特開2020-64786(P2020-64786A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社グラヴィトンの特許一覧

<>
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000003
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000004
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000005
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000006
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000007
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000008
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000009
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000010
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000011
  • 特開2020064786-固体高分子形燃料電池 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-64786(P2020-64786A)
(43)【公開日】2020年4月23日
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20200331BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20200331BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20200331BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20200331BHJP
【FI】
   H01M4/90 B
   H01M8/10 101
   H01M4/92
   H01M4/90 M
   B01J23/89 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-196800(P2018-196800)
(22)【出願日】2018年10月18日
(71)【出願人】
【識別番号】518218896
【氏名又は名称】株式会社グラヴィトン
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】奥山 正己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC32
4G169DA05
4G169EA11
4G169EA14
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018BB01
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018HH01
5H018HH03
5H018HH04
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH09
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極及び空気極を備え、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる固体高分子形燃料電池を提供する。
【解決手段】固体高分子形燃料電池10のセル11を形成する燃料極13及び空気極14は、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の白金族金属と、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属とから形成され、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成することで、多数の微細な流路が形成されたポーラス構造の薄板状に成形されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを有するセルスタックを備え、前記セルが、燃料極及び空気極と、前記燃料極と前記空気極との間に位置する電極接合体膜と、前記燃料極の外側と前記空気極の外側とに位置するセパレータとから形成され、
前記燃料極及び前記空気極が、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の白金族金属と、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属とから形成され、前記選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と前記選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物を焼成することで、多数の微細な流路が形成されたポーラス構造の薄板状に成形されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【請求項2】
前記燃料極及び前記空気極では、前記選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項3】
前記燃料極及び前記空気極では、前記選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記白金族金属の微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が定められているとともに、前記選択された少なくとも3種類の遷移金属の微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が定められている請求項1又は請求項2に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項4】
前記燃料極の厚み寸法と前記空気極の厚み寸法とが、0.03mm〜0.8mmの範囲にある請求項1ないし請求項3いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項5】
前記白金族金属が、Pt(白金)であり、前記遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、前記燃料極及び前記空気極では、前記Niの仕事関数と前記Feの仕事関数と前記Cuの仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記Ptの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比と前記Niの微粉体の該金属微粉体混合物の全重量に対する重量比と前記Feの微粉体の該金属微粉体混合物の全重量に対する重量比と前記Cuの微粉体の該金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている請求項1ないし請求項4いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項6】
前記Ptの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、5〜10%の範囲、前記Niの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、前記Feの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、前記Cuの微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜5%の範囲にある請求項5に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項7】
前記ポーラス構造の薄板状に成形された前記燃料極及び前記空気極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある請求項1ないし請求項6いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項8】
前記ポーラス構造の薄板状に成形された前記燃料極及び前記空気極の密度が、5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある請求項1ないし請求項7いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項9】
前記白金族金属の微粉体の粒径と前記遷移金属の微粉体の粒径とが、10μm〜200μmの範囲にある請求項1ないし請求項8いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項10】
前記燃料極及び前記空気極では、所定面積の薄板状に圧縮した前記金属微粉体混合物の焼成時に最も融点のCuの微粉体が溶融し、溶融したCuをバインダーとして前記Ptの微粉体と前記Niの微粉体と前記Feの微粉体とが接合されている請求項5ないし請求項9いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項11】
前記固体高分子形燃料電池では、前記燃料極に供給される水素の雰囲気が相対湿度95%〜100%の範囲にあり、前記水素の温度が45℃〜55℃の範囲にある請求項1ないし請求項10いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項12】
