【解決手段】本発明の水素を用いた発電システム(1)は、発電装置と、発電装置に供給する水素を発生させる水素発生装置(2)と、を備え、水素発生装置(2)は、水溶液(11)を貯蔵する水溶液貯蔵部(10)と、水溶液(11)との反応で水素の発生が可能な状態のマグネシウムを含む原料(21)を貯蔵する原料貯蔵部(20)と、原料貯蔵部(20)から水溶液貯蔵部(10)に向けて原料(21)を供給する原料供給機構(30)と、を備える。
前記発電システムは、前記水素が前記水溶液貯蔵部から前記発電装置に至るまでの間に設けられ、前記水溶液貯蔵部で発生した前記水素を貯蔵できるバッファ機構を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発電システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態の発電システム1を説明するための断面図である。
なお、以下では、発電システム1の説明を行いながら、本発明に係る第1実施形態の水素発生装置2の説明も行う。
【0024】
図1に示すように、発電システム1は、発電装置(図示せず)と、これから詳細に説明する、発電装置に供給する水素を発生させる水素発生装置2と、を備えている。
【0025】
図示しない発電装置は、例えば、本実施形態では、水素を燃料としてタービンを駆動させる一般的なタービン発電機を想定している。
ただし、後述する別の実施形態のように、図示しない発電装置は燃料電池であってもよい。
【0026】
水素発生装置2は、水溶液11を貯蔵する水溶液貯蔵部10と、水溶液11との反応で水素の発生が可能な状態のマグネシウムを含む原料21を貯蔵する原料貯蔵部20と、原料貯蔵部20から水溶液貯蔵部10に向けて原料21を供給する原料供給機構30と、を備えている。
【0027】
水溶液11は、水であってもよいし、アンモニア等を含有するアルカリ性の水溶液であってもよいし、塩酸や硝酸等の酸性の水溶液であってもよい。
なお、発電システム1を稼働させるときのランニングコストの面では、水溶液11は水である方が有利であり、一方、原料21との反応性の面では、水溶液11はアンモニウムイオンを含むアルカリ性の水溶液、もしくは塩酸等の酸性の水溶液の方が有利である。
【0028】
原料21は、水溶液11との反応性を高めるため、平均粒子径が小さい粒子状(マイクロ粒子やナノ粒子の状態)であることが好ましく、例えば、水溶液11との反応で水素の発生が可能な状態のマグネシウムとしては、金属マグネシウム、水素化マグネシウム等があげられる。
【0029】
ただし、粒子と言っても形状が球状であることを限定するものではなく、各粒子の最大外径を平均したときの平均外径がマイクロメータオーダーの場合はマイクロ粒子であり、マイクロメータオーダーよりも小さい場合(サブミクロン含む)はナノ粒子であるものと解されるべきである。
【0030】
なお、原料21は金属マグネシウムと水素化マグネシウムの混合されたものであってもよい。
また、原料21には、金属マグネシウムや水素化マグネシウムを生成するために用いた材料が金属マグネシウムや水素化マグネシウムにならずに残留して一部含まれているものであってもよい。
【0031】
水溶液貯蔵部10は、原料21と水溶液11が反応する反応室としても機能し、水溶液11及び反応で発生した水素等が外部に漏洩しない密閉構造の容器を構成するようになっている。
【0032】
水溶液貯蔵部10には、水溶液11より上側となる水溶液11の存在しない上部空間USが形成されるように、水溶液11の給水が行われることで、水溶液貯蔵部10は、水溶液11より上側となる水溶液11の存在しない上部空間USを備えるものになっている。
【0033】
具体的に上部空間USを形成する構成について説明すると、まず、水溶液貯蔵部10は、水溶液11の水面LSFの上限位置を決めるために設けられ、水面LSFを検知する上側レベルセンサ12と、水溶液11の水面LSFの下限位置を決めるために設けられ、水面LSFを検知する下側レベルセンサ13と、を備えている。
【0034】
また、水溶液貯蔵部10は、上部空間USの下側となる水溶液11の存在する下部空間LSと、下部空間LS内を上下に仕切る仕切部14と、仕切部14より下側に設けられ、水溶液11を排水する排水口15と、仕切部14より上側に設けられ、水溶液11を供給する給水口16と、を備えるとともに、仕切部14は、水溶液11が通過可能な複数の貫通孔14Aを備えている。
【0035】
そして、水素発生装置2は、排水口15に接続され、水溶液貯蔵部10内の水溶液11を排水するための排水ライン15A(排水配管ともいう。)と、排水口15寄りの排水ライン15A上に設けられ、排水口15からの水溶液11の排水(排水の有無)を制御する排水制御弁15Bと、を備えている。
【0036】
同様に、水素発生装置2は、給水口16に接続され、水溶液貯蔵部10内に新しい水溶液11を供給するための給水ライン16A(給水配管ともいう。)と、給水口16寄りの給水ライン16A上に設けられ、給水口16からの水溶液11の給水(給水の有無)を制御する給水制御弁16Bと、を備えている。
【0037】
このため、後ほど説明する排給水する所定のタイミングになると、図示しない水素発生装置2の制御部(以下、単に制御部という。)が、まず、排水制御弁15Bを開にして、水溶液貯蔵部10内の水溶液11の排水を行った後、排水制御弁15Bを閉にするとともに、給水制御弁16Bを開にして水溶液11の水面LSFが上側レベルセンサ12と下側レベルセンサ13との間に位置するように、水溶液貯蔵部10内に水溶液11を給水して給水制御弁16Bを、再び、閉にする。
【0038】
例えば、排水時には、下側レベルセンサ13が水溶液11の水面LSFを検知したのを基準にして、仕切部14のところまで水溶液11の水面LSFが低下する程度の水溶液11の排水を行う。
【0039】
