【解決手段】安全装置200のコントローラ220は、仮電柱に電線を仮支持させる前の状態において、ジャッキ反力検出器210により検出される複数のジャッキの接地反力を反力基準値として設定し、仮支持作業中において、ジャッキ反力検出器210により検出される複数のジャッキの接地反力を反力基準値と比較し、仮支持作業中の接地反力が反力基準値をある限度を越えて下回ったときに、警報装置230による警報作動を行わせるように構成される。
走行可能な車両と、前記車両の前後左右に設けられ、下方に伸長作動して接地した状態で前記車両を支持する複数のジャッキと、電柱に支持される電線を仮支持する仮支持柱を立設状態で支持する支持装置と、を備えた作業車の安全装置であって、
前記複数のジャッキのそれぞれの接地反力を検出するジャッキ反力検出器と、
警報作動を行う警報装置と、
前記警報装置の警報作動を制御する警報作動制御装置と、を有し、
前記警報作動制御装置は、前記複数のジャッキを接地させて前記車両を支持した状態で、前記支持装置により支持された前記仮支持柱により前記電線を仮支持させる仮支持作業を行うのに際し、
前記支持装置により支持された前記仮支持柱に前記電線を仮支持させる前の状態において、前記ジャッキ反力検出器により検出される前記複数のジャッキの接地反力を反力基準値として設定し、
前記支持装置により支持された前記仮支持柱に前記電線を仮支持させる仮支持作業中において、前記ジャッキ反力検出器により検出される前記複数のジャッキの接地反力を前記反力基準値と比較し、前記仮支持作業中の接地反力が前記反力基準値をある限度を越えて下回ったときに、前記警報装置による警報作動を行わせるように構成されたことを特徴とする作業車の安全装置。
前記車両の前後左右のそれぞれの側において隣り合う2本の前記ジャッキについて前記ジャッキ反力検出器により検出される接地反力の合計値に基づいて、前記反力基準値および前記仮支持作業中の接地反力を求めることを特徴とする請求項1に記載の作業車の安全装置。
前記支持装置により支持された前記仮支持柱に前記電線を仮支持させる前の状態において前記反力基準値を設定する指示を行うための設定指示装置を備えることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の作業車の安全装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1〜
図3に本発明に係る安全装置を備えた作業車として電柱元穴建替作業車1を示しており、まず、これらの図を参照して電柱元穴建替作業車1の全体構成について概要説明する。
【0016】
電柱元穴建替作業車1は、走行用のタイヤ車輪2を備えて運転キャブ3から走行運転操作が可能なトラック式車両の車体4をベースに構成されている。車体4上には、油圧式の旋回モータ(図示せず)を回転駆動させることにより上下軸周りに360度回動自在に構成された旋回台12が配設されている。旋回台12には、該旋回台12の上部に設けられたフートピン(図示せず)を介してブーム13の基端部が支持されている。ブーム13は、
図1に示すように、旋回台12側から順に、基端ブーム13a、中間ブーム13b及び先端ブーム13cが入れ子式に組み立てられた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により、基端ブーム13aに対して中間ブーム13b及び先端ブーム13cを相対的に移動させて、ブーム13の全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム13aと旋回台12との間には起伏シリンダ71が跨設されており、この起伏シリンダ71を伸縮駆動させることによりブーム13全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0017】
先端ブーム13cの先端部にはブームヘッド20が取り付けられている。このブームヘッド20は、左右の側板21(
図2を参照)を有して箱状に形成されており、その内部には複数のシーブ(図示せず)が回転自在に取り付けられている。基端ブーム13a上には、不図示のウィンチドラムを正逆両方向に回転させてワイヤ17を巻上げ・巻下げするためのウィンチモータ(油圧モータ)72を備えたウィンチ16が設けられている。このウィンチ16から繰り出されたワイヤ17は、ブームヘッド20内のシーブを介して、ブームヘッド20から下方へ垂れ下がるようになっており、フック19の動滑車に巻掛けられて、その先端がブームヘッド20内に固定されている。そのため、ウィンチ16によるワイヤ17の巻上げ・巻下げを行うことで、フック19を動滑車の作用により引上げ・引下げられるように構成されている。
