【解決手段】地盤100に鋼管杭1を貫入して支持層105まで到達させ、支持層105に到達した鋼管杭1が地盤100に入り込んでいる深さに基づいて支持層105までの深さを導き出す手順と、鋼管杭1を引き上げて、導き出した支持層105までの深さに基づいて鋼管杭1の長さを調整する手順と、長さを調整した鋼管杭1を支持層105に貫入する手順と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る鋼管杭の施工方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法で用いる鋼管杭1の模式図である。なお、以下の説明では、鋼管杭1を地盤に埋設した状態における上方を、本実施形態1においても上方または上側として説明し、鋼管杭1を地盤に埋設した状態における下方を、本実施形態1においても下方または下側として説明する。
【0016】
鋼管杭1は、直線状に延びる円筒形状の鋼管2により大部分が構成されている。実施形態1に係る鋼管杭1は、上杭5と中杭6と下杭7とを含み、上杭5と中杭6と下杭7とのそれぞれが、主に鋼管2により構成されている。上杭5と中杭6と下杭7とは、それぞれの鋼管2が直線状に連なる状態になる向きで接合されると共に、鋼管杭1を地盤100(
図18参照)に埋設した状態では、上杭5が最も上側に位置し、下杭7が最も下側に位置し、中杭6が上杭5と下杭7との間に位置する位置関係で接合される。
【0017】
図2は、
図1に示す下杭7の詳細図である。
図3は、
図2のA−A矢視図である。下杭7は、下杭7を構成する鋼管2の一端に、掘削羽根10が配設されている。掘削羽根10は、2枚の羽根部材11、12を有しており、2枚の羽根部材11、12は、鋼管2の中心軸を中心とする略スクリュー状の形状で形成されて下杭7の一端に設けられている。即ち、2枚の羽根部材11、12は、鋼管2の延在方向に見た場合に、鋼管2の中心軸を中心とする点対称の形状で形成されると共に、鋼管2の円周方向に対して傾斜して配設されている。
【0018】
図4は、
図2のB−B矢視図である。
図5は、
図4のC−C矢視図である。下杭7における掘削羽根10が配設される側の端部の反対側の端部付近には、回転キー15が設けられている。回転キー15は、略直方体の形状で形成されており、直方体の長手方向が鋼管2の延在方向に沿った向きで、鋼管2の外周面に配設されている。このように形成される回転キー15は、下杭7に2つが設けられており、2つの回転キー15は、鋼管2の延在方向における位置が互いに同じ位置で、鋼管2の中心軸を中心として互いに反対側に配置されている。
【0019】
図6は、
図1に示す中杭6の詳細図である。中杭6は、中杭6を構成する鋼管2の一方の端部付近に、下杭7と同様に2つの回転キー15が設けられている。一方で、中杭6には、掘削羽根10が設けられておらず、中杭6は、鋼管2に2つの回転キー15が設けられた形態になっている。
【0020】
図7は、
図1に示す上杭5の詳細図である。
図8は、
図7のD−D矢視図である。上杭5は、上杭5を構成する鋼管2の一端に、杭頭プレート21が設けられている。なお、上杭5を構成する鋼管2と、中杭6を構成する鋼管2と、下杭7を構成する鋼管2とは、外径が実質的に同じ大きさになっている。一方で、上杭5を構成する鋼管2と、中杭6を構成する鋼管2と、下杭7を構成する鋼管2との板厚は、同じ厚さであってもよく、互いに異なる厚さであってもよい。鋼管2の板厚は、例えば、中杭6や下杭7を構成する鋼管2よりも、上杭5を構成する鋼管2の方が厚くてもよい。杭頭プレート21は、鋼管杭1に接合する柱部材50が有する結合プレート51(
図19参照)と結合する部材になっている。上杭5における杭頭プレート21が配設される側の端部は、鋼管杭1を地盤100(
図18参照)に埋設した状態における鋼管杭1の上側の端部である杭頭20になっている。即ち、杭頭プレート21は、上杭5における杭頭20となる端部に配設されている。杭頭プレート21は、直径が鋼管2の直径よりも大きい円板状の形状で形成されており、鋼管2の端部を閉塞して端部に取り付けられている。つまり、杭頭プレート21は、鋼管2の端部を閉塞したフランジ状の形状で形成されている。
【0021】
このように形成される杭頭プレート21には、杭頭プレート21を貫通する孔である取付孔22が複数形成されている。取付孔22は、杭頭プレート21における鋼管2の外側の位置に形成されており、杭頭プレート21の外周部分の近傍に形成されている。本実施形態1では、取付孔22は4つが形成されており、4つの取付孔22は、鋼管2の中心軸を中心とする円周方向に等間隔で形成されている。
【0022】
これらのように構成される鋼管杭1の長さは、地盤100の支持層105(
