特開2020-73002(P2020-73002A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-73002(P2020-73002A)
(43)【公開日】2020年5月14日
(54)【発明の名称】送入装置および送入方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20200417BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20200417BHJP
【FI】
   A61F2/95
   A61M25/098
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-12340(P2020-12340)
(22)【出願日】2020年1月29日
(62)【分割の表示】特願2018-178930(P2018-178930)の分割
【原出願日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】62/109,534
(32)【優先日】2015年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/656,462
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】514187822
【氏名又は名称】インタクト ヴァスキュラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTACT VASCULAR, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ロンゴ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス エヴァンス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェームズ ハリソン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA41
4C267AA55
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB18
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB37
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB43
4C267CC08
4C267CC09
4C267GG06
4C267GG09
4C267GG21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改良されたステントおよびステント送入システムを提供する。
【解決手段】送入装置上の送入プラットフォーム8が、圧縮された状態のタック2を保持することができ、非一定な外径、砂時計形状、テーパ状の近位側半分、畝、くぼみ、などの特有の形状を有することができる。この特有の形状を、放射線不透過性マーカであってもよい環状押しバンド44の間に配置することができる。いくつかの実施形態において、特有の形状は、より硬い内側シャフト26を囲むこの特有の形状を有する柔軟な材料のスリーブによってもたらされる。さらに、環状押しバンド44を、放射線不透過性を保ちながら柔軟性を高めるために、ワイヤまたは素材の断片で作製することができる。タック2の配置方法は、配置に先立つ外鞘12および配置されるべきタック2の放射線不透過性マーカの整列を含むことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側シャフトと、
送入プラットフォームと、
外鞘と
を備える送入装置であって、
前記送入プラットフォームは、
どちらも第1の外径を有している前記内側シャフトの周囲の1対の環状バンドと、
前記内側シャフトへと固定され、前記環状バンドの間に位置し、前記内側シャフトよりも小さいデュロメータを有しているスリーブと
を備えており、
前記送入プラットフォームは、当該送入装置から脈管内へと配置される腔内装置を受け入れておくように構成され、前記送入プラットフォームは、前記環状バンドの間かつ前記スリーブ上に前記腔内装置を受け入れるように構成されており、
前記外鞘は、前記内側シャフトおよび前記送入プラットフォーム上に配置され、前記内側シャフトおよび前記送入プラットフォームを覆ってスライド可能であり、前記外鞘は、前記送入プラットフォームを覆う配置前位置と、前記外鞘が引き戻されて前記送入プラットフォームの前記環状バンドの少なくとも一方および前記スリーブが露出される少なくとも1つの送入位置とを有する、送入装置。
【請求項2】
複数の腔内装置の順次送入のための複数の追加の送入プラットフォームをさらに備える、請求項1に記載の送入装置。
【請求項3】
各々の追加の送入プラットフォームは、追加のスリーブおよび追加の環状バンドを備えている、請求項2に記載の送入装置。
【請求項4】
前記環状バンドの各々は、近位端に半径を備えている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項5】
前記環状バンドの各々は、放射線不透過性環状押しバンドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項6】
前記環状バンドの各々は、放射線不透過性らせんコイルを備えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項7】
前記放射線不透過性らせんコイルは、前記スリーブを形成するポリマーよりも大きいデュロメータを有するポリマーに包まれている、請求項6に記載の送入装置。
【請求項8】
前記スリーブは、前記1対の環状バンドの間の距離の3/4、2/3、1/2、40%、1/3、または1/4を延びている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項9】
前記スリーブは、最も近位側の環状バンドから延びている、かつ/又は、前記1対の環状バンドの間の中央に位置する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項10】
前記スリーブは、両方の前記環状バンドの間を延びて両方の前記環状バンドに接している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項11】
前記スリーブ上に配置された腔内装置をさらに備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項12】
前記スリーブは、前記腔内装置の軸方向の全長の全体、3/4、2/3、1/2、40%、1/3、または1/4を延びている、請求項11に記載の送入装置。
【請求項13】
前記腔内装置は、波形のストラットを含む1対のリングを備えている、請求項11または12に記載の送入装置。
