【解決手段】電極10は、白金族金属と、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属とから形成され、白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物を焼成することで、多数の微細な流路が形成されたポーラス構造の薄板状に成形されている。電極10では、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物の全重量に対するそれら遷移金属の重量比が定められている。
前記電極では、前記選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている請求項1に記載の電極。
前記遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、前記電極では、前記Niの仕事関数と前記Feの仕事関数と前記Cuの仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記Niの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比と前記Feの微粉体の該金属微粉体混合物の全重量に対する重量比と前記Cuの微粉体の該金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の電極。
前記白金族金属の微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、5〜10%の範囲、前記Niの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、前記Feの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、前記Cuの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜5%の範囲にある請求項4に記載の電極。
前記電極では、所定面積の薄板状に圧縮した前記金属微粉体混合物の焼成時に最も融点のCuの微粉体が溶融し、溶融したCuをバインダーとして前記白金族金属の微粉体と前記Niの微粉体と前記Feの微粉体とが接合されている請求項4ないし請求項8いずれかに記載の電極。
前記遷移金属選択工程によって選択された遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、前記微粉体重量比決定工程では、前記金属微粉体混合物の全重量に対する前記白金族金属の微粉体の重量比を5〜10%の範囲で決定し、前記金属微粉体混合物の全重量に対する前記Niの微粉体の重量比を30%〜45%の範囲で決定し、前記金属微粉体混合物の全重量に対する前記Feの微粉体の重量比を30%〜45%の範囲で決定するとともに、前記金属微粉体混合物の全重量に対する前記Cuの微粉体の重量比を3%〜5%の範囲で決定する請求項10に記載の電極製造方法。
前記金属微粉体作成工程が、前記白金族金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、前記遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する請求項10又は請求項11に記載の電極製造方法。
前記金属微粉体圧縮物作成工程が、前記金属微粉体混合物作成工程によって作られた金属微粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.8mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成したポーラス構造かつ薄板状の前記金属微粉体圧縮物を作る請求項10ないし請求項12いずれかに記載の電極製造方法。
前記ポーラス構造薄板電極作成工程が、最も融点の低い前記Cuの微粉体を溶融させる温度で前記金属微粉体圧縮物を焼成し、溶融したCuの微粉体をバインダーとして前記白金族金属の微粉体と前記Niの微粉体と前記Feの微粉体とを接合する請求項10ないし請求項13いずれかに記載の電極製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な金属資源であることから、その使用を抑えることが求められている。さらに、今後の固体高分子形燃料電池の普及に向けて高価な白金の含有量を極力少なくするとともに、少ない量の白金とともに白金以外の金属を使用した電極の開発が求められている。
【0005】
本発明の目的は、白金族金属の含有量を極力少なくすることができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することできる電極及びその電極の電極製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる電極及びその電極の電極製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、陽極又は陰極として使用する電極である。
【0007】
前記第1の前提における本発明の電極の特徴は、電極が、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の白金族金属と、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属とから形成され、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成することで、多数の微細な流路が形成されたポーラス構造の薄板状に成形されていることにある。
【0008】
本発明の電極の一例として、電極では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。
【0009】
本発明の電極の他の一例としては、電極の厚み寸法が、0.03mm〜0.8mmの範囲にある。
【0010】
本発明の電極の他の一例としては、遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、電極では、Niの仕事関数とFeの仕事関数とCuの仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Niの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とFeの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とCuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている。
【0011】
本発明の電極の他の一例としては、白金族金属の微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、5〜10%の範囲、Niの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、Feの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、Cuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜5%の範囲にある。
【0012】
本発明の電極の他の一例としては、ポーラス構造の薄板状に成形された電極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある。
【0013】
本発明の電極の他の一例としては、ポーラス構造の薄板に成形された電極の密度が、5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲にある。
【0014】
本発明の電極の他の一例としては、白金族金属の微粉体の粒径と遷移金属の微粉体の粒径とが、10μm〜200μmの範囲にある。
【0015】
本発明の電極の他の一例として、電極では、所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体混合物の焼成時に最も融点のCuの微粉体が溶融し、溶融したCuをバインダーとして白金族金属の微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とが接合されている。
【0016】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、陽極又は陰極として使用する電極を製造する電極製造方法である。
【0017】
前記第2の前提における本発明の電極製造方法の特徴は、電極製造方法が、各種の白金族金属の中から少なくとも1種類の白金族金属を選択し、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕して白金族金属微粉体を作り、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕して遷移金属微粉体を作る金属微粉体作成工程と、金属微粉体作成工程によって作られた少なくとも3種類の遷移金属微粉体の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属微粉体の重量比と少なくとも3種類の遷移金属微粉体の重量比とを決定する微粉体重量比決定工程と、微粉体重量比決定工程によって決定した重量比の白金族金属微粉体と少なくとも3種類の遷移金属微粉体とを混合・分散した金属微粉体混合物を作る金属微粉体混合物作成工程と、金属微粉体混合物作成工程によって作られた金属微粉体混合物を所定圧力で加圧して金属微粉体圧縮物を作る金属微粉体圧縮物作成工程と、金属微粉体圧縮物作成工程によって作られた金属微粉体圧縮物を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造の薄板状に成形された電極を作るポーラス構造薄板電極作成工程とを有することにある。
