特開2020-70833(P2020-70833A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マブチモーター株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000003
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000004
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000005
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000006
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000007
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000008
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000009
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000010
  • 特開2020070833-軸受ユニットおよびモータ 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-70833(P2020-70833A)
(43)【公開日】2020年5月7日
(54)【発明の名称】軸受ユニットおよびモータ
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/10 20060101AFI20200410BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20200410BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20200410BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20200410BHJP
   H02K 5/167 20060101ALI20200410BHJP
【FI】
   F16C33/10 A
   F16C17/10 Z
   F16C35/02 B
   H02K7/08 Z
   H02K5/167 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-203715(P2018-203715)
(22)【出願日】2018年10月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 智
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【テーマコード(参考)】
3J011
3J117
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA04
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA01
3J011MA23
3J011MA27
3J011RA03
3J011SB19
3J117AA01
3J117CA02
3J117DA01
3J117DB07
5H605BB09
5H605CC03
5H605CC04
5H605EB06
5H605EB13
5H605EB16
5H605EB17
5H605EB28
5H605FF06
5H605GG01
5H607BB04
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD03
5H607DD09
5H607DD16
5H607GG01
5H607GG09
5H607GG10
5H607JJ04
5H607JJ06
(57)【要約】
【課題】含浸軸受を備えた軸受ユニットにおいて、軸受油の減少を抑制する。