図18参照)までの深さに基づいて設定される。ここでいう支持層105は、鋼管杭1を基礎構造に用いて地上に建造する構造物の鉛直荷重を鋼管杭1によって伝達することにより、鉛直荷重を支えることのできる地層になっている。支持層105までの深さは、鋼管杭1を埋設する作業よりも前に、鋼管杭1を埋設する地盤100に対して行われるボーリング調査等の地質調査に基づいて仮定される。
【0023】
鋼管杭1は、上杭5と中杭6と下杭7とを足し合わせた長さが、地質調査に基づいて仮定された深さの支持層105に鋼管杭1を到達させて鋼管杭1を支持層105に貫入することができると想定される長さになるように設定する。その際に、鋼管杭1の上杭5と中杭6と下杭7とを足し合わせた長さ、即ち、鋼管杭1の全長は、想定長さに対して余裕を持って設定する。なお、本実施形態1では、上杭5は、予め定められた一定の長さになっている、このため、鋼管杭1の全長は、中杭6と下杭7とによって調整する。鋼管杭1の上杭5と中杭6と下杭7とは、このようにして設定した長さで製造する。
【0024】
次に、本実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法について説明する。
図9は、鋼管杭1の貫入に用いる杭打ち機150の模式図である。
図10は、
図9のE部詳細図である。地盤100への鋼管杭1の貫入は、杭打ち機150を用いて行う。杭打ち機150は、鋼管杭1に対して回転力を伝達する杭打ち駆動部155を有しており、杭打ち駆動部155は、上方に延びるリーダー154に沿って上下方向に移動することが可能になっている。地盤100に対して鋼管杭1の貫入を行う際には、作業者は、杭打ち機150の運転室151に搭乗して運転操作を行うことにより、杭打ち駆動部155を駆動させ、鋼管杭1の貫入を行う。
【0025】
杭打ち機150が有する杭打ち駆動部155には、杭把持部160が取り付けられる。杭打ち駆動部155は、杭把持部160によって鋼管杭1を把持することにより、鋼管杭1に対して回転力を伝達することが可能になっている。詳しくは、杭把持部160は、内径が鋼管杭1の外径よりも若干大きい円筒形の形状で形成されており、鋼管杭1の回転キー15と係合する係合部161が形成されている。係合部161は、杭把持部160の2箇所に形成されており、2箇所の係合部161は、鋼管杭1の回転キー15と同様に、杭把持部160の形状である円筒の中心軸を中心として互いに反対側となる位置関係で形成されている。
【0026】
杭把持部160に形成される係合部161は、杭把持部160の形状である円筒の壁部を厚さ方向に貫通する、切欠き状の挿通部162と保持部163とを有している。このうち、挿通部162は、杭把持部160の下端側に位置して杭把持部160の下端に開口しており、円筒の円周方向における幅が、同方向における鋼管杭1の回転キー15の幅よりも若干大きくなっている。
【0027】
保持部163は、挿通部162の上方に位置して挿通部162に連通しており、円周方向における幅が、挿通部162や回転キー15の幅よりも大幅に大きくなっている。また、杭把持部160の形状である円筒の中心軸が延びる方向における保持部163の長さは、同方向における回転キー15の長さよりも長くなっている。
【0028】
このため、杭把持部160で鋼管杭1を把持する際には、鋼管杭1における回転キー15が配設される側の端部から鋼管杭1に杭把持部160を被せ、挿通部162に回転キー15を通して、回転キー15を保持部163まで入れる。回転キー15を保持部163に入れたら、杭把持部160と鋼管杭1とを相対的に回転させることにより、回転キー15は保持部163の内部で円周方向に移動し、回転キー15は円周方向における位置が挿通部162からずれる。これにより、回転キー15は挿通部162から抜けなくなるため、杭把持部160は係合部161が回転キー15と係合する状態で鋼管杭1を把持することができる。
【0029】
さらに、杭打ち機150には、杭打ち駆動部155の下方に、鋼管杭1が上下方向に移動可能な状態で鋼管杭1を支えるガイド156が配設されている。このため、杭打ち機150を用いて地盤100に対して鋼管杭1を貫入する際には、鋼管杭1は、回転キー15が配設される側の端部が上側になる向きにして上端側を杭把持部160によって把持し、鋼管杭1の杭把持部160の下方でガイド156よって支えながら貫入する。
【0030】
鋼管杭1の貫入は、上杭5と中杭6と下杭7とが分離している状態で行い、まず、掘削羽根10を有する下杭7から行う。下杭7は、掘削羽根10が位置する側の端部が下端側になり、回転キー15が位置する側の端部が上端側になる向きで、上端側を杭打ち機150に備えられる杭把持部160によって把持し、杭打ち機150によって貫入する。これにより、下杭7は、掘削羽根10側から地盤100に貫入する。
