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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-75408(P2020-75408A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】タイヤ部材の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20200424BHJP
   B29D 30/38 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   B29D30/30
   B29D30/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-210172(P2018-210172)
(22)【出願日】2018年11月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 優
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA02
4F215VD10
4F215VL07
4F215VL09
4F215VP20
(57)【要約】
【課題】オープンコード等のタイヤ部材の接合部の不具合の発生を抑制する、タイヤ部材の製造装置を提供する。
【解決手段】タイヤ部材の製造装置1は、コードをゴムでトッピングしたシート状のタイヤ部材Pの端部P1,P2をたぐり寄せてタイヤ部材Pの端部P1,P2同士を接合する上下左右の二対の接合ローラ22(24)と、二対の接合ローラ22(24)が通るための軸方向Lに沿った開口部12を有し、開口部12に端部P1,P2が位置するようにタイヤ部材Pが巻き付けられる成形ドラム10と、接合ローラ22(24)の移動方向前方においてタイヤ部材Pの下面を支持する支持部23(25)と、接合ローラ22(24)によって接合されるタイヤ部材Pの接合面の延長線上に配置され、支持部23(25)の支持面23a(25a)から上方に突出する堰板(30,31)と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードをゴムでトッピングしたシート状のタイヤ部材の端部をたぐり寄せて前記タイヤ部材の端部同士を接合する上下左右の二対の接合ローラと、
前記二対の接合ローラが通るための軸方向に沿った開口部を有し、前記開口部に端部が位置するように前記タイヤ部材が巻き付けられる成形ドラムと、
前記接合ローラの移動方向前方において前記タイヤ部材の下面を支持する支持部と、
前記接合ローラによって接合される前記タイヤ部材の接合面の延長線上に配置され、前記支持部の支持面から上方に突出する堰板と、
を備える、タイヤ部材の製造装置。
【請求項2】
前記二対の接合ローラは、前記軸方向のうち第1側に進むときに動作する第1の二対の接合ローラと、前記第1の二対の接合ローラの後に動作し且つ前記軸方向のうち前記第1側の逆方向である第2側に進むときに動作する第2の二対の接合ローラと、を有し、
前記支持部は、前記第1の二対の接合ローラよりも前記第1側に配置される第1支持部と、前記第2の二対の接合ローラよりも前記第2側に配置される第2支持部と、を有し、
前記堰板は、前記第1支持部に設けられる第1堰板と、前記第2支持部に設けられる第2堰板と、を有し、
前記第2堰板の前記第1側の端面は、前記支持面から前記第2側に向けて傾斜して起立している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記支持部は、樹脂製の台である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
軸方向に沿った開口部を有する成形ドラムに対し、前記開口部に端部が位置するようにタイヤ部材を巻き付けることと、
前記開口部を通る上下左右の二対の接合ローラで、コードをゴムでトッピングしたシート状のタイヤ部材の端部をたぐり寄せて前記タイヤ部材の端部同士を接合することと、
前記接合ローラの移動方向前方において前記タイヤ部材の下面を支持部で支持することと、
前記接合ローラによって接合される前記タイヤ部材の接合面の延長線上に配置され、前記支持部の支持面から上方に突出する堰板により前記タイヤ部材の端部を突き返すことと、