【解決手段】軸受ユニットは、ロータ3のシャフト5を回転自在に支持する含浸軸受6と、ロータ3を内蔵するハウジングの軸方向端面2dを外側に向かって凸となるように形成され、含浸軸受6を回転不能に収容する収容部20と、収容部20に収容された含浸軸受6のロータ3側を向く端面6bに対向して配置される軸受カバー10と、を備える。収容部20は、軸方向に直交する断面形状が一定な有底筒状であり、内面21および底面22を有する。軸受カバー10は、ハウジング又は含浸軸受6に固定されるとともに含浸軸受6の端面6bに接触配置され、端面6bから離隔する方向に立設され含浸軸受6から飛散した油を受け止める壁部12と、壁部12で受け止められた油が含浸軸受6へ戻るときに通過する通過部13と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータのシャフトを回転自在に支持する含浸軸受と、
前記ロータを内蔵するハウジングの軸方向端面を外側に向かって凸となるように形成され、前記含浸軸受を回転不能に収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記含浸軸受の前記ロータ側を向く端面に対向して配置される軸受カバーと、を備え、
前記収容部は、軸方向に直交する断面形状が一定な有底筒状であり、軸方向に延在する内面および前記内面と直交する底面を有し、
前記軸受カバーは、前記ハウジング又は前記含浸軸受に固定されるとともに前記含浸軸受の前記端面に接触配置され、前記端面から離隔する方向に立設され前記含浸軸受から飛散した油を受け止める壁部と、前記壁部で受け止められた前記油が前記含浸軸受へ戻るときに通過する通過部と、を有する
ことを特徴とする、軸受ユニット。
【請求項2】
前記壁部は、前記収容部の外側まで立設されている
ことを特徴とする、請求項1記載の軸受ユニット。
【請求項3】
前記軸受カバーは、前記端面に接触配置されて前記端面を覆う被覆部と、前記被覆部に貫設された前記通過部としての油戻し孔と、を有する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の軸受ユニット。
【請求項4】
前記軸受カバーは、前記壁部の端部に径方向内側へ突設された庇部を有する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸受ユニット。
【請求項5】
前記収容部の前記底面には、前記シャフトが挿通される貫通孔が形成されており、
前記収容部の前記底面と前記含浸軸受との間に挟持され、前記貫通孔の内径よりも小さい内径を有する油止めワッシャを備えた
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の軸受ユニット。
【請求項6】
ハウジングに内蔵されたステータおよびロータを具備したモータにおいて、
前記ロータと一体回転するシャフトを回転自在に支持する含浸軸受と、前記ハウジングの開口を塞ぐとともに前記含浸軸受が固定されるエンドベルとに対して、請求項1〜5のいずれか1項に記載の軸受ユニットが適用されている
ことを特徴とする、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトを回転自在に支持する含浸軸受を備えた軸受ユニット、および、この軸受ユニットが適用されたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
事務機器や車載電装機器などに使用されるモータには、シャフトを回転自在に支持する軸受として、含浸軸受が採用されることがある。含浸軸受(以下「軸受」ともいう)は、相対的に摺動する二面間(すなわち、軸受内周面とシャフト外周面との間)に粘性油膜を介在させ、この油膜の圧力によってシャフトを支持する。この油(以下「軸受油」ともいう)は、焼結体である軸受の細孔内に含浸された潤滑油が、シャフトの回転による吸引力と軸受の温度上昇とによって表面に漏出したものである。なお、軸受の上下両端面から油が漏出しないよう、軸受の上下両端面の略全域を覆うワッシャを設けた構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−135547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1では、軸受の上端面および下端面からの油の漏出は抑制できても、軸受の内周面からの油の漏出や飛散を防止することは難しい。上記の通り、含浸軸受は、その内周面とシャフト外周面との間に油膜を介在させるものであることから、軸受の内周面からが最も油の漏出が発生しやすい。また、軸受から漏出した油は、軸受の表面に接していれば自然と細孔内に吸収され、再び粘性油膜の形成に寄与する。しかし、ロータの回転によって軸受から漏出した油が周囲に飛散してしまうと、軸受に戻ることができず、軸受油が減少してしまう。軸受油が減少すると潤滑が不十分となり、シャフトと軸受とが金属接触し、摺動異常音やモータ電流値の乱れ、軸受の摩耗促進に繋がるおそれもある。
