【課題】新規な多重化システム、コンピュータビジョンベースのデジタル卵マッピングシステム、および埋込みコントローラベースの卵内注射シーケンサを備える卵内注射機と、飼鳥類の孵化についてワクチンおよび他の物質を孵卵器フラット内の検出された卵に選択的に供給するための方法とを提供する。
【解決手段】卵内注射機は、対応するエッグフラットに関して、デジタルマッピングの結果に応じて、ワクチンおよび他の物質を条件付きで分配可能である。多重化システムは、複数の出力を有する回転弁を用いて、ただ1つのポンプデバイスを複数の針と接続することができ、1つのポンプに、ワクチンおよび他の物質を高速で高精度に全ての出力または出力のサブグループ、一度に1つのポートを経由させて送ることが可能であって、実際には1つのポンプが、ワクチンまたは他の物質を、ほぼ同時に短時間で複数のポートに分配可能である。
流体を複数の注射針のサブグループに送り分配する自動卵内注射機であって、前記複数の注射針のサブグループが、前記自動卵内注射機内の孵卵トレイに存在すると事前にデジタル方式で判定した卵に対応するようにマッピングされており、前記自動卵内注射機は、
支持フレームと、
各々が、貯蔵器からの液体物質を受取る液体物質取込み開口部と、可変調節可能投薬装置と、回転方向弁と、複数の液体物質出力口とを含む複数の液体物質多重化システムと、
デジタル方式で孵卵トレイに位置する卵をマッピングする、コンピュータベースのデジタルビジュアル検査部と、
マッピングされた前記卵の注射を順に行うことが可能なコントローラシステムと、
孵卵トレイの上方に配置された複数の卵穿孔機を有し、可変ストロークで垂直方向に移動可能な複数の注射針を含む注射部と、
前記複数の注射針の各々と対応付けられた電磁スライドハンマーとを備える、自動卵内注射機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
今日利用可能な卵内注射技術は、卵が孵卵トレイ内に位置するように部分的に卵の上部の高さのばらつきに調節する浮動注射器を用いる場合があり、これによって、各卵は、卵のサイズにかかわらず、卵の上部から一定の高さ、たとえば0.5インチまでワクチン接種される(たとえば、Correaの米国特許第7,360,500号を参照)。しかしながら、トレイにおける卵の向き、卵の長さおよび高さに関連して卵を通過する針穿刺割合深さは、卵の直径によって影響され、トレイの設計は制御されない。たとえば、2インチの高さの卵に関して、1インチに等しい針穿刺深さを考える。この例では、本明細書で定義されるような針の穿刺割合深さは、50.00%穿刺深さであろう。同様に、1.5インチの高さの卵に関する1インチの針穿刺深さは、卵上の75%穿刺深さに等しい。50%穿刺深さと75%穿刺深さとの相違は、鶏の産出量に劇的な効果を有し得、75%穿刺深さは、成長しつつある胚により高い確率で損傷を及ぼす可能性がある。これらの従来技術の浮動注射器は、圧縮ばねによって卵殻の最上部に接触させられてしまうことが典型的である。前述のように、より年をとった群れほど、より大きな卵を産む。卵が大きいほど、卵によって生じるばね圧縮が大きくなって、卵殻に対する圧縮荷重もより大きくなる。圧縮が大きくなると、より年をとった群れの卵がより弱い卵殻を有するという問題が生じる。そのため、卵のサイズを補償するための従来技術の調節機構は典型的には、より弱い卵に対して最も損傷を与え、特に卵が注射器によって穴を開けられるであろう領域、または、卵が卵トレイ上で支えられている領域において、望ましくない卵のひびおよび/または卵殻のくぼみを生じる。また、全ての力によって、反力、卵の数によって増大される、注射器の調節によって生じる圧縮力、および、卵の穿孔がより頑丈で補強材を備える機械フレームの必要性に変換される一方で生成される圧縮力が生成される。卵のサイズ調節および同時に卵の穿孔を行うための機械フレームおよびアクチュエータは、数百ポンドの反力の寸法に作られる必要がある。同様に、卵は、これに応じて直接真下からのまたはエッグフラットを通した構造的な支持物を必要とする。これらの要素は全て、機械およびその構造物の費用を増大させる。
【0014】
既存の卵内注射装置/ワクチン注射器は、トレイで見つけられるであろう、異なるサイズの/異なる方向を向いた複数の卵を収容するように、自動的に注射針の穿刺割合深さを調節することができない。このように相対的な針の穿刺割合深さを制御できないことによって、卵内の注射場所の精度が低くなる。これは、重要な内臓器官との針の接触という問題を引き起こすことがあり、卵内ワクチン接種プロセス中に死亡が発生し、生物学上の効率が低下する。概して、現在利用可能な注射器にはサイズが均一でない卵を取りそろえた物が提示されており、ワクチンまたは他の高価な物質が無駄になり、卵の孵化率が低下する。さらに、鶏の産出量は、効果のないワクチン接種および/または他の高価な物質の供給によって低減し、孵化損失を悪化させている。最後に、若い群れ、たとえば、26〜32週の年齢の群れの卵にワクチン接種を行うと、死亡率が高くなることが業界では現在知られており、認められている。この事実は一部は、上述のように、より高齢の群れによって産出される卵と比べて若い群れによって産出される卵のサイズが比較的小さいこと、および、注射に関する、関連する卵のサイズが複雑であるためであると考えられる。
【0015】
従来技術のシステムの中には、一体化された弁を有する注射器を用いるものもあるが、これらのシステムが一体化されていることによって、システムの製造、所有、および維持が大幅に高価になる。たとえば、機械的な問題があると、注射器は完全にこれらのシステムにおいて取り替えられなければならず、その結果、コストが増加する。現在の卵内供給システムは全て、注射ヘッドの各々の対応する対象注射器/針アセンブリについて、1つのポンプ装置を有している。この事実は常に、非常に正確な投薬装置の使用が法外に高くなるという、コストを増大させる要因につながる。対照的に、現在、これらのポンプ/投薬装置の時間利用要因は、全ての卵内商業孵化応用についてきわめて低い。なぜなら、流体を卵に分配する実際の供給ステップは典型的には約0.125〜0.250秒に過ぎないが、卵トレイについての全処理サイクルは、典型的には1トレイにつき8〜10秒の範囲であるからである。現在のシステムの他の不利な点は、システムは注射器の各々のポンプ装置を備え得るが、全てのポンプは注射ごとに一定量を供給することである。これらのシステムにおいても、各注射針は1つのポンプ装置に関連付けられており、物理的に隔離された状態になることもあれば、マニホールド構成になることもある。そのため、現在のシステムは、機械が製造される前に、最終的な注射量および各卵にどれだけの量を供給しなければならないかについての判定を対象にするために、特定用途向けの個別のポンプ装置を必要とする。孵化場の中には、1つの卵につき50μlの量でワクチン接種を行っている所もあれば、100μlでワクチン接種を行っているところもある。現在のシステムでは、これらの孵化場の各々は、異なる態様で構成された注射機器を必要とする。
【0016】