前記固体高分子形燃料電池では、前記燃料極に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲にある請求項1ないし請求項11いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを有するセルスタックを備えた固体高分子形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜を両面から挟持するアノード電極及びカソード電極と、液体燃料を収容する燃料容器と、アノード電極とカソード電極との間に設けられる気液分離性多孔質体からなる燃料気化層と、燃料気化層を両面から挟持する有孔固定板とを有し、カソード電極側に配置した有孔固定板の開口率がアノード電極側に配置した有孔固定板の開口率よりも大きい個体高分子形燃料電池が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−222119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の個体高分子形燃料電池のカソード電極及びアノード電極の作成方法は、以下のとおりである。炭素粒子に粒子径が3〜5nmの範囲にある白金微粒子を重量比で55%担持させた触媒担持炭素微粒子を作り、その触媒担持炭素微粒子1gに5重量%ナフィオン溶液を適量加えて攪拌し、カソード電極用の触媒ペーストを作る。カソード電極用の触媒ペーストを基材としてのカーボンペーパー上に8mg/cmの量で塗布した後、乾燥させて4cm×4cmのカソード電極を作製する。次に、白金微粒子に替えて粒子径が3〜5nmの範囲にある白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金微粒子(Ruの割合は60at%)を重量比で55%担持させた触媒担持炭素微粒子を作り、その触媒担持炭素微粒子1gに5重量%ナフィオン溶液を適量加えて攪拌し、アノード電極用の触媒ペーストを作る。アノード電極用の触媒ペーストを基材としてのカーボンペーパー上に8mg/cmの量で塗布した後、乾燥させて4cm×4cmのアノード電極を作製する。
【0005】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な金属資源であることから、その使用を抑えることが求められている。さらに、今後の固体高分子形燃料電池の普及に向けて高価な白金の含有量を極力少なくするとともに、少ない量の白金とともに白金以外の金属を使用した電極の開発が求められている。
【0006】
本発明の目的は、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極及び空気極を備え、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる固体高分子形燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の固体高分子形燃料電池の特徴は、複数のセルを有するセルスタックを備え、セルが、燃料極及び空気極と、燃料極と空気極との間に位置する電極接合体膜と、燃料極の外側と空気極の外側とに位置するセパレータとから形成され、燃料極及び空気極が、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の白金族金属と、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属とから形成され、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物を焼成することで、多数の微細な流路が形成されたポーラス構造の薄板状に成形されていることにある。
【0008】
本発明の固体高分子形燃料電池の一例として、燃料極及び空気極では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。
【0009】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例として、燃料極及び空気極では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属の微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が定められているとともに、選択された少なくとも3種類の遷移金属の微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が定められている。
【0010】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、燃料極の厚み寸法と空気極の厚み寸法とが、0.03mm〜0.8mmの範囲にある。
【0011】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、白金族金属が、Pt(白金)であり、遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、燃料極及び空気極では、Niの仕事関数とFeの仕事関数とCuの仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Ptの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とNiの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とFeの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とCuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている。
【0012】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、Ptの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、5〜10%の範囲、Niの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、Feの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、30%〜45%の範囲、Cuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%〜5%の範囲にある。
【0013】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、ポーラス構造の薄板状に成形された燃料極及び空気極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある。
【0014】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、ポーラス構造の薄板状に成形された燃料極及び空気極の密度が、5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある。
【0015】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、白金族金属の微粉体の粒径と遷移金属の微粉体の粒径とが、10μm〜200μmの範囲にある。
【0016】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例として、燃料極及び空気極では、所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体混合物の焼成時に最も融点のCuの微粉体が溶融し、溶融したCuをバインダーとしてPtの微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とが接合されている。
【0017】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例として、固体高分子形燃料電池では、燃料極に供給される水素の雰囲気が相対湿度95%〜100%の範囲にあり、水素の温度が45℃〜55℃の範囲にある。
【0018】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例として、固体高分子形燃料電池では、燃料極に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る固体高分子形燃料電池によれば、それに使用される燃料極及び空気極が、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の白金族金属と各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属とから形成され、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも3種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物を焼成することで、多数の微細な流路が形成されたポーラス構造の薄板状に成形されているから、燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0020】
選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている固体高分子形燃料電池は、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、燃料極及び空気極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極及び空気極が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、選択された少なくとも3種類の遷移金属を含む燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0021】
選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属の微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が定められているとともに、選択された少なくとも3種類の遷移金属の微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が定められている固体高分子形燃料電池は、遷移金属の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物の全重量に対する白金族金属の微粉体の重量比と選択された少なくとも3種類の遷移金属の重量比とが決定されているから、燃料極や空気極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極や空気極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極や空気極が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。固体高分子形燃料電池は、選択された少なくとも3種類の遷移金属を含み、白金族金属の含有量が少ないから、燃料極や空気極の材料費を低減させることができ、固体高分子形燃料電池を廉価に作ることができるとともに、固体高分子形燃料電池の運転コストを下げることができる。