【請求項14】
前記スリーブは、前記波形のストラットのうちの一方の軸方向の全長または前記1対のリングのうちの一方の軸方向の全長の全体、4/5、3/4、2/3、または1/2に沿って延びている、請求項13に記載の送入装置。
【請求項15】
前記腔内装置は、縮められた状態で前記スリーブ上にあり、前記外鞘が、前記腔内装置をその場に拘束し、前記スリーブと前記外鞘との間のすき間が、前記腔内装置およびスリーブと前記外鞘との間に干渉を伴うはまり合いをもたらし、該干渉を伴うはまり合いが、配置の際に前記外鞘が引き戻されるときに当該送入装置によって前記腔内装置を拘束することを可能にし、飛び出しの可能性を減らす、請求項11〜14のいずれか一項に記載の送入装置。
【請求項16】
前記スリーブは、前記1対の環状バンドよりも低いデュロメータを有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の送入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
送入装置および送入方法が、本明細書において開示される。特定の実施形態が、送入装置からの複数の腔内装置の順次送入に関して説明される。これらの送入装置および方法は、アテローム性動脈硬化閉塞疾患を治療するための処置において使用することが可能であるが、これらの処置に限られるわけではない。
【背景技術】
【0002】
通路を生成または維持するためにステントなどの装置が体内に配置されるいくつかの医学的な状態および処置が存在する。膨張式の心臓、血管、および胆管用のステントから、腎臓と膀胱との間の尿の流れを可能にするために使用されるプラスチック製ステントまで、種々の目的に使用される幅広くさまざまなステントが存在する。
【0003】
ステントは、多くの場合に、バルーン血管形成術などの医療処置の後に脈管系に配置される。バルーン血管形成術は、アテローム性動脈硬化閉塞疾患の治療に使用されることが多い。アテローム性動脈硬化閉塞疾患は、米国および工業化社会における脳卒中、心臓発作、四肢欠損、および死亡の主原因である。動脈硬化性プラークが、動脈の壁に沿って硬い層を形成し、カルシウム、コレステロール、密集した血栓、および細胞残屑で構成されうる。動脈硬化閉塞疾患が進行するにつれて、特定の血管を通過するように意図された血液の供給が、閉塞のプロセスによって減少し、場合によっては阻止される。臨床的に重大な動脈硬化性プラークについて最も広く利用される処置方法の1つは、バルーン血管形成術であり、その後にステントの配置を行うことができる。
【発明の概要】
【0004】
現時点において利用可能なステントおよびステント送入システムは、多数の限界および欠点を抱えている。腔内装置および関連の送入装置における改善が、依然として必要とされている。
【0005】
特定の実施形態によれば、複数の腔内装置(例えば、ステント、タック、ステイプル、など)の順次送入のための送入装置であって、複数の腔内装置を送入装置上に圧縮された状態で保持する送入装置を提供することができる。本明細書の目的において、用語「タック」が、送入装置から配置することができる多数の腔内装置のうちの1つを指すために使用される。送入装置は、複数の送入プラットフォームを備えることができ、各々の送入プラットフォームは、タックを圧縮された状態で送入装置上に保持するように構成され、非一定な外径、砂時計形状、テーパ状の近位側半分、畝(ridge)、くぼみ(dimple)、などの特有の形状を有する。この特有の形状を、放射線不透過性マーカであってもよい環状押しバンドの間に配置することができる。
【0006】
いくつかの実施形態において、特有の形状は、より硬い内側シャフトを囲むこの特有の形状を有する柔軟な材料のスリーブによってもたらされる。さらに、環状押しバンドを、放射線不透過性を保ちながら柔軟性を高めるために、ワイヤまたは素材の断片で作製することができる。
【0007】
タックの配置方法は、配置に先立つ外鞘および配置されるべきタックの放射線不透過性マーカの整列を含むことができる。
【0008】
マーカバンドの整列ならびに腔内装置またはタックの送入の方法を、実行することができる。この方法は、圧縮された状態の複数のタックを有している送入装置を治療領域へと前進させるステップであって、各々のタックは、複数のストラット(strut)と、タックの中央領域に配置された放射線不透過性マーカとを備え、各々のタックは、同じサイズであって、放射線不透過性マーカが同じ位置に配置されており、送入装置は、複数のタックのうちの1つをそれぞれ有する複数の送入プラットフォームを有する内側コアと、内側コアおよび送入プラットフォームを覆う外鞘とを備え、外鞘は、遠位端から近位側に配置された放射線不透過性マーカバンドを有しているステップと、外鞘上の放射線不透過性マーカバンドと送入されるべき第1のタック上の放射線不透過性マーカとが整列するまで外鞘を引き戻すステップと、これら2つの放射線不透過性マーカを、タックを解放する前に、治療すべき組織の切開または病変などの治療領域に整列させるステップと、その後に外鞘を引き戻してタックを解放するステップと、を含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、送入装置は、内側シャフトと、送入プラットフォームと、外鞘とを備えることができる。送入プラットフォームは、どちらも第1の外径を有している内側シャフトの周囲の1対の環状バンドと、スリーブとを含むことができる。スリーブを、内側シャフトへと固定し、環状バンドの間に位置させることができる。スリーブは、内側シャフトよりも小さいデュロメータ(durometer)を有することができ、さらに最適には、1対の環状バンドよりも小さいデュロメータを有することができる。スリーブは、環状バンドの第1の外径よりも小さい非一定な外径をさらに有することができる。送入プラットフォームを、送入装置から脈管内へと配置される腔内装置を受け入れておくように構成でき、環状バンドの間かつスリーブ上に腔内装置を受け入れるように構成することができる。外鞘は、内側シャフトおよび送入プラットフォーム上に配置されてよく、内側シャフトおよび送入プラットフォームを覆ってスライド可能であってよい。外鞘は、送入プラットフォームを覆う配置前位置と、外鞘が引き戻されて送入プラットフォームの環状バンドの少なくとも一方およびスリーブが露出される少なくとも1つの配置位置とを有する。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、複数の追加の送入プラットフォームが、複数の腔内装置の順次送入のために含まれてよい。各々の追加の送入プラットフォームは、追加のスリーブおよび追加の環状バンドを備えることができる。環状バンドの各々は、近位端に半径を備えることができ、さらには/あるいは放射線不透過性らせんコイルを備えることができる。放射線不透過性らせんコイルは、スリーブを形成するポリマーよりも大きいデュロメータを有するポリマーに包まれてよい。
【0011】
