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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-75168(P2020-75168A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】推定装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20200424BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20200424BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   A61B5/107 300
   A61B5/11 110
   A61B5/113
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-19086(P2020-19086)
(22)【出願日】2020年2月6日
(62)【分割の表示】特願2017-63507(P2017-63507)の分割
【原出願日】2017年3月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-133283(P2016-133283)
(32)【優先日】2016年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中山 武司
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 翔一
(72)【発明者】
【氏名】本間 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】笹川 大
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB12
4C038VB14
4C038VB25
4C038VB28
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】無線信号を利用することで、生体の姿勢の推定を、短時間かつ高精度に行うことができるセンサーなどを提供する。
【解決手段】推定装置であって、プロセッサが送信信号を送信するN個の送信アンテナ素子21により送信されたN個の送信信号のうち生体により反射された反射信号を含み、M個の受信アンテナ素子31のそれぞれにより受信されたN個の受信信号を取得し、各受信信号から、各送信アンテナ素子と、各受信アンテナ素子との間の伝搬特性を示すN×Mの第1行列から所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出し、第2行列を用いて生体の存在する位置を推定し、推定した位置と、送信および受信アンテナの位置とに基づいて生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、算出されたRCS値と、RCS値および生体の姿勢の対応関係を示す情報とを用いて、生体の姿勢を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定装置であって、
前記推定装置が備えるプロセッサが、
生体が存在しうる所定範囲に対して送信信号をそれぞれが送信するN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子により送信された前記N個の送信信号のうちの一部の送信信号が前記生体により反射された反射信号を含み、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子のそれぞれにより受信されたN個の受信信号を取得し、
前記M個の受信アンテナ素子のそれぞれにおいて所定期間で受信された前記N個の受信信号のそれぞれから、前記N個の送信アンテナ素子それぞれと、前記M個の受信アンテナ素子それぞれとの間の伝搬特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出し、
前記第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、前記生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する前記第2行列を抽出し、
前記第2行列を用いて、前記N個の送信アンテナ素子および前記M個の受信アンテナ素子に対する前記生体の存在する位置を推定し、
前記推定した位置と、前記N個の送信アンテナ素子を有する送信アンテナの位置と、前記M個の受信アンテナ素子を有する受信アンテナの位置と、に基づいて、前記生体と前記送信アンテナとの距離を示す第1距離、および、前記生体と前記受信アンテナとの距離を示す第2距離を算出し、
前記第1距離および前記第2距離を用いて、前記生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、
前記算出されたRCS値と、前記推定装置が備えるメモリに記憶されている、RCS値および前記生体の姿勢の対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体の姿勢を推定する、
推定装置。
【請求項2】
前記所定期間は、前記生体の呼吸、心拍、および、体動の少なくとも1つの周期の略半分である、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記生体が、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの並び方向に垂直な方向に対して正対している姿勢であるか否かを推定する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記Nは3以上の自然数であり、
前記N個の送信アンテナ素子のうち少なくとも3個の送信アンテナ素子は、それぞれ、鉛直方向および水平方向の異なる位置に配置され、
前記Mは3以上の自然数であり、
前記M個の受信アンテナ素子のうち少なくとも3個の受信アンテナ素子は、それぞれ、鉛直方向および水平方向の異なる位置に配置され、
前記対応関係を示す情報は、前記N個の送信アンテナ素子および前記M個の受信アンテナ素子に対する前記生体の存在する鉛直方向における位置である鉛直位置、RCS値、および、前記生体の姿勢の対応関係を示し、
前記対応関係を示す情報において対応付けられている前記生体の姿勢は、直立、椅座、胡坐、および、仰臥を含み、
前記プロセッサは、
前記第2行列を用いて、前記鉛直位置を含む3次元位置を推定し、
前記推定した前記3次元位置と、前記算出されたRCS値と、前記メモリに記憶されている、前記対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体が、直立、椅座、胡坐、および、仰臥のいずれの姿勢であるかを推定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項5】
