(A)潤滑油基油と、(B)硫黄系極圧剤と、及び(C)リン系極圧剤とを含有する潤滑油組成物において、前記(A)潤滑油基油として少なくとも(A-1)ポリオールとカルボン酸とのエステル化合物を潤滑油組成物全体の質量に対して1〜30質量%含有し、及び前記(B)硫黄系極圧剤が活性硫黄量1〜30質量%を有することを特徴とする、前記潤滑油組成物。
(A)潤滑油基油と、(B)硫黄系極圧剤と、及び(C)リン系極圧剤とを含有する潤滑油組成物において、前記(A)潤滑油基油として少なくとも、(A-1)ポリオールとカルボン酸とのエステル化合物を潤滑油組成物全体の質量に対して1〜30質量%含有し、及び前記(B)硫黄系極圧剤が活性硫黄量1〜30質量%を有することを特徴とする、前記潤滑油組成物。
前記(B)硫黄系極圧剤の量が潤滑油組成物全体の質量に対して1〜15質量%であり、前記(C)リン系極圧剤の量が潤滑油組成物全体の質量に対して1.5〜8質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
前記(C)リン系極圧剤が酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
さらに、(A)潤滑油基油として、(A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油を潤滑油組成物全体の質量に対して30〜70質量%含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
さらに、(A)潤滑油基油として、(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油を潤滑油組成物全体の質量に対し10〜40質量%含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0013】
(A)潤滑油基油
本発明は、潤滑油基油として(A-1)ポリオールとカルボン酸とのエステル化合物を潤滑油組成物全体の質量に対して1〜30質量%、好ましくは5〜27質量%、より好ましくは8〜22質量%含有することを特徴とする。これにより、従来の潤滑油組成物よりもさらに粘度化した条件(特には、100℃における動粘度が5〜10mm
2/s)において、従来と同等のスコーリング防止性及び摩耗防止性を確保することできる。
【0014】
ポリオールは2〜6個の水酸基を有するのが好ましく、より好ましくは2〜4個の水酸基を有するのがよい。また、炭素数1〜30が好ましく、更には炭素数2〜24のポリオールが好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール、及びペンタエリスリトール、糖アルコール等が挙げられる。中でも、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパンが好ましい。カルボン酸は炭素数1〜30であるのが好ましく、脂肪族モノカルボン酸であるのがよい。より好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜18の脂肪族モノカルボン酸である。例えば酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸、及びオレイン酸等が挙げられる。好ましくはトリメチロールプロパンと炭素数6〜12のモノカルボン酸のエステル化合物であるのがよい。基油は2種類以上のポリオールエステルの混合物であっても良い。
【0015】
エステル化合物は、例えば、下記一般式で表すことができる。
【化1】
上記式においてRは水素原子又は炭素数1〜29、好ましくは炭素数2〜23の一価炭化水素基である。nは1〜30の整数であり、好ましくは2〜24の整数であり、分岐していてもよい。好ましくは、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとノナン酸のエステル化合物であるのがよい。
【0016】
本発明で用いるエステル化合物は100℃における動粘度が、好ましくは7mm
2/s以下である。さらに好ましくは1.5〜6mm
2/sであり、一層好ましくは1.8〜5mm
2/sであり、特に好ましくは2〜4.5mm
2/sであり、最も好ましくは2.5〜4mm
2/sである。
【0017】
本発明における潤滑油基油は、(A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油及び/又は(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油をさらに含むのが好ましい。(A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油の含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対して30〜70質量%となる量、好ましくは35〜67質量%、さらに好ましくは40〜65質量%である。(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油の含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対し10〜40質量%、好ましくは12〜28質量%、好ましくは15〜25質量%である。
