特開2020-68292(P2020-68292A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-68292リードフレーム、及びリードフレームパッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-68292(P2020-68292A)
(43)【公開日】2020年4月30日
(54)【発明の名称】リードフレーム、及びリードフレームパッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20200403BHJP
   C25D 5/48 20060101ALI20200403BHJP
   C25D 11/34 20060101ALI20200403BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20200403BHJP
   C25D 9/06 20060101ALN20200403BHJP
【FI】
   H01L23/50 D
   C25D5/48
   C25D11/34 302
   C23C28/00 C
   C25D9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-200175(P2018-200175)
(22)【出願日】2018年10月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】古野 綾太
(72)【発明者】
【氏名】久保 公彦
【テーマコード(参考)】
4K024
4K044
5F067
【Fターム(参考)】
4K024AA09
4K024BA01
4K024BA09
4K024BB13
4K024BC01
4K024DB03
4K024GA12
4K044AA02
4K044AA06
4K044BA06
4K044BA12
4K044BB03
4K044BB04
4K044BB13
4K044BC04
4K044CA16
4K044CA17
4K044CA18
5F067AA04
5F067AA05
5F067AB03
5F067AB04
5F067BA02
5F067DC16
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】樹脂との密着性に優れるリードフレームを提供すること。
【解決手段】リードフレーム100は、基材10と、基材10を覆う表面層12と、を備える。表面層12は、主成分としてCuOを含有する針状酸化物16を含む。針状酸化物16で構成される表面層12の厚みは30nm以上である。針状酸化物は、先端部の方が基端部よりも小さい原子比率(Cu/O)を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材を覆う表面層と、を備え、
前記表面層は、主成分としてCuOを含有する針状酸化物を含む、リードフレーム。
【請求項2】
前記針状酸化物は、さらにCuOを含有する、請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記針状酸化物で構成される表面層の厚みは30nm以上である、請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
前記針状酸化物は、先端部が当該先端部以外の部分よりも小さい原子比率(Cu/O)を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリードフレーム。
【請求項5】
前記表面層は、前記針状酸化物の周囲にアモルファス状又は微結晶状の酸化膜を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリードフレーム。
【請求項6】
前記基材は銅めっき膜を有しており、前記針状酸化物は前記銅めっき膜から伸びている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリードフレーム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のリードフレームと、
前記リードフレームに搭載される半導体チップと、