具体的には、排水制御弁15Bを開にしたときの単位時間当たりの排水量は、あらかじめ調べておくことができるため、下側レベルセンサ13が水溶液11の水面LSFを検知したのをスタート点に仕切部14のところまで水溶液11の水面LSFが低下するのに必要な排水量の水溶液11の排水に係る時間が経過したことをもって、排水制御弁15Bを閉にすればよい。
【0040】
そして、その水溶液11の排水が終わった後、水溶液11の給水を開始し、下側レベルセンサ13が水溶液11の水面LSFを検知したのを基準にして、水溶液11の水面LSFが上側レベルセンサ12と下側レベルセンサ13との間に位置する程度の水溶液11の給水を行ったところで給水を終了するようにし、水溶液11の水面LSFが上側レベルセンサ12と下側レベルセンサ13との間に位置することで、水溶液貯蔵部10が水溶液11より上側となる水溶液11の存在しない上部空間USを備えるものとされている。
【0041】
具体的には、給水制御弁16Bを開にしたときの単位時間当たりの給水量は、あらかじめ調べておくことができるため、下側レベルセンサ13が水溶液11の水面LSFを検知したのをスタート点に水溶液11の水面LSFが上側レベルセンサ12と下側レベルセンサ13との間に位置するのに必要な給水量の水溶液11の給水に係る時間が経過したことをもって、給水制御弁16Bを閉にすればよい。
【0042】
なお、排給水する所定のタイミング以外のときに、上側レベルセンサ12が水溶液11の水面LSFを検知すると、図示しない制御部は、排水制御弁15Bを開にして、水溶液11の水面LSFが上側レベルセンサ12と下側レベルセンサ13との間に位置する程度の水溶液11の排水を行った後、排水制御弁15Bを閉にする。
【0043】
逆に、排給水する所定のタイミング以外のときに、下側レベルセンサ13が水溶液11の水面LSFを検知すると、図示しない制御部は、給水制御弁16Bを開にして、水溶液11の水面LSFが上側レベルセンサ12と下側レベルセンサ13との間に位置する程度の水溶液11の給水を行った後、給水制御弁16Bを閉にする。
【0044】
そして、上述した仕切部14の複数の貫通孔14Aの内径が原料21と水溶液11との反応で生成する水酸化マグネシウム等の副生成物の通過を妨げない大きさとされている。
【0045】
つまり、仕切部14は、原料21と水溶液11との反応で生成した副生成物が仕切部14より下側に沈殿可能に設けられた複数の貫通孔14Aを備えるものになっている。
【0046】
このため、仕切部14より下側に設けられた排水口15からは、副生成物の含有濃度の高い水溶液11が排水される。
【0047】
なお、仕切部14の複数の貫通孔14Aの内径は、仮に、原料21が仕切部14より下側に沈殿して、仕切部14より下側で水素が発生したときに、その水素による気泡が邪魔されずに仕切部14より上側に通過できる、又は、仕切部14の下面に一時的に水素溜まりができたとしても、自然と仕切部14の上側に移動することになる程度の大きさにもなっている。
【0048】
一方、
図1に示すように、水素発生装置2は、仕切部14より上側の水溶液11を攪拌する攪拌機構40を備えている。
【0049】
具体的には、攪拌機構40は、水溶液貯蔵部10の上部の壁部の外側に設けられたモータ41と、仕切部14より上側の水溶液11内に配置され、水溶液11を攪拌するプロペラ42と、モータ41の回転力をプロペラ42に伝達し、水溶液11を攪拌するようにプロペラ42を回転させるシャフト43と、を備えている。
なお、シャフト43が水溶液貯蔵部10内に挿入される挿入部は、回転を阻害せず、機密を維持可能な機密構造とされている。
【0050】
この攪拌機構40は、水溶液11と反応していない原料21が仕切部14上に溜まるのを抑制するために設けられているものであり、後ほど説明するように、本発明の構成によれば、原料21と水溶液11の反応効率が高いため、必ずしも必要というわけではない。
【0051】
そして、図示しない制御部は、定期的に攪拌機構40を駆動させ、原料21と水溶液11の反応を促進する。
なお、攪拌機構40を、常時、駆動させるようにしてもよいが、定期的に駆動させることで、仕切部14より下側に副生成物が沈殿しやすくすることができ、仕切部14より上側の水溶液11中の副生成物の含有濃度を低下させ、原料21と水溶液11の反応効率を高めることができる。
【0052】
また、仕切部14が設けられていることで、攪拌機構40を駆動させたときに、仕切部14よりも下側に沈殿した副生成物が巻き上げられて、仕切部14より上側の水溶液11中の副生成物の含有濃度が上昇することを抑制することができるため、攪拌機構40の駆動により、原料21と水溶液11の反応効率が低下するのを抑制することができる。
【0053】
一方、水素発生装置2は、上部空間USに連通するように水溶液貯蔵部10に接続された緊急排気ライン50(緊急排気配管ともいう。)と、緊急排気ライン50の上部空間USに連通する連通部寄りの位置に設けられ、緊急排気の有無を制御する電磁弁51と、電磁弁51から水溶液貯蔵部10に至るまでの間の緊急排気ライン50上に接続され、上部空間USの圧力を測定する圧力測定装置52(例えば、デジタルマノスターゲージ)と、を備えている。
【0054】
したがって、上部空間USの圧力を測定する圧力測定装置52の圧力測定の結果が、異常に高い圧力を示した場合には、図示しない制御部が、電磁弁51を開にすることで上部空間US内の圧力が所定の第1圧力(求められる一次圧)になるように降圧制御を行う。
なお、所定の第1圧力(求められる一次圧)になれば、図示しない制御部は、再び、電磁弁51を閉の状態にする。
【0055】
原料貯蔵部20は、上側に原料21の充填作業のときに開閉される作業扉22を有しているが、この作業扉22を閉めると、密閉構造の容器を構成するようになっている。
【0056】
また、原料貯蔵部20は、作業扉22に隣接して上側に設けられ、貯蔵している原料21の表面までの距離を測定する距離測定器24(例えば、変位センサ)を備えており、この距離測定器24が測定する原料21までの距離が長くなることで原料21を追加する時期の把握ができるようになっている。
【0057】