そのため、対応する群れの年齢、およびそれゆえ対応する全体的な卵の平均寸法に応じて、卵内注射針の穿刺割合深さを調節可能な、費用効率の高い高精度の卵内注射/ワクチン接種装置が、明らかに長い間必要だと感じられていた。好ましい卵内注射装置は、実際はほぼ同時に卵の集団にワクチン接種を行うために、高速シーケンスで複数の注射器/針アセンブリを送り出すために1つの高精度の分配装置を多重化可能である。好ましい卵内注射装置は、個々の卵の寸法にかかわらず、ワクチンおよび他の高価な物質を特定用途向けの針の穿刺割合深さで卵に注射可能である。好ましい卵内注射供給システムは、卵をポケットに有する卵トレイポケットに液体を分配するのみであり、空のポケットに分配することは避ける。さらに、生存可能でない卵に注射しない、小さすぎる卵または大きすぎる卵に注射しない、ひびのある卵、破れた卵、または他の欠陥のある卵に注射しないなどの他の基準に基づいて、トレイ内のどの卵を注射するかを選択可能なシステムを提供することが役立つが、これらの基準はあくまで例示的なものである。また、注射器の深さの調節が可能になる卵殻の圧縮、ならびにこの調節に対応するために構造的な補強材を設計する必要性の緩和を必要としない卵穿孔方法および装置が、明らかに長い間必要だと感じられていた。好ましい卵内注射装置は、針の速度および穿刺深さとは完全に独立して、制御された速度および求められた深さで穿孔機を用いて卵殻に穴を開ける。また、最終的なユーザが、機械制御パネルで選択肢を選択することによって、ワクチン供給量、たとえば、50μlまたは100μlを選択し調節する柔軟なワクチン供給システムが、明らかに長い間必要だと感じられていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
開示の概要
【0018】
本節は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その全体的な範囲または特徴、局面および目的の包括的な開示と解釈されることを意図したものではない。
【0019】
本発明の第1の局面は、改良された卵内注射機を提供する。この卵内注射機は、注射器が対象とする卵トレイのポケットに卵が存在する時にのみ注射器を通じてワクチンおよび他の物質を条件付きで分配するように設計された、新規なコンピュータビジョン支援型シーケンサを備える。本機械には、デジタルカメラと、1回のステップで卵トレイ上の全ての卵の場所および存在を判定するために、カメラによって撮像されたデジタル画像を処理するコンピュータコントローラとが設けられている。本発明の卵マッピングシステム(EMS)は、コンピュータビジョンシステムの使用のみで、卵トレイ上の各卵ポケットのための個別のセンサを必要とせずに得られる卵検出および卵トレイバイナリマッピングシステムである。卵トレイに存在する卵の2進表示は、電気油圧式システムが、ワクチンまたは他の高価な液体を、トレイ上の具体的に検出された卵に既にマッピングされたそれらの注射器および針アセンブリにのみ選択的に分配するための具体的な一連の動作に変換される。また、このマッピングシステムによって、使用される卵の有無を超えた他の特定用途向けの識別基準が可能になる。これらの基準は拡張されて、低い孵化率を有している、またはバイオセキュリティーの問題を生じることが知られている、きわめて小さな卵またはきわめて大きな卵、きわめて傾斜した卵、割れた卵、汚れた卵などを検出することが可能になって、人工知能(AI)主導の選択にサポートされたワクチンの節約のための新しい機会へと道を開く。これらの特徴を個別にデジタル方式で制御された卵穿孔機と組み合わせることによって、システムは、選択的にワクチンを供給きるだけでなく、選択的に卵の穿孔を行うことも可能になる。
【0020】
本発明に従うシステム回路は、あらゆる卵内注射システムとの使用にも簡単に、かつ、高い費用対効率で適合可能である。たとえば、本発明の開示された装置および方法は、Correaの米国特許第7,360,500号で開示されたような卵内注射器/ワクチン注射器と共に使用可能である、または、他の注射システムとの使用に容易に適合可能である。
【0021】
本発明の第2の局面は、電気油圧式分配システムそのものに関する。工場級のおよび高精度の弁なしポンプデバイスを回転弁と組み合わせることによって、新規な高速および高精度の水圧多重化システム(HMS)が本発明で実現される。双方のデバイスは、ステッパーモータによって駆動され、卵マッピングシステムの一部として、コンピュータビジョン支援型シーケンサによって収集されコンパイルされた情報のマッピングに対応して、事前に定められた一連の弁口を通してワクチンおよび他の物質を分配するように一定の順序で配列可能である。オペレータは、ベースボリュームの倍数として、分配された量を選択的に制御して、ある程度のワクチンまたは他の液体を供給可能である。
【0022】
本発明の第3の局面は、卵内注射装置と共に使用される新規な注射針深さ調整を提供する。この調整によって、卵トレイ内に存在する卵の平均サイズに応じて、注射ヘッド/針の穿刺割合深さが自動的に調節される。自動的な注射割合穿刺深さ調節によって、無効な注射の数が減り、成長中の胚を傷つける機会が最小限になる。これらは双方とも、卵内注射と関連する全体的なコストを低減する。そのため、実施形態において、改良された卵内注射装置は、群れの年齢にかかわらず、ワクチンおよび他の高価な物質を所望の対象領域に高い費用効果でおよび高精度に分配可能であり、卵トレイのポケットに卵が存在する場合にのみ、条件付きで当該物質を供給可能である。この特徴は、デジタル方式でONまたはOFF可能である。これは、カメラによってデジタル方式で判定されるように、卵のサイズを針穿刺深さに関連付ける自動機械判定として実現可能である。代替的に、ユーザは、プロセスパラメータとして直接、または、卵の群れの年齢をキー入力することによって間接的に、所望の対象穿刺深さをキー入力可能である。また、ユーザは、自らの品種に固有の群れの年齢と卵サイズとの間の知られている固有の対応関係を何度もキー入力/編集することが可能であって、おそらくも最も重要であるパラメータの制御を行って、効果的に卵にワクチン接種を行うことが可能である。現在のシステム設計では、機械の設計者/製造者は、具体的な卵パラメータのノウハウを有しておらず、これらの判定を行うためのフィードバックを得ていない。
【0023】
最後に、改良された卵内注射機は、1)暗室におけるEMSの動作のための暗視カメラ、2)コンピュータビジョンベースの、卵トレイの各ポケット内の個別の卵傾斜判定、および3)選択的な卵配列、という特徴のうち1つ、複数、または全てを備え得る。
【0024】
本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、本明細書の詳細な説明から当業者にとってより明らかとなるであろう。詳細な説明に付随する図面について、以下で説明する。
【0025】
本明細書で説明される図面は、選択された局面のみを説明する目的のためのものであり、全ての実現例を示す目的のためのものではなく、本開示を実際に図示されているものだけに制限することを意図したものではない。これを考慮して、本開示の局面の例の様々な特徴および利点が、添付された図面と組み合わせて考慮されることによって、以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者にとって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】本開示に係る機械の4つの部分を示す、
