特開2020-69454(P2020-69454A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-69454(P2020-69454A)
(43)【公開日】2020年5月7日
(54)【発明の名称】電気パルス解体方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/18 20060101AFI20200410BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20200410BHJP
【FI】
   B02C19/18 B
   B02C19/18 Z
   B09B3/00 ZZAB
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-206987(P2018-206987)
(22)【出願日】2018年11月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「製品ライフサイクル管理とそれを支える革新的解体技術開発による統合循環生産システムの構築」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100119312
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 栄松
(74)【代理人】
【識別番号】100178445
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 淳二
(74)【代理人】
【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194892
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 麻美
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】所 千晴
(72)【発明者】
【氏名】浪平 隆男
【テーマコード(参考)】
4D004
4D067
【Fターム(参考)】
4D004AA22
4D004CA02
4D004CA04
4D004CA44
4D004CB50
4D067CD05
4D067CG01
4D067GA16
4D067GA18
4D067GA20
(57)【要約】
【課題】絶縁体と導体が結合または接合された対象物を、絶縁体と導体に効率的に分解する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】絶縁体と導体が結合または接合された対象物2の表面の離間した位置に複数の電極9,10を当接し、前記電極9,10間に電圧を印加して前記対象物2を絶縁体と導体に分解する。また、絶縁体と導体が結合または接合された対象物2の結合部位または接合部位に、良導体からなる細線を配設し、前記細線の両端に電圧を印加して前記対象物2を絶縁体と導体に分解することで課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体と導体が結合または接合された対象物の表面の離間した位置に複数の電極を当接し、前記電極間に電圧を印加して前記対象物を絶縁体と導体に分解することを特徴とする電気パルス解体方法。
【請求項2】
前記導体が締結部材または接合部材であることを特徴とする請求項1記載の電気パルス解体方法。
【請求項3】
前記絶縁体がプリント配線基板であることを特徴とする請求項1記載の電気パルス解体方法。
【請求項4】
前記対象物が携帯通信端末であることを特徴とする請求項1記載の電気パルス解体方法。
【請求項5】
前記対象物が冷蔵庫の構成部材であることを特徴とする請求項1記載の電気パルス解体方法。
【請求項6】
絶縁体と導体が結合または接合された対象物の結合部位または接合部位に、良導体からなる細線を配設し、前記細線の両端に電圧を印加して前記対象物を絶縁体と導体に分解することを特徴とする電気パルス解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気パルスにより、絶縁体と導体が結合または接合された対象物を解体する電気パルス解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
故障や製品ライフサイクルの変化に伴い使用されなくなった通信端末機器や家電製品などは、業者により回収された後、分解・解体してリサイクルやリユースすることが求められている。従来、この種の作業は人手による分解を経た後、破砕機などで物理的に解体されることが多かった。しかし、そのような作業では人手を多く要し、解体後の部材のリサイクルやリユースにも問題があった。
【0003】
このような事情から、近年では液体中においてパルスパワー放電を起こすことにより、対象物を分解する方法が種々提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には次の発明が記載されている。周囲液体ならびに再使用すべき材料及び/または製品を含む反応器中にある少なくとも2つの電極間に一連の放電を発生させ、前記一連の放電が、前記放電のエネルギ、周波数の結果、ならびに前記電極間の電圧及び切換時間により、前記反応器中で処理すべき前記材料及び/または製品全体にわたって伝搬する機械的衝撃波を生じさせる、材料及び/または製品をパルス状電力により再使用するための方法であって、発生した前記機械的衝撃波により弱体化させる第一工程の後、放電が前記放電の直接的効果により前記材料の粉砕を行うように放電のエネルギ、放電を発生する電極間の電圧、切換時間及び放電周波数が選択された一連の放電に前記材料及び/または製品を晒す方法。