【0005】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、含浸軸受を備えた軸受ユニットにおいて、軸受油の減少を抑制することを目的の一つとする。また、軸受油の減少を抑制して品質や寿命を向上させることができるようにしたモータを提供することも目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する軸受ユニットは、ロータのシャフトを回転自在に支持する含浸軸受と、前記ロータを内蔵するハウジングの軸方向端面を外側に向かって凸となるように形成され、前記含浸軸受を回転不能に収容する収容部と、前記収容部に収容された前記含浸軸受の前記ロータ側を向く端面に対向して配置される軸受カバーと、を備え、前記収容部は、軸方向に直交する断面形状が一定な有底筒状であり、軸方向に延在する内面および前記内面と直交する底面を有し、前記軸受カバーは、前記ハウジング又は前記含浸軸受に固定されるとともに前記含浸軸受の前記端面に接触配置され、前記端面から離隔する方向に立設され前記含浸軸受から飛散した油を受け止める壁部と、前記壁部で受け止められた前記油が前記含浸軸受へ戻るときに通過する通過部と、を有する。
【0007】
(2)前記壁部は、前記収容部の外側まで立設されていることが好ましい。
(3)前記軸受カバーは、前記端面に接触配置されて前記端面を覆う被覆部と、前記被覆部に貫設された前記通過部としての油戻し孔と、を有することが好ましい。
(4)前記軸受カバーは、前記壁部の端部に径方向内側へ突設された庇部を有することが好ましい。
【0008】
(5)前記収容部の前記底面には、前記シャフトが挿通される貫通孔が形成されており、前記軸受ユニットは、前記収容部の前記底面と前記含浸軸受との間に挟持され、前記貫通孔の内径よりも小さい内径を有する油止めワッシャを備えていることが好ましい。
【0009】
(6)ここで開示するモータは、ハウジングに内蔵されたステータおよびロータを具備したモータであって、前記ロータと一体回転するシャフトを回転自在に支持する含浸軸受と、前記ハウジングの開口を塞ぐとともに前記含浸軸受が固定されるエンドベルとに対して、上記の(1)〜(5)のいずれか一つに記載の軸受ユニットが適用されている。
【発明の効果】
【0010】
開示の軸受ユニットによれば、軸受カバーにより含浸軸受から飛散した油を受け止め、通過部を介して収容部内の含浸軸受に戻すことができる。さらに、軸受カバーが含浸軸受の端面に接触配置されるため、含浸軸受の端面からの油の漏出を直接的に抑えることができる。これらにより、含浸軸受の油の減少を抑制できることから、油不足に起因した摺動異常音の発生や電流値の乱れ等を防止できる。
また、開示のモータによれば、軸受油の減少を抑制することができるため、モータの品質や寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るモータを示す模式的な軸方向断面図である。
図2】実施形態に係る軸受ユニットを示す軸方向断面図(図1のA部拡大図)である。
図3図2の軸受ユニットが備える軸受カバーの斜視図である。
図4図2の軸受ユニットの作用を説明する図である。
図5】第一変形例に係る軸受ユニットを示す軸方向断面図である。
図6】第二変形例に係る軸受ユニットを示す軸方向断面図である。
図7】第三変形例に係る軸受ユニットを示す軸方向断面図である。
図8】第四変形例に係る軸受ユニットを示す軸方向断面図である。
図9】第五変形例に係る軸受ユニットを示す軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としての軸受ユニットおよびモータについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.構成]
図1は本実施形態に係るモータ1の軸方向断面図であり、図2は本実施形態に係る軸受ユニットを示す軸方向断面図(図1のA部拡大図)である。本実施形態のモータ1は、例えば事務機器や家庭用電気機器などに使用される小型モータである。なお、本実施形態のモータ1はブラシ付きの直流モータを例示するが、モータの種類や用途は特に限定されない。
【0014】
