【解決手段】ミスト型水耕栽培システムは、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に養液を供給するミスト発生源21を設けたものである。また、水流噴射型水耕栽培システムは、養液槽22の長手方向に沿って水流を噴射する高圧空気流により加速された水流源とを備えたものである。
上記ミスト発生手段と壁面で隔てられた水槽、または、上記ミスト発生手段と異なる水槽の水位を計測することで、上記ミスト発生手段の水位を一定に保持する水位保持手段を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のミスト型水耕栽培システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常の噴霧式の水耕栽培システムにおいては、植物一株ごとに霧吹き式の噴霧器を配置しなければならない。したがって、装置構成が複雑になり、製造コストが増加する。また。一株ごとに設けられている霧吹き式の噴霧器が詰まっていないか、正常な噴霧圧を維持しているか等を全ての噴霧器についてチェックする必要があり、メンテナンスも煩雑になる。
【0007】
さらに、噴霧器は植物の根の近傍に設けられているため、有機物が付着しやすく、細菌や害虫の温床になりやすい。したがって不衛生であり、これを防止するために、さらにメンテナンスが煩雑になるといった問題が生じていた。
以上のように、現状の噴霧式の水耕栽培システムは、装置の製造コストおよびメンテナンスコストが増加するため、広く普及するに至っていない。
【0008】
また、昨今急速に検討が進んでいる高度な栽培システム方法にも対応することが困難である。
例えば、野菜等の植物においては、ORAC値(活性酸素吸収能力値)を向上させ、且つ含有硝酸イオン量を減少させるために、収穫前処理が有効であることが知られている。収穫前の1日から数日間、硝酸態窒素を含まない特別な養液で栽培することで目的を達成することが可能である。ただし、養液の完全な入れ替えが必要であり、上記の特別な養液を入れる前に、それ以前に使用していた硝酸態窒素を含む溶液を洗浄等により完全に除去することが必要である。
【0009】
あるいは、鉄分の含有量を増加させるために、鉄イオンを多く含んだ養液を収穫前に用いる。しかし、通常の養液には鉄イオンを析出させてしまう成分が多く含まれており、以前の養液が残っていると、植物が吸収しやすい鉄イオン量が大幅に減少してしまう。
【0010】
一株ごとに霧吹き式の噴霧器が設けられている複雑な機構の噴霧式のシステムにおいては、このような養液の完全な入れ替えは困難である。
【0011】
また、土耕栽培に比べて、水耕栽培においては湿度が高く、それが植物の成長を阻害するケースもあるとの研究報告もあるが、現行の噴霧式のシステムにおいては、湿度を下げる等の調節は困難である。
【0012】
また、特許文献1に開示されている噴霧式の水耕栽培システムは、複数の株に対して、まとめて噴霧を行えるため、装置構成を簡略できる利点はある。しかし、複数の株に対して、まとめて噴霧を行うためには、噴霧器の周囲にプランターを並べなければならず、プランターの設置に制限が生じる。したがって、プランターを多段に配置する等の3次元的な有効配置が困難になり、設置場所面積当たりの収穫量が格段に低下するという大きな課題があった。
このような課題は、噴霧方式であるため、噴霧された霧が到達する範囲には限界があり、噴霧器に近接した位置に植物の根を設けることが必要であるという、噴霧式の大きな欠点によるものである。
【0013】
本発明は、上記のような数々の課題を解決するためになされたものであり、従来の噴霧式の水耕栽培システムとは全く異なるミスト型水耕栽培システムを提供するものである。
また、本発明は、上記のような数々の課題を同様に解決するためになされたものであり、霧ではなく水流を用いる新たな機構の水流噴射型の水耕栽培システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るミスト型水耕栽培システムは、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源と、当該ミスト発生源の上部に設けられ、垂直断面が傾斜したミスト反射壁とを有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係るミスト型水耕栽培システムは、栽培管または栽培壁を縦置きにした縦型の水耕栽培システムであって、