溶液を得た(SLSモル分率0.33)。次いで、この溶液を撹拌した精製水85.5gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、スクワラン10gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、PHT:SLS:エタノール:精製水:スクワラン=1.05:0.45:3:85.5:10(質量比)である。
【0149】
[エチルヘキサン酸セチルの分散処理]
(実施例11)
室温下で、PHT 1.05g及びSLS 0.45gをペンタンジオール3gに溶解させ溶液を得た(SLSモル分率0.33)。次いで、この溶液を撹拌した精製水85.5gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌しながら、エチルヘキサン酸セチル10gを滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、PHT:SLS:エタノール:精製水:エチルヘキサン酸セチル=1.05:0.45:3:85.5:10(質量比)である。
【0150】
実施例10及び実施例11において得られた分散液を、製造してから1時間後に光学顕微鏡により観察した。
図23、
図24はそれぞれ実施例10、実施例11において得られたエマルションの光学顕微鏡写真図である。いずれの分散液においても、油分が均一に分散していることが分かった。
【0151】
実施例10及び実施例11において得られた分散液を、サンプル瓶に移し、4週間静置した。
図25は、実施例10及び実施例11において得られたエマルションの4週間静置後の写真図である(写真左:実施例10、写真右:実施例11)。いずれのエマルションでもエマルション粒子のコアセルベーションが僅かに見られたが、乳化状態を維持していることが分かった。
【0152】
<両性界面活性剤の使用の検討>
[親水性微粒子の合成]
室温下で、PHT及び3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホナート(ラウリルスルホベタイン;LSB)をペンタンジオール2gに溶解させて溶液を得た。ここで、PHT及びLSBの質量を計1gに固定して、PHT:LSB質量比を0.97:0.03(LSBモル分率0.03),0.9:0.1(LSBモル分率0.1),0.7:0.3(LSBモル分率0.3),0.5:0.5(LSBモル分率0.5),0.3:0.7(LSBモル分率0.7),0.2:0.8(LSBモル分率0.8),0:1(LSBモル分率1)に変更した。この溶液を室温下で撹拌した精製水97gに滴下した。
【0153】
表5に、LSBモル分率と得られた液体の外観及び偏光顕微鏡観察により特定した組織構造を示す。PHTと、両性界面活性剤であるLSBとを用いた場合、一部の試料では、ラメラ液晶等組織構造が観測され、親水性微粒子が形成されていることが示唆されたが、均一な系が得られなかった。
【0154】
【表5】
【0155】
<非イオン性両親媒性物質の使用の検討>
[親水性微粒子の合成]
室温下で、PHT及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO30)をペンタンジオール2gに溶解させて溶液を得た。ここで、PHT及びHCO30の質量を計1gに固定して、PHT:HCO30質量比を0.9:0.1(HCO30モル分率0.02),0.6:0.4(HCO30モル分率0.09),0.5:0.5(HCO30モル分率0.13),0.3:0.7(HCO30モル分率0.25),0:1(HCO30モル分率1)に変更した。この溶液を室温下で撹拌した精製水97gに滴下した。
【0156】
表6に、HCO30モル分率、得られた液体の外観及び偏光顕微鏡観察により特定した組織構造を示す。PHTと、非イオン性両親媒性物質であるHCO30とを用いた場合、いずれの試料でも、ラメラ液晶等組織構造が観測されず、親水性微粒子を形成することはできなかった。
【0157】
【表6】
【0158】
<非イオン性両親媒性物質及びイオン性両親媒性物質の組合せの影響>
(実施例12)
室温下で、テトラヒドロファルネシル酢酸グリセリル0.91gをペンタンジオール2.0gに溶解させた後、SLS 0.09gを添加し、溶液を得た(SLSモル分率0.1)。次いで、この溶液を撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。
【0159】
(実施例13)
室温下で、テトラヒドロファルネシル酢酸グリセリル0.74gをペンタンジオール2.0gに溶解させた後、SLS0.26gを添加し、溶液を得た(SLSモル分率0.3)。次いで、この溶液を撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。
【0160】
(実施例14)
室温下で、セタノール0.44gをペンタンジオール2.0gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液1.9g(DLGL 0.57g)を添加し、溶液を得た(DLGLモル分率0.1)。次いで、この溶液を撹拌した精製水95.66gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。
【0161】
(実施例15)
室温下で、セタノール0.66gをペンタンジオール2.0gに溶解させた後、SLS0.34gを添加し、溶液を得た(SLSモル分率0.3)。次いで、この溶液を撹拌した精製水97gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。
【0162】
以上のように、実施例12〜15において得られた親水性微粒子は、非イオン性両親媒性物質とイオン性両親媒性物質とが複合したものであることが分かった。そこで、実施例6及び実施例12〜15において得られた親水性微粒子について、ヒストグラム解析により平均粒径を求めた。表7に、実施例6及び実施例12〜15において得られた親水性微粒子の平均粒径を、非イオン性両親媒性物質とイオン性両親媒性物質の種類及びイオン性両親媒性物質のモル分率と共に示す。
【0163】
【表7】
【0164】
<乳化剤のW/O型エマルションへの使用の検討>
(実施例16)
室温下で、PHT 0.225gをペンタンジオール0.5gに溶解させた後、30質量%DLGL水溶液0.025g(DLGL 0.0075g)を添加し、溶液を得た(PHT:DLGLモル比=0.99:0.01)。次いで、この溶液を撹拌した精製水59.25gに滴下し、親水性微粒子の水分散液を得た。この水分散液を撹拌したスクワラン40g中へ滴下した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、このエマルション中、PHT:DLGL:ペンタンジオール:精製水:スクワラン=0.225:0.025:0.5:59.25:40(質量比)である。
【0165】
実施例16において得られたエマルションを、サンプル瓶に移し、製造してから1時間後に目視により観察した。
図26は、実施例16において得られたW/O型エマルションの1時間静置後の写真図である。このように、乳化物が形成されていることが分かった。このようにして得られた乳化物を水に滴下したところ、水と混合しなかった。したがって、W/O型エマルションが形成されたことが分かった。
【0166】
以上からも明らかなように、本発明の乳化剤によれば、油性成分や疎水性粉末を極めて安定的に、長期間にわたって乳化分散させることが分かった。