特開2020-73267(P2020-73267A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-73267(P2020-73267A)
(43)【公開日】2020年5月14日
(54)【発明の名称】非PGMアンモニアスリップ触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/78 20060101AFI20200417BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200417BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20200417BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20200417BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200417BHJP
【FI】
   B01J29/78 A
   B01J37/02 301L
   B01J37/02 301C
   B01J37/08ZAB
   B01D53/86 228
   B01D53/94 228
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-235188(P2019-235188)
(22)【出願日】2019年12月25日
(62)【分割の表示】特願2016-569902(P2016-569902)の分割
【原出願日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】62/007,608
(32)【優先日】2014年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンダーセン, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ドーラ, ケヴィン
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA08
4D148AB01
4D148BA01Y
4D148BA02Y
4D148BA03X
4D148BA06Y
4D148BA08X
4D148BA11X
4D148BA13X
4D148BA15Y
4D148BA16Y
4D148BA18Y
4D148BA19X
4D148BA21Y
4D148BA23Y
4D148BA24Y
4D148BA25Y
4D148BA26Y
4D148BA27Y
4D148BA28X
4D148BA35X
4D148BA36X
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4D148BA38Y
4D148BA41Y
4D148BA42X
4D148BA43Y
4D148BA44Y
4D148BA46Y
4D148BB01
4D148BB02
4D148BB03
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
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4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA13B
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB12C
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC54A
4G169BC55A
4G169BC56A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169CA02
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA11
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA11
4G169EA18
4G169EC28
4G169FA03
4G169FB15
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC08
4G169ZA04A
4G169ZA06A
4G169ZA11A
4G169ZA13A
4G169ZA14A
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZA41A
4G169ZD06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】SCR法において、過剰なアンモニアを酸化するための、酸化触媒中の成分としての高価な貴金属を用いない、改善されたアンモニアスリップ触媒を提供する。
【解決手段】SCR触媒と、それぞれが特定の群から選択される少なくとも2の金属を含む酸化触媒と、少なくとも酸化触媒が配置される基材14とを有するアンモニアスリップ触媒が、記載される。アンモニアスリップ触媒は、層の1つがSCR触媒を含有する二重層であって、それぞれが特定の群から選択される少なくとも2つの金属を含む酸化触媒を含有する第二層を有する二重層を有し得、かつアンモニアスリップ触媒は、白金族金属を含まない。アンモニアスリップを低減するためのアンモニアスリップ触媒を作製及び使用する方法が記載される。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR触媒及び酸化触媒を含むアンモニアスリップ触媒であって、SCR触媒が、モレキュラーシーブ又はバナジウム/チタニアSCR触媒を含み、酸化触媒が、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属と、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属とを含む、アンモニアスリップ触媒であって、白金族金属を含まない、アンモニアスリップ触媒。
【請求項2】
SCR触媒層及び酸化触媒層を含む二重層アンモニアスリップ触媒であって、SCR触媒層中のSCR触媒が請求項1のSCR触媒であり、かつ酸化触媒層中の酸化触媒が請求項1の酸化触媒であり、かつ酸化層が基材の近位に配置されている二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項3】
酸化層が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を更に含む、請求項2に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項4】
酸化層が、安定化アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を含む、請求項2又は3に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項5】
酸化層がCu及びMnを含む、請求項2、3又は4に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項6】
酸化層が、アルミナと、CeO/ZrO混合酸化物又はZr安定化CeO混合酸化物のいずれか一方とを更に含む、請求項1から5の何れか一項に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項7】
Zr安定化CeO混合酸化物が、約1:1のモル比で存在するCe及びZrを含む、請求項6に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項8】
酸化物担体材料が、約20モル%のLa安定化Al及び約80モル%のZr安定化CeOを含む、請求項1から7の何れか一項に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項9】
モレキュラーシーブが、MOR(モルデナイト)、FER(フェリエライト)、FAU(ゼオライトY)、MFI(ZSM−5)、BEA(ベータゼオライト)、Fe−BEA、CHA(チャバサイト)、Cu−CHA及び構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩からなる群から選択される、請求項2に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項10】
SCR層が、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト触媒又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を含む、請求項9に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項11】
SCR層が、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト又は構造的に類似のフレームワーク触媒を含むシリコアルミノリン酸塩を含み、かつ酸化層が、Cu及びMnを含む、請求項10に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項12】
酸化層がCu及びMnを含む場合、NへのNHの変換が、PGMベースの酸化層が使用される場合よりも選択的である、請求項2に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項13】
酸化層中の触媒が、触媒中の金属の総重量ベースで0.3から1.5g/inの濃度において存在する、請求項2に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項14】
SCR層中の触媒が、触媒中の金属の総重量ベースで0.5から2.5g/inの濃度において存在する、請求項2に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項15】
酸化層中の触媒の量(g/in)に対するSCR層中の触媒の量(g/in)の比が、各触媒層中の金属の総重量ベースで0.3と8.3の間である、請求項2に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項16】
SCR層が、酸化触媒上に上部層として配置される、又は酸化層が、SCR層に連続して配置される、請求項2に記載の二重層アンモニアスリップ触媒。
【請求項17】