【0018】
車体4の前後左右には、作業中の電柱元穴建替作業車1を安定的に支持するため、車幅方向に拡縮可能で且つ上下に伸縮可能なアウトリガ装置5が配設されている。詳しくは、車体4の左前側に配設された左前アウトリガ装置5Aと、車体4の右前側に配設された右前アウトリガ装置5B(
図3を参照)と、車体4の左後側に配設された左後アウトリガ装置5Cと、車体4の右後側に配設された右後アウトリガ装置5Dとの計4本のアウトリガ装置が設けられており、これらを特に区別しないときはアウトリガ装置5と称する。
図4に示すように、アウトリガ装置5(ここでは左後アウトリガ装置5Cを例にとって説明す
るが他のアウトリガ装置5A,5B,5Dについても同様)は、車体4に対し車幅方向に延びて固設されたアウトリガボックス6と、このアウトリガボックス6内に車幅方向外方に伸縮可能に取り付けられたアウトリガビーム7と、このアウトリガビーム7の外方先端に取り付けられて下方に伸長して車体4を持ち上げ支持するアウトリガジャッキ8とを有して構成される。
【0019】
アウトリガジャッキ8は、アウトリガビーム7の先端に結合されたアウタポスト8aと、アウタポスト8a内に設けられて上下に伸縮可能なインナポスト8bと、インナポスト8bの下端に設けられた接地板8cとを備えている。アウトリガビーム7は、アウトリガボックス6内に設けられたアウトリガシリンダ(図示せず)により車幅方向に拡縮動され、アウトリガジャッキ8は、アウタポスト8a内に設けられたジャッキシリンダ(図示せず)により上下に伸縮動される。左前アウトリガ装置5Aと右前アウトリガ装置5Bの各アウトリガジャッキ8は、車両(車体4)の前側において隣り合う2本のジャッキであり、左後アウトリガ装置5Cと右後アウトリガ装置5Dの各アウトリガジャッキ8は、車両の後側において隣り合う2本のジャッキである。また、左前アウトリガ装置5Aと左後アウトリガ装置5Cの各アウトリガジャッキ8は、車両の左側において隣り合う2本のジャッキであり、右前アウトリガ装置5Bと右後アウトリガ装置5Dの各アウトリガジャッキ8は、車両の右側において隣り合う2本のジャッキである。
【0020】
車体4の後部には、ジャッキ操作装置9(
図2を参照)が設けられており、各アウトリガジャッキ8の張出および格納等のジャッキ操作を個別に行えるように構成されている。作業者は、ジャッキ操作装置9を操作して各アウトリガジャッキ8を拡幅作動および伸長作動させることができ、車体4を持ち上げ支持させた安定姿勢で各種作業を行い得るようになっている。
【0021】
車体4における旋回台12の側部には、各作業装置(旋回台12、ブーム13、ウィンチ16など)の作動を操作するための操作席25(
図2を参照)が設けられている。この操作席25の前方には、作業者が座ったままの姿勢で操作が可能な操作装置26が配設されている。操作装置26には、旋回台12の旋回操作を行うための操作レバー、ブーム13の伸縮操作を行うための操作レバー、ブーム13の起伏操作を行うための操作レバー、ウィンチ16の巻上げ・巻下げ操作を行うための操作レバーなどが設けられている。また、この操作装置26には、オプションの油圧機器として装着されるアタッチメント(例えば、次述する仮電柱支持装置の下部支持装置100等)の作動操作を行うための操作レバーも設けられている。
【0022】
電柱元穴建替作業車1には、仮電柱支持装置が設けられている。この仮電柱支持装置は、電柱の建替工事において、建替対象の元の電柱(「旧電柱」という)を抜去した際に残る元穴(元位置)に、新しい電柱(「新電柱」という)を建柱するという、所定の電柱建替工法(「元穴建替工法」という)に利用されるものである。この元穴建替工法においては、旧電柱に架設された電線(例えば、6600Vの高圧電線、100Vや200Vの低圧電線、光ケーブル等の通信線など)を新電柱に移設するまでの間、該電線を一時的に保持(仮支持)するための仮支持柱(「仮電柱D」という)が元穴の近くに設置されることになる。仮電柱支持装置は、元穴の近傍位置において仮電柱Dを立設状態(直立状態)で支持するためのものである。
【0023】
仮電柱支持装置は、ブームヘッド20の先端部に取り付けられる上部支持装置40と、アウトリガジャッキ8に取り付けられる下部支持装置100とを主体に構成され、上部支持装置40と下部支持装置100とにより仮電柱Dの下端部を地面に接地させた立設状態で支持可能に構成されている。