スリーブは、任意の数の異なる形状およびサイズを含むことができ、畝、点、くぼみ、などを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、送入装置は、ノーズコーン(nose cone)を遠位端に有する内側シャフトと、送入プラットフォームと、外鞘とを備えることができる。送入プラットフォームは、どちらも第1の外径を有しており、内側シャフトへと固定された1対の環状バンドと、内側シャフトへと固定され、環状バンドの間に位置するスリーブとを備えることができる。スリーブは、内側シャフトよりも小さいデュロメータを有することができ、さらに随意により1対の環状バンドよりも小さいデュロメータを有することができる。スリーブは、第1の一定な外径部分と、第1の一定な外径部分よりも大きいが、環状バンドの第1の外径よりは小さい外径を有する第2の一定な外径部分とをさらに有することができ、第2の一定な外径部分は、第1の一定な外径部分よりも軸方向の長さが短く、スリーブは、第1および第2の一定な外径部分の間の滑らかなテーパ状の推移をさらに有する。送入プラットフォームを、送入装置から脈管内へと配置される腔内装置を受け入れておくように構成でき、環状バンドの間かつスリーブ上に腔内装置を受け入れるように構成できる。外鞘を、内側シャフトおよび送入プラットフォーム上に配置でき、内側シャフトおよび送入プラットフォームを覆ってスライドさせることができる。外鞘は、送入プラットフォームを覆う配置前位置と、外鞘が引き戻されて送入プラットフォームの環状バンドの少なくとも一方およびスリーブが露出される少なくとも1つの配置位置とを有することができる。
【0013】
腔内装置の配置方法は、以下のステップのうちの1つ以上を含むことができる。圧縮された状態の複数の腔内装置を有している送入装置を、治療領域へと前進させるステップ。複数の腔内装置の各々は、複数のストラットと、腔内装置の中央領域に配置された放射線不透過性マーカとを備えることができる。複数の腔内装置の各々は、同じサイズであってよく、放射線不透過性マーカが同じ位置に配置されてよい。送入装置は、内側シャフトであって複数の送入プラットフォームを有しており、複数の腔内装置の各々の腔内装置が複数の送入プラットフォームのうちのそれぞれの送入プラットフォームに配置される内側シャフトと、内側シャフトおよび複数の送入プラットフォームを覆う外鞘とを備えることができ、外鞘は、外鞘の遠位端から近位側に配置される放射線不透過性マーカバンドを有する。外鞘上の放射線不透過性マーカバンドと、複数の腔内装置のうちの送入されるべき第1の腔内装置上の放射線不透過性マーカとが整列するまで、外鞘を引き戻すステップ。整列した放射線不透過性マーカバンドおよび放射線不透過性マーカを、第1の腔内装置の解放の前に、治療領域に整列させるステップ。外鞘を引き戻して第1の腔内装置を解放するステップ。外鞘上の放射線不透過性マーカバンドと、複数の腔内装置のうちの送入されるべき第2の腔内装置上の放射線不透過性マーカとが整列するまで、外鞘を引き戻すステップ。
【0014】
本方法のいくつかの実施形態において、整列した放射線不透過性マーカバンドおよび放射線不透過性マーカを治療領域に整列させるステップは、整列した放射線不透過性マーカバンドおよび放射線不透過性マーカを、第1の腔内装置の解放の前に、組織の切開の中央に位置させるステップを含むことができる。本方法のいくつかの実施形態において、外鞘上の放射線不透過性マーカバンドと、複数の腔内装置のうちの送入されるべき第1の腔内装置上の放射線不透過性マーカとが整列するまで、外鞘を引き戻すステップは、外鞘の最も遠位側の端部と第1の腔内装置の最も遠位側の端部とが整列するまで外鞘を引き戻すステップを含むことができる。本方法のいくつかの実施形態において、外鞘上の放射線不透過性マーカバンドと、複数の腔内装置のうちの送入されるべき第1の腔内装置上の放射線不透過性マーカとが整列するまで、外鞘を引き戻すステップは、放射線不透過性マーカバンドが第1の腔内装置の中央に位置するまで外鞘を引き戻すステップを含むことができる。本方法のいくつかの実施形態において、第1の腔内装置は、放射線不透過性マーカのただ1つの列を有することができ、外鞘上の前記放射線不透過性マーカバンドと、複数の腔内装置のうちの送入されるべき第1の腔内装置上の放射線不透過性マーカとが整列するまで、外鞘を引き戻すステップは、放射線不透過性マーカバンドが放射線不透過性マーカのただ1つの列を取り囲むまで外鞘を引き戻すステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
種々の実施形態が、例示の目的で添付の図面に示されるが、決して本発明の技術的範囲を限定するものとして解釈されてはならない。ここで、類似の参照符号は、類似の実施形態にまたがって一貫して、対応する特徴を指し示している。
【0016】
図1】送入装置の側面図であり、図示を容易にするために短くされている。
【0017】
図2】外鞘が引き戻された状態の送入装置の遠位端の図を示している。
【0018】
図3】腔内装置またはタックの実施形態を示している。
【0019】
図3A図3のタックの平たくされた一部分を示している。
【0020】
図4】外鞘が途中まで引き戻された状態の送入装置の遠位端の詳細図を示している。
【0021】
図5】送入プラットフォームの実施形態を示す送入装置の断面である。
【0022】
図6A-E】さまざまな形状を有する送入プラットフォームの種々の実施形態を示している。
【0023】
図7A-C】配置方法の特定の段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
送入装置10を、アテローム性動脈硬化閉塞疾患を治療するための処置の一部として使用することができる。送入装置を、タックなどの1つ以上の腔内装置2を、プラーク蓄積の場所へともたらすために使用することができる。タックは、その場所を安定させ、さらには/あるいはプラーク片を、血流を妨げないように保持することができる。本明細書に記載の送入装置および方法は、主として脈管の処置に関して説明されるが、体の他の部分の治療にも使用可能であることを、理解できるであろう。
【0025】
図1および2が、複数の腔内装置2の順次送入に使用することができる送入装置10の実施形態を示している。送入装置10は、アテローム性動脈硬化閉塞疾患を治療するための処置において使用することが可能であるが、これらの処置に限られるわけではない。
【0026】
図示を容易にするために短くされている図1の送入装置10は、遠位端4および近位端6を強調している。近位端6を、医師または他の医療専門家が、医療処置の際に保持することができる。近位端6は、1つ以上の腔内装置またはタック2の送入を制御するために使用される。図2は、6つの腔内装置2を有する遠位端4を示しており、各々の腔内装置2は、専用の送入プラットフォーム8に配置されている。図1および2を比べると、図2においては外鞘12が遠位端から引き戻されていることを見て取ることができる。これにより、送入プラットフォーム8およびそれぞれの腔内装置2が露出している。腔内装置2は、好ましくは自己膨張型(self−expandable)であり、どのように送入プラットフォームに収まるのかを示すために、圧縮された状態で図示されている。典型的な使用において、外鞘12が、この状態にあるときの腔内装置2を覆う。さらに詳しく後述されるように、外鞘12を、一度に1つの腔内装置2を所望の治療場所に配置するために、系統だったやり方で引き戻すことができる。