前記半導体チップ及び前記リードフレームの少なくとも一部を覆うように設けられる樹脂と、を備える、リードフレームパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リードフレーム、及びリードフレームパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームパッケージは、リードフレームと、その上に搭載された半導体チップと、半導体チップを封止する樹脂とを備える。リードフレームパッケージの製造においては、リードフレームと、その上に搭載された半導体チップとを熱硬化性の樹脂で覆い、これを加熱して硬化させる。リードフレームの中には、半導体チップが搭載される一方面側とは反対側の他方面が露出するタイプのものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−199639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、配線の高集積化及び大電流化により、パッケージの発熱量が増加しており、樹脂とリードフレームの界面剥離の発生が懸念される。また、車載関係のパッケージにおいては、安全性の面から信頼性の更なる向上が求められる。このような事情から、樹脂とリードフレームの密着性をこれまで以上に優れたものとすることが必要である。さらに、パッケージの中には実装時及び使用時に高温環境下に曝されるものもあり、そのような場合には樹脂とリードフレームの密着性を維持することが求められる。
【0005】
そこで、本開示は、樹脂との密着性を高く維持することが可能なリードフレームを提供する。また、信頼性に優れるリードフレームパッケージを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一つの側面において、基材と、基材を覆う表面層と、を備え、表面層は、主成分としてCuOを含有する針状酸化物を含む、リードフレームを提供する。
【0007】
上記リードフレームは、針状酸化物を含む表面層を備える。また、針状酸化物が主成分としてCuOを含有する。CuOは、樹脂の分子構造に含まれる水酸基との間に水素結合を形成することができる。したがって、パッケージ化された後も、高温環境下において樹脂との密着性を高く維持することができる。
【0008】
本開示は、別の側面において、上述のリードフレームと、リードフレームに搭載される半導体チップと、半導体チップ及びリードフレームの少なくとも一部を覆うように設けられる樹脂と、を備える、リードフレームパッケージを提供する。
【0009】
上記リードフレームパッケージは、上述のリードフレームを備えることからパッケージ化された後も、樹脂とリードフレームの密着性を良好に維持することができる。したがって信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、樹脂との密着性を高く維持することが可能なリードフレームを提供することができる。また、信頼性に優れるリードフレームパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、リードフレームの平面図である。
図2図2は、リードフレームの断面の一部を示す断面図である。
図3図3は、リードフレームの製造に用いる表面処理装置の一例を示す図である。
図4図4は、リードフレームパッケージの一例を示す断面図である。
図5図5は、実施例1のリードフレームのBF−STEM像の写真である。
図6図6は、実施例1の針状酸化物の拡大画像のTEM写真である。
図7図7は、実施例1の針状酸化物のEDX分析結果を示すチャートである。
図8図8は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図9図9は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図10図10は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図11図11(A)は、図9に対応する部位のHAADF−STEM像である。図11(B)及び図11(C)は、同じ部位におけるCu(K)及びO(K)のEDXマッピングの結果を示す。
図12図12は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図13図13は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図14図14は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図15図15は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図16図16は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図17図17は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図18図18は、実施例1の針状酸化物のTEM写真である。
図19図19(A)は、図8の「制限視野解析1」における電子回折の回折パターンである。図19(B)は、図8の「制限視野解析2」における電子回折の回折パターンである。図19(C)は、図12の「制限視野解析3」における電子回折の回折パターンである。図19(D)は、図12の「制限視野解析4」における電子回折の回折パターンである。
図20図20(A)は、図12に示される「ナノ回折1」における制限視野ナノ電子回折の回折パターンである。図20(B)は、図12に示される「ナノ回折2」における制限視野ナノ電子回折の回折パターンである。
