特開2020-66148(P2020-66148A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-66148感熱記録材料及びN,N’−ジフェニル尿素誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-66148(P2020-66148A)
(43)【公開日】2020年4月30日
(54)【発明の名称】感熱記録材料及びN,N’−ジフェニル尿素誘導体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/333 20060101AFI20200403BHJP
   C07C 309/73 20060101ALI20200403BHJP
   C07C 39/15 20060101ALI20200403BHJP
   C07C 271/58 20060101ALI20200403BHJP
   C07C 317/22 20060101ALI20200403BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20200403BHJP
【FI】
   B41M5/333 220
   C07C309/73CSP
   C07C39/15
   C07C271/58
   C07C317/22
   B41M5/337 212
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-199151(P2018-199151)
(22)【出願日】2018年10月23日
(71)【出願人】
【識別番号】391052574
【氏名又は名称】三光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 良三
(72)【発明者】
【氏名】木西 良一
【テーマコード(参考)】
2H026
4H006
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB24
2H026DD12
2H026DD17
2H026DD45
2H026DD53
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB83
4H006AB99
4H006FC52
4H006FE13
4H006RA52
4H006RA54
4H006TA02
4H006TB13
(57)【要約】
【課題】非印字部の白色度、発色濃度、及び印字部の保存性に優れた感熱記録材料、並びに、感熱記録材料の顕色剤として利用できるN,N’−ジフェニル尿素誘導体を提供する。
【解決手段】常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤が、下記式(1)で表されるN,N’−ジフェニル尿素誘導体を含有することを特徴とする感熱記録材料。式中、Aはメチル基であり、nは0〜3の整数を示す。
[化1]

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤が、下記式(1)で表されるN,N’−ジフェニル尿素誘導体を含有することを特徴とする感熱記録材料。
【化1】
(式中、Aはメチル基であり、nは0〜3の整数を示す。)
【請求項2】
前記N,N’−ジフェニル尿素誘導体が、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(P−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素およびN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記感熱記録層が、保存安定剤として、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンおよび下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1又は2に記載の感熱記録材料。
【化2】
(式中、nは1〜7の整数を表す。)
【請求項4】
下記式(1)で表されるN,N’−ジフェニル尿素誘導体。
【化3】
(式中、Aはメチル基であり、nは0〜3の整数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料及びN,N’−ジフェニル尿素誘導体に関する。より詳しくは、N,N’−ジフェニル尿素誘導体を顕色剤として用いる感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録材料は常温で無色ないし淡色の塩基性染料と有機顕色剤とをそれぞれ微細な粒子に粉砕分散した後、両者を混合し、これに増感剤、バインダー、滑剤、その他各種添加剤等を添加して得た塗工液を、紙、プラスティックフィルム、加工紙等の支持体上に塗工して感熱記録層を形成したものであり、感熱ヘッド、熱ペン等の熱エネルギーを加えることにより発色記録が得られるものである。
【0003】
このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録画像が得られ、保守が容易なこと、騒音が発生しないこと等の利点があり、計測記録計、ファクシミリ、各種プリンター、ラベル印字機、乗車券、チケットの発券機等の広範囲な分野に利用されている。
【0004】
その感熱記録材料に求められる性能として、非印字部の白色度と種々の環境条件における非印字部の白色度、印字部の発色濃度とその印字部の保存性などが挙げられる。特に印字部の保存性に関しては、種々の試験、例えば耐湿熱性、耐水性、耐光性、耐油性および耐可塑剤性等が求められる。
【0005】
これまで感熱記録材料の顕色剤として数多くの顕色剤が提案されてきた。例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(特許文献1)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(特許文献2)、4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシ−ジフェニルスルホン(特許文献3)、4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシ−ジフェニルスルホン(特許文献4)、N−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]−N’−(p−トルエンスルホニル)−尿素(特許文献5)、N−[2−(3−フェニルウレイド)フェニル]−ベンゼンスルホンアミド(特許文献6)など顕色剤が提案されている。
【0006】
しかし、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシ−ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシ−ジフェニルスルホン、N−[2−(3−フェニルウレイド)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドは印字部の各種保存安定性が十分でなく、一方、N−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]−N’−(p−トルエンスルホニル)−尿素は発色感度や保存性は改善されているものの、N−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]−N’−(p−トルエンスルホニル)−尿素 はトルエンスルホニルイソシナネートから誘導されるトルエンスルホニル尿素基およびトルエンスルホニルクロライドから誘導される芳香族スルホン酸アリールエステル基の2つの官能基を有し、芳香族スルホン酸アリールエステル基は水に対して安定であるものの(非特許文献1)、一方のトルエンスルホニル尿素基は元来アミノ基等の保護基として活用されてきたものであるが、水によって容易に加水分解される欠点がある。