図1に類似した模式図である。
【
図3A】本開示に係る機械の平坦な搭載部の複数の部分を示す拡大図である。
【0027】
【
図3B】本開示に係る機械の平坦な搭載部の複数の部分を示す拡大図である。
【0028】
【
図3C】本開示に係る機械の平坦な搭載部の複数の部分を示す拡大図である。
【0029】
【
図4】本開示に係る機械のデジタルビジュアル検査部を示す模式図である。
【
図5A】本開示に係る機械において使用されるデジタルカメラを示す図である。
【0030】
【
図5B】本開示に従って使用されるシングルボードコンピュータを示す図である。
【0031】
【
図5C】本開示に従って使用されるシングルボードコンピュータを示す図である。
【0032】
【
図6A】本開示に係る、円に基づくアルゴリズムを用いて検出された卵の画像である。
【0033】
【
図6B】本開示に係る、楕円に基づくアルゴリズムを用いて検出された卵の画像である。
【0034】
【
図7】孵卵トレイ(IT)におけるリアルタイム卵検出によってシングルボードコンピュータから出力された映像のスクリーン表示の例、および、デジタル出力ベクトルの例を示す図である。
【
図8】卵のための空間よりも卵が少ないITの撮像画像の拡大図の例およびバイナリマップ出力を示す図である。
【
図9】開示されたシステムに従って実現可能なAI学習のレベルを示す図である。
【
図10A】本開示に係る卵持上げ、穿孔、および注射部の模式図である。
【0035】
【
図10B】本開示に係る穴の開いたレベリングプレートの模式図である。
【0036】
【
図11】本開示に係る卵持上げ、穿孔、および注射部の一部を示す模式図である。
【
図12】本開示に係る穿孔機の上部本体を示す図である。
【
図13】本開示に係る穿孔機の下部本体を示す図である。
【
図14】本開示に係る穿孔機の緩衝器を示す図である。
【
図15A】本開示に係るコイルおよびコイルホルダを示す図である。
【0037】
【
図15B】本開示に係るコイルおよびコイルホルダを示す図である。
【0038】
【
図16】本開示に係る光学センサホルダを示す図である。
【
図17】本開示に係る穿孔機アセンブリを示す図である。
【
図18】本開示に係る、上側部分に針コネクタを有する注射針を示し、下側部分に、電磁スライドハンマーが搭載された穿孔機アセンブリを示す図である。
【
図19】本開示に係る、穿孔機アセンブリ内に搭載された注射針およびスライドハンマーを示す図である。
【
図22】本開示に係る卵穿孔機の一部を示す図である。
【
図23】本開示に係る卵穿孔機の内部構成要素を示す図である。
【
図24A】本開示に係る卵穿孔機を改良するために使用された装置を示す図である。
【
図24B】本開示に係るハンマー速度の計算およびグラフを表わす図である。
【
図25】本開示に係る、卵を穿孔するための一連のステップを示す図である。
【
図26】本開示に係る針アセンブリの模式図である。
【
図27A】本開示に係る卵穿孔機電子制御モジュールの例を示す図である。
【0039】
【
図27B】本開示に係る卵穿孔機電子制御モジュールの例を示す図である。
【0040】
【
図28】卵持上げ、穿孔、および注射ステーションの一部を示す図である。
【
図29A】本開示に係る弁なし主ポンプを示す図である。
【0041】
【0042】
【
図30】本開示に係るワクチン供給システムモジュールの模式図である。
【
図31】本開示に係るワクチン供給システムモジュールの一部の模式図である。
【
図32】本開示に係る1つの回転弁の完全なサイクルを示すグラフィックイメージである。
【
図33】本開示に係るワクチン供給システムモジュールの他の一部を示す図である。
【
図34】本開示に係る卵内注射機の全体的な制御アーキテクチャの模式図である。
【
図35】本開示に係る新規な把持装置と卵穿孔機との組合せを示す図である。
【
図36】本開示に係る新規な把持装置の拡大図である。
【
図37】本開示に係る卵排出装置と組み合わされた新規な卵把持装置を示す図である。
【
図38A】本開示に係るキャパシタ充電仕様を示す図である。
【0043】
【
図38B】本開示に係るキャパシタに関するタイムチャートの例を示す図である。
【0044】
【
図38C】本開示に係る、24Vの供給についての放電観察を示す図である。
【0045】
【
図38D】本開示に係る、20Vの供給についての放電観察を示す図である。
【0046】
【
図38E】本開示に係る、18Vの供給についての放電観察を示す図である。
【0047】
【
図38F】本開示に係る、16Vの供給についての放電観察を示す図である。
【0048】
【
図39】本開示に係る穿孔機モジュールの模式図である。
【
図40】本開示に係る卵穿孔機の回路構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下では、本開示の理解を提供するために詳細が説明される。
【0051】
理解しやすくする目的で、当業者に本開示の範囲を伝えるために、例示的な局面が本明細書で説明される。本開示の様々な局面の十分な理解を提供するために、具体的な構成要素、装置、および方法の例など多くの詳細について説明する。公知のプロセス、公知の装置構造、および公知の技術などの具体的な詳細は当業者に既に十分理解されているため、これらの具体的な詳細について本明細書で説明する必要がないこと、実施形態の例は多くの異なる態様で具体化され得ること、および、これらはいずれも本開示の範囲を制限するものと解釈されるべきではないことは、当業者にとって明らかである。
【0052】
本明細書において使用される用語は、特定の局面の例を説明する目的でのみ使用されており、制限的であることは意図されていない。本明細書において使用されるように、「ある(a, an)」および「その(the)」といった単数形は、文脈がそうでないことを明白に示していない限り、複数形も含む。「備える(comprises, comprising, including, having)」という用語は包括的なものであり、説明された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明記しているが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの集合の存在または追加を除外するものではない。本明細書で説明される方法ステップ、プロセス、および動作は、具体的に実行の順番として特定されていない限り、説明または図示される特定の順番での実行を必ず必要とすると解釈されるべきではない。また、追加のまたは代替的なステップを用いてもよいことを理解するべきである。
【0053】
要素または特徴について他の要素または特徴の「上にある」、他の要素または特徴に「結合されている」、「接続されている」、「連結されている」、「動作可能に接続されている」、または「動作可能に通信している」と言及される場合、それは他の要素または層の直接上にある、他の要素または層に結合されている、接続されている、もしくは連結されていることがある、または、介在する要素もしくは特徴が存在していることがある。対照的に、要素が他の要素または特徴の「直接上にある」、他の要素または層に「直接結合されている」、「直接接続されている」もしくは「直接連結されている」と言及されている場合、介在する要素または層が存在しないことがある。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉も同様に解釈されるべきである(たとえば、「間に」と「直接間に」、「隣接する」と「直接隣接する」など)。本明細書で使用されるように、「および/または」という用語は、関連付けて列挙された要素のうちの1つ以上のいずれかまたは全ての組合せを含む。
