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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-66084(P2020-66084A)
(43)【公開日】2020年4月30日
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20200403BHJP
【FI】
   B25J15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-199608(P2018-199608)
(22)【出願日】2018年10月24日
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】長濱 峻介
(72)【発明者】
【氏名】中尾 徳志
(72)【発明者】
【氏名】菅野 重樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707EU07
3C707EU11
3C707EV21
(57)【要約】
【課題】物体との接触部分に把持力を補強する把持力補強部材を設けた場合でも、物体の把持状態を解除する解放動作をスムーズに行うことを可能にする。
【解決手段】グリッパ10は、把持対象物を周囲から爪部19で挟み込む把持動作及び当該把持動作を解除する解放動作がなされる把持手段13と、把持手段13の動力源となるモータ12と、モータ12からの動力を把持手段13に伝達する動力伝達手段14とを備える。爪部19は、把持対象物への接触時に把持対象物に貼着することにより、把持動作による把持力を補強する把持力補強部材24と、動力伝達手段14に繋がり、モータ12からの動力により把持力補強部材24を爪部19内で変位させる補強部材変位機構とを備える。動力伝達手段14は、解放動作に連動して、把持力補強部材24を把持対象物から剥離する方向に退避させるように補強部材変位機構を動作させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を周囲から可動部で挟み込む把持動作及び当該把持動作を解除する解放動作がなされる把持手段と、当該把持手段の動力源となる駆動手段と、当該駆動手段からの動力を前記把持手段に伝達する動力伝達手段とを備えたグリッパにおいて、
前記可動部は、前記把持対象物への接触時に当該把持対象物に貼着することにより、前記把持動作による把持力を補強する把持力補強部材と、前記動力伝達手段に繋がり、前記駆動手段からの動力により前記把持力補強部材を前記可動部内で変位させる補強部材変位機構とを備え、
前記動力伝達手段は、前記解放動作に連動して、前記把持力補強部材を前記把持対象物から剥離する方向に退避させるように前記補強部材変位機構を動作させることを特徴とするグリッパ。
【請求項2】
前記動力伝達手段は、前記把持対象物が把持されていない状態から前記把持動作がなされると、当該把持動作に連動して、前記把持力補強部材を前記把持対象物に相対する方向に表出させるように前記補強部材変位機構を動作させることを特徴とする請求項1記載のグリッパ。
【請求項3】
複数の可動部により把持対象物を挟み込む把持動作及び当該把持動作を解除する解放動作がなされる把持手段と、当該把持手段の動力源となる駆動手段と、当該駆動手段からの動力を前記把持手段に伝達する動力伝達手段とを備えたグリッパにおいて、
前記可動部は、前記把持対象物への接触時に当該把持対象物に貼着することにより、前記把持動作による把持力を補強する把持力補強部材と、前記動力伝達手段に繋がり、前記駆動手段からの動力により前記把持力補強部材を変位させる補強部材変位機構とを備え、
前記補強部材変位機構は、前記把持動作の際に前記把持力補強部材を前記把持対象物に相対するように表出する表出状態と、その反対側の裏側に退避しながら格納される格納状態との間で変位可能に構成され、
前記動力伝達手段は、前記解放動作に連動して前記把持力補強部材を前記表出状態にする一方、前記把持動作に連動して前記把持力補強部材を前記格納状態にするように、前記補強部材変位機構に動力伝達することを特徴とするグリッパ。
【請求項4】
