【解決手段】本発明の圧着端子1は、電線の芯線を圧着する芯線バレル37,37と、芯線バレル37,37よりも後に設けられる、電線の絶縁被覆を圧着する被覆バレル39,39と、芯線バレル37,37と被覆バレル39,39を支持する基部31と、芯線バレル37,37の前端37Eよりも後方(B)に設けられ、基部31から立ち上がる衝立33と、を備える。圧着端子1は、衝立33よりも後方(B)であって芯線バレル37,37が設けられている範囲内に、基部31の外側から内側を視認できる視認窓35が設けられることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧着端子に防水性が要求される場合には、圧着端子をゴム製のシール部材、例えばファミリーシールのシール孔に挿入して用いられることがある。圧着端子をシール孔に挿入する際にシール部材に傷をつけると、防水性能が担保されなくなる。
圧着端子は芯線バレルで芯線を圧着するが、芯線が複数本からなる場合には、圧着により芯線の前端が径方向の外側に向けて広がる、いわゆる「ばらけ」が生ずる。
特許文献1の圧着端子においては、芯線(20a)の前端側が芯線バレルから前方に向けて突出しているために芯線に「ばらけ」が生じる。この圧着端子をシール部材のシール孔に挿入すると、芯線の前端がシール孔の周囲のシール部分に突き当たり、シール部材に傷をつけるおそれがある。
そこで本発明は、芯線の「ばらけ」によりシール部材に傷をつけるおそれのない圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧着端子は、電線の芯線を圧着する芯線バレルと、芯線バレルよりも後方に設けられる、電線の絶縁被覆を圧着する被覆バレルと、芯線バレルと被覆バレルを支持する基部と、芯線バレルの前端に一致するかまたは前端よりも後方に設けられ、基部から立ち上がる衝立と、を備える。
【0006】
本発明における圧着端子は、好ましくは、衝立よりも後方であって芯線バレルが設けられる範囲内に、外側から内側を視認できる窓が設けられる。
この窓は、好ましくは、基部に設けられている。この場合、好ましくは、衝立と窓の間には、基部が存在している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の圧着端子によれば、衝立が芯線バレルの前端に一致するかまたは前端よりも後方に設けられる。これにより、圧着される芯線は、芯線バレルの前端よりも前方に突出するのが阻止され、芯線バレルの範囲内に留まる。よって、芯線バレルの圧着により芯線に「ばらけ」が生じようとしても、芯線バレルに機械的に拘束される。したがって、圧着された電線を伴って本発明の圧着端子をシール部材に挿入しても、芯線の「ばらけ」によってシール部材を傷つけるおそれがない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る圧着端子1について図面を参照して説明する。
圧着端子1は、
図1、
図4および
図5に示すように、圧着後に芯線101が芯線バレル37よりも前方に突出するのを防ぐ衝立33を備えている。これにより、芯線101の前端に「ばらけ」が生じようとしても芯線バレル37が機械的に拘束するので、シール孔113を貫通する際にシール部材110の環状シール突起115に傷をつけるおそれがない。
以下、圧着端子1の構成について説明した後に、衝立33による効果について説明する。
【0010】
[圧着端子1の全体構成]
圧着端子1は、
図1および
図2に示すように、リセプタクル型の接触部10と、電線100を圧着する圧着部30とが、例えば銅合金からなる金属板を板金加工することにより一体的に形成されている。
圧着端子1は、
図5に示すように、ゴム製のシール部材110のシール孔113を貫通するように挿入され、電線100の部分でシール部材110により密閉される。このシール部材110は、電線100が引き出されている側から圧着端子1に向けて水分が進入して、圧着端子1に水分が付着するのを防止する。
【0011】
図1に示すように、圧着端子1において、接触部10が設けられる側を前(F)、圧着部30が設けられる側を後(B)と定義する。この前および後は相対的な定義であり、例えば接触部10において、