【0007】
感熱記録材料の用途は拡大しており、ガス、水道、電気料金等の領収書を始め、金融機関のATMの利用明細書、財務関係の記録用紙、観劇等のチケット用紙、宝くじ、競馬や競艇等のゲーミングチケット用紙等の投票券、鉄道、バス等の切符や領収書、航空タグ用紙、物流関係のラベル用紙、総菜やおにぎり等の食品用ラベル用紙、コンビエンスストアーやスーパーマーケット等のPOSレジ用紙、医療用ラベル、心電図用紙、医療診断用のフィルム感熱、交通系定期券等で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3539375号明細書
【特許文献2】特開昭57−11088号公報
【特許文献3】特開昭60−208286号公報
【特許文献4】特開2002−052842号公報
【特許文献5】特表2002−532441号公報
【特許文献6】国際公開第2014/080615号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】大饗茂編著、「有機硫黄化学」、化学同人社、1982年9月、p349
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のフェノール系顕色剤は、非印字部の白色度、発色濃度、及び印字部の各種保存安定性が十分ではなく、更に近年は4,4’−イソプロピリデンジフェノールや4,4’−ビスフェノールスルホンなどは、環境ホルモンや変異原性などの環境衛生上の問題が指摘されている。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、非印字部の白色度、発色濃度、及び印字部の保存性などの感熱記録材料としての要求性能を満足する感熱記録材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討の結果、本発明の新規なN,N’−ジフェニル尿素誘導体が感熱記録材料の顕色剤として利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] 常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤が、下記式(1)で表されるN,N’−ジフェニル尿素誘導体を含有することを特徴とする感熱記録材料。
【0014】
【化1】
(式中、Aはメチル基であり、nは0〜3の整数を示す。)
【0015】
[2] 前記N,N’−ジフェニル尿素誘導体が、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(P−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素およびN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する、前記[1]に記載の感熱記録材料。
【0016】
[3] 前記感熱記録層が、保存安定剤として、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンおよび下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する前記[1]又は[2]に記載の感熱記録材料。
【0017】
【化2】
(式中、nは1〜7の整数を表す。)
【0018】
[4] 下記式(1)で表されるN,N’−ジフェニル尿素誘導体。
【0019】
【化3】
(式中、Aはメチル基であり、nは0〜3の整数を示す。)
【発明の効果】
【0020】
本発明を構成する前記N,N’−ジフェニル尿素誘導体を顕色剤として用いることにより、非印字部の白色度、発色濃度、及び印字部の保存性に優れた感熱記録材料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素のIRチャートである。
図2】N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素のIRチャートである。
図3】N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素のIRチャートである。
図4】N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素のIRチャートである。
図5】N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素のIRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料である。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
本発明の感熱記録材料において、前記顕色剤が下記式(1)で表されるN,N’−ジフェニル尿素誘導体を含有する。
【0023】
【化4】
(式中、Aはメチル基であり、nは0〜3の整数を示す。)
【0024】
本発明の感熱記録材料において使用されるジフェニル尿素誘導体としては、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル) −N’−[3−(o−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(3,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(o−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(2,4−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(3,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(o−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(2,4−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]}尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、
【0025】
N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(3,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[2−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(o−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、
【0026】
N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(2,4−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]}尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(3,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(o−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(3,5−ジメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素が挙げられる。
【0027】
