【解決手段】超音波スピーカ20は、振動子アレイ21と、音響メタマテリアル22と、を有する。振動子アレイ21の放射面には、N個の超音波振動子TR(n)が配置される(nは2〜Nの整数)。超音波振動子TR(n)は、XY平面(以下「アレイ面」という)に配置される。振動子アレイ21を基準として超音波の放射方向(Z+方向)には、音響メタマテリアル22が配置される。音響メタマテリアル22は、複数の導波管を備える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
(1)オーディオシステムの構成
オーディオシステムの構成について説明する。
図1は、本実施形態のオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、オーディオシステム1は、超音波コントローラ10と、超音波スピーカ20と、音源30と、カメラ31と、位置検出部32と、を備える。
【0013】
超音波コントローラ10は、超音波スピーカ20を制御する情報処理装置の一例である。
超音波コントローラ10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14と、を備える。
【0014】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0015】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、オーディオシステム1を制御する制御用アプリケーション)のプログラム
【0016】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0017】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、超音波コントローラ10の機能を実現するように構成される。プロセッサ12は、コンピュータの一例である。
【0018】
入出力インタフェース13は、超音波コントローラ10に接続される入力デバイス(音源30、カメラ31、及び、位置検出部32)から入力信号を受け付け、且つ、超音波コントローラ10に接続される出力デバイス(超音波スピーカ20)に出力信号を出力するように構成される。
【0019】
通信インタフェース14は、超音波コントローラ10とサーバ(不図示)との間の通信を制御するように構成される。
【0020】
超音波スピーカ20は、超音波コントローラ10の制御に従って、超音波を放射するように構成される。
【0021】
音源30は、超音波コントローラ10にオーディオ信号を与えるように構成される。音源30は、以下のものを含む。
・テレビ
・オーディオメディアプレーヤ(カセットプレーヤ、CD(Compact Disc)プレーヤ、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ)
・デジタルオーディオプレーヤ
【0022】
カメラ31は、使用環境SPの画像情報を取得するように構成される。カメラ31は、例えば、CMOS(Complementary MOS)カメラである。
【0023】
位置検出部32は、人の位置を検出するように構成される。
位置検出部32は、例えば、赤外線センサである。赤外線センサは、赤外線を照射し、且つ、赤外線の反射光を受光すると、反射光に応じて電気信号を生成する。これにより、人の位置が検出される。
【0024】
(1−1)超音波スピーカの構成
本実施形態の超音波スピーカの構成について説明する。
図2は、
図1の超音波スピーカの構成を示す斜視図である。
図3は、
図2の超音波スピーカの上面図及び断面図である。
【0025】
図2に示すように、超音波スピーカ20は、振動子アレイ21と、音響メタマテリアル22と、を有する。
【0026】
振動子アレイ21の放射面には、N個の超音波振動子TR(n)が配置される(nは2〜Nの整数)。超音波振動子TR(n)は、XY平面(以下「アレイ面」という)に配置される。
【0027】
振動子アレイ21を基準として超音波の放射方向(Z+方向)には、音響メタマテリアル22が配置される。音響メタマテリアル22は、複数の導波管を備える。
【0028】
例えば、音響メタマテリアル22は、第1導波管22aと、第2導波管22bと、を備える。
図3Aに示すように、第1導波管22a及び第2導波管22bは、アレイ面に沿って、格子状に並ぶ。
図3Bに示すように、第2導波管22bは、導波部材22baを備える。導波部材22baは、超音波の放射方向(Z方向)に対して直交する方向(X方向)に配置されている。そのため、導波部材22baを備えていない第1導波管22aの第1導波長は、第2導波管22bの第2導波長とは異なる。
これにより、第1導波管22aを通過する超音波と、第2導波管22bを通過する超音波との間に位相差が生成される。つまり、音響メタマテリアル22は、振動子アレイ21から放射された超音波に位相差を与えるように構成される。音響メタマテリアル22によって与えられる位相差は、第1導波長と、第2導波長と、によって決まる。換言すると、音響メタマテリアル22は、第1導波長及び第2導波長に応じた音響係数を有する。