【0018】
本発明の電極製造方法の一例としては、遷移金属選択工程によって選択された遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、微粉体重量比決定工程では、金属微粉体混合物の全重量に対する白金族金属の微粉体の重量比を5〜10%の範囲で決定し、金属微粉体混合物の全重量に対するNiの微粉体の重量比を30%〜45%の範囲で決定し、金属微粉体混合物の全重量に対するFeの微粉体の重量比を30%〜45%の範囲で決定するとともに、金属微粉体混合物の全重量に対するCuの微粉体の重量比を3%〜5%の範囲で決定する。
【0019】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、金属微粉体作成工程が、白金族金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する。
【0020】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、金属微粉体圧縮物作成工程が、金属微粉体混合物作成工程によって作られた金属微粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.8mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成したポーラス構造かつ薄板状の金属微粉体圧縮物を作る。
【0021】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、ポーラス構造薄板電極作成工程が、最も融点の低いCuの微粉体を溶融させる温度で金属微粉体圧縮物を焼成し、溶融したCuの微粉体をバインダーとして白金族金属の微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とを接合する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電極によれば、それが各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の白金族金属と各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属とから形成され、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造の薄板状電極であり、白金族金属以外の遷移金属を使用することで、白金族金属の含有量を極力少なくすることができ、白金族金属の触媒活性を利用するとともに遷移金属の触媒活性を利用することで、優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極または陰極として使用することできる。
【0023】
選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている電極は、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、電極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極又は陰極として好適に使用することができる。電極は、それが白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0024】
厚み寸法が0.03mm〜0.8mmの範囲にある電極は、電極の厚み寸法を前記範囲にすることで、電極の電気抵抗を小さくすることができ、電極に電流をスムースに流すことができる。電極は、それが白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を有するとともに、それに電流がスムースに流れるから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0025】
遷移金属がNi(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、Niの仕事関数とFeの仕事関数とCuの仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Niの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とFeの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とCuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている電極は、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するNi(ニッケル)とFe(鉄)とCu(銅)とを選択するとともに、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物の全重量に対するNiの微粉体の重量比やFeの微粉体の重量比、Cuの微粉体の重量比を定めているから、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、電極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極又は陰極として好適に使用することができる。電極は、それが白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0026】
白金族金属の微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が5〜10%の範囲、Niの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜45%の範囲、Feの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜45%の範囲、Cuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜5%の範囲にある電極は、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するNi(ニッケル)とFe(鉄)とCu(銅)とを選択するとともに、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物の全重量に対するNiの微粉体の重量比やFeの微粉体の重量比、Cuの微粉体の重量比を前記範囲で定めているから、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、電極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極又は陰極として好適に使用することができる。電極は、それが各種の遷移金属から選択された廉価な遷移金属を含み、金属微粉体混合物の全重量に対するNiの微粉体の重量比やFeの微粉体の重量比、Cuの微粉体の重量比が前記範囲にあり、金属微粉体混合物の全重量に対する白金族金属の微粉体の重量比が前記範囲にあり、高価な白金族金属の含有量が少ないから、陽極または陰極を廉価に作ることができる。電極は、それが白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0027】
ポーラス構造の薄板状に成形された電極の空隙率が15%〜30%の範囲にある電極は、電極の空隙率を前記範囲にすることで、薄板状の電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成形され、電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0028】
ポーラス構造の薄板に成形された電極の密度が5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲にある電極は、電極の密度を前記範囲にすることで、薄板状の電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成形され、電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0029】
白金族金属の微粉体の粒径と遷移金属の微粉体の粒径とが10μm〜200μmの範囲にある電極は、白金族金属や遷移金属の微粉体の粒径を前記範囲にすることで、薄板状の電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成形され、電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0030】
所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体混合物の焼成時に最も融点のCuの微粉体が溶融し、溶融したCuをバインダーとして白金族金属の微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とが接合されている電極は、最も融点の低いCuの微粉体をバインダーとして白金族金属の微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とを接合することで、電極が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極に衝撃が加えられたときの電極の破損や損壊を防ぐことができる。電極は、その形状を維持することができるから、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する白金族金属少含有の陽極または陰極として好適に使用することができる。