特に、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(P−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素およびN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素が好適である。その中でも、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(P−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素は耐光性に優れ、耐光性試験では印字部の変色や濃度低下が少なく、N,N’−ジフェニル尿素誘導体の中でも最も優れた物質である。
【0028】
本発明のN,N’−ジフェニル尿素誘導体は、トリエチルアミンやピリジンなどの有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基の脱酸剤存在下、ジヒドロキシジフェニル尿素にアリールスルホニルハライドを反応させることによって合成することができる。反応式の例を下記式(3)に示す。
【0029】
【化5】
(式中、Aはメチル基であり、nは0〜3の整数を示す。AOHは脱酸剤であり、Xはハロゲン原子である。)
【0030】
本発明の感熱記録材料において、常温で無色ないし淡色の塩基性染料としてトリフェニルメタン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、スピロ系、フルオレン系、チアジン系化合物が挙げられ、従来公知のロイコ染料から選ぶことができる。
【0031】
例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(p−メチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノベンゾ[α]フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−n−ヘキシルオキシフェニル−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(2−メチル−1−n−オクチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ]6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2,2−ビス{4−[6’−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−キサンテン]−2’−イルアミノ]フェニル}プロパンおよび3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−ピロリジノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ジベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−(N−メチル−p−トルイジノ)−7−メチルフルオラン、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン、3,3−ビス(1−n−アミル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)−7−(N−フェニル−N−メチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ベンジルアミノフルオラン、3−ピロリジノ−7−ジベンジルアミノフルオランなどからも選ぶことができ、本発明はこれらに限定されるものではなく、又2種類以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の感熱記録材料において、従来公知の顕色剤と併用して使用することでき、更にまた、下記記載の顕色剤と併用して使用することもできる。
例えば、N,N’−ジ−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’−ジ−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’−ジ−[3−(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル−N’−4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル尿素、N,N’ ジ−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素等のN,N’−ジアリール尿素誘導体である。
【0033】
本発明の感熱記録材料において、必要に応じ増感剤を使用することができ、増感剤としては従来公知の増感剤が使用できる。
例えば、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、p−トルエンスルホンアミド、ステアリン酸、ベヘン酸やパルミチン酸などのカルシウム、亜鉛あるいはアルミニウムなどの脂肪酸金属塩、p−ベンジルビフェニル、ジフェニルスルホン、ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2−ベンジルオキシナフタレン、1,2−ビス(p−トリルオキシ)エタン、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,3−ビス(フェノキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸p−メチルベンジル、m−ターフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。
【0034】
更に、本発明の感熱記録材料は従来公知の保存安定剤を併用することができる。
例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4、6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチルm−クレゾール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、トリス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−チオビス(3−メチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸グリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂型、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系化合物、N,N’―ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウム塩または多価金属塩、ビス(4−エチレンイミンカルボニルアミノフェニル)メタン、更に、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物等が挙げられる。
【0035】
【化6】
(式中、nは1〜7の整数を表す。)
【0036】
特に、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンおよび一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物が更なる保存性改良に好適である。
【0037】