を含む、タイヤ部材の製造方法。
【請求項5】
前記二対の接合ローラは、前記軸方向のうち第1側に進むときに動作する第1の二対の接合ローラと、前記第1の二対の接合ローラの後に動作し且つ前記軸方向のうち前記第1側の逆方向である第2側に進むときに動作する第2の二対の接合ローラと、を有し、
前記支持部は、前記第1の二対の接合ローラよりも前記第1側に配置される第1支持部と、前記第2の二対の接合ローラよりも前記第2側に配置される第2支持部と、を有し、
前記堰板は、前記第1支持部に設けられる第1堰板と、前記第2支持部に設けられる第2堰板と、を有し、
前記第2堰板の前記第1側の端面は、前記支持面から前記第2側に向けて傾斜して起立している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記支持部は、樹脂製の台である、請求項4又は5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ部材の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを構成するタイヤ部材として、スチールコードをゴムでトッピングしたカーカスプライが知られている。カーカスプライのようなタイヤ部材は、成形ドラム上において巻き付け始端部と巻き付け終端部とが接合される。タイヤ部材の端部同士を重ねて接合する製造方法と、タイヤ部材の端部同士が重ならないように接合する製造方法とがある。
【0003】
タイヤ部材の端部同士が重ならないように接合するための装置として、特許文献1、2、3には、左右一対の接合ローラによってタイヤ部材をたぐり寄せてタイヤ部材の端部同士を接合する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−153349号公報
【特許文献2】国際公開2012/124779号
【特許文献3】特開2011−212858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献の装置とは構造が異なるが、左右一対の接合ローラが上下に配置されて二対となり、タイヤ部材を巻き付ける成形ドラムに前記二対の接合ローラを通すための開口部が形成され、更に、開口部に配置されるタイヤ部材の端部を支持するための支持部を設けることが考えられる。
【0006】
しかしながら、二対の接合ローラによってタイヤ部材の端部がたぐり寄せられるため、接合ローラの移動方向前方においてタイヤ部材の端部同士がくっつき過ぎて突起ができ、エア入りという不具合を招来したり、タイヤ部材の一部位が寄りすぎることにより他の部位にオープンコード等の不具合が発生したりすることが判明した。
【0007】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、オープンコード等のタイヤ部材の接合部の不具合の発生を抑制する、タイヤ部材の製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のタイヤ部材の製造装置は、
コードをゴムでトッピングしたシート状のタイヤ部材の端部をたぐり寄せて前記タイヤ部材の端部同士を接合する上下左右の二対の接合ローラと、
前記二対の接合ローラが通るための軸方向に沿った開口部を有し、前記開口部に端部が位置するように前記タイヤ部材が巻き付けられる成形ドラムと、
前記接合ローラの移動方向前方において前記タイヤ部材の下面を支持する支持部と、
前記接合ローラによって接合される前記タイヤ部材の接合面の延長線上に配置され、前記支持部の支持面から上方に突出する堰板と、
を備える。
【0009】
このように、接合ローラによって接合されるタイヤ部材の端部は互いにくっつこうとするが、支持部の支持面から上方に突出する堰板によりタイヤ部材の端部を突き返すので、接合部の不具合を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】タイヤ部材の製造装置の正面図
図2図1のA−A部位断面図
図3】第1接合ローラを移動方向前方から見た図
図4】第1堰板の正面図、平面図及び側面図
図5】第2堰板の正面図、平面図及び側面図