【0018】
(A-2)GTL由来基油とは、メタン等の天然ガスからフィッシャー・トロプシュ合成等で得られたワックス等の原料を水素化分解処理及び水素化異性化処理して得られる基油である。100℃における動粘度は特に制限されるものではないが、1〜20mm
2/sを有することが好ましく、さらに好ましくは2〜15mm
2/sであり、一層好ましくは3〜10mm
2/sであるのがよい。
【0019】
(A-3)PAO基油は、特に制限されるものではないが、例えば1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−α-オレフィンオリゴマー、エチレン‐プロピレンオリゴマー、イソブテンオリゴマー並びにこれらの水素化物を使用できる。100℃における動粘度は、好ましくは2〜2,500mm
2/s、より好ましくは2〜200mm
2/s、さらに好ましくは3〜150mm
2/sであり、一層好ましくは4〜50mm
2/sであるのがよい。
【0020】
本発明の潤滑油組成物は、上記合成系基油と併せて、その他の合成系基油及び鉱油系基油から選ばれる1種以上を含有してもよい。これらの含有量は本発明の効果を損ねない限りで適宜調整されればよい。その他の合成系基油としては、例えば、ポリブテン、アルキルベンゼン、脂肪酸エステル、リン酸エステル、及びシリコン油などを挙げることができる。また、本発明の潤滑油組成物は、芳香族系二塩基酸エステルを上記(A-1)成分と併用して含有することもできる。
【0021】
鉱油系基油としては、水素化精製油、触媒異性化油などに溶剤脱蝋または水素化脱蝋などの処理を施した高度に精製されたパラフィン系鉱油(高粘度指数鉱油系潤滑油基油)が挙げられる。または、潤滑油原料をフェノール、フルフラールなどの芳香族抽出溶剤を用いた溶剤精製により得られるラフィネート、シリカ−アルミナを担体とするコバルト、モリブデンなどの水素化処理触媒を用いた水素化処理により得られる水素化処理油などが挙げられる。例えば、100ニュートラル油、150ニュートラル油、500ニュートラル油などを挙げることができる。鉱油系基油は上記製造方法によって製造されたものに制限されるものではないが、100℃における動粘度2〜40mm
2/sを有することが好ましく、さらに好ましくは2〜20mm
2/sであり、一層好ましくは3〜10mm
2/sであるのがよい。
【0022】
潤滑油基油の動粘度は、本発明の要旨を損なわない限り制限されることはない。特には、より低粘度の潤滑油組成物を得るためには、潤滑油基油全体が100℃における動粘度3〜10mm
2/sを有することが好ましく、さらに好ましくは4〜9mm
2/s、一層好ましくは5〜8mm
2/sを有するのがよい。潤滑油基油の100℃における動粘度が前記範囲内であることにより、潤滑油組成物の低粘度化を図ることができ、省燃費性を向上することできる。また、上記ポリオールエステルにより、このような低粘度条件においても摩耗防止性及びスコーリング防止性を確保できる。
【0023】
(B)硫黄系極圧剤
本発明の潤滑油組成物は硫黄系極圧剤を含有する。該硫黄系極圧剤は、活性硫黄量1〜30質量%を有し、好ましくは3〜20質量%であり、さらに好ましくは5〜15質量%であり、特に好ましくは8〜12質量%であるのがよい。活性硫黄量が上記範囲内であることにより、摩耗防止性及びスコーリング防止性を確保することができる。
【0024】
ここで、活性硫黄量とはASTM D1662に規定される方法により測定されるものである。ASTM D1662に基づく活性硫黄量は、より詳細には以下の手順により測定することができる。
1.200mlのビーカーに試料50gと銅粉(純度99%以上、粒径75μm以下)5gを入れ、スターラ(500rpm)で攪拌しながら150℃まで加熱する。
2.150℃に達したら、更に銅粉を5g加え、30分間攪拌する。
3.攪拌を止め、ASTM D130準拠の銅板をビーカーへ入れ10分間浸漬させる。このとき、銅板に変色が見られたら、さらに銅粉を5g加えて30分間攪拌する(この操作を銅板の変色が認められなくなるまで続ける)。
4.銅板変色が認められなくなったら、試料中の銅粉をろ別し、ろ液に含まれる硫黄量を測定する。
活性硫黄量(質量%)は、「もともとの試料(上記手順1)中に含まれる硫黄量(質量%)−銅粉との反応後のろ液(上記手順4)に含まれる硫黄量(質量%)」をもとに算出される。
【0025】