請求項1に記載のアンモニアスリップ触媒を調製する方法であって、(a)SCR触媒と、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化触媒とを含む、ウォッシュコートであって、白金族金属を含まないウォッシュコートを基材上に塗布することにより基材上に層を形成すること、(b)基材上のウォッシュコートを乾燥させること、並びに(c)基材上のウォッシュコートをか焼することを含む、方法。
【請求項18】
ウォッシュコートが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ウォッシュコートが、安定化アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
ウォッシュコートが、Cu及びMnを含む、請求項17、18又は19に記載の方法。
【請求項21】
ウォッシュコートが、アルミナと、CeO/ZrO混合酸化物又はZr安定化CeO混合酸化物のいずれか一方とを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
Zr安定化CeO混合酸化物が、約1:1のモル比で存在するCe及びZrを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
酸化物担体材料が、約20モル%のLa安定化Al及び約80モル%のZr安定化CeOを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
SCR触媒が、MOR(モルデナイト)、FER(フェリエライト)、FAU(ゼオライトY)、MFI(ZSM−5)、BEA(ベータゼオライト)、Fe−BEA、CHA(チャバサイト)、Cu−CHA及び構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩からなる群から選択されるモレキュラーシーブを含む、請求項17から23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
SCR層ウォッシュコートが、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト触媒又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を含む、請求項17から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
SCR層ウォッシュコートが、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を含み、かつ酸化層が、Cu及びMnを含む、請求項17から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
酸化層ウォッシュコート中の触媒が、触媒中の金属の総重量ベースで0.3から1.5g/inの濃度において存在する、請求項17から請求項26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
SCR層ウォッシュコート中の触媒が、触媒中の金属の総重量ベースで0.5から2.5g/inの濃度において存在する、請求項17から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
酸化層ウォッシュコート中の触媒の量(g/in)に対するSCR層ウォッシュコート中の触媒の量(g/in)の比が、各触媒層中の金属の総重量ベースで0.3と8.3の間である、請求項17から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項2から16の何れか一項に記載の二重層アンモニアスリップ触媒を調製する方法であって、(a)銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属と、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属とを含む酸化層ウォッシュコートであって、白金族金属を含まないウォッシュコートを基材上に塗布することにより基材上に酸化層を形成すること、(b)基材上の酸化層ウォッシュコートを乾燥させること、(c)基材上の酸化層ウォッシュコートをか焼すること、(d)モレキュラーシーブ又はバナジウム/チタニアを含むSCR層ウォッシュコートを工程(c)で形成されるか焼されている酸化層上に塗布することにより酸化層上に配置されているSCR層を形成すること、(e)基材上のか焼されている酸化層上のSCR層ウォッシュコートを乾燥させること、及び(f)基材上の酸化層ウォッシュコート上のSCR層ウォッシュコートをか焼することを含む、方法。
【請求項31】
酸化層ウォッシュコートが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
酸化層ウォッシュコートが、安定化アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
酸化層ウォッシュコートがCu及びMnを含む、請求項30、31又は32に記載の方法。
【請求項34】
酸化層ウォッシュコートが、アルミナと、CeO/ZrO混合酸化物又はZr安定化CeO混合酸化物のいずれか一方とを更に含む、請求項30、31、32又は33に記載の方法。
【請求項35】
Zr安定化CeO混合酸化物が、約1:1のモル比で存在するCe及びZrを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
酸化物担体材料が、約20モル%のLa安定化Al及び約80モル%のZr安定化CeOを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
モレキュラーシーブが、MOR(モルデナイト)、FER(フェリエライト)、FAU(ゼオライトY)、MFI(ZSM−5)、BEA(ベータゼオライト)、Fe−BEA、CHA(チャバサイト)、Cu−CHA及び構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩からなる群から選択される、請求項30から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
SCR層ウォッシュコートが、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト触媒又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を含む、請求項30から37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
SCR層ウォッシュコートが、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト触媒又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を含み、かつ酸化層が、Cu及びMnを含む、請求項30から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
酸化層ウォッシュコート中の触媒が、触媒中の金属の総重量ベースで0.3から1.5g/inの濃度において存在する、請求項30から請求項39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
SCR層ウォッシュコート中の触媒が、触媒中の金属の総重量ベースで0.5から2.5g/inの濃度において存在する、請求項30から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
酸化層ウォッシュコート中の触媒の量(g/in)に対するSCR層ウォッシュコート中の触媒の量(g/in)の比が、各触媒層中の金属の総重量ベースで0.3と8.3の間である、請求項30から41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
燃焼源により発生する排煙流中のアンモニアの濃度を低減するための方法であって、アンモニアを含有する排煙流を請求項1から16の何れか一項に記載のアンモニアスリップ触媒と接触させることを含む方法。
【請求項44】
担体が、ハニカム又はプレート形状の形態である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
排煙流が、約200℃から約450℃の温度において、二重層アンモニアスリップ触媒と接触する、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
排煙が、石炭、天然ガス又は石油の燃焼から得られる、請求項43、44又は45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアの投入により窒素の酸第一の金属化物(NOx)の選択的触媒的還元(SCR)にかけられた排煙からのアンモニアの除去のための触媒及び方法に向けられる。より具体的には、本発明は、SCR触媒を含む層及び酸化触媒を含む層を有する複合触媒に向けられ、酸化触媒が、特定の群から選択される少なくとも2の金属を含み、かつ酸化触媒を含む層が、白金族金属(PGM)を含有しない。
【背景技術】
【0002】
発電所及びエンジンにおける炭化水素系燃料の燃焼は、比較的無害な窒素(N)、水蒸気(HO)及び二酸化炭素(CO)を主に含有する排煙又は排気ガスを生成する。しかし、排煙及び排気ガスは、有害及び/又は毒性物質、例えば不完全燃焼から生じる一酸化炭素(CO)、未燃燃料由来の炭化水素(HC)、過度の燃焼温度に由来する窒素酸化物(NO)、及び粒子状物質(大部分はスート)も比較的少量含有する。大気中に放出される排煙及び排気ガスの環境影響を軽減するために、望ましくない成分の量を、好ましくは、今度は別の有害又は有毒な物質を発生させない方法により、除去又は低減することが望まれる。
【0003】
典型的には、発電所からの排煙、及びリーン燃焼ガス機関の排気ガスは、炭化水素燃料の適度な燃焼を保証するために提供される高い割合の酸素のために、正味の酸化作用を有する。このようなガス中で、除去するのに最も問題となる成分の一つは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)及び亜酸化窒素(NO)を含むNOである。排気ガスは、還元の代わりに酸化反応を有利にするのに十分な酸素を含むため、NOのNへの還元は、特に問題である。それにもかかわらず、NOは、選択的触媒的還元(SCR)として一般的に知られる方法により還元され得る。SCR法は、触媒の存在下での、アンモニア等の窒素還元剤の助けを伴う、エレメンタルな窒素(N)及び水へのNOの変換を含む。SCR法では、アンモニアのようなガス状の還元剤は、排気ガスをSCR触媒と接触させる前に排気ガス流に加えられる。還元剤は、触媒上に配され、かつガスが、触媒化された基材を通り過ぎ又はその上を通過する間に、NO還元反応は、起こる。アンモニアを使用する化学量論的なSCR反応についての化学式は、