前記動力伝達手段は、前記把持手段に前記把持動作と前記解放動作を行わせるための主伝達機構と、前記補強部材変位機構に繋がり、前記把持力補強部材を変位させる補助動作を前記把持手段に行わせるための補助伝達機構とを備え、
前記補助伝達機構には、前記表出状態と前記格納状態をそれぞれ維持するための状態維持機構が設けられ、
前記状態維持機構は、前記把持動作により、前記各可動部の相対距離が所定値以下の状態になると前記表出状態を維持し、前記解放動作により前記相対距離が所定値以上の状態になると前記格納状態を維持する構造をなすことを特徴とする請求項3記載のグリッパ。
【請求項5】
前記主伝達機構は、前記駆動手段に繋がって前記把持手段に動力を伝達するための第1の伝達軸を含み、
前記補助伝達機構は、前記第1の伝達軸に連動して前記把持手段に動力を伝達するための第2の伝達軸を含み、
前記状態維持機構は、前記第2の伝達軸に作用するトルクが所定値を超えたときに、前記第1の伝達軸から前記第2の伝達軸へのトルク伝達を遮断するトルクリミッタと、前記第2の伝達軸の回転を所定回転角度の範囲内で許容するストッパとを備えたことを特徴とする請求項4記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の物体を把持する機構からなるグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンド等に用いられ、所定の物体を把持可能な多くの種類のグリッパが知られている。このグリッパによる物体の把持においては、その把持部分の表面と物体の間に働く摩擦力が重要である。当該摩擦力と物体の重さとの間で力の釣り合いが崩れると、物体はグリッパから滑り落ち、把持不成功となる。この摩擦力は、グリッパから物体に付加される押圧力と摩擦係数とに依存する。ここで、押圧力は、モータ等の駆動によるグリッパの動作に依存し、摩擦係数は、把持対象の物体やグリッパの把持部分における表面の性状や状態に依存する。例えば、当該表面が水や油で濡れていると摩擦係数が低下し、摩擦係数が低下すると、摩擦力と物体の重さの釣り合いを維持するために押圧力を上げる必要がある。
【0003】
特許文献1には、把持物体の滑落を防止するための構造を有するロボットハンドが開示されている。このロボットハンドは、指表面における把持物体の滑りの発生を検出し、滑り発生時には、物体に対する把持力となる押圧力を増大するようになっている。しかしながら、外力の付加により損傷や変形が発生し易い把持物体については、押圧力を増大させると破損、破壊を招来する虞がある。
【0004】
ところで、特許文献2には、ワークとの接触部分に、ヤモリテープと呼ばれる微小突起構造を有するテープが固定配置されたエンドエフェクタが開示されている。このヤモリテープは、微小突起構造によるファンデルワールス力によるワークとの接着が可能であり、これによりワークの保持状態が維持される。そこで、複数方向から物体に接触することで当該物体を把持するロボットハンドにおいても、物体に対する接触部分にヤモリテープを固定配置することが考えられる。これにより、ロボットハンドの動作による物体への押圧力を増大させずに、当該物体を強固に把持することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−297542号公報
【特許文献2】特開2015−297542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ロボットハンドにおける把持対象の物体との接触部分にヤモリテープを固定配置した場合、当該ヤモリテープが物体に一度貼着してしまうと、当該物体の把持状態を解除する解放動作をロボットハンドで行っても、質量が小さい物体等においては、ロボットハンドから物体を完全に解放することができない場合がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、物体との接触部分に把持力を補強する把持力補強部材を設けた場合でも、物体の把持状態を解除する解放動作をスムーズに行うことができるグリッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、把持対象物を周囲から可動部で挟み込む把持動作及び当該把持動作を解除する解放動作がなされる把持手段と、当該把持手段の動力源となる駆動手段と、当該駆動手段からの動力を前記把持手段に伝達する動力伝達手段とを備えたグリッパにおいて、前記可動部は、前記把持対象物への接触時に当該把持対象物に貼着することにより、前記把持動作による把持力を補強する把持力補強部材と、前記動力伝達手段に繋がり、前記駆動手段からの動力により前記把持力補強部材を前記可動部内で変位させる補強部材変位機構とを備え、前記動力伝達手段は、前記解放動作に連動して、前記把持力補強部材を前記把持対象物から剥離する方向に退避させるように前記補強部材変位機構を動作させる、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、把持動作を解除する解放動作時には、補強部材変位機構により、把持対象物からの把持力補強部材の剥離を促進するように可動部が動作する。このため、把持力補強部材の使用により、可動部の相対移動のみでは離間し難い把持対象物についても、その解放動作を強引に行わずに、当該解放動作とともに把持力補強部材を可動部内で変位させる補助動作がなされ、把持状態からの解除が促進される。従って、把持力補強部材の使用により、把持対象物の状態に合わせて可動部から把持対象物への押圧力を増大させることなく、高い把持力を発揮できる一方で、把持対象物の把持状態をスムーズに解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るグリッパの概略斜視図である。
図2】前記グリッパの概略平面図である。
図3】(A)、(B)は、把持対象物の把持時における爪部を正面及び横から見た状態の概念図であり、(C)、(D)は、把持対象物の解放時における爪部を正面及び横から見た状態の概念図である。
図4】上側のベースを取り外した状態の前記グリッパの概略平面図である。
図5】上側のベースと後側の介装プレートを取り外した状態の前記グリッパの概略斜視図である。
図6】前記グリッパの概略側面図である。
図7】(A)は、把持力補強部材の表出状態を維持する際のストッパの状態を説明するための概念図であり、(B)は、把持力補強部材の格納状態を維持する際のストッパの状態を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1には、本実施形態に係るグリッパの概略斜視図が示されており、図2には、前記グリッパの概略平面図が示されている。これらの図において、本実施形態におけるグリッパ10は、2爪平行グリッパとして構成されており、各種構成部材を支持する支持体11と、図1中下側に配置された駆動手段としてのモータ12と、支持体11よりも同図中上側に配置され、モータ12の駆動により、図示しない把持対象物を把持可能に動作する把持手段13と、モータ12と把持手段13の間に設けられ、モータ12からの動力を把持手段13に伝達する動力伝達手段14とを備えている。
【0013】
なお、グリッパ10に関する以下の説明において、位置又は方向を意味する用語は、特に明記しない限り、図2の状態を基準とし、同図中「左」、「右」を単に「左」、「右」と称し、同図中「上」を「前」若しくは「先」と称し、同図中「下」を「後」と称する。また、同図中紙面直交方向における両側を「上下」と称する。
【0014】
また、前記グリッパ10を構成する機構や部材については、後述するように、構成要素や作用が同一のものが左右対称に配置されているものが多く、当該機構や部材についての説明の際には、特に明記しない限り、左右何れか一方の構成要素や作用等についてのみ言及し、他方についての説明を省略する。
【0015】
前記支持体11は、モータ12、把持手段13及び動力伝達手段14をそれぞれ支持するようになっており、上下両側に一対配置された板状のベース16と、これら各ベース16の間に動力伝達手段14を収容可能な空間を形成するように、後寄りの2箇所でベース16に対して起立配置された板状の介装プレート17(図1参照)とを備えている。
【0016】
前記モータ12は、各介装プレート17に支持されており、その回転駆動により、後述すように、動力伝達手段14を通じて把持手段13に各種動作をさせるための動力源となる。
【0017】