本発明における硫黄系極圧剤は上述した特定の活性硫黄量を有するものであればよく、公知の硫黄系極圧剤から選択することができる。好ましくは、硫化オレフィンに代表されるスルフィド化合物、硫化油脂に代表される硫化エステルから選ばれる少なくとも1種であり、特には硫化オレフィンが好ましい。尚、本発明において、チオリン酸エステル等の硫黄及びリンを有する極圧剤は、後述する(C)リン系極圧剤に包含されるため、該(B)硫黄系極圧剤には包含されない。また、本発明の硫黄系極圧剤はジチオリン酸亜鉛を包含しない。
【0026】
本発明で用いられる硫黄系極圧剤は、例えば下記一般式(1)で表されるものである。
R
1−(-S-)
x−R
2 (1)
【0027】
上記式(1)中、R
1及びR
2は互いに独立な置換基であり、炭素、水素、酸素、硫黄のうち少なくとも1つの元素を含む。詳細には、例えば炭素数1〜40の、直鎖構造または分岐構造を有する、飽和または不飽和の炭化水素基を挙げることができ、脂肪族、芳香族、あるいは芳香族基を有する脂肪族炭化水素基であって良い。また、その中に酸素及びあるいは硫黄原子を含んでも良い。R
1とR
2が結合していても良く、結合が1つの場合には、例えば下記一般式(2)で表される。
【化2】
【0028】
上記式(1)及び(2)中、xは1以上の整数であり、好ましくは1〜12の整数である。xが小さいと極圧性が低下し、xが大きすぎると熱酸化安定性が低下する傾向にある。極圧性及び熱酸化安定性を共に得るためには、xが1〜6の整数であることが好ましく、より好ましくは2〜5の整数である。一般式(1)及び(2)で表される硫黄系極圧剤は通常はxが単一のものではなく、種々の硫黄数の混合物であり、その中で特定の硫黄数の化合物が活性硫黄として機能するものと考えられる。
【0029】
硫黄系極圧剤の例を以下でさらに説明する。
【0030】
硫化オレフィンはオレフィン類を硫化して得られるものであり、オレフィン類以外の炭化水素系原料を硫化して得られるものを含めてスルフィド化合物と総称する。硫化オレフィンとしては、例えば、ポリイソブテン類及びテルペン類などのオレフィン類を、硫黄または他の硫化剤で硫化して得られるものが挙げられる。
【0031】
硫化オレフィン以外のスルフィド化合物としては、例えば、ジイソブチルポリスルフィド、ジオクチルポリスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィド、ジイソブチルポリスルフィド、ジヘキシルポリスルフィド、ジ−tert−ノニルポリスルフィド、ジデシルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、ジイソブテンポリスルフィド、ジオクテニルポリスルフィド、及びジベンジルポリスルフィドなどが挙げられる。
【0032】
硫化油脂は、油脂と硫黄との反応生成物であり、油脂としてラード、牛脂、鯨油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油などの動植物油脂が挙げられる。この反応生成物は、単一物質種のものではなく、種々の物質の混合物であり、化学構造そのものは必ずしも明確でない。
【0033】
硫化エステルは、上記硫化油脂の他に、各種有機酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ジカルボン酸、芳香族カルボン酸など)と各種アルコールとの反応により得られるエステル化合物を硫黄その他の硫化剤で硫化して得られるものが挙げられる。硫化油脂と同様、化学構造そのものは必ずしも明確でない。
【0034】
本発明の潤滑油組成物において上記硫黄系極圧剤の含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対して1質量%〜15質量%、好ましくは2質量%〜12質量%、特に好ましくは4〜8質量%である。上記硫黄系極圧剤は、1種類若しくは2種類以上を混合して用いることもできる。含有量が上記上限値を超えると熱酸化安定性が低下しスラッジが発生しやすくなり、加えて金属腐食も発生しやすくなるおそれがある。また、含有量が上記下限値未満では、スコーリング防止性が低下するおそれがある。
【0035】
(C)リン系極圧剤
本発明の潤滑油組成物はさらにリン系極圧剤を含有する。上記硫黄系極圧剤と併せてリン系極圧剤を後述する範囲の量で含有することにより、摩耗防止性とスコーリング防止性をバランス良く両立することができるため好ましい。尚、本発明において、チオリン酸エステル等の硫黄及びリンを有する極圧剤は、上述した(B)硫黄系極圧剤でなく、(C)リン系極圧剤に包含される。また、本発明のリン系極圧剤はジチオリン酸亜鉛を包含しない。
【0036】
リン系極圧剤は、特に限定されることはなく、従来公知のものであってよい。例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、チオ亜リン酸エステル、酸性チオ亜リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩の中から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。好ましくは、酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩の中から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