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係るミスト型水耕栽培システムは、複数の栽培管または栽培壁を縦置きにした縦型の水耕栽培システムであって、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源と、当該ミスト発生源の上部に設けられ、垂直断面が傾斜したミスト反射壁と、上記ミスト発生源より発生したミストを上記複数の栽培管それぞれに、あるいは上記栽培壁の上部に所定間隔で導くための導入配管とを備え、上記栽培管は上記ミスト発生源から遠ざかるにつれ断面積が減少することを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係るミスト型水耕栽培システムは、複数の栽培管または栽培壁を縦置きにした縦型の水耕栽培システムであって、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源と、当該ミスト発生源の上部に設けられ、垂直断面が傾斜したミスト反射壁と、上記ミスト発生源より発生したミストを上記複数の栽培管それぞれに、あるいは上記栽培壁の上部に所定間隔で導くための導入配管とを備え、上記ミスト発生源のミスト出口から複数の栽培管の並び、あるいは栽培壁の上部長手方向に沿って、樋を設けたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る水流噴射型水耕栽培システムは、略直線状に並んだ複数の植物の根に向かって、養液を水流として噴射する高圧空気流により加速された水流源を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る水耕栽培方法は、略直線状に複数の植物を配置し、当該複数の植物に根に向かって、高圧空気流により加速された水流源により、養液を水流として噴射する
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
養液に根を浸漬する通常の水耕栽培に比べて、噴霧式の水耕栽培はいくつかの利点を有している。しかし、霧(ミスト)を用いるため、噴霧器の近傍に植物の根を設ける必要があり、これによる制約が大きく、装置構成が複雑になる等の課題があった。
本発明は、噴霧式の水耕栽培の持つ利点を活かしつつ、課題を克服した新たな水耕栽培のシステムを提供するものである。
【0021】
本発明の第一のシステムは、略直線状に並んだ複数の植物の根に向かって、養液を水流として噴射する高圧空気流により加速された水流源を備えたものである。特に、養液槽の長手方向に沿って水流を噴射する高圧空気流により加速された水流源を養液供給機構として用いるものである。養液を霧ではなく、水流として噴射させることで、到達距離が長くなり、多くの株数を一台の噴射器で対応可能である。
これにより、以下に示す多くの特長が生じる。
【0022】
現行の噴霧式の水耕栽培システムに比べて、大幅に装置構成が簡素になる。したがって、装置の製造コストやメンテナンスコストの減少が可能である。そして、栽培装置全体の制約がほとんどないため、自由に栽培装置を構成できる。例えば、プランターを数段積んだ多段式の設備にも対応できる。あるいは、壁面等に略縦置きに配置した栽培管あるいは栽培壁に植物を略垂直方向に並べた縦型のプランター等にも対応可能であり、植物の良好な生育と、収穫量の向上を考慮した高度な栽培方式や、様々なプランター構成に容易に対応できる。
【0023】
例えば、養液とともに高圧の空気の流れが植物に向かって噴射されるため、その空気流の反射流等により、養液槽に落ちた養液に一定方向の流れが生じるので、養液槽内で養液の流れが淀んだ場所に生じにくい。浸漬方式の水耕栽培システムにおいては、養液槽の底面形状を自由に設計できるため、底面形状の最適化と上記の養液の一定の流れにより、養液の流れが淀んだ場所を最小限にすることが可能である。水耕栽培システムにおいて、メンテナンスを煩雑にしている最大の要因のひとつはアオコ等の微細藻類の発生である。微細藻類が発生する場所は養液の流れが淀んだ場所であり、養液の流れが淀んだ場所を最小限にすることで、微細藻類の発生を極力抑制できる。
【0024】
さらに、簡素な噴射機構であるため、養液の完全な交換も行いやすい。例えば、入れ替える養液のタンクごとに異なる高圧空気流により加速された水流源を設ければ、噴射器におけるコンタミネーションを完全に防止できる。そして、上述したように、養液槽において養液の流れが淀んだ場所を最小限にできるため、養液槽の完全な洗浄も行いやすい。したがって、収穫前処理等の高度な処理も容易である。