【0005】
また、特許文献2には次の発明が記載されている。非金属成分または部分的に金属成分から凝結された固体を粉砕し、電気エネルギ蓄積器を迅速に放電することにより均質の非金属固体を細分化する方法であって、前記固体を非導電性または弱導電性の処理用液体に浸し、前記処理用液体は容器中に収容されており、かつ該処理用液体中では、高電圧電極およびアース電極から成る装置が、該処理用液体と固体から成る混合物の中へ突出しており、前記電極の端部は相互に所定の間隔を有する形式の方法において、高電圧電極の端部とアース電極の端部との相互間に、所定のステップからなる高電圧パルスを印加し、液体中に発生する衝撃波によって、固体を粉砕・細分化する方法。
【0006】
さらに、特許文献3には次の発明が記載されている。高電圧放電を用いた、流し込み可能な材料を破片化および/または弱化するための方法であって、a)1つまたは複数の高電圧発生器に対応配置されており、該高電圧発生器により高電圧パルスを供給可能な電極ユニットを用意するステップと、b)流し込み可能な材料から成る材料流を、該材料流を運ぶ搬送装置により、前記電極ユニットのそばを通過させて案内し、このとき前記材料流を、処理液中に浸漬させるステップと、c)前記材料流を、前記電極ユニットのそばを通過させて案内する間に、前記電極ユニットに高電圧パルスを供給することで、高電圧による絶縁破壊を、前記材料流を貫いて生じさせるステップと、を有し、前記電極ユニットの各電極は、上方から前記処理液中に浸漬されており、前記高電圧による絶縁破壊が間に生ぜしめられる前記各電極は、それぞれ材料通過案内方向に対して横方向に所定の電極間隔をあけて向かい合っている、流し込み可能な材料を破片化および/または弱化するための方法。
【0007】
また、特許文献4には次の発明が記載されている。液体中で複数回放電を行うことにより基板もしく前記は基板を含む物品を分解する物品の分解方法であって、液体を保持する容器と、前記容器内の前記液体中に正電極とアース電極とを有し、かつ前記液体中の前記正電極と前記アース電極間の放電経路若しくは放電によって発生する衝撃波が伝播する領域に前記基板もしくは前記基板を含む物品を設置した状態で、放電時に前記放電経路を流れる放電電流のピーク値を計測し、計測した前記放電電流のピーク値が一定となるように放電条件を制御する物品の分解方法。
【0008】
しかし、前記特許文献に記載された発明は、いずれも水などの液体媒体中において解体するものであって、大気中で解体を行うものではない。また、いずれの発明も放電経路に対するランダム性が高く、選択的、局所的に解体するものではない。したがって、一定の大きさを有する対象物の特定部位を選択的、局所的に解体するのは困難という問題があった。
【0009】
さらに、高電圧パルスの照射回数を多くして対象物全体を解体すると、必要以上に細かく粉砕されることになる。たとえば、プリント基板を従来技術により解体すると、図9に示す左側の状態から右側の状態になる。このように不必要な部位まで細かく解体されることに伴い、解体に要するエネルギ量が大きくなるという問題があった。
【0010】
また、液体中において大きな衝撃波を受けることにより解体された部品の機能に障害を生じる場合があり、部品をリユースする際に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2012−517892号公報
【特許文献2】特開平9−75769号公報
【特許文献3】特表2018−506429号公報
【特許文献4】特開2017−104796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述した事情に照らし、一定の大きさを有する対象物の特定部位を選択的、局所的に解体することができ、大気中であっても解体可能な解体方法を提供することを目的とする。また、解体に要するエネルギ量が少なく、解体を短時間で行うことができる解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、絶縁体と導体が結合または接合された対象物の表面の離間した位置に複数の電極を当接し、前記電極間に電圧を印加して前記対象物を絶縁体と導体に分解することを特徴とする電気パルス解体方法である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載の電気パルス解体方法において、前記導体が締結部材または接合部材であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1記載の電気パルス解体方法において、前記絶縁体がプリント配線基板であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1記載の電気パルス解体方法において、前記対象物が携帯通信端末であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1記載の電気パルス解体方法において、前記対象物が冷蔵庫の構成部材であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の発明は、絶縁体と導体が結合または接合された対象物の結合部位または接合部位に、良導体からなる細線を配設し、前記細線の両端に電圧を印加して前記対象物を絶縁体と導体に分解することを特徴とする電気パルス解体方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一定の大きさを有する対象物の特定箇所を選択的、局所的に解体することができる。また、水などの液体中に限らず、大気中でも解体することができることから、液体を注入する容器を必要としない。さらに、解体に必要なパルスの照射回数および消費するエネルギ量が少なくて済み、解体作業を短時間で行うことができる。また、解体された部品の機能を害することが少なく、解体された機能部品のリユース率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の概略構成を示す図面である。