図1の左端に対して右側は後になる。また、圧着端子1において、幅方向X、長手方向Yおよび高さ方向Zを
図1に示すように定義する。
【0012】
[接触部10]
圧着端子1は、嵌合相手の端子と電気的に接続される。本実施形態の圧着端子1は、
図1および
図2に示すように、接触部10としてリセクタプル型の接触部を一例としているが、本発明における接触部はこれに限定されるものではない。例えば、タブ型等の雄型接触部であってもよい。
接触部10は、図示を省略するタブ型端子が挿入される受容口13が一端側に開口されたボックス状の端子本体11と、受容口13から挿入されるタブ型端子を収容する受容キャビティ15と、を備える。受容キャビティ15の内部には、
図1に示される端子本体11の内部にはタブ型端子を押し付ける主ばねリーフ16と従ばねリーフ17が設けられている。
【0013】
[圧着部30]
圧着部30は、
図4に示すように、電線100を圧着により圧着端子1に固定するとともに芯線101と電気的に接続される。
圧着部30は、
図1および
図2に示されるように、電線100が載せられる基部31と、基部31に支持される一対の芯線バレル37,37および一対の被覆バレル39,39と、を備える。芯線バレル37,37のそれぞれは、基部31の幅方向Xの両端から立ち上がり、また、被覆バレル39,39のそれぞれは基部31の幅方向Xの両端から立ち上がる。被覆バレル39,39は芯線バレル37,37よりも後方(B)に設けられている。
【0014】
[基部31]
基部31は、
図1、
図2および
図3に示すように、接触部10と連なり長手方向Yに延びるように構成され、
図3に示すように、電線100の芯線101と絶縁被覆103の双方を支持する。
基部31には、基部31から立ち上がる衝立33が設けられている。
衝立33は、芯線101の前端が突き当たることで、芯線101が芯線バレル37,37よりも前方(F)に突出するのを阻止するために設けられる。衝立33は、
図2(a)に示すように、この機能を果たすために、係止面34は芯線バレル37の前端37Eに一致するか、または、前端37Eよりも後方(B)に設けられる。ただし、本実施形態は、
図2(a)に示されるように、係止面34が芯線バレル37の前端37Eよりもわずかに後方(B)に設けられている。
【0015】
衝立33は、基部31を切り起こすことで形成される。本実施形態における衝立33は、平面形状が矩形をなしているが、芯線101が芯線バレル37,37よりも前方に突出するのを阻止できる限り、その形状および寸法は任意である。例えば、芯線101の圧着後の断面形状に対応する形状であってもよい。
基部31には、衝立33を切り起こして形成する名残として、その表裏を貫通する打抜孔32が形成される。本実施形態においては、衝立33よりも前方に打抜孔32が形成されるように、切り起こしがなされている。
【0016】
また、基部31には、
図1および
図2に示すように、その表裏を貫通し、基部31の内側を視認できる視認窓35が設けられている。
視認窓35を通じて芯線101を視認(観察)できれば、芯線101と基部31および芯線バレル37,37とが必要な表面積をもって電気的な接触が図れることを保証する。
視認窓35は、衝立33よりも後方(B)に設けられている。したがって、仮に芯線101の前端が衝立33の係止面34に突き当たっていれば、視認窓35を通じて芯線101を観察できる。また、仮に芯線101の前端が衝立33の係止面34に突き当たっていなくても、視認窓35を通じて芯線101を観察できる場合があり、この場合には、芯線101と基部31および芯線バレル37,37とが必要な電気的な接触が得られる。この一形態として、視認窓35を通じて芯線101の前端を観察できる場合があり、この場合にも必要な電気的な接触が得られるように、視認窓35の位置および視認窓35よりも後方(B)における基部31、芯線バレル37,37の寸法などが定められている。
【0017】
[芯線バレル37]
芯線バレル37は、電線100の芯線101を圧着して芯線101を圧着部30に固定する。
芯線バレル37は、
図1および
図2に示すように、矩形の平面形状をなしている。これは一例であり、芯線101を圧着できる限り、その形状は任意である。また、ここでは一対の芯線バレル37,37を設ける例を示しているが、これも本発明の一例に過ぎない。形状、寸法を調整することにより、一つの芯線バレル37で芯線101を圧着することもできる。