なお、原料21は水溶液11のように表面が必ずしもフラットに近い状態になるとは言えないが、後述する原料供給機構30の駆動によって、原料21全体に振動等が発生するため、比較的フラットな状態を保つことができ、距離測定器24が測定する原料21までの距離の測定結果は、原料21を追加する時期の一つの目安とすることができる。
【0058】
ただし、後述するように、本実施形態では、水溶液11に供給された原料21の供給量を把握できるため、水溶液11に供給された原料21の供給量が所定の分量に到達したことを基準として原料21を追加するようにしてもよく、この場合、距離測定器24は不要となる。
【0059】
そして、原料貯蔵部20は、底部の壁部の少なくとも一部が、水溶液貯蔵部10の上部の壁部の外側と密着するように設けられ、その密着している箇所の底部の壁部には、底部の壁部を貫通する原料21を水溶液貯蔵部10内に供給するための原料供給孔23が形成されている。
【0060】
また、水溶液貯蔵部10も原料貯蔵部20の原料供給孔23に対応する位置に、上部の壁部を貫通する原料21を受け入れるための原料受入孔17が形成されている。
【0061】
一方、原料貯蔵部20内には、原料供給機構30が設けられている。
具体的には、原料供給機構30は、原料貯蔵部20の上部の壁部の内側に設置されたモータ31と、原料貯蔵部20の底部の壁部の内側に隣接して配置され、原料21を原料供給孔23の位置に運搬する円板32と、モータ31の回転力を円板32に伝達し、円板32を回転させるシャフト33と、を備えている。
【0062】
なお、図示を省略しているが、原料貯蔵部20は、原料供給機構30を内蔵させる作業のために、底部とそれよりも上側の部分が分離可能に構成され、それらを一体化して形成されたものになっている。
【0063】
そして、
図1の左側に点線枠で囲んで示す円板32の斜視図のように、円板32は、回転中心Oを挟んで対向し、回転中心Oからほぼ同じ距離離れた位置に位置する、一対の貫通孔(貫通孔32Aと貫通孔32B)が形成されている。
【0064】
ここで、
図1を見るとわかるように、原料貯蔵部20は、原料供給孔23に対応する部分の上側に、円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部を備えており、その凹部に位置する円板32の貫通孔(貫通孔32B参照)の上側の開口に凹部の内面が近接して開口をほぼ塞いだ状態となるようになっている。
【0065】
このため、上部空間US内の気体(主に水素)が原料貯蔵部20側に侵入しようとしても原料供給孔23上に円板32の貫通孔(貫通孔32B参照)の開口が位置するときには、その開口がほぼ閉塞状態であるため、上部空間US内の気体(主に水素)が原料貯蔵部20側に侵入できないようになっている。
【0066】
そして、その円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部以外の位置に円板32の貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)が位置(例えば、貫通孔32Aの位置参照)するときに、この貫通孔(貫通孔32A参照)内に原料21が入り込み、円板32が回転して円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部の位置に貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)が位置(貫通孔32Bの位置参照)するようになると、貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)内に充填された原料21が、原料供給孔23及び原料受入孔17を介して、上部空間US側から水溶液11に向けて供給されることになる。
【0067】
また、本実施形態では、水素発生装置2が、原料貯蔵部20の原料21より上側の原料21の存在しない上側空間US1の圧力を測定する圧力測定装置61(例えば、デジタルマノスターゲージ)と、上側空間US1に気体(例えば、露点の低い窒素等の活性の低いガスや露点の低いヘリウム、アルゴン等の不活性ガス)を供給する気体供給ライン62(気体供給配管ともいう。)と、気体供給ライン62上に設けられ、上側空間US1への気体の供給の有無を制御する電磁弁63と、を備えている。
【0068】
そして、図示しない制御部は、上側空間US1の圧力測定装置61が測定する圧力の測定結果に基づいて、上側空間US1内の圧力が所定の圧力(例えば、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力と同程度の圧力)となるように、電磁弁63の開閉制御を行う。
【0069】
なお、図示は省略しているが、水素発生装置2は、上側空間US1内の気体を排気する気体排気ライン(気体供給配管ともいう。)と、その気体排気ラインを通じて上側空間US1内の気体の排気の有無を制御する電磁弁も有している。
【0070】
したがって、より正確には、図示しない制御部が、上述した電磁弁63と気体の排気の有無を制御する電磁弁とを制御することで上側空間US1内の圧力が所定の圧力(例えば、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力と同程度の圧力)となるように制御される。
【0071】
そして、上側空間US1が昇圧されていることで、より一層、上部空間US内の気体(主に水素)が原料貯蔵部20側に侵入するのを抑制できるとともに、円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部以外の位置に円板32の貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)が位置(例えば、貫通孔32Aの位置参照)するときに、この貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)内に原料21が効率的に入り込む。
【0072】