【0027】
例えばセル(cell)の列がただ1つ(図3および3A)または2つである比較的小さい腔内装置2を、正確な治療場所に送入し、重なり合うことがないように適度に離すことができる。図3Aが、図3のタックの平たくされた一部分を示している。セル14の1つの列が、波形のストラット16からなる2つの同心リングをブリッジ部材18によって接続することによって形成されていることを、見て取ることができる。ブリッジ部材18は、1対のアンカ20と、放射線不透過性マーカ22とを有している。複数の小さな腔内装置2を、1つまたは複数の損傷の治療に使用することができる。これは、体内の異物の量を最小限にしつつ、必要とされる保持力をもたらすことができる。腔内装置および送入装置の種々の実施形態が、本出願の出願人の関連の特許出願、すなわち2011年7月8日に出願され、米国特許出願公開第2012/0035705号として公開された特許出願第13/179,458号(IVAS.002P4)、および2013年1月24日に出願され、米国特許出願公開第2013/0144375号として公開された特許出願第13/749,643号(IVAS.002P6)にさらに詳しく記載されており、これらの特許出願はどちらも、ここでの言及によって本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。
【0028】
送入装置および方法が、より大型の装置などの他の腔内装置2にも使用可能であり、セルの列がただ1つまたは2つの腔内装置2における使用に限られないことを、理解できるであろう。
【0029】
次に図1に戻り、図示の実施形態の近位端6を、ここで説明する。送入装置10は、外鞘12と、近位側ハウジング24と、内側シャフト26とを備えることができる。外鞘12を、ポリマー押し出し材およびポリマー押し出し材に埋め込まれた編組線の積層品として作製することができる。柔軟性および剛性を、編組線の数、編組のパターン、および編組のピッチによって制御することができる。他の実施形態においては、外鞘を、金属製またはプラスチック製のハイポチューブ(hypotube)などのハイポチューブで形成することができる。鞘の柔軟性および剛性を、ハイポチューブの全長にわたるらせん状の切れ目の傾きおよび頻度などの多数の特徴によって制御することができる。さらに、外鞘は、遠位端またはその付近に放射線不透過性(RO)マーカ28を備えることができる。いくつかの実施形態において、放射線不透過性マーカ28は、最も遠位側の端部から間隔を空けて位置する環状の帯であってよい。
【0030】
図示のとおり、外鞘12は、編組シャフトであり、近位側ハウジング24は、張力緩和部30を介して外鞘へとつながる二股ルアー(luer)である。張力緩和部30は、ポリオレフィンまたは他の同様の材料で作られるなど、任意の形態を取ることができる。
【0031】
二股ルアー24は、内側シャフト26を受け入れる主アームと、横アームとを有する。二股ルアーを、外鞘の近位端に配置することができる。横アームは、空気を追い出し、鞘と内側シャフトとの間の空間の潤滑性を向上させるために使用されるフラッシングポートを備えている。
【0032】
テューイボルスト(tuohy borst)アダプタ、止血弁、または他のシール機構32を、内側シャフト26と外鞘12との間の空間の近位端を受け入れて封止するために、二股ルアー24の近位側に設け、あるいは二股ルアー24に統合することができる。テューイボルストアダプタは、外鞘と内側シャフトとの間の関係を固定するためのねじ式ロックなどの係止のインターフェイスをもたらすこともできる。これは、医師がタックを時期尚早に配置してしまうことなく遠位端を適切に位置させることを、可能にすることができる。
【0033】
内側シャフトは、近位側ルアーハブ34および配置基準マーク36を備えて図示されている。配置基準マーク36は、各々の配置基準マークの間の間隔が送入プラットフォームの特徴の間の間隔と同じであってよいように、送入プラットフォーム8に対応することができる。例えば、配置基準マークの間の間隔は、送入プラットフォームの中心間の距離と同じであってよい。
【0034】
いくつかの実施形態においては、最も遠位側の配置基準マーク、あるいは太い帯または異なる色を有するなどの他とは異なるマークが、主位置またはホーム位置を示すことができる。例えば、帯の幅が他よりも広い配置基準マークを、二股ルアー24の近位端または止血弁32に整列させることができる。これは、外鞘がノーズコーン38の近位側の内側シャフト26を完全に覆う位置にあることを、医師に知らせることができる。いくつかの実施形態においては、この整列を、外鞘のROマーカ28の、内側シャフト26の遠位端のROマーカへの整列と解釈することもできる。
【0035】
いくつかの実施形態においては、配置基準マーク36のうちの1つ以上が、システム内のタックの数を表すことができる。すなわち、ひとたびタックが解放されると、配置基準マーク36が覆い隠され、医師は、残りの配置基準マークが、使用することができる残りのタックの数に相当することを、知ることができる。そのような実施形態においては、二股ルアー24または止血弁32の近位端を、配置を示すために2つの基準マークの間のほぼ真ん中へと進めることができる。
【0036】
次に図4を眺めると、送入装置10の遠位端4の詳細図が示されている。図示の実施形態の特徴として、遠位側の柔らかい先端38を有する内側シャフト26が挙げられる。先端38は、テーパ状のノーズコーンであってよい。ノーズコーン38は、組織を傷つけることなく押しのけ、脈管構造を通過する送入装置の案内を助けるための拡張構造として機能する。先端38自身が放射線不透過性であってよく、あるいは放射線不透過性の要素27を、先端またはその付近に取り入れることができる。内側シャフト26を通って近位側ルアーハブ34(図1)まで延びるガイドワイヤ管腔40を見て取ることができる。ガイドワイヤ管腔40は、ガイドワイヤを受け入れて前進させるように構成される。
【0037】
送入プラットフォーム8の各部も示されている。送入プラットフォーム8は、図示の実施形態においては同一であるが、他の実施形態においては、異なる送入プラットフォームの間でサイズおよび構成が違ってもよい。縮められ(crimped)、あるいは圧縮されたタック2が、送入プラットフォーム8に示されている。
【0038】