【0022】
燃料極の厚み寸法と空気極の厚み寸法とが0.03mm〜0.8mmの範囲にある固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極の厚み寸法を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極の電気抵抗を小さくすることができ、燃料極や空気極に電流をスムースに流すことができる。固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を有するとともに、燃料極及び空気極の電気抵抗が小さく、燃料極及び空気極に電流がスムースに流れるから、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0023】
白金族金属がPt(白金)であり、遷移金属がNi(ニッケル)とFe(鉄)と最も融点の低いCu(銅)とであり、Niの仕事関数とFeの仕事関数とCuの仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Ptの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とNiの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とFeの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とCuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている固体高分子形燃料電池は、遷移金属の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物の全重量に対するPtの微粉体の重量比とNiの微粉体の重量比とFeの微粉体の重量比とCuの微粉体の重量比とが決定されているから、燃料極や空気極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極や空気極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極や空気極が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。固体高分子形燃料電池は、Ni(ニッケル)とFe(鉄)とCu(銅)とを含み、Pt(白金)の含有量が少ないから、燃料極や空気極の材料費を低減させることができ、固体高分子形燃料電池を廉価に作ることができるとともに、固体高分子形燃料電池の運転コストを下げることができる。
【0024】
Ptの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が5〜10%の範囲、Niの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜45%の範囲、Feの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が30%〜45%の範囲、Cuの微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が3%〜5%の範囲にある固体高分子形燃料電池は、金属微粉体混合物の全重量に対するPtの微粉体の重量比やNiの微粉体の重量比、Feの微粉体の重量比、Cuの微粉体の重量比を前記範囲にすることで、Niの微粉体とFeの微粉体とCuの微粉体との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、燃料極及び空気極が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、燃料極や空気極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極や空気極が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。固体高分子形燃料電池は、前記重量比のNi(ニッケル)とFe(鉄)とCu(銅)とを含み、金属微粉体混合物の全重量に対するPt(白金)の重量比が小さいから、燃料極や空気極の材料費を低減させることができ、固体高分子形燃料電池を廉価に作ることができるとともに、固体高分子形燃料電池の運転コストを下げることができる。
【0025】
ポーラス構造の薄板状に成形された燃料極及び空気極の空隙率が15%〜30%の範囲にある固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極の空隙率を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成形され、燃料極及び空気極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体が通流しつつ気体を燃料極や空気極のそれら流路における接触面に広く接触させることが可能となり、燃料極や空気極が白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0026】
ポーラス構造の薄板状に成形された燃料極及び空気極の密度が5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲にある固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極の密度を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成形され、燃料極及び空気極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体が通流しつつ気体を燃料極や空気極のそれら流路における接触面に広く接触させることが可能となり、燃料極や空気極が白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0027】
白金族金属の微粉体の粒径と遷移金属の微粉体の粒径とが10μm〜200μmの範囲にある固体高分子形燃料電池は、白金族金属の微粉体や遷移金属の微粉体の粒径を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成形され、燃料極及び空気極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体が通流しつつ気体を燃料極や空気極のそれら流路における接触面に広く接触させることが可能となり、燃料極や空気極が白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0028】
所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体混合物の焼成時に最も融点のCuの微粉体が溶融し、溶融したCuをバインダーとしてPtの微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とが接合されている固体高分子形燃料電池は、最も融点のCuメタル微粉体をバインダーとしてPtの微粉体とNiの微粉体とFeの微粉体とを接合することで、多数の微細な流路(通路孔)を有するポーラス構造であるにもかかわらず、燃料極や空気極が高い強度を有してその形状を維持することができ、燃料極や空気極の触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極や空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0029】
燃料極に供給される水素の雰囲気が相対湿度95%〜100%の範囲にあり、水素の温度が45℃〜55℃の範囲にある固体高分子形燃料電池は、相対湿度95%〜100%の雰囲気で燃料極に水素を供給するとともに、45℃〜55℃の温度で燃料極に水素を供給することで、燃料極の触媒活性が増加し、燃料電池の起電力が向上し、燃料極や空気極を利用して十分な電気を確実に発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを確実に供給することができる。
【0030】
燃料極に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲にある固体高分子形燃料電池は、+0.06MPa〜+0.08MPaの供給圧力で燃料極に水素を供給することで、燃料極の触媒活性が増加し、燃料電池の起電力が向上し、燃料極や空気極を利用して十分な電気を確実に発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一例として示す固体高分子形燃料電池の斜視図。
図2】セルスタックを形成するセルの一例を示す分解斜視図。
図3】セルの側面図。
図4】一例として示す燃料極及び空気極の斜視図。
図5】燃料極及び空気極の一例として示す部分拡大正面図。
図6】燃料極及び空気極の他の一例として示す部分拡大正面図。
図7】固体高分子形燃料電池の発電を説明する図。
図8】燃料極及び空気極の起電圧試験の結果を示す図。
図9】燃料極及び空気極のI−V特性試験の結果を示す図。
図10】固体高分子形燃料電池に使用する燃料極及び空気極の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一例として示す固体高分子形燃料電池10の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る固体高分子形燃料電池の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、セルスタック12を形成するセル11の一例を示す分解斜視図であり、図3は、セル11の側面図である。図4は、一例として示す燃料極13及び空気極14の斜視図であり、図5は、燃料極13及び空気極14の一例として示す部分拡大正面図である。図6は、燃料極13及び空気極14の他の一例として示す部分拡大正面図である。図4では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0033】