【0031】
杭打ち機150によって下杭7を貫入する際には、下杭7を杭打ち駆動部155によって、下杭7の中心軸を中心として回転させながら、杭打ち駆動部155を下方に移動させる。これにより、下杭7は、回転しながら地盤100に貫入する。下杭7を含む鋼管杭1を杭打ち機150によって地盤100に貫入する際には、地表101から鋼管杭1の下端までの深度や、鋼管杭1が貫入する際の貫入速度、鋼管杭1を回転させるための回転トルク、鋼管杭1に付与する上下方向の荷重、鋼管杭1の一回転あたりの貫入量を検出しながら行う。これらの検出値のうち、上下方向の距離に関するものは、リーダー154に沿って移動する杭打ち駆動部155の移動量に基づいて検出する。回転トルクは、杭打ち駆動部155は油圧によって回転力を発生するため、鋼管杭1を回転させる際における油圧に基づいて回転トルクを検出する。
【0032】
これらのように、鋼管杭1を貫入する際には、貫入中における各値を検出しながら行い、貫入する鋼管杭1が地盤100の支持層105(
図11参照)に到達したか否かを、検出値に基づいて随時確認しながら鋼管杭1を貫入する。鋼管杭1の貫入中に検出する各値に基づいて、鋼管杭1が支持層105に到達していないと判断できる場合は、鋼管杭1の貫入を継続する。即ち、鋼管杭1の貫入は、鋼管杭1の貫入中に検出する各値に基づいて、鋼管杭1が支持層105に到達したと判断できる状態になるまで行う。
【0033】
鋼管杭1の貫入を継続することにより、下杭7が地盤100に対してある程度貫入したら、下杭7に中杭6を接合する。下杭7に中杭6を接合する際には、下杭7から杭把持部160を取り外し、下杭7の上端側に中杭6を接合する。中杭6の向きは、中杭6における回転キー15が設けられる側の端部の反対側の端部を、下杭7に接合する。即ち、中杭6は、回転キー15が位置する側の端部が上端側になる向きで、下端側を下杭7の上端側に接合する。この場合における接合は、例えば、溶接によって行う。
【0034】
中杭6を下杭7に接合したら、杭打ち機150に備えられる杭把持部160によって下杭7を把持する場合と同様に、中杭6の上端側を杭把持部160によって把持する。この状態で、杭打ち駆動部155によって中杭6を回転させることにより、下杭7は中杭6と共に回転するため、中杭6と下杭7とは、一体となって回転しながら地盤100に貫入する。
【0035】
図11は、鋼管杭1が支持層105に到達した状態を示す説明図である。中杭6と下杭7とが一体となった鋼管杭1を地盤100に貫入し、貫入中に検出する検出値に基づいて鋼管杭1が支持層105に到達したと判断できる状態になったら、鋼管杭1が地盤100に入り込んでいる深さに基づいて地表101から支持層105までの深さを導き出す。つまり、本実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法は、鋼管杭1を埋設する際に、地盤100に鋼管杭1を貫入して支持層105まで到達させ、支持層105に到達した鋼管杭1が地盤100に入り込んでいる深さに基づいて支持層105までの深さを導き出す手順を有している。
【0036】
地表101から支持層105までの深さは、地質調査に基づいて仮定されるが、鋼管杭1を埋設する位置と地質調査を行った位置とが異なる場合には、支持層105までの実際の深さは、地質調査に基づいて仮定された深さとは異なる場合がある。このため、本実施形態1では、鋼管杭1が支持層105に到達したと判断できる状態になったら、その状態における鋼管杭1が地盤100に入り込んでいる深さに基づいて、地表101から支持層105までの深さを導き出す。即ち、鋼管杭1が支持層105に到達したと判断できる状態における、地表101から鋼管杭1の下端までの深度を、地表101から支持層105までの深さとして導き出す。支持層105までの深さを導き出す手順では、このように、鋼管杭1における上杭5以外の部材を地盤100に貫入して支持層105まで到達させることにより、支持層105までの深さを導き出す。
【0037】
なお、このように鋼管杭1を地盤100に貫入して鋼管杭1を支持層105まで到達させることによって支持層105までの深さを導き出す手順では、鋼管杭1を把持する杭把持部160も地盤100に貫入してもよい。例えば、長さが比較的長めの杭把持部160を用いて鋼管杭1を把持し、鋼管杭1の貫入と共に杭把持部160も貫入させることにより、鋼管杭1を支持層105まで到達させてもよい。
【0038】
支持層105までの深さを導き出したら、次に、鋼管杭1を引き上げて、導き出した支持層105までの深さに基づいて鋼管杭1の長さを調整する。