図1に示すように、モータ1は、ハウジング2に内蔵されたロータ3およびステータ4を備える。ロータ3は、シャフト5に固定されたロータコア3aおよび整流子3bと、ロータコア3aに巻回されたコイル3c等を有する。ステータ4は、ハウジング2の内周面2cに固定されたマグネット4aを有する。ハウジング2は、有底円筒状に形成された本体部2Aと、本体部2Aの開口を塞ぐエンドベル2Bとを有する。本体部2Aの底部2dおよびエンドベル2Bは、軸方向に直交する方向に延在し、いずれもハウジング2の軸方向端面をなす。
【0015】
ハウジング2の底部2dおよびエンドベル2Bのそれぞれには、含浸軸受6(以下「軸受6」という)を回転不能に収容する収容部20が設けられる。収容部20は、底部2dおよびエンドベル2Bのそれぞれを外側に向かって凸となるように形成された部位である。図2に示すように、収容部20は、軸方向に直交する断面形状が一定な有底筒状をなし、軸方向に延在する内面21と、内面21と直交するように連続して設けられた底面22とを有する。本実施形態の収容部20は有底円筒状に形成されており、内面21は軸方向において一定の内径を持つ円筒面であり、底面22は内面21の軸方向一端に連続して設けられた円形状である。なお、収容部20の各底面22には、シャフト5が挿通される貫通孔22hが形成されている。
【0016】
軸受6は、潤滑油を含浸させた筒状の焼結体であり、ロータ3のシャフト5を回転自在に支持する。本実施形態の軸受6は円筒状に形成されており、図1に示すように、二箇所の収容部20に圧入固定される。シャフト5が回転すると、いわゆるポンプ作用が起こって細孔内の油が外部へと吸い出される。これにより、軸受6とシャフト5との間に油膜が形成される。シャフト5の回転中は、細孔内の油が外部への吸い出されるとともに軸受6の周辺の油が細孔内へと吸収される。一方、シャフト5の回転が停止すると、軸受6の表面に接している油は毛細管現象によって細孔に吸収される。
【0017】
図2に示すように、軸受6は、収容部20の底面22側を向く端面6a(以下「外端面6a」という)が底面22に面接触して配置され、ロータ3側を向く端面6b(以下「内端面6b」という)が収容部20内に完全に収まるように、ハウジング2に固定される。言い換えると、収容部20の深さ(内面21の軸方向寸法)は、軸受6の軸方向長さよりも長い。
【0018】
さらにモータ1には、軸受カバー10が設けられる。図1に示すように、軸受カバー10は、各収容部20に収容された軸受6の内端面6bに接触配置され、軸受6の外部へと吸い出されることによる油の漏れを抑制するとともに、漏れた油が周囲へ飛散することを抑制する機能を持つ。
【0019】
図2に示すように、軸受カバー10の軸受6側を向く面(以下「対向面10e」という)には、軸受6の内端面6bが接触し、この対向面10eの逆側の面(以下「内面10f」という)には、シャフト5と一体回転する調整ワッシャ7が接触する。調整ワッシャ7は、シャフト5に軽圧入されており、ロータ3の軸方向位置を調整する機能を持つ。調整ワッシャ7は、樹脂製であり、軸受カバー10の内面10fのうち径方向内側部分を覆う円環状に形成される。なお、調整ワッシャ7のコイル3c側の面には、シャフト5と一体回転するロータブッシュ3dが接触配置される。ロータブッシュ3dと調整ワッシャ7とが面接触することで、ロータ3の軸方向位置が定まる。
【0020】
上述した含浸軸受6,ハウジング2の収容部20,および軸受カバー10は、本実施形態の軸受ユニットを構成する主要部品である。以下、軸受ユニットについて詳述する。なお、以下の説明では便宜上、ハウジング2の底部2d側に固定された軸受6に着目して説明するが、エンドベル2B側に固定された軸受6にも同様の軸受ユニットを適用可能である。
【0021】
本実施形態の軸受ユニットでは、軸受カバー10がハウジング2に固定されるとともに軸受6の内端面6bを覆うように接触配置される。図2および図3に示すように、軸受カバー10は、中心に円形の孔を持つ平面状の底面部11と、底面部11の周囲において底面部11に対し直角に立設された壁部12とを有する有底筒状(ここでは円筒状)に形成されている。
【0022】
底面部11は、軸受6の内端面6bを被覆する部位(被覆部)である。壁部12は、軸受カバー10が収容部20に固定された状態で軸受6の内端面6bから離隔する方向(すなわち、ロータ3側に向かう方向)に立設されており、軸受6から飛散した油を受け止める部位である。本実施形態の壁部12には、図3に示すように、外周面の一部が径方向外側へ凸状に形成された凸部12aが複数(図3では六つ)設けられており、これら凸部12aが収容部20への締め代となる。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の壁部12は、収容部20の外側まで立設されており、飛散した油を広範囲で受け止められるようになっている。図2に示す壁部12は、コイル3cとの間に間隔をあけるとともに、ロータブッシュ3dの周囲全体を覆う高さ(軸方向長さ)に形成されている。なお、エンドベル2B側に設けられる軸受ユニットでは、整流子3bやブラシ等と接触しないように壁部12の高さ(軸方向長さ)が設定される。