【0029】
超音波スピーカ20は、駆動部(不図示)を備える。駆動部は、各超音波振動子TR(n)を駆動する。各超音波振動子TR(n)は、駆動部の駆動により振動する。各超音波振動子TR(n)の振動により、超音波が発生する。振動子アレイ21から放射された超音波は、音響メタマテリアル22を介して空間上を伝播し、空間上の焦点で集束する。焦点で集束した超音波は、可聴音の音源を形成する。
【0030】
(2)本実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。
図4は、本実施形態の概要の説明図である。
【0031】
図4に示すように、音源30は、オーディオ信号を超音波コントローラ10に与える。
【0032】
超音波コントローラ10は、各超音波振動子TR(n)の制御パラメータPAR(n)を生成する。制御パラメータPAR(n)は、振動子アレイ21に位相差のない超音波USW0を放射させるための、各超音波振動子TR(n)の発振振幅A(n)及び発振位相P(n)の少なくとも1つを含む。
超音波コントローラ10は、制御パラメータPAR(n)を振動子アレイ21に出力する。
【0033】
例えば、同一の発振振幅A(n)を示す制御パラメータPAR(n)がすべての超音波振動子TR(n)に対して同時に与えられた場合、各超音波振動子TR(n)は、制御パラメータPAR(n)に従って、同一の発振振幅A(n)で同時に駆動する。その結果、振動子アレイ21から、位相差のない超音波USW0(つまり、平面波)が放射される。
【0034】
音響メタマテリアル22は、振動子アレイ21から放射された超音波USW0に対して、音響係数に応じた位相差を与える。音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1は、位相差を有する。超音波USW1は、空間上に形成された焦点FP(xfp,yfp,zfp)で集束する。焦点座標(xfp,yfp,zfp)は、音響係数によって決まる。
これにより、焦点FPが形成された空間が音源として振る舞う。これにより、リスナLに対して、焦点FPでのみ可聴音を聴かせることができる。
【0035】
(3)超音波スピーカの制御
本実施形態の超音波スピーカの制御について説明する。
図5は、本実施形態の超音波スピーカの制御を説明するための断面図である。
図6は、本実施形態の超音波スピーカの制御を説明するための斜視図である。
【0036】
超音波スピーカ20は、所定の変調方式で変調した超音波を放射する。
変調方式は、例えば、以下の何れかである。
・AM(Amplitude Modulation)変調
・FM(Frequency Modulation)変調
・PM(Phase Modulation)変調
【0037】
超音波コントローラ10は、複数の超音波振動子TR(n)に同一の駆動信号を与える。
図5〜
図6に示すように、各超音波振動子TR(n)は、駆動信号に基づいて同時に振動することにより超音波を発振する。これにより、振動子アレイ21から、位相差のない超音波USW0がZ方向に放射される。
【0038】
振動子アレイ21から放射された超音波USW0は、音響メタマテリアル22によって、超音波の放射方向(Z方向)に対して直交する方向(X方向及びY方向)についての位相差が加えられることにより、X方向及びY方向についての位相差を有する超音波USW1に変換される(
図5〜
図6を参照)。
超音波USW1は、空間上の焦点FP1(xfp,yfp,zfp)で集束する。
【0039】
本実施形態によれば、振動子アレイ21から放射された超音波USW0には、音響メタマテリアル22によって位相差が与えられる。音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1は、位相差を有する。超音波USW1は、空間上の焦点FP(xfp,yfp,zfp)で集束する。
このように、振動子アレイ21において、超音波USW0に位相差を与えるための制御を実行することなく、焦点FPに超音波USW1を集束させることができる。これにより、焦点FPに集束する超音波を放射可能な超音波スピーカ20を制御するための超音波コントローラ10の制御処理を簡素化することができる。
【0040】
(4)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0041】
(4−1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、振動子アレイ21から放射される超音波が位相差を有する例である。
【0042】
(4−1−1)変形例1の概要
変形例1の概要について説明する。
図7は、変形例1の概要の説明図である。
【0043】
図7に示すように、音源30は、オーディオ信号を超音波コントローラ10に与える。