4NO+4NH+O→4N+6H
2NO+4NH+O→3N+6H
NO+NO+2NH→2N+3H
である。
【0004】
ほとんどのSCR法は、NOの変換率を最大にするために、化学量論超過のアンモニアを利用する。放出されたアンモニアガスが大気に負の影響を与え、他の燃焼種と反応し得るため、SCR法を通過する未反応のアンモニア(「アンモニアスリップ」とも呼ばれる)は望ましくない。アンモニアスリップを低減するために、SCRシステムは、SCR触媒の下流にアンモニア酸化触媒(AMOX)(アンモニアスリップ触媒(ASC)としても知られる)を含み得る。
【0005】
排気ガス中の過剰なアンモニアを酸化するための触媒は、既知である。例えば、米国特許第7,393,511は、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の担体上の白金、パラジウム、ロジウム又は金のような貴金属を含有するアンモニア酸化触媒を記載する。他のアンモニア酸化触媒は、チタニア担体上のバナジウム酸化物、タングステン酸化物及びモリブデン酸化物の第一層、及びチタニア担体上の白金の第二層を含有する(例えば、米国特許第8,202,481及び米国7,410,626を参照されたい)。しかしながら、これらの触媒は、特に、比較的低温で、アンモニアを変換することにおいてあまり効率的ではない。過剰なアンモニアを酸化するための既知システムのほとんどは、酸化触媒中の成分としての高価な貴金属に依存する。したがって、当該技術分野において、改善されたアンモニアスリップ触媒の必要性が依然として存在する。本発明は、とりわけこの必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明のある態様では、アンモニアスリップ触媒は、SCR触媒及び酸化触媒を含み、酸化触媒は、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属、並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二金属を含み、かつアンモニアスリップ触媒は、白金族金属を含まない。SCR触媒及び酸化触媒は、混合物として単体上に又は層中に存在し得る。
【0007】
本発明の他の態様では、二重層アンモニアスリップ触媒は、SCR触媒を含む層、及び酸化触媒を含む層を含み得、酸化触媒は、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含み、かつアンモニアスリップ触媒は、白金族金属を含まない。SCR層とも呼ばれる、SCR触媒を含む層、及び酸化層とも呼ばれる、酸化触媒を含む層は、同一の基材上か異なる基材上のどちらかで、種々の形状で提供され得る。
【0008】
本発明の更に他の態様では、アンモニアスリップ触媒を製造するための方法は、(a)SCR触媒と、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化触媒との混合物を含み、かつアンモニアスリップ触媒が白金族金属を含まない、ウォッシュコートを形成すること、(b)基材にウォッシュコートを塗布すること、(c)基材上のウォッシュコートを乾燥させること、並びに(d)基材上のウォッシュコートをか焼することを含む。
【0009】
本発明の更に他の態様では、二重層アンモニアスリップ触媒を製造するための方法は、(a)銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含み、アンモニアスリップ触媒が白金族金属を含まない、酸化層ウォッシュコートを、基材上に塗布することにより基材上に酸化層を形成すること、(b)基材上の酸化層ウォッシュコートを乾燥させること、(c)基材上の酸化層ウォッシュコートをか焼すること、(d)工程(c)で形成された基材上のか焼された酸化層上でSCR触媒を含むSCR層ウォッシュコートを塗布することにより、酸化層上に位置するSCR層を形成すること、(e)基材上のか焼された酸化層上のSCR層ウォッシュコートを乾燥させること、並びに(f)基材上のか焼された酸化層ウォッシュコート上のSCR層ウォッシュコートをか焼することを含む。
【0010】
本発明の更に他の態様では、二重層アンモニアスリップ触媒を製造するための方法は、(a)銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属、並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含み、かつアンモニアスリップ触媒が白金族金属を含まない、酸化層ウォッシュコートを、基材上に配置することにより、基材上に酸化層を形成すること、(b)基材上の酸化層ウォッシュコートを乾燥させること、(c)工程(b)で形成された基材上の酸化層上に、SCR触媒を含むSCRウォッシュコートを塗布することにより、酸化層上に位置するSCR層を形成すること、(d)基材上のか焼された酸化層上のSCR層ウォッシュコートを乾燥させること、並びに(e)基材上の酸化層及びSCR層ウォッシュコートをか焼することを含む。
【0011】
本発明の他の態様では、二重層アンモニアスリップ触媒を製造するための方法は、(a)SCR触媒を含むウォッシュコートを基材の一部分上に塗布することにより、基材上にSCR触媒のSCR層を形成すること、(b)基材上のSCRウォッシュコート層を乾燥させること、(c)基材上のSCRウォッシュコート層を任意選択的にか焼すること、(d)銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属、並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含み、かつアンモニアスリップ触媒が白金族金属を含まない、酸化触媒の酸化層を、酸化触媒を含む酸化ウォッシュコートを基材の一部分上に塗布することにより基材の一部分上に形成すること、(e)基材上の酸化層を乾燥させること、並びに(f)少なくとも基材上の酸化触媒をか焼することを含む。
【0012】
本発明の更に他の態様では、燃焼源により発生する排煙流中のアンモニアの濃度を低減するための方法は、アンモニアを含有する排煙流をここで記載されるアンモニアスリップ触媒又は二重層アンモニアスリップ触媒と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、添付図面に関連して読む時、以下の発明を実施するための形態から理解され得る。
図1】の1A−1Lは、SCR触媒及び酸化触媒の配置を示す触媒物品の形状の図である。
図2】は、2つの異なる白金族金属ベースの触媒を使用するNH変換と比較されるように、本発明の触媒の態様に関するアンモニアスリップ触媒ゾーンでのNH変換の割合を示す。
図3】は、2つの白金族金属ベースの触媒を使用するNH変換率と比較されるように、本発明に関するアンモニアスリップ触媒ゾーンでのNOx選択性の割合を示す。
図4】は、2つの異なる白金族金属ベースの触媒を使用する比較の変換率と比較されるように、本発明の触媒の態様に関するアンモニアスリップ触媒ゾーンでのNH及びNOxの合計排出量(ppm)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この明細書及び添付される請求項中で使用されるように、文脈が別の方法で明確に示さない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数の指示物を含む。従って、例えば、「a catalyst」への言及は、2以上の触媒の混合物等を含む。
【0015】
ここで使用されるように、用語「か焼する」又は「か焼」は、空気又は酸素中で材料を熱することを意味する。この定義は、か焼のIUPACの定義と矛盾しない。(IUPAC.Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the「Gold book」).Compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson.Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997).XML on-line corrected version: http://goldbook.iupac.org (2006-) created by M. Nic, J. Jirat, B. Kosata; updates compiled by A. Jenkins.ISBN 0-9678550-9-8. doi:10.1351/ goldbook.)か焼は、金属塩を分解しかつ触媒内で金属イオンの交換をプロモートするように、かつ触媒を基材に付着するようにも実施される。か焼で使用される温度は、か焼される材料中の成分に依存し、かつ一般的に、約1から8時間、約400℃から約900℃の間である。いくつかの場合では、か焼は、約1200℃の温度に至るまで実施され得る。ここで記載される方法を含むアプリケーションでは、か焼は、一般的に、約1から8時間、約400℃から約700℃の温度において、好ましくは、約1から4時間、約400℃から約650℃の温度において、実施される。
【0016】
ここで使用されるように、用語「約(about)」は、約(approximately)を意味し、かつその用語が関連されるのを伴い、任意選択的に±25%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、又は最も好ましくは±1%の値である範囲を指す。
【0017】
種々の数の要素のための範囲(a range)又は範囲(ranges)が提供される場合、別の方法で特定されない限り、範囲(the range)又は範囲(ranges)は、値を含み得る。
【0018】
用語「白金族金属」又はPGMは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金を意味する。フレーズ「白金族金属を含まない」は、白金族金属が触媒の形成において加えられないことを意味するが、測定可能な触媒的活性を有さないレベルである微量で存在する1以上の白金族金属を排除しない。
【0019】
本発明のある態様では、アンモニアスリップ触媒は、SCR触媒及び酸化触媒の混合物を含み、酸化触媒が、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含み、かつアンモニアスリップ触媒は、白金族金属を含まない。
【0020】