【0031】
本発明に係る電極製造方法によれば、各種の白金族金属の中から少なくとも1種類の白金族金属を選択し、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕して白金族金属微粉体を作り、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕して遷移金属微粉体を作る金属微粉体作成工程と、金属微粉体作成工程によって作られた少なくとも3種類の遷移金属微粉体の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属微粉体の重量比と少なくとも3種類の遷移金属微粉体の重量比とを決定する微粉体重量比決定工程と、微粉体重量比決定工程によって決定した重量比の白金族金属微粉体と少なくとも3種類の遷移金属微粉体とを混合・分散した金属微粉体混合物を作る金属微粉体混合物作成工程と、金属微粉体混合物作成工程によって作られた金属微粉体混合物を所定圧力で加圧して金属微粉体圧縮物を作る金属微粉体圧縮物作成工程と、金属微粉体圧縮物作成工程によって作られた金属微粉体圧縮物を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造の薄板状に成形された電極を作るポーラス構造薄板電極作成工程との各工程によって電極を製造するから、電極を廉価に作ることができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の電極(陽極又は陰極)を作ることができる。電極製造方法は、それによって作られた電極が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、燃料電池において十分な電気を発電することが可能な電極を作ることができ、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことが可能であって短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な電極を作ることができる。
【0032】
遷移金属選択工程によって選択された遷移金属がNi(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、微粉体重量比決定工程において、金属微粉体混合物の全重量に対する白金族金属の微粉体の重量比を5〜10%の範囲で決定し、金属微粉体混合物の全重量に対するNiの微粉体の重量比を30%〜45%の範囲で決定し、金属微粉体混合物の全重量に対するFeの微粉体の重量比を30%〜45%の範囲で決定するとともに、金属微粉体混合物の全重量に対するCuの微粉体の重量比を3%〜5%の範囲で決定する電極製造方法は、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するNi(ニッケル)とFe(鉄)とCu(銅)とを選択するとともに、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物の全重量に対するNiの微粉体の重量比やFeの微粉体の重量比、Cuの微粉体の重量比を前記範囲で定めているから、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、電極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができるとともに、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の電極(陽極又は陰極)を作ることができる。電極製造方法は、金属微粉体混合物の全重量に対するNiの微粉体の重量比やFeの微粉体の重量比、Cuの微粉体の全重量が前記範囲にあり、金属微粉体混合物の全重量に対する白金族金属の微粉体の重量比が前記範囲にあるから、高価な白金族金属の含有量が少なく、陽極または陰極を廉価に作ることができる。
【0033】
金属微粉体作成工程において、白金族金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、遷移金属を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する電極製造方法は、白金族金属を前記範囲の粒径に微粉砕し、遷移金属を前記範囲の粒径に微粉砕することで、多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成形されて比表面積が大きいポーラス構造の薄板状の電極を作ることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することが可能な電極を作ることができる。電極製造方法は、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有して陽極または陰極として使用することが可能な白金族金属少含有の電極を作ることができる。
【0034】
金属微粉体圧縮物作成工程において、金属微粉体混合物作成工程によって作られた金属微粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.8mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成したポーラス構造かつ薄板状の金属微粉体圧縮物を作る電極製造方法は、金属微粉体混合物を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、厚み寸法が0.03mm〜0.8mmであって多数の微細な流路(通路孔)を有するポーラス構造かつ薄板状の電極を作ることができ、ポーラス構造かつ薄板状の電極を廉価に作ることができるとともに、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の電極(陽極又は陰極)を作ることができる。電極製造方法は、厚み寸法が0.03mm〜0.8mmの範囲の電極を作ることができるから、電気抵抗を小さく電流をスムースに流すことが可能な電極(陽極又は陰極)を作ることができる。
【0035】
ポーラス構造薄板電極作成工程において、最も融点の低いCuの微粉体を溶融させる温度で金属微粉体圧縮物を焼成し、溶融したCuの微粉体をバインダーとして白金族金属の微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とを接合する電極製造方法は、最も融点の低いCuの微粉体をバインダーとして白金族金属の微粉体やNiの微粉体、Feの微粉体を接合することで、多数の微細な流路(通路孔)を有するポーラス構造の薄板状の電極を作ることができるとともに、高い強度を有して形状を維持することができ、衝撃が加えられたときの破損や損壊を防ぐことが可能な電極を作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一例として示す電極10の斜視図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電極の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、電極10の一例として示す部分拡大正面図であり、
図3は、電極10の他の一例として示す部分拡大正面図である。
図1では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0038】
電極10は、陽極又は陰極として使用され、固体高分子形燃料電池17の燃料極18(触媒電極)や空気極19(触媒電極)(
図6参照)、水素ガス発生装置30のアノード31(電極触媒)やカソード32(電極触媒)(
図9参照)として利用される。電極10は、前面11及び後面12を有するとともに、所定の面積及び所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が四角形に成形されている。電極10は、多数の微細な流路13(通路孔)を有するポーラス構造(多孔質)の薄板電極である。流路13(通路孔)には、気体又は液体が通流する。なお、電極10の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、その用途にあわせて円形や楕円形、多角形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。
【0039】
電極10は、粉状に加工された白金族金属41と、粉状に加工された遷移金属42の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属42とから形成されている。白金族金属41としては、白金(Pt)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)を使用することができる。白金族金属41には、それらのうちの少なくとも1種類が使用される。遷移金属42としては、3d遷移金属や4d遷移金属が使用される。3d遷移金属には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)が使用される。4d遷移金属には、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)が使用される。遷移金属42には、それらのうちの少なくとも3種類が使用される。
【0040】