【0024】
仮電柱Dは、径が異なる3本の円筒状部材91,92,93が入れ子式に組み立てられた構成を有しており、各円筒状部材91,92,93を相対的にスライド移動させることにより、仮電柱Dの全体を軸方向に伸縮させることができる。円筒状部材91の下端部には、自在継手を介して接地板94が設けられている。この仮電柱Dは、下部支持装置100により保持され、軸方向に縮んだ状態で車体4上に積載されるようになっている。車体4上には、積載される仮電柱Dを支持する仮電柱支持台18が設けられている。
【0025】
上部支持装置40は、
図5に示すように、ブームヘッド20に対し左右軸を中心に上下揺動自在に設けられた本体枠41と、本体枠41に対し上下軸を中心に開閉揺動自在に設けられた開閉枠42とを有して構成される。本体枠41に対し開閉枠42を閉じた状態において、両者間には仮電柱Dの上部を収容可能な収容空間43が形成される。この収容空間43は、仮電柱Dの上部(円筒状部材93)の径よりも若干大きく構成されている。そのため、上部支持装置40は、仮電柱Dの上部を収納空間43に収めることにより、仮電柱Dの上部を本体枠41および開閉枠42の内側面との間に僅かなクリアランスをあけて遊挿状態で支持することが可能となっている。
【0026】
下部支持装置100は、
図4に示すように、旋回台12に対し起伏揺動自在に設けられたサブブーム110と、サブブーム110の先端部に設けられた姿勢調整機構120と、この姿勢調整機構120を介してサブブーム110の先端側に設けられた下部支持具130とを主体として構成される。
【0027】
サブブーム110は、旋回台12側から順に、基端サブブーム111と先端サブブーム112とが入れ子式に組み立てられた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により、基端サブブーム111に対して先端サブブーム112を相対的に移動させて、サブブーム110全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端サブブーム111と旋回台12との間には起伏シリンダ113が跨設されており、この起伏シリンダ113を伸縮駆動させることによりサブブーム110全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0028】
姿勢調整機構120は、
図6に示すように、先端サブブーム112に対し傾倒自在に設けられた首振りユニット121と、首振りユニット121を回動軸周りに回動させるための回動モータ(油圧モータ)122と、先端サブブーム112と首振りユニット121との間に跨って設けられる傾倒シリンダ(レベリングシリンダ)123と、を備えて構成され、首振りユニット121に下部支持具130が保持されている。この姿勢調整機構120は、回動モータ122を回転駆動させることにより首振りユニット121を回動軸周りに回動させ、これにより首振りユニット121により保持された下部支持具130を、回動軸を中心に首振り作動させることができる。また、傾倒シリンダ123を伸縮駆動させることにより首振りユニット121および下部支持具130を上下面内で傾倒作動させることができる。
【0029】
下部支持具130は、首振りユニット121により保持された本体枠131と、本体枠131に対し上下軸周りに開閉揺動自在に設けられた開閉枠132とを有して構成される。本体枠131に対し開閉枠132を閉じた状態において、両者間には仮電柱Dの下部を収容可能な収容空間133が形成される。この収容空間133は、仮電柱Dの下部(円筒状部材91)の径よりも若干大きく構成されている。そのため、下部支持具130は、仮電柱Dの下部を収納空間133内に収めることにより、仮電柱Dの下部を本体枠131および開閉枠132の内側面との間に僅かなクリアランスをあけて遊挿状態で支持することが可能となっている。仮電柱Dの円筒状部材91の外周部には、下部支持具130により仮電柱Dを支持した際に、仮電柱Dが下部支持具130から抜け落ちないようにするために、上下一対の鍔部材95(
図2を参照)が取り付けられている。下部支持具130は、
上下の鍔部材95の間で仮電柱Dを支持するようになっている。
【0030】
次に、
図7〜