【0044】
超音波コントローラ10は、音源を形成すべき空間上の位置に関する焦点位置情報を入力する。
焦点位置情報は、例えば、以下の少なくとも1つによって超音波コントローラ10に与えられる。
・超音波コントローラ10を操作するオペレータの指示
・入力デバイス(音源30、カメラ31、及び、位置検出部32の少なくとも1つ)から入力される入力信号
・オーディオ信号に対応する音の種類
【0045】
超音波コントローラ10は、焦点位置情報に基づいて、各超音波振動子TR(n)の制御パラメータPAR(n)を生成する。制御パラメータPAR(n)は、超音波振動子TR(n)の発振振幅A(n)及び発振位相P(n)の少なくとも1つを含む。
超音波コントローラ10は、制御パラメータPAR(n)を振動子アレイ21に出力する。
【0046】
各超音波振動子TR(n)は、制御パラメータPAR(n)に従って個別に駆動する。その結果、振動子アレイ21から、位相差を有する超音波USW0が放射される。
【0047】
音響メタマテリアル22は、振動子アレイ21から放射された超音波USW0に対して、音響係数に応じた位相差を与える。その結果、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1は、空間上に形成された焦点FP(xfp,yfp,zfp)で集束する。焦点座標(xfp,yfp,zfp)は、音響係数によって決まる。
これにより、焦点FPが形成された空間が音源として振る舞う。これにより、リスナLに対して、焦点FPでのみ可聴音を聴かせることができる。
【0048】
(4−1−2)超音波スピーカの制御
変形例1の超音波スピーカの制御について説明する。
図8は、変形例1の超音波スピーカの制御を説明するための振動子アレイの概略図である。
図9は、変形例1の超音波スピーカの制御を説明するための断面図である。
図10は、変形例1の超音波スピーカの制御を説明するための斜視図である。
【0049】
図8Aに示すように、XY平面に配列された複数の超音波振動子TR(n)が振動子アレイ21を構成する。
図8Bに示すように、超音波コントローラ10は、X方向に配列された複数の超音波振動子TR(n)の集合を制御単位CU(m:1〜M)として取り扱う。
超音波コントローラ10は、各制御単位CU(m)を個別に制御する。具体的には、超音波コントローラ10は、各制御単位CU(m)を構成する複数の超音波振動子TR(n)に駆動信号を同時に与える。
各制御単位CU(m)を構成する複数の超音波振動子TR(n)は、駆動信号に基づいて同時に振動することにより超音波を発振する。したがって、ある制御単位CU(m)から放射される超音波は、各制御単位CU(m)を構成する複数の超音波振動子TR(n)の配列方向(X方向)についての位相差を有さない。
一方、各制御単位CU(m)は、時間差で駆動する。したがって、各制御単位CU(m)から放射される超音波は、複数の制御単位CU(m)の配列方向(Y方向)についての位相差を有する。
これにより、Y方向についての位相差を有する超音波USW0が振動子アレイ21から放射される。
【0050】
振動子アレイ21から放射された超音波USW0は、音響メタマテリアル22によって、各制御単位CU(m)を構成する複数の超音波振動子TR(n)の配列方向(X方向)についての位相差が加えられることにより、X方向及びY方向についての位相差を有する超音波USW1に変換される(
図9〜
図10を参照)。
超音波USW1は、空間上の焦点FP1(xfp,yfp,zfp)で集束する。
【0051】
(4−1−3)超音波スピーカの制御の処理フロー
変形例1の超音波スピーカの制御の処理フローについて説明する。
図11は、変形例1の超音波スピーカの制御の処理のフローチャートである。
【0052】
図11に示すように、超音波コントローラ10は、使用環境情報の取得(S100)を実行する。
【0053】
具体的には、プロセッサ12は、使用環境SPのレイアウトを示すレイアウト情報を生成する。レイアウト情報は、使用環境SPの3次元のサイズを示す情報と、3次元形状を示す情報と、を含む。
一例として、カメラ31は、使用環境SPの画像情報を撮像する。プロセッサ12は、カメラ31によって撮像された画像情報に三次元モデリングを適用することにより、使用環境SPのレイアウトを示すレイアウト情報を生成し、記憶装置11に記憶する。
別の例として、プロセッサ12は、入出力インタフェース13又は通信インタフェース14を介して、使用環境SPのレイアウト情報(例えば、3次元CADデータ)を記憶装置11に記憶する。
【0054】
位置検出部32は、赤外線を照射し、且つ、赤外線の反射光を受光することにより、人の位置を検出する。
プロセッサ12は、位置検出部32が生成した電気信号に基づいて、超音波スピーカ20に対するリスナLの相対位置を示す三次元座標を生成することにより、当該相対位置を特定する。
【0055】
ステップS100の後、超音波コントローラ10は、オーディオ信号の入力(S101)を実行する。