なお、本発明においては、把持手段13の動力源となる駆動手段として、同様の作用を奏する限りにおいて、モータ12に限らず、他のアクチュエータ等の駆動装置を採用することもできる。
【0018】
前記把持手段13は、グリッパ10の先端側に設けられた可動部としての左右一対の爪部19からなり、モータ12の駆動による動力伝達手段14からの動力により、各爪部19の相対距離を変化させることで、それらの間に把持対象物を挟み込む把持動作と当該把持動作を解除する解放動作とが行われる。
【0019】
前記各爪部19は、同一構造のものが左右対称に設けられており、図3(A)にも示されるように、ベルトコンベア状に構成されている。すなわち、各爪部19は、側面視コ字状をなす(図1参照)フレーム21と、当該フレーム21の内部空間に収容され、フレーム21に回転可能に支持される複数のローラ22と、これらローラ22に掛け回される平ベルト23と、平ベルト23の一部領域の表面に固定され、把持対象物に対する把持力を増大させるための把持力補強部材24と、動力伝達手段14に繋がり、各ローラ22を回転させるローラ回転機構25とを備えて構成されている。なお、ローラ22、平ベルト23、及びローラ回転機構25は、モータ12からの動力により把持力補強部材24を爪部19内で変位させる補強部材変位機構を構成する。
【0020】
特に限定されるものではないが、本実施形態では、各爪部19それぞれにローラ22が4個ずつ取り付けられており、各ローラ22は、図3(A)中左右方向となるグリッパ10の前後方向に沿って並列に配置されている。
【0021】
前記平ベルト23は、図3(A)中左側となる前側2箇所のローラ22に掛け回される第1のベルト23Aと、同図中右側となる後側2箇所のローラ22に掛け回される第2のベルト23Bとからなる。これら各ベルト23A,23Bは、ローラ回転機構25によるローラ22の回転により、爪部19で表出する表側部分と表出しない裏側部分との間で回転移動するようになっている。
【0022】
前記把持力補強部材24は、第1及び第2のベルト23A,23Bの表面の一部領域にそれぞれ固定されており、これら各ベルト23A,23Bの回転により、前記表側部分に表出する図3(A)の表出状態と、前記裏側部分に退避しながら格納される図3(C)の格納状態(退避状態)との間で変位することになる。
【0023】
本実施形態において、把持力補強部材24として、ベルト23A,23Bに対する固定面でない表面側に微小突起構造を有する公知のヤモリテープが用いられる。このヤモリテープは、表面の微小突起構造に把持対象物が接触すると、ファンデルワールス力を利用して把持対象物を吸着可能となっている。なお、本発明に適用される把持力補強部材24としては、ヤモリテープの他に、把持対象物への接触時に貼着若しくは接合され、爪部19の把持動作による把持力を補強する貼着部材や接合部材であれば何でも良い。
【0024】
前記ローラ回転機構25は、図3(A)中右側2列のうちの一つのローラ22から同図中下方に延びてそのローラ22に対して一体回転可能に固定されたローラ用回転軸27と、ローラ用回転軸27に一体回転可能に設けられた平歯車28とからなる。ローラ用回転軸27は、前記動力伝達手段14からの動力によって正逆双方向に回転するようになっている。
【0025】
前記平歯車28は、相互に反対方向に回転可能となるように相互に噛み合った状態で1対設けられており、一方の平歯車28がローラ用回転軸27に固定され、他方の平歯車28が、図3(A)中左側2列のうちの内寄りの1つのローラ22に繋がっている。
【0026】
以上の構成の爪部19では、後述する動力伝達手段14により、モータ12からの動力を利用して次の各種動作がなされる。すなわち、爪部19全体がそれぞれ離間接近するように移動することで、把持動作と解放動作とが行われる。加えて、これら把持動作と解放動作に連動してローラ用回転軸27が回転することにより、把持力補強部材24を表出状態(図3(A),(B)参照)と格納状態(図3(C),(D))との間で変位させる補助動作が行われる。
【0027】
つまり、前記補助動作の際には、次のようにして把持力補強部材24が変位する。先ず、動力伝達手段14を通じて伝達された動力によりローラ用回転軸27が回転することで、当該ローラ用回転軸27に固定されたローラ22が一体回転し、第2のベルト23Bが回転する。この際、ローラ用回転軸27に固定された平歯車28を通じて、図3(A)中左側2列のうちの1つのローラ22も回転し、第1のベルト23Aが第2のベルト23Bに対して逆方向に回転する。