【0025】
また、養液を噴射する際に、高圧空気流と養液流の混合比を変えることで、湿度を調整することも可能である。例えば、空気流の割合を増加させれば湿度を低減できる。このように、水耕栽培でありながら、湿度の調整も可能であり、植物に応じた最適な湿度条件を得ることができる。あるいは、養液は断続的に噴射し、空気流は連続的に噴射することでも、湿度を低減することができる。高圧空気流であるので、空気流が遠方まで到達し、一台の噴射装置で広い範囲での湿度調整が可能である。
【0026】
なお、水耕栽培は、プランターを多段にして、3次元空間を有効に活用し、収穫量を向上させることが一般に行われている。この際に問題となるのが、光合成に不可欠な二酸化炭素濃度のばらつきである。二酸化炭素は空気よりも比重が大きいため、床面付近に溜まりやすく、高段のプランターにおいては、二酸化炭素が不足しやすい。そこで、養液は断続的に噴射しても、空気流は連続的に噴射することで、高段のプランターにも十分な二酸化炭素を供給できる。さらに、高圧空気流を生成するためのコンプレッサー等は、通常は床面設置する。したがって、高圧空気流の基となる空気は床面付近の空気である。前述したように、床面付近では二酸化炭素濃度が高い。それを高圧空気流として、高段等のプランターに供給することで、二酸化炭素の循環が生じ、高さ方向での二酸化炭素濃度の不均一が大幅に低減される。したがって、各段において同様の良好な光合成が可能になり、植物の成長ばらつきも低減される。そして、湿度調整と同様に、高圧空気流を用いるので、空気流が遠方まで到達し、一段の噴射装置で広い範囲での二酸化炭素の均一化が可能である。
【0027】
また、縦型のプランターの場合には、上方に配置した植物と同様に、下方に配置した植物の根にもしっかりと養液を与えることができる。例えば、これまでは、栽培管あるいは栽培壁の上端から養液を流していた。この場合、養液は最も上方にある植物の根で分散されてしまうため、その下の植物の根には養液がしっかりと供給されなかった。しかし、本発明の高圧空気流により加速された水流源を用いると、養液は栽培管あるいは栽培壁の内壁に強く衝突し、内壁から配管内部に向かって反射されるため、下方に配置した植物の根にもしっかりと養液が供給できる。
【0028】
以上のように、霧ではなく水流を用いることで、特に、高圧空気流により加速された水流を用いることで、水流だけではなく、空気流も遠隔まで到達し、それによって、上述したように、多くの優れた発明の効果が得られる。
【0029】
本発明の第二のシステムは、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源を備えたものである。超音波により微粒子化した養液ミストは、噴霧式により得られる霧に比べて、遥かに小さな粒径の微粒子になる。そのため、微粒子状態を非常に長く保つことができる。したがって、ミストが遠くまで届き、1台のミスト発生源により多くの植物に養液を供給することができる可能性がある。
【0030】
しかし、実際に確認したところ、ミストは空気よりも重いため、横置きのプランターではミスト発生源から離れて配置された植物の根にはミストが届かないという課題があることが分かった。この課題を解決するために、ミスト発生源の上部に垂直断面が傾斜したミスト反射壁を設けることが非常に有効であることを見出した。
【0031】
一般の霧の場合、物にぶつかるとそこで水滴化してしまう。超音波により養液を微粒子化したミストも同様と考えがちであるが、実際にはミストはミスト反射壁で水滴化せず、方向を変えて、水平方向に飛散した。超音波振動子のパワーにも依るが、例えば、水平方向に1mしか飛散しなかったミストを、ミスト反射壁を用いることで約5mも水平方向に飛散させることができた。したがって、養液槽の一端にミスト発生源を配置することで、多くの植物に養液を供給できる可能性を得ることができた。特に、ミスト反射壁としてドーム状のものを用いることで、飛散距離はより向上した。
【0032】
また、このような水平方向に運動量を与えられたミストは、微粒子状態で排水管から排水されるため、養液槽内の濡れを最小限に抑えることが可能となり、メンテナンス上の最大の問題の一つであるアオコ等の微細藻類の発生を抑制することができる。ただし、超音波により発生する水柱にはミストだけではなく、水滴も含まれるため、ミスト発生源の近くは濡れてしまい、アオコ等の発生要因となる。そこで、ミスト発生源に隣接して水滴回収手段を設けることで、この問題も解決できた。
【0033】
