【実施例】
【0058】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例中、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0059】
[顕色剤の水に対する安定性確認試験]
顕色剤のなかには、水と反応することにより分解して本来の顕色能が損なわれるものが存在する。本発明の感熱記録材料において用いられる顕色剤に関して予め水に対する安定性を確認した。試験法は下記記載の加速試験法を採用した。
【0060】
試験法:アセトニトリルと水との混合液(アセトニトリル/水=80/20)に本願発明顕色剤を0.5%溶解して50℃/5時間撹拌して、分解量を島津製作所製高速液体クロマトグラフィー(検出波長:205nm)で測定した。
分解量が10%以上あれば耐水分解性を×、1%以下であれば耐水分解性を〇とした。
結果を表1に示す。
【0061】
下記操作により感熱記録材料を作製した。
【0062】
[アンダーコート用塗料の調製]
プラスチック中空粒子(商品名:ローペイクSN−1055:中空率:55% 固形分26.5%)100部、焼成カオリンの50%分散液100部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571 固形分48%)25部、酸化澱粉の10%水溶液50部および水20部を混合して、アンダーコート用塗料を作成した。
【0063】
[感熱記録層用塗料の調製]
A液(染料分散液の調製)
3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 16.7部
【0064】
B液(顕色剤分散液の調製)
N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素 20部
10%ポリビニルアルコール水溶液 20部
水 33.3部
【0065】
C液(増感剤分散液の調製−1)
1,2−ビス(m−トリルオキシ)エタン 15部
10%ポリビニルアルコール水溶液 15部
水 25部
【0066】
D液(増感剤分散液の調製−2)
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン 5部
10%ポリビニルアルコール水溶液 5部
水 8.3部
【0067】
合成例1:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成
滴下ロート、温度計を付置した500mlの4径フラスコに3,3’−ジヒドロキシジフェニル尿素24.4g、酢酸エチル150g、トリエチルアミン8gを仕込み50℃に加温した。滴下ロートよりp−トルエンスルホニルクロライド10gを溶解した酢酸エチル溶液を滴下した。2時間反応した後、水を加え有機層を水洗・分液し、更に水酸化ナトリウム水溶液で未反応の3,3‘−ジヒドロキシジフェニル尿素を水洗除去した。有機層を減圧濃縮した後、濃縮残渣にトルエンを加えて濃縮残渣を結晶化した。結晶を濾別した後、更にトルエン−酢酸エチルから再結晶した。
融点範囲は172〜177℃であった。IRチャートを
図1に示した。
【0068】
(実施例1)
上記A液、B液およびC液の分散液をサンドグラインダーで平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕し、下記割合で分散液を混合して塗工液とした。
A液(染料分散液) 36.7部
B液(顕色剤分散液) 73.3部
C液(増感剤分散液−1) 55.0部
【0069】
水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42 27部、無定形シリカ(商品名:ミズカシルP−527)10部、酸化澱粉の10%溶解物100部、ステアリン酸亜鉛分散液:(商品名:ハイドリンZ−8−36)19.4部および水50部からなる組成分を混合して感熱記録層用塗料を作製した。
【0070】
[感熱記録材料の作製]
支持体として坪量が53gの上質紙(酸性紙)にアンダーコート用塗料を乾燥後の面積当たりの質量が6g/m
2となるように塗工および乾燥し、その後、感熱記録層用塗料を、乾燥後の面積当たりの質量が3.8g/m
2になるように塗工乾燥した。
【0071】
このシートをスーパーカレンダーで平滑度(JISP8155:2010)が900〜1200sになるように処理して感熱記録材料を作成した。
【0072】
[各種試験]
1.感熱記録試験
作成した感熱記録材料について、感熱記録紙印字試験機(大倉電気社製TH−PMD)を用い、印加エネルギー0.38mJ/dotで印加した。非印字部(すなわち、地肌部)および印字部の印字濃度はマクベス反射濃度計RD−914で測定した。これを試験前サンプル(ブランク)とした。
【0073】
2.耐熱性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を試験温度60℃の恒温環境下に24時間放置した。その後、試験片の印字部画像濃度と非印字部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0074】
3.耐湿熱性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を試験温度40℃、90%RHの環境下に24時間放置した。その後、試験片の印字部画像濃度と非印字部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0075】
4.耐光性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を5000Luxに100時間暴露した。その後、画像濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0076】
5.耐油性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料にサラダオイル中に10分間浸漬した。その後、試験片の油をふき取り、画像濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0077】
6.耐水性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を水中に15時間浸漬した。その後、試験片を風乾させ、画像濃度と非印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
【0078】
7.耐可塑剤性試験
ポリカーボネートパイプ(48mmφ)上にラップフィルム(商品名:ハイラップKMA 三井化学製)を3重に巻き付け、感熱記録試験で記録した感熱記録材料を乗せ、更にその上にラップフィルムを3重に巻き付け20℃65%RHの環境下で24時間放置した。その後、画像濃度と非印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0079】
合成例2:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成
合成例1のp−トルエンスルホニルクロライド10gをベンゼンスルホニルクロライド8.6gに代える以外、合成例1と同様の操作をして、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は142〜145℃であった。IRチャートを
図2に示した。
【0080】
(実施例2)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0081】
合成例3:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成例
合成例1のp−トルエンスルホニルクロライド10gを2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルクロライド10.9gに代える以外、合成例1と同様の操作を行い、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は155〜160℃であった。IRチャートを
図3に示した。
【0082】
(実施例3)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0083】
合成例4:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成例
合成例1のp−トルエンスルホニルクロライド10gをm−トルエンスルホニルクロライド10gに代える以外、合成例1と同様の操作を行い、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は113〜118℃であった。IRチャートを
図4に示した。
【0084】
(実施例4)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0085】
(実施例5)
実施例1の感熱記録層用塗料にD液を18.3部添加した以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0086】
(実施例6)
実施例5の感熱記録層用塗料にD液の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンを1,1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタンに代える以外は実施例5と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0087】
(実施例7)
実施例5の感熱記録層用塗料にD液の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンを4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンに代える以外は実施例5と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0088】
(実施例8)
実施例5の感熱記録層用塗料にD液の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンを、日本曹達株式会社製D−90(製品名)の、一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物に代える以外は実施例5と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0089】
合成例5:N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成
合成例1の3,3’−ジヒドロキシジフェニル尿素24.4gを4,4’ジヒドロキシジフェニル尿素24.4gに代える以外、合成例1と同様の操作を行い、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は173〜180℃であった。IRチャートを
図5に示した。
【0090】
(実施例9)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0091】
[比較例1]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4,4’−イソプロピリデンジフェノール(すなわち、ビスフェノールAである。)に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0092】
[比較例2]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(すなわち、ビスフェノールSである。)に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0093】
[比較例3]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシ−ジフェニルスルホンに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0094】
[比較例4]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシ−ジフェニルスルホンに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0095】
[比較例5]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]−N’−(p−トルエンスルホニル)−尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0096】
[比較例6]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−[2−(3−フェニルウレイド)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0097】
実施例および表1より新規ジフェニル尿素誘導体から作成される感熱記録材料は、高い白色度で良好な発色濃度を示し、印字部の耐熱性、耐湿性、耐光性、耐水性、耐油性および耐可塑剤性の全ての保存性試験においても良好であった。
【0098】
また、水に対する安定性試験の結果も良好であることが確認できた。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】