本発明の感熱記録材料で感熱記録層に使用されるバインダーとしては、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類、カゼイン、ゼラチン、完全(または部分)鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレンーブタジエン共重合体樹脂ならびに、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルアミド樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ビニルブチラール・スチロールおよびそれらの共重合体樹脂、アミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クロマン樹脂などが挙げられる。これらのバインダーは単独または2種以上を使用でき、溶剤に溶解して使用するほか、水または他の媒体中に乳化あるいはペースト状に分散した状態で使用することもできる。
【0038】
感熱記録層に配合される顔料としては、非晶性シリカ、非晶性珪酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ、ポリスチレンパウダー、ナイロンパウダー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体や中空プラスチックピグメント等の無機あるいは有機顔料等が挙げられる。
【0039】
また、助剤としては、例えばジオクチオルコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムおよび高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスターワックス、エステルワックス等のワックス類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、グリオキザール、ホウ酸、ジアルデヒドスターチ、メチロール尿素、グリオキシル酸塩、エポキシ系化合物等の耐水化剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料、および顔料等が挙げられる。
【0040】
本発明の感熱記録材料において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤、バインダー、顔料およびその他助剤等の添加剤の種類や使用量は、感熱記録層に要求される品質性能に応じて適宜決定される。
【0041】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層は、前記塩基性染料、前記一般式(1)で表される顕色剤および等の添加剤をそれぞれ微細な粒子に粉砕分散した後、これらを混合し、更に、保存安定剤、バインダー、増感剤、充填剤、滑材、その他各種添加剤等を添加して得た塗工液を調製し、これを紙、プラスティックフィルム、加工紙等の支持体上に塗工して形成される。
【0042】
感熱記録層を形成するための塗工方法は特に限定されるものではなく、例えば、エアーナイフコーティング、バリバーコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、スライドビロードコーティング、オフセットグラビアコーティング、5本ロールコーティング等の適当な塗工方法により塗工することができる。
【0043】
このようにして調製される感熱記録層用塗料を、支持体上に直接塗工することにより、支持体上に感熱記録層を積層してもよいし、支持体上にまず下塗り層を形成し、形成された下塗り層上に感熱記録層を形成してもよい。下塗り層を設けることにより、感度、画質の改善、印字粕吸収機能改善することができる。
下塗り層の組成は、目的のより適宜選択すればよいが、一般に、バインダー、顔料などが含まれる。
【0044】
下塗り層に用いられるバインダーは感熱記録層で使用するような樹脂を用いることができる。すなわち、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、カルボキシセルロース、メトキシセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース樹脂、カゼイン、ゼラチン、完全(または部分)鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、スチレン−無水マレイン酸共重合体系ラテックス、スチレンーブタジエン共重合体系ラテックス、酢酸ビニル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス及びアクリル樹脂系ラテックス等を用いることができる。
【0045】
下塗り層に含有される無機顔料としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム等の金属酸化物、金属水酸化物、硫酸塩、炭酸塩などの金属化合物、無定形シリカ、焼成カオリン、タルク等の無機白色顔料などが挙げられる。これらのうち、特に焼成カオリンは発色感度と感度および粕吸収性に優れていることから、好ましく用いられる。尚、無機顔料の粒子径としては0.5〜3.0μm程度のものが好ましい。
【0046】
また、下塗り層に含有される有機顔料としては、球状樹脂粒子(所謂、密実型樹脂粒子)、中空粒子、貫通孔を有する樹脂粒子、中空樹脂粒子の一部を変面で裁断して得られるような開口部を有する樹脂等が挙げられる。記録濃度を高めるには中空樹脂が好ましく使用される。
【0047】
感度と粕付着性を両立させるため、無機顔料系と有機樹脂系を併用することが一般的に行われ、無機顔料と有機顔料の使用比率が、質量比で90:10〜30:70程度が好ましく、更には70:30〜50:50がより好ましい。
更に、感度の向上を図るため、発泡系樹脂を使用することもできる。
【0048】
下塗り層は、一般に水を分散媒体とし、無機顔料、有機顔料から選ばれる少なくとも1種とバインダーを混合して得られる下塗り層用塗料を、支持体上に乾燥後の塗工量が1〜20g/m、好ましくは5〜15g/m程度となるように塗工乾燥して形成される。前記バインダー及び顔料の使用量としては、下塗り層全固形分に対してバインダーが5〜40質量%程度、顔料が10〜95質量%程度が好ましい。更に下塗り層用塗料には、必要に応じて、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、蛍光染料、着色染料、界面活性剤、架橋剤等の各種助剤を添加することもできる。
下塗り層は1層でも良く、場合によっては2層以上設けてもよい。
【0049】
感熱記録層上に、成膜性を有するバインダーを主成分とする保護層を設けてもよい。保護層用塗料は、例えば水を媒体とし、バインダー成分、顔料、及び、更に必要により助剤とを混合撹拌して調製される。
保護層に用いられるバインダー、顔料、助剤は、上記の感熱記録層で用いられるものを使用される。
【0050】
更にまた、保護層上に光沢層を設けてもよい。
光沢層としては、例えば電子線または紫外線硬化性化合物を主成分とする塗液を塗工後、電子線や紫外線を照射して硬化させる方法や超微粒子のコアシェル型アクリル樹脂を使用する方法等が挙げられる。
または更に、支持体の裏面側に帯電防止層を設けてもよい。
【0051】
下塗り層、保護層、光沢層等を形成するための塗料は、感熱記録層と同様に、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、カーテンコーティング、オフセットグラビアコーティング等の適当な塗工方法により塗工することができ、乾燥により各層が形成される。
【0052】
各層を形成した後、または感熱記録材料を構成する全ての層が形成した後に、スーパーカレンダー処理する等の感熱記録材料製造分野における各種の公知処理技術を適宜付加してもよい。
【0053】