本発明の他の態様では、二重層アンモニアスリップ触媒は、SCR触媒を含むSCR層並びに、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化触媒、酸化層を含み、酸化層は、白金族金属を含まない。SCR層とも呼ばれる、SCR触媒を含む層、及び酸化層とも呼ばれる、酸化触媒を含む層は、同一の基材上か異なる基材上のどちらかで、種々の形状で提供され得る。
【0021】
SCR触媒
SCR触媒は、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ又はそれらの混合物であり得る。卑金属は、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの組み合わせのような耐火性金属酸化物上に担持されるバナジウムからなるSCR組成物は、モバイルアプリケーションにおいて商業的に広く使用され、かつよく知られる。典型的な組成物は、米国特許第4,010,238及び4,085,193に記載され、それらの内容全体が参照によりここに援用される。特にモバイルアプリケーションにおいて、商業的に使用される組成物は、WO及びVが5から20重量%まで及び0.5から6重量%までのそれぞれの範囲に及ぶ濃度において分散されたTiOを含む。これらの触媒は、バインダー及びプロモーターとして作用するSiO及びZrOのような他の無機材料を含有してよい。
【0022】
SCR触媒が卑金属である場合、触媒物品は、更に少なくとも1の卑金属プロモーターを含み得る。ここで使用されるように、「プロモーター」は、触媒に加えられる場合に触媒の活性を増加させる基材を意味すると理解される。卑金属プロモーターは、金属、金属の酸化物又はそれらの混合物の形態であり得る。少なくとも1の卑金属触媒プロモーターは、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、ストロンチウム(Sr)及びそれらの混合物から選択されてよい。少なくとも1の卑金属触媒プロモーターは、好ましくは、MnO、Mn、Fe、SnO、CuO、CoO、CeO及びそれらの混合物であり得る。少なくとも1の卑金属触媒プロモーターは、硝酸塩又は酢酸塩のような水性溶液中の塩の形態で触媒に加えられてよい。少なくとも1の卑金属触媒プロモーター及び少なくとも1の卑金属触媒、例えば銅、は、酸化物担体材料上に水性溶液から含浸されてよく、酸化物担体材料を含むウォッシュコート中に加えられてよく、又は事前にウォッシュコートでコーティングされた担体中に含浸されてよい。SCR触媒は、プロモーター金属及び担体の総重量ベースで、少なくとも約0.1重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセント、少なくとも約1重量パーセント又は少なくとも約2重量パーセントから、多くとも約10重量パーセント、約7重量パーセント、約5重量パーセントまでの、プロモーター金属を含有し得る。
【0023】
SCR触媒は、モレキュラーシーブ又は金属交換されたモレキュラーシーブを含み得る。ここで使用されるように「モレキュラーシーブ」は、気体又は液体のための吸着体として使用されてよい、精密かつ一定のサイズの小さな細孔を含有する準安定材料を、意味すると理解される。細孔を通り過ぎるのに十分に小さい分子は吸着され、一方でより大きな分子は吸着されない。モレキュラーシーブは、ゼオライト系モレキュラーシーブ、非ゼオライト系モレキュラーシーブ又はそれらの混合物であり得る。
【0024】
ゼオライト系モレキュラーシーブは、the International Zeolite Association(IZA)により出版されたthe Database of Zeolite Structuresに列挙されるフレームワーク構造の何れか1を有するミクロ多孔質アルミノケイ酸塩である。フレームワーク構造は、CHA、FAU、BEA、MFI、MORタイプのそれらを含むが、それらに限定されない。これらの構造を有するゼオライトの限定しない例は、チャバサイト、フォージャサイト、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ベータゼオライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX及びZSM−5を含む。アルミノケイ酸塩ゼオライトは、約10から200までの有用な範囲を有し、少なくとも約5、好ましくは、少なくとも約20からの、SiO/Alとして定義されるシリカ/アルミナモル比(SAR)を有し得る。
【0025】
ここで使用されるように、用語「非ゼオライトモレキュラーシーブ」は、四面体サイトの少なくとも一部分がケイ素又はアルミニウム以外の元素により占有される角共有四面体フレームワークを指す。非ゼオライトモレキュラーシーブの特定の限定しない例は、SAPO−34、SAPO−37及びSAPO−44のようなシリコアルミノリン酸塩を含む。シリコアルミノリン酸塩は、CHA、FAU、BEA、MFI、MOR及び以下に記載される他のタイプのようなゼオライト中に見られるフレームワーク元素を含有するフレームワーク構造を有し得る。
【0026】
SCR触媒は、小細孔、中細孔若しくは大細孔モレキュラーシーブ又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0027】
SCR触媒は、アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブ、金属置換されたアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブ、アルミノリン酸塩(AlPO)モレキュラーシーブ、金属置換されたアルミノリン酸塩(MeAlPO)モレキュラーシーブ、シリコ‐アルミノリン酸塩(SAPO)モレキュラーシーブ及び金属置換されたシリコ‐アルミノリン酸塩(MeAPSO)モレキュラーシーブ及びそれらの混合物からなる群から選択される小細孔モレキュラーシーブを含み得る。SCR触媒は、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON及びそれらの混合物及び/又は連晶からなるフレームワークタイプの群から選択される小細孔モレキュラーシーブを含み得る。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブが、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR及びITEからなるフレームワークタイプの群から選択される。
【0028】
SCR触媒は、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、−PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、−SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN及びそれらの混合物及び/又は連晶からなるフレームワークの群から選択される中細孔モレキュラーシーブを含み得る。好ましくは、中細孔モレキュラーシーブがMFI、FER及びSTTからなるフレームワークタイプの群から選択される。
【0029】
SCR触媒は、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、−RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET及びそれらの混合物及び/又は連晶からなるフレームワークタイプの群から選択される大細孔モレキュラーシーブを含み得る。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブがMOR、OFF及びBEAからなるフレームワークタイプの群から選択される。
【0030】
金属交換されたモレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの骨組み、空洞若しくはチャネル内に又は外面上の余剰フレームワークサイト上に配置される、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB又はIIB族の1から少なくとも1の金属を有し得る。金属は、ゼロ価の金属原子もしくはクラスター、単独のカチオン、単核もしくは多核のオキシカチオンを、又は延ばされた金属酸化物として、含むが限定しないいくつかの形態の1つであってよい。好ましくは、金属は、鉄、銅、及びそれらの混合物又は組み合わせであり得る。
【0031】
金属は、適切な溶媒中で、金属前駆体の溶液又は混合物を使用してゼオライトと組み合わせられ得る。用語「金属前駆体」は、触媒的に活性な金属成分を与えるようにゼオライト上に分散され得る任意の化合物又は錯体を意味する。溶媒は、他の溶媒を使用する経済及び環境の双方の面により、好ましくは、水である。銅、好ましい金属、が使用される場合、適切な錯体又は化合物は、無水及び水和された銅サルフェート、銅ナイトレート、銅アセテート、銅アセチルアセトネート、銅オキシド、銅ヒドロキシド及び銅アンミン(例えば[Cu(NH2+)の塩を含むが限定されない。本発明は、特定のタイプ、組成又は純度の金属前駆体に限定されない。モレキュラーシーブは、懸濁液を形成するように金属成分の溶液に加えられ得、その後それは、金属成分がゼオライト上に配置されるように作用することを可能とされる。金属は、モレキュラーシーブの外面上と同様に細孔チャネル中にも配置され得る。金属は、イオンの形態で又は金属酸化物として配置され得る。例えば、銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオンとして又は銅酸化物として配置されてよい。金属を含有するモレキュラーシーブは、懸濁液の液相から分離され、洗浄され、かつ乾燥し得る。結果として生じる金属含有モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブ中の金属を固定するように、その後か焼され得る。
【0032】
金属交換されたモレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの骨組み、空洞若しくはチャネル内に又は外面上の余剰フレームワークサイト上に配置されるVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB又はIIB族金属を、約0.10重量%及び約10重量%の範囲中で含有し得る。好ましくは、余剰フレームワーク金属は、約0.2重量%及び約5重量%の範囲中の量で存在し得る。
【0033】
金属交換されたモレキュラーシーブは、触媒の総重量の約0.1から約20.0重量%までの銅を有する銅(Cu)担持小細孔モレキュラーシーブであり得る。好ましくは、銅が、触媒の総重量の約1重量%から約6重量%まで、より好ましくは、触媒の総重量の約1.8重量%から約4.2重量%までで存在する。
【0034】