また、常にミストを最大限に発生させるためには、超音波振動子からの水位の管理が重要である。しかし、超音波により水柱が立った水槽において、水位の測定が不安定となる。そこで、ミスト発生手段と壁面で隔てられた水槽、または、上記ミスト発生手段と異なる水槽の水位を計測することで、上記ミスト発生手段の水位を一定に保持する水位保持手段を設けることで、水位の正確な測定が可能となり、ミスト発生を安定化することができることが分かった。
【0034】
さらに、多段式のプランターの場合等、上方にミストを送る場合には、ミスト発生手段にファンを設けることで、空気よりも重いミストを上段にあるプランターにも導入できることを見出した。
【0035】
壁面等に略縦置きに配置した栽培管あるいは栽培壁に植物を略垂直方向に並べた縦型のプランターの場合には、栽培管に容易にミストを満たすことが可能であり、上方に配した植物の根にも下方に配した植物の根にも、ほぼ均等に養液を与えることができる。
なお、複数の栽培管あるいは栽培壁にミストを供給する場合には、ミストを上記複数の栽培管それぞれに導くための導入配管を用いることが有効である。導入管の断面積をミスト発生源から遠ざかるにつれ減少させることで、すべての栽培管に均等にミストを供給することができる。
【0036】
また、第一のシステムと同様に、現行の噴霧式の水耕栽培システムに比べて、大幅に装置構成が簡素になる。したがって、装置の製造コストやメンテナンスコストの減少が可能である。そして、栽培装置全体の制約がほとんどないため、自由に栽培装置を構成できる。
また、簡素な噴射機構であるため、養液の完全な交換も行いやすい。そして、養液槽の完全な洗浄も行いやすい。したがって、収穫前処理等の高度な処理も容易であるという長所も有している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る水耕栽培システムの構成や使用方法等に関して、以下において、図面を用いて説明する。なお、以下の説明は本発明に関する良好な一例を開示するものであり、本発明が当該実施の形態に限定されるものではない。
以下、実施の形態1においては、水流噴射型水耕栽培システムについて述べ、実施の形態2においては、ミスト式水耕栽培システムについて述べる。
【0039】
実施の形態1.
<構成>
図1は、本実施の形態の水耕栽培システムにおいて使用するエアーウォーターガンの原理を説明するための模式図である。
【0040】
まず、
図1により、エアーウォーターガンについて説明する。
エアーウォーターガンは、高圧の空気流が水流を加速することで、高速の水流を生み出すものである。例えば、
図1に示すように、エアーウォーターガン1は、高圧空気導入口1aから高圧空気を、水流導入口1cから水を導入する。コンプレッサー(図示せず)等で生成された高圧の空気はホース1bを介して高圧空気導入口1aに導かれる。また、水流はホース1dを介して水流導入口1cに導かれる。エアーウォーターガン1内に導入された水流は噴射口1eの方向に流れるが、高圧空気はこの水流を後押しし加速する。このようにして、高速の水流が噴射口1eから噴射される。
【0041】
エアーウォーターガンは、
図1に示すような一体型の構造に限るものではなく、
図2に示すように、水流噴射器10と高圧空気噴射器11が別体であってもよい。そして、水流噴射器10より噴射された水流の後方より、高圧空気噴射器11より噴射された高圧の空気流を当て、水流を加速させても良い。すなわち、エアーウォーターガンとは、広義には、高圧空気流により加速された水流源を意味するものである。
図1のような構成、あるいは
図2のような別体の構成においても、5mから10m程度の略直線的な水流が得られる。
【0042】
次に、
図3により、本実施の形態の水耕栽培システムについて説明する。
本実施の形態の水耕栽培システムは、略直線状に並んだ複数の植物の根に向かって、養液を水流として噴射する高圧空気流により加速された水流源を備えたものである。特に、平面形状が略長方形状の養液槽2と、当該養液槽2の長手方向に沿って水流を噴射する高圧空気流により加速された水流源(エアーウォーターガン1)とを備えたものである。
また、より望ましくは、上記養液槽2の底面部2aには排水口4が設けられ、上記養液槽2の底面部2aは上記排水口4に向かって下方に傾斜していることを特徴とするものである。
なお、後述するように、略縦方向に植物の根が略直線状に配置される縦型のプランターにおいても、養液を水流として噴射する高圧空気流により加速された水流源を用いることは非常に有効である。
【0043】