図12は、鋼管杭1を引き上げて長さを調整する際における説明図であり、設定した鋼管杭1の全長が長い場合の説明図である。鋼管杭1を引き上げる際には、鋼管杭1を貫入する際に回転させる方向と逆方向に鋼管杭1を回転させる。下杭7の下端に設けられる掘削羽根10は、略スクリュー状の形状で形成されているため、鋼管杭1は、貫入時の回転方向に対して逆回転させることにより引き上げることができる。
【0039】
鋼管杭1をある程度引き上げたら、鋼管杭1の長さを調整する。鋼管杭1の長さを調整する手順では、まず、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した鋼管杭1の全長を導き出す。鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した鋼管杭1の全長は、具体的には、支持層105に到達した鋼管杭1に基づいて導き出した支持層105までの深さに、支持層105に対して鋼管杭1を貫入する所定の深さを足すことによって導き出す。支持層105に対して鋼管杭1を貫入する深さは、例えば、鋼管杭1を構成する鋼管2の直径程度で、且つ、直径以上の深さが挙げられる。即ち、支持層105に対して鋼管杭1を貫入する深さは、一例として、鋼管2の直径+αの深さが挙げられる。
【0040】
鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した鋼管杭1の全長を導き出したら、導き出した全長と、地質調査に基づいて仮定された支持層105の深さに基づいて設定された鋼管杭1の全長とを比較する。導き出した全長に対して鋼管杭1の全長が長い場合は、鋼管杭1における余剰分の長さの部分である余剰分調整部2aを切断する。
【0041】
鋼管杭1の余剰分調整部2aは、その時点での鋼管杭1の上端から、余剰分の長さの位置で切断をする。本実施形態1では、余剰分調整部2aは、中杭6の上端から余剰分の長さの位置で切断をする。これにより、地質調査に基づいて設定された鋼管杭1の全長が、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長よりも長い場合は、実際の鋼管杭1の全長が、設定された全長よりも短くなるようにし、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長と同等の長さになるようにする。
【0042】
反対に、導き出した全長に対して鋼管杭1の全長が短い場合は、不足分の長さの鋼管2である不足分調整鋼管2bを鋼管杭1に接合して継ぎ足す。
図13は、鋼管杭1を引き上げて長さを調整する際における説明図であり、設定した鋼管杭1の全長が短い場合の説明図である。不足分調整鋼管2bは、その時点での鋼管杭1の上端に溶接等により接合する。本実施形態1では、不足分調整鋼管2bは、中杭6の上端に接合する。これにより、地質調査に基づいて設定された鋼管杭1の全長が、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長よりも短い場合は、実際の鋼管杭1の全長が、設定された全長よりも長くなるようにし、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに必要な全長と同等の長さになるようにする。
【0043】
余剰分調整部2aを切断したり、不足分調整鋼管2bを接合したりすることにより、鋼管杭1の長さを調整したら、鋼管杭1における上杭5以外の部材と上杭5とを接合する。
図14は、
図12に示す余剰分調整部2aを切断することによって長さを調整した中杭6と下杭7に上杭5を接合した状態を示す説明図である。上杭5は、杭頭プレート21が位置する側の端部の反対側の端部を、その時点での鋼管杭1における上杭5以外の部材の上端に溶接等により接合する。即ち、上杭5は、中杭6における余剰分調整部2aを切断した部分に接合する。これにより、上杭5を接合した鋼管杭1の全長は、鋼管杭1を打設している地点において、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長になる。
【0044】
なお、
図14では、余剰分調整部2aを切断することによって長さを調整した、鋼管杭1における上杭5以外の部材に上杭5を接合する形態について説明したが、不足分調整鋼管2bを用いて長さを調整した場合でも、同様に上杭5を接合する。つまり、中杭6の上端に不足分調整鋼管2bを接合することにより鋼管杭1の長さを調整した場合は、上杭5は、不足分調整鋼管2bの上端に接合する。この場合も、上杭5の接合後の鋼管杭1の全長は、鋼管杭1を打設している地点において、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長になる。
【0045】