固体高分子形燃料電池10は、複数のセル11を有するセルスタック12(燃料電池スタック)を備え、水素と酸素とを供給することで電気エネルギーを生成する。セルスタック12では、複数のセル11(単セル)が一方向へ重なり合って直列に接続されている。セル11の一例としては、図2に示すように、燃料極13(アノード)及び空気極14(カソード)と、燃料極13及び空気極14の間に位置(介在)する固体高分子電解質膜15(電極接合体膜)(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、燃料極13の厚み方向外側に位置するセパレータ16(バイポーラプレート)と、空気極14の厚み方向外側に位置するセパレータ17(バイポーラプレート)とから形成されている。
【0034】
それらセパレータ16,17には、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。セル11では、図3に示すように、燃料極13や空気極14、固体高分子電解質膜15が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体18(Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体18をそれらセパレータ16,17が挟み込んでいる。膜/電極接合体18では、ホットプレスによって固体高分子電解質膜15の一方の面に燃料極13の面が密着し、固体高分子電解質膜15の他方の面に空気極14の面が密着している。固体高分子電解質膜15は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0035】
燃料極13とセパレータ16との間には、ガス拡散層19が形成され、空気極14とセパレータ17との間には、ガス拡散層20が形成されている。燃料極13とセパレータ16との間であってガス拡散層20の上部及び下部には、ガスシール21が設置されている。空気極14とセパレータ17との間であってガス拡散層20の上部及び下部には、ガスシール22が設置されている。
【0036】
固体高分子形燃料電池10(セル11)に使用する燃料極13及び空気極14は、前面23及び後面24を有するとともに、所定の面積及び所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が四角形に成形されている。燃料極13及び空気極14は、多数の微細な流路25(通路孔)を有するポーラス構造(多孔質)の薄板金属電極26である。流路25(通路孔)には、ガス(気体)が通流する。なお、燃料極13や空気極14の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、その用途にあわせて円形や楕円形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。
【0037】
燃料極13及び空気極14(ポーラス構造の薄板金属電極26)は、粉状に加工された白金族金属31と、粉状に加工された遷移金属32の中から選択された少なくとも3種類の遷移金属32とから形成されている。白金族金属31としては、白金(Pt)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)を使用することができる。白金族金属31には、それらのうちの少なくとも1種類が使用される。遷移金属32としては、3d遷移金属や4d遷移金属が使用される。3d遷移金属には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)が使用される。4d遷移金属には、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)が使用される。遷移金属32には、それらのうちの少なくとも3種類が使用される。
【0038】
燃料極13及び空気極14では、選択された少なくとも3種類の遷移金属32の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属32の中から少なくとも3種類の遷移金属32が選択されている。白金の仕事関数は、5.65(eV)である。Tiの仕事関数は、4.14(eV)、Crの仕事関数は、4.5(eV)、Mnの仕事関数は、4.1(eV)、Feの仕事関数は、4.67(eV)、Coの仕事関数は、5.0(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)、Cuの仕事関数は、5.10(eV)、Znの仕事関数は、3.63(eV)、Nbの仕事関数は、4.01(eV)、Moの仕事関数は、4.45(eV)、Agの仕事関数は、4.31(eV)である。
【0039】
燃料極13及び空気極14は、白金族金属31の白金族金属微粉体(微粉状に加工されたPt(白金)、微粉状に加工されたPb(パラジウム)、微粉状に加工されたRh(ロジウム)、微粉状に加工されたRu(ルテニウム)、微粉状に加工されたIr(イリジウム)、微粉状に加工されたOs(オスミウム))と、各種の遷移金属32から選択された少なくとも3種類のそれら遷移金属32の遷移金属微粉体(微粉状に加工されたTi(チタン)、微粉状に加工されたCr(クロム)、微粉状に加工されたMn(マンガン)、微粉状に加工されたFe(鉄)、微粉状に加工されたCo(コバルト)、微粉状に加工されたNi(ニッケル)、微粉状に加工されたCu(銅)、微粉状に加工されたZn(亜鉛)、微粉状に加工されたNb(ニオブ)、微粉状に加工されたMo(モリブデン)、微粉状に加工されたAg(銀))とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状に圧縮して薄板状の金属微粉体圧縮物42とし、その金属微粉体圧縮物42を所定温度で焼成することから作られている(図10参照)。
【0040】
燃料極13及び空気極14では、選択された少なくとも3種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属31の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定され、選択された少なくとも3種類の遷移金属32の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定されている。
【0041】
具体的には、白金族金属31の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対する重量比が5〜10%の範囲、好ましくは、5〜6%の範囲にあり、選択された遷移金属32のうちの1種類の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対する重量比が30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲にあり、選択された遷移金属32のうちの他の1種類の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対する重量比が30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲にあるとともに、選択された遷移金属32のうちの前記2種類を除く他の1種類の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対する重量比が3%〜5%の範囲、好ましくは、4%である。なお、重量比が3%〜5%の遷移金属32は、その融点が他の2種類の遷移金属32のそれよりも低く、他の2種類の遷移金属32を接合するバインダー(接合成分)となる。
【0042】
白金族金属31の微粉体の重量比、選択された1種類の遷移金属32の微粉体の重量比、選択された他の1種類の遷移金属32の微粉体の重量比、2種類を除く選択された他の1種類の遷移金属32の微粉体の重量比が前記範囲外になると、それら遷移金属32の微粉体の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができないとともに、金属微粉体混合物41を圧縮した金属微粉体圧縮物42を焼成して作られた燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0043】
固体高分子形燃料電池17は、金属微粉体混合物41の全重量に対する白金族金属31の微粉体の重量比や選択された1種類の遷移金属32の微粉体の重量比、選択された他の1種類の遷移金属32の微粉体の重量比、2種類を除く選択された他の1種類の遷移金属32の微粉体の重量比を前記範囲にすることで、選択された少なくとも3種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似させることができ、燃料極13及び空気極14が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、燃料極13や空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0044】
燃料極13及び空気極14には、径が異なる多数の微細な流路25(通路孔)が形成されている。燃料極13及び空気極14は、多数の微細な流路25(通路孔)が形成されているから、その比表面積が大きい。それら流路25(通路孔)は、燃料極13及び空気極14の前面23に開口する複数の通流口27と、燃料極13及び空気極14の後面24に開口する複数の通流口27とを有し、燃料極13及び空気極14の前面23から後面24に向かって燃料極13や空気極14をその厚み方向に貫通している。
【0045】
それら流路25は、燃料極13及び空気極14の前面23と後面24との間において燃料極13や空気極14の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、燃料極13及び空気極14の外周縁28から中心に向かって燃料極13及び空気極14の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路25は、径方向において部分的につながり、一方の流路25と他方の流路25とが互いに連通している。厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路25は、厚み方向において部分的につながり、一方の流路25と他方の流路25とが互いに連通している。
【0046】