本発明の感熱記録材料における感熱記録層において、顕色剤として前記一般式(1)で表されるN,N’−ジフェニル尿素誘導体の含有量は、発色濃度の観点から、感熱記録層の塩基性染料1質量部に対して、0.3〜5質量部が好ましく、更には0.4〜3質量部がより好ましい。
【0054】
更に、増感剤はロイコ染料1部に対し0〜4質量部、バインダーは全固形分中5〜50質量%が適当である。支持体としては、紙、再生紙、合成紙、プラスティックフィルム、不織布、金属箔等が使用可能である。また、これらを組み合せた複合シートも使用可能である。
【0055】
本発明の感熱記録材料において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤および必要により保存安定剤等は、例えば水を分散媒体として、ボールミル、アトライター、サンドミル等の撹拌粉砕機によって平均粒子径が2μm以下になるように微分散され使用される。
【0056】
このように微分散された分散液に、必要により顔料、バインダー、助剤等を混合撹拌することで感熱記録層用塗料が調製される。
【0057】
感熱記録層は、このようにして得られた感熱記録層用塗料を、乾燥後の塗工量が1.0〜20g/m程度、より好ましくは2.0〜7.0g/m程度になるように、支持体上に塗工し、乾燥することで形成される。
【実施例】
【0058】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例中、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0059】
[顕色剤の水に対する安定性確認試験]
顕色剤のなかには、水と反応することにより分解して本来の顕色能が損なわれるものが存在する。本発明の感熱記録材料において用いられる顕色剤に関して予め水に対する安定性を確認した。試験法は下記記載の加速試験法を採用した。
【0060】
試験法:アセトニトリルと水との混合液(アセトニトリル/水=80/20)に本願発明顕色剤を0.5%溶解して50℃/5時間撹拌して、分解量を島津製作所製高速液体クロマトグラフィー(検出波長:205nm)で測定した。
分解量が10%以上あれば耐水分解性を×、1%以下であれば耐水分解性を〇とした。
結果を表1に示す。
【0061】
下記操作により感熱記録材料を作製した。
【0062】
[アンダーコート用塗料の調製]
プラスチック中空粒子(商品名:ローペイクSN−1055:中空率:55% 固形分26.5%)100部、焼成カオリンの50%分散液100部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571 固形分48%)25部、酸化澱粉の10%水溶液50部および水20部を混合して、アンダーコート用塗料を作成した。
【0063】
[感熱記録層用塗料の調製]
A液(染料分散液の調製)
3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 16.7部
【0064】
B液(顕色剤分散液の調製)
N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素 20部
10%ポリビニルアルコール水溶液 20部
水 33.3部
【0065】
C液(増感剤分散液の調製−1)
1,2−ビス(m−トリルオキシ)エタン 15部
10%ポリビニルアルコール水溶液 15部
水 25部
【0066】
D液(増感剤分散液の調製−2)
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン 5部
10%ポリビニルアルコール水溶液 5部
水 8.3部
【0067】
合成例1:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成
滴下ロート、温度計を付置した500mlの4径フラスコに3,3’−ジヒドロキシジフェニル尿素24.4g、酢酸エチル150g、トリエチルアミン8gを仕込み50℃に加温した。滴下ロートよりp−トルエンスルホニルクロライド10gを溶解した酢酸エチル溶液を滴下した。2時間反応した後、水を加え有機層を水洗・分液し、更に水酸化ナトリウム水溶液で未反応の3,3‘−ジヒドロキシジフェニル尿素を水洗除去した。有機層を減圧濃縮した後、濃縮残渣にトルエンを加えて濃縮残渣を結晶化した。結晶を濾別した後、更にトルエン−酢酸エチルから再結晶した。
融点範囲は172〜177℃であった。IRチャートを図1に示した。
【0068】
(実施例1)
上記A液、B液およびC液の分散液をサンドグラインダーで平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕し、下記割合で分散液を混合して塗工液とした。
A液(染料分散液) 36.7部
B液(顕色剤分散液) 73.3部
C液(増感剤分散液−1) 55.0部
【0069】
水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42 27部、無定形シリカ(商品名:ミズカシルP−527)10部、酸化澱粉の10%溶解物100部、ステアリン酸亜鉛分散液:(商品名:ハイドリンZ−8−36)19.4部および水50部からなる組成分を混合して感熱記録層用塗料を作製した。
【0070】
[感熱記録材料の作製]
支持体として坪量が53gの上質紙(酸性紙)にアンダーコート用塗料を乾燥後の面積当たりの質量が6g/mとなるように塗工および乾燥し、その後、感熱記録層用塗料を、乾燥後の面積当たりの質量が3.8g/mになるように塗工乾燥した。
【0071】
このシートをスーパーカレンダーで平滑度(JISP8155:2010)が900〜1200sになるように処理して感熱記録材料を作成した。
【0072】
[各種試験]
1.感熱記録試験
作成した感熱記録材料について、感熱記録紙印字試験機(大倉電気社製TH−PMD)を用い、印加エネルギー0.38mJ/dotで印加した。非印字部(すなわち、地肌部)および印字部の印字濃度はマクベス反射濃度計RD−914で測定した。これを試験前サンプル(ブランク)とした。
【0073】
2.耐熱性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を試験温度60℃の恒温環境下に24時間放置した。その後、試験片の印字部画像濃度と非印字部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0074】
3.耐湿熱性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を試験温度40℃、90%RHの環境下に24時間放置した。その後、試験片の印字部画像濃度と非印字部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0075】
4.耐光性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を5000Luxに100時間暴露した。その後、画像濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0076】
5.耐油性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料にサラダオイル中に10分間浸漬した。その後、試験片の油をふき取り、画像濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0077】
6.耐水性試験
感熱記録試験で記録した感熱記録材料を水中に15時間浸漬した。その後、試験片を風乾させ、画像濃度と非印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
【0078】
7.耐可塑剤性試験