鋼管杭1における上杭5以外の長さを調節した後に上杭5を接合することにより、鋼管杭1の全長を、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長にしたら、長さを調整した鋼管杭1を支持層105に貫入する。上杭5を接合し、杭頭20に杭頭プレート21が位置する状態の鋼管杭1を杭打ち機150によって貫入する場合は、仮設治具30(
図15参照)を用いて貫入する。
【0046】
図15は、仮設治具30の側面図である。
図16は、
図15のF−F矢視図である。仮設治具30は、治具プレート31と、鋼管33と、回転キー34とを有している。鋼管33は、直径が鋼管杭1を構成する鋼管2の直径と同程度になっており、杭把持部160(
図9、
図10参照)で把持をすることができる程度の長さで形成されている。治具プレート31は、円板状の形状で形成されて鋼管33の一端に配設されており、直径が、上杭5の杭頭プレート21の直径と同程度の大きさになっている。
【0047】
治具プレート31には、治具プレート31を貫通する孔である取付孔32が複数形成されている。治具プレート31に形成される取付孔32は、杭頭プレート21に形成される取付孔22と同程度の大きさになっており、取付孔32の数や相対的な位置関係も、杭頭プレート21に形成される取付孔22の数や相対的な位置関係と同等になっている。回転キー34は、鋼管2に設けられる回転キー15と同等の大きさや形状になっており、鋼管33における治具プレート31が配設されている側の端部の反対側の端部寄りに位置に、2つが配設されている。
【0048】
図17は、上杭5に仮設治具30を取り付けた状態を示す説明図である。上杭5を接合した鋼管杭1を貫入する際には、上杭5に仮設治具30を取り付ける。具体的には、上杭5の杭頭プレート21に対して仮設治具30の治具プレート31を対向させ、杭頭プレート21に治具プレート31を重ねた状態で取付ボルト35を杭頭プレート21の取付孔22と治具プレート31の取付孔32とに通し、ナット36と螺合させる。これにより、仮設治具30は、回転キー34が近傍に位置する側の端部が上端側に位置する向きで、上杭5に取り付けられる。
【0049】
鋼管杭1の貫入は、上杭5に取り付けた仮設治具30を、杭打ち機150が有する杭打ち駆動部155に取り付けられる杭把持部160で把持することにより行う。即ち、仮設治具30は、直径が鋼管杭1を構成する鋼管2と同程度の直径の鋼管33を有し、鋼管33には回転キー34が設けられているため、仮設治具30は、鋼管杭1を把持する杭把持部160と同じ杭把持部160によって把持することができる。また、仮設治具30は、取付ボルト35とナット36により、上杭5の杭頭プレート21に取り付けられるため、杭把持部160で仮設治具30を把持した状態で杭打ち駆動部155によって仮設治具30を回転させた際には、仮設治具30と共に鋼管杭1も回転する。これにより、鋼管杭1は地盤100に貫入する。上杭5を接合した鋼管杭1の貫入は、このように上杭5に仮設治具30を取り付けることよって行う。
【0050】
図18は、鋼管杭1が支持層105に貫入した状態を示す説明図である。仮設治具30を取り付けた鋼管杭1を地盤100に貫入する場合も、杭打ち機150によって貫入中のおける各値を検出しながら貫入する。貫入中のおける各値を検出しながら貫入し、鋼管杭1が支持層105に到達したことを、検出した値に基づいて判断できる状態になったら、その状態から、支持層105に対して鋼管杭1を貫入する所定の深さまで、鋼管杭1をさらに貫入する。これにより、長さを調整した鋼管杭1を、支持層105に対して貫入する所定の深さまで、支持層105に貫入する。鋼管杭1は、支持層105に貫入するのに適した全長になるように長さが調整されているため、支持層105に対して貫入する所定の深さで支持層105に貫入した鋼管杭1は、杭頭20に設けられる杭頭プレート21の地表101に対する位置が、概ね設計時に設定した位置になる。
【0051】
図19は、鋼管杭1に柱部材50が結合された状態の説明図である。支持層105に所定の深さで貫入し、杭頭プレート21の位置が設計時に設定した位置になるように地盤100に鋼管杭1を埋設したら、鋼管杭1に柱部材50を接合する。柱部材50は、地上に建造する構造物側の部材であり、構造物の鉛直荷重を鋼管杭1に伝えるために、鋼管杭1に接合する部材になっている。鋼管杭1への柱部材50の接合は、柱部材50に設けられる結合プレート51を杭頭プレート21に結合することにより行う。
【0052】