図6】タイヤ部材の端部の接合工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態のタイヤ部材の製造装置は、スチールコードを有するシート状のカーカスプライPの両端部P1,P2を突き合わせ状態で接合して未加硫タイヤの一部を構成するタイヤ部材を製造する装置に関し、成形ドラム10と接合装置20と移動機構50とを有する。なお、本実施形態ではスチールコードを有するカーカスプライPの両端部P1,P2を接合する場合について説明するが、本発明は、カーカスプライP以外にも、コードを有さないシート状のタイヤ部材や、コードが埋設されたシート状のタイヤ部材に適用することができる。
【0013】
成形ドラム10は、水平な軸心回りに回転可能な回転支持体であり、軸方向Lに沿って延びるスリット状の開口部12が外周面に設けられている。成形ドラム10は、開口部12を上方に位置させた状態で、カーカスプライPの両端部P1、P2が開口部12に位置するように、プライコードを成形ドラム10の軸方向Lに沿わせて成形ドラム10の外周面にカーカスプライPが巻き付けられ、これを支持する。
【0014】
なお、本実施形態の成形ドラム10は、周方向に分割された不図示の複数のセグメントと、各セグメントを径方向に移動させる不図示の駆動機構とを有し、拡縮径可能に設けられている。
【0015】
接合装置20は、押圧ローラ21と第1接合ローラ22と第1支持部23と第2接合ローラ24と第2支持部25とを有し、移動機構50によって成形ドラム10の開口部12の内側をカーカスプライPの両端部P1、P2に沿って、つまり、成形ドラム10の軸方向Lに移動するようになっている。
【0016】
第1接合ローラ22は、上下左右の二対の接合ローラであり、押圧ローラ21より成形ドラム10の軸方向の第1側L1に間隔を開けて設けられた一対の第1下接合ローラ22aと一対の第1上接合ローラ22bと、を有する。
【0017】
図3に示すように、一対の第1下接合ローラ22aは、成形ドラム10の開口部12の内側を移動する際にカーカスプライPの下側に位置するローラであり、カーカスプライPの下面に接触する先細テーパー状の接触部22a1と、接触部22a1の下側に設けられた歯部22a2とを有し、歯部22a2が互いに噛み合うようにローラ支持台26に回転自在に設けられている。
【0018】
一対の第1上接合ローラ22bは、第1下接合ローラ22aと同一形状のローラを上下対称に配置したもので、成形ドラム10の開口部12の内側を移動する際にカーカスプライPの上側に位置する。一対の第1上接合ローラ22bは、カーカスプライPの上面に接触する先細テーパー状の接触部22b1と、接触部22b1の下側に設けられた歯部22b2とを有し、歯部22b2が互いに噛み合うようにローラ支持台27に回転自在に設けられている。
【0019】
このような第1接合ローラ22は、一対の第1下接合ローラ22aと一対の第1上接合ローラ22bとの間でカーカスプライPの両端部P1,P2を挟み込んだ状態で軸方向第1側(図1の図中右側)L1へ移動すると、カーカスプライPとの摩擦力によって一対の第1下接合ローラ22aと一対の第1上接合ローラ22bが回転しながらカーカスプライPの両端部P1、P2をたぐり寄せて両端部P1,P2同士を突き合わせて接合する。
【0020】
なお、一対の第1下接合ローラ22a及び一対の第1上接合ローラ22bは、図1に示すような正面視においてその回転軸が、上下方向(鉛直方向)に対して第1接合ローラ22の移動方向前方、つまり、一対の第1下接合ローラ22a及び一対の第1上接合ローラ22bがカーカスプライPの両端部P1,P2を突き合わせて接合する際に移動する方向(軸方向の第1側L1)へ所定角度θ傾斜するようにローラ支持台26、27に設けられている(図1参照)。
【0021】
第1支持部23は、第1接合ローラ22より軸方向の第1側L1に間隔D1を開けて設けられ、移動機構50により第1接合ローラ22と間隔D1を保持したまま一緒に移動することで、第1接合ローラ22の移動方向前方においてカーカスプライPの両端部P1、P2の下面を支持する。
【0022】
なお、第1支持部23は、支持するカーカスプライPが第1支持部23に密着することを防止するために、図4に示すように、支持面23aが樹脂製の台であることが好ましい。第1支持部23の支持面23aの最も高い部位は、第1接合ローラ22により接合されるカーカスプライPの下面と高さが一致している。勿論、高さが不一致でもよい。
【0023】
第2接合ローラ24は、上下左右の二対の接合ローラであり、押圧ローラ21より成形ドラム10の軸方向の第2側L2に間隔を開けて設けられた一対の第2下接合ローラ24aと一対の第2上接合ローラ24bとを備える。