【0054】
第1の、第2の、第3のなどの用語が様々な要素、構成要素、領域、層および/または部分を説明するために本明細書で用いられる場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語によって制限されるべきではない。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、または部分を他の領域、層、または部分と区別するためにのみ使用され得る。「第1の」、「第2の」、および他の数字上の用語などの用語は、本明細書で用いられる場合、文脈によって明確におよび特定的に示されていない限り、順序または順番を示唆するわけではない。したがって、以下で説明する第1の要素、構成要素、領域、層、または部分は、実施形態の例の教示の範囲内で、第2の要素、構成要素、領域、層または部分と呼ぶことができる。
【0055】
本明細書で説明の目的で、「上部」、「下部」、「右」、「左」、「後方」、「前方」、「垂直」、「水平」などの用語およびそれらの派生語は、図面で向けられているような発明に関連するものとする。しかしながら、本開示は明らかに逆に規定されている場合を除いて、様々な代替的な方向およびステップ順序を仮定し得る。また、添付の図面で図示される、および、以下の明細書で説明される具体的な装置およびプロセスは、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の概念の例示的な局面であると理解されるべきである。それゆえ、本明細書で開示する局面に関する特定の寸法および他の物理的な特徴は、特許請求の範囲が明らかに他の態様で説明されていない限り、制限的なものであると解釈されるべきではない。
【0056】
孵卵トレイ(IT)という用語は、今日の卵内注射機において卵を運ぶために使用される、業界で標準的なトレイまたはエッグフラットを指す。これらは、従来技術で知られているように、公知の行列アレイにおいて1トレイにつき73または150の卵を収容するように規格化されている。孵化トレイ(HT)という用語は、注射された卵が孵卵器内に配置される前にITから搬送されるトレイを指す。本発明の明細書および特許請求の範囲を通して、卵トレイ、孵卵トレイ、および孵化トレイが言及されるが、当業者によって理解されるであろうように、本発明の機械は、コンベヤ内に作られた卵ポケットを有するコンベヤを組み込むように設計可能であり、システムを通して卵を移動させるためにコンベヤに卵トレイを搭載するのと同じ態様で機能し得る。便宜上、卵トレイ、孵卵トレイ、および孵化トレイという用語は、卵ポケットを有するコンベヤベルトを所定の位置で使用可能であるという理解で使用可能である。グラムについて「g」、ミリリットルについて「ml」、ミリメートルについて「mm」、マイクロリットルについてμl、マイクロファラッドについてμF、ボルトについてVという略称が使用される。
【0057】
本開示は、注射器が対象とする卵トレイのポケットに卵が存在する場合にのみ注射器を通じてワクチンおよび他の物質を条件付きで分配するように設計された新規なコンピュータビジョン支援型シーケンサを備える、改良された卵内注射機を提供する。さらに、本明細書で説明するように、コンピュータビジョンシステムによって、トレイ内のどの卵が注射を受けるかを選択する際に、他の基準が使用可能になる。
図1および
図2を参照すると、卵内注射機10は、胚を有する鶏卵を運ぶために孵卵トレイ(IT)8を移動させるための割出し鎖コンベヤ12を備え、さらに、IT8内の卵を処理するために、4つの割出し部分を備える。鎖コンベヤ12は、公知のサーボモータ制御によって割送ることができる。これらの部分の各々におけるIT8の最終的な正確な位置決めは、光学センサの使用によって支援され、従来技術で知られているような締付け空気アクチュエータを用いて実現される。
【0058】
割出し鎖コンベヤ12に沿って、以下の4つの処理領域または部分が存在する。第1は、コンベヤ12の平坦な搭載部14である。この部分14によって、第1のオペレータは、1度に1つずつ、コンベヤ割出しシステムと同時にIT8を搭載可能である。次の部分は、デジタルビジュアル検査部16である。この部分では、各IT8が、図示されていない、天蓋20の上部に設けられコンベヤ12に向かって下を向いているデジタルカメラを用いて調べられて、デジタルカメラによって、天蓋20においてその下方に設けられたIT8全体にわたって全ての卵の鳥瞰図を撮影可能である。オペレータに情報を提供するために、天蓋20の外壁に位置するディスプレイ18があってもよい。このディスプレイ18は、オペレータが注射されるべき卵の選択を含む、機械10の機能のいずれかを制御可能なタッチパッドでもよい。第3の部分は、卵持上げ、穿孔、および注射部22である。この部分で、IT8内の各卵に、選択的にワクチンまたは他の物質が注射される。卵はIT8からわずかに持上げられ、穴の開いたトレイの動作によって再び平らにされ、個別の電子穿孔機によって穿孔され、穿刺される。卵が穿刺されると、1回分のワクチンまたは他の物質が、多重化ポンプシステムおよび注射針を用いて各卵に供給される。これらは全て、本明細書において以下で説明される。最後の部分は、移送および取出し部24である。IT内の卵にワクチンまたは他の物質が注射されると、ITは、平坦な搭載部14からコンベヤ12の反対側の移送および取出し部24に割出される。ここで、卵はIT8から持上げられ、図示しない孵化トレイ(HT)内に配設されて、第2のオペレータが機械10から取り出す準備が整う。これらの部分14、16、22、および24の各々については、本明細書でさらに説明する。
【0059】
図3Aで示すように、平坦な搭載部14は、オペレータがIT8を割出し鎖コンベヤ12上にスライドさせることができる前面搭載テーブル26を有する。鎖コンベヤ12は、サーボモータギアボックスユニット28によって駆動され、IT8を、
図3Aおよび
図3Bに示す、連続処理部内に引き入れる取付け部27を有する。開始/停止および速度選択のためのサーボモータギアボックスユニット28のデジタル制御は、図示しない、従来技術で公知の主プログラマブルロジックコントローラ(PLC)によって行われる。
図3Cは、平坦な搭載部14およびその構成要素の代替図である。
【0060】
図4は、デジタルビジュアル検査部16を示す図である。この部分では、天蓋20は、コンベヤ12の上に位置しており、IT8がこの部分内に位置するとIT8を覆う。天蓋20は壁を有しており、これらの壁は、コンベヤ12から離れてこの上方に間隔をあけて設けられており、コンベヤ12上で天蓋20の下を通過させる。理解しやすくするため、天蓋20は、その特徴の説明を助けるために明らかに示されている。しかしながら、実際には、不透明なまたは中実の壁パネルおよび上部パネルを有することが好ましい。不透明なまたは中実の壁パネルおよび上部パネルを有することによって、天蓋20内の光源をより正確に制御して、天蓋20の上部に搭載されたデジタルカメラによって、卵をより好適に検出可能になる。天蓋20の上部の内側において、