金属交換されたモレキュラーシーブは、触媒の総重量の約0.1から約20.0重量%までの鉄を有する鉄(Fe)担持小細孔モレキュラーシーブであり得る。好ましくは、鉄が、触媒の総重量の約1重量%から約6重量%まで、より好ましくは、触媒の総重量の約1.8重量%から約4.2重量%までで存在する。
【0035】
酸化触媒
酸化触媒は、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含み、かつアンモニアスリップ触媒は、白金族金属を含まない。
【0036】
少なくとも1の第一の金属及び第二の金属のそれぞれは、塩の形態、好ましくは、硝酸塩、硫酸塩、塩化物若しくは酢酸塩、酸化物、又は金属を含有する化合物であり得、金属を含有する化合物は、か焼で金属の酸化物を形成する。好ましくは、第一の金属はCuであり、かつ第二の金属はMnである。
【0037】
酸化触媒を含む層は、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)及びチタニア(TiO)、又はそれらの混合物を含む酸化物担体材料を更に含み得る。酸化物担体材料は、ペロブスカイト、酸化ニッケル(NiO)、二酸化マンガン(MnO)、酸化プラセオジム(III)(Pr)のような他の酸化物材料を更に含み得る。酸化物担体材料は、それらの2以上の混合酸化物又は複合酸化物(CeZrO混合酸化物、TiZrO混合酸化物、TiSiO混合酸化物及びTiAlO酸化物(式中、xは、Alに対するTiOの比に依存する)ような)を含み得る。酸化物担体材料は、担体として役に立つことに加えて、バインダーとしても役に立ってよい。例えば、アルミナは、アルミナ及びCeZrOの混合酸化物において、担体及びバインダーの双方として作用してよい。第二層は、安定化されたアルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料含み得る。スタビライザーは、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、それらの酸化物、それらの何れか2以上の複合酸化物若しくは混合酸化物、又は少なくとも1のアルカリ土類金属、例えばバリウム(Ba)、から選択されてよい。各酸化物担体材料が安定化される場合、スタビライザーは、同一又は異なってよい。酸化物担体材料は、Al及びCeOであり得る。酸化物担体材料がAlである場合、それは、例えば、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタ又はシータAlであってよい。担体材料は、混合酸化物又は安定化された混合酸化物の形態であり得る。混合酸化物中の金属酸化物は、単一相の形態で存在し、一方で安定化された混合酸化物は、二相で存在する。好ましくは、酸化触媒を含む層は、第一及び第二の金属としてCu及びMn、アルミナ、並びにCeO/ZrOかZr安定化されたCeO混合酸化物のどちらかを含む。Zr安定化されたCeO混合酸化物は、約1:1のモル比でCe及びZrを含み得る。酸化物担体材料は、La安定化されたAl及びZr安定化されたCeOであり得る。第二層中の酸化物担体材料は、約20モル%のLa安定化されたAl及び約80モル%のZr安定化されたCeOを含み得る。
【0038】
基材
用語「基材」は、当該技術分野で一般的に知られるように、実質的に不活性な基材材料を指す。基材は、任意の一般的に適切な形態であってよい。例えば、基材は、セラミック若しくはハニカム構造体のようなフロースルーモノリスを含んでよく、又は基材は、泡の形態であってよく、又は基材は、ペレット、流動層粒子の形態であってよく、又は球状若しくは短い押出成形セグメントのような粒子を含んでよい。
【0039】
固体基材は、典型的には排気ガス処理触媒を調製するために使用されるそれらの材料の何れかであってよく、好ましくは、ハニカム構造を有する耐火性セラミック又は金属を含むであろう。任意の適切な基材は、そこを通る流体流のために開いている路であってキャリアの入口又は出口面からそこを通り延びる複数の小さく平行なガス流路を有するタイプのモノリス基材のように使用されてよい。それらの流体入口からそれらの流体出口まで実質的に一直線のパスである路は、アンモニア酸化触媒が、路を流れ通るガスが触媒材料に接触するように、「ウォッシュコート」としてコーティングされるウォールにより、定義される。モノリスキャリアの流路は、台形、矩形、四角形、シヌソイド、六角形、楕円、円等のような任意の適切な断面形状及びサイズであり得る薄壁チャネルである。そのような構造は、断面の平方インチ当たりで約60から約600以上のガス入口オープニング(すなわち「セル」)を含有してよい。
【0040】
ハニカム基材は、一般的に、基材の入口面から出口面に延び、かつ両端部が開いているか(フロースルー基材)又はチェッカーボード型のパターンで交互の端部が覆われている(ウォールフローフィルタ)、複数の隣接した平行チャネルを含む。この形状は、体積に対する高い表面積比という結果をもたらす。ハニカム形状は、プレートタイプよりも小型だが、より高い圧力低下を有し、かつより容易に詰まりやすい。しかしながら、ほとんどのモバイルアプリケーションについて、好ましい基材は、ハニカムである。特定のアプリケーションについて、ハニカムフロースルーモノリスは、高いセル密度、例えば、約600から800セル毎平方インチ、及び/又は約0.18‐0.35mm、好ましくは、約0.20‐0.25mmの平均内部壁厚さを有する。特定の他のアプリケーションについて、好ましくは、ハニカムフロースルーモノリスは、約150‐600セル毎平方インチ、より好ましくは、約200‐400セル毎平方インチの低いセル密度を有する。好ましくは、ハニカムモノリスが多孔質である。コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミック及び金属に加えて、基材に使用され得る他の材料は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α−アルミナ、ムライト、例えば針状ムライト、ポルサイト、AlOsZFe、Al/Ni若しくはBCZFeのようなサーメット、又はこれらの任意の2以上のセグメントを含む複合物を含む。好ましい材料は、コーディエライト、炭化ケイ素及びチタン酸アルミナを含む。特定の態様では、基材は不活性である。
【0041】
ハニカムの基材ウォールは、好ましくは、ウォッシュコートの役に立つ多孔度及び細孔経を有する。多孔度は、多孔質基材中のボイドスペースの割合の度合いである。好ましくは、多孔質基材は、約30から約80%、例えば、約40から約75%、約40から約65%、又は約50から約60%の多孔度を有する。基材の総ボイド体積の割合として測定される細孔相互接続性は、多孔質基材を通る連続的なパス、すなわち、フィルタの入口面から出口面まで、を形成するように繋がれる細孔、ボイド及び/又はチャネルの度合いである。好ましくは、多孔質基材は、少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、の細孔相互接続体積を有する。
【0042】
基材ウォールの平均細孔径は、水銀ポロシメトリーを含む任意の容認可能な手段により決定され得る。好ましい多孔質基材は、約10から約40μm、例えば約20から約30μm、約10から約25m、約10から約20μm、約20から約25μm、約10から約15μm、及び約15から約20μmの平均孔経を有する。
【0043】
ウォッシュコート
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野で広く認識されている用語であり、1以上の触媒又は触媒前駆体、担体材料、及び任意選択的に、バインダー、プロモーター又はスタビライザーのような他の材料の混合物を指す。
【0044】
本発明の触媒は、不均一触媒的反応システム(すなわち、ガス反応物と接触する固体触媒)について適用され得る。接触面積、機械的安定性及び流体流特性を改善するために、触媒成分は、基材の上及び/又は内に、例えば、コーティングとして、配置され得る。特定の態様では、触媒成分の1以上を含有するウォッシュコートは、波形金属プレート又はハニカムコーディエライトブリックのような不活性基材にコーティングとして塗布される。ウォッシュコートは、好ましくは、溶液、懸濁液又はスラリーである。適切なコーティングは、基材の一部分又は全体を覆う表面コーティング、基材の一部分を貫通するコーティング、基材に浸透するコーティング、又は幾つかのそれらの組み合わせを含む。触媒成分に加えて、ウォッシュコートは、充填剤、バインダー、スタビライザー、レオロジー改質剤、及びアルミナ、シリカ、非ゼオライトのシリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、セリアの1以上を含む他の添加剤、のような成分も含み得る。特定の態様では、ウォッシュコートは、グラファイト、セルロース、でんぷん、ポリアクリレート及びポリエチレン等のような細孔形成剤を含む。これらの追加的な成分は、望ましい反応を必ずしも触媒化するとは限らないが、代わりに触媒材料の有効性を、例えば、その動作温度範囲を増加させること、触媒の接触表面積を増加させること、基材への触媒の付着を増加させること、より良好な加工のためにレオロジーを改質すること等により改善する。典型的には、バインダーとして使用される金属酸化物粒子は、担体として使用される金属酸化物粒子と粒径に基づいて区別され得、バインダー粒子は、担体粒子に対して著しくより大きい。
【0045】
種々の付着方法は、基材上に触媒を付着させることについて当該技術分野で既知である。基材上に触媒を付着させるための方法は、例えば、液体ビヒクル中に触媒を配置してスラリーを形成することと、スラリー中に基材を浸すこと、基材上にスラリーを噴霧すること等により、スラリーで基材をぬらすこととを含む。ウォッシュコートは、典型的には、水ベースのスラリーとして基材に塗布される。典型的には、スラリーは、少なくとも20重量%の総水内容物を含有するであろう。少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%又は少なくとも60重量%の水内容物も、例示される。スラリーコーティングされた基材は、使用する前に、乾燥しかつか焼(空気又は酸素の存在下で熱的に処理される)され得る。か焼で使用される温度及び時間は、か焼される材料中の成分に依存し、かつ一般的に約400℃から約900℃の間である。ここで記載される方法を含むアプリケーションでは、か焼は、一般的に、約2から約6時間、約500℃から約550℃の温度において実施される。
【0046】