図2】第1の実施形態による対象物の解体前後を示す図面である。
図3】第2の実施形態による対象物の解体前後を示す図面である。
図4】第3の実施形態による対象物の解体前後を示す図面である。
図5】第4の実施形態による対象物の解体前を示す図面である。
図6】第4の実施形態による対象物の解体後を示す図面である。
図7】第5の実施形態による対象物の解体後を示す図面である。
図8】第5の実施形態による対象物の解体後を示す図面である。
図9】従来技術による対象物の解体前後を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
電気パルス法による解体原理については、すでに知られていることであるが、簡単に説明するとつぎのようになる。解体対象物に高電圧パルスを照射して対象物を解体できるのは、(1)ストリーマの進展→絶縁破壊→アーク放電によるマイクロ爆発→音響インピーダンスの差による引っ張り力の発生による、(2)空気または水など媒質による衝撃波による、ものである。
【0022】
本発明は、この電気パルス法を用いるものであり、解体する対象物の表面の離間した位置に一対の電極を当接し、電極間にパルス状の高電圧を印加して対象物を解体するものである。前記(1)の原理と(2)の原理とを併用しつつ調和を図ったことに一つの特徴がある。
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の概略構成を示す図である。本発明に用いる高電圧パルス発生装置1は新規なものではなく、公知の高電圧パルス発生装置を用いることができる。例えば特開昭56−139090号公報に記載されたマルクス昇圧回路を使った高電圧パルス発生装置を使用することができる。
【0024】
比較的大きな家電製品の部材を解体する場合であれば、対象物2を床や作業台3上に載置したままの状態で解体することも可能であるが、携帯通信端末などを解体する場合には対象物2を作業台3上に保持するのが好ましい。
【0025】
解体する対象物2の数量が少ない場合であれば、万力を用いて対象物2を挟持することができるが、解体する対象物2の数量が多い場合には専用の作業台3を用いるのが好適である。作業台3は図1に示すように、基台4と基台4の上に設けられる一対の挟持具5,6とからなる。一対の挟持具5,6の一方5は基台4上に固定され、他方の挟持具6は基台4上でスライド可能に構成されている。
【0026】
解体の作業効率を高めるためには、空圧機器を用いて挟持具6をスライドさせ、対象物2を挟持するのが好ましい。なお、作業台3の周囲は安全性を確保するため、金属板や樹脂板によって囲まれる。
【0027】
高電圧パルス発生装置1の出力端子にはケーブル7,8を用いて一対の電極9,10が接続される。一対の電極9,10は正負極が独立に配置可能であって、解体する対象物2の表面の任意の位置に当接することができるように構成されている。具体的には正極9と負極10は別々のホルダー(図示省略)によって保持され、該ホルダーはマグネットなどにより作業台3に固定される。したがって、各電極を対象物2の表面の任意の位置に簡単に当接することができる。すなわち、一対の電極9,10を対象物2の表裏面に別々に当接することもできるし、一対の電極9,10を対象物2の表裏同一面に当接することも容易に行うことができるようになっている。
【0028】
また、本発明では液体媒質を注入する容器を必要としないため、一対の電極9,10を対象物2の任意の位置に当接する作業を容易に行うことができる。
【0029】
[第1の実施形態]
図2の上段の写真は、使用済の家電製品について、手作業などにより大きな部品に分解した後に残った比較的小さな部材の解体前の状態を示している。棒状の樹脂部材11の2箇所に金属ねじ12が結合されている。
【0030】
図2の下段の写真は、前記使用済の家電製品の比較的小さな部材について、本発明により解体した後の状態を示している。金属ねじ12が結合された樹脂部材11の両側に一対の電極を当接し、45kVの高電圧パルスを1回だけ照射したものである。大気中での実施にも拘わらず、金属ねじ12の1本は樹脂部材11から解体されている。電極を当接する箇所は、樹脂部材11に結合された金属ねじ12の近傍が好ましいが、事情により金属ねじ12の近傍に当接できない場合であっても、高電圧パルスを数回照射することで解体することができる。樹脂部材11のうち、金属ねじ12が結合された部位が局所的に解体されることから、解体に要するエネルギと解体時間を低減することができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図3の上半部の写真は、電卓の樹脂製の筐体13の裏蓋面に、高電圧パルスを照射する一対の電極を当接し、裏蓋のみを局所解体した状態を示すものである。大気中で35kVの高電圧パルスを1回だけ照射した。筐体13の表面に設けられた操作スイッチボタンやLED表示器は外れているものの、筐体13の全体形状は解体されていないことが分かる。
【0032】
図3の下半部の写真は、筐体13を局所解体した後、筐体13の内部から取り出したプリント基板14の状態を示している。プリント基板14は全体として当初の形状を維持しており、実装された電子部品も当初の状態を維持していた。この実施形態によれば、電卓の機構部品とプリント基板14とを、容易に分別することができる。したがって、プリント基板14に使用されている金や銀などの高価な金属を回収するための前処理を低コストで行うことができる。
