(A)ペンタエリスリトール、(B)炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸、(C)オレイン酸及び(D)炭素数6〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸を、特定のモル比でエステル化反応して得られるコンプレックスエステルを含有する混合物を潤滑油基油として使用すること。
(A)ペンタエリスリトール、(B)炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸、(C)オレイン酸及び(D)炭素数6〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸を、エステル化反応して得られるコンプレックスエステルであって、
当該モル比が、(A)/(B)/(C)/(D)=10/2〜8/4〜29/4〜29
の範囲であり、且つ、コンプレックスエステルの酸価が10mgKOH/g以下及び水酸基価が20mgKOH/g以下であるコンプレックスエステルを含有することを特徴とする潤滑油基油。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルは、ペンタエリスリトール(A)、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸(B)、オレイン酸(C)及び炭素数6〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸(D)を、エステル化反応して得られるコンプレックスエステルでる。
【0019】
<(A)成分>
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルに係るペンタエリスリトール(A)は、工業的に入手可能なペンタエリスリトールを使用することができ、ペンタエリスリトールの純度としては、95%以上、特に、98%以上が好ましい。
【0020】
<(B)成分>
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルに係る脂肪族ジカルボン酸(B)は、炭素数6〜10、好ましくは炭素数9〜10の脂肪族ジカルボン酸であり、具体的には、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が例示される。これらの中でも、耐熱性に優れる点で、炭素数9〜10の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的には、アゼライン酸、セバシン酸が推奨される。これらは、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせてエステル化に供することができる。
【0021】
<(C)成分>
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルに係るオレイン酸(C)は、工業的に入手可能なオレイン酸を主成分とするものを使用することができ、オレイン酸成分が60質量%以上のものが好ましく使用できる。オレイン酸以外の他の成分として、炭素数12〜22の飽和または不飽和脂肪族モノカルボン酸が含まれていても良い。また、オレイン酸成分が多いほど引火点が高くなり、流動点が低くなることから、オレイン酸成分が70質量%以上含まれるものがさらに好ましい。
【0022】
<(D)成分>
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルに係る直鎖状若しくは分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸(D)は、炭素数6〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸であり、直鎖状脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸が例示される。また、分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、イソデカン酸が例示される。
【0023】
<エステル化反応>
エステル化に際し、使用する(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の使用するモル比は、(A)/(B)/(C)/(D)=10/2〜8/4〜29/4〜29であり、特に、(A)/(B)/(C)/(D)=10/3〜7/10〜25/8〜24のモル比が好ましい。
【0024】
本発明のエステル化反応では、エステル化触媒を使用するのが好ましい。エステル化触媒としては、ルイス酸類、アルカリ金属類、スルホン酸類等が例示され、具体的にルイス酸類としては、アルミニウム誘導体、錫誘導体、チタン誘導体が例示され、アルカリ金属類としては、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等が例示され、更にスルホン酸類としてはパラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等が例示される。その使用量は、例えば原料である(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総重量に対して0.05〜1.0質量%程度用いられる。上記触媒のうちでも、上記ルイス酸が好ましい。
【0025】
エステル化反応は、通常150〜250℃、好ましくは160〜230℃の反応温度で、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。反応時間としては、通常3〜30時間である。エステル化反応は、無溶媒で行うことができるが、必要に応じて、生成してくる水をベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の水同伴剤を用いて系外に共沸留去させてもよい。水同伴剤を使用する場合、その使用量は、原料である(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総重量に対して1〜20質量%、特に1〜10質量%使用するのが好ましい。
【0026】
エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下又は常圧下にて留去する。引き続き慣用の精製方法、例えば、中和、水洗、液液抽出、減圧蒸留、活性炭等の吸着剤を用いて本エステルを精製することができる。
【0027】
特に、エステル化反応により得られたエステル化反応生成物を、そのまま或いは未反応の酸(水同伴剤を使用した場合は、水同伴剤)を留去した後、アルカリ洗浄に供するのが好ましい。これにより、残存する未反応の酸、末端にカルボキシル基を有する不純物、触媒等が除去され、金属適合性、耐熱性等に優れたエステルを得ることができる。
【0028】
アルカリ洗浄に使用する洗浄液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩等のアルカリの水溶液が例示でき、その濃度は特に限定されないが、0.5〜20質量%程度が好ましい。アルカリ水溶液の使用量は反応終了後の反応生成物の酸価に対して当量又は過剰となる量とするのが好ましい。アルカリ洗浄後の生成物は、中性となるまで水洗するのが好ましい。こうして本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルを得ることができる。
【0029】