コンピュータに、
生体が存在しうる所定範囲に対してN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子を用いて送信されたN個の送信信号の一部の送信信号が前記生体により反射された反射信号を含み、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子のそれぞれを用いて受信されたN個の受信信号を取得し、
前記M個の受信アンテナ素子のそれぞれにおいて所定期間で受信された前記N個の受信信号のそれぞれから、前記N個の送信アンテナ素子それぞれと、前記M個の受信アンテナ素子それぞれとの間の伝搬特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出し、
前記第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、前記生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する前記第2行列を抽出し、
前記第2行列を用いて、前記N個の送信アンテナ素子および前記M個の受信アンテナ素子に対する前記生体の存在する位置を推定し、
前記推定した位置と、前記N個の送信アンテナ素子を有する送信アンテナの位置と、前記M個の受信アンテナ素子を有する受信アンテナの位置と、に基づいて、前記生体と前記送信アンテナとの距離を示す第1距離、および、前記生体と前記受信アンテナとの距離を示す第2距離を算出し、
前記第1距離および前記第2距離を用いて、前記生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、
前記算出されたRCS値と、前記コンピュータが備えるメモリに記憶されている、RCS値および前記生体の姿勢の対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体の姿勢を推定する処理を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線信号を利用することで生体の姿勢を推定する推定装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
人物の位置などを知る方法として、無線信号を利用する方法が検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1にはドップラーセンサを用いた生体検出の方法、特許文献2にはドップラーセンサとフィルタとを用いた人の動作や生体情報の検知方法が開示されている。特許文献3には、フーリエ変換を用いてドップラーシフトを含む成分を解析することで検出対象となる人物の位置や状態を知ることができることが開示されている。また、特許文献4には、複数アンテナのチャネル情報、各種センサ情報を元に機械学習により生体の位置や状態を推定する方法が開示されており、特許文献5には複数アンテナ、超音波レーダ、複数アンテナによる生体の状態推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014−512526号公報
【特許文献2】国際公開第2014/141519号
【特許文献3】特開2015−117972号公報
【特許文献4】特開2014−190724号公報
【特許文献5】特開2005−292129号公報
【特許文献6】特開2001−159678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無線信号を利用することで、生体の姿勢を推定する精度を向上させるには、さらなる改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る推定装置は、推定装置であって、前記推定装置が備えるプロセッサが、生体が存在しうる所定範囲に対して送信信号をそれぞれが送信するN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子により送信された前記N個の送信信号のうちの一部の送信信号が前記生体により反射された反射信号を含み、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子のそれぞれにより受信されたN個の受信信号を取得し、前記M個の受信アンテナ素子のそれぞれにおいて所定期間で受信された前記N個の受信信号のそれぞれから、前記N個の送信アンテナ素子それぞれと、前記M個の受信アンテナ素子それぞれとの間の伝搬特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出し、前記第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、前記生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する前記第2行列を抽出し、前記第2行列を用いて、前記N個の送信アンテナ素子および前記M個の受信アンテナ素子に対する前記生体の存在する位置を推定し、前記推定した位置と、前記N個の送信アンテナ素子を有する送信アンテナの位置と、前記M個の受信アンテナ素子を有する受信アンテナの位置と、に基づいて、前記生体と前記送信アンテナとの距離を示す第1距離、および、前記生体と前記受信アンテナとの距離を示す第2距離を算出し、前記第1距離および前記第2距離を用いて、前記生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、前記算出されたRCS値と、前記推定装置が備えるメモリに記憶されている、RCS値および前記生体の姿勢の対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体の姿勢を推定する。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、生体が存在しうる所定範囲に対してN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子を用いて送信されたN個の送信信号の一部の送信信号が前記生体により反射された反射信号を含み、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子のそれぞれを用いて受信されたN個の受信信号を取得し、前記M個の受信アンテナ素子のそれぞれにおいて所定期間で受信された前記N個の受信信号のそれぞれから、前記N個の送信アンテナ素子それぞれと、前記M個の受信アンテナ素子それぞれとの間の伝搬特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出し、前記第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、前記生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する前記第2行列を抽出し、前記第2行列を用いて、前記N個の送信アンテナ素子および前記M個の受信アンテナ素子に対する前記生体の存在する位置を推定し、前記推定した位置と、前記N個の送信アンテナ素子を有する送信アンテナの位置と、前記M個の受信アンテナ素子を有する受信アンテナの位置と、に基づいて、前記生体と前記送信アンテナとの距離を示す第1距離、および、前記生体と前記受信アンテナとの距離を示す第2距離を算出し、前記第1距離および前記第2距離を用いて、前記生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、前記算出されたRCS値と、前記コンピュータが備えるメモリに記憶されている、RCS値および前記生体の姿勢の対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体の姿勢を推定する処理を実行させる。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係るセンサーは、センサーであって、生体が存在しうる所定範囲に対して送信信号をそれぞれが送信するN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子を有する送信アンテナと、前記N個の送信アンテナ素子により送信された前記N個の送信信号のうちの一部の送信信号が前記生体により反射された反射信号を含むN個の受信信号をそれぞれが受信するM個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子を有する受信アンテナと、回路と、メモリと、を備え、前記回路は、前記M個の受信アンテナ素子のそれぞれにおいて所定期間で受信された前記N個の受信信号のそれぞれから、前記N個の送信アンテナ素子それぞれと、前記M個の受信アンテナ素子それぞれとの間の伝搬特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出し、前記第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、前記生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する前記第2行列を抽出し、前記第2行列を用いて、前記センサーに対する前記生体の存在する位置を推定し、前記推定した位置と、前記送信アンテナの位置と、前記受信アンテナの位置と、に基づいて、前記生体と前記送信アンテナとの距離を示す第1距離、および、前記生体と前記受信アンテナとの距離を示す第2距離を算出し、前記第1距離および前記第2距離を用いて、前記生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、前記算
出されたRCS値と、前記メモリに記憶されている、RCS値および前記生体の姿勢の対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体の姿勢を推定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線信号を利用することで、生体の姿勢の推定を、短時間かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1におけるセンサーの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1における回路およびメモリの機能的な構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1における対応関係を示す情報の一例を示す。
図4図4は、実施の形態1におけるセンサーの動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態2におけるセンサーの構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は実施の形態2における回路およびメモリの機能的な構成を示すブロック図である。
図7図7は、実施の形態2における対応関係を示す情報の一例を示す。
図8図8は、実施の形態2のセンサーの効果を確認するために実施した実験の概要を示す図である。
図9図9は、図8で示した実験系を用いた実験結果を示す図である。
図10図10は実験結果から得られた第1RCS範囲〜第4RCS範囲の具体例、および、第1高さ範囲〜第4高さ範囲の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の基礎となった知見)
無線信号を利用した生体の状態推定に関する従来技術について、発明者らは詳細な検討を行った。その結果、特許文献1および特許文献2の方法では、人物の在、不在は検知可能だが、人物の存在する方向、位置、大きさ、姿勢などを検出することはできない問題があることがわかった。
【0011】
また、特許文献3の方法では、人物などの生体が存在する方向や生体が存在する位置を短時間かつ高精度に検出することは困難であるという問題があることがわかった。なぜなら、生体活動由来のドップラー効果による周波数変化は極めて小さく、フーリエ変換によってこの周波数変化を観測するためには、生体が静止した状態で長時間(例えば数十秒)の観測が必須であるからである。また、一般的に、生体は数十秒にわたって同じ姿勢や位置を継続することは少ないからである。
【0012】
さらに、特許文献4では使用者ごとに機械学習をしないといけないという課題があり、また、特許文献5は、天井の広範囲に複数の超音波アンテナを設置する取り付け課題、コスト課題があることがわかった。
【0013】
発明者らは、以上の課題に対して研究を重ねた結果、異なる位置に置かれたアンテナ素子を含む送信アンテナから送信され、生体によって反射された反射信号の伝搬特性と散乱断面積とを用いることにより、当該生体が存在する方向、位置、大きさ、姿勢などの推定を短時間かつ高精度に行うことが可能であることを見出し、本開示に至った。
【0014】
すなわち、本発明の一態様に係るセンサーは、センサーであって、生体が存在しうる所定範囲に対して送信信号をそれぞれが送信するN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子を有する送信アンテナと、前記N個の送信アンテナ素子により送信された前記N個の送信信号のうちの一部の送信信号が前記生体により反射された反射信号を含むN個の受信信号をそれぞれが受信するM個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子を有する受信アンテナと、回路と、メモリと、を備え、前記回路は、前記M個の受信アンテナ素子のそれぞれにおいて所定期間で受信された前記N個の受信信号のそれぞれから、前記N個の送信アンテナ素子それぞれと、前記M個の受信アンテナ素子それぞれとの間の伝搬特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出し、前記第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、前記生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する前記第2行列を抽出し、前記第2行列を用いて、前記センサーに対する前記生体の存在する位置を推定し、前記推定した位置と、前記送信アンテナの位置と、前記受信アンテナの位置と、に基づいて、前記生体と前記送信アンテナとの距離を示す第1距離、および、前記生体と前記受信アンテナとの距離を示す第2距離を算出し、前記第1距離および前記第2距離を用いて、前記生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、前記算出されたRCS値