図10を追加参照して、電柱元穴建替作業車1の作動内容として、元穴建替工法において仮電柱Dを支持する作業を例示する。既述した通り、元穴建替工法とは、旧電柱を撤去した後に残る元穴に新電柱を建柱する工法であり、旧電柱から新電柱への建て替えが完了するまでの間、元穴(旧電柱、新電柱)の近傍に仮電柱Dを設置して、旧電柱に架設された電線を仮電柱Dにて一時的に仮支持する必要がある。電柱元穴建替作業車1を用いれば、仮電柱用の建柱穴を掘削することなく、仮電柱Dを地面上で立設状態(直立姿勢)にて支持することが可能であり、その作業の流れを以下説明する。
【0031】
まず、仮電柱Dを積載した電柱元穴建替作業車1を、撤去する旧電柱の近傍に移動して停車し、各アウトリガ装置5のアウトリガジャッキ8を拡幅作動および下方へ伸長作動させて接地板8cを接地させ、車体4を持ち上げ支持する(
図3を参照)。車体4を支持した後、
図7に示すように、サブブーム110をブーム13と共に起こして、下部支持装置100により仮電柱Dを積載位置から持ち上げつつ、姿勢調整機構120を作動させて仮電柱Dの姿勢を変え、仮電柱Dを上下方向に延びた状態で、車体4の上方で保持する。
【0032】
次に、
図8に示すように、仮電柱Dの上下方向に延びた姿勢状態を姿勢調整機構120により維持しつつ、旋回台12を旋回させて仮電柱Dを車体4の左側方に移動させる。さらに、サブブーム110を起伏および伸縮させながら仮電柱Dの高さや水平面内での位置等を調整し、サブブーム110が仮電柱Dの垂直荷重を受けないように接地板94を接地させて仮電柱Dを所望の位置に設置する。次いで、ブーム13を伸長させてフック19を仮電柱Dの上方に移動させるとともに、ウィンチ16によるワイヤ17の巻下げによりフック19を引き下げ、そのフック19を仮電柱Dの上端部に引っ掛ける。そして、ウィンチ16によるワイヤ17の巻上げによりフック19を引き上げ、仮電柱Dを鉛直上方に伸長させる(
図9を参照)。仮電柱Dは、伸長させた状態において、円筒状部材91と円筒状部材92との重なり部分に設けられた接続孔(図示せず)と、円筒状部材92と円筒状部材93との重なり部分に設けられた接続孔(図示せず)に、それぞれ接続ピン(図示せず)を挿入することにより、伸長した状態のまま維持されるように構成されている。この接続ピンの挿入作業と、フック19を仮電柱Dの上端部に引っ掛ける作業は、高所作業車などを利用して行う。
【0033】
次いで、フック19を仮電柱Dの上端部から外し、外したフック19をウィンチ16によりブームヘッド20まで引き上げる。そして、ブーム13を少し縮めてブームヘッド20を仮電柱Dの上端部に近づけ、上部支持装置40により仮電柱Dの上部を支持する(
図10を参照)。これにより、仮電柱Dの上部が上部支持装置40により支持され、仮電柱Dの下部が下部支持装置100により支持される。このような上下の二点支持によって仮電柱Dを地面に対して直立姿勢で安定的に設置することができ、仮電柱Dが倒れたり揺れたりするのを防止することが可能となる。
【0034】
上記のように上下の支持装置40,100により仮電柱Dを直立姿勢で支持した後、旧電柱に架設されている電線を旧電柱から外し、旧電柱を撤去して新電柱を建柱するまでの間、この仮電柱Dにより電線を仮支持する。そして、新電柱が元穴に建てられた後、仮電柱Dに仮支持された電線を新電柱に移設することで、電柱の建替工事の主要作業が完了する。
【0035】
次に、
図11〜
図13を追加参照して、電柱元穴建替作業車1に装備された安全装置200について説明する。安全装置200は、
図11に示すように、ジャッキ反力検出器210、コントローラ220、警報装置230および反力基準値セット装置240を備えて構成される。
【0036】
ジャッキ反力検出器210は、アウトリガ装置5(アウトリガジャッキ8)の接地反力を検出するものであり、接地反力に応じた検出信号をコントローラ220に出力するようになっている。ジャッキ反力検出器210は、左前アウトリガ装置5Aの接地反力(「左前接地反力」という)を検出する左前ジャッキ反力検出器210Aと、右前アウトリガ装置5Bの接地反力(「右前接地反力」という)を検出する右前ジャッキ反力検出器210Bと、左後アウトリガ装置5Cの接地反力(「左後接地反力」という)を検出する左後ジャッキ反力検出器210Cと、右後アウトリガ装置5Dの接地反力(「右後接地反力」という)を検出する右後ジャッキ反力検出器210Dとの計4個が設けられており、これらを特に区別しないときはジャッキ反力検出器210と称する。ジャッキ反力検出器210は、アウトリガ装置5が単に接地しているか否かの検出(リミットスイッチのオン・オフ等による検出)を行うものではなく、接地反力の変化を検出することができるようになっており、例えば、ジャッキシリンダの軸部に取り付けられるピン型ロードセル等により構成される。