それら流路25(通路孔)の開口面積(開口径)は、厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路25は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、燃料極13及び空気極14の前面23に開口する通流口27と後面24に開口する通流口27とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積がすべて相違している。それら流路25(通路孔)の開口径や前後面23,24の通流口27の開口径は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0047】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14に厚み方向や径方向へ不規則に曲折しながら延びる複数の流路25(通路孔)が形成されているから、燃料極13や空気極14の比表面積が大きく、それら流路25(通路孔)をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13及び空気極14のそれら流路25における接触面に広く接触させることができ、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0048】
燃料極13及び空気極14(ポーラス構造の薄板金属電極26)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.5mmの範囲にある。燃料極13及び空気極14の厚み寸法L1が0.03mm(0.05mm)未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときに燃料極13や空気極14が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。燃料極13及び空気極14の厚み寸法L1が0.8mm(0.5mm)を超過すると、燃料極13や空気極14の電気抵抗が大きくなり、燃料極13及び空気極14に電流がスムースに流れず、燃料極13や空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができず、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができない。
【0049】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14の厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.5mmの範囲にあるから、燃料極13及び空気極14が高い強度を有してその形状を維持することができ、燃料極13や空気極14に衝撃が加えられたときの燃料極13や空気極14の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、燃料極13及び空気極14の電気抵抗を小さくすることができ、燃料極13や空気極14に電流がスムースに流れ、燃料極13及び空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0050】
燃料極13及び空気極14(ポーラス構造の薄板金属電極26)は、その空隙率が15%〜30%の範囲、好ましくは、20%〜25%の範囲にあり、その相対密度が70%〜85%の範囲、好ましくは、75%〜80%の範囲にある。燃料極13及び空気極14の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、燃料極13や空気極14に多数の微細な流路25(通路孔)が形成されず、燃料極13及び空気極14の比表面積を大きくすることができない。燃料極13及び空気極14の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路25(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面23,24の通流口27の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、燃料極13及び空気極14の強度が低下し、衝撃が加えられたときに燃料極13や空気極14が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合があるとともに、燃料極13及び空気極14の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。
【0051】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14の空隙率及び相対密度が前記範囲にあるから、燃料極13及び空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路25(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27を有する多孔質に成形され、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら流路25(通路孔)をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13や空気極14のそれら流路25における接触面に広く接触させることができることができるとともに、燃料極13及び空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。更に、燃料極13及び空気極14の触媒作用が向上し、燃料極13及び空気極14に優れた触媒活性を発揮させることができ、燃料極13及び空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0052】
燃料極13及び空気極14(ポーラス構造の薄板金属電極26)は、その密度が5.0g/cm〜7.0g/cmの範囲、好ましくは、5.5g/cm〜6.5g/cmの範囲にある。燃料極13及び空気極14の密度が5.0g/cm未満では、燃料極13や空気極14の強度が低下し、衝撃が加えられたときに燃料極13や空気極14が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。燃料極13及び空気極14の密度が7.0g/cmを超過すると、燃料極13や空気極14に多数の微細な流路25(通路孔)や多数の微細な通流口27が形成されず、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができず、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。
【0053】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14(ポーラス構造の薄板金属電極24)の密度が前記範囲にあるから、燃料極13や空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路25(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27を有する多孔質に成形され、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら流路25(通路孔)をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13及び空気極14のそれら流路25における接触面に広く接触させることができ、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0054】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14の密度を前記範囲にすることで、燃料極13及び空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路25(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27を有する多孔質に成形され、燃料極13及び空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら流路25をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13や空気極14のそれら流路25における接触面に広く接触させることが可能となり、燃料極13や空気極14が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、燃料極13及び空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0055】
Ptの微粉体(粉状に加工されたPt)、Pbの微粉状(粉状に加工されたPb)、Rhの微粉状(粉状に加工されたRh)、Ruの微粉状(粉状に加工されたRu)、Irの微粉状(粉状に加工されたIr)、Osの微粉状(粉状に加工されたOs)、Tiの微粉体(粉状に加工されたTi)、Crの微粉体(粉状に加工されたCr)、Mnの微粉体(粉状に加工されたMn)、Feの微粉体(粉状に加工されたFe)、Coの微粉体(粉状に加工されたCo)、Niの微粉体(粉状に加工されたNi)、Cuの微粉体(粉状に加工されたCu)、Znの微粉体(粉状に加工されたZn)、Nbの微粉体(粉状に加工されたNb)、Moの微粉体(粉状に加工されたMo)、Agの微粉体(粉状に加工されたAg)の粒径は、10μm〜200μmの範囲にある。
【0056】
それら白金族金属31の微粉体の粒径やそれら遷移金属32の微粉体の粒径が10μm未満では、それら金属の微粉体によって流路25(通路孔)が塞がれ、燃料極13及び空気極14に多数の微細な流路25を形成することができず、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができないとともに、燃料極13及び空気極14の触媒作用が低下し、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。それら白金族金属31の微粉体の粒径やそれら遷移金属32の微粉体の粒径が200μmを超過すると、流路25(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面23,24の通流口27の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、燃料極13及び空気極14に多数の微細な流路25を形成することができず、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができないとともに、燃料極13及び空気極14の触媒作用が低下し、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。