【0018】
芯線バレル37,37は、
図1(b)に示すように、両者の幅方向Xの間隔が根本37Aから先端37Bに向けて連続的に広くなるように形成されている。これは、電線100を受け入れやすくするためである。被覆バレル39,39についても同様である。
【0019】
[被覆バレル39,39]
次に、被覆バレル39,39は、電線100の絶縁被覆103を圧着して絶縁被覆103を圧着部30に固定する。
被覆バレル39,39は、
図1に示すように、台形状の平面形状をなしている。これは一例であり、絶縁被覆103を圧着できる限り、その形状は任意である。また、ここでは一対の被覆バレル39,39を設ける例を示しているが、これも本発明の一例に過ぎない。形状、寸法を調整することにより、一つの被覆バレル39で絶縁被覆103を圧着することもできる。また、ここでは一対の被覆バレル39,39を長手方向Yの位置をずらして設ける例を示しているが、これも本発明の一例に過ぎない。長手方向Yの同じ位置に設けるとともに、一方の被覆バレル39に他方の被覆バレル39を積層するように圧着してもよい。
【0020】
[圧着の手順]
次に、
図3および
図4を参照して、電線100を圧着端子1に圧着する手順を説明する。
はじめに、
図3に示すように、電線100を圧着端子1の所定位置に載せる。このとき、芯線101の前端102が衝立33の係止面34に突き当たるように、電線100が圧着端子1に載せられる。
衝立33に対して芯線101の前端102を幅方向Xおよび長手方向Yに位置合わせをした後に、高さ方向Zの上方から下方に向けて電線100を移動させることにより、圧着端子1の所定位置に電線100を載せることができる。また、衝立33に対して芯線101の前端102を幅方向Xおよび高さ方向Zに位置合わせをした後に、長手方向Yの後方から前方に向けて電線100を移動させることにより、圧着端子1の所定位置に電線100を載せることもできる。
【0021】
電線100を圧着端子1に載せる作業は、機械で行うことができるし人手で行うこともできる。いずれにしても、前端102が係止面34から後方(B)に離れるように、電線100が圧着端子1に載せられることもある。電線100が圧着端子1に載せられた後に、視認窓35を通じた観察が行われ、芯線101が観察されれば圧着作業が行われる。芯線101が観察されなければ芯線101の位置ずれを是正してから、圧着作業が行われる。圧着作業は、通常、金型を用いたかしめ装置により行われる。なお、観察工程は圧着作業後であってもよい。
【0022】
圧着作業を終えると、
図4に示すように、それぞれの芯線バレル37,37は幅方向Xの内側に折り込まれることで、横断面が円弧状の形態となって芯線101を圧着している。また、それぞれの被覆バレル39,39は絶縁被覆103の外周面に倣うように折り込まれることで、横断面が円弧状の形態となって絶縁被覆103を圧着している。
【0023】
[シール部材110への挿入]
電線100が圧着された圧着端子1は、
図5に示すように、シール部材110に挿入される。
図5はその経過を示している。なお、ここでは本体111にシール孔113が一つだけ示されているが、実際には複数のシール孔113が本体111に形成されたファミリーシールと称されるシール部材110として実施されることがある。シール部材110は、本体111と、本体111の表裏を貫通するシール孔113と、シール孔113に突き出す環状シール突起115と、を備えている。
【0024】
シール部材110のシール孔113に電線100が圧着された圧着端子1を挿入するには、
図5(a)に示すように、圧着端子1をシール孔113に位置決めしてからシール孔113の奥に向けて押し込む。
圧着端子1は、
図5(b)に示すように、シール孔113の内部において環状シール突起115に干渉しながらシール孔113の奥に向けて進む。
図5(c)に示すように、絶縁被覆103がシール孔113に達するまで圧着端子1を押し込むと、環状シール突起115が、絶縁被覆103の外周面に密着し、シール孔113から圧着端子1が配置されるシール部材110の内部への水の浸入を阻止する。
【0025】