図4では示されていないデジタルカメラが下を向いて中心に置かれているため、天蓋20内で検査のために提示されるIT8のフラットな静止画および/またはビデオストリームを撮影可能である。天蓋20の外壁はディスプレイ18を含み、これは説明されるように、情報をオペレータに提示しオペレータの入力を可能にするために、タッチパネルでもよい。
図5A、
図5Bおよび
図5Cに移行すると、この部分16と関連付けられたシステム構成要素は、天蓋20の上部パネルに搭載され下を向くデジタルカメラ30を含む。また、この部分16は、デジタル画像の撮影および分析のための、ならびに、光源の制御のためのシングルボードコンピュータ32と関連付けられる。そのようなシングルボードコンピュータ32は従来技術で知られており、その例としてRaspberry Pi 3、Beagle bone、NVIDIA TX1、またはNVIDIA TX2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのシングルボードコンピュータ32の例が、
図5Bおよび
図5Cに示されている。天蓋20はさらに、デジタル撮像プロセス中に天蓋20の内部を照射するための発光ダイオード(LED)または赤外光など、図示されていない光源を含む。シングルボードコンピュータ32には、リナックス(登録商標)オペレーティングシステムおよびOpenCVとして知られるオープンソースコンピュータビジョンパッケージなどのリアルタイムコンピュータデジタル撮像向けのプログラミング機能のライブラリをロード可能である。デジタルカメラ30は、たとえば、静止画を撮像可能な1920×1080画素の解像度を有し、毎秒30フレームのビデオ画像のストリーミングを行うSony IMX219 Color CMOS 8−megapixelでもよい。
【0061】
視覚検出システムを有するシングルボードコンピュータ32は、視覚分析シーケンスまたはアルゴリズムのためのトリガとして機能するデジタル信号によって起動される。デジタル信号は、鎖コンベヤ12にわたるIT8の割出しも行う主PLCマシンコントローラから到達する。アルゴリズムは、複数の機能を行う。これらの機能は、カメラ30の下に位置するIT8の色でデジタル画像を撮像すること、デジタル画像をグレースケールに変換すること、閾値フィルタなどの任意の必要なフィルタリングを応用すること、および、ボケ効果を応用して、輪郭ライブラリを助けてデジタル画像に存在する円および楕円を探し定量化することを含む。これにより、デジタルビジュアル検査部16は、本明細書でさらに説明するように、IT8内の全ての卵の場所のバイナリマップの生成、卵のサイズの計測、および卵の相対的な方向付けの判定を行うことができる。
【0062】
図6Aを参照すると、図示および説明の目的で、IT8の小さな部分について撮像されたデジタル画像が表示されている。
図6Aの画像は2つの卵34および36の上からの図を示し、位置の分析の一部は、単純円検出アルゴリズムを使用している。このシステムは、検出された卵34および36に最も適合する円の輪郭40の中心で重ね合わされた小さな正方形38のXおよびY座標を検出する。
図6A内の2つの卵に関してディスプレイ18に示された印字出力39は、検出された画像の各々に最も適合する円のXおよびY座標ならびに直径を提供する。
図6Bにおいて、同じ卵34および36に関して使用されるアルゴリズムは、画像の楕円の分析およびフィッティングに基づいており、検出された各卵について、さらに情報を提供する。それによって、XおよびY座標だけでなく、卵が有し得る任意の傾斜に関する情報を提供する垂直線に対する卵の向きの分析である第2の軸も判定される。
図6Bの2つの卵に関してディスプレイ18に示される印字出力41は、XおよびY座標、検出された画像に最も適合する楕円42の形状、および垂直線に対する卵の向きを提供する。楕円分析によってさらに情報が提供され、適合する楕円42が画像において卵34および36の実際の形状にさらに一致することが分かる。この情報から、IT8上に存在する卵、それらの場所、それらの直径サイズおよびそれらの相対垂直性が判定される。完全に垂直方向を向いた卵は、上からは円のように見える一方で、部分的に傾斜した卵は、上から楕円のように見える。デジタルカメラ30によって撮像された画像は、タッチスクリーンのこともあるディスプレイ18上でリアルタイムでオペレータが利用可能であり、オペレータは、卵の画像の近接性について述べることによって、卵が機械10の次の部分においてワクチンまたは他の任意の注射材料で処理されることが望まれる、または望まれないかを示すことができる。たとえばパイソンなどのプログラミング言語に翻訳されたマッピングアルゴリズムは、デジタルカメラ30による卵存在検出および画像処理の自動アルゴリズムを考慮して、ならびにオペレータ入力を考慮して、ワクチン接種されるべき卵のデジタルマップを生成する。同じシングルボードコンピュータ32は、ワクチン接種に好適な卵を検出するために展開されるニューラルネットワークを実行する。ニューラルネットワークの訓練は、機械の外部のコンピュータにおいてあらかじめ行われる。技術が進歩するにつれて将来達成されるであろうより好適な訓練は、機械のアップデートのために展開可能である。「良」および「不良」卵の画像の集合は、アルゴリズムに利用可能であって、検出された画像と比較し、深層学習および人工知能のプロセスにおいて卵を識別する。
【0063】
図7は、IT8におけるリアルタイム卵検出およびデジタル出力ベクトルの例と共に、シングルボードコンピュータ32からの映像出力のスクリーン表示43の例を示す図である。
図8は、卵のための空間よりも少ない卵を有するIT8の撮像画像45を示す拡大図の例、および、バイナリマッピングされた出力44を示す図である。バイナリマップ44において、1は検出された卵があることであり、0は、検出された卵がないことである。したがって、開示されたシステムにおいて、IT8全体にマッピングするために1つのデジタル画像45を使用可能であり、IT8における各カップのために、個別のセンサを必要としない。
【0064】
デジタルビジュアル検査部16の好ましい実現例では、システムは個々にIT8に関する平均として各卵の直径を求め、群れについての累加平均を計算する。累加平均は、公知の群れ年齢の公知の群れに対応する卵を有する多数のIT8を用いて求められる。開示された楕円ベースの検出アルゴリズムによって、システムは、個別の卵がどれだけ傾斜してIT8上に載っているかを判定することが可能になり、任意の卵配列特徴をトリガして、所与のIT8内で卵の再配列を行う。また、デジタルビジュアル検査部16によって収集される情報は、IT8内の演算された平均卵サイズに基づいて、針がどれだけ深くIT8内の卵を貫通するべきかを判定するために使用される。
【0065】