【0037】
リン酸エステル及び酸性リン酸エステルは(R
1O)
aP(=O)(OH)
3−aで表される。aは0、1、2、又は3である。R
1は互いに独立に、炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、a=3の場合がリン酸エステル、a=1又は2の場合が酸性リン酸エステル、a=0の場合がリン酸となる。
【0038】
亜リン酸エステル及び酸性亜リン酸エステルは(R
2O)
bP(=O)(OH)
2−bHで表される。bは0、1、又は2である。R
2は互いに独立に、炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、b=2の場合が亜リン酸エステル、b=1の場合が酸性亜リン酸エステル、b=0の場合が亜リン酸となる。
【0039】
チオリン酸エステル及び酸性チオリン酸エステルは(R
3X
1)(R
4X
2)(R
5X
3)P(=X
4)で表される。R
3、R
4及びR
5は、互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、R
3、R
4及びR
5のうち1つまたは2つが水素原子の場合が酸性チオリン酸エステルとなり、3つが水素原子の場合はチオリン酸となる。X
1、X
2、X
3及びX
4は、互いに独立に、酸素原子または硫黄原子である。但しX
1、X
2、X
3及びX
4のうち少なくとも1つは硫黄原子である。
【0040】
チオ亜リン酸エステル及び酸性チオ亜リン酸エステルは(R
6X
5)(R
7X
6)P(=X
7)Hで表される。R
6及びR
7は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、R
6及びR
7のうち1つが水素原子の場合が酸性チオ亜リン酸エステルとなり、2つが水素原子の場合はチオ亜リン酸となる。X
5、X
6及びX
7は、互いに独立に、酸素原子または硫黄原子である。但し、X
5、X
6及びX
7のうち少なくとも1つは硫黄原子である。
【0041】
上記において、炭素数1〜30の一価炭化水素基とは、詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソブチル基、イソヘキシル基、イソデシル基、イソオクタデシル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基、及びオレイル基等である。好ましくは炭素数4〜20の一価炭化水素基である。
【0042】
リン酸エステル及び酸性リン酸エステルは、好ましくはリン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、及びリン酸トリアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
【0043】
亜リン酸エステル及び酸性亜リン酸エステルは、好ましくは亜リン酸モノアルキルエステル及び亜リン酸ジアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
チオリン酸エステル及び酸性チオリン酸エステルは、好ましくはチオリン酸モノアルキルエステル、チオリン酸ジアルキルエステル、及びチオリン酸トリアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
チオ亜リン酸エステル及び酸性チオ亜リン酸エステルは、好ましくはチオ亜リン酸モノアルキルエステル及びチオ亜リン酸ジアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、及びチオ亜リン酸エステルとして、さらに詳細には、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリオクチル、亜リン酸モノオクチル、亜リン酸ジオクチル、チオリン酸モノオクチル、チオリン酸ジオクチル、チオリン酸トリオクチル、チオ亜リン酸モノオクチル、チオ亜リン酸ジオクチル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸トリドデシル、亜リン酸モノドデシル、亜リン酸ジドデシル、チオリン酸モノドデシル、チオリン酸ジドデシル、チオリン酸トリドデシル、チオ亜リン酸モノドデシル、チオ亜リン酸ジドデシル、リン酸モノオクタデセニル、リン酸ジオクタデセニル、リン酸トリオクタデセニル、亜リン酸モノオクタデセニル、亜リン酸ジオクタデセニル、チオリン酸モノオクタデセニル、チオリン酸ジオクタデセニル、チオリン酸トリオクタデセニル、チオ亜リン酸モノオクタデセニル、及びチオ亜リン酸ジオクタデセニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