図2および4に見て取ることができるとおり、1つ以上の送入プラットフォーム8を、送入装置10の遠位端4の付近において内側シャフト26上に配置することができる。送入プラットフォーム8の各々は、1対の環状押しバンド44の間に位置して広がる凹所42を備えることができる。図5が、送入プラットフォーム8Aの一実施形態における送入装置の断面を示している。図示の実施形態において、第1のプラットフォーム8Aの近位側の環状押しバンド44Aは、すぐ近位側に位置するプラットフォーム8B(一部分だけが図示されている)の遠位側の環状押しバンド44Aでもある。環状押しバンド44は、凹所42における送入プラットフォームと比べて、より大きな外径を有している。いくつかの実施形態においては、凹所を、1つまたは2つの環状押しバンドならびに/あるいは内側シャフト26上のさらなる特徴に隣接し、あるいはこれらの間に位置する小径の領域として定めることができる。
【0039】
環状押しバンド44のうちの1つ以上は、放射線不透過性マーカバンドであってよい。例えば、近位側および遠位側放射線不透過性マーカバンド44を、プラットフォーム8の端部を標準的な視覚化技術を使用して視認できるようにするために設けることができる。環状マーカバンド44は、例えばタンタル、イリジウム、および白金材料のうちの1つ以上を含むなど、任意の適切な形態をとることができる。いくつかの実施形態において、押しバンド44は、4mmの長さであってよく、間に6.75mmの凹所を備えることができる。6.5mmのタックを、押しバンド44の間に配置することができる。いくつかの実施形態において、押しバンドは、凹所および/またはタックのサイズの50〜70%の間であってよい。いくつかの実施形態において、押しバンドは、約60%である。他の実施形態において、押しバンドは、はるかに小さくてよく、凹所および/またはタックのサイズの10〜20%の間であってよい。これは、とくには、より長いタックに当てはまるかもしれない。いくつかの実施形態において、押しバンド44の少なくとも近位端は、送入装置を引き戻す際に配置済みのタックに引っ掛かる可能性を減らす役に立つような半径を有することができる。
【0040】
凹所とタックとの間の長さの差を小さくすることで、とりわけセルの列が1つまたは2つだけであるタックにおいて、タックの配置の精度を高めることができる。いくつかの実施形態において、凹所とタックとの間の長さの差は、1、0.5、0.4、0.3、0.25、または0.2mm未満であってよい。タックは、長さ4、5、6、6.5、8、10、または12mmなど、任意の数の異なるサイズであってよい。
【0041】
外鞘12を、PEBAXという商品名で入手可能なポリエーテルブロックアミド(PEBA)、すなわち熱可塑性エラストマ(TPE)で作製することができる。いくつかの実施形態において、外鞘12は、TEFLONなどのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作られた薄い内側ライナを有することができる。任意の放射線不透過性マーカバンド28または他の放射線不透過性材料を、これら2つの層の間に配置することができる。他の実施形態においては、放射線不透過性マーカバンド28または他の放射線不透過性材料を、外鞘12の1つ以上の層に埋め込むことができる。放射線不透過性マーカバンド28は、幅が0.5mm〜5mmの範囲であってよく、最も遠位側の先端52から近位側0.5mm〜10mmに位置することができる。いくつかの実施形態において、放射線不透過性マーカバンド28は、幅1mmであってよく、最も遠位側の先端52から近位側3mmに位置することができる。
【0042】
図5の断面において、スリーブ46が2つの環状バンド44の間の内側シャフト26の周囲に位置することを、見て取ることができる。いくつかの実施形態において、送入プラットフォーム8は、シャフト26を囲むスリーブ46を備えることができ、ここでスリーブ46は、シャフト26とは異なる材料で作られ、あるいはシャフト26とは異なる材料特性を有する。いくつかの実施形態において、スリーブは、タックを送入プラットフォームの所定の場所にとどまらせる役に立つ粘着性、グリップ、表面の模様、および/または他の特徴を有する材料を提供する。いくつかの実施形態においては、スリーブを、PEBAで作製することができる。いくつかの実施形態による内側シャフトは、PTFE/ポリイミド複合材料で作製された複合押し出し材である。スリーブは、内側シャフトおよび/または押しバンド44よりも柔らかくて(デュロメータが小さくて)よい。これは、類似の種類の材料で作製される場合にも当てはまりうる。いくつかの実施形態において、スリーブは、外鞘12を引き戻すときにタックを所定の場所(例えば、内側シャフトに対する長手方向の位置)にとどまらせる役に立つ粘着性、グリップ、表面の模様、および/または他の特徴を有する材料であってよい。これは、配置の際の制御性を高めることができ、タックが送入プラットフォームから遠位側へと撃ち出される可能性(業界においてウォーターメロンシーディング(watermelon seeding)として知られている)を減らすことができる。いくつかの場合には、外鞘を途中まで取り去ることによって腔内装置を部分的に露出させることができることで、腔内装置を、完全な解放まで送入装置によって確実に保持しつつ、或る程度まで膨張させることができる。
【0043】
スリーブ46を、タック2が送入プラットフォーム8に位置した状態においてタックと外鞘との間の空間が最小限または皆無であるようなサイズとすることができる。いくつかの実施形態においては、スリーブ46を、内側シャフト26と一緒に成形でき、あるいは内側シャフト26上へと押し出すことができる。いくつかの実施形態においては、送入装置10を、内側シャフト26の或る長さについて延びるただ1つのスリーブ46を備えて形成することができる。例えば、スリーブは、最初の送入プラットフォームから最後の送入プラットフォームまで延びることができる。環状バンド44が、スリーブ46の別々の部分を囲むことができ、あるいはスリーブ46によって包まれてよい。いくつかの実施形態においては、各々の送入プラットフォーム8が、凹所42に位置する別々のスリーブ46を有する。環状バンド44は、異なる材料によって包まれてよく、あるいはまったく包まれなくてもよい。
【0044】
図5から理解されるとおり、スリーブ46は、スリーブの一部分または全長にわたって保たれる円形の断面を有する円筒形であってよい。他の実施形態において、スリーブは、特有の形状を有することができ、テーパ(図6A〜6E)、砂時計形状(図6A)、畝(図6B)、くぼみ(図6C)、点(dot)(図6D)、2つ以上の異なる直径(図6E)、などのうちの1つ以上を含むことができる。畝、点、およびくぼみなどの特徴を、いくつかの異なる模様またはグループにて配置することができる。さらに、スリーブ(図6B〜D)またはスリーブ(図6E)の一部は、凹所全体にわたって延びる必要はない。いくつかの実施形態においては、スリーブまたは外径の大きい部分の長さが、タックの長さに対応することができる。例えば、スリーブまたは外径の大きい部分が、凹所および/またはタックの3/4、2/3、1/2、2/5、1/3、1/4を延びることができる。さらに、スリーブまたは外径の大きい部分の長さは、最も近位側の波形のリングなど、波形のリング16におけるストラットのサイズに関係でき、例えばストラットの長さまたは最も近位側の波形のリングの長さの全体、4/5、3/4、2/3、または1/2について延びることができる。短いスリーブ、またはスリーブの外径の大きい部分は、好ましくは凹所の近位端から遠位側へと延びる(図6D〜6E)が、凹所の中央に位置しても、遠位端に置かれても(図6C)、凹所内の他の位置に置かれてもよい。