【0037】
コントローラ220は、所定の演算処理を行う演算処理装置221や演算結果や各種データ等を記憶する記憶装置222を備え、ジャッキ反力検出器210により検出されるアウトリガ装置5の接地反力に応じて警報装置230の警報作動を制御するように構成されている。警報装置230は、警報ランプや警報ブザー、シグナルランプ、表示モニタ、音声スピーカ等(図示せず)を備え、コントローラ220の指示に応じて警報作動を行い、作業者に注意を喚起するように構成されている。反力基準値セット装置240は、作業者により操作される操作スイッチ(図示せず)を備え、操作スイッチが操作されたことに応じて、コントローラ220に対し、後述する反力基準値を設定する指示を行うためのセット信号を出力するように構成されている。
図12に示すように、コントローラ220は運転キャブ3の後部に設けられており、警報装置230および反力基準値セット装置240は、車体後部にあるジャッキ操作装置9の内部(筐体内)に設けられている。なお、警報装置230および反力基準値セット装置240は、旋回台12の操作席25など、車両上の任意の位置に設けることができる。
【0038】
安全装置200は、上述した元穴建替工法において電柱元穴建替作業車1により仮電柱Dを立設した状態で支持し、旧電柱に架設されている電線を仮電柱Dに仮支持させる作業(「仮支持作業」という)を行う際に作動する。詳しくは、仮支持作業中において、電柱元穴建替作業車1に作用する転倒モーメントが増大し、電柱元穴建替作業車1が転倒する危険性が高まるような場合に、警報装置230による警報作動を行うようになっている。安全装置200の作動を説明する前に、
図12を参照して、仮支持作業中における転倒モーメントの増大要因や、安全装置200が電柱元穴建替作業車1の転倒の危険性を判断する際の基本的な考え方について説明する。
【0039】
図12には、電柱元穴建替作業車1を各アウトリガ装置5により持ち上げ支持した状態で、上部支持装置40および下部支持装置100により仮電柱Dを、車体4の左側において立設した状態で支持した状態を示している。この状態において電線の仮支持作業、すなわち、旧電柱に架設されている電線を旧電柱から外し、仮電柱Dにより電線を一時的に移す作業が行われる。仮電柱Dに電線が移されると、移された電線から仮電柱Dを介して電柱元穴建替作業車1に電線の張力等による水平荷重が作用する。
図12の例では、上部支持装置40に対し矢線Kで示す向きに水平荷重が作用するものとする。また、電柱元穴建替作業車1には、自重等による鉛直下向き荷重が作用している。既述したように、上部支持装置40および下部支持装置100は、仮電柱Dを遊挿状態で支持する構成であるので、仮電柱Dからの上下方向の荷重(鉛直荷重)については支持せず、水平荷重のみを支持するようになっている。そのため、仮支持作業中、電柱元穴建替作業車1に作用する水平荷重の大きさ(以下「水平荷重の大きさK」とも称する)は変動するが鉛直下向き荷重の
大きさは略変動しないという特徴がある。
【0040】
上部支持装置40に水平荷重が作用すると、この水平荷重により電柱元穴建替作業車1に転倒モーメントが作用する。
図12の例では、左前アウトリガ装置5Aの接地点と左後アウトリガ装置5Cの接地点とを結ぶラインL1を中心として、矢線Pで示す向きに転倒モーメント(以下「転倒モーメントP」と称する)が作用する。この転倒モーメントPの大きさは、(水平荷重の大きさK)×(地面から水平荷重が作用する位置までの距離H)となる。一方、電柱元穴建替作業車1に作用する自重等による鉛直下向き荷重は、各アウトリガ装置5の接地点にそれぞれ分散されて各接地点において下向きに作用する。そのうち、右前アウトリガ装置5Bの接地点と右後アウトリガ装置5Dの接地点とに分散される鉛直下向き荷重は、ラインL1を中心として、矢線Qで示す向きに作用する安定モーメント(以下「安定モーメントQ」と称する)を生じさせる。アウトリガ装置5の接地点に作用する鉛直下向き荷重は、アウトリガ装置5の接地反力と同じ大きさ(向きは逆)となる。そのため、安定モーメントQの大きさは、右前アウトリガ装置5Bの接地点と右後アウトリガ装置5Dの接地点とを結ぶ線をラインL2とするとき、(右前接地反力と右後接地反力との合計値)×(ラインL1とラインL2との距離)と等しくなる。
【0041】