図21図21は、実施例2における表面層の厚みとシア強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
図1は、リードフレーム100の平面図である。リードフレーム100は、9個(3個×3個)の単位フレーム50を有する。ただし、単位フレーム50の数は特に限定されない。単位フレーム50は、タイバー116を介して隣接する単位フレーム50と連結されている。
【0014】
リードフレーム100は、それぞれの単位フレーム50において中央部に配置されるパッド110と、パッド110の周囲に配置され、インナーリードともいわれる複数のリード112と、パッド110を支持するサポートバー114とを備える。サポートバー114の先端はパッド110に連結され、サポートバー114の後端はリード112の周囲に配置されるタイバー116に連結されている。サポートバー114は、略矩形状のパッド110の四隅から放射状に延在してタイバー116に連結されることによって、パッド110を支持している。
【0015】
図2は、図1に示すリードフレーム100の断面の一部を示す断面図である。リードフレーム100は、基材10と基材10の表面に表面層12とを備える。表面層12は、基材10側から、銅めっき膜14と針状酸化物16とをこの順で備える。針状酸化物16は、基端部において銅めっき膜14に結合している。すなわち、銅めっき膜14から針状酸化物16が伸びている。針状酸化物16は、表面積が大きいうえに、アンカー効果を有するため、樹脂との密着性を十分に向上することができる。
【0016】
針状酸化物16は、針状結晶であり、主成分としてCuOを含有する。これによって、樹脂の分子構造に含まれる水酸基との間における水素結合の数を十分に多くすることができる。また、針状酸化物16はCuOを含有してもよい。CuOも、樹脂の分子構造に含まれる水酸基との間に水素結合を形成することができる。このように、リードフレーム100は、物理的及び化学的な結合によって樹脂との密着性を高く維持することができる。
【0017】
針状酸化物16における原子比率(Cu/O)は、0.6〜2.5であってよく、0.8〜2.2であってよい。このような原子比率であれば、針状酸化物16における酸化銅の比率が十分に高くなり、樹脂との密着性を一層高くすることができる。
【0018】
EDXによるマッピングで観察したとき、針状酸化物16に含まれる成分のうちCuOの存在比率が最も高く、その存在比率は50%を超えてもよい。本開示における「主成分としてCuOを含有する」とは、このようにCuOの存在比率が最も高いことを意味する。針状酸化物16は、実質的にCuOのみ、又は、CuO及びCuOのみから構成されていてもよい。ここでいう「実質的」とは、TEMによる電子回折でその他の化合物が検出されず、且つ、EDX分析においてCu及びO以外の原子(測定機器に由来する原子は除く)が検出されないことを意味する。
【0019】
針状酸化物16は、先端部が当該先端部以外の部分(例えば基端部)よりも小さい原子比率(Cu/O)を有してよい。これによって、先端部において酸素原子の割合が高くなり、樹脂との水素結合の数を多くして密着性を高めることができる。また、基端部において銅原子の割合が高くなり、基材10との接合性が良好となる。このため、リードフレーム100の高温環境下においたときに表面層12と基材10との界面付近に発生する熱応力を小さくすることができる。したがって、表面層12と基材10との界面付近において熱応力による剥離の発生が抑制され、リードフレーム100の信頼性を一層高くすることができる。
【0020】
針状酸化物16は、先端部におけるCuOの含有割合が先端部以外の部分よりも高くてよい。これによって、樹脂との水素結合による密着性向上の効果を一層大きくすることができる。
【0021】
表面層12は、針状酸化物16の周囲にアモルファス状又は微結晶状の酸化膜を含んでよい。酸化膜は、針状酸化物16と同様の組成を有していてよい。酸化膜は、例えば、主成分としてCuOを含有する。酸化膜は、さらにCuOを含有してもよく、実質的にCuOのみ、又は、CuO及びCuOのみから構成されていてもよい。酸化膜も樹脂の水酸基との間に水素結合を形成することによって樹脂との密着性の向上に寄与する。
【0022】
表面層12の厚みは、例えば10〜200nmであってよい。密着力を一層高くする観点から、表面層12の厚みは、30nm以上であってよい。表面層12の厚みは、ポテンショスタットを用いて測定することができる。
【0023】
銅めっき膜14は、通常の銅ストライクめっきであってよい。銅ストライクめっきには、一般に用いられる硫酸銅めっき液を用いることができる。別の実施形態においては、銅めっき膜14はなくてもよい。表面層12が銅めっき膜14を有することによって、基材10の材質選択の自由度を高くすることができる。基材10は、例えば、銅、銅合金又は42合金材で構成されてよい。リードフレーム100は、基材10と銅めっき膜14の間に下地めっき層を有していてもよい。
【0024】