なお、本実施形態では、円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部の位置に貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)が位置するようになると、貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)内に充填された原料21が、自重で原料供給孔23及び原料受入孔17を介して、上部空間US側から水溶液11に向けて落下することで水溶液11に供給されるものとしている。
【0073】
しかし、水素発生装置2が、原料供給孔23及び原料受入孔17の直上に位置する貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)に対して棒状体を挿入し、貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)内の原料21を強制的に押し出す原料押出機構を備えるものとしてもよく、そうすることで、確実に原料21を水溶液11に向けて供給することが可能となる。
【0074】
このような原料押出機構を設ける場合には、円板32の貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)が原料供給孔23及び原料受入孔17の直上に位置するところで円板32の回転を停止し、その貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)に棒状体を挿入して原料21を水溶液11に向けて供給した後、その貫通孔(貫通孔32A、貫通孔32B)から棒状体を抜いて、再び、円板32を回転させるという動作を繰り返すことになる。
【0075】
なお、本実施形態では、先に説明したように、円板32の回転中心Oを挟んで対向し、回転中心Oからほぼ同じ距離離れた位置に、一対の貫通孔(貫通孔32Aと貫通孔32B)が形成されたものとしたが、これに限定される必要はない。
【0076】
例えば、回転中心Oからほぼ同じ距離離れた位置に、同じサイズの貫通孔が円板32の回転方向に均等間隔で3つ(この場合、円板32の周方向で見た隣接する貫通孔間の角度ピッチは120°ピッチとなる。)を設けるようにしてもよく、回転方向に均等間隔で4つの貫通孔(この場合、円板32の周方向で見た隣接する貫通孔間の角度ピッチは90°ピッチとなる。)を設けるようにしてもよい。
【0077】
また、貫通孔が1つであったとしても、その1つの貫通孔が円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部以外の位置と、円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部の位置と、に交互に位置するように制御すれば原料21を水溶液11に供給することが可能であるため問題はない。
【0078】
ただし、貫通孔の数が多くなると、円板32の一部を受け入れる横方向に窪んだ凹部が形成し難くなるので、貫通孔の数は4つ以下であることが好ましい。
【0079】
また、貫通孔のサイズは、発生させる水素量に応じた原料21を供給できるサイズが選択されればよい。
例えば、水素化マグネシウムの質量(1mol当たりの重さ)は26.32gであり、水素化マグネシウムの密度は2.36g/cm
3程度であるので、体積約11.2cm
3弱(約1mol)の水素化マグネシウムからなる原料21を水溶液11に投入すれば、標準状態で45リットル弱(約2mol)の水素が発生する。
【0080】
そして、10MW程度の発電を行う水素ガスタービン型の発電装置で約0.6憶m
3/年の水素を使用すると考えると、1分当たり約114m
3の水素が必要になり、これに対応する貫通孔を一例として考えれば、以下のようになる。
【0081】
例えば、円板32の厚さを約10cmとし、円板32の直径を約70cmとして、回転中心Oから約10cmオフセットした位置に、直径が約21cmの貫通孔の内側の端(貫通孔の中心は回転中心Oから約20.5cmオフセット)が位置するディメンジョンを考えれば、その貫通孔の容積は約3346cm
3弱となる。
【0082】
このため、上記のようなディメンジョンの貫通孔には、約300mol(=3346[cm
3]/11.2[cm
3])程度の原料21が充填できることになり、この分量の水素化マグネシウムからなる原料21を水溶液11に投入したとすれば、約600mol(約13.4m
3)の水素が発生することになる。
【0083】
そうすると、本実施形態の貫通孔32A、貫通孔32Bのように、円板32に貫通孔を2つ設けた場合を考えれば、1回転当たりに2回貫通孔(貫通孔32Aが1回、貫通孔32Bが1回)から原料21が水溶液11に供給されることになるので、円板32を12秒で1回転(1分間5回転)させると、1分間当たりでは、10回水溶液11に向けて原料21が供給されることになり、十分に1分当たり114m
3を超える水素(約134m
3)を発生させるだけの原料21を供給することができる。
【0084】
したがって、小型(約1万KW)の水素ガスタービン型の発電装置を想定する場合、円板32に2つの貫通孔を設けるようにすれば、その貫通孔の容積は、約3346cm
3弱でよいと考えられる。
【0085】
ただし、発電装置の発電量が大きくなれば、必要な原料21の供給量が増加することになるため、発電量が10倍程度の発電装置までを想定するとすれば、貫通孔の容積は、約33460cm
3弱までを想定しておくことが好ましい。
【0086】
したがって、貫通孔の容積は、3000cm
3から35000cm
3程度とすることが好ましい。
なお、このことを考えれば、原料供給機構30は、1分当たり、100m
3から1000m
3程度の水素を発生させることができる原料21を水溶液11に供給できることが好ましい。
【0087】