図9は、開示されたシステムで実現可能な人工知能(AI)46学習のレベルを示す図である。https://blogs.nvidia.com/blog/2016/07/29/whats-difference-artificial-intelligence-machinelearning-deep-learning-ai/も参照のこと。機械学習47は、機械10が経験と共に経時的にそのアルゴリズムを洗練する能力を表す。これには、卵の選択および分類を行うためにディスプレイ18と相互作用するオペレータによる卵の選択によって部分的に定義可能なように、「良」対「不良」卵の保管されたデータベースが含まれる。機械10は、選択基準のデータベースを生成し、これらを新しいITの卵に合わせることによって、アルゴリズムを改良し、それによって、新しい選択基準を学習し卵を選別する能力をさらに改良することが可能である。ニューラルネットワーク48:AI46技術のファミリーの中で、ニューラルネットワーク48は、公知の分類を用いた例の収集が増大するにつれて、時間の経過と共に異なる特徴および特性を学習可能な、アルゴリズムの構造およびこれらのアルゴリズム間の接続であり、AI46は、画像について分類または予測を行うためにこれらの学習を用いることができる。ディープラーニング49:ニューラルネットワーク48の多くのレイヤを含み、通常、画像のオブジェクト検出のために使用される。深層学習アルゴリズムを実行しているデジタルビジュアル検査ステーション16は、ワクチン接種に向いていないと示された卵に関してオペレータの入力を記憶し、この情報を用いて、将来のワクチン接種シーケンス/マッピングに関する識別基準としてこれらを含むように、時間の経過と共にデジタルビジュアル検査ステーション16のシステム画像収集を次第に学習させる。最終的に、ニューラルネットワークによって使用されるべき画像の集合は、大きすぎる卵、小さすぎる卵、傾斜しすぎる卵、割れた殻を有する卵、外部配管の痕跡を有する卵、機械または手で印を付けられた卵、およびワクチン接種を避けるべき他の対象のあらかじめロードされた画像を含み得る。
【0066】
最終的なデジタル出力は、シングルボードコンピュータ32のシリアル出力ポートを通って、図示しない、多重化ワクチン供給システム上のデジタルコントローラに送信されるバイナリベクトルに翻訳される。また、ビジョンシステムの結果の表示は、オペレータ/ユーザのフィードバックについて、機械10のタッチスクリーン表示18上に示すことができる。
【0067】
説明したように、第3の部分は、卵持上げ、穿孔、および注射部22である(
図10A、
図10B、および
図11を参照)。この部分において、IT8内の各卵には、選択的にワクチンまたは他の物質が注射される。この部分22の主構成要素は、穴の開いたレベリングプレート50、卵持上げプレート64およびプランジャ、複数の電磁加速スライドハンマー130、針プレート54および複数の注射針120、穿刺深さを制御する深さ制御システム、および、多重化ワクチン供給システムを含む。この部分において、次の動作が順に発生する。まず、従来技術で公知のように、穴の開いたレベリングプレート50がIT8の上に下がっていって、卵とIT8とを固定する。レベリングプレート50は、IT8上に提示される卵パターンに一致するパターンで直径が約32mmの打抜き穴52を有する。プレート50は、プレート50の下面が垂直方向に最も大きなサイズの卵の約1/4インチ上に位置するように、IT8を所定の位置に固定する態様で下げられる。本明細書で説明するように、複数の卵持上げ器が対応付けられた卵プランジャを作動させると、全ての卵が対応する打抜き穴52と係合するように移動して、卵の全ての最上部を、まさしく一定の高さに配置する。卵は上昇するにつれて、それら自体と共に穿孔機アセンブリ100をずらして、ハンマーで打たれる準備が整うことになる。
【0068】
図11に示す卵持上げアセンブリ60は、卵をIT8から持上げ、レベリングプレート50の打抜き穴52内の卵殻の最上部の高さを合わせる。理解しやすいように、少数の卵持上げ器62のみを、アセンブリ60内の複数の卵持上げ器ガイド66および卵持上げ板64に沿って示す。卵持上げアセンブリ60は、プランジャ板70、プランジャガイド66、そして最後に卵持上げ器62の相互の垂直方向移動のための空気圧式アクチュエータ68を含む。卵持上げ器62は、プランジャガイド66が装填されたばねであるため、卵を穴の開いたレベリングプレート50に押し付け、卵サイズの相違を補償可能である。ばねの圧縮率は、卵および卵プランジャの重量に打ち勝つだけでよい。なぜなら、ばねの機能は、穴の開いた板50に対して卵を保持し、卵穿孔動作に影響を及ぼさないことだからである。
【0069】
卵穿孔機124は、穿孔機上部本体80、穿孔機下部本体82、穿孔機緩衝器84、コイル86およびコイルホルダ88、光学センサを収容する光学センサホルダ90、穿孔機アセンブリ、電磁スライドハンマー、針、および穿孔機電子制御モジュールという構成要素で構成されている。これらの構成要素は、以下で説明され、
図12〜
図23に示されている。
図12は、穿孔機上部本体80の模式図である。
図13は、穿孔機下部本体82の模式図である。
図14は、穿孔機緩衝器84の模式図である。
図15Aは、本開示に係るワイヤコイル86およびコイルホルダ88の上面図であり、
図15Bはそれらの側面図である。コイル86は、銅ワイヤコイル、たとえば、21AWGワイヤである。コイルホルダ88は、電磁場に対して中性の材料、たとえばプラスチックで形成されている。好ましくは、ワイヤコイル86は、18mmのコイル内径、46mmのコイル外径、および15mmのコイル長さを有する。好ましくは、約100グラムの銅重量につき260巻の21AWGワイヤを含み、1.3オームのインピーダンスを有する。
図16は、図示しない光学センサを収容する光学センサホルダ90の模式図である。このホルダ90は、光学センサの双方の構成要素、図示しないエミッタおよびレシーバを収容するための空洞94を有する。ホルダ90の円形穴92は、光ビームをエミッタからレシーバに進ませ、センサ出力は、不透明の本体がエミッタとレシーバとの間でこの穴92を通過する際に、スイッチオンおよびオフする。
【0070】
図17は、本開示に係る穿孔機アセンブリ100を示す図である。穿孔機アセンブリ100は、注射針120が自由にその内部を移動可能なチャネルを有する。穿孔機アセンブリ100は、穿孔機短尺部分102、穿孔機本体104、および穿孔機長尺部分106から構成される、圧入または溶接可能な3ピースアセンブリである。穿孔機本体104は、卵の注射時にハンマー−130から衝撃を受ける。
図18は、上側部分に針コネクタ122を有する注射針120を、および、下側部分に電磁スライドハンマー130が搭載された穿孔機アセンブリ100を示す。
図19は、穿孔機アセンブリ100内に搭載された注射針120およびスライドハンマー130を示す。
【0071】
図20は、電磁スライドハンマー130の模式図である。ハンマー130は、卵穿孔システムの重要な機械的な構成要素である。好ましくは、ハンマー130は鋼、中低炭素鋼であるC1018から形成される。その材料組成は98重量%を超えて鉄を多く含んでおり、コイル86によって生じる電磁加速力によって、ハンマー130を容易に動かす。ハンマー130の質量は、ちょうど48グラムである。スライドハンマー130の最終速度およびその重量は、穿孔機本体104上に伝えられる衝撃によって、穿孔機アセンブリ100が卵にひびを入れることなく卵殻に穴を形成できるようになっている。電磁加速によって得られるハンマーの勢いは、ほんの一瞬存在する衝撃力に変換され、きわめて速い。これは、mがハンマーの質量であり、Vfが最終速度であり、Viが初速であり、Fが力であり、dtが時間差である場合、式 m(Vf−Vi)=F.dtによって示される。衝撃は、はずみの変化の結果生じるものである。