具体的には、プロセッサ12は、音源30から出力されたオーディオ信号を入力する。
【0056】
ステップS101の後、超音波コントローラ10は、焦点位置の決定(S102)を実行する。
具体的には、ステップS100で位置検出部32によって1人のリスナLが検出された場合、プロセッサ12は、ステップS100で位置検出部32の検出結果に基づいて、超音波スピーカ20に対するリスナLの相対位置を特定する。
プロセッサ12は、特定した相対位置に基づいて、焦点座標(xfp,yfp,zfp)を決定する。
【0057】
ステップS102の後、超音波コントローラ10は、スピーカ制御信号の生成(S103)を実行する。
【0058】
具体的には、プロセッサ12は、ステップS102で決定した焦点位置に基づいて、超音波スピーカ20を制御するためのスピーカ制御信号を生成する。スピーカ制御信号は、複数の超音波振動子TR(n)を制御するための制御パラメータPAR(n)を含む。
【0059】
プロセッサ12は、スピーカ制御信号を超音波スピーカ20に出力する。
超音波スピーカ20は、スピーカ制御信号に基づいて、超音波を放射する。超音波スピーカ20から放射された超音波は、音響メタマテリアル22を介して、ステップS102で決定された焦点FP(xfp,yfp,zfp)で集束する。焦点FPに集束した超音波は、焦点FPに可聴音の音源を形成する。
【0060】
変形例1によれば、振動子アレイ21から放射された超音波USW0には、振動子アレイ21及び音響メタマテリアル22によって位相差が与えられる。超音波USW1は、空間上の焦点FP(xfp,yfp,zfp)で集束する。
このように、振動子アレイ21において、一方向(Y方向)についての位相差を与えるための制御を実行するだけで、二方向(X方向及びY方向)についての位相差を有する超音波USW1を焦点FPに集束させることができる。
これにより、超音波コントローラ10による制御処理を簡素化することができる。
【0061】
(4−2)変形例2
変形例2について説明する。変形例2は、音響メタマテリアル22の構造に関する変形例である。
【0062】
(4−2−1)音響メタマテリアルの構造の第1例
変形例2の音響メタマテリアルの構造の第1例について説明する。
図12は、変形例2の音響メタマテリアルの構造の第1例を示す図である。
【0063】
図12Aに示すように、音響メタマテリアル22は、開口部22cを有する。
開口部22cは、導波管として作用する。
【0064】
音響メタマテリアル22は、ヒータ22dを備える。ヒータ22dは、開口部22cの側部に配置される。
ヒータ22dは、超音波コントローラ10の制御に従い、発熱するように構成される。
【0065】
超音波コントローラ10がヒータ22dを制御するための制御信号を生成すると、ヒータ22dは、当該制御信号に応じて発熱する。
ヒータ22dが発熱すると、
図12Bに示すように、開口部22c内の媒質(例えば、空気)の温度分布にバラツキが生じる。
図12Bの領域22ca〜22ccは、温度が異なることを示している。
【0066】
超音波の進行速度は、超音波が進行する媒質の温度に依存する。つまり、
図12Bの例では、領域22ca〜22ccのそれぞれにおいて、超音波の進行速度が異なる。換言すると、領域22ca〜22ccは、それぞれ、超音波に位相差を与える仮想導波管として作用する。
この場合、音響係数は、領域22ca〜22ccの間の温度差に依存する。つまり、ヒータ22dが発熱すると、音響係数が変化する。
【0067】
(4−2−2)音響メタマテリアルの構造の第2例
変形例2の音響メタマテリアルの構造の第2例について説明する。
図13は、変形例2の音響メタマテリアルの構造の第2例を示す図である。
【0068】
図13に示すように、音響メタマテリアル22は、超音波の放射方向(Z方向)に対して直交する方向(X方向)の径が異なる複数種類の導波管(第1導波管22a及び第2導波管22b)を備える。
第1導波管22aは、第1導波径daを有する。
第2導波管22bは、第2導波径dbを有する。第2導波径dbは、第1導波径daより小さい。
【0069】
超音波の進行速度は、導波径に依存する。つまり、
図13の例では、第1導波管22a内の超音波の進行速度は、第2導波管22b内の超音波の進行速度と異なる。
振動子アレイ21から放射された超音波USW0が音響メタマテリアル22を通過すると、第1導波管22a内の超音波の進行速度と、第2導波管22b内の超音波の進行速度と、の差に応じた位相差が超音波に与えられる。その結果、音響メタマテリアル22から放射される超音波USW1は、導波径の差に応じて、導波管の径の方向(X方向)についての位相差を有する。
【0070】
変形例2によれば、超音波コントローラ10による制御処理を簡素化することができる。
【0071】
(4−3)変形例3
変形例3について説明する。変形例3は、可変音響係数を有する音響メタマテリアル22の例である。