本発明の潤滑油基油中において、コンプレックスエステルが90質量%以上含有していることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、特に98質量%以上が好ましい。
【0030】
<コンプレックスエステル>
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルの酸価は、10mgKOH/g以下の酸価であり、好ましくは5mgKOH/g以下、特に、3mgKOH/g以下が好ましい。酸価が低い程、引火点およびエステルの安定性に優れる。なお、上記酸価は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0031】
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルの水酸基価は、20mgKOH/g以下の水酸基価であり、好ましくは15mgKOH/g以下、特に、10mgKOH/g以下が好ましい。水酸基価が低い程、耐熱性に優れる。なお、上記水酸基価は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0032】
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルの100℃での動粘度は、8mm
2/s以上100mm
2/s未満が好ましく、11mm
2/s以上80mm
2/s未満が特に好ましい。100℃での動粘度が8mm
2/s以上であると高温下での潤滑性能が良好であり、100mm
2/s以下であると流動性が良く取り扱いやすい。なお、上記動粘度は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0033】
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルの粘度指数は、150以上の粘度指数が好ましく、170以上の粘度指数が特に好ましい。粘度指数が高いものほど粘度−温度特性に優れる。なお、上記粘度指数は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0034】
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルの低温流動性は、例えば、流動点によって評価することができる。潤滑油基油の流動点は、0℃以下が好ましく、より好ましくは−2.5℃以下、特に、−10℃以下が好ましい。流動点が低いものほど低温流動性に優れる。なお、上記流動点は、後記実施例に記載した低温流動性試験にて得られる値である。
【0035】
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルの引火点は、300℃以上が好ましく、310℃以上の引火点が特に好ましい。なお、上記引火点は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0036】
本発明の潤滑油基油に係るコンプレックスエステルの熱安定性(低スラッジ性)は、例えば、ペンタン不溶解分試験によるスラッジ量により評価することができる。ペンタン不溶解分試験の結果、5mg未満のスラッジ量が好ましく、1mg未満のスラッジ量が特に好ましい。なお、上記スラッジ量は、後記実施例に記載したペンタン不溶解分試験にて得られる結果である。
【0037】
本発明の潤滑油基油は、引火点が高く、熱安定性(低スラッジ性)及び低温流動性に優れ、且つ、粘度指数が高いことから、機械チェーン用潤滑油基油又はグリース基油として好適に用いられる。
【0038】
本発明の潤滑油基油は、鉱物油(石油の精製によって得られる炭化水素油)、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式炭化水素油、フィッシャートロプシュ法によって得られる合成炭化水素の異性化油などの合成炭化水素油、動植物油、本発明に係るコンプレックスエステル以外の有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどの併用基油の少なくとも1種を適宜併用することができる。
【0039】
鉱物油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100℃における動粘度が1.0〜25mm
2/s、好ましくは2.0〜20.0mm
2/sの範囲にあるものが用いられる。
【0040】
ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデセン等)の重合体又は共重合体であって、100℃における動粘度が1.0〜25mm
2/s、粘度指数が100以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が1.5〜20.0mm
2/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
【0041】
ポリブテンとしては、イソブチレンを重合したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合したものがあり、一般に100℃の動粘度が2.0〜40mm
2/sの広範囲のものが挙げられる。
【0042】
アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼン等が例示される。
【0043】
アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示される。
【0044】
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等が例示される。
【0045】
有機酸エステル(本発明に係るコンプレックスエステルを除く)としては、脂肪酸モノエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、ポリオールエステルその他のエステルが例示される。
【0046】
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5〜22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのエステル化合物が挙げられる。
【0047】
脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸等脂肪族二塩基酸若しくはその無水物と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのジエステルが挙げられる。
【0048】
ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−ブチル2−エチルプロパンンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型構造のポリオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,7−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,9−ノナンジオール、4−メチル−1,9−ノナンジオール、5−メチル−1,9−ノナンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の非ネオペンチル型構造のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸とのフルエステルを使用することが可能である。