水耕栽培システムと同様に、植物は株ごとに栽培パネル3に設けられた開口に挿入され、根は栽培パネル3の下方に伸びている。この各株の根に向かって、養液槽2の一端に設けられたエアーウォーターガン1から養液が噴射される。噴射された養液が、各株の根に供給される。その後、養液は養液槽2の底面部2aに落ちる。高圧の空気流は養液槽2の多端壁で反射され、養液槽2の底面部2aに落ちた養液6を排水口4に向かって押し流す。底面部2aが上記排水口4に向かって下方に傾斜しているため、養液6はさらに勢いよく排水口4に向かって流れる。このように、養液は滞留することなく排水口4に向かうため、養液が淀む場所を最小限にすることが可能である。
【0044】
養液は排水口4から養液タンク5に流れ、ポンプPによりエアーウォーターガン1に導入される。これが養液の循環システムである。したがって、循環に必要な養液量はわずかで良く、養液タンク5の小型化が可能である。また、養液槽2もわずかな養液量を貯留すれば良いため、養液槽2を構成する材料の薄型化、軽量化も可能である。
【0045】
また、エアーウォーターガン1からの養液の噴射は、例えば5分間噴射し、20分間噴射を休止するような断続的な噴射で良い。養液の噴射を行わない時間帯は、空気流の噴射は停止しても、しなくても良い。例えば、湿度を下げたい際には、養液の噴射を行わない時間帯にも、空気流の噴射を行っても良い。
【0046】
なお、
図4に示すような、栽培管を縦置きにした縦型の水耕栽培システムにおいても、本実施の形態で説明した水流噴射型水耕栽培システムは極めて有効である。
図4において、13は栽培管であり、
図4のように、略縦置きにして使用する。栽培管13には植物を挿入するための植物配置穴13aが複数設けられている。各栽培管13の上端にエアーウォーターガン1を設け、各栽培管13に水流を吹き込む。エアーウォーターガン1には給水管12より、高圧空気流により加速された水流が供給される。なお、空気流と水流を別の配管でエアーウォーターガン1に供給し、エアーウォーターガン1で混合しても良い。14は排水管である。排水された養液は、図示しない養液タンクに戻り、図示しないポンプにより給水管12に供給される。
【0047】
高圧空気流により加速された水流は、養液は栽培管13の内壁に強く衝突し、内壁から配管内部に向かって反射されるため、下方に配置した植物の根にもしっかりと養液を供給することができる。
複数の栽培管13と同様に、栽培壁に対しても同様に有効である。栽培壁とは、内部が空洞の壁体に、縦横所定の間隔で植物配置穴を設けたものである。
【0049】
本発明の第一のシステムは、略直線状に並んだ複数の植物の根に向かって、養液を水流として噴射する高圧空気流により加速された水流源を備えたものである。特に、養液槽の長手方向に沿って水流を噴射する高圧空気流により加速された水流源を養液供給機構として用いるものである。養液を霧ではなく、水流として噴射させることで、到達距離が長くなり、多くの株数を一台の噴射器で対応可能である。
これにより、以下に示す多くの特長が生じる。
【0050】
現行の噴霧式の水耕栽培システムに比べて、大幅に装置構成が簡素になる。したがって、装置の製造コストやメンテナンスコストの減少が可能である。そして、栽培装置全体の制約がほとんどないため、自由に栽培装置を構成できる。例えば、プランターを数段積んだ多段式の設備にも対応できる。あるいは、壁面等に略縦置きに配置した栽培管あるいは栽培壁に植物を略垂直方向に並べた縦型のプランター等にも対応可能であり、植物の良好な生育と、収穫量の向上を考慮した高度な栽培方式や、様々なプランター構成に容易に対応できる。
【0051】
例えば、養液とともに高圧の空気の流れが植物に向かって噴射されるため、その空気流の反射流等により、養液槽に落ちた養液に一定方向の流れが生じるので、養液槽内で養液の流れが淀んだ場所に生じにくい。浸漬方式の水耕栽培システムにおいては、養液槽の底面形状を自由に設計できるため、底面形状の最適化と上記の養液の一定の流れにより、養液の流れが淀んだ場所を最小限にすることが可能である。水耕栽培システムにおいて、メンテナンスを煩雑にしている最大の要因のひとつはアオコ等の微細藻類の発生である。微細藻類が発生する場所は養液の流れが淀んだ場所であり、養液の流れが淀んだ場所を最小限にすることで、微細藻類の発生を極力抑制できる。
【0052】
さらに、簡素な噴射機構であるため、養液の完全な交換も行いやすい。例えば、入れ替える養液のタンクごとに異なる高圧空気流により加速された水流源を設ければ、噴射器におけるコンタミネーションを完全に防止できる。そして、上述したように、養液槽において養液の流れが淀んだ場所を最小限にできるため、養液槽の完全な洗浄も行いやすい。したがって、収穫前処理等の高度な処理も容易である。