【0072】
(4−3−1)変形例3の概要
変形例3の概要について説明する。
図14は、変形例3の概要の説明図である。
【0073】
図14に示すように、音源30は、オーディオ信号を超音波コントローラ10に与える。
【0074】
超音波コントローラ10は、変形例1と同様に、焦点位置情報を入力する。
【0075】
超音波コントローラ10は、焦点位置情報に基づいて、各超音波振動子TR(n)の制御パラメータPAR(n)と、音響メタマテリアル22の制御パラメータPARmと、を生成する。制御パラメータPAR(n)は、超音波振動子TR(n)の発振振幅A(n)及び発振位相P(n)の少なくとも1つを含む。制御パラメータPARmは、音響メタマテリアル22の音響係数を変更するためのパラメータである。
超音波コントローラ10は、制御パラメータPAR(n)を振動子アレイ21に出力し、且つ、制御パラメータPARmを音響メタマテリアル22に出力する。
【0076】
各超音波振動子TR(n)は、制御パラメータPAR(n)に従って個別に駆動する。その結果、振動子アレイ21から、制御パラメータPAR(n)に応じた位相差を有する超音波USW0が放射される。
【0077】
音響メタマテリアル22は、振動子アレイ21から放射された超音波USW0に対して、制御パラメータPARmによって決まる音響係数に応じた位相差を与える。その結果、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1は、空間上に形成された焦点FP(xfp,yfp,zfp)で集束する。焦点座標(xfp,yfp,zfp)は、制御パラメータPARに応じた位相差と、音響係数に応じた位相差と、の組合せによって決まる。
このように、超音波コントローラ10は、焦点座標(xfp,yfp,zfp)を動的に変化させることにより、空間上に形成される焦点FPを動かすことができる。つまり、空間上に形成される音源は、超音波コントローラ10の制御に応じて移動する。これにより、リスナLに対して、音源を移動させながら可聴音を聴かせることができる。
【0078】
(4−3−2)変形例3の制御
変形例3の制御について説明する。
【0079】
(4−3−2−1)音響メタマテリアルの制御の第1例
変形例3の音響メタマテリアル22の制御の第1例について説明する。
図15は、変形例3の音響メタマテリアル22の制御の第1例の説明図である。
【0080】
図15Aに示すように、変形例3の第1例の音響メタマテリアル22は、
図3の構成を有する。
導波部材22baは、X方向に伸縮可能に構成される。
図15Bに示すように、第2導波管22bの導波長は、導波部材22baの伸縮に応じて変化する。
【0081】
超音波コントローラ10は、ステップS103(
図11)において、ステップS102で決定した焦点座標(xfp,yfp,zfp)に超音波が集束するように、スピーカ制御信号を生成する。スピーカ制御信号は、複数の超音波振動子TR(n)を制御するための制御パラメータPAR(n)と、音響メタマテリアル22を制御するための制御パラメータPARmと、を含む。
【0082】
導波部材22baは、制御パラメータPARmに応じて伸びる(
図15B)。これにより、第2導波管22bの導波長が変化する。導波長の変化に応じて、第1導波管22aを通過する超音波と、第2導波管22bを通過する超音波との間の位相差も変化する。その結果、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPの位置が変化する。
【0083】
(4−3−2−2)音響メタマテリアルの制御の第2例
変形例3の音響メタマテリアル22の制御の第2例について説明する。
図16は、変形例3の音響メタマテリアル22の制御の第2例の説明図である。
【0084】
図16Aに示すように、変形例3の第2例の音響メタマテリアル22は、
図12の構成を有する。
【0085】
超音波コントローラ10は、ステップS103(
図11)において、ステップS102で決定した焦点座標(xfp,yfp,zfp)に超音波が集束するように、スピーカ制御信号を生成する。スピーカ制御信号は、複数の超音波振動子TR(n)を制御するための制御パラメータPAR(n)と、音響メタマテリアル22を制御するための制御パラメータPARmと、を含む。
【0086】
ヒータ22dは、制御パラメータPARmに応じた温度で発熱する。これにより、
図16Bに示すように、開口部22cの温度分布が変化する。温度分布の変化に応じて、領域22ca〜22ccのそれぞれにおける超音波の進行速度が変化する。したがって、領域22ca〜22ccのそれぞれを通過する超音波の間の位相差も変化する。その結果、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPの位置が変化する。
【0087】
(4−3−2−3)音響メタマテリアルの制御の第3例
変形例3の音響メタマテリアル22の制御の第3例について説明する。