【0024】
また、底面部11には、壁部12で受け止められた油が軸受6へ戻るときに通過する通過部としての油戻し孔13が貫設されている。本実施形態の軸受カバー10には、六つの油戻し孔13が周方向に等間隔に設けられており、底面部11と壁部12との境界位置に形成されている。なお、六つの凸部12aも周方向に等間隔に配置されており、油戻し孔13と凸部12aとの周方向位置が同一に設けられている。
【0025】
本実施形態の軸受カバー10は樹脂製であり、シャフト5の外周面との間に僅かな隙間をあけて配置される。言い換えると、軸受カバー10の径方向内側の縁部とシャフト5の外周面との間には、僅かな隙間が形成される。軸受カバー10が樹脂製であることから、この隙間はできるだけ小さくすることができ、これにより、軸受カバー10の径方向内側からの油の漏出が抑制される。
【0026】
本実施形態の軸受カバー10は、底面部11および壁部12に撥油処理が施された撥油面を有する。撥油処理とは、油をはじく撥油処理剤を塗布する処理である。撥油面に付着した油は、広がらずに球状となるため、例えば軸受カバー10の壁部12で受け止めた油が内面10fへと落下しやすくなる。また、内面10f上の油が油戻し孔13を通じて軸受6に戻りやすくなる。さらに、底面部11の対向面10eにおいて軸受6から漏れ出ようとする油をはじき、漏れを抑制することもできる。なお、軸受カバー10の表面全体に撥油処理が施されていてもよいし、撥油処理を省略してもよい。
【0027】
[2.作用,効果]
(1)上述した軸受ユニットによれば、ハウジング2に固定された軸受カバー10により、図4中に矢印で示すように、軸受6から飛散した油を受け止め、通過部(油戻し孔13)を介して収容部20内の軸受6に戻すことができる。さらに、軸受カバー10が軸受6の内端面6bに接触配置されるため、軸受6の内端面6bからの油の漏出を直接的に抑えることができる。これらによって、軸受6の油の減少を抑制できることから、油不足によりシャフト5と軸受6とが金属接触することで発生する摺動異常音を抑制できる。さらに、油不足に起因した電流値の乱れを抑制できるとともに、回転負荷の増大や軸受6の摩耗促進をも防ぐことができる。
【0028】
(2)上述した軸受カバー10は、壁部12が収容部20の外側まで立設されていることから、軸受6から飛散した油を広範囲で受け止めることができる。これにより、軸受6の油の減少をより抑制できる。
【0029】
(3)また、上述した軸受カバー10は、底面部11が軸受6の内端面6bに接触配置されてこの内端面6bを覆うため、底面部11によって軸受6の内端面6bからの油の漏出を効果的に抑えることができる。また、壁部12によって受け止められた油は、底面部11に貫設された油戻し孔13を介して軸受6に戻ることができる。これらにより、軸受6の油の減少をより抑制できる。
【0030】
(4)上述した軸受ユニットが適用されたモータ1によれば、軸受6から漏出した油を軸受カバー10によって軸受6に戻すことができるため、油の減少を抑制でき、モータ1の品質や寿命を向上させることができる。
【0031】
[3.変形例]
上述した軸受ユニットは一例であって、その構成は上述したものに限られない。図5図9は、第一変形例〜第五変形例に係る軸受ユニットを示す断面図(図2に対応する図)である。なお、上述した実施形態やそれまでに説明した変形例と同様の構成については、上述した実施形態や変形例の符号と同一の符号又は同様の符号(同一の数字に異なるアルファベット等)を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
[3−1.第一変形例]
図5に示すように、第一変形例に係る軸受ユニットは、調整ワッシャ7が軸受6の内端面6bに接触配置され、軸受カバー10Aが調整ワッシャ7の径方向外側に配置されるとともに配置可能な形状に形成されている点を除いて、上述した実施形態と同様に構成される。すなわち、本変形例では、軸受カバー10Aの底面部11の内径が上述した軸受カバー10の底面部11の内径よりも大きい。なお、底面部11には、上述した実施形態と同様、通過部としての油戻し孔13が複数形成される。