表面層12は、例えば図3に示す表面処理装置を用いて形成することができる。図3の表面処理装置では、60〜80℃の温度範囲にあるアルカリ浴52中を、基材が図3の左から右に向かって移動する。基材の一対の主面に対向するように電極32,42が配置される。基材と電極32,42は、基材が陽極、電極32,42が陰極となるように、それぞれ電源40に接続されている。電源40は直流電源であり、例えば0.1〜1.5A/dmの電流密度で電流を供給するように構成される。表面処理装置における基材の処理時間は、例えば、5〜20秒間である。例えば、銅めっき膜14を有する基材10を表面処理装置で表面処理することによって、リードフレーム100を得ることができる。
【0025】
アルカリ浴52は、例えば、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アミノ化合物、リン酸三ナトリウム、及びイオン交換水を含有する。アルカリ浴52中では、例えば以下のような反応(1)〜(4)が進行する。
【化1】
【0026】
式(1)で生成した水酸化物イオンと基材10に含まれるCuが、式(2)のとおり反応してCuOが生成する。生成したCuOは式(3)に示すように水酸化物イオンと反応してCu(OH)が生成する。このとき、CuOの少なくとも一部は、式(3)で反応せずに、針状酸化物16内に残存してもよい。式(3)で生成したCu(OH)は、式(4)のとおり反応してCuOが生成する。ここで、式(4)が十分に進行しない場合、Cu(OH)の一部が僅かに残存することとなるが、本実施形態ではアルカリ浴52の温度が60〜80℃にあるため、式(4)が十分に進行する。その結果、針状酸化物16はCuO、又は、CuO及びCuOから構成されることとなる。針状酸化物16は、水酸化銅(II)を実質的に含有しないことが好ましい。
【0027】
図4は、リードフレーム100を用いて作製されるリードフレームパッケージの一例を示す断面図である。リードフレームパッケージ200は、所謂QFNタイプのリードフレーム100を備える。リードフレーム100は、パッド110と、パッド110の周囲に配置されるリード112を有する。リードフレームパッケージ200は、リードフレーム100と、パッド110の表面上に設置された半導体チップ70と、半導体チップ70とリード112とを接続するボンディングワイヤ72と、半導体チップ70及びボンディングワイヤ72を封止する樹脂60と、を備える。樹脂60は、半導体チップ70及びリードフレーム100の一方面を覆うように設けられている。一方、リードフレーム100の他方面は樹脂60に覆われておらず、外部に露出している。
【0028】
リードフレーム100は、一方面に針状酸化物を含む表面層を有する。針状酸化物は、主成分としてCuOを含有する。このような表面層は、高温環境下(例えば200〜300℃)においても安定であり、樹脂60と十分に密着する。したがって、リードフレームパッケージ200は信頼性に優れる。
【0029】
図4に示すリードフレームパッケージ200をプリント配線板等の基板に搭載する場合、リードフレーム100の他方面が、プリント配線板の導体とハンダによって接続される。リードフレーム100は、他方面にも表面層を有していてもよく、一方面のみに表面層を有していてもよい。
【0030】
次に、リードフレームパッケージ200の製造方法の一例を説明する。この例では、リードフレーム100の一方面側に半導体チップ70を搭載する搭載工程と、半導体チップ70を封止し、リードフレーム100の一方面を覆うように樹脂60を設ける封止工程とを有する。
【0031】
搭載工程では、リードフレーム100のパッド110に、ダイボンディング用樹脂を用いて半導体チップ70を固定する。次に、半導体チップ70のパッドとリード112とをボンディングワイヤ72を介して接続する。このとき、ボンディングワイヤ72は、ダイボンド用樹脂を用いて固定される。このようにして、リードフレーム100に半導体チップ70を搭載する。
【0032】
封止工程では、半導体チップ70が搭載されたリードフレーム100をモールド金型内に配置する。そして、樹脂組成物(例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂組成物)をモールド金型内に供給する。その後、加熱して、モールド金型内で樹脂組成物を硬化させて樹脂60を形成する。このようにしてリードフレームパッケージ200が得られる。
【0033】
リードフレームパッケージ200は、高温環境下においても樹脂60の密着性を十分良好に維持することができる。このため信頼性に優れる。
【0034】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、リードフレームは、DFNタイプ又はQFPタイプであってもよい。
【実施例】
【0035】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
[リードフレームの作製]