電極10(ポーラス構造の薄板電極)では、選択された少なくとも3種類の遷移金属42の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属42の中から少なくとも3種類の遷移金属42が選択されている。白金の仕事関数は、5.65(eV)である。Tiの仕事関数は、4.14(eV)、Crの仕事関数は、4.5(eV)、Mnの仕事関数は、4.1(eV)、Feの仕事関数は、4.67(eV)、Coの仕事関数は、5.0(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)、Cuの仕事関数は、5.10(eV)、Znの仕事関数は、3.63(eV)、Nbの仕事関数は、4.01(eV)、Moの仕事関数は、4.45(eV)、Agの仕事関数は、4.31(eV)である。
【0041】
電極10は、白金族金属41の白金族金属微粉体(微粉状に加工されたPt(白金)、微粉状に加工されたPb(パラジウム)、微粉状に加工されたRh(ロジウム)、微粉状に加工されたRu(ルテニウム)、微粉状に加工されたIr(イリジウム)、微粉状に加工されたOs(オスミウム))と、各種の遷移金属42から選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属42の遷移金属微粉体(微粉状に加工されたTi(チタン)、微粉状に加工されたCr(クロム)、微粉状に加工されたMn(マンガン)、微粉状に加工されたFe(鉄)、微粉状に加工されたCo(コバルト)、微粉状に加工されたNi(ニッケル)、微粉状に加工されたCu(銅)、微粉状に加工されたZn(亜鉛)、微粉状に加工されたNb(ニオブ)、微粉状に加工されたMo(モリブデン)、微粉状に加工されたAg(銀))とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物51を所定面積の薄板状に圧縮して薄板状の金属微粉体圧縮物52とし、その金属微粉体圧縮物52を所定温度で焼成することから作られている(
図10参照)。
【0042】
電極10では、選択された3種類の遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属41の微粉体の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定され、それら遷移金属42の微粉体の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定されている。具体的には、白金族金属41の微粉体の金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対する重量比が5〜10%の範囲、好ましくは、5〜6%の範囲にあり、選択された遷移金属42のうちの1種類の微粉体の金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対する重量比が30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲にあり、選択された遷移金属42のうちの他の1種類の微粉体の金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対する重量比が30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲にあるとともに、選択された遷移金属42のうちの前記2種類を除く他の1種類の微粉体の金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対する重量比が3%〜5%の範囲、好ましくは、4%である。なお、重量比が3%〜5%の遷移金属42は、その融点が他の2種類の遷移金属42のそれよりも低く、他の2種類の遷移金属42を接合するバインダー(接合成分)となる。
【0043】
白金族金属41の微粉体の重量比、選択された1種類の遷移金属42の微粉体の重量比、選択された他の1種類の遷移金属42の微粉体の重量比、2種類を除く選択された他の1種類の遷移金属42の微粉体の重量比が前記範囲外になると、それら遷移金属42の微粉体の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができないとともに、金属微粉体混合物51を圧縮した金属微粉体圧縮物52を焼成して作られた電極10が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0044】
電極10には、径が異なる多数の微細な流路13(通路孔)が形成されている。電極10は、多数の微細な流路13(通路孔)が形成されているから、その比表面積が大きい。それら流路13(通路孔)は、電極10の前面11に開口する複数の通流口14と、電極10の後面12に開口する複数の通流口14とを有し、電極10の前面11から後面12に向かって電極10をその厚み方向に貫通している。
【0045】
それら流路13は、電極10の前面11と後面12との間において電極10の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、電極10の外周縁15から中心に向かって電極10の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路13は、径方向において部分的につながり、一方の流路13と他方の流路13とが互いに連通している。厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路13は、厚み方向において部分的につながり、一方の流路13と他方の流路13とが互いに連通している。
【0046】
それら流路13(通路孔)の開口面積(開口径)は、厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路13は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、電極10の前面11に開口する通流口14と後面12に開口する通流口14とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積がすべて相違している。それら流路13(通路孔)の開口径や前後面11,12の通流口14の開口径は、1μm〜100μmの範囲にある。
電極10は、厚み方向や径方向へ不規則に曲折しながら延びる複数の流路13(通路孔)が形成されているから、電極10の比表面積が大きく、それら流路13(通路孔)をガス(気体)や液体が通流しつつガス(気体)や液体を電極10のそれら流路25における接触面に広く接触させることができ、電極10の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0047】
電極10(ポーラス構造の薄板電極)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.5mmの範囲にある。電極10の厚み寸法L1が0.03mm(0.05mm)未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。電極10の厚み寸法L1が0.8mm(0.5mm)を超過すると、電極10の電気抵抗が大きくなり、電極10に電流がスムースに流れず、電極10が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができず、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができない。また、電極10が水素ガス発生装置30に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができず、水素ガス発生装置30において短時間に多量の水素ガスを発生させることができない。
【0048】
電極10(ポーラス構造の薄板電極)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.5mmの範囲にあるから、電極10が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極10に衝撃が加えられたときの電極10の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、電極10の電気抵抗を小さくすることができ、電極10に電流がスムースに流れ、電極10が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。また、電極10が水素ガス発生装置30に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0049】
電極10は、その空隙率が15%〜30%の範囲、好ましくは、20%〜25%の範囲にあり、その相対密度が70%〜85%の範囲、好ましくは、75%〜80%の範囲にある。電極10の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、電極10に多数の微細な流路13(通路孔)が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができない。電極10の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路13(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面11,12の通流口14の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合があるとともに、電極10の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。
【0050】