【0028】
ここで、左右両側の爪部19により、相対的に接近しながら把持対象物Mを把持する把持動作がなされるときには、当該把持動作に連動して第1及び第2のベルト23A,23Bが回転し、図3(A),(B)に示されるように、把持力補強部材24を把持対象物Mに相対させるようにそれぞれ表出状態とする補助動作がなされる。
【0029】
そして、各爪部19の表面の把持力補強部材24に把持対象物Mが接触している把持状態を解放するように、各爪部19を相互に離れる方向に移動させる解放動作が行われると、当該解放動作に連動して第1及び第2のベルト23A,23Bが回転し、図3(C),(D)に示されるように、把持力補強部材24をそれぞれ格納状態とする補助動作がなされる。この際、各爪部19の解放動作に伴って、把持対象物Mに対し、把持力補強部材24の微小突起を引き剥がす力が、把持対象物Mの端部から作用して各爪部19から離されることになる。
【0030】
なお、前記補強部材変位機構としては、前述したコンベア式の回転構造に限定されるものではなく、解放動作に連動して把持力補強部材24を把持対象物Mから剥離する方向に退避させる一方、把持動作に連動して把持力補強部材24を把持対象物Mに相対する方向に表出させる限りにおいて、種々の構造を採用することができる。
【0031】
次に、前記動力伝達手段14について、上側のベース16を取り外した状態のグリッパ10の概略平面図である図4と、上側のベース16と後側の介装プレート17を取り外した状態のグリッパの概略斜視図である図5と、グリッパ10の概略側面図である図6とを主として用いながら、以下に説明する。
【0032】
この動力伝達手段14は、把持手段13に把持動作と解放動作を行わせるための主伝達機構30と、ローラ回転機構25に繋がり、把持力補強部材24を変位させる補助動作を把持手段13に行わせるための補助伝達機構31とにより構成される。
【0033】
前記主伝達機構30は、モータ12の回転によって動作する送りねじ機構33と、送りねじ機構33を用いて所定空間内で爪部19を移動させるリンク機構34とからなる。
【0034】
前記送りねじ機構33は、モータ12により回転される第1の伝達軸36と、前後方向に延び、第1の伝達軸36と一体回転可能に連結されるねじ軸37と、上下両側のベース16の間の2箇所に配置され、ねじ軸37を回転可能に支持するねじ軸支持部材38と、ねじ軸37の回転によって前後方向に移動可能にねじ軸37に係合するスライダ39とを備えている。このスライダ39の左右2箇所には、リンク機構34に繋がる軸部材41が設けられている。この軸部材41は、上下両側のベース16に形成された前後方向に延びるスロット穴42(図1等参照)を貫通しており、ねじ軸37に沿うスライダ39の移動によりスロット穴42に沿って前後方向に移動可能となっている。
【0035】
前記リンク機構34は、モータ12からの動力を左右両側の爪部19に伝達する同一の構造のものがそれぞれ1セットずつ左右対称に設けられている。これらリンク機構34は、スライダ39に繋がる第1のリンク部材44と、第1のリンク部材44に接続される第2のリンク部材45と、第2のリンク部材45に接続されるとともに、爪部19に固定される第3のリンク部材46と、第3のリンク部材46とベース16の間を連結する第4のリンク部材47とからなる。
【0036】
前記第1のリンク部材44は、そのほぼ中央部分が、ベース16に固定された回転中心軸49に回転可能に支持されている。また、第1のリンク部材44の一端側には、スライダ39と一体的に前後方向に移動する前記軸部材41が収容されるスロット穴50が形成されている。従って、第1のリンク部材44は、軸部材41に対し、左右方向に多少の移動を許容した状態で係合することになる。この構造により、第1のリンク部材44は、スライダ39が前後方向に移動すると、回転中心軸49を中心に回転し、第2のリンク部材45に繋がる他端側が前後に揺動することになる。
【0037】