【0024】
なお、第2接合ローラ24を構成する一対の第2下接合ローラ24a及び一対の第2上接合ローラ24bは、第1接合ローラ22を構成する一対の第1下接合ローラ22a及び一対の第1上接合ローラ22bと同一形状のローラからなるため、ここでは第2下接合ローラ24a及び第2上接合ローラ24bの形状について詳細な説明を省略する。
【0025】
また、一対の第2下接合ローラ24aは一対の第1下接合ローラ22aと押圧ローラ21を挟んで対称に配置され、一対の第2上接合ローラ24bは一対の第1上接合ローラ22bと押圧ローラ21を挟んで対称に配置されている。つまり、一対の第2下接合ローラ24a及び一対の第2上接合ローラ24bは、図1に示すような正面視においてその回転軸が、上下方向(鉛直方向)に対して第2接合ローラ24の移動方向前方、つまり、一対の第2下接合ローラ24a及び一対の第2上接合ローラ24bがカーカスプライPの両端部P1,P2を突き合わせて接合する際に移動する方向(軸方向の第2側L2)へ所定角度θ傾斜するようにローラ支持台28、29に設けられている。
【0026】
このような第2接合ローラ24は、一対の第2下接合ローラ24aと一対の第2上接合ローラ24bとの間でカーカスプライPの両端部P1,P2を挟み込んだ状態で、軸方向の第2側(図1の図中左側)L2へ移動すると、カーカスプライPとの摩擦力によって一対の第2下接合ローラ24aと一対の第2上接合ローラ24bが回転することで、カーカスプライPの両端部P1、P2をたぐり寄せて両端部P1,P2同士を突き合わせて接合する。
【0027】
第2支持部25は、第2接合ローラ24の軸方向の第2側L2に間隔D2を開けて設けられ、移動機構50により第2接合ローラ24と間隔D2を保持したまま一緒に移動することで、第2接合ローラ24の移動方向前方においてカーカスプライPの両端部P1、P2の下面を支持する。
【0028】
なお、第2支持部25は、支持するカーカスプライPが第2支持部25に密着することを防止するために、第1支持部23と同様、図5に示すように、支持面25aが樹脂製の台であることが好ましい。第2支持部25の支持面25aの最も高い部位は、第2接合ローラ24により接合されるカーカスプライPの下面と高さが一致している。勿論、高さが不一致でもよい。
【0029】
ここで、寸法の一例を挙げると、第1接合ローラ22と第1支持部23の間隔D1及び第2接合ローラ24と第2支持部25の間隔D2は、10mm以上且つ20mm以下にすることが好ましい。
【0030】
押圧ローラ21は、第1接合ローラ22と第2接合ローラ24との間に設けられた下押圧ローラ21aと上押圧ローラ21bとを有する。下押圧ローラ21aと上押圧ローラ21bは、成形ドラム10の軸方向Lに回転自在に支持された円筒状のローラからなり、互いに上下に対向して設けられている。押圧ローラ21は、第1接合ローラ22と第2接合ローラ24との間で、第1接合ローラ22や第2接合ローラ24によって形成されたカーカスプライPの接合部分を押圧して、平坦化を図るとともに接合強度を高める。
【0031】
なお、第1支持部23及び第2支持部25の上端(頂部)は、第1下接合ローラ22a、及び第2下接合ローラ24aの上端(頂部)と同じ高さに位置することが好ましく、更に、下押圧ローラ21aの上端(頂部)と同じ高さに位置することが好ましい。
【0032】
移動機構50は、成形ドラム10の軸方向Lに沿って設けられたガイドレール51と、ガイドレール51に平行に配置されたネジ軸58と、ネジ軸58と螺合するネジ穴を有する取付ブラケット(図示せず)と、ネジ軸58を軸回りに回転させる駆動部(図示せず)と、取付ブラケット(図示せず)に固定されるとともにガイドレール51に対して摺動自在に設けられた支持フレーム54とを備える。
【0033】
移動機構50は、図示しない駆動部がネジ軸58を軸回りに回転させることで、図示しない取付ブラケットを軸方向Lに沿って移動させるとともに、図示しない取付ブラケットに固定された支持フレーム54を軸方向Lに沿って摺動移動させる。
【0034】
支持フレーム54は、成形ドラム10の軸方向Lに延びる下アーム54aと上アーム54bとを備え、下アーム54aの上方に間隔をあけて上アーム54bが配置されている。
【0035】
下アーム54aの上面には、下押圧ローラ21a、第1下接合ローラ22a、第1支持部23、第2下接合ローラ24a、及び第2支持部25が設けられている。