電極10は、その空隙率及び相対密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口14を有する多孔質に成形され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路13(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10のそれら流路13における接触面に広く接触させることができる。更に、電極10の触媒作用が向上し、優れた触媒活性を発揮することができる。
【0051】
電極10は、その密度が5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲、好ましくは、5.5g/cm
2〜6.5g/cm
2の範囲にある。電極10の密度が5.0g/cm
2未満では、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合があるとともに、電極10の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。電極10の密度が7.0g/cm
2を超過すると、電極10に多数の微細な流路13(通路孔)が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができないとともに、電極10の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。
【0052】
電極10は、その密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口14を有する多孔質に成形され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路13(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10のそれら流路13における接触面に広く接触させることができる。更に、電極10の触媒作用が向上し、電極10に優れた触媒活性を発揮させることができる。
【0053】
Ptの微粉体(粉状に加工されたPt)、Pbの微粉状(粉状に加工されたPb)、Rhの微粉状(粉状に加工されたRh)、Ruの微粉状(粉状に加工されたRu)、Irの微粉状(粉状に加工されたIr)、Osの微粉状(粉状に加工されたOs)、Tiの微粉体(粉状に加工されたTi)、Crの微粉体(粉状に加工されたCr)、Mnの微粉体(粉状に加工されたMn)、Feの微粉体(粉状に加工されたFe)、Coの微粉体(粉状に加工されたCo)、Niの微粉体(粉状に加工されたNi)、Cuの微粉体(粉状に加工されたCu)、Znの微粉体(粉状に加工されたZn)、Nbの微粉体(粉状に加工されたNb)、Moの微粉体(粉状に加工されたMo)、Agの微粉体(粉状に加工されたAg)の粒径は、10μm〜200μmの範囲にある。
【0054】
それら白金族金属41の微粉体の粒径やそれら遷移金属42の微粉体の粒径が10μm未満では、それら金属の微粉体によって流路13(通路孔)が塞がれ、電極10に多数の微細な流路13を形成することができず、電極10の比表面積を大きくすることができないとともに、電極10の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。それら白金族金属41の微粉体の粒径やそれら遷移金属42の微粉体の粒径が200μmを超過すると、流路13(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面11,12の通流口15の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10に多数の微細な流路13を形成することができず、電極10の比表面積を大きくすることができないとともに、電極10の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。
【0055】
電極10は、それら白金族金属41の微粉体の粒径やそれら遷移金属42の微粉体の粒径が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口14を有する多孔質に成形され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路13を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10のそれら流路13における接触面に広く接触させることができる。更に、電極10の触媒作用が向上し、電極10に優れた触媒活性を発揮させることができる。
【0056】
電極10に使用する白金族金属や遷移金属の具体例としては、
図10に示すように、粉状に加工されたPt43(白金)の微粉体47(粒径:10μm〜200μm)と、粉状に加工されたNi44(ニッケル)の微粉体48(粒径:10μm〜200μm)と、粉状に加工されたFe45(鉄)の微粉体49(粒径:10μm〜200μm)と、粉状に加工されたCu46(銅)の微粉体50(粒径:10μm〜200μm)とを原料としている。電極10は、Pt43やNi44、Fe45、Cu46の微粉体47〜50を均一に混合・分散した金属微粉体混合物51を所定面積の薄板状に圧縮して金属微粉体圧縮物52を作り、その金属微粉体圧縮物52を所定温度で焼成することで、多数の微細な流路13(通路孔)が形成されたポーラス構造かつ薄板状に成形される。
【0057】
電極10では、Ni44の仕事関数とFe45の仕事関数とCu46の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Pt43の微粉体47の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比、Ni44の微粉体48の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比、Fe45の微粉体49の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比、Cu46の微粉体50の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定されている。なお、Cu46の微粉体50は、その融点がPt43の微粉体47やNi44の微粉体48、Fe45の微粉体49のそれよりも低く、Pt43の微粉体47やNi44の微粉体48、Fe46の微粉体49を接合するバインダー(接合成分)となる。電極10では、所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物52の焼成時に最も融点のCu46の微粉体50が溶融し、溶融したCu46をバインダーとしてPt43の微粉体47とNi44の微粉体48とFe45の微粉体49とが接合されている。
【0058】
金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対するPt43(白金族金属41)の微粉体47の重量比は、5〜10%の範囲、好ましくは、5〜6%の範囲であり、金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対するNi44(遷移金属42)の微粉体48の重量比は、30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%である。金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対するFe45(遷移金属42)の微粉体49の重量比は、30〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%であり、金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対するCu46(遷移金属42)の微粉体50の重量比は、3%〜5%の範囲、好ましくは、4%である。Pt43の微粉体47の重量比、Ni44の微粉体48の重量比、Fe45の微粉体49の重量比、Cu46の微粉体50の重量比が前記範囲外になると、それらの微粉体48〜50の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができないとともに、金属微粉体混合物51を圧縮した金属微粉体圧縮物52を焼成して作られた電極10が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0059】
図4は、電極10を使用したセル16の一例を示す分解斜視図であり、
図5は、電極10を使用したセル16の側面図である。
図6は、電極10を使用した固体高分子形燃料電池17の発電を説明する図であり、
図7は、電極10の起電圧試験の結果を示す図である。
図8は、電極10のI−V特性試験の結果を示す図である。
【0060】
電極10を使用したセル16の一例としては、
図4に示すように、電極10を使用した燃料極18(陽極)と、電極10を使用した空気極19(陰極)と、燃料極18及び空気極19に介在する固体高分子電解質膜20(電極接合体膜)(フッ素系イオン交換膜)と、燃料極18の厚み方向外側に位置するセパレータ21(バイポーラプレート)と、空気極19の厚み方向外側に位置するセパレータ22(バイポーラプレート)とから形成されている。それらセパレータ21,22には、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。
【0061】
セル16では、
