【解決手段】負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁1’にて、水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部6を有し、流入する水の圧力によってコイルバネ11の付勢力に抗して最前進位置まで移動することにより、シリンダ部2の端部閉塞部分の内面側に密接し、流量を制限する流量制御弁1’にて、ピストン部6が最前進位置で閉塞部分6’と密接する時、ピストンに設置した弾性緩衝材13により、衝撃を吸収する構造とした。
前記ピストン部は、その前端面における部分をピストン部の本体部分から分割し、該分割部分は、前記弾性緩衝材を介して設置され、ピストン部の移動方向に移動自在に保持したことを特徴とする請求項2記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
前記分割部分には、前記ピストン部が最前進位置で前記閉塞部分と密接する面に溝を設置し、密着時に少量の流路を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【背景技術】
【0002】
従来における消火設備として、スプリンクラーヘッドの破損等が生じた場合に漏水を防止し、且つ火災発生時に速やかに放水する機能を有する、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備がある。
【0003】
図8は斯かる負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。該図において100は負圧湿式予作動スプリンクラー設備である。
【0004】
101は消火水槽102から送水ポンプ103を介して立ち上がって配管された一次側配管である。104は前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管である。
【0005】
106は前記一次側配管101と二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置である。107は天井部に設置された、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器である。
【0006】
108は前記二次側配管104に一端側108Aを接続すると共に、他端側108Bを、真空ポンプ109から立ち上がって配管された吸気管110と、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管111とに接続された吸引管である。
【0007】
112は前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常監視時には少量の、配管破損やスプリンクラーヘッド破損等の異常時には多量の流通量とし、放水時には閉止する流量制御弁である。また、該流量制御弁112は、
図9及び
図10に示すオリフィス付き自動弁であり、口径40Aの直動式電磁弁のものがある。そしてまた一例として、その定格はDC24ボルト、1,580mAのものがある。
【0008】
また、該流量制御弁112であるオリフィス付き自動弁は、
図9に示す如く、二次側配管104内の負圧の状態の正常時(緩慢な圧力上昇)には、入口側の開口112aから本体内に流入した水を含んだ空気は、矢標で示すようにオリフィス(小孔)112Aを通過することによって少量が出口側の開口112bに流れるようにされている。そしてまた、二次側配管104内の負圧の状態の異常時(圧力の急上昇)には、
図10に示す如く、通電によって電磁コイル112c及びプランジャ112dを介して弁体112eを上昇させ、開放された本来の流路112Bを通って多量が出口側の開口112bに流れるようにされているものである。
【0009】
また、
図8において113は前記吸引管108の途中部における前記流量制御弁112より二次側配管104側の位置に設置された、二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチである。
【0010】
114は火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤である。
【0011】
115は前記信号受信盤114からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と二次側配管104とを連通状態とすると共に、前記送水ポンプ103を作動させる制御盤である。尚、その他図中116は前記吸気管110の前記吸引管108への接続部分に設置した気水分離器、117は前記吸引管108の前記吸気管110と排水管111との接続部分に設置した逆止弁である。
【0012】