前記第2のリンク部材45は、その一端側が第1のリンク部材45の他端側に相対回転可能に接続されている。また、その回転軸52には、第1及び第2のリンク部材44,45の相対姿勢を図4の初期状態に維持するように、それらの相対回転方向に付勢するばね53(図1図6等参照)が配置されている。また、第2のリンク部材45の他端側は、第3のリンク部材46の端部に回転軸55を通じて相対回転可能に接続されている。
【0038】
前記第3のリンク部材46は、回転軸55よりもやや内側となる位置に設けられた回転軸56により第4のリンク部材47の一端側が回転可能に接続されている。第4のリンク部材47の他端側は、上下両側のベース16に固定された支持軸58に回転可能に取り付けられている。
【0039】
以上のリンク機構34は、スライダ39の前後方向の移動により次の把持動作と解放動作を行う際に、各リンク部材44〜47が相互に干渉しないサイズ、形状及び位置関係に設定される。
【0040】
爪部19が図4の状態のときに、モータ12の駆動によって、スライダ39が同図中下方となる後方に移動すると、第1及び第2のリンク部材44,45は、その相対姿勢を保ちながら回転中心軸49を中心に回転して同図中上方となる前方に揺動し、第4のリンク部材47の存在により、左右両側の爪部19が斜め前方に向って姿勢を変えながら相互に接近する把持動作が行われることになる。
【0041】
ここで、把持動作の際に、把持対象物Mが、図4中一点鎖線で示されるように、左右両側の第4のリンク部材47の間に相対する部分のみが幅広となっている等の形状のような場合、リンク機構34は、前述の構造上次のように動作する。すなわち、この場合、把持対象物Mが、左右両側の爪部19に非接触の状態で、先に第4のリンク部材47に接触干渉してしまう。この際、第1のリンク部材44が揺動しても第4のリンク部材47の回転が規制される。この状態では、ばね53の付勢力に抗して、第2のリンク部材45が、第1のリンク部材44に対して回転しながら相対姿勢が変わり、第3のリンク部材46を内側となる把持対象物M側に回転させることで、左右の爪部19を把持対象物Mに接触させることが可能になる。
【0042】
一方、爪部19の間に把持対象物Mが把持された状態から、モータ12を前述に対して逆回転することで、スライダ39が図4中上方となる前方に移動し、各リンク部材44〜47が把持動作のときと逆に動作し、左右の爪部19を相互に離間するように移動させる解放動作がなされる。
【0043】
前記補助伝達機構31は、左右両側の爪部19にそれぞれ設けられたローラ回転機構25にモータ12からの動力を伝達する同一の構造のものがそれぞれ1セットずつ左右対称に設けられている。
【0044】
この補助伝達機構31は、後寄りに位置する各介装プレート17の間に回転可能に支持される第2の伝達軸60と、第2の伝達軸60の回転による動力をローラ回転機構25に伝達する回転伝達部62と、第1の伝達軸36と第2の伝達軸60の間に設けられ、把持力補強部材24の表出状態と格納状態とをそれぞれ維持するように第2の伝達軸60の回転状態をコントロールする状態維持機構65とを備えている。
【0045】
前記回転伝達部62は、第2の伝達軸60の回転により回転する傘歯車67と、複数箇所に設けられたプーリ68と、各プーリ68の間に掛け回されるタイミングベルト69とにより構成されている。この回転伝達部62では、傘歯車67に連なって回転する1箇所のプーリ68が、傘歯車67を通じて回転することで、他のプーリ68及びタイミングベルト69が回転し、第2の伝達軸60の回転方向に対応した回転方向に爪部19のローラ用回転軸27(図3等参照)を回転させるようになっている。
【0046】
前記状態維持機構65は、第1の伝達軸36から第2の伝達軸60への動力の伝達と遮断を可能に設けられたクラッチ機能を有し、把持動作により各爪部19の相対距離が所定値以下の状態になると前述の表出状態を維持し、解放動作により各爪部19の相対距離が所定値以上の状態になると前述の格納状態を維持するように、第2の伝達軸60の回転をコントロールする構造となっている。
【0047】
この状態維持機構65は、第1の伝達軸36の回転に伴って回転する複数の歯車71と、歯車71を介して第1の伝達軸36からの動力を一定条件下で第2の伝達軸60に伝達するトルクリミッタ72と、第2の伝達軸60の回転を所定回転角度の範囲内で許容するストッパ73とにより構成されている。