酸化触媒のための担体は、充填剤、バインダー及び強化剤のような他の成分と共に練られて押出成形可能なペーストとなり得、それはその後、ダイを通して押出成形されてハニカムブリックを形成する。ハニカムブリックが乾燥及び/又はか焼される前又は後に、酸化触媒の金属成分は、酸化触媒を形成するために、ブリックの1以上の部分又はブリックの全体のどちらかに加えられる。他の態様では、担持金属を含有する酸化触媒は、押出成形前に、押出成形可能なペースト中に導入され得る。SCR触媒は、その後、酸化触媒を含有する押出成形ブリック上に、コーティングとして塗布され得る。本発明で有用な2つの基材デザインは、プレート及びハニカムである。プレートタイプ触媒は、ハニカムタイプに比べて、相対的により低い圧力降下を有し、かつ詰まること及び汚損の影響をより受けにくいが、プレート形状は、はるかにより大きく、かつより高価である。プレートは、典型的には、金属又は波形金属で構成される。
【0047】
特定の態様では、各層又は2以上の層の組み合わせについての基材上及び/又は内のウォッシュコート又は含浸ローディングは、0.1から8g/in、より好ましくは0.5から6g/in、より一層好ましくは1から4g/inである。特定の態様では、各層又は2以上の層の組み合わせについての基材上及び/又は内のウォッシュコート又は含浸ローディングは、>1.2g/in、>1.5g/in、>1.7g/in若しくは>2.00g/inのような1.00g/in、又は例えば1.5から2.5g/inである。
【0048】
SCR及び酸化触媒の形状
SCR触媒及び酸化触媒は、SCR触媒及び酸化触媒の排気ガスの流れに沿う連続的な配置で又は基材内若しくは上に配置される、酸化触媒の下部層上のSCR触媒の上部層、SCR触媒及び酸化触媒の混合物のような種々の形状で存在し得、酸化触媒は、SCR触媒の下流である。
【0049】
図1Aは、SCR触媒及び酸化触媒が基材14上の単一層8中に存在する形状を示す。
【0050】
図1Bは、SCR触媒を含むSCR層10が、酸化触媒を含む酸化層12上に配置され、かつ酸化層12が固体基材上に配置される形状を示す。図1Bでは、SCR層及び酸化層の双方が、基材の軸長全体にわたり配置される。SCR層及び酸化層は、図1C及び1Dに示されるように、基材の軸長の一部分上に配置され得る。酸化層上にSCR層を配置することにおいて、SCRウォッシュコートの一部分は、隣接する酸化層の間の空間のいくらか又は全てを占め得る。図1Eは、隣接する酸化層の間の空間の全てがSCR触媒を含む場合を示す。隣接する酸化層の間の空間は、図1F中で示されるように、酸化層の間の空間も満たすSCR外面で完全に満たされ得る。一般的に、本発明の触媒層は、基材に浸透し、基材の一部分、例えば大部分、を貫通し、基材の表面をコーティングし、又はそれらの組み合わせをする。基材ウォール上にコーティングされる代わりに、酸化触媒は、例えば、ウォールを含浸する内部コーティングとして、高多孔度基材中に導入され得、又は基材を形成する押出成形ペースト中に導入され得る。図1Gは、SCR触媒が基材14上の層中に存在し、かつ酸化触媒が基材14中に存在する形状を示す。触媒層の1以上は、基材の一部分のみを覆い得る。例えば、触媒層は、基材を通る排気ガス流50の全体方向に対して基材の前部46又は基材の後部48から基材の長さの約10パーセントに、塗布され得る。酸化触媒層は、基材48の後部における一部分上にコーティングされ得る。触媒層は、好ましくは、基材の後部48又は前部46から、基材の約25パーセント、約50パーセント又は約75パーセントを覆い得る。触媒コーティングは、基材の同一又は異なる部分に塗布されてよく、しかし好ましくは、SCR触媒層は、触媒層により処理される全ての排気ガスが酸化触媒層に到達する前に第一にSCR層を通り過ぎるであろうように、酸化触媒層を完全に覆う。
【0051】
SCR層及び酸化層は、排気ガス流の方向で、連続的に、互いの隣に配置され得る。ここで使用されるように、層に関する用語「連続的」は、各層が基材と接触すること、及び全体としての層が1以上の基材上で互いの隣に配置されることを意味する。図1Hは、個体担体14上のSCR触媒を含むSCR層10及び酸化触媒を含む酸化層12の連続的な位置を示す。排気ガスは、左から右の矢の方向で一般化された流れを有する。担体は、前端部46及び後端部48を有する。
【0052】
図1Iは、個体担体14上のSCR触媒を含むSCR層10及び酸化触媒を含む酸化層12の連続的な位置を示す。SCR層10の部分は、酸化層12上の上部層でもある。上部層は、図1I中に示されるように、酸化層全体上に、又は図1J中に示されるように、酸化層の一部分上に配置され得る。
【0053】
SCR層及び酸化層は、2つの異なる担体上に存在する。SCR触媒を含むSCR層10は、隣接する担体14上に配置され得、担体上の酸化触媒を含む酸化層12を有する下流担体15は、図1Kに示される。SCR触媒を含むSCR層10は、図1Lに示されるように、担体上の酸化触媒を含む酸化層12を有する対向する担体15を有し、担体14上に配置され得る。
【0054】
好ましくは、酸化層12及びSCR層10は、物理的に異なりかつ隔離されるが、連続層である。用語「連続層」は、触媒物品を通り、通過し及び/又はわたる排気ガス流の法線方向に関する触媒物品中の触媒層の相対的な位置を記述するために使用される。通常の排気ガス流条件下で、排気ガスは、第一層に接触する前に、第二層と接触しかつ少なくとも部分的にそれを貫通し、かつ後に触媒成分から脱離するように第二層を通り戻る。
【0055】
重要なことに、SCR触媒は、酸化触媒層の上流及び/又は上に配置される。SCR層は、好ましくは、酸化層中でアンモニアの酸化を介して形成される未処理の二次的なNOxが、SCR触媒と接触すること無く、システムから出ることを防ぐように、酸化触媒全体を覆う。
【0056】
本発明の他の態様では、アンモニアスリップ触媒を製造する方法は、(a)銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化触媒と、SCR触媒とを含むウォッシュコートであって、白金族金属を含まないウォッシュコートを基材上に塗布することにより、基材上に層を形成すること、(b)基材上のウォッシュコートを乾燥させること、並びに(c)基材上のウォッシュコートをか焼することを含む。少なくとも1の第一の金属及び第二の金属のそれぞれは、塩、好ましくは、硝酸塩、硫酸塩、塩化物若しくは酢酸塩、酸化物、又は金属を含有する化合物の形態で、酸化層ウォッシュコート中に存在してよく、金属を含有する化合物は、か焼において金属の酸化物を形成する。好ましくは、第一の金属はCuであり、かつ第二の金属はMnである。ウォッシュコートは、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)及びチタニア(TiO)又はそれらの混合物を含む酸化物担体材料を、更に含み得る。ウォッシュコートは、ペロブスカイト、酸化ニッケル(NiO)、二酸化マンガン(MnO)、酸化プラセオジム(III)(Pr)のような他の酸化物材料を更に含み得る。酸化物担体材料は、それらの2以上の混合酸化物又は複合酸化物(CeZrO混合酸化物、TiZrO混合酸化物、TiSiO混合酸化物及びTiAlO酸化物(式中、xは、Alに対するTiOの比に依存する)のような)を含み得る。酸化物担体材料は、担体として役に立つことに加えて、バインダーとしても役に立ってよい。例えば、アルミナは、アルミナ及びCeZrOの混合酸化物において、担体及びバインダーの双方として作用してよい。酸化層ウォッシュコートは、安定化されたアルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を含み得る。スタビライザーは、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、それらの酸化物、それらの何れか2以上の複合酸化物若しくは混合酸化物、又は少なくとも1のアルカリ土類金属、例えばバリウム(Ba)、から選択されてよい。各酸化物担体材料が安定化される場合、スタビライザーは、同一又は異なってよい。酸化物担体材料は、Al及びCeOであり得る。酸化物担体材料がAlである場合、それは、例えば、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタ又はシータAlであってよい。担体材料は、混合酸化物又は安定化された混合酸化物の形態であり得る。混合酸化物中の金属酸化物は、単一相の形態で存在し、一方で安定化された混合酸化物は、二相で存在する。好ましくは、ウォッシュコートは、第一及び第二の金属としてCu及びMn、アルミナ、並びにCeO/ZrO又はZr安定化されたCeO混合酸化物を含むZr安定化されたCeO混合酸化物は、約1:1のモル比でCe及びZrを含み得る。酸化物担体材料は、La安定化されたAl及びZr安定化されたCeOであり得る。酸化ウォッシュコート中の酸化物担体材料は、約20モル%のLa安定化されたAl及び約80モル%のZr安定化されたCeOを含み得る。ウォッシュコートは、MOR(モルデナイト)、FER(フェリエライト)、FAU(ゼオライトY)、MFI(ZSM−5)、BEA(ベータゼオライト)、Fe−BEA、CHA(チャバサイト)、Cu−CHA、及び構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩からなる群から選択されるモレキュラーシーブを含み得る。ウォッシュコートは、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト触媒、又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を、好ましくは含み得る。好ましくは、ウォッシュコートは、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト触媒、又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を含み、かつCu及びMnを更に含む。ウォッシュコート中の酸化触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.3から1.5g/inの濃度において存在し得る。ウォッシュコート中のSCR触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.5から2.5g/inの濃度において存在し得る。ウォッシュコート中の酸化触媒の量(g/in)に対するウォッシュコート中のSCR触媒の量(g/in)の比は、0.3と8.3の間であり得る。
【0057】