図5に示すように、燃料極18や空気極19、固体高分子電解質膜20が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体23(Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体23をそれらセパレータ21,22が挟み込んでいる。膜/電極接合体23では、ホットプレスによって固体高分子電解質膜20の一方の面に燃料極18の面が密着し、固体高分子電解質膜20の一方の面に空気極19の面が密着している。固体高分子形燃料電池17では、複数のセル16(単セル)が一方向へ重なり合って直列につながれてセルスタック(燃料電池スタック)を形成する。固体高分子電解質膜20は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0062】
燃料極18とセパレータ21との間には、ガス拡散層24が形成され、空気極19とセパレータ22との間には、ガス拡散層25が形成されている。燃料極18とセパレータ21との間であってガス拡散層24の上部及び下部には、ガスシール26が設置されている。空気極19とセパレータ22との間であってガス拡散層25の上部及び下部には、ガスシール27が設置されている。
【0063】
固体高分子形燃料電池17では、
図6に示すように、燃料極18(電極10)に水素(燃料)が供給され、空気極19(電極10)に空気(酸素)が供給される。燃料極18(電極10)では、水素がH
2→2H
++2e
−の反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H
+)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜20内を通って空気極19(電極10)へ移動し、電子が導線28内を通って空気極19へ移動する。固体高分子電解質膜20には、燃料極18で生成されたプロトンが通流する。空気極19では、固体高分子電解質膜20から移動したプロトンと導線28を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H
++O
2+4e→2H
2Oの反応によって水が生成される。
【0064】
電極10は、遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属42の中から少なくとも3種類の遷移金属42が選択され、選択された遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属41の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定され、選択された遷移金属42の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定されているから、電極10が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0065】
具体例として示した燃料極18(電極10)や空気極19(電極10)は、仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Ni44とFe45とCu46とが選択され、選択されたNi44とFe45とCu46との仕事関数の合計仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物51の全重量に対するPt43の重量比が決定され、金属微粉体混合物51の全重量に対するNi44の微粉体48の重量比とFe45の微粉体49の重量比とCu46の微粉体50の重量比とが決定されているから、燃料極18(電極10)や空気極19(電極10)が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0066】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極18(電極10)と空気極19(電極10)との間の電圧(V)を測定した。
図7の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に燃料極18(電極10)と空気極19(電極10)との間の電圧(V)を表す。電極10を使用した固体高分子形燃料電池17では、
図7に示すように、電極間の電圧が1.05(V)〜1.079(V)であった。
【0067】
I−V特性試験では、燃料極18(電極10)と空気極19(電極10)との間に負荷29を接続し、電圧と電流との関係を測定した。
図8のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。電極10を使用した固体高分子形燃料電池17では、
図8に示すように、緩やかな電圧降下が認められた。
図7の起電圧試験の結果や
図8のI−V特性試験の結果に示すように、電極10が電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる優れた触媒作用を有するとともに、優れた酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0068】
電極10は、遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属42の中から少なくとも3種類の遷移金属42が選択され、選択された遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属41の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定され、選択された遷移金属42の微粉体の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定されているから、電極10が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極18(陽極)や空気極19(陰極)として好適に使用することができる。
【0069】
また、遷移金属42としてNi44とFe45とCu46とを原料とした電極10は、仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Ni44とFe45とCu46とが選択され、選択されたNi44とFe45とCu46との仕事関数の合計仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物51の全重量に対するPt43の微粉体47の重量比が決定され、金属微粉体混合物51の全重量に対するNi44の微粉体48の重量比とFe45の微粉体49の重量比とCu46の微粉体50の重量比とが決定されているから、電極10が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極18(陽極)や空気極19(陰極)として好適に使用することができる。
【0070】
電極10は、それが白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10を固体高分子形燃料電池17に使用することで、燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。電極10は、それが各種の遷移金属から選択された廉価な遷移金属(たとえば、Ni44、Fe45、Cu46)を含み、金属微粉体混合物51の全重量に対するそれら遷移金属42の微粉体の重量比(Ni44の微粉体48の重量比、Fe45の微粉体49の重量比、Cu46の微粉体50の重量比)が前記範囲にあり、金属微粉体混合物51の全重量に対する白金族金属41の微粉体の重量比(Pt43の微粉体47の重量比)が前記範囲にあり、高価な白金族金属41の含有量が少ないから、燃料極19(陽極)や空気極18(陰極)を廉価に作ることができる。
【0071】
図9は、電極10を使用した水素ガス発生装置30の電気分解を説明する図である。電極10を使用した水素ガス発生装置30の一例としては、
図9に示すように、電極10を使用したアノード31(陽極)と、電極10を使用したカソード32(陰極)と、アノード31及びカソード32の間に介在する固体高分子電解質膜33(電極接合体膜)(フッ素系イオン交換膜)と、陽極給電部材34及び陰極給電部材35と、陽極用貯水槽36及び陰極用貯水槽37と、陽極主電極38及び陰極主電極39とから形成されている。
【0072】
水素ガス発生装置30では、アノード31(陽極)やカソード32(陰極)、固体高分子電解質膜33が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体40 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体40を陽極給電部材34と陰極給電部材35とが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜33は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。膜/電極接合体40では、ホットプレスによって固体高分子電解質膜33の一方の面にカソード32(陰極)の面が密着し、固体高分子電解質膜20の一方の面にアノード31(陽極)の面が密着している。
【0073】
陽極給電部材34は、アノード31(陽極)の外側に位置してアノード31に密着し、アノード31に+の電流を給電する。陽極用貯水槽36は、陽極給電部材34の外側に位置して陽極給電部材34に密着している。陽極主電極38は、陽極用貯水槽36の外側に位置して陽極給電部材34に+の電流を給電する。陰極給電部材35は、カソード32(陰極)の外側に位置してカソード32に密着し、カソード32に−の電流を給電する。陰極用貯水槽37は、陰極給電部材35の外側に位置して陰極給電部材35に密着している。陰極主電極239は、陰極用貯水槽37の外側に位置して陰極給電部材35に−の電流を給電する。