なお、上述した原料供給機構30は、あくまでも一例であって、原料供給機構30は、上部空間US側から水溶液11に向けて原料21を供給するように設けられ、原料21が上部空間US側から水溶液11に向けて供給できるような構成であればよい。
【0088】
一方、本実施形態では、図示しない制御部が、水溶液貯蔵部10の上部空間USの圧力を測定する圧力測定装置52の圧力の測定結果に基づいて、原料供給機構30のモータ31を駆動させ、上部空間US内の圧力が所定の第1圧力(求められる一次圧)となるように、水溶液11に向けて供給する原料21の供給量を制御するものになっている。
【0089】
このように、図示しない制御部が、水溶液11に向けて供給する原料21の供給量を制御しているため、図示しない制御部は、どれだけの原料21が水溶液11に供給されたのかを把握することが可能であり、水溶液11に供給されたトータルの原料21の供給量から水溶液11中の水酸化マグネシウム等の副生成物の含有濃度の増加を予想(例えば実験的に濃度変化のデータを採取しておき、そのデータに基づいて予想)することが可能である。
なお、このような実験的な手法に代えて、副生成物の含有濃度の増加予想を理論計算で行うこともできる。
【0090】
そこで、図示しない制御部は、水溶液11に向けて供給する原料21の供給量に基づいて、先ほど説明したように、排水制御弁15B、及び、給水制御弁16Bを制御し、本実施形態では、原料21と水溶液11の反応効率が低下しないように、水溶液11中の副生成物の含有濃度が高くなり過ぎないようにする管理を行っている。
【0091】
一方、
図1に示すように、水溶液貯蔵部10は、上部空間US内の水素を発電装置(図示せず)に向けて排出するための水素排出口18を備えており、発電システム1は、水素排出口18に接続され、水溶液貯蔵部10で発生した水素を発電装置(図示せず)に供給する水素供給部70(水素供給主配管ともいう。)を備えている。
【0092】
また、発電システム1は、水素供給部70上の水素排出口18寄りの位置に設けられ、水素排出口18からの水素の排出の有無を制御する電磁弁71と、電磁弁71よりも水素排出口18から離れた水素供給部70上に設けられた減圧弁72と、減圧弁72よりも更に水素排出口18から離れた水素供給部70上に設けられた電磁弁73と、を備えている。
【0093】
なお、減圧弁72は、上部空間US内の所定の第1圧力(求められる一次圧)から図示しない発電装置に供給するための所定の第2圧力(求められる二次圧)に水素の圧力を減圧するためのものである。
【0094】
さらに、発電システム1は、図示しない発電装置に水素を供給可能に貯蔵するバッファ機構3を備えている。
【0095】
具体的には、バッファ機構3は、バッファタンク80と、一端が水素供給部70の減圧弁72と電磁弁73の間の位置に接続されるとともに他端がバッファタンク80に接続され、水素をバッファタンク80に引き込むための引込分岐ライン81(分岐配管ともいう。)と、引込分岐ライン81上に設けられた昇圧装置82と、昇圧装置82とバッファタンク80の間の引込分岐ライン81上に設けられた電磁弁83と、を備えている。
【0096】
また、バッファ機構3は、一端がバッファタンク80に接続されるとともに他端が電磁弁73よりも図示しない発電装置側となる水素供給部70に接続され、水素をバッファタンク80から水素供給部70に戻すための返送ライン84(返送配管ともいう。)と、返送ライン84上に設けられた電磁弁85と、電磁弁85と水素供給部70の間の返送ライン84上に設けられた減圧弁86と、を備えている。
【0097】
なお、減圧弁86も先ほどの減圧弁72と同様に、バッファタンク80の後述する圧力から図示しない発電装置に供給するための所定の第2圧力(求められる二次圧)に水素の圧力を減圧するためのものである。
【0098】
そして、バッファ機構3には、図示しない発電装置からの水素の供給要求がないときを利用して水素の充填処理が行われる。
【0099】
具体的には、図示しない制御部によって、電磁弁71及び電磁弁83が開とされるとともに、電磁弁73及び電磁弁85が閉とされる制御が行われ、更に、制御部によって、水素発生装置2が水素を発生させるように制御が行われるとともに、昇圧装置82の駆動制御が行われる。
【0100】
このため、水素発生装置2で発生した水素は、減圧弁72によって所定の第2圧力(求められる二次圧)の状態で引込分岐ライン81に供給されるが、昇圧装置82によって昇圧が行われるので、バッファタンク80内の圧力が上部空間US内の所定の第1圧力(求められる一次圧)と同様の第1圧力又は第1圧力よりも高めの所定の第3圧力となるように、バッファタンク80に水素を充填することができる。
【0101】
なお、バッファ機構3は、バッファタンク80内の圧力を測定する圧力測定装置87(例えば、デジタルマノスターゲージ)を備えており、上述したバッファタンク80への水素の充填処理は、この圧力測定装置87が測定するバッファタンク80内の圧力の測定結果に基づいて、第1圧力又は第1圧力よりも高めの所定の第3圧力となるように、行われ、目標の圧力になれば、水素発生装置2の駆動が停止されるとともに、電磁弁71及び電磁弁83が閉とされる。
【0102】
また、バッファ機構3は、バッファタンク80と緊急排気ライン50を接続する接続ライン88(接続配管ともいう。)と、接続ライン88上に設けられ、緊急排気の有無を制御する電磁弁89と、を備えており、圧力測定装置87が測定するバッファタンク80内の圧力の測定結果が異常に高い圧力を示した場合には、図示しない制御部が、電磁弁89を開にすることでバッファタンク80内の圧力が、先に説明した第1圧力又は第1圧力よりも高めの所定の第3圧力になるように降圧制御を行う。
【0103】
ただし、本実施形態では、水素供給部70から分岐する形態でバッファ機構3を設ける場合について示したが、バッファ機構3は、水素供給部70上に設けられるものとしてもよい。
【0104】