詳しくは、結合プレート51は、柱部材50の下端に配設され、杭頭プレート21の形状に対応して杭頭プレート21に結合することが可能なプレートになっている。柱部材50は、杭頭プレート21の上側から杭頭プレート21に結合プレート51を重ねて、取付ボルト55とナット56とによって杭頭プレート21に結合プレート51を結合することにより、鋼管杭1に接合する。その際に、鋼管杭1は、杭頭プレート21の位置が設計時に設定した位置になっているため、柱部材50は、位置を調整することなく、鋼管杭1に接合することができる。
【0053】
なお、結合プレート51に対する杭頭プレート21の水平方向の位置調整は、例えば、特許第5702410号に記載された羽根付鋼管杭の回転圧入施工方法を適用することができる。即ち、杭頭プレート21に形成する、結合プレート51との結合に用いる取付ボルト55用の孔は、鋼管杭1が支持層105に貫入した後に、結合プレート51に形成されている取付ボルト55用の孔の位置に合わせて、杭頭プレート21に形成する。これにより、上下方向における位置が設計時に設定した位置となって配置される杭頭プレート21に、結合プレート51との結合に用いる取付ボルト55用の孔を、結合プレート51側の孔の位置に対して適切な位置にあけることができる。従って、結合プレート51と杭頭プレート21との結合を行う位置の位置合わせを、上下方向と水平方向とのいずれの方向においても高い精度で行うことができるため、杭頭プレート21に結合プレート51を確実に結合することができる。
【0054】
鋼管杭1に柱部材50を接合したら、地表101にコンクリート110を打ち込むことにより、鋼管杭1と柱部材50との接合部分を含めて地表101をコンクリート110で覆うか、または、溶融亜鉛めっきに代表される防錆措置を講じることにより、接合部の耐久性を確保する。
【0055】
以上の実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法は、鋼管杭1を支持層105まで到達させて支持層105までの深さを導き出した後に、鋼管杭1を引き上げて鋼管杭1の長さを調整し、長さを調整した鋼管杭1を支持層105に貫入するため、支持層105の杭頭20の位置を、設計時の位置に高い精度で近付けることができる。これにより、鋼管杭1を支持層105に貫入した段階で、杭頭20の位置を設計時の位置に合わせることができるため、鋼管杭1を埋設する工程の後の工程で鋼管杭1の長さを調整する作業を行うことなく、基礎構造の施工作業を進めることができる。この結果、より高い精度で施工を行うことができる。
【0056】
また、鋼管杭1の長さを調整する手順では、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長を導き出し、実際の鋼管杭1の全長が長い場合は余剰分調整部2aを切断し、実際の鋼管杭1の全長が短い場合は不足分調整鋼管2bを接合するため、実際の鋼管杭1の全長を、より確実に、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長にすることができる。これにより、杭頭20の位置を、鋼管杭1を支持層105に貫入した段階でより確実に設計時の位置に合わせることができる。この結果、より確実に高い精度で施工を行うことができる。
【0057】
また、鋼管杭1には、地上に建造する構造物の柱部材50が有する結合プレート51と結合する杭頭プレート21が杭頭20に配設されるため、鋼管杭1に柱部材50を直接接合する場合でも、鋼管杭1や柱部材50の長さを調整することなく接合することができる。この結果、より確実に高い精度で施工を行うことができる。
【0058】
また、杭頭プレート21は上杭5に配設され、鋼管杭1における上杭5以外の部材によって支持層105までの深さを導き出した後、上杭5以外の部材の長さを調整して上杭5を接合するため、杭頭20に杭頭プレート21を配設する場合でも、実際の鋼管杭1の全長を、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長にすることができる。これにより、柱部材50を接合させる杭頭プレート21の位置を、鋼管杭1を支持層105に貫入した段階でより確実に設計時の位置に合わせることができる。この結果、より確実に高い精度で施工を行うことができる。
【0059】
また、地上に建造する構造物の柱部材50が有する結合プレート51と結合する杭頭プレート21が杭頭20に配設される鋼管杭1では、最終的な鋼管杭1の杭頭20に杭頭プレート21が位置することが必須の構成になる。このため、杭頭20に杭頭プレート21が配設される鋼管杭1を打ち込んだ後の工程では、余剰分調整部2aを切断したり、不足分調整鋼管2bを接合したりすることができないため、鋼管杭1の長さの調整するのは不可能になっている。これに対し、本実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法では、杭頭プレート21が設けられる上杭5以外の部材の長さを調整することにより、鋼管杭1の全長を調整することができるため、杭頭20に杭頭プレート21が配設される鋼管杭1においても、鋼管杭1の全長を容易に調整することができる。これにより、鋼管杭1の杭頭20に杭頭プレート21を配設することによって、鋼管杭1と柱部材50との結合を容易に行う構成である場合でも、鋼管杭1の全長の調整を可能にすることができる、この結果、鋼管杭1と柱部材50とを、より確実に容易に結合することができる。