図17は、変形例3の音響メタマテリアル22の制御の第3例の説明図である。
【0088】
図17Aに示すように、変形例3の第2例の音響メタマテリアル22は、
図13の構成を有する。
第1導波径da0及び第2導波径db0は、それぞれ、超音波コントローラ10の制御に従って変化する。
【0089】
超音波コントローラ10は、ステップS103(
図11)において、ステップS102で決定した焦点座標(xfp,yfp,zfp)に超音波が集束するように、スピーカ制御信号を生成する。スピーカ制御信号は、複数の超音波振動子TR(n)を制御するための制御パラメータPAR(n)と、音響メタマテリアル22を制御するための制御パラメータPARmと、を含む。
【0090】
第1導波管22a及び第2導波管22bは、それぞれ、制御パラメータPARmに応じて変形する。これにより、
図17Bに示すように、第1導波管22a及び第2導波管22bの導波径は、それぞれ、第1導波径da1及び第2導波径db1になる。したがって、第1導波管22a及び第2導波管22bを通過する超音波の間の位相差も変化する。その結果、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPの位置が変化する。
【0091】
(4−3−2−4)音響メタマテリアルの制御の第4例
変形例3の音響メタマテリアル22の制御の第4例について説明する。
図18は、変形例3の音響メタマテリアルの制御の第4例を示す図である。
【0092】
図18に示すように、音響メタマテリアル22は、超音波コントローラ10の制御に従い、X方向及びY方向に移動可能に構成される。
音響メタマテリアル22の音響係数は、振動子アレイ21に対する音響メタマテリアル22の相対位置に依存する。つまり、音響メタマテリアル22が移動すると、音響係数が変化する。
【0093】
超音波コントローラ10は、ステップS103(
図11)において、ステップS102で決定した焦点座標(xfp,yfp,zfp)に超音波が集束するように、スピーカ制御信号を生成する。スピーカ制御信号は、複数の超音波振動子TR(n)を制御するための制御パラメータPAR(n)と、音響メタマテリアル22を制御するための制御パラメータPARmと、を含む。
【0094】
音響メタマテリアル22は、制御パラメータPARmに応じて移動する。これにより、振動子アレイ21から放射された超音波の音響メタマテリアル22に対する入射角度が変化する。入射角度の変化に応じて、音響メタマテリアル22から放射される超音波USW1の位相差も変化する。その結果、超音波USW1が集束する焦点FPの位置が変化する。
【0095】
(4−3−2−5)音響メタマテリアルの制御の第5例
変形例3の音響メタマテリアルの制御の第5例について説明する。
図19は、変形例3の音響メタマテリアルの制御の第5例の説明図である。
【0096】
図19に示すように、音響メタマテリアル22は、超音波コントローラ10の制御に従い、回転可能に構成される。
音響メタマテリアル22の音響係数は、振動子アレイ21のZ方向についての軸に対する音響メタマテリアル22のX方向及びY方向の軸の角度(以下「設置角度」という)θに依存する。つまり、音響メタマテリアル22が回転すると、音響係数が変化する。
【0097】
超音波コントローラ10は、ステップS103(
図11)において、ステップS102で決定した焦点座標(xfp,yfp,zfp)に超音波が集束するように、スピーカ制御信号を生成する。スピーカ制御信号は、複数の超音波振動子TR(n)を制御するための制御パラメータPAR(n)と、音響メタマテリアル22を制御するための制御パラメータPARmと、を含む。
【0098】
音響メタマテリアル22は、制御パラメータPARmに応じて回転する。これにより、振動子アレイ21から放射された超音波の音響メタマテリアル22に対する入射角度が変化する。入射角度の変化に応じて、音響メタマテリアル22から放射される超音波USW1の位相差も変化する。その結果、超音波USW1が集束する焦点FPの位置が変化する。
【0099】
変形例3によれば、音響メタマテリアル22は、制御パラメータPARmに応じて音響係数を変化させる。音響係数の変化に応じて、焦点座標(xfp,yfp,zfp)が変化する。
例えば、超音波コントローラ10がユーザの指示に応じて制御パラメータPARmを生成する場合、ユーザの指示に応じて、焦点FPが移動する。これにより、空間上に形成される音源を動的に移動させることができる。
このように、音源を動的に移動させることが可能な超音波スピーカ20を制御するための超音波コントローラ10による制御処理を簡素化することができる。
【0100】
なお、変形例3では、制御パラメータPAR(n)は省略可能である。
【0101】
(4−4)変形例4
変形例4の制御について説明する。
【0102】
変形例4の振動子アレイ21は、単一の超音波振動子TRによって構成される。超音波振動子TRの発振面の面積は、振動子アレイ21のアレイ面の面積と同一である。