と、前記メモリに記憶されている、RCS値および前記生体の姿勢の対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体の姿勢を推定する。
【0015】
このため、生体が存在する位置および当該位置における生体の姿勢の推定を短時間かつ高精度に行うことができる。
【0016】
また、前記所定期間は、前記生体の呼吸、心拍、および、体動の少なくとも1つの周期の略半分であってもよい。
【0017】
このため、生体が存在する位置および当該位置における生体の姿勢の推定を効果的に行うことができる。
【0018】
また、前記回路は、前記生体が、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの並び方向に垂直な方向に対して正対している姿勢であるか否かを推定してもよい。
【0019】
また、前記Nは3以上の自然数であり、前記N個の送信アンテナ素子のうち少なくとも3個の送信アンテナ素子は、それぞれ、鉛直方向および水平方向の異なる位置に配置され、前記Mは3以上の自然数であり、前記M個の受信アンテナ素子のうち少なくとも3個の受信アンテナ素子は、それぞれ、鉛直方向および水平方向の異なる位置に配置され、前記対応関係を示す情報は、前記センサーに対する前記生体の存在する鉛直方向における位置である鉛直位置、RCS値、および、前記生体の姿勢の対応関係を示し、前記対応関係を示す情報において対応付けられている前記生体の姿勢は、直立、椅座、胡坐、および、仰臥を含み、前記回路は、前記第2行列を用いて、前記鉛直位置を含む3次元位置を推定し、前記推定した前記3次元位置と、前記算出されたRCS値と、前記メモリに記憶されている、前記対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体が、直立、椅座、胡坐、および、仰臥のいずれの姿勢であるかを推定してもよい。
【0020】
このため、生体が存在する3次元位置および当該3次元位置における生体の姿勢の推定を短時間かつ高精度に行うことができる。
【0021】
なお、本発明は、装置として実現するだけでなく、このような装置が備える処理手段を備える集積回路として実現したり、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを示す情報、データまたは信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データおよび信号は、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の通信媒体を介して配信してもよい。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1におけるセンサーの構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、センサー10は、送信アンテナ20、受信アンテナ30、回路40およびメモリ41を備える。センサー10は、ヒト等の生体50に対して送信アンテナ20よりマイクロ波を発射し、受信アンテナ30にて生体50で反射された反射波を受信する。ここで、送信アンテナ20に対して任意に設定された第1基準方向と、送信アンテナ20から生体50への方向である第1生体方向とのなす角をθとする。同様に、受信アンテナ30に対して任意に設定された第2基準方向と、受信アンテナ30から生体50への方向である第2生体方向とのなす角をθとする。なお、第1基準方向、第1生体方向、第2基準方向、および、第2生体方向は、水平面上の方向である。
【0025】
送信アンテナ20は、N個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子21を有する。送信アンテナ20は、N個の送信アンテナ素子21が水平面上の第1所定方向に並んで配置されることで構成されるアレーアンテナを有する。N個の送信アンテナ素子21のそれぞれは、生体が存在しうる所定範囲に対して送信信号を送信する。つまり、送信アンテナ20は、異なるN箇所の位置からN個の送信信号を所定範囲に対して送信する。なお、生体が存在しうる所定範囲とは、センサー10が生体の存在を検知する検知範囲である。
【0026】
N個の送信アンテナ素子21のそれぞれは、具体的には、ヒトなどの生体50に対して、マイクロ波を送信信号として発射する。N個の送信アンテナ素子21は、送信アンテナ素子21毎に異なる変調処理が行われた信号を送信信号として送信してもよい。また、N個の送信アンテナ素子21のそれぞれは、変調信号または無変調の信号を逐次的に切り替えて送信してもよい。変調処理は、送信アンテナ20により行われても良い。このように、N個の送信アンテナ素子21毎に、N個の送信アンテナ素子21から送信される送信信号をそれぞれ異なる送信信号とすることで、受信アンテナ30により受信された送信信号を送信した送信アンテナ素子21を特定できる。このように、送信アンテナ20は、変調処理を行うための回路を含んでいてもよい。
【0027】
受信アンテナ30は、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子31を有する。受信アンテナ30は、M個の受信アンテナ素子31が水平面上の第2所定方向に並んで配置されることで構成されるアレーアンテナを有する。M個の受信アンテナ素子31のそれぞれは、N個の送信信号のうち生体50により反射された信号である反射信号を含むN個の受信信号を受信する。受信アンテナ30は、マイクロ波からなる受信信号を周波数変換し、低周波数信号に変換する。受信アンテナ30は、低周波数信号に変換することにより得られた信号を回路40に出力する。つまり、受信アンテナ30は、受信信号を処理するための回路を含んでいてもよい。
【0028】
回路40は、センサー10を動作させる各種処理を実行する。回路40は、例えば、制御プログラムを実行するプロセッサと、当該制御プログラムを実行するときに使用するワークエリアとして用いられる揮発性の記憶領域(主記憶装置)とにより構成される。揮発性の記憶領域は、例えば、RAM(Randdom Access Memory)である。なお、回路40は、センサー10を動作させる各種処理を行うための専用回路により構成されていてもよい。つまり、回路40は、ソフトウェア処理を行う回路であってもよいし、ハードウェア処理を行う回路であってもよい。
【0029】