基材(Cu基材)を準備した。基材の電解めっき処理を行い、表面上に銅めっき膜(厚み:0.1μm)を形成した。その後、アルカリ液中で基材の陽極酸化を行った。アルカリ液としては、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アミノ化合物、リン酸三ナトリウム、及びイオン交換水を含有するものを用いた。図3に示すような処理装置を用い、60〜80℃のアルカリ液中、基材を所定の速度で走行させて、0.8〜1.1A/dmの電流密度で表面処理を行った。アルカリ液中の基材の滞留時間は5〜20秒間とした。
【0037】
上述の表面処理によって、基材の銅めっき膜の表面に針状酸化物が形成された。このようにして実施例1のリードフレームを得た。得られたリードフレームの針状酸化物の組成を以下の手順で分析した。
【0038】
[リードフレームの分析]
<STEM画像観察、TEM画像観察、及びEDX分析>
リードフレームの表面に炭素膜及びタングステン膜を順次形成した。炭素膜は高真空蒸着装置を、タングステン膜はFIB装置を用いてそれぞれ形成した。FIBマイクロサンプリング法にてリードフレームを加工し、FIB加工によって薄片化を行って測定試料を得た。測定試料のSTEM画像及びTEM画像の観察、並びにEDX分析を行った。
【0039】
図5は、BF−STEM像の写真(倍率:2.5万倍)を示している。図5に示されるとおり、実施例1のリードフレームは、針状酸化物と、針状酸化物に付着する酸化膜と、を含む表面層を備えることが確認された。
【0040】
図6は、針状酸化物の拡大画像のTEM写真(倍率:35万倍)である。図6の点1,点2,点3においてEDX分析を行った。点3は、針状酸化物の先端部に位置し、点1,2は点3よりも基端部側に位置する。EDX分析には、日本電子製のEDX分析装置(装置名:JED−2300T)を用いた。加速電圧は200kV、ビーム径は約1nmとした。
【0041】
図7は点3におけるEDXの分析結果を示すチャートである。図7中、Cは保護膜に由来するピークであり、Moのピークは試料保持用メッシュに由来するピークである。図7に示すようにとおり、針状酸化物からはCuとOのみが検出された。点1,2においても、図7と同様にCuとOのみが検出された。EDXの分析結果に基づく、点1,2,3におけるCuとOの半定量結果を表1に示す。表1の結果によれば、針状酸化物の先端部の方が、当該先端部以外の部分よりもCu/Oの値が小さくなっていた。
【0042】
【表1】
【0043】
図8は、図6及び図7とは別の部分における針状酸化物の拡大画像のTEM写真(倍率:35万倍)である。図9は、図8のうち、針状酸化物による被覆部分の拡大画像のTEM写真(倍率:100万倍)である。図10は、図9の写真に含まれる針状酸化物をさらに拡大して示す画像のTEM写真(倍率:300万倍)である。図8図10に示すとおり、リードフレームの表面層は、針状酸化物とその周囲に酸化膜とを含んでいた。図10の点4,5,6においてEDX分析を行った。点4は、点5よりも針状酸化物の先端部側に位置する。
【0044】
点4,5,6においても、図7と同様にCuとOが検出された。これらの分析結果に基づく、点4,5,6におけるCuとOの半定量結果を表2に示す。表2の点4,5の結果によれば、針状酸化物の先端部側の方が基端部側よりもCu/Oの値が小さくなっていた。酸化膜の組成を示す点6でも図7と同様にCuとOのピークのみが検出され、CuOを主成分とすることが確認された。
【0045】
【表2】
【0046】
図11(A)は、図9に対応する部位のHAADF−STEM像である。図11(B)及び図11(C)は、同じ部位におけるCu(K)及びO(K)のEDXマッピングの結果を示す。図11(A)に示すとおり、表面層は針状酸化物と針状酸化物に付着する酸化膜とを有する。EDXマッピングの結果によれば、針状酸化物と酸化膜は、殆どがCuOの組成に近い比較的均一な組成であった。このように、針状酸化物と酸化膜は主成分としてCuOを含有していた。
【0047】
図12は、針状酸化物のさらに別の部分における拡大画像のTEM写真(倍率:35万倍)である。図13は、図12に示される針状酸化物の一部をさらに拡大して示す画像のTEM写真(倍率:100万倍)である。図14及び図15は、図13の写真に示される針状酸化物の一部をさらに拡大して示す画像のTEM写真(倍率:300万倍)である。図12図15に示すとおり、リードフレームの表面層は、針状酸化物とその周囲に酸化膜とを含んでいた。図14の点7、及び図15の点8,9においてEDX分析を行った。点7,8,9のうち、点7が最も基端部側に位置し、点8が最も先端部側に位置する。
【0048】
点7,8,9においても、図7と同様にCuとOのみが検出された。これらの分析結果に基づく、点7,8,9におけるCuとOの半定量結果を表3に示す。表3でも、針状酸化物の先端部の方が当該先端部以外の部分よりもCu/Oの値が小さくなっていた。
【0049】
【表3】
【0050】