そして、火災発生時以外の時には一次側配管101と二次側配管104のいずれにも水が充填されており、且つ二次側配管104内を、吸引管108及び吸気管110を介して真空ポンプ109で負圧状態とするものである。
【0013】
また、火災発生時には、火災感知器107が火災を感知して火災信号を信号受信盤114に送信し、そして該信号受信盤114から該信号を制御盤115に送信する。該信号を受信した制御盤115は予作動式流水検知装置106を開状態とすると共に送水ポンプ103を作動させる。これによりスプリンクラーヘッド105から放水が連続して行われるものである。尚、斯かる際には、流量制御弁112であるオリフィス付き自動弁は、
図9に示す平常時の状態であって、真空ポンプ109の作動は停止される。
【0014】
従来における負圧湿式予作動スプリンクラー設備は上記の通りである。しかし、斯かる設備には二次側配管内の負圧の状態を適正に保持する構成において問題がある。それは、吸引管108の途中部に設置された流量制御弁112としてオリフィス付き自動弁を用いていることによるものである。
【0015】
而して、斯かるオリフィス付き自動弁は電磁弁であり、そして、斯かる電磁弁は、無通電時には閉止し、通電時に開放するなど制御方法がシンプルであるというメリットがある一方、消費電流が大きく、且つ弁体の開放中は通電し続けなければならず、大きな電源が必要となる。そして、上記の如く、従来の設備に用いられていたオリフィス付き自動弁は、口径40Aの直動式電磁弁のものがあり、そしてまた一例として、その定格はDC24ボルト、1,580mAのものがあり、消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であった。
【0016】
また、従来用いられていた電磁弁は、上記の通り消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であることから、停電時における問題もある。即ち、停電時において、二次側配管の破損等で二次側配管内の圧力が急上昇する事態が起き、弁を開放させる必要が生じることがあるが、その場合に備えて容量の大きい蓄電池を設けるか、非常電源設備による給電を行うなどの対策が必要であった。しかし、容量の大きい蓄電池を設ける場合には、蓄電池自体の大きさだけでなく、それを収納する制御盤の大きさも大きくなり、コストも増えることになる。また、非常電源設備による給電を行う場合には、予め非常電源設備の設計の際に電源容量を見込む必要があり、設備のリニューアルに対応できない等の問題があった。
【0017】
そこで、本発明者は、上記負圧湿式予作動スプリンクラー設備において、それに用いる二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁として、電力消費の大きい従来のオリフィス付き自動弁に替わる電力不要の流量制御弁を、先に案出した。そして、これを用いることにより上記従来の問題点を悉く解消することができるようになった。
【0018】
而して、本発明者が先に案出した流量制御弁は、
図6及び
図7に示した通りである。該図において、1は流量制御弁である。2は両端部が閉塞2A、2Bされ、一方側の端部側面に設けた流入口3から流入する水を含んだ空気が他方側の端部の閉塞部分2Bに設けた流出口4及び該流出口4の内側に連成された該流出口4より小径の開口5から流出するシリンダ部である。尚、該シリンダ部2の一方側の端部側面に設ける流入口3は、シリンダ部2自体に設ける場合と、図示はしないがシリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aを大きくしてこれに設ける場合とがある。6は前記シリンダ部2内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部であり、流入する水の圧力によって後記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその閉塞部分が前記シリンダ部2の閉塞部分2Bの内側面に密接するようになされたものである。また、該ピストン部6は、一端部が閉塞6′された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部2の内径と等しいフランジ部6Aを形成し、閉塞部分6′の、シリンダ部2における他方側の端部の閉塞部分2Bとの対向面に、ピストン部6における閉塞部分6′がシリンダ部2における他方側の端部の閉塞部分2Bに密接した状態において、両閉塞部分6′、2Bの間に、ピストン部6の外周とシリンダ部2における閉塞部分2Bの開口5との間に少量の流通量の流路を形成する溝7を設けると共に、円筒状部分に大径の開口8を設けてなるものである。
【0019】
