(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-75245(P2020-75245A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】タイヤ部品用識別ライン塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20200424BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20200424BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B29D30/06
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-198580(P2019-198580)
(22)【出願日】2019年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2018-207998(P2018-207998)
(32)【優先日】2018年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】菱本 祐太郎
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
4F215
【Fターム(参考)】
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA34
4F042AA03
4F042AA09
4F042AB00
4F042CA01
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB24
4F215AH20
4F215VA12
4F215VD03
4F215VD09
4F215VL22
(57)【要約】
【課題】タイヤ部品用識別ライン塗布装置において、カラーインク内への水分の混入を防止することにより、タイヤ部品へのカラーインクの塗布を適切に行う。
【解決手段】タンク1内に貯留したカラーインク5に空気供給ラインから供給した空気圧を付与し、前記タンク1からカラーインク5を流出させることにより、インク供給ラインを介してペン4からタイヤ部品14にカラーインク5を塗布する。前記空気供給ラインの途中に、通過する空気から水分を除去するための除湿部3を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に貯留したカラーインクに空気供給ラインから供給した空気圧を付与し、前記タンクからカラーインクを流出させることにより、インク供給ラインを介してペンからタイヤ部品にカラーインクを塗布するようにしたタイヤ部品用識別ライン塗布装置であって、
前記空気供給ラインの途中に、通過する空気から水分を除去するための除湿部が設けられている、タイヤ部品用識別ライン塗布装置。
【請求項2】
前記除湿部は、通過する空気を冷却して結露させる熱交換器を有する、請求項1に記載のタイヤ部品用識別ライン塗布装置。
【請求項3】
前記カラーインクは、粘度が700〜1000(mPa・s)であり、固形分が25〜29%である、請求項1又は2に記載のタイヤ部品用識別ライン塗布装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ部品用識別ライン塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出成形されるタイヤ部品(例えば、トレッドゴム、サイドウォールゴム)の表面に、識別用のカラーインクを塗布する塗布装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の塗布装置では、ペンにカラーインクを供給するタンクに外気を取り込んで、タンク内のカラーインクの液面に空気圧を作用させることにより、ペンからカラーインクを吐出させるようにしている。このため、空気中に水分が含まれていると、この水分がカラーインクに混入し、タンクの下層側に貯留されてしまう。貯留された水分がペンから吐出されると、タイヤ部品にカラーインクを塗布できないことがあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−103394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カラーインク内への水分の混入を防止することにより、タイヤ部品へのカラーインクの塗布を適切に行うことができるタイヤ部品用識別ライン塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、タンク内に貯留したカラーインクに空気供給ラインから供給した空気圧を付与し、前記タンクからカラーインクを吐出させることにより、インク供給ラインを介してペンからタイヤ部品にカラーインクを塗布するようにしたタイヤ部品用識別ライン塗布装置であって、前記空気供給ラインの途中に、通過する空気から水分を除去するための除湿部が設けられている、タイヤ部品用識別ライン塗布装置を提供する。