【0048】
前記トルクリミッタ72は、歯車71の回転に伴って一体的に回転可能な円筒状の本体部72Aを含み、本体部72Aの内部空間に第2の伝達軸60が収容されて以下の作用を奏する公知の構造のものが適用される。すなわち、このトルクリミッタ72では、本体部72Aが回転すると磁石等を介して第2の伝達軸60も一体的に回転する一方、所定値以上のトルクが第2の伝達軸60に作用したときに、本体部72Aと第2の伝達軸60との相対回転が許容され、第1の伝達軸36から第2の伝達軸60へのトルク伝達が遮断される。
【0049】
前記ストッパ73は、トルクリミッタ72の外側で第2の伝達軸60と一体回転可能に突設された突設部材75と、突設部材75が所定の回転角度になったときに接触するように固定配置された回転規制部材76とにより構成される。
【0050】
以上の構成の補助伝達機構31では、モータ12からの動力により、歯車71を通じてトルクリミッタ72の本体部72Aを回転させるが、トルクリミッタ72の特性により、所定の条件のときのみ、本体部72Aと一体的に第2の伝達軸60を回転させ、回転伝達部62を通じて、爪部19の第1及び第2のベルト23A,23Bを回転させる前述の補助動作がなされる。すなわち、左右の爪部19が所定の相対距離に存在するときに、図3(A)に示される把持力補強部材24の表出状態になるように設定される。このとき、突設部材75は、図7(A)に示されるように、回転規制部材76の同図中右側に当接しており、突設部材75と第2の伝達軸60の同図中反時計反時計回りの回転が規制される。この状態から、左右の爪部19を更に接近させる把持動作を進めるようにモータ12が正回転すると、本体部72Aが図7(A)中反時計回りに回転するようになっている。この際、突設部材75と第2の伝達軸60の同方向の回転が回転規制部材76で規制されているため、第2の伝達軸60が回転せずに本体部72Aが空転し、図3(A)の表出状態が維持される。
【0051】
前述とは逆に、前記表出状態から、左右の爪部19を離す解放動作を進める方向にモータ12が逆回転すると、本体部72Aが図7(A)中時計回りに回転する。このとき、第2の伝達軸60は、同方向の回転が規制されていないため、本体部72Aと一体的に回転し、左右の爪部19が所定の相対距離となる図3(C)の格納状態まで把持力補強部材24が移動する。この格納状態では、図7(B)に示されるように、突設部材75が回転規制部材76の同図中左側に当接しており、突設部材75と把持力補強部材24の同図中時計回りの回転が規制される。この状態から、前記解放動作を進めるようにモータ12が更に逆回転すると、本体部72Aが図7(A)中時計回りに回転するが、ストッパ73により、第2の伝達軸60が同方向にこれ以上回転せずに本体部72Aが空転し、図3(C)の格納状態が維持される。これとは逆に、当該格納状態から、左右の爪部19を接近させる把持動作を進める方向にモータ12が正回転すると、本体部72Aが図7(B)中反時計回りに回転する。このとき、第2の伝達軸60は、反時計回りの回転が規制されていないため、本体部72Aと一体的に回転し、図3(A)の表出状態まで把持力補強部材24が変位することになる。
【0052】
なお、本発明は、2爪の平行グリッパへの適用に限らず、更に多数の爪部や指部分からなるロボットハンド等、把持する際に把持対象物が配置される可動部の内部空間の大きさを可変とし、把持対象物の周囲から可動部で挟み込むことで把持対象物を把持可能な他のエンドエフェクタ等、様々なグリッパ(把持装置)に適用することができる。
【0053】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 グリッパ
12 モータ(駆動手段)
13 把持手段
14 動力伝達手段
19 爪部(可動部)
22 ローラ(補強部材変位機構)
23 平ベルト(補強部材変位機構)
24 把持力補強部材
25 ローラ回転機構(補強部材変位機構)
30 主伝達機構
31 補助伝達機構
36 第1の伝達軸
60 第2の伝達軸
65 状態維持機構
72 トルクリミッタ
73 ストッパ
M 把持対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7