電線の仮支持作業では、複数の電線が複数回に分けて(例えば1本ずつ)、仮電柱Dに移されるのが一般的である。仮電柱Dに移される電線の数が増えるのに従って、水平荷重が増大しそれに伴って転倒モーメントPも増大する。一方、水平荷重が増大して転倒モーメントPが増大しても、電柱元穴建替作業車1に作用する鉛直下向き荷重の大きさは変動しないので、各アウトリガ装置5の接地反力の合計値は略変動しない。ただし、転倒モーメントPが増大するのに従って、水平荷重が作用する向きと同じ側に位置するアウトリガ装置5の接地反力は増大する一方、水平荷重が作用する向きとは逆側に位置するアウトリガ装置5の接地反力は減少する。
図12の例の場合、左前接地反力と左後接地反力は増加し、右前接地反力と右後接地反力は減少する。右前接地反力と右後接反力が減少すると安定モーメントQが減少する。すなわち、転倒モーメントPが増大して安定モーメントQが減少することになるので、電柱元穴建替作業車1は水平荷重が作用する方向(
図12の例では左方向)に転倒する危険性が増大することになる。
【0042】
この左方向への転倒の危険性が増大していることは、右前接地反力と右後接地反力との合計値が、仮支持作業の前と比較して仮支持作業中にある限度まで減少していることにより判断することができる。すなわち、仮支持作業中、仮電柱Dに作用する垂直荷重は増えるが、電柱元穴建替作業車1に作用する鉛直下向き荷重の大きさは変動しないので、仮支持作業中における右前接地反力と右後接反力の減少は、ひとえに水平荷重の増大により転倒モーメントPが増大したことによるものであると考えられることによる。同様に、左前接地反力と右前接地反力との合計値が、仮支持作業の前と比較して仮支持作業中にある限度まで減少していれば、電柱元穴建替作業車1が後方に転倒する危険性が増大していると判断でき、左前接地反力と左後接地反力との合計値が、仮支持作業の前と比較して仮支持作業中にある限度まで減少していれば、電柱元穴建替作業車1が右方向に転倒する危険性が増大していると判断できる。また、左後接地反力と右後接地反力との合計値が、仮支持作業の前と比較して仮支持作業中にある限度まで減少していれば、電柱元穴建替作業車1が前方に転倒する危険性が増大していると判断できる。
【0043】
次に、電線の仮支持作業を行う際の安全装置200の作動例について説明する。仮支持作業は、
図12に示すように、電柱元穴建替作業車1が各アウトリガ装置5により持ち上げ支持され、仮電柱Dを立設した状態で支持した状態で行われる。仮支持作業が行われる前に、反力基準値セット装置240の操作スイッチが作業者により操作されると、反力基準値セット装置240からコントローラ220にセット信号が出力される。このセット信号を受けてコントローラ220は、ジャッキ反力検出器210により検出された各接地反
力を、反力基準値として設定する(記憶装置222に記憶する)。詳しくは、左前接地反力と右前接地反力との合計値を前側反力基準値として設定し、左後接地反力と右後接地反力との合計値を後側反力基準値として設定する。また、左前接地反力と左後接地反力との合計値を左側反力基準値として設定し、右前接地反力と右後接地反力との合計値を右側反力基準値として設定する。
【0044】
図13では、左前接地反力、右前接地反力、左後接地反力、右後接地反力が、それぞれ2000、2500、1000、1500であり、前側反力基準値、後側反力基準値、左側反力基準値、右側反力基準値が、それぞれ4500、2500、3000、4000である場合を例示している。なお、各反力の数値は説明のため便宜的に設定したものである(以下、同様)。
【0045】
各反力基準値を設定した後、コントローラ220は、仮支持作業中において随時(例えば、数ミリ秒から数十ミリ秒程度の所定時間ごとに)、ジャッキ反力検出器210により検出された各接地反力に基づき仮支持作業中の接地反力(「作業中反力値」と称する)を求め、求めた作業中反力値を反力基準値と比較する。詳しくは、左前接地反力と右前接地反力との合計値から前側作業中反力値を求め、左後接地反力と右後接地反力との合計値から後側作業中反力値を求める。また、左前接地反力と左後接地反力との合計値から左側作業中反力値を求め、右前接地反力と右後接地反力との合計値から右側作業中反力値を求める。
図13では、あるタイミングにおける左前接地反力、右前接地反力、左後接地反力、右後接地反力が、それぞれ2800、1200、2400、600であり、前側作業中反力値、後側作業中反力値、左側作業中反力値、右側作業中反力値が、それぞれ4000、3000、5200、1800である場合を例示している。