例えば、バッファ機構3の変形例としては、減圧弁72を省略し、電磁弁71と電磁弁73の間の水素供給部70上に水溶液貯蔵部10側から図示しない発電装置側に向けて、電磁弁83、バッファタンク80を設けるとともに、電磁弁73よりも発電装置側となる水素供給部70上に減圧弁86を設けるような構成が考えられ、この場合には、水溶液貯蔵部10で発生した水素が、必ず、バッファ機構3を介して発電装置に供給されることになる。
【0105】
そして、バッファ機構3は、本実施形態、及び、変形例のどちらにおいても、水素が水溶液貯蔵部10から図示しない発電装置に至るまでの間に設けられ、水溶液貯蔵部10で発生した水素を貯蔵できるようにされることになる。
【0106】
なお、このバッファ機構3の変形例の場合でも、バッファ機構3がバッファタンク80内の圧力を測定する圧力測定装置87(例えば、デジタルマノスターゲージ)と、バッファタンク80と緊急排気ライン50を接続する接続ライン88(接続配管ともいう。)と、接続ライン88上に設けられ、緊急排気の有無を制御する電磁弁89と、を備えるものとすることが好ましく、水素供給部70上に設けられることになる電磁弁83と電磁弁71の間の水素供給部70上に昇圧装置82を設けるようにしてもよい。
【0107】
また、バッファ機構3の制御は、水素発生装置2の制御部が行う方がシンプルなものとなると考えられるため、水素発生装置2がバッファ機構3を含むとともに、水素発生装置2がそのバッファ機構3との関連で必要な位置までの水素供給部70を含むものであってもよい。
【0108】
次に、以上のような構成からなる発電システム1の動作等について説明する。
ただし、これまでの説明で細部の動作については十分に理解が得られる説明を行っているため、主要な動作についてだけ説明するものとする。
また、以下では、既にバッファタンク80に水素が充填されているものとして説明する。
【0109】
例えば、図示しない発電装置から水素発生装置2に水素供給の要求(指令)が届くと、水素発生装置2の制御部は、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力を確認し、上部空間US内の圧力が所定の第1圧力(求められる一次圧)前後の圧力になっていれば、電磁弁71及び電磁弁73を開にして、発電装置への水素の供給を開始するとともに、その水素の供給によって減少する水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力を所定の第1圧力(求められる一次圧)に保つように原料供給機構30の駆動を制御する。
【0110】
一方、水素発生装置2の制御部は、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力を確認した結果、上部空間US内の圧力が低すぎる場合、電磁弁85を開にしてバッファタンク80内の水素が図示しない発電装置に供給されるようにするとともに、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力が所定の第1圧力(求められる一次圧)になるように原料供給機構30の駆動を制御する。
【0111】
本実施形態の場合、水溶液貯蔵部10に貯められた大量の水溶液11に向けて原料21を供給することになるため、原料21と水溶液11の反応で水酸化マグネシウム等の副生成物が生成したとしても、その副生成物は、水溶液11内に速やかに拡散するため、反応が阻害されることなく、効率よく速やかに反応が進むため、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力を短時間で所定の第1圧力(求められる一次圧)にすることができる。
【0112】
そして、水素発生装置2の制御部は、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力が所定の第1圧力(求められる一次圧)になると、電磁弁71及び電磁弁73を開にするとともに、電磁弁85を閉にして、図示しない発電装置への水素の供給をバッファタンク80から水溶液貯蔵部10に切り替える。
【0113】
なお、上述のように、本実施形態では、原料21と水溶液11の反応効率が良いため、図示しない発電装置に水素を供給することに伴う水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力の低下を抑制するための制御も行いやすい。
【0114】
また、十分に用意された水溶液11に向けて原料21を供給する形態であるため、その高い反応効率を持続的に維持することが可能である。
【0115】
一方、水素発生装置2の制御部は、水溶液貯蔵部10から図示しない発電装置に水素を供給する状態のときに、何らかの原因で水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力が水素の供給に適さない圧力まで低下しそうな場合、再び、電磁弁71を閉にするとともに電磁弁85を開にして、発電装置への水素の供給を停止させることなく、水溶液貯蔵部10の上部空間US内の圧力の復旧を行う。
【0116】
そして、水素発生装置2の制御部は、図示しない発電装置から水素の供給停止の要求(指令)を受けると、水素発生装置2の動作を停止させる前に、バッファタンク80内の圧力を確認し、バッファタンク80に水素の充填が必要であれば、その充填を行ってから水素発生装置2の動作を停止させる処理を行う。
一方、水素発生装置2の制御部は、バッファタンク80に水素の充填が必要ない場合には、充填を行わずに水素発生装置2の動作を停止させる処理を行う。
【0117】
なお、本実施形態では、バッファ機構3を設けることで、図示しない発電装置への水素の供給開始時の水素供給の迅速性、及び、水素供給中の水素供給量安定性を、一層、高めたものになっている。
【0118】
しかしながら、先に説明したように、本実施形態では、水溶液貯蔵部10に貯められた大量の水溶液11に向けて原料21を供給することで、原料21と水溶液11の反応効率が高いものとなっており、図示しない発電装置への水素の供給開始時において、速やかに必要な量の水素を発生させやすく、また、水素供給中の水素供給量の制御性も高いものとなっているため、バッファ機構3を設けることが必須の要件というわけではなく、バッファ機構3を省略してもよい。