更に、上記化合物のうち部分エステルになっているもののアルキルアミン塩及びアルケニルアミン塩も好適に使用することができる。すなわち、上記酸性リン酸エステルのアミン塩、上記酸性亜リン酸エステルのアミン塩、上記酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び上記酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
より詳細には、リン酸モノオクチルのアミン塩、リン酸ジオクチルのアミン塩、亜リン酸モノオクチルのアミン塩、チオリン酸モノオクチルのアミン塩、チオリン酸ジオクチルのアミン塩、チオ亜リン酸モノオクチルのアミン塩、リン酸モノドデシルのアミン塩、リン酸ジドデシルのアミン塩、亜リン酸モノドデシルのアミン塩、チオリン酸モノドデシルのアミン塩、チオリン酸ジドデシルのアミン塩、リン酸モノオクタデセニルのアミン塩、リン酸ジオクタデセニルのアミン塩、亜リン酸モノオクタデセニルのアミン塩、チオリン酸モノオクタデセニルのアミン塩、チオリン酸ジオクタデセニルのアミン塩、及びチオ亜リン酸モノオクタデセニルのアミン塩などが挙げられる。
なお、アミン塩のアミンはR
8R
9R
10Nで表される。R
8、R
9及びR
10は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜20の、直鎖構造または分岐鎖を有する、飽和または不飽和の脂肪族、芳香族、あるいは芳香脂肪族炭化水素基である。より詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ステアリル基及びオレイル基などが挙げられる。
【0049】
上記リン系極圧剤は、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。組合せる場合には、例えば以下のような態様が挙げられるが、これらに限定されることはない。
(1)チオリン酸エステルアミン塩とリン酸エステルアミン塩
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するリン酸エステルアミン塩との組み合わせ、
(2)チオリン酸エステルアミン塩とリン酸エステル
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するリン酸エステルとの組み合わせ、
(3)リン酸エステルアミン塩とチオリン酸エステル
特に、アルキル基を有するリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するチオリン酸エステルとの組み合わせ、
(4)チオリン酸エステルとリン酸エステル
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルとアルキル基を有するリン酸エステルとの組み合わせ、
(5)炭素数4〜8のアルキル基を有する酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステルから選ばれる少なくとも1の組合せ。
【0050】
上記リン系極圧剤の添加量は潤滑油組成物全体の質量に対して1.5〜8質量%、1.8〜7質量%であり、好ましくは2〜6質量%である。リン系極圧剤の量が上記上限値以下であることにより、歯面等におけるスコーリング防止性を良好に確保できるため好ましい。さらには、前記含有量が潤滑油組成物全体の質量に対して上記下限値以上であることにより、摩耗防止性能の向上に、より一層寄与する。リン系極圧剤の量が上記下限値未満では反応被膜の生成が不十分で摩耗防止性能が悪化する恐れがある。
【0051】
本発明の潤滑油組成物は、上記(B)硫黄系極圧剤と該(C)リン系極圧剤を各々上述した特定量にて併用することにより、課題である良好な摩耗防止性及びスコーリング防止性を確保することができる。(B)成分及び(C)成分の少なくとも一方の量が少なすぎる又は多すぎると、摩耗防止性又はスコーリング防止性が不十分となるおそれがある。より好ましくは、上記(B)硫黄系極圧剤と(C)リン系極圧剤の含有量の合計が、潤滑油組成物全体の質量に対して3〜20質量%であるのがよく、より好ましくは4〜15質量%である、一層好ましくは5〜10質量%である。さらに上記(B)硫黄系極圧剤と該(C)リン系極圧剤の使用比(質量比)が、(B)/(C)=1〜5であることが好ましく、より好ましくは1.1〜4、更に好ましくは1.2〜3、特に好ましくは1.3〜2である。
【0052】
本発明の潤滑油組成物は上記(B)硫黄系極圧剤及び(C)リン系極圧剤以外の極圧剤を上記(B)及び(C)成分と併せてさらに含有することができる。例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を使用することができる。ZnDTPの含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜3質量%、一層好ましくは0.3〜1質量%である。