【0033】
[第3の実施形態]
図4は、携帯通信端末15の一例を示す外観図である。携帯通信端末15は商品のライフサイクルが短く、種々のものが出回っているが、多くの携帯通信端末には、インカメラと外カメラおよびスピーカーが備えられている。これらのカメラに用いられる撮像素子やスピーカーは比較的高価な部品であり、解体後の機能検査を経てリユースしたいという要請がある。
【0034】
携帯通信端末15に実装されている撮像素子やスピーカーの機能を損なうことなく解体するためには、高電圧パルスを照射する一対の電極を撮像素子やスピーカーから、ある程度離して当接するのが有効である。その一方、電極間の距離を大きくして当接すると、パルスの印加電圧を高くしないと携帯通信端末15を解体できないことにもなる。携帯通信端末15のディスプレイ面に一対の電極を当接して解体する場合、次のような条件が適切であることが判明した。35kVの高電圧パルスを1回だけ照射する場合、電極間距離を30mm〜50mmにすれば、撮像素子やスピーカーの機能を損なうことなく解体することができる。また、電極間距離を70mmとし、印加電圧を45kVまで高くして解体すると、スピーカーの機能は損なわれないものの、撮像素子の機能は損なわれることが多くなることが判明した。以上のことから、35kVの高電圧パルスを1回だけ照射する場合、電極間距離を30mm〜50mmに設定するのが好適である。
【0035】
[第4の実施形態]
近年、高級冷蔵庫にはガラスドアパネル16が採用されている。図5は、小型冷蔵庫から取り外したガラスドアパネル16の外観を示している。このガラスドアパネル16は前表面にガラス板を採用しているが、残りの他面は樹脂製匡体で構成されている。そして、ガラスドアパネル16の内部は断熱材としてのウレタン樹脂17が詰め込まれている。また、ガラス板と樹脂製匡体枠との合わせ面は、接着シートにより強固に接合され、高い断熱性能を確保している。このように強固に接合されたガラスドアパネル16の解体は、従来の解体技術であるレーザーカット法では困難であり、未だ解体方法は定まっていない。
【0036】
図6は、図5に示したガラスドアパネル16に高電圧パルスを照射して解体した後の状態を示している。この例は、一対の電極を70mm離してガラス板の表面に当接し、電極間に45kVの高電圧パルスを15回照射したものである。ガラス板と樹脂製匡体枠との合わせ面の接合強度は冷蔵庫メーカによって大きく異なる。接合強度の弱いメーカの場合、同一条件の高電圧パルスであっても数回の照射で解体できることもある。しかし、いずれのメーカのガラスドアパネル16であっても、高電圧パルスを15回程度照射することにより確実に解体することができる。
【0037】
[第5の実施形態]
以上説明した実施形態は、絶縁体と導体が結合または接合された対象物の表面の離間した位置に複数の電極を当接し、電極間にパルス状の高電圧を印加して対象物を絶縁体と導体に分解するアーク放電による解体方法であった。
【0038】
ところで、衝撃波を発生させ、この衝撃波を空気や水などの媒質を介して伝搬し、対象物を解体するものとして細線爆発法がある。細線爆発法自体は古くから知られている技術であり、一般的には直径1mm程度の細径の銅線やアルミニウム線に、静電容量の大きなコンデンサに充電した電荷を一気に放電し、銅線やアルミニウム線を爆発させて必要な衝撃力を得るものである。
【0039】
図7は、第4の実施形態で説明した冷蔵庫のガラスドアパネル16に細線爆発法を適用して解体したガラスドアパネル16の状態を示す写真である。この実施例では、直径0.9mm、長さ300mmのアルミニウム線(図示省略)をガラス板と筐体との間に埋設し、静電容量40μFのコンデンサを15kVで充電した後、アルミニウム線の両端に対して一気に放電して爆発させている。金属細線としてのアルミニウム線は、ガラスドアパネル16の長手方向に沿った中央部に1本埋設されており、断熱部材であるウレタン樹脂17を含めて過不足なく解体されていることが分かる。
【0040】
図8は、図7と同様の実施形態であるが、金属細線の直径が1.2mmである点だけが図7の例と異なる。埋設する金属細線の直径差の影響は小さくないことが分かる。この細線爆発法は局所的な解体が可能なことから解体に要するエネルギ量が少なく、製品の設計段階において予め金属細線を配設しておく易分解設計に適用することで大きな省エネ効果を得ることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の解体対象は上述した対象物に限られるものではない。玩具や日用品、産業用機器など他の製品を解体する場合にも適用できる。要するに絶縁体と導体が結合または接合された対象物であれば、本発明を適用することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、大気中における解体方法について説明したが、本発明は従来技術と同様にして液体媒質中における解体方法にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る電気パルス解体方法は、故障や製品ライフサイクルの変化に伴い使用されなくなった家電製品や携帯通信端末などの解体に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 対象物
9,10 電極
12 締結部材(金属ねじ)
14 プリント基板
15 携帯通信端末
16 接合部材(ガラスドアパネル、冷蔵庫の構成部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9