図21〜
図23は、組立ての様々な段階の卵穿孔機124およびその構成要素を示す図である。
図21は、完全に組立てられた卵穿孔機124を示す図である一方で、
図22は、上部本体80、下部本体82、緩衝器84、および光学センサホルダ90を含む卵穿孔機124の外側構造構成要素を示す図である。最後に、
図23は、ハンマー130と注射針20と共に穿孔機アセンブリ100およびその3つの部分を含む内部構成要素、ならびに、これらが、ハンマー130がコイル86の起動/停止に応じて穿孔機長尺部分106を自由に上下にスライド可能な状態で卵穿孔機124に配置されている態様を示す図である。
【0072】
ひびのない卵を穿孔しないための最適なパラメータの判定は、
図24Aに示す装置を使用して一連のステップで行われた。ステップ1は、卵に正確に穴が開けられるように、卵穿孔機の上に所与の質量を落下させるために必要な高さの経験に基づく判定である。知られているように、mが質量、hが高さ、gが重力場力である場合、高さhでの質量mの物体の重力位置エネルギーEpは、公式Ep=mghで与えられる。長さが異なる複数の管132を使用して、落下試験が行われた。卵殻穿穴の質および一貫性を観察した。卵にひびを入れずに穿孔した場合の一貫性の結果は、約0.7メートル/秒から始まる速度で得られた。ハンマー速度の計算およびグラフを、
図24Bに示す。
【0073】
実験データは、マイクロ秒で光学センサの連結によってハンマーが通過する間の時間の測定値であった。計算された値は、重力位置エネルギーが運動エネルギーに変化するエネルギー保存を考慮したものである。式は、mgh=1/2m(Vf)
2である。
【0074】
図25は、本開示のハンマーシーケンスの間に起こっていることを模式的に示す図である。コイル86は、ハンマー130を下降位置から上方に加速し、ハンマー130は、通電されたコイル86の中央に位置しようとする。そこで、コイル86は、ハンマー130を上方に加速し、その後、下向きの下降において加速する。穿孔機アセンブリ100は、卵穿孔機124内で浮いている。ハンマー130は、起動されると穿孔機本体104にぶつかるだけであるため、機械装置全体が従来技術のシステムよりも頑健でなくなることがある。ハンマー130は電磁スライドハンマー130であるため、その動作は、コイル86を制御することによって変調可能である。ハンマー130を起動させるために、コイル86を通してパルスを発射し、これによって、ハンマー130が上方に引っ張られ、穿孔機アセンブリ100の長尺部分106が上方に上がり、パルスは停止され、ハンマー130は上方に移動し続けるが、引力はその後上方への移動の速度を低減させ、ハンマー130を下方に落とす。ハンマー130は、落下する際にホルダ90の光学センサに達し、コイル86を通じて送られた他のパルスが存在し、これによって、ハンマー130はさらに下方に加速して穿孔機本体104に当たる。パルスはミリ秒台ときわめて短いが、50〜80アンペアと高いアンペアである。そのため、高電流の狭いウインドウパルスである。これを促進するため、各卵穿孔機124は図示しないキャパシタと関連付けられて、コイル86を通電する。部分22における複数の卵穿孔機124は、主PLCからの1つのデジタル信号で同時に穿孔するようにトリガされる。キャパシタは、IT8が機械10内を移動すると充電も行い、短い時間枠できわめて高い電流を許可し、その後、所与のIT8についてのプロセスの残りの間、各キャパシタは、7〜9秒の間、最大でわずか0.08アンペアを使用することによって再充電する。
【0075】
第2の改良ステップにおいて、最終的な速度検出に関するセットアップの実現は、速度測定値を稼動している穿孔機のプロトタイプに再現可能になるように、穿孔機の製造に用いられるものと同じハンマー材料および管を用いて実施および確認された。電磁コイル86およびハンマー加速器は、以前のステップで適切と認められた速度に等しい速度またはそれより速い速度で質量mの持上げおよび落下を行うためのセットアップであるが、今では、質量がより低い位置から始まる状態で、短い管でこれを達成するように最適化されている。最終速度は、約2.0m/sに設定された。
【0076】
図26は、注射針アセンブリをより詳細に示す図である。好ましくは、注射針アセンブリは19gaの注射針120であり、それを供給ポンプに接続するためのバーブ継手126を含み、それを針板54に接続させるようにねじ切り128されている。
図27Aおよび
図27Bは、卵穿孔機124の電子制御モジュール140の部分を示す図である。穿孔機124の電子制御モジュール140は、各コイル86と関連付けられた、好ましくは各々の10,000μF、35Vのキャパシタの充電および放電を処理する。キャパシタの充電は、約7〜9秒の期間に起こる。全てのキャパシタの放電は、PLC制御からの外部24ボルト信号によってトリガされる。マイクロコントローラは、卵穿孔機124上のホルダ90の光学センサを乗り越えることが可能になるぐらいの態様でハンマー130がまず上方に加速されるように、コイル86を通じてキャパシタの充電と放電とを調節する。キャパシタの放電は、コイル86の電磁力による減速に損なわれることなく、ハンマー130が上昇し続けて運動エネルギーを重力位置エネルギーに変換できるようにすることであると解釈される。ハンマー130が重力加速度によって助けられて戻ると、かつ、光学センサがハンマー130の下側縁部を検出すると、コントローラは再びコイル86を通電して、今度はハンマー130をさらに加速して、今度は下降して、効果的でひびのない卵殻穿孔関する目標速度に達する。ハンマー130が穿孔機本体104に到達するまでに、ハンマー130の最終速度は、ハンマー130が7インチの高さから落下されると重力の影響のみによって達するであろう速度に等しくなる。穿孔機アセンブリ100は、上述のように、電子制御スライドハンマーを構成する。上述のセットアップは、予測可能なデジタル制御で衝突するために自立型の相補的なアクチュエータとしても説明可能である。予測可能な制御は、外部の反力を生じず、構造的な支持物を必要としない、衝撃試験に対するまたは「落下試験」の再現に対する抵抗の分野での応用のような、異なる応用に関してスケーラブルである。
【0077】
図28は、図面を分かりやすくするために1つの卵穿孔機124のみを示す。卵穿孔機124によって卵に穴が開けられると、複数の注射針120を保持している針板54は、下降してIT8内の識別された卵の全てに対して同時に針穿刺を行う。針板54を下降するアクチュエータは、サーボ制御されて、平均卵サイズによって決まる、または、IT8内で提示された卵についての群れの年齢によって間接的に決まる目標距離だけ下降する。
【0078】
上述のように、機械10は、1つの弁なし主ポンプ150および複数の回転弁152から構成される多重化ワクチン/流体供給システムを備える(
図29Aおよび
図29Bを参照)。