【0033】
また、壁部12の高さ(軸方向長さ)は、収容部20よりも外側まで飛び出るように設定されていることが好ましい。本変形例の軸受ユニットによれば、軸受6の内端面6bに軸受カバー10Aおよび調整ワッシャ7が共に面接触配置されるため、内端面6bからの油漏れを抑制できる。また、上述した実施形態と同様の構成からは同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例の構成であれば、上述した実施形態よりもロータ3の軸方向寸法を短くでき、モータ1の小型化を図ることができる。
【0034】
[3−2.第二変形例]
図6に示すように、第二変形例に係る軸受ユニットは、軸受カバー10Bの構成が上述した実施形態と異なる。なお、調整ワッシャ7が軸受6の内端面6bの径方向内側部分に面接触配置されている点は第一変形例と同様である。本変形例の軸受カバー10Bは、被覆部としての底面部11を有さず、内端面6bから離隔する方向に立設され軸受6から飛散した油を受け止める壁部12と、壁部12で受け止められた油が軸受6へ戻るときに通過する通過部13′とを有する。なお、軸受カバー10Bがハウジング2の収容部20に固定されるとともに軸受6の内端面6bに接触配置される点は、上述した実施形態と同様である。ただし、本変形例では、内端面6bに接触するのは壁部12の端面だけである。
【0035】
変形例の壁部12は、収容部20の内周面21に圧入固定され、収容部20の外側まで立設されている。軸受カバー10Bは、壁部12の端部(コイル3c側の端部)に径方向内側へ突設された庇部14を有する。庇部14は、軸方向から見て中心に円形の孔を持つ円環形状をなし、軸方向と直交する方向に延在する平面部である。軸受カバー10Bは、壁部12および庇部14によって、軸受6から飛散した油を受け止め、受け止めた油を、壁部12の径方向内側の空間を通じて軸受6へと戻す。すなわち、壁部12の径方向内側の空間が通過部13′として機能する。
【0036】
本変形例に係る軸受ユニットによれば、壁部12に加えて、庇部14によっても軸受6から飛散した油を受け止めることができる。さらに、本変形例では、通過部13′が貫通孔ではなく空間として設けられるため、壁部12や庇部14により受け止めた油をよりスムーズに軸受6へと戻すことができる。これらによって、より効果的に油の減少を抑制することができる。なお、軸受6の内端面6bにおける径方向内側部分には、調整ワッシャ7が面接触配置されているため、軸受6の径方向内側部分からの油漏れを抑制できる。また、上述した実施形態と同様の構成からは同様の効果を得ることができる。
【0037】
[3−3.第三変形例]
図7に示すように、第三変形例に係る軸受ユニットは、収容部20′の深さ(軸方向長さ)および軸受カバー10Cの構成が上述した実施形態と異なる。言い換えると、本変形例の軸受ユニットは、収容部20′の深さが浅いハウジング2に固定される軸受6に適用可能である。なお、図7には、軸受6の軸方向寸法の半分程度の深さを有する収容部20′を例示している。また、調整ワッシャ7が軸受6の内端面6bの径方向内側部分に面接触配置されている点は第一変形例と同様である。
【0038】
本変形例の軸受カバー10Cは、軸受6に固定される点で上述した実施形態等とは異なる。すなわち、軸受カバー10Cには、軸受6に対する固定部15が設けられる。固定部15は、底面部11の外周端部から底面部11に対して直角かつ壁部12とは逆方向に立設された円筒部分である。軸受カバー10Cは、底面部11が軸受6の内端面6bに面接触するとともに、固定部15の内周面が軸受カバー10Cの外周面に面接触して固定される。なお、軸受6に対する軸受カバー10Cの固定方法は、例えば圧入や接着等が選択される。
【0039】
底面部11は、上記の第一変形例と同様、調整ワッシャ7が径方向内側に配置されるように、その内径が大きく形成される。また、底面部11には、上述した実施形態と同様、通過部としての油戻し孔13が複数形成される。さらに、底面部11における油戻し孔13よりも径方向外側には、壁部12が立設される。なお、固定部15の端面はハウジング2の底部2dに面接触配置される。このような構成によっても、上述した実施形態と同様の構成からは同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例の軸受ユニットであれば、収容部20′の深さが浅いハウジング2に固定される軸受6に対しても適用可能である。
【0040】
[3−4.第四変形例]