【0053】
(D)無灰分散剤
本発明の潤滑剤組成物はさらに無灰分散剤を含有することができる。無灰分散剤は従来公知のものを使用すればよく、特に制限されるものでない。例えば、炭素数40〜400の、直鎖構造又は分枝構造を有するアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはコハク酸イミド及びその変性品等が挙げられる。無灰分散剤は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、ホウ素化無灰分散剤を使用することもできる。ホウ素化無灰分散剤は潤滑油に用いられている任意の無灰分散剤をホウ素化したものである。ホウ素化は一般に、イミド化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。
【0054】
上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは40〜400であり、より好ましくは60〜350である。アルキル基及びアルケニル基の炭素数が前記下限値未満であると、化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下する傾向にある。また、アルキル基及びアルケニル基の炭素数が上記上限値を超えると、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する傾向にある。上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖構造を有していても分枝構造を有していてもよい。好ましい態様としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィンのオリゴマー、エチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基又は分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0055】
前記コハク酸イミドには、ポリアミンの一端と無水コハク酸との反応生成物である、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端と無水コハク酸との反応生成物である、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとがある。本発明の潤滑油組成物は、モノタイプ及びビスタイプのうちいずれか一方を含有してもよいし、あるいは双方を含有してもよい。
【0056】
上記コハク酸イミドの変性品とは、例えば、コハク酸イミドをホウ素化合物で変性したものである(以下、ホウ素化コハク酸イミドということがある)。ホウ素化合物で変性するとは、ホウ素化することを意味する。ホウ素化コハク酸イミドは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。併用する場合は、ホウ素化コハク酸イミドの2種以上の組合わせであってもよい。また、モノタイプ及びビスタイプの両方を含んでもよいし、モノタイプ同士の併用、又はビスタイプ同士の併用であってもよい。ホウ素化コハク酸イミドと非ホウ素化コハク酸イミドとを併用してもよい。
【0057】
例えば、ホウ素化コハク酸イミドの製造方法としては、特公昭42−8013号公報及び同42−8014号公報、特開昭51−52381号公報、及び特開昭51−130408号公報等に開示されている方法等が挙げられる。具体的には例えば、アルコール類やヘキサン、キシレン等の有機溶媒、軽質潤滑油基油等にポリアミンとコハク酸無水物(誘導体)にホウ酸、ホウ酸エステル、又はホウ酸塩等のホウ素化合物を混合し、適当な条件で加熱処理することにより得ることができる。この様にして得られるホウ素化コハク酸イミドに含まれるホウ素含有量は通常0.1〜4質量%とすることができる。本発明においては、特に、アルケニルコハク酸イミド化合物のホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド)は耐熱性、酸化防止性及び摩耗防止性に優れるため好ましい。
【0058】
ホウ素化無灰分散剤中に含まれるホウ素含有量は特に制限はない。通常無灰分散剤の質量に対して0.1〜3質量%である。本発明の1つの態様としては、無灰分散剤中のホウ素含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、また好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下であるのがよい。ホウ素化無灰分散剤として好ましくはホウ素化コハク酸イミドであり、特にはホウ素化ビスコハク酸イミドが好ましい。
【0059】