超音波振動子TRが振動すると、発振面の面積に応じた振幅分布を有する超音波が放射される。換言すると、アレイ面の面積と同様の面積を有する発振面を備える超音波振動子TRは、仮想的な振動子アレイ21として作用する。
【0103】
音響メタマテリアル22は、発振面から放射された超音波に位相差を与える。
【0104】
変形例4によれば、単一の超音波振動子TRを用いる場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
(6)本実施形態の小括
本実施形態について小括する。
【0106】
本実施形態の第1態様は、
超音波を放射する少なくとも1つの超音波振動子TRを備え、
超音波振動子TRを駆動することにより、超音波振動子TRから超音波を放射させる手段(例えば、超音波コントローラ10)を備え、
超音波振動子TRから放射された超音波に位相差を与えるように構成された音響メタマテリアル22を備える、
超音波スピーカ20である。
【0107】
第1態様によれば、音響メタマテリアル22が、超音波振動子TRから放射された超音波USW0に位相差を与える。その結果、超音波に位相差を与えるための制御処理を簡素化することができる。
【0108】
本実施形態の第2態様は、
音響メタマテリアル22は、超音波振動子TRから放射された超音波を空間上の焦点FPに集束させるように構成される、
超音波スピーカ20である。
【0109】
第2態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1を焦点FPに集束させるための制御処理を簡素化することができる。
【0110】
本実施形態の第3態様は、
音響メタマテリアル22は、超音波を導波する複数の導波管を備え、
複数の導波管は、
第1導波長を有する第1導波管22aと、
第1導波長とは異なる第2導波長を有する第2導波管22bと、
を備える、
超音波スピーカ20である。
【0111】
第3態様によれば、超音波に位相差を与えるための制御処理を簡素化することができる。
【0112】
本実施形態の第4態様は、
音響メタマテリアル22は、超音波を導波する複数の導波管を備え、
各導波管は、導波長が可変である可変導波構造を有し、
焦点FPの位置に基づいて、各導波管の導波長が変化するように、音響メタマテリアル22を制御する手段を備える、
超音波スピーカ20である。
【0113】
第4態様によれば、超音波に位相差を与えるための制御処理を簡素化することができる。
【0114】
本実施形態の第5態様は、
焦点の位置に基づいて、超音波振動子TRに対する音響メタマテリアル22の相対位置が変化するように、音響メタマテリアル22を制御する手段を備える、
超音波スピーカ20である。
【0115】
第5態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPを動かすための制御処理を簡素化することができる。
【0116】
本実施形態の第6態様は、
焦点の位置に基づいて、超音波振動子TRに対する音響メタマテリアル22の相対角度が変化するように、音響メタマテリアル22を制御する手段を備える、
超音波スピーカ20である。
【0117】
第6態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPを動かすための制御処理を簡素化することができる。
【0118】
本実施形態の第7態様は、
音響メタマテリアル22は、超音波を導波する導波管を備え、
導波管における超音波の進行速度を変化させるように、音響メタマテリアル22を制御する手段を備える、
超音波スピーカ20である。
【0119】
第7態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPを動かすための制御処理を簡素化することができる。
【0120】
本実施形態の第8態様は、
制御する手段は、焦点FPの位置に基づいて、導波管内の媒質の温度を変化させる、
超音波スピーカ20である。
【0121】
第8態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPを動かすための制御処理を簡素化することができる。
【0122】
本実施形態の第9態様は、
導波管は、
第1可変構造を有する第1導波管22aと、
第1可変構造とは異なる第2可変構造を有する第2導波管22bと、
を備え、
制御する手段は、第1可変構造及び第2可変構造の少なくとも1つを変化させる、
超音波スピーカ20である。
【0123】
第9態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPを動かすための制御処理を簡素化することができる。
【0124】
本実施形態の第10態様は、
焦点FPの位置に基づいて、第1可変構造及び第2可変構造の少なくとも1つを変化させる手段を備える、
超音波スピーカ20である。
【0125】