本発明の他の態様では、二重層アンモニアスリップ触媒を製造する方法は、(a)銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属、並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化層ウォッシュコートであって、白金族金属を含まないウォッシュコートを基材上に塗布することにより基材上に酸化層を形成すこと、(b)基材上の酸化層ウォッシュコートを乾燥させること、(c)基材上の酸化層ウォッシュコートをか焼すること、(d)置換される金属及び/若しくは過剰フレームワーク金属を好ましくは有するモレキュラーシーブ又はバナジウム/チタニアを含むSCR層ウォッシュコートを(c)の工程で形成されたか焼された酸化層上に塗布することにより、酸化層上に配置されるSCR層を形成すること、(e)基材上のか焼された酸化層上のSCR層ウォッシュコートを乾燥させること、並びに(f)基材上の酸化層ウォッシュコート上のSCR層ウォッシュコートをか焼することを含む。少なくとも1の第一の金属及び第二の金属のそれぞれは、塩、好ましくは、硝酸塩、硫酸塩、塩化物若しくは酢酸塩、酸化物、又は金属を含有する化合物の形態で、酸化層ウォッシュコート中に存在してよく、金属を含有する化合物は、か焼で金属の酸化物を形成する。好ましくは、第一の金属はCuであり、かつ第二の金属はMnである。酸化層ウォッシュコートは、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)及びチタニア(TiO)又はそれらの混合物を含む酸化物担体材料を更に含み得る。酸化物担体材料は、ペロブスカイト、酸化ニッケル(NiO)、二酸化マンガン(MnO)、酸化プラセオジム(III)(Pr)のような他の酸化物材料を更に含み得る。酸化物担体材料は、それらの2以上の混合酸化物又は複合酸化物(CeZrO混合酸化物、TiZrO混合酸化物、TiSiO混合酸化物及びTiAlO酸化物(式中、xは、Alに対するTiOの比に依存する)のような)を含み得る。酸化物担体材料は、担体として役に立つことに加えて、バインダーとしても役に立ってよい。例えば、アルミナは、アルミナ及びCeZrOの混合酸化物において、担体及びバインダーの双方として作用してよい。酸化層ウォッシュコートは、安定化されたアルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を含み得る。スタビライザーは、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、それらの酸化物、それらの何れか2以上の複合酸化物若しくは混合酸化物、又は少なくとも1のアルカリ土類金属、例えばバリウム(Ba)、から選択されてよい。各酸化物担体材料が安定化される場合、スタビライザーは、同一又は異なってよい。酸化物担体材料は、Al及びCeOであり得る。酸化物担体材料がAlである場合、それは、例えば、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタ又はシータAlであってよい。担体材料は、混合酸化物又は安定化された混合酸化物の形態であり得る。混合酸化物中の金属酸化物は、単一相の形態で存在し、一方で安定化された混合酸化物は、二相で存在する。好ましくは、酸化層ウォッシュコートは、第一及び第二の金属としてCu及びMn、アルミナ、並びにCeO/ZrO又はZr安定化されたCeO混合酸化物を含む。Zr安定化されたCeO混合酸化物は、約1:1のモル比でCe及びZrを含み得る。酸化物担体材料は、La安定化されたAl及びZr安定化されたCeOであり得る。酸化ウォッシュコート中の酸化物担体材料は、約20モル%のLa安定化されたAl及び約80モル%のZr安定化されたCeOを含み得る。SCR層ウォッシュコートは、MOR(モルデナイト)、FER(フェリエライト)、FAU(ゼオライトY)、MFI(ZSM−5)、BEA(ベータゼオライト)、Fe−BEA、CHA(チャバサイト)、Cu−CHA及び構造的に類似のフレームワークを含むシリカアルミノリン酸塩からなる群から選択されるモレキュラーシーブを含み得る。SCR層ウォッシュコートは、好ましくは、Fe−BEA若しくはCu−CHAゼオライト触媒又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩を含み得る。好ましくは、SCR層ウォッシュコートは、Fe−BEA又はCu−CHAゼオライト触媒を含み得、かつ酸化層ウォッシュコートは、Cu及びMnを含み得る。酸化層ウォッシュコート中の触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.3から1.5g/inの濃度において存在し得る。SCR層ウォッシュコート中の触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.5から2.5g/inの濃度において存在し得る。酸化層ウォッシュコート中の触媒の量(g/in)に対するSCR層ウォッシュコート中の触媒の量(g/in)の比は、各触媒層中の金属の総重量ベースで0.3と8.3の間であり得る。
【0058】
本発明の更に他の態様では、二重層アンモニアスリップ触媒を製造する方法は、(a)銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属、並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化層ウォッシュコートであって、白金族金属を含まないウォッシュコートを基材上に塗布することにより基材上に酸化層を形成すること、(b)乾燥した酸化層ウォッシュコートを基材上に形成すること、(c)置換された金属及び/又は過剰フレームワーク金属を好ましくは有するモレキュラーシーブ又はバナジウム/チタニアを含むSCR層ウォッシュコートを、工程(b)で形成された乾燥した酸化層上に塗布することにより、酸化層上に配置されるSCR層を形成すること、(d)基材上のか焼された酸化層上のSCR層ウォッシュコートを乾燥させること、並びに(e)基材上のか焼された酸化層ウォッシュコート上のSCR層ウォッシュコートをか焼することを含む。少なくとも1の第一の金属及び第二の金属のそれぞれは、塩、好ましくは、硝酸塩、硫酸塩、塩化物若しくは酢酸塩、酸化物、又は金属を含有する化合物の形態で、酸化層ウォッシュコート中に存在してよく、金属を含有する化合物は、か焼で金属の酸化物を形成する。好ましくは、第一の金属はCuであり、かつ第二の金属はMnである。酸化層ウォッシュコートは、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)及びチタニア(TiO)又はそれらの混合物を含む酸化物担体材料を更に含み得る。酸化物担体材料は、ペロブスカイト、酸化ニッケル(NiO)、二酸化マンガン(MnO)、酸化プラセオジム(III)(Pr)のような他の酸化物材料を更に含み得る。酸化物担体材料は、それらの2以上の混合酸化物又は複合酸化物(CeZrO混合酸化物、TiZrO混合酸化物、TiSiO混合酸化物及びTiAlO酸化物(式中、xは、Alに対するTiOの比に依存する)のような)を含み得る。酸化物担体材料は、担体として役に立つことに加えて、バインダーとしても役に立ってよい。例えば、アルミナは、アルミナ及びCeZrOの混合酸化物において、担体及びバインダーの双方として作用してよい。酸化層ウォッシュコートは、安定化されたアルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を含み得る。スタビライザーは、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、それらの酸化物、それらの何れか2以上の複合酸化物若しくは混合酸化物、又は少なくとも1のアルカリ土類金属、例えばバリウム(Ba)、から選択されてよい。各酸化物担体材料が安定化される場合、スタビライザーは、同一又は異なってよい。酸化物担体材料は、Al及びCeOであり得る。酸化物担体材料がAlである場合、それは、例えば、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタ又はシータAlであってよい。担体材料は、混合酸化物又は安定化された混合酸化物の形態であり得る。混合酸化物中の金属酸化物は、単一相の形態で存在し、一方で安定化された混合酸化物は、二相で存在する。好ましくは、酸化層ウォッシュコートは、第一及び第二の金属としてCu及びMn、アルミナ、並びにCeO/ZrO又はZr安定化されたCeO混合酸化物を含む。Zr安定化されたCeO混合酸化物は、約1:1のモル比でCe及びZrを含み得る。酸化物担体材料は、La安定化されたAl及びZr安定化されたCeOであり得る。酸化層ウォッシュコート中の酸化物担体材料は、約20モル%のLa安定化されたAl及び約80モル%のZr安定化されたCeOを含み得る。SCR層ウォッシュコートは、MOR(モルデナイト)、FER(フェリエライト)、FAU(ゼオライトY)、MFI(ZSM−5)、BEA(ベータゼオライト)、Fe−BEA、CHA(チャバサイト)、Cu−CHA及び構造的に類似のフレームワークを含むシリカアルミノリン酸塩からなる群から選択されるモレキュラーシーブを含み得る。SCR層ウォッシュコートは、好ましくは、Fe−BEA又はCu−CHAゼオライト触媒を含み得る。好ましくは、SCR層ウォッシュコートは、Fe−BEA又はCu−CHAゼオライト触媒を含み得、かつ酸化層ウォッシュコートは、Cu及びMnを含み得る。酸化層ウォッシュコート中の触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.3から1.5g/inの濃度において存在し得る。SCR層ウォッシュコート中の触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.5から2.5g/inの濃度において存在し得る。酸化層ウォッシュコート中の触媒の量(g/in)に対するSCR層ウォッシュコート中触媒の量(g/in)の比は、各触媒層中の金属の総重量ベースで0.3と8.3の間であり得る。
【0059】