図29Aは弁なし主ポンプ150を示す図であり、
図29Bは、10の出力を有する回転弁152の例を示す図である。そのため、1つの弁なし主ポンプ150は、各々が10の出力を有する8つの回転弁152に供給し、それゆえ、ほぼ同時に80の針の要求に応じることが可能である。システムによって、80の針の全容量は、2秒の期間で注射サイクルを経る。
【0079】
8、10、12および14の出力を有するバルブを考慮して複数のポンプ/バルブの組合せを分析し、73の卵/トレイを有するIT8の要求に応える機械および150の卵/トレイの要求に応える他の機械があることを念頭におくと、異なるフォーマットに応じるモジュラー構成要素を容易に構築するために10の出力回転弁152を選択することが便利である。本発明のシステムの開発中に本発明の発明者によって、2秒で12の出力サイクルを有することが可能であるとすでに示されており、それゆえ、1サイクルにつき10の出力を有するシステムを設計することによって、バッファは、機械10のサイクル時間についての予期せぬ微小な遅れを補償する。
【0080】
その模式図が
図30に示されるワクチン供給システムモジュール154は、主PLCベース機械コントローラと通信して、かつ、デジタルビジュアル検査ステーション16と通信して、IT8内に卵があることを検出する能力を有する。2値情報は、卵があることを数字1で表し、卵がないことを数字0で表す。CM73フォーマットの機械10について、IT8は73個の卵しか保持しないため、針プレート54上には73個の針のみが必要になる。ワクチン供給システムの1サイクルは、IT8内の可能な最大卵個数である73個にワクチン接種を行うよりも十分多い、80個の卵に十分な容量を有している。したがって、ワクチン供給システムの7つの出力は、空にされる/隠される必要があり、システムは、これらをXとみなす。本開示に係るワクチン供給システムモジュール154の模式図について、
図30を参照する。
図30は、図を見やすくするために4つの回転弁152の接続のみを示し、8つの構成要素全ては示していない。2値情報は、8つの個々のPCBコントローラに分布されて選択的なワクチン接種を行い、提供された情報は、所与の回転弁について、111101111Xと示される。n=1、2、3・・・8であるモジュール方式の「PCBコントローラn」の各々が対応する9または10の針についてワクチン供給サイクルを終了すると、主PCBコントローラは、「サイクル終了」状態をPLCベースの機械制御に渡して、次の卵の集合を針板54の下に設けて新しい注射サイクルを開始する。
図31を参照する。注射サイクル中は、弁なし主ポンプ150は連続動作する一方で、回転弁152は、断続的に回転して、それら自体を数「1」の印を有する次の出力ポートに再位置決めする。
図32のグラフ画像を参照する。回転弁は、注射針120の下に卵がないため、バイナリマップにおいて0と印されたポートを飛ばして進み、注射針120がないため、Xと印されたポートを飛ばして進む。
図33は、ワクチン供給システムモジュール154のコントローラの他の部分を示す図である。
【0081】
機械10の全体制御アーキテクチャ156の模式図を
図34に示す。全体制御アーキテクチャ156は、図示するように、複数のモジュールを備える。
【0082】
最終的なステーションで、卵は、IT8から図示しない孵化トレイに運ばれる。これは、吸引カップおよび他の卵把持装置などの公知の移送機構のいずれかを使用して実現可能である。また、機械10は、デジタルビジュアル検査ステーションにおいて得られた情報を使用して卵を選択的に持上げることが可能であり、ワクチン接種が行われた卵だけを移送する。
【0083】
また、本発明の機械10は、
図35に示すように、新規な卵把持装置160と卵穿孔機124との組合せである装置を含む。卵把持装置160は卵を持上げ、卵には、IT8からHTに移送される際に卵穿孔機124によってワクチン接種が行われる。
図35に示していないが、この把持、ワクチン接種、および移送は、卵把持装置160および卵穿孔機124を制御するためにロボットアームを用いて遂行される。卵把持装置160の部分は、
図36にさらに示され、スロット164によって分離されたジグザグリブ162の連続構造物を含む。ジグザグリブ162は、1つの連続した構造で上下に周囲でジグザグして、卵の上で押され殻を破らずに卵を持上げしっかり保持する際にその直径を広げることが可能なばねのような特徴を有している。
図37に示すように、卵把持装置160は、卵排出装置166と組み合わされ、この組合せによって、卵の持上げおよびHTへの移送が可能になる。
【0084】
図38A〜
図38Fは、本開示に係るキャパシタおよびその充電の様々な局面を示す図である。コイル86と関連付けて使用されるキャパシタがある。これらには、
図38Aのキャパシタ充電仕様、
図38Bのタイムチャートの例、
図38Cの24Vの供給に関する放電観察、
図38Dの20Vの供給に関する放電観察、
図38Eの18Vの供給に関する放電観察、および、
図38Fの16Vの供給に関する放電観察が含まれる。
図39は、穿孔機モジュール170の模式図である。
図40は、本開示に係る卵穿孔機の回路構成の模式図である。
【0085】
本開示に係るシステムに含まれ得る光学特徴は、1)暗室でのデジタルビジュアル検査部16の動作に関する暗視デジタルカメラ、2)デジタルビジュアル検査部16における卵トレイの各ポケット内での個別の卵傾斜の判定、および3)検査後のIT8での選択的な卵配列という他の特徴のうちの1つまたは複数である。
【0086】
上述の開示は、関連する法的基準に準拠して記載されているため、その記載は、実際は限定的というよりは例示的なものである。開示された実施の形態の変形及び変更は、当業者にとって自明であり得、本開示の範囲に含まれ得る。それゆえ、本開示が提供する法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ定めることができる。
【0087】
実施形態の上述の説明は、図示および説明の目的でなされたものであり、網羅的であることを意図したものでもなければ、本開示を制限することを意図したものでもない。特定の実施形態の個別の要素または特徴は、一般に当該特定の実施形態に限定されるわけではなく、該当する場合には、互換性があり、詳細に図示または説明されていなくても、選択された実施形態において使用可能である。同様のことが多くの態様で異なり得る。そのような変形は、開示からの逸脱とみなされるべきではなく、そのような修正は全て、開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0088】
本開示が完全になるように実施形態の例が提供されており、当業者にそれらの範囲を十分伝えられる。本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な構成要素、装置、および方法の例などの多数の具体的な詳細が説明される。具体的な詳細を用いる必要がないこと、実施形態の例が複数の異なる形式で実現可能であること、および、いずれも本開示の範囲を制限すると解釈されるべきではないことは当業者に明らかである。複数の実施形態の例では、公知のプロセス、公知の装置構造、および公知の技術について詳細に説明していない。