圧着端子1の挿入の過程で、圧着端子1は環状シール突起115に干渉する。したがって、この干渉により環状シール突起115に傷をつけるおそれがある。特に、芯線101の前端が圧着後の芯線バレル37,37から突出していると、芯線101の前端が環状シール突起115に突き当たる。そうすると、環状シール突起115が傷つけられるおそれがある。本実施形態の圧着端子1は、衝立33を備えることにより、芯線101の前端が環状シール突起115に突き当たるのを防げるという効果を奏する。
【0026】
[圧着端子1の作用および効果]
以下、
図6を参照して、本実施形態の作用および効果を説明する。
<芯線101のばらけ防止>
はじめに、
図6に示すように、衝立33の係止面34が芯線バレル37の前端37Eよりも微小量だけ後方(B)にある。したがって、芯線101が最も前方(F)に置かれたとしても、芯線101の前端102は芯線バレル37の前端37Eよりも後方(B)に置かれる。つまり、芯線101の前端102は、芯線バレル37,37が設けられ芯線101を圧着する領域の範囲内に留まる。これにより、芯線101は芯線バレル37,37による圧着により外側に向けてばらけようとしても芯線バレル37,37に機械的に拘束される。
【0027】
本実施形態の衝立33は基部31に設けられている。
ここで、衝立33と同様の部材を、芯線バレル37,37の少なくとも一方に設けることも可能である。しかし、芯線バレル37,37は、前述したように、基部31から離れるにつれて双方の間隔が広くなるように傾いている。したがって、芯線バレル37,37から突き出す寸法を相当に大きくしないと、芯線101の前端102に突き当てることができない。一方で、衝立33は切り起こして形成するものであることを前提とすれば、芯線101の前端102に突き当てるだけの寸法を確保できないこともある。したがって、本実施形態のように、基部31に衝立33を設けることにより、必要な突き出し量の衝立33を容易に確保できるので、芯線101がばらけるのを確実に防止できる。
【0028】
本実施形態の衝立33は、衝立33よりも前方(F)に打抜孔32が形成される切り起こしによって形成されている。
衝立33よりも前方に打抜孔32が形成されるが、衝立33よりも後方には打ち抜き孔が形成されず、基部31がそのまま存在している。したがって、圧着後に芯線101がばらけようとしても、基部31および芯線バレル37,37が高さ方向Zに芯線101を拘束する。仮に、衝立33よりも後(B)に打抜孔が形成されているとすると、圧着後にこの打抜孔を通ってばらけた芯線101が外部に突出してしまう。
【0029】
<圧着端子1と芯線101との電気的接続面積の確保>
圧着端子1は、衝立33よりも後(B)に視認窓35を設ける。圧着の前に電線100を基部31に載せた後に、視認窓35を通じて芯線101を確認できれば、圧着端子1と芯線101との電気的接触面積を確保できることを確認できる。確認がなされた圧着端子1は、圧着端子1と芯線101の必要な電気的な接続状態が担保される。
【0030】
以上、本発明の好ましい圧着端子1を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、
図7(a)に示すように、芯線バレル37が台形状をなしている場合を想定する。この場合には、衝立33は、芯線バレル37の先端37Bにおける前端37Eと一致するか、これよりも後方(B)に、係止面34が配置されるように構成される。そうすることにより、芯線バレル37,37を芯線101に圧着した後に、芯線101の前端102が圧着された芯線バレル37,37の範囲内に留まる。
【0031】
また、
図7(b)に示すように、衝立33の係止面34が芯線バレル37の前端37Eよりも十分に後方(B)に設けることができる。こうすれば、芯線101の前端102は前端37Eよりも間違いなく後方(B)に置かれるので、芯線101がばらけるのをより確実に防止できる。
【0032】
また、
図7(c)に示すように、視認窓35は芯線バレル37,37の一方または双方に設けることができる。ただし、視認窓35の観察が肉眼ではなく光学的な手段を用いて行われる場合には、視認窓35は基部31に設けることが好ましい。芯線バレル37,37は傾いているので、光学的な手段では視認しづらいこともあるためである。