【0045】
図6Eのスリーブは、間に短いテーパを有する2つの異なる一定の外径の部分を有して図示されている。スリーブを、熱によって接合される2つの別々の部分から形成することができる。テーパ部も、2つの一定の外径の部分の間に滑らかな推移が存在するように熱による結合によって生み出されてよい。すでに述べたように、より大きい一定の外径の部分は、好ましくは凹所の近位端から遠位側へと延びる。このより大きな外径の部分は、一定の外径を有していても、有していなくてもよいが、上述したように、凹所の全体にわたって延びる必要はない。
【0046】
いくつかの実施形態において、内側シャフト26は、押し部44の間により小さいデュロメータのスリーブ46を有することができる。タック2を、スリーブ46へと縮めることができ、外鞘12が、縮められたタックをその場に拘束することができる。スリーブ46と外鞘12との間のすき間が、縮められたタック2と内側および外側の要素との間にわずかな干渉を伴うはまり合いをもたらすことができる。このわずかな干渉は、タックがほぼ完全に鞘から露出して、タックの遠位部が「花びら」状に開いて脈管の壁に係合できるまで、送入システムが配置の際に縮められたタックを拘束することを可能にし、飛び出し
(jumping)の可能性を減らすことができる。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、内側シャフト26を、ポリイミド−PEBAの組み合わせで作製することができ、より小さいデュロメータのPEBAスリーブ46を、押し部44の間に熱によって接合することができる。タック2を、スリーブ46へと縮めることができ、PTFEで内側が覆われた外鞘12が、縮められたタックをその場に拘束することができる。
【0048】
図5に戻ると、放射線不透過性マーカバンド44の特定の実施形態の特徴が示されている。すでに述べたように、スリーブ46は、環状バンド44を包むことができる。あるいは、別の材料が金属製のバンドを包み、環状のマーカバンド44を形成することができる。環状のマーカバンド44は、放射線不透過性を維持しながら柔軟性を増すために、ワイヤ48または複数の材料片で作られてよく、あるいはスリットを有することができる。いくつかの実施形態においては、ワイヤが、内側シャフト26の周囲に巻き付けられたらせんコイルを形成することができる。
【0049】
次に図7A〜Cに移動し、配置の特定の方法を説明する。送入装置10を、アテローム性動脈硬化閉塞疾患を治療するための処置の一部として使用することができる。送入装置を、タックなどの1つ以上の腔内装置2を、プラーク蓄積の場所へともたらすために使用することができる。タックは、その場所を安定させ、さらには/あるいはプラーク片を、血流を妨げないように保持することができる。
【0050】
タックは、好ましくは自己膨張型である。したがって、鞘12を引き戻してタック2を露出させることで、タックを送入装置10から自己膨張によって配置することができる。鞘を、タックを血管内の所望の場所に順々にもたらすために、小さな増分にて引き戻すことができる。いくつかの実施形態において、小さな増分は、配置基準マーク36に対応することができる。配置基準マーク36は、より長いステントにおいて典型的な漸進的な解放よりもむしろ各々のタックを速やかに配置できるよう、少なくともタックの長さの間隔を有することができる。これは、タックのより正確な配置を可能にすることができる。
【0051】
バルーン血管形成術が、体内のあらゆる血管床において閉塞または狭隘化した血管を開く一般に受け入れられた方法である。バルーン血管形成術は、バルーン血管形成カテーテルによって実行される。バルーン血管形成カテーテルは、カテーテルへと取り付けられた葉巻(cigar)状の円柱形のバルーンで構成される。バルーン血管形成カテーテルは、経皮的に生成され、あるいは動脈の開放暴露によって生成される遠方のアクセス場所から動脈内に配置される。カテーテルは、カテーテルの進行を案内するワイヤ上で血管の内側に沿って通される。カテーテルのバルーンが取り付けられた部位が、治療を必要とするアテローム性動脈硬化プラークの場所に配置される。バルーンは、閉塞疾患の発現の前の動脈の元の直径に一致するサイズへと膨張させられる。いくつかの事例では、バルーンが、薬物または生物学的製剤で被覆され、あるいは他のやり方で薬物または生物学的製剤を組織へともたらすように構成される。バルーンが膨張させられるとき、プラークが割れる。へき開面がプラーク内に形成され、プラークの直径がバルーンの膨張につれて広がることを可能にする。多くの場合、プラークの一部分が、プラークの残りの部分よりも膨張に強く抵抗する。これが生じるとき、より大きな圧力をバルーンへと送り込むことで、バルーンの意図されるサイズへの完全な膨張がもたらされる。バルーンは、収縮させられて取り除かれ、動脈部分が再び検査される。バルーン血管形成術のプロセスは、制御できないプラーク破壊のプロセスである。治療の場所の血管の管腔は、通常は多少大きくなるが、常にではなく、確実にでもない。
【0052】
バルーン血管形成術におけるプラークの割れによって生じるへき開面の一部が、切開(dissection)を形成する可能性がある。より一般的には、切開は、プラークまたは組織の一部が動脈から離れて持ち上げられ、動脈に充分には付着しておらず、移動または遊離しうる場合に生じる。切開によって引き裂かれたプラークまたは組織が、流れへと突出する。プラークまたは組織が完全に血流の方向に持ち上がると、流れを妨げ、血管の急性の閉塞を引き起こす可能性がある。バルーン血管形成術の後の切開を、閉塞を防止し、残存狭窄を解消するように処置しなければならないことは、明らかである。また、いくつかの状況において、血管形成術の後に動脈を開いた状態に保ち、さらには/あるいは切開された物質を再び血管の壁へと押し付けて、血流にとって適切な管腔を生み出すために、ステントまたは他の腔内装置などの金属製の保持構造を配置することが有益であることも、明らかである。
【0053】
さまざまな送入方法および装置を、タック2などの腔内装置の配置に使用することができ、その一部が後述される。例えば、タックを、血管内挿入によって血管内へと送入すことができる。プラーク用タックの異なる実施形態のための送入装置は、違っていても、あるいは同じでもよく、特定のタックを送入するように特定的に設計された特徴を有することができる。タックおよび設置手順を、タックを血管内の位置へと移動させ、次いで血管内で膨張した状態へと解放することを可能にするために、送入機構(バルーンの膨張など)の膨張力および/または波形のリングの膨張力を利用するという共通の方法を共有するいくつかのやり方にて設計することができる。タックの配置方法は、配置に先立つ外鞘の放射線不透過性マーカおよび配置されるべきタックの整列を含むことができる。