【0036】
上アーム54bの下面には、下押圧ローラ21aと上下に対向するように上押圧ローラ21bが、第1下接合ローラ22aと上下に対向するように第1上接合ローラ22bが、第2下接合ローラ24aと上下に対向するように第2上接合ローラ24bが、それぞれ設けられている。上アーム54bに設けられた上押圧ローラ21b、第1上接合ローラ22b、及び第2上接合ローラ24bは、それぞれシリンダ55,56,57を介して上アーム54bに取り付けられており、各シリンダ55,56,57によって下方に対向する下押圧ローラ21a、第1下接合ローラ22a及び第2下接合ローラ24aに対して近接離隔移動する。
【0037】
このような移動機構50は、駆動部の動作によって支持フレーム54に設けられた接合装置20を、成形ドラム10の外側(図1及び図2では成形ドラム10の左側)の待機位置から成形ドラム10の開口部12の内側を通って成形ドラム10の軸方向Lへ移動させる。その際、接合装置20を構成する押圧ローラ21、第1接合ローラ22、第1支持部23、第2接合ローラ24及び第2支持部25は、支持フレーム54に取り付けられているため、成形ドラム10の軸方向Lの間隔を保って移動する。
【0038】
<堰板>
図1、2及び図4に示すように、第1支持部23は、第1支持部23の支持面23aから上方に突出する第1堰板30を有する。本実施形態の第1堰板30の最大突出量H1は、6.5mmである。突出量の最大値は8.0mmであり最小値は5.0mmであることが好ましい。突出量が大きすぎるとカーカスプライPが第1堰板30の上で反り返り、接合部の不具合が生じやすいからである。突出量が小さすぎれば、第1接合ローラ22により寄せられるカーカスプライPの端部P1,P2を突き返す効果が薄れるからである。正面視において第1堰板30は台形状に形成されているが、これに限定されない。例えば、矩形状、円形状等の種々の形状が採用可能である。本実施形態では、カーカスプライPの厚みが2.1mmであるので、この厚みよりも第1堰板30の最低突出量が大きい方が好ましい。なお、カーカスプライPの両端に厚み0.6mmのテープ状ゴムが貼り付けられている場合には、第1堰板30の最低突出量が2.1+0.6×2=3.3mm以上であることが好ましい。図2に示すように、第1堰板30は、第1接合ローラ22により接合されるタイヤ部材Pの接合面の延長線上に配置されている。
【0039】
図1、3及び図5に示すように、第2支持部25は、第2支持部25の支持面25aから上方に突出する第2堰板31を有する。本実施形態では、第2堰板31の最大突出量は6.5mmである。突出量の最大値は8.0mmであり最小値は5.0mmであることが好ましい。理由は、第1堰板30と同じである。第2堰板31は、正面視にて曲線で形成された波形状をなしている。図5に示すように、第2堰板31の第1側L1の端面31aは、支持面25aから第2側L2に向けて傾斜して起立している。図5では端面31aは曲線であるが、支持面25aに対して傾斜していれば直線又は直線と曲線の組み合わせで形成されていてもよい。このように第2堰板31の端面31aを傾斜させているのは、第2接合ローラ24よりも第1接合ローラ22が先に動作し、第1接合ローラ22によって接合されたカーカスプライPの端部P1、P2の下に第2堰板31が入る必要があり、第2堰板31とカーカスプライPが干渉した際にスムーズに第2堰板31がカーカスプライPの下方に入るように案内させるためである。図2に示すように、第2堰板31は、第2接合ローラ24により接合されるタイヤ部材Pの接合面の延長線上に配置されている。
【0040】
本実施形態では、第1堰板30の端面は支持面23aから鉛直に直立しているが、第2堰板31と同様に傾斜するように変形してもよい。なお、成形ドラム10の軸方向Lに沿った第1堰板30又は第2堰板31の長さは適宜変更可能である。
【0041】
<装置の動作>
次に、本実施形態のタイヤ部材の製造装置1を使用してカーカスプライPの両端部P1,P2を突き合わせ状態で接合する方法について、図6に基づいて説明する。
【0042】
まず、図6(a)に示すように、接合装置20が待機位置に位置した状態で、カーカスプライPの両端部P1、P2が開口部12に位置するように、プライコードを成形ドラム10の軸方向Lに沿わせて成形ドラム10の外周面にカーカスプライPを巻き付ける。
【0043】