【0074】
水素ガス発生装置30では、
図9に矢印で示すように、陽極用貯水槽36及び陰極用貯水槽37に水(H
2O)が給水され、陽極主電極38に電源から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極39に電源から−の電流が給電される。陽極主電極38に給電された+の電流が陽極給電部材34からアノード31(陽極)に給電され、陰極主電極39に給電された−の電流が陰極給電部材35からカソード32(陰極)に給電される。
【0075】
アノード31(陽極)(電極10)では、2H
2O→4H
++4e
−+O
2の陽極反応(触媒作用)によって酸素が生成され、カソード32(陰極)(電極10)では、4H
++4e
−→2H
2の陰極反応(触媒作用)によって酸素が生成される。プロトン(水素イオン:H
+)は、固体高分子電解質膜33内を通ってカソード32へ移動する。固体高分子電解質膜33には、アノード31で生成されたプロトンが通流する。
【0076】
電極10(アノード31及びカソード32)は、遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属42の中から少なくとも3種類の遷移金属42が選択され、選択された遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物51の全重量に対する白金族金属41の微粉体47の重量比が決定され、選択された遷移金属42の金属微粉体混合物51の全重量に対する重量比が決定されているから、電極10(アノード31及びカソード32)が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有するアノード31(陽極)やカソード32(陰極)として好適に使用することができる。
【0077】
また、遷移金属42としてNi44とFe45とCu46とを原料とした電極10(アノード31及びカソード32)は、仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Ni44とFe45とCu46とが選択され、選択されたNi44とFe45とCu46との仕事関数の合計仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物51の全重量に対するPt43の微粉体47の重量比が決定され、金属微粉体混合物51の全重量に対するNi44の微粉体48の重量比とFe45の微粉体49の重量比とCu46の微粉体50の重量比とが決定されているから、電極10(アノード31及びカソード32)が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有するアノード31(陽極)やカソード32(陰極)として好適に使用することができる。
【0078】
電極10(アノード31及びカソード32)は、それが白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10(アノード31及びカソード32)を水素ガス発生装置30に使用することで、水素ガス発生装置30において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。電極10(アノード31及びカソード32)は、それが各種の遷移金属から選択された廉価な遷移金属(Ni44、Fe45、Cu46)を含み、金属微粉体混合物51の全重量に対するそれら遷移金属42の微粉体の重量比(Ni44の微粉体48の重量比、Fe45の微粉体49の重量比、Cu46の微粉体50の重量比)が前記範囲にあり、金属微粉体混合物51の全重量に対する白金族金属41の微粉体の重量比(Pt43の微粉体47の重量比)が前記範囲にあり、高価な白金族金属41の含有量が少ないから、アノード31(陽極)やカソード32(陰極)を廉価に作ることができる。
【0079】
図10は、電極10の製造方法を説明する図である。電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)は、
図10に示すように、遷移金属選択工程S1、金属微粉体作成工程S2、微粉体重量比決定工程S3、金属微粉体混合物作成工程S4、金属微粉体圧縮物作成工程S5、薄板電極作成工程S6を有する電極製造方法によって製造される。電極製造方法では、白金族金属41と少なくとも3種類の遷移金属42とを原料として電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を製造する。
【0080】
遷移金属選択工程S1では、各種の白金族金属41の中から少なくとも1種類の白金族金属41(白金(Pt)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os))を選択し、各種の遷移金属42から選択する少なくとも3種類の遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属42の中から少なくとも3種類の遷移金属42(Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀))を選択する。なお、電極10に使用する白金族金属41としてPt43(白金)が選択され、電極10に使用する遷移金属42としてNi44(ニッケル)、Fe45(鉄)、Cu46(銅)が選択されたものとする。
【0081】
金属微粉体作成工程S2では、微粉砕機によって白金43(Pt)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのPt43の微粉体47を作り、微粉砕機によってNi44(ニッケル)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのNi44の微粉体48を作るとともに、微粉砕機によってFe45(鉄)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのFe45の微粉体49を作り、微粉砕機によってCu46(銅)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのCu46の微粉体50を作る。
【0082】
電極製造方法は、Pt43(白金族金属41)やNi44(遷移金属42)、Fe45(遷移金属42)、Cu46(遷移金属42)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕することで、多数の微細な流路13(通路孔)を有する多孔質に成形されて比表面積が大きいポーラス構造かつ薄板状の電極10を作ることができ、それら流路13をガス(気体)や液体が通流しつつ気体や液体を電極10のそれら流路13における接触面に広く接触させることが可能な電極10を作ることができる。
【0083】
微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体作成工程S2によって作られたNi44の微粉体48とFe45の微粉体49とCu46の微粉体50との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物51の全重量に対するPt43の微粉体47の重量比を決定し、金属微粉体混合物51の全重量に対するNi44の微粉体48の重量比を決定し、金属微粉体混合物51の全重量に対するFe45の微粉体49の重量比を決定するとともに、金属微粉体混合物51の全重量に対するCu46の微粉体50の重量比を決定する。
【0084】
微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対するPt43(白金族金属41)の微粉体47の重量比を5〜10%の範囲、好ましくは、5〜6%の範囲で決定する。微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対するNi44(遷移金属42)の微粉体48の重量比を30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲で決定し、金属微粉体混合物51の全重量(100%)に対するFe45(遷移金属42)の微粉体49の重量比を30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲で決定するとともに、金属微粉体混合物51の全重量に(100%)対するCu46(遷移金属42)の微粉体50の重量比を3%〜5%の範囲、好ましくは、4%で決定する。
【0085】
電極製造方法は、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように遷移金属42のNi44(ニッケル)とFe45(鉄)とCu46(銅)とを選択するとともに、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物51の全重量に対するPt43の微粉体47の重量比やNi44の微粉体48の重量比、Fe45の微粉体49の重量比、Cu46の微粉体50の重量比を前記範囲において決定することで、Ni44の微粉体48とFe45の微粉体49とCu46の微粉体50との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、白金族金属41(Pt43)の含有量が少ないにもかかわらず、白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作ることができる。
【0086】