メモリ41は、不揮発性の記憶領域(補助記憶装置)であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などである。メモリ41は、例えば、センサー10を動作させる各種処理に利用される情報を記憶している。
【0030】
次に、回路40の機能的な構成について図2を用いて説明する。
【0031】
図2は実施の形態1における回路およびメモリの機能的な構成を示すブロック図である。
【0032】
回路40は、複素伝達関数算出部410と、生体成分算出部420と、位置推定処理部430と、RCS算出部440と、姿勢推定部450とを有する。
【0033】
複素伝達関数算出部410は、低周波信号に変換された受信信号から複素伝達関数を算出する。複素伝達関数とは、各送信アンテナ素子21と各受信アンテナ素子31との間の伝搬損失および位相回転を表すものである。複素伝達関数は、送信アンテナ素子数がN個であり、受信アンテナ素子数がM個の場合、M×Nの成分を持つ複素行列となる。以降、この複素行列を複素伝達関数行列と呼ぶ。推定した複素伝達関数行列は、生体成分算出部420に出力される。つまり、複素伝達関数算出部410は、M個の受信アンテナ素子31のそれぞれにおいて所定期間で受信された複数の受信信号のそれぞれから、N個の送信アンテナ素子21それぞれと、M個の受信アンテナ素子31それぞれとの間の伝播特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出する。
【0034】
生体成分算出部420は、生体50を経由した受信信号から得られた複素伝達関数行列成分と、生体50を経由していない受信信号から得られた複素伝達関数行列成分とに分離する。生体50を経由した成分とは、生体活動により時変動する成分である。よって、生体50を経由した成分は、例えば、生体50以外は静止しているものとした場合、複素伝達関数行列の成分を時間方向にフーリエ変換することで得られた成分から、直流以外の成分を取り出すことによって抽出することが可能である。また、生体50を経由した成分は、例えば、生体50が所定範囲に存在しないときに観測された結果との差分が所定の閾値を超えている成分を取り出すことによって抽出することも可能である。このように、生体成分算出部420は、生体50を経由した反射信号を含む受信信号から得られた複素伝達関数行列成分を抽出することで、抽出した複素伝達関数行列成分を生体成分として算出する。つまり、生体成分算出部420は、第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する第2行列を抽出する。所定周波数範囲は、例えば、上述した生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動に由来する周波数である。所定周波数範囲は、例えば、0.1Hz以上3Hz以下の範囲の周波数である。これにより、心臓、肺、横隔膜、内蔵の動きによる生体50の部位のバイタル活動、または、手、足などによるバイタル活動の影響を受けた生体成分を抽出できる。なお、心臓、肺、横隔膜、内蔵の動きによる生体50の部位とは、例えば、人のみぞおちである。
【0035】
ここで生体成分は、M×Nの成分を持つ行列であり、所定期間に受信アンテナ30において観測された受信信号から得られる複素伝達関数から抽出される。このため、生体成分は、周波数応答あるいは時間応答情報を持っているものとする。なお、所定期間は、生体の呼吸、心拍、および、体動の少なくとも1つの周期の略半分の期間である。
【0036】
生体成分算出部420で算出された生体成分は、位置推定処理部430に出力される。位置推定処理部430は、算出された生体成分を用いて生体の位置推定を行う。つまり、位置推定処理部430は、第2行列を用いて、センサー10に対する生体50の存在する位置を推定する。位置推定には、送信アンテナ20からの出発角θと受信アンテナ30への到来角θとの両方の角度を推定し、推定した出発角θおよび到来角θから三角法によって生体50の位置を推定する。
【0037】
RCS算出部440は、生体成分と推定された位置とを用いて散乱断面積(RCS:Radar Cross Section)を算出する。RCS算出部440は、具体的には、散乱断面積を計算するために、推定された位置と、送信アンテナ20の位置と、受信アンテナ30の位置と、に基づいて、生体50と送信アンテナ20との距離を示す距離RT、および、生体50と受信アンテナ30との距離を示す距離RRを算出する。RCS算出部440は、算出した距離RTおよび距離RRから伝搬距離を算出し、算出した伝播距離と生体成分の強度とを用いてRCSを算出する。なお、送信アンテナ20の位置と、受信アンテナ30の位置とは、メモリ41に予め記憶されていてもよい。
【0038】
姿勢推定部450は、RCS算出部440により算出されたRCS値と、メモリ41に記憶されている、RCS値および生体50の姿勢の対応関係を示す情報42と、を用いて、生体50の姿勢を推定する。なお、メモリ41に記憶されているRCS値および生体50の姿勢の対応関係を示す情報42とは、図3に示すように、仰臥、胡坐、椅座および直立で示される各姿勢に予め対応付けられたRCS値の範囲を示す情報である。なお、仰臥は、仰向けの姿勢を示し、椅座は、椅子に座っている姿勢を示す。
【0039】
例えば、仰臥は、第1RCS範囲と対応付けられており、胡坐は、第2RCS範囲と対応付けられており、椅座は、第3RCS範囲と対応付けられており、直立は、第4RCS範囲と対応付けられている。なお、第1RCS範囲〜第4RCS範囲は、それぞれ、異なるRCS値の範囲である。
【0040】
次に実施の形態1のセンサー10の動作原理の詳細を、数式を用いて説明する。なおここでは、フーリエ変換を用いて生体成分を抽出する方法について示す。ここで説明する処理は、回路40により行われる。送信アンテナ20と受信アンテナ30との間の複素伝達関数行列を、
【数1】
と定義する。ここでtは時刻を表す。式1の各成分をフーリエ変換すると、
【数2】
のような周波数応答行列が得られる。ここでfは周波数を表しており、周波数応答行列の各成分は複素数である。この周波数応答行列には、生体50を経由する伝搬成分と、生体50以外を経由する伝搬成分との両方が含まれている。生体以外が静止していると考えられる場合、周波数応答行列の直流成分、すなわちG(0)は生体以外の伝搬成分を主として含んでいるものと考えられる。これは、生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動によってドップラーシフトが発生するため、生体を経由する成分はf=0以外に含まれると考えられるからである。さらに、生体の呼吸または心拍の周波数およびその高調波を考えると、f<3〔Hz〕の範囲に生体由来の成分が多く存在するものと考えられる。したがって、例えば0〔Hz〕<f<3〔Hz〕の所定周波数範囲のG(f)を取り出せば、生体成分を効果的に抽出することができる。
【0041】
次に生体成分G(f)を用いた生体位置推定方法について説明する。生体成分行列G(f)を、
【数3】