【0007】
この構成により、除湿部によってタンク内のカラーインクに水分が混入することを防止しやすくなる。したがって、ペンから塗布されるカラーインクに水分が混入することはなく、タイヤ部品へのカラーインクの塗布を良好な状態で行うことができる。
【0008】
前記除湿部は、通過する空気を冷却して結露水を発生させる熱交換器を有するのが好ましい。
【0009】
この構成により、空気はタンク内に流入する前に熱交換器によって冷却され、空気が含有する水蒸気は結露して除去される。これにより、タンク内のカラーインクに水分が混入すすることはない。
【0010】
前記インクは、成分としてトルエン・キシレン・シクロヘキサンを含み、粘度が700〜1000(mPa・s)であり、固形分が25〜29%であるものであればよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タンクに向かう空気供給ラインの途中に除湿部を設けているので、カラーインク内への水分の混入を防止し、タイヤ部品へのカラーインクの塗布を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るタイヤ部品用識別ライン塗布装置を示す概略図。
【
図2】変形例に係るタイヤ部品用識別ライン塗布装置を示す概略図。
【
図3】他の変形例に係るタイヤ部品用識別ライン塗布装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0014】
図1は、本実施形態に係るタイヤ部品用識別ライン塗布装置の概略図を示す。この塗布装置は、タンク1、送風部2、除湿部3及びペン4を備える。
【0015】
タンク1にはカラーインク5が貯留されている。タンク1は、色彩別に複数設置されている。ここでは、赤、緑、白の3種類のカラーインク5をそれぞれ貯留する3つのタンク1が設けられている(ここでは、1つのタンク1のみ図示)。カラーインク5としては、成分としてトルエン・キシレン・シクロヘキサンを含み、粘度が700〜1000(mPa・s)であり、固形分が25〜29%であるものを使用できる。各タンク1は、密閉性に優れており、後述する送風部2からの空気圧を、エア漏れすることなくカラーインク5の液面に作用できるようになっている。
【0016】
送風部2は、送風ファン等で構成できる。送風部2は、取り込んだ空気を、第1配管8(空気供給ライン)を介してタンク1内に供給する。そして、供給した空気でタンク1内に貯留したカラーインク5の液面を加圧する。これにより、タンク1から第2配管12(インク供給ライン)を介してペン4にカラーインク5が供給される。なお、送風部2は、複数のタンク1に対して1台で空気を供給できるようにしてもよいし、タンク1毎に設けるようにしてもよい。
【0017】
除湿部3は、空気供給ラインの途中に設けられている。除湿部3は、密閉性を有する筐体6内に除湿器7を配置したものである。筐体6は第1配管8の途中に接続されている。筐体6には、除湿器7で凝縮することにより得られた凝縮水を回収するための第2配管9が接続されている。凝縮水は、第3配管9を介して貯水タンク10に回収される。本実施形態では、除湿器7は、例えば、扁平状の伝熱管とフィンとを交互に積層して配置したクロスフィン形の熱交換器(室内側熱交換器)である。除湿器7は、室外機等に設けた熱交換器(室外側熱交換器21)と第4配管11を介して接続され、コンプレッサ22の駆動により、冷媒が室内側熱交換器である除湿器7と室外側熱交換器21の間を流動して循環する。これにより、冷媒は、室外熱交換器21で放熱して凝縮し、除湿器7(室内熱交換器)で吸熱して気化する。
【0018】
ペン4は、円筒状で、先端部分は先端に向かうに従って徐々に外径寸法が小さくなる円錐状に形成されている。ペン4は、タンク1とはインク供給ラインを構成する第2配管12によって接続されている。第2配管12は、タンク1の下部に接続されている。第2配管12の途中には調圧弁13が設けられている。送風部2を駆動することにより、タンク1内のカラーインク5は、その液面に空気圧を受ける。カラーインク5は、自重と空気圧とによって第配管12を流動し、調圧弁13によって所定圧とされてペン4から吐出される。
【0019】
ペン4は、帯状に形成されたタイヤ部品14(例えば、トレッドゴム)の搬送経路に対して接離可能に配置されている。また、ペン自体は、先端側がタイヤ部品14の搬送方向に向かって傾斜した状態を維持する。そして、ペン4の先端部がタイヤ部品14の表面に対して接近した位置でカラーインク5を吐出することにより、タイヤ部品14の表面にカラーインク5を塗布してカラーライン15を形成することができるようになっている。カラーライン15は、タイヤの種類や向き等の識別情報となる。