9は前記シリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aに摺動自在に貫挿した点検棒であり、前記シリンダ部2内において後記コイルバネの付勢力に抗して前記ピストン部6をその最前進位置まで押し出すものである。また、該点検棒9は前方側の一方の端部を前記ピストン部6の閉塞部分6′に接続している。また、該点検棒9の軸方向の略中央部には後退位置を規制するストッパ9Bが形成されると共に、シリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aから突出する後方側の他方の端部には、該シリンダ2の閉塞部分2Aから該点検棒9を囲むように突設した筒状部10に出没するフランジ部9Aを形成している。
【0020】
11は前記点検棒のフランジ部9Aと前記シリンダ部2の閉塞部分2Aとの間に縮設したコイルバネであり、前記点検棒9を介して前記ピストン部6を後退位置に向けて押圧付勢するものである。
【0021】
そして、該コイルバネ11の弾発力(バネ定数)は、火災発生時において二次側配管104内に一次側配管101から水が供給され、該水の一部が吸引管108内に流入した時の圧力によってのみ縮小する程度であることを要する。したがって、流入口3から水が流入し、その圧力が該コイルバネ11の付勢力を超えている状態でピストン部6は前進移動が行われることになるものである。尚、該コイルバネ11は、図示はしないが、前記ピストン部6のフランジ部6Aと前記シリンダ部2の他方側の端部の閉塞部分2Bとの間に設ける場合もある。
【0022】
また、前記筒状部10と前記点検棒9のフランジ部9Aとをもって点検棒の変位量の測定手段12が構成されており、筒状部10の突出端面10aと点検棒9のフランジ部9Aの外端面9A′との間隔L1を、ピストン部6が後退位置にある時における該ピストン部6の閉塞部分6′とシリンダ部2の他方側の端部の閉塞部分2Bとの相互間隔L2に対応する間隔とするようになしている。これにより点検棒10の動きを通してシリンダ部2内のピストン部6の動きや位置を外部から確認することができることになるものである。
【0023】
また、上記流量制御弁1の作用は、次の通りである。
火災発生時以外のときにおける二次側配管の温度変化による体積膨張や流量制御管等からの微少な空気流入等による緩慢な圧力上昇がある時は、
図6に示す如く、ピストン部6は後退位置にあり、シリンダ部2の流入口3から流入した水を含んだ空気は、ピストン部6の大径の開口8を通ってシリンダ部2の開口5と流出口4から流出する。
【0024】
また、スプリンクラーヘッド等が破損して二次側配管内の圧力が急速に上昇したときには、ピストン部6は
図6と同じ後退位置にあって、真空ポンプ109が作動する。そして、この吸引によって漏水が防止される。尚、その際において真空ポンプ109の吸引力はコイルバネ11の弾発力より低いためピストン部6は移動しない。
【0025】
また、火災発生時において一次側配管101から二次側配管104に水が供給され、その水の一部が吸引管108内に流入すると、
図7に示す如く、その水の圧力によってコイルバネ11の付勢力に抗してピストン部6が最前進位置まで移動し、その閉塞部分6′がシリンダ部2の閉塞部分2Bの内側面に密接する。また、この時においては真空ポンプ109は作動しない。そして、これにより水はピストン部6の溝7を通じて少量しか流れず、スプリンクラーヘッド105からの充分な放水が確保される。尚、ピストン部6の溝7から引き続き水が流出するが、該溝7からの流通量は少ないことから流出の影響は少ない。
【0026】
そして、消火完了後、予作動式流水検知装置106が閉止すると、ピストン部6の溝7から水が流出することで二次側配管104内の圧力が減少し、ピストン部6はコイルバネ11によって再び後退位置に戻される。
【0027】
以上の如く、上記流量制御弁1は、電力を要することなく作動するものである。
【0028】
また、上記流量制御弁1は、定期的に点検し、加圧水を流入させることなくピストン部6の動作を確認することができるようにした構成も備えている。
【0029】
斯かる構成は、ピストン部6が後退位置にあって、流入口3から水を含んだ空気が流入し、これらが該ピストン部6の大径の開口8を通ってシリンダ部2の開口5と流出口4から流出する状態が長期間にわたって継続すると、ピストン部6の周囲やシリンダ部2の内面において水に含まれるカルシウムや不純物が析出したり、ゴミが付着し、実際の火災発生時においてピストン部6が正常に動作しない事態が起こる虞があることから、これを防ぐためのものである。
【0030】
而して、該構成は、前記の通り、シリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aに、前記シリンダ部2内において前記コイルバネ11の付勢力に抗して前記ピストン部6をその最前進位置まで押し出す点検棒9を備えた構成である。
【0031】