【0049】
その他のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、或いは、縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸などのヒドロキシ脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステル化合物が挙げられる。
【0050】
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールと炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレンオキシドの開環重合体が例示される。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらの1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用いた共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸基部分がエーテル化若しくはエステル化した化合物も使用可能である。重合体の動粘度としては、5.0〜1,000mm
2/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm
2/s(40℃)である。
【0051】
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘度としては、5.0〜1,000mm
2/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm
2/s(40℃)である。
【0052】
ポリフェニルエーテルとしては、2個以上の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的には、ビス(m−フェノキシフェニル)エーテル、m−ビス(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエーテル類(通称C−エーテル)等が例示される。
【0053】
アルキルフェニルエーテルとしては、ポリフェニルエーテルを炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエーテルが好ましい。
【0054】
本発明の潤滑油基油中における併用基油の含有量としては、10質量%以下が推奨されるが、物性のバランスを良くする為には5質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、上記の潤滑油基油の性能を向上させるために、潤滑油基油(即ち、本発明に係るコンプレックスエステルのみからなる潤滑油基油、又は本発明に係るコンプレックスエステル及び併用基油からなる潤滑油基油)に加えて、酸化防止剤を配合した潤滑油組成物である。
【0056】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。その中でも、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が推奨される。
【0057】
フェノール系酸化防止剤としては、この分野で使用されている公知のものが特に制限されることなく使用できる。これらフェノール系酸化防止剤のうちでも、好ましくは総炭素数6〜100、より好ましくは20〜80のものが推奨される。
【0058】
具体的には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジベンゾイルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、α−トコフェロール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−tert−ブチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が例示される。この中でも、特に、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−tert−ブチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましく、更には、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールが最も好ましい。
【0059】
フェノール系酸化防止剤は1種単独で若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、その添加量は、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜5質量%であり、好ましくは0.1〜2質量%である。
【0060】
アミン系酸化防止剤としては、この分野で使用されている公知のものが特に制限されることなく使用できる。これらアミン系酸化防止剤のうちでも、好ましくは総炭素数6〜60、より好ましくは20〜40のものが推奨される。
【0061】
具体的には、ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン、特にモノ(C
4−C
9アルキル)ジフェニルアミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の一方が、アルキル基、特にC
4−C
9アルキル基でモノ置換されているもの、即ち、モノアルキル置換されたジフェニルアミン)、p,p’−ジブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のジ(アルキルフェニル)アミン、特にp,p’−ジ(C
4−C
9アルキルフェニル)アミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の各々が、アルキル基、特にC
4−C
9アルキル基でモノ置換されているジアルキル置換のジフェニルアミンであって、二つのアルキル基が同一であるもの)、ジ(モノC
4−C
9アルキルフェニル)アミンであって、一方のベンゼン環上のアルキル基が他方のベンゼン環上のアルキル基と異なるもの、ジ(ジ−C
4−C
9アルキルフェニル)アミンであって、二つのベンゼン環上の4つのアルキル基のうちの少なくとも1つが残りのアルキル基と異なるもの等のジフェニルアミン類;N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン類;p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類等が例示される。この中でも、特に、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミンが好ましい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において「(直鎖及び分岐鎖を含む」とは、直鎖アルキル及び分岐鎖アルキルの一方又は双方を含むという意味である。
【0062】
アミン系酸化防止剤は1種で若しくは2種以上を適宜組み合わせて用い、その添加量は、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜5質量%であり、好ましくは0.1〜2質量%である。
【0063】
フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤を併用する場合、それらの添加量の合計は、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜5質量%であり、好ましくは0.1〜2質量%である。また、当該フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤の比率(重量比)としては、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくはフェノール系酸化防止剤:アミン系酸化防止剤=1:0.05〜20、より好ましくは1:0.2〜5となる範囲が推奨される。
【0064】
好ましいフェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤の組み合わせとしては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上と、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、及びN−フェニル−1−ナフチルアミンからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上とからなる組み合わせが例示される。
【0065】
具体的には、以下の組み合わせが好ましい。2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールとp,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールとp,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールとN−フェニル−1−ナフチルアミンの組み合わせ、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とp,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とp,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とN−フェニル−1−ナフチルアミンの組み合わせ、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールとp,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールとp,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールとN−フェニル−1−ナフチルアミンの組み合わせ等が例示される。この中でも耐熱性に優れる点で、より効果的な組み合わせとして、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とp,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とp,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミンの組み合わせ、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とN−フェニル−1−ナフチルアミンの組み合わせ等が推奨される。
【0066】
上記記載の酸化防止剤を本発明の潤滑油基油に配合することにより、空気存在下での当該潤滑油基油の分解等が抑えられることにより、潤滑油組成物の耐熱性が向上する。
【0067】
上記の潤滑油組成物の性能をさらに向上させるために、金属清浄剤、無灰分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、加水分解抑制剤等の添加剤の少なくとも1種を適宜配合することも可能である。これらの配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体的な例を以下に示す。
【0068】
金属清浄剤としては、Ca−石油スルフォネート、過塩基性Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルナフタレンスルフォネート等の金属スルフォネート、Ca−フェネート、過塩基性Ca−フェネート、Ba−フェネート、過塩基性Ba−フェネート等の金属フェネート、Ca−サリシレート、過塩基性Ca−サリシレート等の金属サリシレート、Ca−フォスフォネート、過塩基性Ca−フォスフォネート、Ba−フォスフォネート、過塩基性Ba−フォスフォネート等の金属フォスフォネート、過塩基性Ca−カルボキシレート等が使用可能である。これらの金属清浄剤は、使用する場合、潤滑油基油に対して、通常、1〜10質量%程度、好ましくは2〜7質量%程度添加するのがよい。
【0069】
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステル等が例示される。これらの無灰分散剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して、1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%添加することが望ましい。
【0070】
油性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコールなどのグリセリンエーテル、ラウリルポリグリセリンエーテル、オレイルポリグリセリルエーテルなどのアルキル若しくはアルケニルポリグリセリルエーテル、ジ(2−エチルヘキシル)モノエタノールアミン、ジイソトリデシルモノエタノールアミンなどのアルキル若しくはアルケニルアミンのポリ(アルキレンオキサイド)付加物等が例示される。これらの油性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%添加することが望ましい。
【0071】
摩耗防止剤・極圧剤としては、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等の亜リン酸エステル類及びこれらのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフィン、ジアルキルジスルフィドなどの硫黄系、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオカルバメートなどの有機金属系化合物等が例示される。これらの摩耗防止剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加することが望ましい。
【0072】
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が例示される。これらの金属不活性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜0.4質量%、好ましくは0.01〜0.2質量%添加することが望ましい。
【0073】
防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなどの多価アルコール部分エステル、Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Zn−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフォネート、ロジンアミン、N−オレイルザルコシンなどのアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が例示される。これらの防錆剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%添加することが望ましい。