ホウ素化無灰分散剤は、ホウ素/窒素質量比(B/N比)0.1以上、好ましくは0.2以上を有するものであり、好ましくは1.2未満、より好ましくは1.0以下を有するものが好ましい。
【0060】
組成物中の無灰分散剤の含有量は適宜調整されればよいが、例えば潤滑油組成物全体の質量に対して、0.01〜20質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。無灰分散剤の含有量が上記下限値未満であると、スラッジ分散性が不十分となるおそれがある。また含有量が上記上限値を超えると、特定のゴム材料を劣化させたり、低温流動性を悪化させるおそれがある。
【0061】
(E)その他の添加剤
本発明の潤滑油組成物は、上記(A)〜(D)成分以外のその他の添加剤として、粘度指数向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び流動点降下剤を含有することができる。但し、本発明の潤滑油組成物はグリースではないため、増ちょう剤は含有しない。該増ちょう剤とは、例えば金属石けんや金属塩等である。
【0062】
粘度指数向上剤としては、例えば、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体、若しくはその水素化物などの、いわゆる非分散型粘度指数向上剤、又は、窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)、若しくはその水素化物、ポリイソブテン若しくはその水素化物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0063】
粘度指数向上剤の分子量は、潤滑油組成物のせん断安定性を考慮して選定することが必要である。例えば、粘度指数向上剤の重量平均分子量は、分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合には、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブテン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
【0064】
粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で、0.01〜20質量%、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。
【0065】
酸化防止剤は潤滑油に一般的に使用されているものであればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤等の無灰系酸化防止剤及び有機金属系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤の添加により、潤滑油組成物の酸化安定性をより高めることができる。
【0066】
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルホネート、フェネート、サリシレート、カルボキシレートから選択される化合物を含むものが挙げられ、過塩基性塩、塩基性塩、中性塩等の塩基価の異なるものを任意に選択して用いることができる。金属系清浄剤は、通常潤滑油組成物中に、金属量として0.01〜1質量%で配合される。
【0067】
摩擦調整剤としては、例えば、有機モリブデン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコール、アミン、アミド等が挙げられる。摩擦調整剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜5質量%で配合される。
【0068】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。腐食防止剤は、通常潤滑油組成物中に0.1〜5質量%で配合される。
【0069】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸、脂肪酸セッケン、脂肪酸アミン、アルキルポリオキシアルキレン、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。防錆剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜5質量%で配合される。
【0070】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。抗乳化剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜5質量%で配合される。
【0071】
金属不活性化剤としては、例えば、ピロール類、イミダゾール類、ピラゾール類、ピラジン類、ピリミジン類、ピリダジン類、トリアジン類、トリアゾール類、チアゾール類、チアジアゾール類等が挙げられる。金属不活性化剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜3質量%で配合される。