のようにベクトル形式に並び替える。これを生体成分ベクトルと定義する。ここで{・}は転置を表す。生体成分ベクトルg(f)から相関行列を、
【数4】
によって計算する。ここで、{・}は複素共役転置を表す。さらにRは0〔Hz〕<f<3〔Hz〕の間で平均化されている。この平均化によって、後述の位置推定精度が向上することが知られている。次に、算出した相関行列Rを固有値分解することで、当該相関行列Rの固有ベクトルUとその複素共役転置ベクトルUを算出する。
【0042】
【数5】
【0043】
なお、式5における、固有ベクトルは、以下に示す式6で表される。
【0044】
【数6】
【0045】
ここで、uはi列目の固有ベクトルを表しており、要素数はNMである。Dは対角要素が固有値である対角行列であり、
【数7】
と表される。ここで、diag[・]とは[・]内の要素を対角項に持つ対角行列を表す。回路40は、以上の情報を用いて、検出対象となる生体50の位置推定を行う。ここでは一例としてMUSIC法に基づく位置推定方法について説明する。MUSIC法ではステアリングベクトルと呼ばれる方向ベクトルと式6で示した固有ベクトルとを用いることによって方向や位置を推定する方法である。式3で示した生体成分ベクトルは、本来のM×N行列を変形して得られる。生体50の位置推定を行うためには、これに対応してステアリングベクトルを定義する必要がある。送信アンテナ20の第1基準方向から出発角θの第1生体方向のステアリングベクトルと、受信アンテナ30の第2基準方向から到来角θの第2生体方向のステアリングベクトルとは、それぞれ、
【数8】
【数9】
と表される。ここで、kは波数を表し、dはアンテナアレーの各アンテナ素子の素子間隔を表す。なお、本実施の形態では素子間隔が一定のリニアアレーアンテナを想定している。dは、例えば、送信アンテナ20においては、複数の送信アンテナ素子21のうち互いに隣接する2つの送信アンテナ素子21の間隔を表す。また、dは、受信アンテナ30においては、複数の受信アンテナ素子31のうち互いに隣接する2つの受信アンテナ素子31の間隔を表す。これらのステアリングベクトルのクロネッカ積を求めると、
【0046】
【数10】
となる。ここで
【数11】
はクロネッカ積を表す演算子である。a(θ,θ)は、MN×1の要素を持つベクトルであり、出発角θと到来角θとの2変数を持つ関数となる。以降、a(θ,θ)をステアリングベクトルと定義する。検出範囲内に存在する生体の数をLとすると、評価関数
【数12】
によって生体位置を特定する。ここで、式11の評価関数はMUSICスペクトラムと呼ばれており、送信アンテナ20および受信アンテナ30のそれぞれから検出対象へ向かう方向の組み合わせ(θ,θ)において極大を取る。極大に対応するθおよびθから、三角法を用いて検出対象である生体50の位置を特定できる。ここで、Lは検出対象の数を表す。つまり、固有ベクトルの数MNは検出対象の数Lより大きい必要がある。
【0047】
更に式12よりRCS値を求め、生体50の位置およびRCS値により生体50の姿勢を推定する。前述の抽出する周波数範囲をf1〜f2(f1<f2)とすると、生体から反射され観測されるチャネル成分から電力の伝達係数を求めると、
【数13】
と計算することができる。ここでρijは行列
【数14】
の(i,j)番目の要素を表している。一方、j番目の送信アンテナ素子21から生体50を経由してi番目の受信アンテナ素子31に到達する電力は、
【数15】
と表される。ここで、Ptは、送信電力を表す。なお、全ての送信アンテナ素子21から等しい電力が送信されているものとする。Gtは送信アンテナ20の動作利得を表し、Grは受信アンテナ30の動作利得を表し、r1は送信アンテナ20から生体50までの距離を表し、r2は生体50から受信アンテナ30までの距離を表す。距離r1および距離r2は式11により推定した位置から容易に計算することができる。すると、式12で定義される電力伝達係数は、ρij=Prij/Ptで表されるので、散乱断面積は、
【数16】
により計算することができる。なお、ここで取り扱う散乱断面積では、生体50全体の散乱断面積ではなく、呼吸、心拍、体動などの生体50のバイタル活動の影響を受けることにより生じた変動成分に対応する散乱面積だけが考慮されている。さらに、全要素を平均して
【数17】
によって平均散乱断面積を求める。以降、
【数18】
を単に散乱断面積と呼称する。
【0048】
なお、例えば、生体のバイタル成分と体動成分とをさらに分離して測定する場合、式12の周波数範囲を調整し、その後の処理を行えば良い事は言うまでもない。
【0049】
次に、実施の形態1におけるセンサー10の動作についてフローチャートを用いて説明する。
【0050】
図4は、実施の形態1におけるセンサーの動作の一例を示すフローチャートである。
【0051】
センサー10では、送信アンテナ20のN個の送信アンテナ素子21が、生体50が存在しうる所定範囲に対してN個の送信アンテナ素子21を用いてN個の送信信号を送信する(S11)。
【0052】
受信アンテナ30のM個の受信アンテナ素子31が送信アンテナ20により送信されたN個の送信信号が生体50により反射された複数の反射信号を含むN個の受信信号を受信する(S12)。
【0053】
回路40は、M個の受信アンテナ素子31のそれぞれにおいて所定期間で受信されたN個の受信信号のそれぞれから、N個の送信アンテナ素子21それぞれと、M個の受信アンテナ素子31それぞれとの間の伝播特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出する(S13)。
【0054】
回路40は、第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、生体50の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する第2行列を抽出する(S14)。
【0055】
回路40は、第2行列を用いて、センサー10に対する生体50の存在する位置を推定する(S15)。
【0056】
回路40は、推定した位置と、送信アンテナ20の位置と、受信アンテナ30の位置と、に基づいて、生体50と送信アンテナ20との距離を示す距離r1、および、生体50と受信アンテナ30との距離を示す距離r2を算出する(S16)。
【0057】
回路40は、第1距離および第2距離を用いて、生体50に対するRCS値を算出する(S17)。
【0058】
回路40は、算出されたRCS値と、メモリ41に記憶されている、RCS値および生体50の姿勢の対応関係を示す情報42と、を用いて、生体50の姿勢を推定する(S18)。
【0059】
本実施の形態に係るセンサー10によれば、生体50が存在する位置および当該位置における生体の姿勢の推定を短時間かつ高精度に行うことができる。
【0060】
センサー10は、動いている部位を検出することで、生体50の存在を検出する。このため、例えば、これを利用することにより、ヒトが生きている状態で、かつ、直立、椅座、胡坐、および、仰臥のいずれの姿勢であるかを推定できる。これにより、ヒトの生存確認を効果的に行うことができる。また、カメラで撮像した画像を画像解析することなくヒトの生存確認を行うことができるため、ヒトのプライバシーを保護した状態で、ヒトの生存確認を行うことができる。