【0054】
次に図7Aを参照すると、外鞘12を備える送入装置10が、第1の配置前状態にて示されている。複数のタック2を、外鞘12によって送入装置10内に圧縮された状態で保持することができる。いくつかの実施形態において、タック2は、送入装置への搭載を容易にするために圧縮された状態へと急速冷凍される。タックは、すでに述べたように、送入装置の所与の長さについて延びることができる。
【0055】
送入装置を、患者の脈管系内でガイドワイヤ50を覆うようにして治療場所へと前進させることができる。ガイドワイヤ50は、血管形成術のバルーンを配置するために使用されるガイドワイヤなど、先行の処置段階において用いられた同じガイドワイヤであってよい。ひとたび治療の場所に配置されると、外鞘12を、第2の配置前位置(図7B)へと引き戻し、あるいは引っ込めることができる。第2の配置前位置を、タックの解放前に何らかの調節を必要とする可能性がある伸び、曲折、などを補償すべく、外鞘の位置を調節するために使用することができる。第2の配置前位置において、外鞘の遠位端52を、配置されるべきタックの遠位端またはそのわずかに遠位側に位置させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、外鞘12は、放射線不透過性の環状マーカバンド28を有することができ、タックも、1つ以上の放射線不透過性マーカ22を有することができる。放射線不透過性マーカ22を、タックの周囲の列にて配置することができる。タックの遠位端から放射線不透過性マーカ22までの距離「L」は、外鞘12の遠位端52から放射線不透過性の環状マーカバンド28までの距離と同じであってよい。いくつかの実施形態においては、この距離が、マーカ22およびマーカバンド28の中央までの距離である。いくつかの実施形態においては、外鞘における距離「L」が、タックにおける長さ「L」と少なくとも同じであり、場合によってはわずかに長い。外鞘には、他の放射線不透過性マーカが存在しなくてもよい。さらに、タックにも、他の放射線不透過性マーカまたは放射線不透過性マーカの列が存在しなくてもよい。したがって、外鞘は、少なくともタック2の最も遠位側の端部から放射線不透過性マーカ22または放射線不透過性マーカの列までの距離だけ外鞘12の遠位端52から離れて位置する遠位端のただ1つのマーカバンド28のみを有することができる。図示の実施形態においては、放射線不透過性マーカ22または放射線不透過性マーカの列が、装置の中央に位置している。また、放射線不透過性マーカは、波形のストラット16の隣り合うリングを接続するブリッジ部材18に位置している。いくつかの実施形態においては、放射線不透過性マーカ22または放射線不透過性マーカの列を、波形のストラット16の少なくとも1つのリングによってタックの最も遠位側の端部から離すことができる。図示の実施形態においては、放射線不透過性マーカ22または放射線不透過性マーカの列が、タック2の最も遠位側の端部に位置しておらず、そこから間隔を空けて位置している。
【0057】
タックおよび外鞘に対応する放射線不透過性マーカ22、28を有することで、医師がタックの配置に先立ってマーカ22、28を整列させることを可能にすることができる。さらに、医師は、整列させたマーカを治療すべき所望の領域に整列させることができる。理解されるとおり、この整列はすべて、標準的な視覚化技術を使用して行うことができる。すでに述べたように、内側シャフト上の環状の押しバンド44も、放射線不透過性であってよい。いくつかの実施形態において、押しバンド44は同一であってよく、外鞘上のマーカおよびタック上のマーカの両者から視覚化のもとで違って見えてよい。このようにして、すべてのマーカがどこにあるのか、およびどれがどれであるのかを、医師にとって明確にすることができる。例えば、押しバンド44は、外鞘上のマーカ28およびタック上のマーカよりも軸方向に長くてよい。さらに、送入装置上のマーカが、バンドであってよい一方で、タック上のマーカは、点であってよい。
【0058】
図7Bを参照すると、外鞘12上のマーカ28と第1のタック2上のマーカ22とが整列させられ、鞘の遠位端が第1のタックの遠位端に位置していることを、見て取ることができる。今や送入装置を、放射線不透過性マーカを所望の場所に位置合わせするなどにより、治療すべき病変に対して位置させることができる。次いで、鞘を引き戻すことによって、タックを所望の場所に配置することができる。
【0059】
いくつかの実施形態においては、送入装置が、遠位端のものから少なくともタックの長さの半分だけ近位側に位置する外鞘上のマーカバンドを有することができ、タックは、装置の中央にマーカのただ1つの列を有している。配置の方法は、外鞘上のマーカおよび配置されるべきタックが整列するまで外鞘を引き戻し、次いでこれら2つのマーカを治療すべき病変(または、他の治療の領域)の真ん中に整列させ、その後に外鞘をさらに引き戻すことによってタックの解放をもたらすことを含むことができる。押しバンド44のマーカも、配置前の送入装置の整列を助けるために使用できることを、理解できるであろう。
【0060】
この方法を、複数のタックをもたらすために繰り返すことができる(あくまでも参考までに、タックが圧縮された状態で示されている図7Cを参照)。タックの配置の合間に、送入装置を、まったく別の病変または治療の領域へと移動させることができ、あるいは配置後の隣接タック間の間隔が確保されるように位置をずらすことができる。
【0061】
すでに述べたように、いくつかの実施形態においては、送入装置からのタックの解放時にタック全体の同時配置をもたらすことができる。さらに、複数のタックを、脈管の治療部分における遠位側から近位側への配置にて、所望のとおりに配置することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、図3および3Aに示したタックなどの膨張式のタックは、広い範囲の脈管の管腔の直径に対して比較的一定の力を作用させることができるため、ただ1つの送入カテーテルで複数のタックをさまざまなサイズの脈管へと配置することを可能にする。理想的には、タックを、サイズが2〜8mmの範囲の脈管を治療するように設計することができるが、他のサイズのタックを送出することも可能である。タックによって脈管へと加えられる力は、3mmの膨張範囲において5N以下で変化することが望ましい。より理想的には、加えられる力が、3mmの膨張範囲において1.5N以下で変化する。
【0063】
薬物で被覆されたバルーンが、脈管内へのステントの配置の代案として使用される場合が存在する。バルーンが脈管における狭窄を膨張させ、薬物が、動脈の再狭窄につながりかねない膨張後の炎症反応を最小限にする役に立つことができる。バルーンと薬物との組み合わせが、短期および長期の両方の足場の提供に歴史的に使用されてきた典型的なステントの埋め込みの代案を提供できることが、臨床的に明らかになっている。薬物で被覆されたバルーンは、脈管内に配置される長期の埋め込み物が存在しない点で望ましい。しかしながら、薬物で被覆されたバルーンの膨張によって、脈管に組織の切開の形態で損傷が生じ、組織のフラップまたは組織片が脈管の管腔へと突出する場合も存在しうる。切開は、バルーン治療の領域内、ならびに治療の領域の外側または治療の領域に隣接して生じうる。これらの場合、切開された組織を動脈の壁に対して留めることが有用である。外向きの力が小さいタックが、ステントが適切または望ましくない可能性がある切開を処置するために、有益に使用されうる。