【0072】
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン類及びそれらのフッ素化誘導体、ポリアクリレート類及びそれらのフッ素化誘導体、パーフルオロポリエーテル類等が挙げられる。消泡剤は、通常潤滑油組成物中に0.001〜1質量%で配合される。
【0073】
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。流動点降下剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜3質量%で配合される。
【0074】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は5〜10mm
2/sが好ましく、より好ましくは5.5〜9.5mm
2/s、一層好ましくは6〜9mm
2/s、特に好ましくは6.5〜8mm
2/sである。また、ASTM D2270に準拠して測定される粘度指数は100以上、好ましくは120以上、更に好ましくは130以上、より好ましくは140〜200を有する。
【実施例1】
【0075】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
【0076】
実施例及び比較例にて使用した各成分は以下の通りである。下記に示す各成分を表1又は2に示す組成にて混合して潤滑油組成物を調製した。下記においてKV100は100℃での動粘度を意味する。
(A)潤滑油基油
(A-1)合成系基油1(GTL4)KV100=4.0mm
2/s
(A-2)合成系基油2(GTL8)KV100=8.0mm
2/s
(A-3)合成系基油3(PAO40)KV100=40mm
2/s
(A-4)合成系基油4(エステル1:3-メチル-1,5-ペンタンジオール-ジ(ノナノエート))KV100=2.8mm
2/s
(A-5)合成系基油5(エステル2:トリメチロールプロパン脂肪酸エステルC6〜12) KV100=4.4mm
2/s
(A-6)合成系基油6(比較用基油1:ジイソデシルアジペート(DIDA))KV100=3.6mm
2/s
(A-7)合成系基油7(比較用基油2:ジブチルアジペート (DBA))KV100=1.4mm
2/s
(A-8)合成系基油8(比較用基油3:2−エチルヘキシルパルミテート(2−EHP))KV100=2.5mm
2/s
【0077】
(B)硫黄系極圧剤
下記における活性硫黄量は、ASTM D1662に準拠する方法により測定された値であり、硫黄系極圧剤に占める活性硫黄量である。
・硫黄系極圧剤1:硫化オレフィン(活性硫黄量=11質量%)
・硫黄系極圧剤2:硫化オレフィン(活性硫黄量=32質量%)
【0078】
(C)リン系極圧剤
・リン系極圧剤1:酸性リン酸エステル(C4〜C8アルキル基を有する)とアミン(C8〜C18アルキル基を有する)の塩
・リン系極圧剤2:酸性チオリン酸エステル(C4〜C8アルキル基を有する)とアミン(C8〜C18アルキル基を有する)の塩
【0079】
(D)無灰分散剤
・ホウ素化ポリイソブテニルコハク酸イミド(ビスイミドタイプ)
ポリブテニル基分子量=1,400、 ホウ素=1.8質量%, 窒素=2.4質量%
【0080】
(E)その他の添加剤
消泡剤、流動点降下剤、防錆剤
【0081】
各潤滑油基油及び潤滑油組成物について下記方法に従い各種性状を測定した。結果を表1及び2に示す。
(1)100℃における動粘度(KV100)
ASTM D445に準拠して測定した。
(2)粘度指数
ASTM D2270に準拠して測定した。
(3)スコーリング性評価
ASTM D4172で規定される四球摩耗試験機を用い、以下の条件で試験を行い、焼付きが発生した時の回転数を記録した。油温:室温、荷重:100kgf、回転数:30秒ごとに100rpmずつ増加。回転数(rpm)が1000を超えた場合を合格とした。
(4)摩耗防止性評価
ASTM D2714に準拠し、以下の条件で試験を行い、試験後のブロック試験片に出来た摩耗幅を評価した。油温:120℃、荷重:20lbf、回転数:1000rpm、時間:1h、摩耗幅(mm)が0.45以下の場合を合格とした。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示す通り、比較例1〜4の潤滑油組成物では、KV100が7mm
2/sという低粘度において、スコーリング防止性又は摩耗防止性のいずれかが劣り、これらを両立することができない。これに対し、本発明の潤滑油組成物は、特定のポリオールエステル化合物と特定の活性硫黄量を有する硫黄系極圧剤とを含有することにより、KV100が7mm
2/sという低粘度であっても、KV100が11mm
2/sである従来の潤滑油組成物(参考例1)と同等のスコーリング防止性及び摩耗防止性を有することができる。