【0020】
次に、前記構成からなるタイヤ部品用識別ライン塗布装置の動作について説明する。
【0021】
帯状のタイヤ部品14が搬送されてくれば、タイヤ部品14に向かってペン4の先端部分を接近させる。そして、送風部2を駆動して周囲の空気を吸い込んでタンク1内に供給し、貯留されているカラーインク5の液面に空気圧を作用させる。タンク1内に供給する空気は、空気供給ラインを流動する際、除湿部3を通過する。これにより、内部の除湿器7によって空気が冷却され、空気中に含まれる水蒸気が結露する。結露水は、第3配管9を介して貯水タンク10に回収する。除湿部3を通過することにより、空気供給ラインを流動する空気は除湿されて乾燥した状態でタンク1内に供給される。このため、タンク1内のカラーインク5に水分が混ざることはない。
【0022】
タンク1内のカラーインク5は、送風部2からの乾いた空気による空気圧を受けて、第2配管(インク供給ライン)を介してペン4へと流動し、ペン4の先端開口よりタイヤ部品14の表面へと吐出される。前述の通り、吐出されるカラーインク5には水分が含有されることはないため、タイヤ部品14に塗布されたカラーインク5は途切れることなく良好なものとなる。
【0023】
このように、本実施形態に係るタイヤ部品用識別ライン塗布装置によれば、タンク1に貯留するカラーインク5の液面に対して空気圧を付与するために取り込む空気から、除湿部3によって予め水分を除去するようにしている。このため、カラーインク5のみをタイヤ部品の表面に塗布できる。したがって、タイヤ部品の表面にはカラーライン15を途切れることなく形成することが可能となる。
【0024】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0025】
前記実施形態では、除湿器7の除湿能力を一定能力としたが、梅雨時等、湿度の高い季節を考慮して除湿器7の除湿能力を変更してもよい。また、除湿器7の除湿能力は、湿度センサを設け、そこで検出される湿度に応じて変更してもよい。つまり、湿度が高いと判断される時期や、実際に高い湿度が検出される場合に、除湿器7の除湿能力を向上させて、積極的にタンク1内に供給する空気から水分を除去することにより、より一層、カラーインク5への水分の混合を効果的に防止できる。
【0026】
例えば、
図2に示すように、送風部2の吸込口の近傍に湿度センサ31を設け、制御部32にて以下の制御を行うようにしてもよい。この場合、制御部32に、湿度センサ31での検出湿度と、送風部2の駆動状態(例えば、送風機のモータへの印加電圧)とを入力する。制御部32が備える記憶部33には予め、実験や演算等により、湿度と、単位時間当たりに除湿部3を通過する空気量とに基づいて、除湿器7の除湿能力をどの程度に設定すればよいのかをデータテーブルとして記憶しておく。制御部32では、送風部2の駆動状態に基づいて、除湿部3に送風する単位時間当たりの空気量を演算する。そして、演算結果から、記憶部33に記憶したデータテーブルに基づいて除湿能力を決定する。決定した除湿能力が得られるようにコンプレッサ22を駆動制御する。
【0027】
前記構成によれば、湿度の違いに基づいて除湿器7を駆動制御しているので、無駄な消費電力を抑制できる。
【0028】
前記実施形態では、除湿部3に除湿器7を採用したが、除湿器7に代えて、
図3に概念的に示すように、単にシリカゲル等の除湿剤41で構成するだけとしてもよい。これによれば、大掛かりな設備が不要となり安価に製作できる。なお、吸湿した除湿剤41は、再利用可能となるように、不使用時に加熱して吸湿した水分を外部へと排出できるようにするのが好ましい。また、吸湿した除湿剤41は新しい物に交換してもよい。再利用又は交換時期は、湿度センサ(
図2の符号31参照)での検出湿度と、送風部2による送風量とから演算した値に基づいて、除湿剤41の吸湿能力に到達したか否かで判断することもできる。
【0029】
前記実施形態では、タンク1は単に密閉性に優れた構成としただけであるが、断熱材で覆ったり、途中にヒータを設けたりする等の温調部を設けることにより内部が一定温度に維持されるようにしてもよい。これによれば、使用するカラーインク5の物性値に応じて、タイヤ部品の表面に塗布する際に最適な温度となるようにカラーインク5の温度を管理できる。
【符号の説明】
【0030】
1…タンク
2…送風部
3…除湿部
4…ペン
5…カラーインク
6…筐体
7…除湿器(室内側熱交換器)
8…第1配管
9…第3配管
10…貯水タンク
11…第4配管
12…第2配管
13…調圧弁
14…タイヤ部品
15…カラーライン
21…室外側熱交換器
22…コンプレッサ
31…湿度センサ
32…制御部
33…記憶部
41…除湿剤