【0074】
粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体などのオレフィン共重合体が例示される。これらの粘度指数向上剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜7質量%添加することが望ましい。
【0075】
流動点降下剤としては、塩素化パラフィンとアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン等が例示される。これらの流動点降下剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%添加することが望ましい。
【0076】
加水分解抑制剤としては、アルキルグリシジルエーテル類、アルキルグリシジルエステル類、アルキレングリコールグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ類、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物が使用可能であり、通常、潤滑油基油に対して、0.05〜2質量%添加するのが望ましい。
【0077】
本発明の潤滑油基油に増ちょう剤を適宜組み合わせることにより、「グリース」とすることができる。
【0078】
増ちょう剤としては、ナトリウム石鹸、リチウム石鹸、カルシウム石鹸、カルシウムコンプレックス石鹸、アルミニウムコンプレックス石鹸、リチウムコンプレックス石鹸等の石鹸系や、ベントナイト、シリカエアロゲル、ナトリウムテレフタラメート、ウレア化合物、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素等の非石鹸系が挙げられる。
【0079】
金属石けん系増ちょう剤としては、リチウム−12−ヒドロキシステアレート等の水酸基を有する脂肪族カルボン酸リチウム塩、リチウムステアレート等の脂肪族カルボン酸リチウム塩又はそれらの混合物などが例示される。
【0080】
複合体金属石けん系増ちょう剤としては、水酸基を有する1価の脂肪族カルボン酸金属塩と2価の脂肪族カルボン酸金属塩とのコンプレックス等が挙げられ、具体的には複合体リチウム石けんや複合体アルミニウム石けんが例示される。
【0081】
ウレア化合物としては、脂環族、芳香族、脂肪族、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ウレア・ウレタン化合物等が例示される。
【0082】
上記の中でも、増ちょう剤として、リチウム石鹸、リチウムコンプレックス石鹸、ウレア化合物が好ましく、耐熱性の点から特にウレア化合物が好ましい。
【0083】
これらの増ちょう剤は1種で又は適宜2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は所定の効果を奏する限り特に限定されるものではない。
【0084】
腐食防止剤としては、ナトリウムスルホネートやソルビタンエステルが例示され、通常、潤滑油基油に対して0.1〜3.0質量%程度添加される。
【0085】
色相安定剤としては、置換ハイドロキノン、フルフラールアジン等が例示され、通常、潤滑油基油に対して0.01〜0.1質量%程度添加される。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、各例における潤滑油基油の物理特性及び化学特性は以下の方法により評価した。特に言及していない化合物は試薬を使用した。
<使用化合物>
ペンタエリスリトール:東京化成工業株式会社製
ネオペンチルグリコール:東京化成工業株式会社製
セバシン酸:東京化成工業株式会社製
アゼライン酸:東京化成工業株式会社製
アジピン酸:東京化成工業株式会社製
オレイン酸:「オレイン酸D−100」 新日本理化株式会社製(オレイン酸の純度73%)
ヘキサン酸:東京化成工業株式会社製
カプリン酸:新日本理化株式会社製
2−エチルヘキサン酸:「オクチル酸」KHネオケム株式会社製
ラウリン酸:「ラウリン酸P」新日本理化株式会社製
【0087】
(a)酸価(AV)
JIS K2501(2003)に準拠して測定した。なお検出限界は0.01mgKOH/gである。
【0088】
(b)水酸基価(OHV)
JIS K0070(1992)に準拠して測定した。なお検出限界は0.1mgKOH/gである。
【0089】
[潤滑油基油の物性測定]
(c)動粘度
JIS−K−2283(2000)に準拠して100℃における動粘度を測定した。
100℃での動粘度が8〜100mm
2/sの範囲のときに高温下での潤滑性および取り扱いにおける流動性の点で良好と評価される。
<100℃での動粘度の評価>
A:11mm
2/s以上80mm
2/s未満
B:8mm
2/s以上11mm
2/s未満 又は 80mm
2/s以上100mm
2/s未満
C:8mm
2/s未満 又は 100mm
2/s以上
【0090】
(d)粘度指数
JIS−K−2283(2000)に準拠して算出した。
<粘度指数の評価>
A:170以上
B:150以上170未満
C:150未満
【0091】
(e)低温流動性試験(流動点)
JIS−K−2269(1987)に準拠して流動点を測定した。
<低温流動性の評価>
A:−10℃以下
B:−10℃を越え0℃以下
C:0℃を越える
【0092】
(f)引火点
JIS K2265(クリーブランド開放式)に準拠して測定した。
<引火点の評価>
A:310℃以上
B:300℃以上310℃未満
C:300℃未満
【0093】
(g)低スラッジ性(ペンタン不溶解分試験)
ASTM D893に準拠して測定した。サンプルを50g計り取り、大気下で300℃15分間加熱した。その後、室温まで冷却してペンタン200gで希釈した。遠心分離機で不溶分(スラッジ)を沈殿させて上澄み液を除去した。再度ペンタン200gで希釈して上澄み液を除去した後、残存した不溶分を乾燥させて重量を測定した。
<低スラッジ性の評価>
A:1mg未満
B:1mg以上5mg未満
C:5mg以上
【0094】
(h)潤滑油基油の評価
潤滑油基油の評価としては、100℃での動粘度の評価、粘度指数の評価、低温流動性の評価、引火点の評価及び低スラッジ性の評価の結果において、Cが1以上あれば不適と、Bが2以下(他の評価はA)であれば良好と、Bが1以下(他の評価はA)であれば特に良好と評価される。
【0095】
[実施例1]
撹拌器、温度計、冷却管付き水分分留受器を備えた1リットルの四ツ口フラスコにペンタエリスリトール68.08g(0.50mol)、炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸としてセバシン酸50.56g(0.25mol)、オレイン酸278.59g(1.00mol)、炭素数6〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸としてヘキサン酸58.07g(0.50mol)エステル化触媒として酸化スズ0.5g、エントレーナーとしてキシレン30gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、徐々に230℃まで昇温した。キシレンが還流するように減圧度を調整しながら、理論生成水量(36g)を目処にして留出してくる生成水を水分分留受器で除去しつつ、エステル化反応を行った。反応終了後、残存するキシレンを減圧下で蒸留により除去してエステル化粗物を得た。次いで、得られたエステル化粗物に対して活性白土0.5gを加えた後、濾過により活性白土を除去して、コンプレックスエステル370.6gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.1mgKOH/g、水酸基価は、3.4mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0096】