【0057】
固体高分子形燃料電池17は、燃料極13及び空気極14を形成する白金族金属31の微粉体の粒径や遷移金属32の微粉体の粒径が前記範囲にあるから、燃料極13や空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路25(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27を有する多孔質に成形され、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら流路25をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13や空気極14のそれら流路25における接触面に広く接触させることができるとともに、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。更に、燃料極13及び空気極14の触媒作用が向上し、燃料極13及び空気極14に優れた触媒活性を発揮させることができ、燃料極13及び空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0058】
燃料極13及び空気極14に使用する白金族金属31や遷移金属32の具体例としては、図10に示すように、粉状に加工されたPt33(白金)の微粉体37(粒径:10μm〜200μm)と、粉状に加工されたNi34(ニッケル)の微粉体38(粒径:10μm〜200μm)と、粉状に加工されたFe35(鉄)の微粉体39(粒径:10μm〜200μm)と、粉状に加工されたCu36(銅)の微粉体40(粒径:10μm〜200μm)とを原料としている。燃料極13及び空気極14は、Pt33やNi34、Fe35、Cu36の微粉体37〜40を均一に混合・分散した金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状に圧縮して金属微粉体圧縮物42を作り、その金属微粉体圧縮物42を所定温度で焼成することで、多数の微細な流路25(通路孔)が形成されたポーラス構造かつ薄板状に成形される。
【0059】
燃料極13及び空気極14では、Ni34の仕事関数とFe35の仕事関数とCu36の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Pt33の微粉体37の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比、Ni34の微粉体38の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比、Fe35の微粉体39の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比、Cu36の微粉体40の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比とが決定されている。なお、Cu36の微粉体40は、その融点がPt33の微粉体37やNi34の微粉体38、Fe35の微粉体39のそれよりも低く、Pt33の微粉体37やNi34の微粉体38やFe36の微粉体39を接合するバインダー(接合成分)となる。燃料極13及び空気極14では、所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物42の焼成時に最も融点のCu36の微粉体40が溶融し、溶融したCu36をバインダーとしてPt33の微粉体37とNi34の微粉体38とFe35の微粉体39とが接合されている。
【0060】
金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するPt33(白金族金属31)の微粉体37の重量比は、5〜10%の範囲、好ましくは、5〜6%の範囲であり、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するNi34(遷移金属32)の微粉体38の重量比は、30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%である。金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するFe35(遷移金属32)の微粉体39の重量比は、30〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%であり、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するCu36(遷移金属32)の微粉体40の重量比は、3%〜5%の範囲、好ましくは、4%である。
【0061】
Pt33の微粉体37の重量比、Ni34の微粉体38の重量比、Fe35の微粉体39の重量比、Cu36の微粉体40の重量比が前記範囲外になると、それらの微粉体38〜40の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができないとともに、金属微粉体混合物41を圧縮した金属微粉体圧縮物42を焼成して作られた燃料極13及び空気極14が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0062】
固体高分子形燃料電池17は、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt33の微粉体37の重量比やNi34の微粉体38の重量比、Fe35の微粉体39の重量比、Cu36の微粉体40の重量比を前記範囲にすることで、3種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、燃料極13及び空気極14が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、燃料極13や空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0063】
図7は、固体高分子形燃料電池10の発電を説明する図であり、図8は、燃料極13及び空気極14の起電圧試験の結果を示す図である。図9は、燃料極13及び空気極14のI−V特性試験の結果を示す図である。固体高分子形燃料電池10では、図7に示すように、燃料極13(電極)に水素(燃料)が供給され、空気極14(電極)に空気(酸素)が供給される。
【0064】
燃料極13に供給される水素(燃料)の雰囲気(燃料の相対湿度)は、相対湿度95%〜100%の範囲、好ましくは、100%であり、水素の温度は、45℃〜55℃の範囲、好ましくは、49℃〜51℃の範囲にある。燃料極13に供給される水素には、燃料極13に供給される前に蒸気発生器(図示せず)から蒸気が供給され、その雰囲(燃料の相対湿度)が95%〜100%(好ましくは、100%)に上昇するとともに、その温度が45℃〜55℃(好ましくは、49℃〜51℃)に上昇する。
【0065】
燃料極13に供給される水素の供給圧力及び空気極14に供給される空気の供給圧力は、+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲、好ましくは、+0.07MPaである。固体高分子形燃料電池10では、燃料極13に供給する水素及び空気極14に供給する空気を(給気)圧送する給気ポンプ(図示せず)が設置され、給気ポンプによって燃料極13に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲、好ましくは、+0.07MPaに昇圧されるとともに、給気ポンプによって空気極14に供給する空気の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲、好ましくは、+0.07MPaに昇圧される。
【0066】
燃料極13(電極)では、水素がH→2H+2eの反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜15内を通って空気極14へ移動し、電子が導線29内を通って空気極14へ移動する。固体高分子電解質膜15には、燃料極13で生成されたプロトンが通流する。空気極14(電極)では、固体高分子電解質膜15から移動したプロトンと導線29を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H+O+4e→2HOの反応によって水が生成される。
【0067】
燃料極13及び空気極14は、遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属32の中から少なくとも3種類の遷移金属32が選択され、選択された遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属31の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定され、選択された遷移金属32の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定されているから、燃料極13及び空気極14が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0068】
具体例として示した燃料極13及び空気極14は、仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Ni34とFe35とCu36とが選択され、選択されたNi34とFe35とCu36との仕事関数の合計仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt33の重量比が決定され、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi34の微粉体38の重量比とFe35の微粉体39の重量比とCu36の微粉体40の重量比とが決定されているから、燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0069】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極13と空気極14との間の電圧(V)を測定した。図7の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に燃料極13と空気極13との間の電圧(V)を表す。燃料極13及び空気極14を使用した固体高分子形燃料電池10では、図7に示すように、電極間の電圧が1.05(V)〜1.079(V)であった。