第10態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPを動かすための制御処理を簡素化することができる。
【0126】
本実施形態の第11態様は、
音響メタマテリアル22は、超音波振動子TRから放出された超音波に振幅差を与えるように構成される、
超音波スピーカ20である。
【0127】
第11態様によれば、位相制御を実行することなく、超音波に位相差を与えるための制御処理を簡素化することができる。
【0128】
本実施形態の第12態様は、
音響メタマテリアル22は、超音波を導波する複数の導波管を備え、
複数の導波管は、
第1導波径を有する第1導波管22aと、
第1導波径とは異なる第2導波径を有する第2導波管22bと、
を備える、
超音波スピーカ20である。
【0129】
第12態様によれば、超音波に位相差を与えるための制御処理を簡素化することができる。
【0130】
本実施形態の第13態様は、
音響メタマテリアル22は、超音波を導波する複数の導波管を備え、
焦点FPの位置に基づいて、各導波管の導波径が変化するように、音響メタマテリアル22を制御する手段を備える、
超音波スピーカ20である。
【0131】
第13態様によれば、音響メタマテリアル22から放射された超音波USW1が集束する焦点FPを動かすための制御処理を簡素化することができる。
【0132】
本実施形態の第14様は、
音響メタマテリアル22は、超音波を導波する複数の導波管を備え、
導波管の数は、振動子の数より多い、
超音波スピーカ20である。
【0133】
第14態様によれば、超音波に位相差を与えるための制御処理を簡素化することができる。
【0134】
本実施形態の第15態様は、
超音波振動子TRは、二次元の配列方向に沿って配列された複数の超音波振動子TR(n)を含み、
駆動する手段は、配列方向のうちの一方向に配列された複数の超音波振動子TR(n)を含む制御単位毎に、各制御単位を個別に駆動させる、
超音波スピーカ20である。
【0135】
第15態様によれば、複数の超音波振動子TR(n)のそれぞれを個別に制御することなく、焦点FPに集束する超音波を放射させることができる。これにより、焦点FPに集束する超音波を放射するための制御処理を簡素化することができる。
【0136】
本実施形態の第16態様は、
超音波振動子TRは、複数の超音波振動子TR(n)を含み、
駆動する手段は、各超音波振動子TR(n)から放射された個別の発振位相を有するように、各超音波振動子TR(n)を駆動する、
超音波スピーカ20である。
【0137】
第16態様によれば、焦点FPに集束する超音波を放射するための制御処理を簡素化することができる。
【0138】
(7)その他の変形例
その他の変形例について説明する。
【0139】
記憶装置11は、ネットワークNWを介して、超音波コントローラ10と接続されてもよい。
【0140】
カメラ31が、位置検出部32の代わりに、リスナLの相対位置を検出しても良い。
例えば、カメラ31が、リスナLの画像情報を取得する。
プロセッサ12が、カメラ31が取得した画像情報に対して、人の特徴量に基づく特徴量解析を適用する。これにより、画像情報における人の位置(画像空間上の位置)が特定される。
プロセッサ12は、特定した画像空間上の位置に基づいて、超音波スピーカ20に対するリスナLの相対位置を示す三次元座標を生成することにより、当該相対位置を特定する。
【0141】
超音波スピーカ20が、位置検出部32の代わりに、リスナLの相対位置を検出しても良い。
例えば、超音波振動子TRが放射する超音波の反射波を検出する超音波センサを備える。
ステップS100において、プロセッサ12は、超音波振動子TRを駆動させることにより、超音波を放射する。超音波は、リスナLに反射する。
超音波センサは、リスナLからの反射波を検出する。
プロセッサ12は、超音波を放射してから、超音波センサによって反射波が検出されるまでの時間に基づいて、リスナLの相対位置を推定する。
【0142】
本実施形態では、超音波振動子TR(n)が時間差で振動する例を示したが、本実施形態の適用範囲はこれに限られない。超音波スピーカ20は、超音波振動子TR(n)が、同時に異なる発振振幅で振動する場合、及び、時間差で、且つ、異なる発振振幅で振動する場合にも、同様に適用可能である。
【0143】
図3の例では、2種類の導波管(第1導波管22a及び第2導波管22b)の例を示したが、導波管の種類は3種類以上でも良い。
図3の例では、複数の導波管が格子状に配列される例を示したが、導波管の配列はこれに限られない。
【0144】
本実施形態では、平面上に配置された超音波振動子TR(n)が振動子アレイ21を構成する例を示したが、超音波振動子TR(n)の配置態様はこれに限られない。本実施形態は、例えば、超音波振動子TR(n)が曲面上に配置される場合にも適用可能である。
【0145】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。