【0061】
(実施の形態2)
図5は実施の形態2におけるセンサーの構成の一例を示すブロック図である。図6は実施の形態2における回路およびメモリの機能的な構成を示すブロック図である。
【0062】
実施の形態2におけるセンサー10Aは、実施の形態1におけるセンサー10と比較して、送信アンテナ20Aが有するN個の送信アンテナ素子21A、および、受信アンテナ30Aが有するM個の受信アンテナ素子31Aの配置の仕方が異なる。また、NおよびMは、それぞれ、3以上の自然数である点も異なる。
【0063】
送信アンテナ20Aは、N個の送信アンテナ素子21Aを有する。送信アンテナ20Aは、水平方向(x方向)にN個が並び、かつ、鉛直方向(z方向)にN個が並ぶように矩形配置された、N個(N=N×N)の送信アンテナ素子21Aで構成されるアレーアンテナを有する。つまり、N個の送信アンテナ素子21Aのうち少なくとも3個の送信アンテナ素子21Aは、鉛直方向および水平方向の異なる位置に配置されている。
【0064】
受信アンテナ30Aは、M個の受信アンテナ素子31Aを有する。受信アンテナ30Aは、水平方向(x方向)にM個が並び、かつ、鉛直方向(z方向)にM個が並ぶように矩形配置された、M個(M=M×M)の受信アンテナ素子31Aで構成されるアレーアンテナを有する。つまり、M個の受信アンテナ素子31Aのうち少なくとも3個の受信アンテナ素子31Aは、鉛直方向および水平方向の異なる位置に配置されている。
【0065】
ここで、送信アンテナ20Aに対して任意に設定された水平面上の方向である第1基準方向と、送信アンテナ20Aから生体50Aへの方向である第1生体方向とのなす角をφとする。また、鉛直方向と、第1生体方向との為す角である生体50Aの仰角をθとする。また、受信アンテナ30Aに対して任意に設定された水平面上の方向である第2基準方向と、受信アンテナ30Aから生体50Aへの方向である第2生体方向との為す角である生体50Aの仰角をφとする。また、鉛直方向と、第2生体方向とのなす角をθとする。生体50Aがバイタル活動を行っている部位の中心座標を(x,y,z)とすると、送信アンテナ20A、受信アンテナ30Aおよび生体50Aの位置関係によって、方向(θ,θ,φ,φ)と座標(x,y,z)は相互に変換可能である。
【0066】
また、センサー10Aは、センサー10と比較して、回路40Aが行う処理が異なる。生体50Aは、例えば、高さzにて周囲と比べて最も強くバイタル活動を行っている生体である。生体50Aは、例えば、呼吸による体表面変位が最も大きい腹部を有する。本実施の形態におけるセンサー10Aでは、実施の形態1におけるセンサー10で推定する水平面における生体50の位置に加えて、生体50Aの例えば腹部の鉛直方向における位置である鉛直位置zb(z軸方向の位置)である高さを含む3次元位置を推定する。つまり、本実施の形態のセンサー10Aの回路40Aは、実施の形態1の回路40の位置推定処理部430の代わりに、上記3次元位置を推定する処理を行う、3次元位置推定処理部430Aを有する。
【0067】
また、センサー10Aは、センサー10と比較して、メモリ41に記憶されている対応関係を示す情報42Aが異なる。本実施の形態において、メモリ41に記憶されているRCS値および生体50の姿勢の対応関係を示す情報42Aとは、図7に示すように、仰臥、胡坐、椅座および直立で示される各姿勢に予め対応付けられたRCS値の範囲および高さの範囲を示す情報である。例えば、仰臥は、第1RCS範囲および第1高さ範囲と対応付けられており、胡坐は、第2RCS範囲および第2高さ範囲と対応付けられており、椅座は、第3RCS範囲および第3高さ範囲と対応付けられており、直立は、第4RCS範囲および第4高さ範囲と対応付けられている。なお、第1RCS範囲〜第4RCS範囲は、それぞれ異なるRCS値の範囲である。また、第1高さ範囲〜第4高さ範囲は、それぞれことなる高さの範囲である。
【0068】
センサー10Aのその他の構成は、センサー10と同じであるため、当該構成については、実施の形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本実施の形態のセンサー10Aは、実施の形態1におけるセンサー10で推定する、水平面における生体50の位置に加えて、鉛直方向における生体50の位置である鉛直位置を推定する。
【0070】
次に実施の形態2のセンサー10Aの動作原理の詳細を、数式を用いて説明する。式1から式4までは、実施の形態1と同様な処理を行い、式4によって生体成分から相関行列
【数19】
を得る。Rは実施の形態1と同様に0〔Hz〕<f<3〔Hz〕の間で平均化されている。
【0071】
次に、式5と同様に算出した相関行列Rを固有値分解することで
【数20】
および
【数21】
を計算する。以降では、MUSIC法を用いた高さ方向を含む位置推定方法について説明する。送信アンテナ20Aから生体50Aへ向かう(θT、φT)方向を示すステアリングベクトルと、受信アンテナ30Aから生体50Aへ向かう(θR、φR)方向を示すステアリングベクトルとは、それぞれ、
【数22】
【数23】
と表される。ここで、
【数24】
【数25】
と表される。ここで、kは波数を表し、dTxおよびdTzはそれぞれ送信アンテナ素子21Aのx方向およびz方向における素子間隔を表し、dRxおよびdRzはそれぞれ受信アンテナ素子31Aのx方向およびz方向における素子間隔を表す。なお、本実施の形態では素子間隔が同一の方向においては一定のリニアアレーアンテナを想定している。
【0072】
Txは、例えば、複数の送信アンテナ素子21Aのうちx方向において互いに隣接する2つの送信アンテナ素子21Aの間隔を表す。dTzは、例えば、複数の送信アンテナ素子21Aのうちz方向において互いに隣接する2つの送信アンテナ素子21Aの間隔を表す。また、dRxは、例えば、複数の受信アンテナ素子31Aのうちx方向において互いに隣接する2つの受信アンテナ素子31Aの間隔を表す。また、dRzは、例えば、複数の受信アンテナ素子31Aのうちz方向において互いに隣接する2つの受信アンテナ素子31Aの間隔を表す。これらのステアリングベクトルのクロネッカ積を求めると、
【数26】
となる。ステアリングベクトルa(θ,φ,θ,φ)は、MN×1の要素を持つベクトルであり、出発角θT、φTと到来角θR、φRとの4変数を持つ関数となる。以降、a(θ,φ,θ,φ)をステアリングベクトルと定義する。検出範囲内に存在する生体の数をLとすると、評価関数
【数27】
によって生体位置を特定する。実施の形態1と同様に、式22のMUSICスペクトラムの極大点を探索することで、鉛直位置を含む、送信アンテナ20Aおよび受信アンテナ30Aから見た生体50Aの3次元位置を特定できる。
【0073】
なお、本実施の形態におけるセンサー10Aの動作の説明は、図4で説明したフローチャートのステップS15の生体の位置の推定において、上記の3次元位置の推定を行うことで説明できるため省略する。