【0053】
また、養液を噴射する際に、高圧空気流と養液流の混合比を変えることで、湿度を調整することも可能である。例えば、空気流の割合を増加させれば湿度を低減できる。このように、水耕栽培でありながら、湿度の調整も可能であり、植物に応じた最適な湿度条件を得ることができる。あるいは、養液は断続的に噴射し、空気流は連続的に噴射することでも、湿度を低減することができる。高圧空気流であるので、空気流が遠方まで到達し、一台の噴射装置で広い範囲での湿度調整が可能である。
【0054】
なお、水耕栽培は、プランターを多段にして、3次元空間を有効に活用し、収穫量を向上させることが一般に行われている。この際に問題となるのが、光合成に不可欠な二酸化炭素濃度のばらつきである。二酸化炭素は空気よりも比重が大きいため、床面付近に溜まりやすく、高段のプランターにおいては、二酸化炭素が不足しやすい。そこで、養液は断続的に噴射しても、空気流は連続的に噴射することで、高段のプランターにも十分な二酸化炭素を供給できる。さらに、高圧空気流を生成するためのコンプレッサー等は、通常は床面設置する。したがって、高圧空気流の基となる空気は床面付近の空気である。前述したように、床面付近では二酸化炭素濃度が高い。それを高圧空気流として、高段等のプランターに供給することで、二酸化炭素の循環が生じ、高さ方向での二酸化炭素濃度の不均一が大幅に低減される。したがって、各段において同様の良好な光合成が可能になり、植物の成長ばらつきも低減される。そして、湿度調整と同様に、高圧空気流を用いるので、空気流が遠方まで到達し、一段の噴射装置で広い範囲での二酸化炭素の均一化が可能である。
【0055】
また、縦型のプランターの場合には、上方に配置した植物と同様に、下方に配置した植物の根にもしっかりと養液を与えることができる。例えば、これまでは、栽培管あるいは栽培壁の上端から養液を流していた。この場合、養液は最も上方にある植物の根で分散されてしまうため、その下の植物の根には養液がしっかりと供給されなかった。しかし、本発明の高圧空気流により加速された水流源を用いると、養液は栽培管あるいは栽培壁の内壁に強く衝突し、内壁から配管内部に向かって反射されるため、下方に配置した植物の根にもしっかりと養液が供給できる。
【0056】
以上のように、霧ではなく水流を用いることで、特に、高圧空気流により加速された水流を用いることで、水流だけではなく、空気流も遠隔まで到達し、それによって、上述したように、多くの優れた発明の効果が得られる。
【0057】
実施の形態2.
実施の形態1に述べた高圧空気流により加速された水流源に代えて、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源を用いる水耕栽培システムについて説明する。
<構成>
図5は、ミスト式水耕栽培システムの側面透過図であり、全体図である。
図6および
図7は、ミスト発生源21近傍を拡大した図である。
ミスト型水耕栽培システムは、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源21と、ミスト発生源21の上部に設けられ、垂直断面が傾斜したミスト反射壁21bとを有している。
【0058】
ミスト発生源21は、養液槽22の一端に配置する。一端に配置することで、システム設計やメンテナンスが容易となる。また、通常の水耕栽培システムの養液槽を使用することができるという長所もある。
【0059】
ミスト反射壁21bとしては、平面的な板状体でも良いが、図に示すようなドーム状がさらに良い。
【0060】
また、ミスト発生源21に隣接した植物栽培領域側には、水滴回収手段21cが設けられている。
ミスト発生源21の出口には、底面側ミストガイド21eを設けても良い。
【0061】
ミストの発生には、水槽A内に配置した超音波発生源21aを用いる。例えば、超音波振動子である。超音波発生源21aにより発生するミスト量は、超音波発生源21aからの水位に依存するため、水位を計測するための図示しない水位計を設けても良い。
【0062】
養液槽22の上部には、栽培パネル23が置かれ、植物が図のように配置される。養液槽22の側壁、養液槽22の底部22a、および栽培パネル23により囲まれた空間に、ミスト発生源21より、超音波により養液を微粒子化したミストが供給され、植物の根に養液が与えられる。
【0063】