【0060】
[実施形態2]
実施形態2に係る鋼管杭1の施工方法は、実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法と略同様の構成であるが、鋼管杭1の杭頭20に杭頭プレート21が設けられない点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0061】
図20は、実施形態2に係る鋼管杭1の施工方法で埋設した鋼管杭1とフーチング120とが接合された状態を示す説明図である。実施形態2に係る鋼管杭1は、実施形態1に係る鋼管杭1とは異なり、杭頭20には杭頭プレート21が配設されていない。このため、実施形態2に係る鋼管杭1は、上杭5に杭頭プレート21が配設されず、上杭5は中杭6と同様に鋼管2に2つの回転キー15が設けられる形態で構成される。また、鋼管2の板厚は、上杭5を構成する鋼管2の板厚が、中杭6や下杭7を構成する鋼管2の板厚よりも厚くなっている。
【0062】
このように構成される実施形態2に係る鋼管杭1の施工方法は、実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法と同様に、鋼管杭1を地盤100に埋設する際には、まず、地質調査より仮定した支持層105までの深さに基づいて、鋼管杭1の全長を設定し、設定した全長の鋼管杭1を製造する。
【0063】
次に、製造した鋼管杭1を地盤100に貫入して支持層105まで到達させ、支持層105に到達した鋼管杭1が地盤100に入り込んでいる深さに基づいて、支持層105までの深さを導き出す。支持層105までの深さを導き出したら、鋼管杭1を引き上げて、導き出した支持層105までの深さに基づいて、上杭5以外の部材で鋼管杭1の長さを調整する。つまり、導き出した支持層105までの深さに基づいて、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した鋼管杭1の全長を導き出し、この全長に対して、実際の鋼管杭1の全長が長い場合は上杭5以外の部材の余剰分を切断し、鋼管杭1の全長が短い場合は上杭5以外の部材に対して不足分の長さの鋼管2を接合して継ぎ足す。上杭5以外の部材で鋼管杭1の長さを調整したら、長さを調整した部材に対して上杭5を接合する。
【0064】
このようにして、鋼管杭1の全長が、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長になるように調整したら、長さを調整した鋼管杭1を再度地盤100に貫入し、鋼管杭1を支持層105に貫入する。これにより、支持層105に鋼管杭1が貫入した後、鋼管杭1の長さを調整することなく、地盤100或いは地表101に対する杭頭20の位置が、設計時の位置に合うようにする。鋼管杭1が、支持層105に貫入することにより、杭頭20の位置が設計時の位置になったら、水等が杭頭20から鋼管2の内部に浸入しないように、鋼管杭1の内部に、杭頭20側を閉塞するための蓋(図示省略)を設置する。鋼管杭1の杭頭20側の閉塞は、杭頭20から鋼管杭1の長さ方向における所定の範囲まで、後述するコンクリート121を入り込ませることにより行う。鋼管杭1の内部に設置する蓋は、杭頭20から入り込むコンクリート121を受けるための部材になっており、杭頭20からの深さが、コンクリート121を入り込ませる深さとして設定される位置に設置する。この蓋は、例えば、杭頭20からの深さが、鋼管杭1の直径の2倍程度の位置に設置する。
【0065】
その後、鋼管杭1の杭頭20の上部に鉄筋122を配設し、杭頭20と鉄筋122をまとめて覆うようにコンクリート121を打ち込むことにより、フーチング120を形成する。その際に、鋼管杭1は、杭頭20側の端部付近が所定の長さで、コンクリート121の下端からコンクリート121内に入り込むようにする。鋼管杭1は、例えば、鋼管杭1の直径の大きさと同程度の長さで、コンクリート121の下端からコンクリート121内に入り込むようにする。また、コンクリート121を打ち込んだ際には、鋼管杭1の内部には、鋼管杭1内に設置した蓋の位置まで、杭頭20からコンクリート121が入り込む。即ち、鋼管杭1の内部には、杭頭20から鋼管杭1の直径の2倍程度の深さの位置まで、コンクリート121が入り込む。これらにより、鋼管杭1の杭頭20とフーチング120とを接合する。また、フーチング120を形成する際には、フーチング120にアンカーボルト126を配設し、地上に建造する構造物側の柱部材125とアンカーボルト126とをナット127で結合した状態で行う。これにより、構造物の鉛直荷重は、柱部材125からフーチング120を介して鋼管杭1で受け、鋼管杭1が貫入する支持層105で受けることができる。