図8に示すように、第四変形例に係る軸受ユニットは、軸受カバー10Dの構成が上述した実施形態と異なる。具体的には、軸受カバー10Dは、第二変形例で説明した軸受カバー10Bに、シャフト5と一体回転する補助軸受カバー30が組み合わされて構成される。すなわち、本変形例の軸受カバー10Dは、二部品から構成される。なお、調整ワッシャ7が軸受6の内端面6bの径方向内側部分に面接触配置されている点は第一変形例と同様である。
【0041】
補助軸受カバー30は、シャフト5に圧入固定されており、調整ワッシャ7とロータブッシュ3dとの間に挟持される。補助軸受カバー30は、径方向外側かつ軸受6側の部分に、調整ワッシャ7の径方向外側まで延設されて調整ワッシャ7に覆い被さる円環部31が形成されている。この円環部31は、軸受6の内端面6bとは非接触に配置されるが、内端面6bとの間の隙間はできるだけ小さいことが好ましい。なお、軸受カバー10Bの構成は第二変形例で説明したものと同一である。このような構成によれば、第二変形例で説明した効果に加え、軸受6の径方向内側部分からの油漏れを効果的に抑制できるため、油の減少をより効果的に抑制できる。
【0042】
[3−5.第五変形例]
図9に示すように、第五変形例に係る軸受ユニットは、上述した実施形態の軸受ユニットに対し、収容部20の底面22側に油止めワッシャ40を備える点で異なる。油止めワッシャ40は、例えば布ベークライト製であり、軸受6の外端面6aの略全面を覆う円環状に形成される。油止めワッシャ40は、収容部20に圧入され、収容部20の底面22と軸受6との間に挟持される。油止めワッシャ40の内径は、底面22の貫通孔22hよりも小さく形成されており、これにより軸受6の油が貫通孔22h側から漏れることを抑制できる。すなわち、軸受6の油の減少をさらに抑制することができる。なお、上述した実施形態と同様の構成からは同様の効果を得ることができる。
【0043】
[4.その他]
上述した軸受ユニットは一例であって、その構成は上述したものに限られない。また、上記実施形態の構成と各変形例の構成とを適宜組み合わせてもよい。例えば、第五変形例で説明した油止めワッシャ40を、第一〜第四変形例に係る軸受ユニットに設けてもよい。また、第四変形例で説明した補助軸受カバー30を、例えば第一変形例や第三変形例に係る軸受ユニットに設けてもよい。
【0044】
また、上述した軸受カバー10等の具体的な形状は一例であり、上述したものに限られない。例えば、上述した実施形態の軸受カバー10や図5の軸受カバー10Aが、図6に示す軸受カバー10Bの庇部に相当する部位を有していてもよい。すなわち、軸受カバーが、底面部と壁部と庇部とを有する形状に形成されていてもよい。この場合、軸受カバーは一体ものでもよいし、複数部品を組み合わせて構成されていてもよい。
【0045】
また、油戻し孔13および凸部12aのそれぞれの個数や配置が上述したものでなくてもよいし、壁部12の高さ寸法(軸方向長さ)を収容部20の深さと同等にし、軸受カバー10等の全体が収容部20の内部に収まるように配置してもよい。なお、調整ワッシャ7は必須ではなく、省略してもよい。また、軸受カバー10等および油止めワッシャ40の材質は一例であって、上記以外の材料で形成されていてもよい。
【0046】
上述したモータ1は一例であり、上述した構成に限られない。例えば、ハウジング2および収容部20,20′の各形状が有底円筒状でなくてもよいし、整流子3bのない方の収容部20の底面22に貫通孔22hが形成されていなくてもよい。また、ハウジング2の底部2d側の軸受6に適用される軸受ユニットと、エンドベル2B側の軸受6に適用される軸受ユニットとが異なる構成であってもよい。例えば、前者の軸受ユニットに図2の軸受カバー10が設けられ、後者の軸受ユニットに図5の軸受カバー10Aが設けられてもよい。なお、上述した軸受ユニットを、モータ以外の製品に適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 モータ
2 ハウジング
2B エンドベル(軸方向端面)
2d 底部(軸方向端面)
3 ロータ
4 ステータ
5 シャフト
6 軸受(含浸軸受)
6b 内端面(ロータ側を向く端面)
10,10A,10B,10C,10D 軸受カバー
11 底面部(被覆部)
12 壁部
13 油戻し孔(通過部)
13′ 通過部
14 庇部
20,20′ 収容部
21 内面
22 底面
22h 貫通孔
40 油止めワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9