養液の循環は、養液タンク25内の養液がポンプPにより汲み上げられ、ミスト発生源21に送られる。ミスト発生源21に送る養液の流量を調整するためのコンダクタンスバルブVを設けても良い。ミスト発生源21より養液槽22に送られたミストは、排水口24から排出され、養液タンク25に戻る。
また、水滴回収手段21cに落ちた水滴Cは、排水管21dを通って養液タンク25に戻る。
【0064】
<動作>
次に本システムの動作について説明する。
養液で満たされた水槽A内に置かれた超音波発生源21aが発生する超音波により、水槽Aの水面から水柱Bが立ち上がる。
ミストDの発生量を最大化する、および安定化するためには、水槽A内の水位を最適水位に保つことが必要である。このため、図示しない水位計等で水位を計測し、その計測された水位に基づいてコンダクタンスバルブVで流量をコントロールする。
【0065】
なお、水柱Bには、ミストDの他に、水滴Cも含まれている。水滴Cは重いため、水槽Aに落ちるか、水滴回収手段21cに落ちて養液タンクに戻る。したがって、養液槽22内は水滴により濡れることは無い。
【0066】
水面から立ち上がった水柱BからミストDが離散する。ミストDは上方への運動量を持っており、ミスト反射壁21bに当たる。ミスト反射壁21bは傾斜しているため、ミストDは図において、右方向に反射される。ミスト発生源21から出たミストDは、養液槽22内に導入される。ミストDは空気より重いため、底面側ミストガイド21eを設けると、より効果的に養液槽22内に導入される。
【0067】
<検証実験>
内部が高さ5cm、幅30cm、長さ5mの養液槽を用いて、ミストDの飛散距離を確認する実験を行った。
まず、ミスト反射壁21bを設けない場合、すなわち、超音波発生源21a上の天井を水平面とした場合には、図において右側へのミストDの飛散距離は約1mであった。
【0068】
次に、ミスト反射壁21bとして、水平面から約30°傾けた板状体を用いた場合、ミストDは養液槽22内の他端にまで達した。すなわち、飛散距離は約5mであった。
ミスト反射壁21bとして図に示すドーム状のものを設けた場合、さたに多くのミストDが養液槽22内の他端にまで達した。
【0069】
以上のように、ミスト反射壁21bがミストを水平方向に長距離飛散させることに極めて効果的であることを検証できた。
<その他の構成>
ミスト発生源内にファンを設けることで、ミストの運動量を増加できる。例えば、栽培槽が多段に積まれた多段式のプランターにおいて、ミスト発生源21を下方に設け、上方へ向いた配管にミストDを送ることで、上段の栽培槽へもミストDを供給することができる。
【0070】
また、水槽Aの水位をより安定して計測するために、直接水槽Aの水位を測定しないことも可能である。例えば、水槽を左右に区切るセパレータを設ける。このセパレーターの下方は開放しており、左右の水位は同水位である。その一方に、超音波発生源21aを配置する。超音波発生源21aを配置した側は、水柱が立っているため、水面が揺れ、水位が正確に測れない。しかし、他方の側の水面は安定しているため、水位を正確に計測できる。
あるいは、サイフォンと同様の原理で、他の水槽と結合させ、他の水槽の水位を図ることで、超音波発生源21aを配置した水槽の水位を正確に計測することもできる。
【0071】
<縦型の水耕栽培システムへの適用>
水平面に置かれた栽培槽だけではなく、縦型のシステムへの適用も非常に有効である。
図8に示すように、複数の栽培管13の上方の一端に、上述したミスト発生源21を配置する。そして、ミスト発生源21より発生したミストを上記複数の栽培管13それぞれに導くための導入配管26を設ける。この導入配管26は、ミスト発生源21から遠ざかるにつれて断面積が減少している。
【0072】
このような構成により、複数の栽培管13になるべく均等な量のミストを供給することができる。図において、導入配管26の左側ではコンダクタンスが大きいため、右側に流れやすい。そして、徐々にコンダクタンスが小さくなるように断面積を減少させることで、複数の栽培管13に均等な量のミストを供給できる。
【0073】
また、上述のように導入配管26の断面積を変化させる代わりに、ミスト発生源21の出口から複数の栽培管13の並びに沿って樋を設けても良い。ミストは樋に沿って流れ、その一部が樋から飛散することで、各栽培管13に略均等にミストを供給することができる。
【0074】
なお、
図9に示すように、ミスト発生源21を長くして、複数の栽培管13に均等な量のミストを供給することも可能である。
【0075】