【0070】
I−V特性試験では、燃料極13と空気極14との間に負荷30を接続し、電圧と電流との関係を測定した。図8のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。電極10を使用した固体高分子形燃料電池10では、図8に示すように、緩やかな電圧降下が認められた。図7の起電圧試験の結果や図8のI−V特性試験の結果に示すように、燃料極13及び空気極13が電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる優れた触媒作用を有するとともに、優れた酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0071】
固体高分子形燃料電池10は、それに使用される燃料極13及び空気極14が白金族金属31と所定の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択された少なくとも3種類の遷移金属32とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物42を焼成して多数の微細な流路25や通流口27を形成したポーラス構造の薄板金属電極26であり、遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対する白金族金属31の重量比が決定され、金属微粉体混合物41の全重量に対するそれら遷移金属32の重量比が決定されているから、燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極13及び空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0072】
また、白金族金属31としてPt33(白金)を原料とし、遷移金属32としてNi34(ニッケル)とFe35(鉄)とCu36(銅)とを原料とした燃料極13及び空気極14を使用した固体高分子形燃料電池10は、遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、Ni34とFe35とCu36とが選択され、選択されたNi34とFe35とCu36との仕事関数の合計仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt33の微粉体37の重量比が決定され、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi34の微粉体38の重量比とFe35の微粉体39の重量比とCu36の微粉体40の重量比とが決定されているから、燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極13及び空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0073】
固体高分子形燃料電池10は、燃料極13及び空気極14が各種の遷移金属32から選択された廉価な遷移金属32(たとえば、Ni34、Fe35、Cu36)を含み、金属微粉体混合物41の全重量に対するそれら遷移金属32の微粉体の重量比(Ni34の微粉体38の重量比、Fe35の微粉体39の重量比、Cu36の微粉体40の重量比)が前記範囲にあり、金属微粉体混合物41の全重量に対する白金族金属31の微粉体の重量比(Pt33の微粉体37の重量比)が前記範囲にあり、高価な白金族金属31の含有量が少ないから、燃料極13や空気極14の材料費を低減させることができ、固体高分子形燃料電池10を廉価に作ることができるとともに、固体高分子形燃料電池10の運転コストを下げることができる。
【0074】
固体高分子形燃料電池10は、相対湿度95%〜100%の雰囲気の水素(燃料)を燃料極13に供給し、45℃〜55℃の温度の水素を燃料極13に供給し、+0.06MPa〜+0.08MPaの供給圧力で燃料極13に水素を供給するとともに+0.06MPa〜+0.08MPaの供給圧力で空気極14に空気(酸素)を供給することで、燃料極13や空気極14の触媒活性が増加し、燃料電池10の起電力が向上し、非白金の燃料極13や空気極14を使用して十分な電気を確実に発電することができ、燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを確実に供給することができる。
【0075】
図10は、固体高分子形燃料電池10に使用する燃料極13及び空気極14の製造方法を説明する図である。燃料極13及び空気極14は、図10に示すように、遷移金属選択工程S1、金属微粉体作成工程S2、微粉体重量比決定工程S3、金属微粉体混合物作成工程S4、金属微粉体圧縮物作成工程S5、薄板電極作成工程S6を有する電極製造方法によって製造される。電極製造方法では、白金族金属31と少なくとも3種類の遷移金属32とを原料として固体高分子形燃料電池10に使用する燃料極13及び空気極14を製造する。
【0076】
遷移金属選択工程S1では、各種の白金族金属31の中から少なくとも1種類の白金族金属31(白金(Pt)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os))を選択し、各種の遷移金属32から選択する少なくとも3種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属32の中から少なくとも3種類の遷移金属32(Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀))を選択する。なお、燃料極13及び空気極14に使用する白金族金属31としてPt33(白金)が選択され、燃料極13及び空気極14に使用する遷移金属32としてNi34(ニッケル)、Fe35(鉄)、Cu36(銅)が選択されたものとする。
【0077】
金属微粉体作成工程S2では、微粉砕機によって白金33(Pt)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのPt33の微粉体37を作り、微粉砕機によってNi34(ニッケル)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのNi34の微粉体38を作るとともに、微粉砕機によってFe35(鉄)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのFe45の微粉体39を作り、微粉砕機によってCu36(銅)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、粒径が10μm〜200μmのCu36の微粉体40を作る。
【0078】
電極製造方法は、Pt33(白金族金属31)やNi34(遷移金属32)、Fe35(遷移金属32)、Cu36(遷移金属32)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕することで、多数の微細な流路25(通路孔)を有する多孔質に成形されて比表面積が大きいポーラス構造かつ薄板状の燃料極13や空気極14を作ることができ、それら流路25をガス(気体)や水溶液(液体)が通流しつつガス(気体)や水溶液(液体)を燃料極13及び空気極14のそれら流路25における接触面に広く接触させることが可能な燃料極13や空気極14を作ることができる。
【0079】
微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体作成工程S2によって作られたNi34の微粉体38とFe35の微粉体39とCu36の微粉体40との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt33の微粉体37の重量比を決定し、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi34の微粉体38の重量比を決定し、金属微粉体混合物41の全重量に対するFe35の微粉体39の重量比を決定するとともに、金属微粉体混合物41の全重量に対するCu36の微粉体40の重量比を決定する。
【0080】
微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するPt33(白金族金属31)の微粉体37の重量比を5〜10%の範囲、好ましくは、5〜6%の範囲で決定する。微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するNi34(遷移金属32)の微粉体38の重量比を30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲で決定し、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するFe35(遷移金属32)の微粉体39の重量比を30%〜45%の範囲、好ましくは、40%〜45%の範囲で決定するとともに、金属微粉体混合物41の全重量に(100%)対するCu36(遷移金属32)の微粉体40の重量比を3%〜5%の範囲、好ましくは、4%で決定する。
【0081】
電極製造方法は、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように遷移金属32のNi34(ニッケル)とFe35(鉄)とCu36(銅)とを選択するとともに、合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt33の微粉体37の重量比やNi34の微粉体38の重量比、Fe35の微粉体39の重量比、Cu36の微粉体40の重量比を前記範囲において決定することで、Ni34の微粉体38とFe35の微粉体39とCu36の微粉体40との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、白金族金属31(Pt33)の含有量が少ないにもかかわらず、白金族元素を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の燃料極18及び空気極19を作ることができる。