【0064】
いくつかの実施形態においては、タックの正確な配置を、マーカの位置にもとづく脈管のカテーテルの位置決めによって設定することができる。ひとたび位置決めされると、1つ以上のタックを、カテーテルをその場に保って外鞘をゆっくりと取り去りながら配置することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、1つ以上のタックを、組織の切開に配置することができる。血管形成術が実行されるとき、典型的には、1)さらなるステント留置または過剰処置の実行を必要としない最適な結果、2)脈管が開いたままとなり、以前の閉塞または部分閉塞状態に戻ることがないように、脈管を開いた状態に支え、あるいは足場で支えるために、通常はステントの配置を必要とする残存狭窄、および3)組織の切開、という3つの結果のうちの1つが存在する。組織の切開は、脈管が内膜層の分離につながる動脈壁の破れなどの外傷を被る場合でありうる。これは、流れを妨げることも、妨げないこともある。1つ以上のタックを、そのような組織の切開に有益に配置することができる。小さなタックが、バルーン血管形成術による血管の治療部分について一部分の処置を可能にすることにより、血管形成術の治療領域の全体に及ぶ長い金属ステントの埋め込みを必要としない処置治療を提供する。理想的には、1つ以上のタックを、血管形成術の治療領域の血管の長さの60%以下を処置するために使用することができる。セルが1列(図示のもの)または2列である小型のタックが、組織の切開の処置に一般的に利用することができるステントと比べて、損傷をあまり引き起こさず、回復の時間が短くて済むことが示されている。
【0066】
タックの配置によって、血管内構造物が体内で形成される。体内への配置は、任意の末梢動脈など、任意の適切な脈管においてであってよい。構造物は、必ずしもちょうど2つのタックに限られない。実際に、少なくとも3つである複数の血管内タックを、体内で形成される血管内構造物に設けることができる。一実施形態において、各々のタックは、例えば非圧縮状態において約6mmなど、8mm以下の長さを有する。一構成においては、例えば各々のタックなど、タックのうちの少なくとも1つが、少なくとも約4mm、または約4mmおよび8mmの間、あるいは約6mmおよび8mmの間だけ隣のタックから離される。特定の実施形態は、8mm以下の長さを有するが、他の実施形態は、例えば最大約12または15mmの長さなど、より長くてよい。また、隣接するタックを、とくには曲がりまたは他の運動の傾向が少ない脈管において、2mmの隔たりまで近づけて配置することができる。いくつかの実施形態においては、送入装置に、各々が約6.5mmの長さである6つのタックをあらかじめ装てんすることができ、送入装置を、15cmまでの長さの病変の治療に使用することができる。
【0067】
本明細書に記載の種々の送入装置において、埋め込まれるタックの間の間隔を、各々のタックの間に所定または最小限の距離を維持するように制御することができる。理解できるとおり、送入装置および/またはタックは、タック間の所望の距離の維持を助ける特徴を備えることができる。適切なタック間の間隔の維持は、タックが互いに接触したり、あるいは治療対象の脈管の特定の領域に集まったりすることなく、所望の長さにわたって分布することを保証する役に立つことができる。これは、タックが配置された脈管のよじれを防止する役に立つことができる。
【0068】
体内で形成される3つのタックを有する構造物が、特定の適応にとって適切であるかもしれないが、少なくとも5つの血管内タックを有する血管内構造物が、緩んだプラーク、脈管のフラップ、切開、または有意により長い(非集中的(non−focal)な)他の病気の治療に好都合かもしれない。例えば、大部分の切開が集中的(例えば、軸方向に短い)である一方で、一連の切開を、より長い病気と考え、治療することができる。
【0069】
いくつかの場合において、さらに短い軸方向の長さのタックを、さらにより間隔を空けて位置する場所を治療するために使用することができる。例えば、各々が約7mm以下の長さを有している複数のタックを、タックによる処置が可能な病気を治療するために脈管内に配置することができる。少なくとも一部のタックを、隣のタックから少なくとも約5mmだけ離すことができる。いくつかの場合、隣接するタックの間に約6mm〜約10mmの範囲であってよいすき間を設けることが好ましいかもしれない。
【0070】
随意により、ひとたびタックが所定の位置に位置すると、血管形成術のバルーンを、治療の場所へと戻し、タックを所望の膨張状態へと膨張させるために膨らますことができる。
【0071】
本発明を、特定の好ましい実施形態および実施例の文脈において開示したが、本発明が、具体的に開示された実施形態を越えて、本発明の他の代案の実施形態および/または使用ならびにその自明な改変および均等物にまで広がることを、当業者であれば理解できるであろう。さらに、本発明のいくつかの変種を詳しく図示および説明したが、本発明の技術的範囲に含まれる他の改変が、この開示にもとづいて当業者にとって容易に明らかである。また、実施形態の具体的な特徴および態様について、種々の組み合わせおよび部分的組み合わせが可能であり、依然として本発明の技術的範囲に含まれると考えられる。したがって、開示された実施形態の種々の特徴および態様を互いに組み合わせ、あるいは互いに置き換えることで、開示された発明のさまざまな様態を形成できることを、理解すべきである。したがって、本明細書において開示された本発明の技術的範囲は、上記開示の特定の実施形態によって限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の公正な解釈によってのみ決定されなければならない。
【0072】
同様に、この開示の方法は、いずれかの請求項がその請求項に明示的に記載された特徴以上のさらなる特徴を要件とするという意図を反映していると、解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲に反映されているように、本発明の態様は、上記開示のいずれかの単一の実施形態のすべての特徴よりも少数の特徴の組み合わせにある。したがって、「発明を実施するための形態」に続く特許請求の範囲は、ここでの言及によってこの「発明を実施するための形態」に明示的に組み込まれ、各々の請求項が別々の実施形態としてそれぞれ有効である。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6A-E】
図7A-C】