【0074】
図8は、実施の形態2のセンサーの効果を確認するために実施した実験の概要を表す図である。
【0075】
図8に示すように、送信アンテナ20Aは4×4=16の送信アンテナ素子21Aが配置されることで構成される方形アレーアンテナである。送信アンテナ素子21Aはパッチアンテナとする。受信アンテナ30Aは4×4=16の受信アンテナ素子31Aが配置されることで構成される方形アレーアンテナである。受信アンテナ素子31Aはパッチアンテナとする。送信アンテナ素子21Aおよび受信アンテナ素子31Aは、ともに、素子間隔が0.5波長で配置されている。
【0076】
被検者は1名であり、直立、椅座(椅子に座った状態)、胡座(あぐら)、仰臥(仰向け)の4状態にて測定を行った。また、被験者の位置は(X,Y)=(5.0,1.0)mである。仰臥以外の姿勢では、被験者はアンテナ方向(Y方向)を向いている。仰臥では、被験者はアンテナ方向(Y方向)に足を向けている。実験1回につき約5秒間観測を行った。
【0077】
図9は、図8で示した実験系を用いた実験結果を示す図である。図9において、横軸は推定された高さzbを示し、縦軸は算出した散乱断面積(RCS:Radar Cross Section)を示す。
【0078】
図9に示すように、姿勢によって高さおよびRCS値が分布している領域が異なることが分かる。つまり、推定された高さおよび算出したRCS値から被験者の姿勢を推定できることが確認できる。例えば、図10に示すように、対応関係を示す情報42Aを設定しておくことで、推定した3次元位置と、算出されたRCS値と、メモリ41に記憶されている、対応関係を示す情報42Aと、を用いて、生体50Aが、直立、椅座、胡坐、および、仰臥のいずれの姿勢であるかを推定できる。なお、図10は実験結果から得られた第1RCS範囲〜第4RCS範囲の具体例、および、第1高さ範囲〜第4高さ範囲の具体例を示す図である。なお、図10の第1RCS範囲〜第4RCS範囲は、実施の形態1の対応関係を示す情報42の第1RCS範囲〜第4RCS範囲にも適用可能である。
【0079】
本実施の形態に係るセンサー10Aによれば、生体50が存在する3次元位置および当該位置における生体の姿勢の推定を短時間かつ高精度に行うことができる。
【0080】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態のセンサー10、10Aなどを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0081】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、N個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子を有する送信アンテナと、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子を有する受信アンテナと、回路と、メモリとを備えるセンサーによる推定方法であって、生体が存在しうる所定範囲に対してN個の送信アンテナ素子を用いてN個の送信信号を送信し、送信した前記N個の送信信号の一部の送信信号が前記生体により反射された反射信号を含むN個の受信信号を複数の受信アンテナ素子のそれぞれを用いて受信し、前記M個の受信アンテナ素子のそれぞれにおいて所定期間で受信された前記N個の受信信号のそれぞれから、前記N個の送信アンテナ素子それぞれと、前記M個の受信アンテナ素子それぞれとの間の伝搬特性を示す各複素伝達関数を成分とする、N×Mの第1行列を算出し、前記第1行列における所定周波数範囲に対応する第2行列を抽出することで、前記生体の呼吸、心拍および体動の少なくともいずれかを含むバイタル活動の影響を受けた成分に対応する前記第2行列を抽出し、前記第2行列を用いて、前記センサーに対する前記生体の存在する位置を推定し、前記推定した位置と、前記送信アンテナの位置と、前記受信アンテナの位置と、に基づいて、前記生体と前記送信アンテナとの距離を示す第1距離、および、前記生体と前記受信アンテナとの距離を示す第2距離を算出し、前記第1距離および前記第2距離を用いて、前記生体に対するRCS(Radar cross-section)値を算出し、前記算出されたRCS値と、前記メモリに記憶されている、RCS値および前記生体の姿勢の対応関係を示す情報と、を用いて、前記生体の姿勢を推定する、推定方法を実行させる。
【0082】
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係るセンサー10、10Aについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0083】
上記実施の形態では、センサー10、10Aは、生体が直立、椅座、胡坐、および、仰臥のいずれの姿勢であるかを推定するとしたが、これに限らない。例えば、生体が、送信アンテナ20、20Aおよび受信アンテナ30、30Aの並び方向に垂直な方向に対して正対している姿勢であるか否かを推定してもよい。具体的には、図1または図5におけるy方向に対して正対している姿勢であるか、y方向に対して横向きの姿勢であるかを推定してもよい。例えば、ヒトがy方向に対して正対している場合、y方向に対して正対していない場合と比較してRCS値が小さくなる。なお、y方向に対して横向きの姿勢とは、x方向に対して正対している姿勢である。
【0084】
上記実施の形態1では、N個の送信アンテナ素子21は、水平面上の第1所定方向に並んで配置され、かつ、M個の受信アンテナ素子31は、水平面上の第2所定方向に並んで配置されるとしたが、これに限らない。つまり、第1所定方向および第2所定方向は、水平面上の方向に限らずに、例えば、鉛直方向を含む平面上の方向であってもよいし、水平面から傾いた平面上の方向であってもよい。この場合、回路40は、第1所定方向および第2所定方向を含む平面上における生体の位置を推定することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、無線信号を利用した動体の方向や位置を推定するセンサーおよび推定方法に利用できる。特に、生体と機械を含む動体の方向や位置を測定する測定器、動体の方向や位置に応じた制御を行う家電機器、動体の侵入を検知する監視装置などに搭載される方向推定方法、方向推定方法,位置推定方法および散乱断面積を用いた高々推定装置に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
10、10A センサー
20、20A 送信アンテナ
21、21A 送信アンテナ素子
30、30A 受信アンテナ
31、31A 受信アンテナ素子
40、40A 回路
41 メモリ
42、42A 対応関係を示す情報
50、50A 生体
410 複素伝達関数算出部
420 生体成分算出部
430 位置推定処理部
430A 3次元位置推定処理部
440 RCS算出部
450 姿勢推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10