【0046】
作業中反力値と反力基準値との比較判定は、反力基準値に対する作業中反力値の比率を求め、反力基準値に対する作業中反力値の比率と、その比率が所定の安全率(本例では、50%とするが、数値は適宜に設定可)を下回るか否かを判定する。
図13では、前側反力基準値に対する前側作業中反力値の比率、後側反力基準値に対する後側作業中反力値の比率、および左側反力基準値に対する左側作業中反力値の比率は、いずれも安全率を上回っているのに対し、右側反力基準値に対する右側作業中反力値の比率は、安全率を下回っている場合を例示している。なお、前側反力基準値と前側作業中反力値との比較判定に用いる安全率、後側反力基準値と後側作業中反力値との比較判定に用いる安全率、左側反力基準値と左側作業中反力値と比較判定に用いる安全率、および右側反力基準値と右側作業中反力値との比較判定に用いる安全率を、それぞれ異なる値に設定してもよい。
【0047】
反力基準値に対する作業中反力値の比率が所定の安全率を下回ると判定した場合、コントローラ220は、警報装置230に対し指示信号を出力し、警報装置230に警報作動を行わせる。
図13の例では、右側反力基準値に対する右側作業中反力値の比率が安全率を下回っているので警報作動を行わせる。なお、前側反力基準値に対する前側作業中反力値の比率が安全率を下回っている場合、左側反力基準値に対する左側作業中反力値の比率が安全率を下回っている場合、後側反力基準値に対する後側作業中反力値の比率が安全率を下回っている場合のいずれの場合であっても、コントローラ220は警報装置230に警報作動を行わせる。警報作動を行わせることにより作業者に注意を喚起し、電柱元穴建替作業車1が転倒する危険性があることを認識させることができる。また、注意を喚起された作業者に、仮電柱Dへの電線の仮支持作業を中断させたり、仮電柱Dに移した電線を仮電柱Dから外し、仮電柱Dの設置位置を変更させたりするといった危険回避行動を取らせることができる。なお、警報装置230においては、反力基準値に対する作業中反力値の余裕度合い(反力基準値に対する作業中反力値の比率が安全率に対しどの程度余裕があるのか等)に応じて、警報ランプの表示色を変えたり(例えば、緑、黄色、赤等)、警報ブザーからの警告音を変えたりしてもよい。
【0048】
以上、本実施形態に係る安全装置200によれば、作業中反力値と反力基準値とを比較し、反力基準値に対する作業中反力値が予め設定した安全率を下回るかどうかを判定するという簡単な演算処理を行うことにより、的確に警報作動を行うことができる。また、前側反力基準値と前側作業中反力値の比較判定、後側反力基準値と後側作業中反力値との比較判定、左側反力基準値と左側作業中反力値との比較判定、および右側反力基準値と右側作業中反力値との比較判定を、仮支持作業中において継続的に行うので、車体4の前後左右の各方向への電柱元穴建替作業車1の安定性(転倒する危険性)について監視し、いずれの方向への転倒の危険性が高まった場合でも、警報作動を行うことが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0050】
上述の実施形態では、反力基準値および作業中反力値との比較判定を、反力基準値に対する作業中反力値の比率に基づき行っているが、これに限定されるものではなく、反力基準値と作業中反力値との差に基づき両者の比較判定を行うように構成してもよい。例えば、反力基準値に対して作業中反力値が所定の値を越えて下回ったときに、警報作動を行うようにしてもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、ジャッキ反力検出器として、各ジャッキに設けられる、ロードセル等により構成されるジャッキ反力検出器210を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、車両の重量を計測するための携行型の車両重量計(ポータブルトラックスケールとも称される)を各ジャッキの下に置き、車両重量計により検出される重量をジャッキの接地反力として用いるように構成してもよい。
【0052】
また、上述の実施形態においては、本発明に係る作業車として、元穴建替工法に用いる電柱元穴建替作業車1を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、電線の仮支持作業が行われる仮支持柱を支持する作業車であれば、元穴建替工法以外の工法に用いる他の作業車であっても本発明を適用可能である。