[実施例2]
オレイン酸の量を208.9g(0.75mol)に、ヘキサン酸をカプリン酸129.2g(0.75mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル377.0gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.1mgKOH/g、水酸基価は、3.0mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0097】
[実施例3]
ヘキサン酸をカプリン酸86.1g(0.50mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル382.0gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.1mgKOH/g、水酸基価は、3.6mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0098】
[実施例4]
セバシン酸をアゼライン酸47.1g(0.25mol)に、オレイン酸の量を208.9g(0.75mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル368.0gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.7mgKOH/g、水酸基価は、1.9mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0099】
[実施例5]
ヘキサン酸を2−エチルヘキサン酸72.1g(0.50mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル385.0gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、2.8mgKOH/g、水酸基価は、16.0mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0100】
[実施例6]
セバシン酸の量を30.3g(0.15mol)、オレイン酸の量を236.8g(0.85mol)に、ヘキサン酸をカプリン酸146.4g(0.85mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル385.2gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.7mgKOH/g、水酸基価は、1.3mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0101】
[実施例7]
セバシン酸の量を70.8g(0.35mol)、オレイン酸の量を181.1g(0.65mol)に、ヘキサン酸をカプリン酸112.0g(0.65mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル350.7gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、2.8mgKOH/g、水酸基価は、2.1mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0102】
[実施例8]
セバシン酸をアジピン酸36.5g(0.25mol)、オレイン酸の量を208.9g(0.75mol)に、ヘキサン酸をカプリン酸129.2g(0.75mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル352.9gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.1mgKOH/g、水酸基価は、4.3mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表2に示す。
【0103】
[比較例1]
オレイン酸の量を417.9g(1.50mol)に、ヘキサン酸を無しに変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル440.3gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.1mgKOH/g、水酸基価は、10.7mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表3に示す。
【0104】
[比較例2]
オレイン酸の量を208.9g(0.75mol)に、ヘキサン酸をラウリン酸150.2g(0.75mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル392.3gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.7mgKOH/g、水酸基価は、2.4mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表3に示す。
【0105】
[比較例3]
ペンタエリスリトールをネオペンチルグリコール52.1g(0.50mol)に、セバシン酸の量を25.3(0.125mol)、オレイン酸の量を104.5g(0.375mol)に、ヘキサン酸をカプリン酸64.6g(0.375mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル204.0gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、7.4mgKOH/g、水酸基価は、0.0mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表3に示す。
【0106】
[比較例4]
オレイン酸の量を無しに、ヘキサン酸をカプリン酸258.4g(1.5mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、コンプレックスエステル299.1gを得た。得られたコンプレックスエステルの酸価は、1.7mgKOH/g、水酸基価は、1.1mgKOH/gであった。当該コンプレックスエステルを潤滑油基油として評価した際の各物性を表3に示す。
【0107】
実施例1〜8及び比較例1〜4について、各成分のモル比及び得られたコンプレックスエステルの酸価、水酸基価を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
表2からわかるように、実施例1〜8に記載の潤滑油基油は、100℃動粘度が15mm
2/s以上と高く高温下での潤滑性に優れ、80mm
2/s未満と取り扱いやすい。また、粘度指数が170以上であり粘度―温度特性に優れる。流動点が―2.5℃以下かつ引火点が300℃以上、熱安定性としてスラッジも発生しにくいことから性能バランスに優れ、機械用チェーン油などの用途に適している。
【0112】
一方、比較例1に記載の基油は、スラッジ量が多く熱安定性が悪い。比較例2に記載の基油は流動点が5℃と高い。比較例3に記載の基油は100℃動粘度および引火点が低い。比較例4に記載の基油は流動点が5℃と高い。