次いで、図6(b)に示すように、移動機構50は、接合装置20を待機位置から成形ドラム10の開口部12の内側を通って成形ドラム10の軸方向Lへ移動させ、第1接合ローラ22がカーカスプライPの軸方向Lの中央部に達する位置(以下、この位置を「第1開始位置」ということがある)まで移動させる。
【0044】
接合装置20が第1開始位置まで移動すると、図6(c)に示すように、移動機構50は、シリンダ56によって第1上接合ローラ22bを下方へ移動させて、第1下接合ローラ22aと第1上接合ローラ22bとの間でカーカスプライPの両端部P1、P2を挟み込む。
【0045】
そして、移動機構50は、第1接合ローラ22がカーカスプライPの両端部P1,P2を上下に挟み込んだ状態で、接合装置20を軸方向の第1側(図1の図中右側)L1へ移動させ、第1接合ローラ22がカーカスプライPの軸方向Lの中央部より第1側L1においてカーカスプライPの両端部P1,P2同士を突き合わせて接合する。
【0046】
このとき、第1接合ローラ22によってカーカスプライPの端部P1,P2同士が必要以上にくっつこうとするが、第1堰板30がカーカスプライPの端部P1,P2を突き返すので、接合部の不具合となる不具合を防止することができる。
【0047】
そして、図6(d)に示すように、押圧ローラ21がカーカスプライPの軸方向Lの中央部に達すると、つまり、第1接合ローラ22によってカーカスプライPの両端部P1,P2同士が接合された箇所に押圧ローラ21が達すると、シリンダ55によって上押圧ローラ21bを下方へ移動させて、下押圧ローラ21aと上押圧ローラ21bとの間でカーカスプライPの両端部P1,P2を挟み込む。
【0048】
そして、移動機構50は、押圧ローラ21及び第1接合ローラ22がカーカスプライPの両端部P1,P2を上下に挟み込んだ状態で、図6(e)に示すように押圧ローラ21がカーカスプライPの軸方向の一方側L1に達するまで、接合装置20を軸方向の第1側(図1の図中右側)L1へ移動させる。これにより、第1接合ローラ22がカーカスプライPの軸方向Lの中央部より第1側L1においてカーカスプライPの両端部P1,P2同士を突き合わせて接合するとともに、押圧ローラ21が第1接合ローラ22で接合した箇所を押圧する。
【0049】
このように第1接合ローラ22がカーカスプライPの両端部P1,P2同士を突き合わせて接合する際に、第1支持部23は、第1接合ローラ22の移動方向前方において第1接合ローラ22で接合する直前のカーカスプライPの両端部P1,P2を支持し両端部P1,P2の垂れ下がりを抑える。
【0050】
第1接合ローラ22が軸方向Lの中央部から軸方向一方側の端部までカーカスプライPの両端部P1,P2を接合すると、図6(f)に示すように、移動機構50は、シリンダ55,56によって上押圧ローラ21bと第1上接合ローラ22bを上方へ移動させてから、接合装置20を第2接合ローラ24がカーカスプライPの軸方向Lの中央部に達する位置(以下、この位置を「第2開始位置」ということがある)まで移動させる。
【0051】
接合装置20が第2開始位置まで移動すると、図6(g)に示すように、移動機構50は、シリンダ55,57によって上押圧ローラ21bと第2上接合ローラ24bを下方へ移動させて、第2下接合ローラ24aと第2上接合ローラ24bとの間でカーカスプライPの両端部P1、P2を挟み込むとともに、下押圧ローラ21aと上押圧ローラ21bとの間でもカーカスプライPの両端部P1、P2を挟み込む。
【0052】
次いで、図6(h)に示すように、移動機構50は、押圧ローラ21及び第2接合ローラ24がカーカスプライPの両端部P1,P2を上下に挟み込んだ状態で、接合装置20を軸方向他方側(図1の図中左側)L2へ移動させる。これにより、第2接合ローラ24がカーカスプライPの軸方向Lの中央部より軸方向の第2側L2においてカーカスプライPの両端部P1,P2同士を突き合わせて接合するとともに、押圧ローラ21が第2接合ローラ24で接合した箇所を押圧する。その際、第2接合ローラ24の移動方向前方において第2支持部25が、第2接合ローラ24で接合する直前のカーカスプライPの両端部P1,P2を支持し両端部P1,P2の垂れ下がりを抑える。
【0053】
さらに、第2接合ローラ24によってカーカスプライPの端部P1,P2同士が必要以上にくっつこうとするが、第2堰板31がカーカスプライPの端部P1,P2を突き返すので、接合部の不具合となる不具合を防止することができる。