なお、さらに、原料21と水溶液11の反応効率が高いものとするために、水素発生装置2が水溶液11の温度を高める温調手段(例えば、水溶液11が沸騰しない程度の温度範囲内で水溶液11を加熱する温調手段)を備えていてもよい。
【0119】
(第2実施形態)
次に
図2を参照しながら第2実施形態の発電システム1について説明する。
図2は、本発明に係る第2実施形態の発電システム1を説明するための断面図である。
【0120】
第1実施形態では、図示しない発電装置が水素を燃料としてタービンを駆動させるタービン発電機を想定していた。
【0121】
一方、第2実施形態では、図示しない発電装置が一般的な燃料電池である場合を想定しており、第1実施形態の構成に対して、発電装置に燃料電池を用いる場合に適する構成を付加したものになっている。
【0122】
このため第2実施形態の発電システム1も基本的な構成は、第1実施形態と同様であるため、以下では、主に異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する場合がある。
【0123】
図2に示すように、第2実施形態の発電システム1は、第1実施形態の構成に加え、減圧弁72からバッファ機構3(より具体的には、引込分岐ライン81)に至るまでに水溶液貯蔵部10から図示しない発電装置(及びバッファ機構3)に向かって供給される水素の純度を高める純化機構4を備えている。
【0124】
なお、純化機構4の制御は、水素発生装置2の制御部が行う方がシンプルなものとなると考えられるため、水素発生装置2が純化機構4を含むものであってもよい。
【0125】
純化機構4は、減圧弁72と引込分岐ライン81の間の水素供給部70上に設けられた第1脱水部91A(例えば、モレキュラーシーブ)と、第1脱水部91Aよりも引込分岐ライン81側となる水素供給部70上に設けられた第1不純物気体除去部92Aと、減圧弁72と第1脱水部91Aの間の水素供給部70上に設けられた第1上流側電磁弁93Aと、第1不純物気体除去部92Aと引込分岐ライン81の間の水素供給部70上に設けられた第1下流側電磁弁94Aと、を備えている。
【0126】
なお、第1脱水部91Aと第1不純物気体除去部92Aとが純化機構4の第1純化部として機能する。
また、第1実施形態で触れたように、バッファ機構3は省略可能であるため、この場合には、引込分岐ライン81や電磁弁73は不要となる。
【0127】
このため、バッファ機構3が省略される場合には、純化機構4は、減圧弁72と減圧弁72よりも図示しない発電装置の間の水素供給部70上に設けられた第1脱水部91A(例えば、モレキュラーシーブ)と、第1脱水部91Aよりも図示しない発電装置側となる水素供給部70上に設けられた第1不純物気体除去部92Aと、減圧弁72と第1脱水部91Aの間の水素供給部70上に設けられた第1上流側電磁弁93Aと、第1不純物気体除去部92Aと図示しない発電装置の間の水素供給部70上に設けられた第1下流側電磁弁94Aと、を備えるものとなる。
【0128】
例えば、本実施形態では、第1脱水部91Aに低温(例えば100℃以下程度)で露点の低い加熱気体を供給することで乾燥処理が可能なシリカゲル系のモレキュラーシーブを用いている。
【0129】
このため、本実施形態では、純化機構4が、乾燥気体(例えば露点の低い窒素等の活性の低いガスや露点の低いヘリウム、アルゴン等の不活性ガス)の第1脱水部91Aへの供給の有無を制御する第1供給制御電磁弁95Aを有し、第1脱水部91Aと第1不純物気体除去部92Aの間の水素供給部70に接続された乾燥気体供給ライン95(乾燥気体供給配管ともいう。)と、乾燥気体を排気するときに開とされる第1排気制御電磁弁96Aを有し、第1上流側電磁弁93Aと第1脱水部91Aの間の水素供給部70に接続された乾燥気体排気ライン96(乾燥気体排気配管ともいう。)と、を備え、後ほど説明するように、一旦、第1脱水部91Aが水分を吸収しても、第1脱水部91Aの乾燥処理を行うことで水分の吸収性能を再生できるようになっている。
なお、乾燥気体は図示しない加熱装置で若干加熱され、室温(例えば25℃)より高い温度(例えば、50℃以上)であって100℃以下の温度の状態で供給される。
【0130】
また、本実施形態では、第1不純物気体除去部92Aに、例えば、原料21を生成するための材料に塩化マグネシウムが用いられている場合、原料21を生成するときに、未反応の状態で原料21内に残留している塩化マグネシウム中の塩素に関連して発生する不純物気体(例えば、塩素ガス、塩酸ガス等)を除去できるケミカルフィルタを用いている。
なお、本実施形態では、第1不純物気体除去部92Aとして、塩素ガスを除去するフィルタと塩酸ガスを除去するフィルタを直列で並べるようにしている。
【0131】
ただし、第1不純物気体除去部92Aは、水溶液貯蔵部10で水素を発生させたときに、発生する不純物気体を除去することを目的としているので、どのようなケミカルフィルタを用いるかは、原料21や水溶液11に合わせて選択される。
【0132】
一方、本実施形態では、純化機構4は、一端が減圧弁72と第1上流側電磁弁93Aの間の水素供給部70に接続されるとともに、他端が第1下流側電磁弁94Aと引込分岐ライン81の間の水素供給部70に接続された迂回ライン70A(迂回配管ともいう。)を備えている。
【0133】
なお、先に触れたように、バッファ機構3は省略可能であるため、この場合には、引込分岐ライン81や電磁弁73は不要となるため、迂回ライン70Aの他端は、第1下流側電磁弁94Aよりも図示しない発電装置側の水素供給部70に接続されたものとなる。
【0134】