【0082】
電極製造方法は、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi34(遷移金属32)の微粉体38の重量比やFe35(遷移金属32)の微粉体39の重量比、Cu36(遷移金属32)の微粉体40の全重量が前記範囲にあり、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt33(白金族金属31)の微粉体37の重量比が前記範囲にあるから、高価な白金族金属31の含有量が少なく、燃料極18及び空気極19を廉価に作ることができる。
【0083】
金属微粉体混合物作成工程S4では、微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のPt33の微粉体37と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のNi34の微粉体38と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のFe35の微粉体39と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のCu36の微粉体40とを混合機に投入し、混合機によってPt33の微粉体37、Ni34の微粉体38、Fe35の微粉体39、Cu36の微粉体40を攪拌・混合し、Pt33の微粉体37、Ni34の微粉体38、Fe35の微粉体39、Cu36の微粉体40が均一に混合・分散した金属微粉体混合物41を作る。
【0084】
金属微粉体圧縮物作成工程S5では、金属微粉体混合物作成工程S4によって作られた金属微粉体混合物41を所定圧力で加圧し、金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物42を作る。金属微粉体圧縮物作成工程S5では、金属微粉体混合物41を金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によって薄板状の金属微粉体圧縮物42を作る。
【0085】
プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa〜800Mpaの範囲にある。プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、金属微粉体圧縮物42(薄板金属電極26)に形成される流路25(通路孔)の開口面積(開口径)が大きくなり、金属微粉体圧縮物42の厚み寸法L1を0.03mm〜0.8mm(好ましくは、0.05mm〜0.5mm)にしつつ、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路25(通路孔)を金属微粉体圧縮物42(薄板金属電極26)に形成することができない。
【0086】
プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、金属微粉体圧縮物42(薄板金属電極26)に形成される流路25(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に小さくなり、金属微粉体圧縮物42の厚み寸法L1を0.03mm〜0.8mm(好ましくは、0.05mm〜0.5mm)にしつつ、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路25(通路孔)を金属微粉体圧縮物42(薄板金属電極26)に形成することができない。
【0087】
電極製造方法は、金属微粉体混合物41を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、金属微粉体圧縮物42(薄板金属電極26)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.8mm(好ましくは、0.05mm〜0.5mm)にしつつ、開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路25(通路孔)を形成した金属微粉体圧縮物42を作ることができる。電極製造方法は、厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲(好ましくは、0.05mm〜0.5mmの範囲)の燃料極13及び空気極14を作ることができるから、電気抵抗を小さくすることができ、電流をスムースに流すことが可能な燃料極13や空気極14を作ることができる。
【0088】
薄板電極作成工程S6では、金属微粉体圧縮物作成工程S5によって作られた金属微粉体圧縮物42(薄板金属電極26)を焼成炉(燃焼炉、電気炉等)に投入し、金属微粉体圧縮物42を焼成炉において所定温度で焼成(焼結)して多数の微細な流路25(通路孔)を形成したポーラス構造かつ薄板状の燃料極13及び空気極14を作る。
【0089】
薄板電極作成工程S6では、最も融点の低いCu36(融点:1084.5℃)の微粉体40を溶融させる温度(例えば、1100℃〜1400℃)で金属微粉体圧縮物42を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間〜6時間である。薄板電極作成工程S6では、所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体圧縮物42の焼成時において、最も融点の低いCu36の微粉体40が溶融し、溶融したCu36の微粉体40をバインダーとしてPt33の微粉体37とNi34の微粉体38とFe35の微粉体39とを接合(固着)する。なお、Pt33の融点は、1774℃、Ni34の融点は、1455℃、Fe35の融点は、1539℃である。薄板電極作成工程S6では、金属微粉体圧縮物42を所定温度で焼成することで、多数の微細な流路25(通路孔)が形成されたポーラス構造かつ薄板状の燃料極13及び空気極14が製造される。
【0090】
電極製造方法は、最も融点の低いCu36の微粉体40をバインダーとしてPt33の微粉体37とNi34の微粉体38とFe35の微粉体39とを接合することで、多数の微細な流路25(通路孔)を有するポーラス構造かつ薄板状の燃料極13及び空気極14を作ることができるとともに、高い強度を有して形状を維持することができ、衝撃が加えられたときの破損や損壊を防ぐことが可能な燃料極13及び空気極14を作ることができる。
【0091】
電極製造方法は、各種の遷移金属32から選択する少なくとも3種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属32の中から少なくとも3種類の遷移金属32(たとえば、Ni34、Fe35、Cu36)を選択する遷移金属選択工程S1と、白金族金属31(たとえば、Pt33)を微粉砕して白金族金属微粉体(Pt43の微粉体37)を作り、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属32を微粉砕して遷移金属微粉体(Ni34の微粉体38、Fe35の微粉体39、Cu36の微粉体40)を作る金属微粉体作成工程S2と、金属微粉体作成工程S2によって作られた少なくとも3種類の遷移金属微粉体の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、白金族金属微粉体(Pt33の微粉体37)の重量比と少なくとも3種類の遷移金属微粉体(Ni34の微粉体38、Fe35の微粉体39、Cu36の微粉体40)の重量比とを決定する微粉体重量比決定工程S3と、微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比の白金族金属微粉体と少なくとも3種類の遷移金属微粉体とを混合・分散した金属微粉体混合物41を作る金属微粉体混合物作成工程S4と、金属微粉体混合物作成工程S4によって作られた金属微粉体混合物41を所定圧力で加圧して金属微粉体圧縮物42を作る金属微粉体圧縮物作成工程S5と、金属微粉体圧縮物作成工程S5によって作られた金属微粉体圧縮物42を所定温度で焼成して多数の微細な流路25を形成したポーラス構造の薄板状に成形された燃料極13及び空気極14を作るポーラス構造薄板電極作成工程S6との各工程によって、厚み寸法L1が0.03mm〜0.8mmの範囲(好ましくは、0.03mm〜0.5mmの範囲)であって多数の微細な流路25(通路孔)を形成した燃料極13及び空気極14を製造することができ、固体高分子形燃料電池10に好適に使用することが可能な燃料極13や空気極14を廉価に作ることができる。
【0092】
電極製造方法は、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の燃料極13及び空気極14を作ることができ、固体高分子形燃料電池10に好適に使用することが可能な燃料極13及び空気極14を作ることができる。電極製造方法は、それによって作られた燃料極13及び空気極14が白金族元素を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、固体高分子形燃料電池10において十分な電気を発電することが可能であって固体高分子形燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することが可能な白金族金属少含有の燃料極13及び空気極14を作ることができる。
【符号の説明】
【0093】
10 固体高分子形燃料電池
11 セル
12 セルスタック
13 燃料極
14 空気極
15 固体高分子電解質膜(電極接合体膜)
16 セパレータ
17 セパレータ
18 膜/電極接合体
19 ガス拡散層
20 ガス拡散層
21 ガスシール
22 ガスシール
23 前面
24 後面
25 流路(通路孔)
26 薄板金属電極
27 通流口
28 外周縁
29 導線
30 負荷
31 白金族金属
32 遷移金属
33 Pt(白金)
34 Ni(ニッケル)
35 Fe(鉄)
36 Cu(銅)
37 Pt(白金)の微粉体
38 Ni(ニッケル)の微粉体
39 Fe(鉄)の微粉体
40 Cu(銅)の微粉体
41 金属微粉体混合物
42 金属微粉体圧縮物
L1 厚み寸法
S1 遷移金属選択工程
S2 金属微粉体作成工程
S3 微粉体重量比決定工程
S4 金属微粉体混合物作成工程
S5 金属微粉体圧縮物作成工程
S6 薄板電極作成工程

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10