図16は、針状酸化物のさらに別の部分における拡大画像のTEM写真(倍率:35万倍)である。図17は、図16に示される針状酸化物の一部をさらに拡大して示す画像のTEM写真(倍率:100万倍)である。図18は、図17の写真に示される針状酸化物の一部をさらに拡大して示す画像のTEM写真(倍率:300万倍)である。図16図18に示すとおり、リードフレームの表面層は、針状酸化物とその周囲に酸化膜とを含んでいた。図18の点10,11,12においてEDX分析を行った。点10,11,12のうち、点10は先端部に位置し、点11,12は当該先端部以外の部分に位置する。
【0051】
EDX分析の結果、点10,11,12においても、図7と同様にCuとOのみが検出された。これらの分析結果に基づく、点10,11,12におけるCuとOの半定量結果を表4に示す。表4に示すとおり、針状酸化物の先端部の方が当該先端部以外の部分よりもCu/Oの値が小さくなっていた。
【0052】
【表4】
【0053】
<電子回折解析>
図8に示される「制限視野解析1」及び「制限視野解析2」、並びに、図12に示される「制限視野解析3」及び「制限視野解析4」の領域において、制限視野電子回折を行った。図19(A)〜(D)に、それぞれの制限視野における回折パターンを示す。得られたデバイリングから面間隔を測定した。測定結果を表5に纏めて示す。表5に示すとおり、いずれの面間隔も、CuO及びCuOの面間隔の理論値とほぼ整合した。これらの結果から、針状酸化物は、CuO及びCuOを含有することが確認された。一方、Cu(OH)のミラー指数<020>、<021>に対応する回折スポットは確認されなかった。
【0054】
【表5】
【0055】
<ナノ電子回折>
図12に示される「ナノ回折1」及び「ナノ回折2」の位置において、制限視野ナノ電子回折を行った。図20(A)及び図20(B)に、それぞれの制限視野におけるナノ電子回折パターンを示す。得られたナノ電子回折パターンから面間隔を測定した。測定結果を表6に纏めて示す。表6に示すとおり、いずれの面間隔も、CuO及びCuOの面間隔の理論値とほぼ整合した。これらの結果から、針状酸化物は、CuO及びCuOを含有することが確認された。
【0056】
【表6】
【0057】
<表面層の厚みとシア強度の測定>
ポテンショスタット(商品名:HSV−100(北斗電工製))を用いて、実施例1のリードフレームの表面層の厚みを測定した。その結果、表面層の厚みは63nmであった。リードフレームのパッドの上に接着剤を介してシリコンチップをマウントした。その後、大気中で260℃に加熱しながらパッドからシリコンチップを剥がす際のシア強度を、4000Plusボンドテスター(Nordson DAGE社製)を用いて測定した。シア速度は100μm/s、シア高さは100μmとした。n=12で測定を行ったところ、シア強度の平均値は5.81MPaであった。
【0058】
(比較例1)
実施例1で用いたものと同じ基材(Cu基材)を準備した。実施例1と同様にして基材の電解めっき処理を行い、表面上に銅めっき膜(厚み:0.1μm)を形成した。これを比較例1のリードフレームとした。
【0059】
実施例1と同様に、ポテンショスタットを用いて、比較例1のリードフレームの表面層(銅めっき膜)の厚みを測定した。その結果、表面層の厚みは1.9nmであった。リードフレームのパッドの上に接着剤を介してシリコンチップをマウントした。その後、大気中で260℃に加熱しながらシリコンチップを剥がす際のシア強度を実施例1と同じ方法で測定した。n=12で測定を行ったところ、シア強度の平均値は1.73MPaであった。実施例1の方が比較例1よりもシア強度が大幅に高いことが確認された。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同様の手順で、表面層の厚みが異なる複数種類のリードフレームを作製した。表面層の厚みは、表面処理の電流密度を調節することによって変更した。表面層の厚みは、ポテンショスタットを用いて測定した。それぞれのリードフレームのシア強度を、実施例1と同様にして測定した。図21に、表面層の厚みとシア強度の関係を示す。図21には比較例1及び実施例1のシア強度もプロットした。この結果から、表面層の厚みを大きくすることで、シア強度を十分に大きくできることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示によれば、高温環境下においても樹脂との密着性に優れるリードフレームが提供される。また、信頼性に優れるリードフレームパッケージが提供される。
【符号の説明】
【0062】
10…基材、12…表面層、14…銅めっき膜、16…針状酸化物、32,42…電極、40…電源、50…単位フレーム、52…アルカリ浴、60…樹脂、70…半導体チップ、72…ボンディングワイヤ、100…リードフレーム、110…パッド、112…リード、114…サポートバー、116…タイバー、200…リードフレームパッケージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21