あるいは、複数の栽培管13の上端にシャッターを設けることでも、複数の栽培管13に均等な量のミストを供給できる。例えば、複数の栽培管13の上方の一端に、ミスト発生源21を配置し、複数の栽培管13の上方にミストが充満した瞬間に、すべての複数の栽培管13の上端のシャッターを開く、そして、充満していたミストがほぼなくなった時点でシャッターを閉じるようにしても良い。
【0076】
また、栽培管13の下側、すなわち排水管14との接合部の断面積を小さくしたり、接合部に綿や微細孔素材を詰めることも有効である。このようにして、排水管14との接合部のコンダクタンスを減少させることで、栽培管13内のミスト濃度を増加させることができる。
【0077】
なお、複数の栽培管13と同様に、栽培壁に対しても、上記の構成は同様に有効である。
【0079】
本発明の第二のシステムは、超音波により養液を微粒子化したミストとして植物の根に当該養液を供給するミスト発生源を備えたものである。超音波により微粒子化した養液ミストは、噴霧式により得られる霧に比べて、遥かに小さな粒径の微粒子になる。そのため、微粒子状態を非常に長く保つことができる。したがって、ミストが遠くまで届き、1台のミスト発生源により多くの植物に養液を供給することができる可能性がある。
【0080】
しかし、実際に確認したところ、ミストは空気よりも重いため、横置きのプランターではミスト発生源から離れて配置された植物の根にはミストが届かないという課題があることが分かった。この課題を解決するために、ミスト発生源の上部に垂直断面が傾斜したミスト反射壁を設けることが非常に有効であることを見出した。
【0081】
一般の霧の場合、物にぶつかるとそこで水滴化してしまう。超音波により養液を微粒子化したミストも同様と考えがちであるが、実際にはミストはミスト反射壁で水滴化せず、方向を変えて、水平方向に飛散した。超音波振動子のパワーにも依るが、例えば、水平方向に1mしか飛散しなかったミストを、ミスト反射壁を用いることで約5mも水平方向に飛散させることができた。したがって、養液槽の一端にミスト発生源を配置することで、多くの植物に養液を供給できる可能性を得ることができた。特に、ミスト反射壁としてドーム状のものを用いることで、飛散距離はより向上した。
【0082】
また、このような水平方向に運動量を与えられたミストは、微粒子状態で排水管から排水されるため、養液槽内の濡れを最小限に抑えることが可能となり、メンテナンス上の最大の問題の一つであるアオコ等の微細藻類の発生を抑制することができる。ただし、超音波により発生する水柱にはミストだけではなく、水滴も含まれるため、ミスト発生源の近くは濡れてしまい、アオコ等の発生要因となる。そこで、ミスト発生源に隣接して水滴回収手段を設けることで、この問題も解決できた。
【0083】
また、常にミストを最大限に発生させるためには、超音波振動子からの水位の管理が重要である。しかし、超音波により水柱が立った水槽において、水位の測定が不安定となる。そこで、ミスト発生手段と壁面で隔てられた水槽、または、上記ミスト発生手段と異なる水槽の水位を計測することで、上記ミスト発生手段の水位を一定に保持する水位保持手段を設けることで、水位の正確な測定が可能となり、ミスト発生を安定化することができることが分かった。
【0084】
さらに、多段式のプランターの場合等、上方にミストを送る場合には、ミスト発生手段にファンを設けることで、空気よりも重いミストを上段にあるプランターにも導入できることを見出した。
【0085】
壁面等に略縦置きに配置した栽培管あるいは栽培壁に植物を略垂直方向に並べた縦型のプランターの場合には、栽培管に容易にミストを満たすことが可能であり、上方に配した植物の根にも下方に配した植物の根にも、ほぼ均等に養液を与えることができる。
なお、複数の栽培管あるいは栽培壁にミストを供給する場合には、ミストを上記複数の栽培管それぞれに導くための導入配管を用いることが有効である。導入管の断面積をミスト発生源から遠ざかるにつれ減少させることで、すべての栽培管に均等にミストを供給することができる。
【0086】
また、第一のシステムと同様に、現行の噴霧式の水耕栽培システムに比べて、大幅に装置構成が簡素になる。したがって、装置の製造コストやメンテナンスコストの減少が可能である。そして、栽培装置全体の制約がほとんどないため、自由に栽培装置を構成できる。
また、簡素な噴射機構であるため、養液の完全な交換も行いやすい。そして、養液槽の完全な洗浄も行いやすい。したがって、収穫前処理等の高度な処理も容易であるという長所も有している。