そして更に、前記の通り、筒状部10と点検棒9のフランジ部9Aとをもって点検棒の変位量の測定手段12が構成されており、筒状部10の突出端面10aと点検棒9のフランジ部9Aの外端面9A′との間隔L1を、ピストン部6が後退位置にある時における該ピストン部6の閉塞部分6′とシリンダ部2の他方側の端部の閉塞部分2Bとの相互間隔L2に対応する間隔とするようになしているから、点検棒9の動きを通してシリンダ部2内のピストン部6の動きや位置を外部から確認することができることになるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁1は、上記の如き構成、作用であり、そして上記の通りの効果を奏するものではあるが、本発明者は更にピストン動作時における騒音等の面から検討し、これらを改善すべく鋭意研究した結果、本発明の完成をみるに至ったものである。
【0033】
即ち、本発明者が先に案出した流量制御弁1においては、ピストン部6とシリンダ部2とがいずれも金属同士であるため、ピストン部6が水圧によって最前進位置まで押し出されると、その閉塞部分6′とシリンダ部2の閉塞部分2Bの内側面とが激しく衝突し、大きな衝撃音が発生する。そして、この大きな衝撃音は騒音レベルであり、周囲に迷惑がかかることになるものである。
【0034】
そこで、本発明者はこの問題点を改善すべく更に鋭意研究した結果、ピストン部におけるシリンダ部の閉塞部分の内側面に衝突する部分に衝撃緩衝機能を持たせるようになすことにより、衝撃音の大幅な低減を図ることができることを知見し、本発明の完成をみるに至ったものである。また、これにより更に加えて、ピストン部とシリンダ部の閉塞部分とが密接した状態にあるときにおいて、より良好な密着性を得ることもできるようになるものである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
而して、本発明の要旨とするところは、
予作動式流水検知装置と該予作動式流水検知装置の一次側に設けられ、基端側に給水手段が接続される一次側配管と、
該予作動式流水検知装置の二次側に設けられ、スプリンクラーヘッドが接続された二次側配管と、該二次側配管を負圧とする真空ポンプと該二次側配管と真空ポンプを接続する吸気管と、
前記二次側配管と前記吸気管との接続部に設けられ、
前記二次側配管から前記吸気管に流入する空気と水が通過する本体部と、該本体に設けたシリンダ部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、
前記ピストン部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部の内径と等しいフランジ部を形成し、閉塞部分に前記シリンダ部における他方側の端部の閉塞部分の開口より小径の開口を設けると共に、円筒状部分に該開口より大径の開口を設けてなり、
流入する水の圧力によって前記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその閉塞部分が前記シリンダ部における他方側の端部の閉塞部分の内面側に密接するようになされる流量制御弁において、
前記ピストン部が最前進位置で前端部閉塞部分と密接する時、弾性緩衝材により密接衝撃を吸収する構造を有することを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁
にある。
【0036】
また、上記構成において、前記弾性緩衝材は、前記ピストン部に設置されるように構成することができる。
【0037】
また、上記構成において、前記ピストン部は、その前端面における部分をピストン部の本体部分から分割し、該分割部分は、前記弾性緩衝材を介して設置され、ピストン部の移動方向に移動自在に保持するように構成することができる。
【0038】
そしてまた、上記構成において、前記分割部分には、前記ピストン部が最前進位置で前記閉塞部分と密接する面に溝を設置し、密着時に少量の流路を形成するように構成することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明は上記の如き構成であり、ピストン部を、その前端面における溝を形成した部分をピストン部の本体部分から分割し、該分割部分を、弾性緩衝材を介してピストン部の移動方向に移動自在に保持したものであるから、ピストン部が水圧によって急速に前進し、その前端部がシリンダ部の閉塞部分の内側面と激しく衝突する時において、衝突の衝撃を弾性緩衝材によって緩和することができ、もって衝突の際に発生する大きな衝撃音を大幅に低減し、騒音レベルまでにならないようにすることができるものである。また、ピストン部の分割部分の背面には弾性緩衝材が配設されていることから、該ピストン部の分割部分は弾性緩衝材の復元力によって背面側からシリンダ部の閉塞部分側に向けて押し付けられることになり、もってピストン部の分割部分とシリンダ部の閉塞部分とが密接した状態において両者の密着度を一段と高めることができることになるものである。