本発明の更に他の態様では、燃焼源により発生する排煙流中のアンモニアの濃度を低減するための方法は、アンモニアを含む排煙流を、(1)上記のSCR触媒と、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1の第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化触媒との混合物を含むアンモニアスリップ触媒であって、白金族金属を含まないアンモニアスリップ触媒、あるいは(2)置換された金属及び/若しくは過剰フレームワーク金属を好ましくは有するモレキュラーシーブ又はバナジウム/チタニアを含むSCR層と、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも第一の金属並びにネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1の第二の金属を含む酸化触媒を含む酸化層とを含む二重層アンモニアスリップ触媒であって、第二層が白金族金属を含まない二重層アンモニアスリップ触媒のどちらかと接触させることを含む。少なくとも1の第一の金属及び第二の金属のそれぞれは、塩の形態、好ましくは、硝酸塩、硫酸塩、塩化物若しくは酢酸塩、酸化物又は金属を含有する化合物であり得、金属を含有する化合物は、か焼で金属の酸化物を形成する。好ましくは、第一の金属はCuであり、かつ第二の金属はMnである。第二層は、更に、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)及びチタニア(TiO)又はそれらの混合物を含む酸化物担体材料を含み得る。酸化物担体材料は、更に、ペロブスカイト、酸化ニッケル(NiO)、二酸化マンガン(MnO)、酸化プラセオジム(III)(Pr)のような他の酸化物材料を含み得る。酸化物担体材料は、それらの2以上の混合酸化物又は複合酸化物(CeZrO混合酸化物、TiZrO混合酸化物、TiSiO混合酸化物及びTiAlO酸化物(式中、xは、Alに対するTiOの比に依存する)のような)を含み得る。酸化物担体材料は、担体として役に立つことに加えて、バインダーとしても役に立ってよい。例えば、アルミナは、アルミナ及びCeZrOの混合酸化物において、担体及びバインダーの双方として作用してよい。第二層は、安定化されたアルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びチタニアの1以上を含む酸化物担体材料を含み得る。スタビライザーは、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、それらの酸化物、それらの何れか2以上の複合酸化物若しくは混合酸化物、又は少なくとも1のアルカリ土類金属、例えばバリウム(Ba)、から選択されてよい。各酸化物担体材料が安定化される場合、スタビライザーは、同一又は異なってよい。酸化物担体材料は、Al及びCeOであり得る。酸化物担体材料がAlである場合、それは、例えば、アルファ、ガンマ、ベータ、デルタ又はシータAlであってよい。担体材料は、混合酸化物又は安定化された混合酸化物の形態であり得る。混合酸化物中の金属酸化物は、単一相の形態で存在し、一方で安定化された混合酸化物は、二相で存在する。好ましくは、第二層は、第一及び第二の金属としてCu及びMn、アルミナ、並びにCeO/ZrO又はZr安定化されたCeO混合酸化物のどちらかを含む。Zr安定化されたCeO混合酸化物は、約1:1のモル比でCe及びZrを含み得る。酸化物担体材料は、La安定化されたAl及びZr安定化されたCeOであり得る。第二層中の酸化物担体材料は、約20モル%のLa安定化されたAl及び約80モル%のZr安定化されたCeOを含み得る。第一層は、MOR(モルデナイト)、FER(フェリエライト)、FAU(ゼオライトY)、MFI(ZSM−5)、BEA(ベータゼオライト)、Fe−BEA、CHA(チャバサイト)及びCu−CHAからなる群又は構造的に類似のフレームワークを含むシリコアルミノリン酸塩から選択されるゼオライトを含み得る。第一層ウォッシュコートは、好ましくは、Fe−BEA又はCu−CHAゼオライト触媒を含み得る。好ましくは、第一層は、Fe−BEA又はCu−CHAゼオライト触媒を含み得、かつ第二層は、Cu及びMnを含み得る。第二層がCu及びMnを含む場合、NへのNHのアンモニア変換は、PGMベースの第二層が使用される場合より選択的であり得る。第二層中の触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.3から1.5g/inの濃度において存在し得る。第一層中の触媒は、触媒中の金属の総重量ベースで0.5から2.5g/inの濃度において存在し得る。第二層中の触媒の量(g/in)に対する第一層中の触媒の量(g/in)の比は、各触媒層中の金属の総重量ベースで0.3と8.3の間であり得る。
【0060】
排煙は、約300℃から約500℃の温度において二重層アンモニアスリップ触媒と接触し得る。
【0061】
上で列挙される金属の群に由来する少なくとも1の第一の金属及び少なくとも1の第二の金属を含む酸化触媒を含む酸化層の使用は、組成物中での白金族金属(PGM)の使用の必要性を取り除く。これは、複合触媒のコストを著しく低減するだろう。
【実施例】
【0062】
本発明は、特定の態様に関連し、ここで例示されかつ記載されるが、本発明が示される細部に限定されることを、意図しない。むしろ、種々の変更は、請求項の等価の領域及び範囲内でかつ本発明からそれることなく、細部においてなされてよい。
【0063】
第一層及び第二層をそれぞれ有する3つの触媒は、調製された。触媒のそれぞれは、FeベータゼオライトSCR触媒を含むSCR層を有した。実施例1は、Cu、Mn、CeO/ZrO及びアルミナを酸化層中に含有した。比較例1は、5g/ftのPtを酸化層中に含有し、かつ比較例2は、20g/ftのPdを酸化層中に含有した。当該技術分野では、ゼオライト上部層を有した層状アンモニアスリップ触媒は、入ってくるアンモニアを酸化するようにここで使用される貴金属成分を有した下部層を含有した。
【0064】
実施例1:卑金属アンモニアスリップ触媒(ASC)
酸化層は、要求される量のミリングされないCeO/ZrO及び脱イオン水を混合してスラリーを形成することにより、調製された。CeO/ZrOスラリーは、その後ミリングされ、1.5−2.5μmのd50を提供した。ミリングされたCeO/ZrOは、アルミナスラリーのスラリーと混合され、その後、要求される量の酢酸マンガン結晶が加えられ、かつ混合物は4時間混合された。要求された量の硝酸銅が加えられ、かつスラリーが30分間混合された。Actigumがその後徐々に加えられ、スラリーを濃くした。スラリーは、230cpsiコーディエライト基材上にコーティングされ、乾燥し、その後、約3時間、500℃においてか焼された。これは、375g/ftのCuローディング、600g/ftのMnローディング、0.55g/inのアルミナローディング及び2.2g/inのCeO/ZrOローディングをもたらした。
【0065】
SCR層は、硝酸鉄の溶液にBEAゼオライトを加えかつ分散混練機でスラリーを混合することにより、調製された。3.4−4.2μmのd50を有するミリングされたアルミナのスラリー及び脱イオン水は、BEAゼオライトを含有するスラリーに加えられ、かつ結果として生じるスラリーは混合された。要求される量のバインダー、Disperalは、スラリーに加えられ、かつスラリーは、酸化層をコーティングする前に混合された。
【0066】
スラリーは、230cpsiコーディエライト基材上にコーティングされ、乾燥し、その後、約3時間、500℃においてか焼された。これは、190g/ftの鉄ローディング、1.90g/inのBEAゼオライトローディング及び0.16g/inのアルミナローディングという結果をもたらした。
【0067】
比較例1:Pt ASC
第一触媒層は、スラリーのために、高せん断混合機を使用して、要求された量の約3.4‐4.2μmのd50を有するアルミナウォッシュコート及び脱イオン水を混合することにより、調製された。コハク酸は、最終的な濃度が約100g/ftになるまで、アルミナスラリーに加えられ、その後、混合物は、連続的に少なくとも30分間撹拌された。要求された量の硝酸白金が、加えられ、かつ結果として生じる混合物は、更に60分間撹拌された。ヒドロキシエチルセルロース(Natrasol)は、加えられ、かつスラリーは24時間混合された。スラリーは、230cpsiコーディエライト基材上にコーティングされ、乾燥し、その後、約3時間、500℃においてか焼された。これは、5g/ftのPtローディング及び0.35g/inのアルミナローディングという結果をもたらした。SCR層は、調製され、かつ実施例1中で上記されるような酸化層上にコーティングされた。
【0068】
比較例2:Pd ASC
第一触媒層は、スラリーのために、高せん断力混合器を使用して、要求された量の3.4−4.2μmのd50を有するアルミナウォッシュコート及び脱イオン水を混合することにより、調整された。コハク酸は、最終的な濃度が約100g/ftになるまで、アルミナスラリーに徐々に加えられ、その後、混合物は、連続的に少なくとも30分間撹拌された。要求された量の硝酸パラジウムは、加えられ、かつ結果として生じる混合物は、更に60分間撹拌された。ヒドロキシエチルセルロース(Natrasol)は、加えられ、かつスラリーは24時間混合された。スラリーは、230cpsiコーディエライト基材上にコーティングされ、乾燥し、その後、約3時間、500℃においてか焼された。これは、20g/ftのPdローディング及び0.35g/inのアルミナローディングをもたらした。SCR層は、調製され、かつ実施例1中に上記されるような酸化層上にコーティングされた。
【0069】
触媒の触媒活性の評価は、後部ゾーン中の異なるアンモニアスリップ触媒が後に続く前部ゾーン中のSCR触媒を有する2つのゾーンシステムを使用した。ガス供給物の主な成分は、O、HO、CO、プロパン、プロペン及びNからなる残部ガス組成物を有し、40ppmのNH及び30ppmのNOxの混合物を含有した。安定状態試験は、250℃−500℃の間で、20,000(40,000が各ゾーンを通る)のシステムGHSVにおいてされた。
【0070】
図2は、実施例1の触媒、本発明の触媒が、250℃から500℃のNHの変換において、20g/ftのPdを含有する比較例2の触媒より効果的であったことを示す。実施例1の触媒は、特に、約250℃から約350℃の温度において、比較例2の触媒より効果的であった。実施例1の触媒は、この温度範囲にわたり、NHの変換において、5g/ftのPtを含有する比較例1の触媒より効果的ではなかった。
【0071】
図3は、実施例1の触媒、本発明の触媒が、約250℃から約300℃の範囲で、COを変換することにおいて、20g/ftのPdを含有する比較例2の触媒より効果的であったことを示す。実施例1の触媒、本発明の触媒は、約350℃から約500℃の温度において、COを変換することにおいて、比較例1及び2の触媒よりわずかに効果的ではなかった。
【0072】
図4は、実施例1の触媒、本発明の触媒が、約300℃から約500℃の温度において、システムを出るNH及びNOxの総量を低下させることにおいて、5g/ftのPt及び20g/ftのPdをそれぞれ含有する比較例1及び2の触媒より効果的であった。約400℃から約500℃の温度において、実施例1は、5g/ftのPtを含有する比較例1により生じたそれらの約60%から約75%であるレベルにおいて、NH及びNOxを生じた。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2020年1月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】
2020073267000001.pdf