【0054】
第2接合ローラ24がカーカスプライPの軸方向Lの中央部から軸方向の第2側L2の端部までカーカスプライPの両端部P1,P2を接合し、カーカスプライPの両端部P1,P2全体の接合が終了すると、移動機構50は、シリンダ55,57によって上押圧ローラ21bと第2上接合ローラ24bを上方へ移動させてから、接合装置20を図6(a)に示す待機位置まで移動させて、カーカスプライPの接合を終了する。
【0055】
以上のように、本実施形態のタイヤ部材の製造装置1は、
コードをゴムでトッピングしたシート状のタイヤ部材Pの端部P1,P2をたぐり寄せてタイヤ部材Pの端部P1,P2同士を接合する上下左右の二対の接合ローラ22(24)と、
二対の接合ローラ22(24)が通るための軸方向Lに沿った開口部12を有し、開口部12に端部P1,P2が位置するようにタイヤ部材Pが巻き付けられる成形ドラム10と、
接合ローラ22(24)の移動方向前方においてタイヤ部材Pの下面を支持する支持部23(25)と、
接合ローラ22(24)によって接合されるタイヤ部材Pの接合面の延長線上に配置され、支持部23(25)の支持面23a(25a)から上方に突出する堰板(30,31)と、
を備える。
【0056】
本実施形態のタイヤ部材の製造方法は、
軸方向Lに沿った開口部12を有する成形ドラム10に対し、開口部12に端部P1,P2が位置するようにタイヤ部材Pを巻き付けることと、
開口部12を通る上下左右の二対の接合ローラ22(24)で、コードをゴムでトッピングしたシート状のタイヤ部材Pの端部P1,P2をたぐり寄せてタイヤ部材Pの端部P1,P2同士を接合することと、
接合ローラ22(24)の移動方向前方においてタイヤ部材Pの下面を支持部23(25)で支持することと、
接合ローラ22(24)によって接合されるタイヤ部材Pの接合面の延長線上に配置され、支持部23(25)の支持面23a(25a)から上方に突出する堰板(30,31)によりタイヤ部材Pの端部P1,P2を突き返すことと、
を含む。
【0057】
このように、接合ローラ22(24)によって接合されるタイヤ部材Pの端部P1,P2は互いにくっつこうとするが、支持部23(25)の支持面23a(25a)から上方に突出する堰板(30,31)によりタイヤ部材Pの端部P1,P2を突き返すので、接合部の不具合を抑制することが可能となる。
【0058】
本実施形態の装置又は方法において、二対の接合ローラ22(24)は、軸方向Lのうち第1側L1に進むときに動作する第1の二対の接合ローラ22と、第1の二対の接合ローラ22の後に動作し且つ軸方向Lのうち第1側L1の逆方向である第2側L2に進むときに動作する第2の二対の接合ローラ24と、を有し、
支持部23(25)は、第1の二対の接合ローラ22よりも第1側L1に配置される第1支持部23と、第2の二対の接合ローラ24よりも第2側L2に配置される第2支持部25と、を有し、
堰板(30,31)は、第1支持部23に設けられる第1堰板30と、第2支持部25に設けられる第2堰板31と、を有し、
第2堰板31の第1側L1の端面31aは、支持面25aから第2側L2に向けて傾斜して起立している。
【0059】
この構成によれば、第2堰板31が、第1接合ローラ22が接合したタイヤ部材Pの端部P1,P2に接触してもスムーズに下方に案内されるので、第2堰板31の引っ掛かりによるトラブルを防止することが可能となる。
【0060】
本実施形態の装置又は方法において、支持部23(25)は、樹脂製の台である。
【0061】
この構成によれば、カーカスプライPが支持部23(25)に密着することを抑制するので、接合部の不具合が発生することを抑制又は防止することが可能となる。
【0062】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【0064】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
P タイヤ部材(カーカスプライ)
P1 端部
P2 端部
10 成形ドラム
12 開口部
22 第1接合ローラ(接合ローラ)
23 第1支持部(支持部)
24 第2接合ローラ(接合ローラ)
25 第2支持部(支持部)
30 第1堰板(堰板)
31 第2堰板(堰板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6