【0066】
これらのように、鋼管杭1の杭頭20に杭頭プレート21が設けられず、柱部材125からの荷重がフーチング120を介して鋼管杭1に伝達される形態であっても、鋼管杭1を用いて支持層105までの深さを導き出した後、鋼管杭1を引き上げて鋼管杭1の長さを調整し、再び鋼管杭1を支持層105に貫入することにより、杭頭20の位置を設計時の位置に合わせることができる。これにより、フーチング120の施工時に、フーチング120の形態を杭頭20の位置に合わせて調整することなく、施工作業を進めることができる。この結果、より高い精度で施工を行うことができる。
【0067】
また、鋼管杭1の全長を調整する際に、上杭5以外の部材で調整するため、鋼管杭1の強度性能を損なうことなく全長を調整することができる。つまり、鋼管杭1を構成する鋼管2の板厚は、鋼管杭1に求められる強度に基づいて設定され、本実施形態2では、中杭6や下杭7を構成する鋼管2よりも、上杭5を構成する鋼管2の方が板厚が厚くなっている。このように構成される鋼管杭1において、全長を調整する際に、鋼管杭1全体の上端側で余剰分調整部2aを切断する場合、鋼管2の板厚が厚い部分の長さが短くなるため、鋼管杭1の強度が設計時の強度より低下する虞がある。また、鋼管杭1の全長を調整するために、鋼管杭1全体の上端に不足分調整鋼管2bを接合する場合、不足分調整鋼管2bに板厚が上杭5を構成する鋼管2の板厚より薄い鋼管2を用いてしまうと、鋼管杭1の強度が設計時の強度よりも低くなる虞がある。
【0068】
これに対し、本実施形態2では、鋼管杭1の全長を調整する際に、上杭5以外の部材で調整するため、鋼管2の板厚が厚い上杭5の長さが短くなったり、鋼管杭1の杭頭20付近が、上杭5を構成する鋼管2の板厚よりも板厚が薄い鋼管2によって構成されることを抑制したりすることができる。これにより、全長の調整後の鋼管杭1の強度を確保することができ、即ち、設計時の強度を確保しつつ、鋼管杭1の全長を調整することができる。この結果、鋼管杭1の強度性能を損なうことなく、鋼管杭1を高い精度で施工することができる。
【0069】
[変形例]
なお、実施形態1、2に係る鋼管杭1の施工方法では、鋼管杭1は、上杭5と中杭6と下杭7とにより構成されているが、鋼管杭1の構成は、これ以外であってもよい。鋼管杭1の構成は、例えば、中杭6を複数用いてもよく、または、中杭6を用いずに、上杭5と下杭7とのみによって構成されていてもよい。実施形態1、2に係る鋼管杭1は、地質調査より仮定した支持層105までの深さと、鋼管杭1の貫入に使用する杭打ち機150等に基づいて、一本の鋼管杭1に使用する鋼管2の数を適宜設定するのが好ましい。
【0070】
また、上述した実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法では、上杭5と中杭6との接合や、中杭6と下杭7との接合を、溶接によって行っているが、これらの接合は、溶接以外によって行ってもよい。上杭5と中杭6との接合や、中杭6と下杭7との接合は、例えば、機械式継手によって行ってもよい。それぞれを構成する鋼管2同士の接合は、接合後の強度を確保することのできる手法であれば、その手法は問わない。
【0071】
また、上述した実施形態1に係る鋼管杭1の施工方法では、鋼管杭1を支持層105に貫入する深さの一例として、鋼管2の直径+αの深さを挙げているが、鋼管杭1を支持層105に貫入する深さは、これ以外の深さであってもよい。鋼管杭1は、例えば、鋼管杭1が支持層105に到達した後の、鋼管杭1の一回転あたりの貫入量が所定値以下である場合や、杭打ち駆動部155で鋼管杭1を回転させる際における回転トルクが所定値以上である場合は、鋼管杭1は、鉛直荷重を支持層105に伝達できる深さで支持層105に貫入したとみなしてもよい。この場合、鋼管杭1は、支持層105に対する貫入量が、鋼管杭1を支持層105に貫入するのに適した全長を導き出す際の貫入量より小さくなるため、杭頭20の位置が設計時の位置よりも高くなる虞があるが、この場合における差は、地質調査に基づいて仮定する支持層105の深さと実際の支持層105の深さとの差よりも、概ね小さくなる。このため、鋼管杭1を地盤100に埋設した後の工程でも容易に調整することができ、後の工程に対する影響を低減することができる。