そして、純化機構4は、迂回ライン70A上に設けられた第2脱水部91B(例えば、モレキュラーシーブ)と、第2脱水部91Bよりも図示しない発電装置側となる迂回ライン70A上に設けられた第2不純物気体除去部92Bと、第2脱水部91Bより減圧弁72側の迂回ライン70A上(第2脱水部91Bより迂回ライン70Aの一端側の迂回ライン70A上)に設けられた第2上流側電磁弁93Bと、第2不純物気体除去部92Bより図示しない発電装置側の迂回ライン70A上(第2不純物気体除去部92Bより迂回ライン70Aの他端側の迂回ライン70A上)に設けられた第2下流側電磁弁94Bと、を備えている。
【0135】
なお、第2脱水部91Bと第2不純物気体除去部92Bとが第1純化部と同様の役目を果たす純化機構4の第2純化部として機能し、第2脱水部91Bには、第1脱水部91Aと同様に、低温(例えば100℃以下程度)で露点の低い加熱気体を供給することで乾燥処理が可能なシリカゲル系のモレキュラーシーブが用いられている。
【0136】
また、第2不純物気体除去部92Bにも第1不純物気体除去部92Aと同様に、塩素ガス、塩酸ガス等を除去できるケミカルフィルタが用いられ、具体的な構成においても、塩素ガスを除去するフィルタと塩酸ガスを除去するフィルタを直列で並べるものとしている。
【0137】
そして、乾燥気体供給ライン95が第2脱水部91Bと第2不純物気体除去部92Bの間の迂回ライン70Aに接続されるとともに、乾燥気体排気ライン96が第2上流側電磁弁93Bと第2脱水部91Bの間の迂回ライン70Aに接続され、純化機構4が、第1供給制御電磁弁95Aより迂回ライン70A側の乾燥気体供給ライン95上に設けられ、乾燥気体(例えば露点の低い窒素等の活性の低いガスや露点の低いヘリウム、アルゴン等の不活性ガス)の第2脱水部91Bへの供給の有無を制御する第2供給制御電磁弁95Bと、乾燥気体排気ライン96の第1排気制御電磁弁96Aより迂回ライン70A側の乾燥気体排気ライン96上に設けられ、乾燥気体を排気するときに開とされる第2排気制御電磁弁96Bと、を備えるものになっている。
【0138】
なお、乾燥気体供給ライン95への乾燥気体の供給は、第1供給制御電磁弁95Aと第2供給制御電磁弁95Bの間の乾燥気体供給ライン95の位置で行われるようになっており、乾燥気体排気ライン96からの乾燥気体の排気は、第1排気制御電磁弁96Aと第2排気制御電磁弁96Bの間の乾燥気体排気ライン96の位置で行われるようになっている。
【0139】
したがって、第2脱水部91Bにおいても、一旦、第2脱水部91Bが水分を吸収しても、第2脱水部91Bの乾燥処理を行うことで水分の吸収性能を再生できるようになっている。
【0140】
次に、純化機構4の動作について説明する。
なお、この動作の説明は、水素が水溶液貯蔵部10から図示しない発電装置又はバッファタンク80に向けて供給されている状態であることを前提として行い、第1実施形態で説明した水素の供給開始時等の説明は省略するものとする。
【0141】
例えば、水素発生装置2の制御部は、第1上流側電磁弁93A及び第1下流側電磁弁94Aを開とし、第2上流側電磁弁93B、第2下流側電磁弁94B、第1供給制御電磁弁95A、及び、第1排気制御電磁弁96Aを閉として、水素が純化機構4の第1純化部(第1脱水部91A及び第1不純物気体除去部92A)を通過して図示しない発電装置に供給されるように制御しているときには、乾燥気体が第2脱水部91Bを通過するように、第2供給制御電磁弁95B、及び、第2排気制御電磁弁96Bを開とする制御も行う。
【0142】
したがって、第1脱水部91Aが水素中の水分を吸収するように動作している間に、第2脱水部91Bの乾燥処理が行われ、第2脱水部91Bの水分を吸収する性能が再生される。
【0143】
一方、水素発生装置2の制御部は、所定の量の水素が第1脱水部91Aを通過すると、第2上流側電磁弁93B、及び、第2下流側電磁弁94Bを開とし、第1上流側電磁弁93A、第1下流側電磁弁94A、第2供給制御電磁弁95B、及び、第2排気制御電磁弁96Bを閉として、水素が純化機構4の第2純化部(第2脱水部91B及び第2不純物気体除去部92B)を通過して図示しない発電装置に供給されるように制御を切り替え、このときには、乾燥気体が第1脱水部91Aを通過するように、水素発生装置2の制御部は、第1供給制御電磁弁95A、及び、第1排気制御電磁弁96Aを開とする制御も行う。
【0144】
したがって、第2脱水部91Bが水素中の水分を吸収するように動作している間に、第1脱水部91Aの乾燥処理が行われ、第1脱水部91Aの水分を吸収する性能が再生される。
【0145】
このように、純化機構4が、第1純化部(第1脱水部91A及び第1不純物気体除去部92A)と、第2純化部(第2脱水部91B及び第2不純物気体除去部92B)と、を備えるものとし、第1純化部を通過させて水素を図示しない発電装置又はバッファタンク80に供給するときに第2純化部の第2脱水部91Bが乾燥処理可能とされ、第2純化部を通過させて水素を図示しない発電装置又はバッファタンク80に供給するときに第1純化部の第1脱水部91Aが乾燥処理可能とされているので、水素の図示しない発電装置又はバッファタンク80への供給を停止させることなく、第1脱水部91A、及び、第2脱水部91Bの再生処理を行うことができるようになっている。
【0146】
また、必要に応じて、第1純化部を通過させて水素を図示しない発電装置又はバッファタンク80に供給するときに第2純化部の第2不純物気体除去部92Bを交換し、第2純化部を通過させて水素を図示しない発電装置又はバッファタンク80に供給するときに第1純化部の第1不純物気体除去部92Aを交換することも可能なため、第1不純物気体除去部92A、及び、第2不純物気体除去部92Bの交換作業も水素の図示しない発電装置又はバッファタンク80への供給を停止させることなく行うことができる。
【0147】
そして、水素が水溶液貯蔵部10から図示しない発電装置及びバッファ機構3に至るまでの間に、純化機構4が設けられているため、発電装置である燃料電池に純度の高い水素を供給することができる。
【0148】
以上、具体的な実施形態に基づいて、本発明について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。