ポリカーボネートパイプ(48mmφ)上にラップフィルム(商品名:ハイラップKMA 三井化学製)を3重に巻き付け、感熱記録試験で記録した感熱記録材料を乗せ、更にその上にラップフィルムを3重に巻き付け20℃65%RHの環境下で24時間放置した。その後、画像濃度と非印字部をマクベス反射濃度計で測定した。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0079】
合成例2:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成
合成例1のp−トルエンスルホニルクロライド10gをベンゼンスルホニルクロライド8.6gに代える以外、合成例1と同様の操作をして、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は142〜145℃であった。IRチャートを図2に示した。
【0080】
(実施例2)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0081】
合成例3:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成例
合成例1のp−トルエンスルホニルクロライド10gを2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルクロライド10.9gに代える以外、合成例1と同様の操作を行い、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は155〜160℃であった。IRチャートを図3に示した。
【0082】
(実施例3)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0083】
合成例4:N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成例
合成例1のp−トルエンスルホニルクロライド10gをm−トルエンスルホニルクロライド10gに代える以外、合成例1と同様の操作を行い、N−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は113〜118℃であった。IRチャートを図4に示した。
【0084】
(実施例4)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(m−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0085】
(実施例5)
実施例1の感熱記録層用塗料にD液を18.3部添加した以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0086】
(実施例6)
実施例5の感熱記録層用塗料にD液の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンを1,1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタンに代える以外は実施例5と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0087】
(実施例7)
実施例5の感熱記録層用塗料にD液の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンを4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンに代える以外は実施例5と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0088】
(実施例8)
実施例5の感熱記録層用塗料にD液の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンを、日本曹達株式会社製D−90(製品名)の、一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物に代える以外は実施例5と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0089】
合成例5:N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素の合成
合成例1の3,3’−ジヒドロキシジフェニル尿素24.4gを4,4’ジヒドロキシジフェニル尿素24.4gに代える以外、合成例1と同様の操作を行い、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を得た。
融点範囲は173〜180℃であった。IRチャートを図5に示した。
【0090】
(実施例9)
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−[4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0091】
[比較例1]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4,4’−イソプロピリデンジフェノール(すなわち、ビスフェノールAである。)に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0092】
[比較例2]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(すなわち、ビスフェノールSである。)に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0093】
[比較例3]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシ−ジフェニルスルホンに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0094】
[比較例4]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシ−ジフェニルスルホンに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0095】
[比較例5]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]−N’−(p−トルエンスルホニル)−尿素に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0096】
[比較例6]
実施例1のB液のN−(3−ヒドロキシフェニル)−N’−[3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN−[2−(3−フェニルウレイド)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表2に記載の通りであった。
【0097】
実施例および表1より新規ジフェニル尿素誘導体から作成される感熱記録材料は、高い白色度で良好な発色濃度を示し、印字部の耐熱性、耐湿性、耐光性、耐水性、耐油性および耐可塑剤性の全ての保存性試験においても良好であった。
【0098】
また、水に対する安定性試験の結果も良好であることが確認できた。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の感熱記録材料は、使用する顕色剤が式(1)で表されるジフェニル尿素誘導体であるため、内分泌攪乱の懸念がなく、更に水に対する分解性もなく、しかも発色濃度に優れ、非印字部の白色度が高く、更に全ての保存性試験で良好な保存性が得られ、従来の感熱記録材料に代わるものとして産業上の利用可能性は極めて有望である。
図1
図2
図3
図4
図5