電極製造方法は、金属微粉体混合物51の全重量に対するNi44(遷移金属42)の微粉体48の重量比やFe45(遷移金属42)の微粉体49の重量比、Cu46(遷移金属42)の微粉体50の全重量が前記範囲にあり、金属微粉体混合物51の全重量に対するPt43(白金族金属41)の微粉体47の重量比が前記範囲にあるから、高価な白金族金属41の含有量が少なく、電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を廉価に作ることができる。
【0087】
金属微粉体混合物作成工程S4では、微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のPt43の微粉体47と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のNi44の微粉体48と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のFe45の微粉体49と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のCu46の微粉体50とを混合機に投入し、混合機によってPt43の微粉体47、Ni44の微粉体48、Fe45の微粉体49、Cu46の微粉体50を攪拌・混合し、Pt43の微粉体47、Ni44の微粉体48、Fe45の微粉体49、Cu46の微粉体50が均一に混合・分散した金属微粉体混合物51を作る。
【0088】
金属微粉体圧縮物作成工程S5では、金属微粉体混合物作成工程S4によって作られた金属微粉体混合物51を所定圧力で加圧し、金属微粉体混合物51を所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物52を作る。金属微粉体圧縮物作成工程S5では、金属微粉体混合物51を金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によって薄板状の金属微粉体圧縮物52を作る。
【0089】
プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa〜800Mpaの範囲にある。プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、金属微粉体圧縮物52(薄板電極)に形成される流路13(通路孔)の開口面積(開口径)が大きくなり、金属微粉体圧縮物52の厚み寸法L1を0.03mm〜0.8mm(好ましくは、0.05mm〜0.5mm)にしつつ、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路13(通路孔)を金属微粉体圧縮物52(薄板電極)に形成することができない。
【0090】
プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、金属微粉体圧縮物52(薄板電極)に形成される流路13(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に小さくなり、金属微粉体圧縮物52の厚み寸法L1を0.03mm〜0.8mm(好ましくは、0.05mm〜0.5mm)にしつつ、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路13(通路孔)を金属微粉体圧縮物52(薄板電極)に形成することができない。
【0091】
電極製造方法は、金属微粉体混合物51を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、金属微粉体圧縮物52(薄板電極)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.8mm(好ましくは、0.05mm〜0.5mm)にしつつ、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路13(通路孔)を形成した金属微粉体圧縮物52を作ることができる。電極製造方法は、厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲(好ましくは、0.05mm〜0.5mmの範囲)の電極10を作ることができるから、電気抵抗を小さくすることができ、電流をスムースに流すことが可能な電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作ることができる。
【0092】
薄板電極作成工程S6では、金属微粉体圧縮物作成工程S5によって作られた金属微粉体圧縮物52を焼成炉(燃焼炉、電気炉等)に投入し、金属微粉体圧縮物52を焼成炉において所定温度で焼成(焼結)して多数の微細な流路13(通路孔)を形成したポーラス構造かつ薄板状の(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作る。
【0093】
薄板電極作成工程S6では、最も融点の低いCu46(融点:1084.5℃)の微粉体50を溶融させる温度(例えば、1100℃〜1400℃)で金属微粉体圧縮物52を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間〜6時間である。薄板電極作成工程S5では、所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物52の焼成時において、最も融点の低いCu46の微粉体50が溶融し、溶融したCu46の微粉体50をバインダーとしてPt43の微粉体47とNi44の微粉体48とFe45の微粉体49とを接合(固着)する。なお、Pt43の融点は、1774℃、Ni44の融点は、1455℃、Fe45の融点は、1539℃である。薄板電極作成工程S6では、金属微粉体圧縮物52を所定温度で焼成することで、多数の微細な流路13(通路孔)が形成されたポーラス構造かつ薄板状の電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)が製造される。
【0094】
電極製造方法は、最も融点の低いCu46の微粉体50をバインダーとしてPt43の微粉体47とNi44の微粉体48とFe45の微粉体49とを接合することで、多数の微細な流路13(通路孔)を有するポーラス構造かつ薄板状の電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作ることができるとともに、高い強度を有して形状を維持することができ、衝撃が加えられたときの破損や損壊を防ぐことが可能な非白金の電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作ることができる。
【0095】
電極製造方法は、各種の遷移金属42から選択する少なくとも3種類の遷移金属42の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属42の中から少なくとも3種類の遷移金属42(たとえば、Ni44、Fe45、Cu46)を選択する遷移金属選択工程S1と、白金族金属41(Pt43)を微粉砕して白金族金属微粉体(Pt43の微粉体47)を作り、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属42を微粉砕して遷移金属微粉体(Ni44の微粉体48、Fe45の微粉体49、Cu46の微粉体50)を作る金属微粉体作成工程S2と、金属微粉体作成工程S2によって作られた少なくとも3種類の遷移金属微粉体の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属微粉体(Pt43の微粉体47)の重量比と少なくとも3種類の遷移金属微粉体(Ni44の微粉体48、Fe45の微粉体49、Cu46の微粉体50)の重量比とを決定する微粉体重量比決定工程S3と、微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比の白金族金属微粉体と少なくとも3種類の遷移金属微粉体とを混合・分散した金属微粉体混合物51を作る金属微粉体混合物作成工程S4と、金属微粉体混合物作成工程S4によって作られた金属微粉体混合物51を所定圧力で加圧して金属微粉体圧縮物52を作る金属微粉体圧縮物作成工程S5と、金属微粉体圧縮物作成工程S5によって作られた金属微粉体圧縮物52を所定温度で焼成して多数の微細な流路13を形成したポーラス構造の薄板状に成形された電極10を作るポーラス構造薄板電極作成工程S6との各工程によって、厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲(好ましくは、0.03mm〜0.5mmの範囲)であって多数の微細な流路13(通路孔)を形成した電極10を製造することができ、電極10を廉価に作ることができるとともに、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作ることができる。
【0096】
電極製造方法は、それによって作られた電極10が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、固体高分子形燃料電池17において十分な電気を発電することが可能であって固体高分子形燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することが可能な非白金の電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作ることができる。電極製造方法は、水素ガス発生装置30において電気分解を効率よく行うことが可能であって短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な非白金の電極10(燃料極18及び空気極19、アノード31及びカソード32)を作ることができる。