【課題】基材フィルム上の無機酸化物蒸着層上にバリアコート層を積層し、その際に乾燥(加熱)工程を経た後であっても、ガスバリア性(特に水蒸気バリア性)に優れるバリアフィルムの提供。
を負荷しながら、温度20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、温度150℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で20℃まで降温させた後に測定したバリアフィルムのMD方向の熱収縮率が、0%以上0.75%以下であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<バリアフィルム>
本発明によるバリアフィルムは、少なくとも、無機酸化物蒸着層と、基材フィルムとを備えるものである。バリアフィルムは、無機酸化物蒸着層上にバリアコート層がさらに積層されることが好ましい。このような層構成のバリアフィルムは、ガスバリア性に優れるため、ガスバリア性を要求されるレトルト包装製品用のバリア層として好適に使用することができる。
【0034】
本発明の第1の態様である下記の無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、温度40℃および湿度100%RHの環境下でJIS K7129法に準拠して測定した水蒸気透過度が、好ましくは5.0g/m
2・day以下であり、より好ましくは4.0g/m
2・day以下であり、さらに好ましくは3.0g/m
2・day以下であり、さらにより好ましくは2.0g/m
2・day以下である。
水蒸気透過度が上記数値範囲を満たせば、好適な水蒸気バリア性を有しているため、水蒸気バリア性が要求される様々な用途に利用することができる。
【0035】
本発明の第2の態様である下記のバリアコート層が積層された無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、温度40℃および湿度100%RHの環境下でJIS K7129法に準拠して測定した水蒸気透過度が、好ましくは1.0g/m
2・day以下であり、より好ましくは0.8g/m
2・day以下であり、さらに好ましくは0.7g/m
2・day以下であり、さらにより好ましくは0.5g/m
2・day以下であり、特に好ましくは0.1g/m
2・day以下である。
水蒸気透過度が上記数値範囲を満たせば、好適な水蒸気バリア性を有しているため、水蒸気バリア性が要求される様々な用途に利用することができる。
【0036】
本発明の第1の態様である下記の無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、温度23℃および湿度90%RHの環境下でJIS K7126法に準拠して測定した酸度透過度が、好ましくは5.0cc/m
2・atm・day以下であり、より好ましくは4.0cc/m
2・atm・day以下を達成できることがより好ましく、さらに好ましくは3.0cc/m
2・atm・dayであり、さらにより好ましくは2.0cc/m
2・atm・dayである。
酸素透過度が上記数値範囲を達成できれば、好適な酸素バリア性を有しているため、酸素バリア性が要求される様々な用途に利用することができる。
【0037】
本発明の第2の態様である下記のバリアコート層が積層された無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、温度23℃および湿度90%RHの環境下でJIS K7126法に準拠して測定した酸度透過度が、好ましくは1.0cc/m
2・atm・day以下であり、より好ましくは0.8cc/m
2・atm・day以下であり、さらに好ましくは0.6cc/m
2・atm・day以下であり、さらにより好ましくは0.5cc/m
2・atm・day以下であり、特に好ましくは0.1cc/m
2・atm・day以下である。
酸素透過度が上記数値範囲を達成できれば、好適な酸素バリア性を有しているため、酸素バリア性が要求される様々な用途に利用することができる。
【0038】
本発明の第2の態様である下記のバリアコート層が積層された無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、光学計測装置(須賀試験機株式会社製の測定器〔機種名:ヘーズメータ〕)を用いて、JIS K7136に準拠した方法により測定することができる。なお、全光線透過率の測定は、バリアフィルムの基材フィルム側が光源側を向くようにセットして行う。
【0039】
本発明の第2の態様である下記のバリアコート層が積層された無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、ヘイズが5%未満であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましい。ヘイズは光学計測装置(須賀試験機株式会社製の測定器〔機種名:ヘーズメータ〕)を用いて、JIS K7136に準拠した方法により測定することができる。なお、ヘイズの測定は、バリアフィルムの基材フィルム側が光源側を向くようにセットして行う。
【0040】
バリアフィルムは、熱機械分析装置(TMA)を用いて下記条件で測定したMD方向の熱収縮率が一定の範囲内に調節されたものである。熱機械分析装置(TMA)を用いた熱収縮率の具体的な測定条件は以下の通りである。
バリアフィルムに単位断面積当たり荷重2.92×10
6N/m
2を負荷しながら、温度20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、温度150℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で20℃まで降温させた後にバリアフィルムの熱収縮率を測定する。
熱機械分析装置(TMA)としては、市販の製品を用いることができ、例えば、セイコーインスツル株式会社製の機種名:EXSTAR6000を用いることができる。
【0041】
本発明の第1の態様である下記の無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、上記の条件で測定したMD方向の熱収縮率が、0%以上0.75%以下であり、好ましくは0.70%以下であり、より好ましくは0.65%以下である。
【0042】
本発明の第2の態様である下記のバリアコート層が積層された無機酸化物蒸着層を備えるバリアフィルムは、上記の条件で測定したMD方向の熱収縮率が、0%以上0.70%以下であり、好ましくは0.65%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
【0043】
バリアフィルムの熱収縮率は、ポリエステルフィルムの延伸倍率、延伸後の熱固定温度、熱弛緩温度、ポリエステルフィルムの含水率や重合度を変更することで、調節することができる。バリアフィルムの熱収縮率が上記範囲内であれば、バリアコート層形成時の乾燥工程等の加熱によってバリアフィルムが収縮しても、基材フィルム上に形成された無機酸化物蒸着層やバリアコート層に微細なクラック等が生じにくく、無機酸化物蒸着層やバリアコート層により得られるガスバリア性を維持することができる。そのため、本発明のバリアフィルムは、ガスバリア性(特に水蒸気バリア性)が要求される様々な用途に利用することができる。
【0044】
本発明の一実施形態のバリアフィルムの層構成を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すバリアフィルム11は、基材フィルム12の一方の面上に無機酸化物蒸着層13を備える。バリアフィルム11は、無機酸化物蒸着層13上にバリアコート層14をさらに備えてもよい。以下、本発明のバリアフィルムを構成する各層について説明する。
【0045】
(基材フィルム)
バリアフィルムに使用される基材フィルムとしては、一軸方向または二軸方向に延伸したポリエステルフィルムを用いることができる。基材フィルムは、熱機械分析装置(TMA)を用いて下記条件で測定したMD方向の熱収縮率が一定の範囲内に調節されたものであることが好ましい。
【0046】
熱機械分析装置(TMA)を用いた熱収縮率の具体的な測定条件は以下の通りである。
基材フィルムに単位断面積当たり荷重2.92×10
6N/m
2を負荷しながら、温度20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、温度150℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で20℃まで降温させた後に基材フィルムの熱収縮率を測定する。
熱機械分析装置(TMA)としては、市販の製品を用いることができ、例えば、セイコーインスツル株式会社製の機種名:EXSTAR6000を用いることができる。
【0047】
基材フィルムは、上記の条件で測定したMD方向の熱収縮率が、0%以上1.00%以下であり、好ましくは0.95%以下であり、より好ましくは0.90%以下である。
【0048】
基材フィルムの熱収縮率は、ポリエステルフィルムの延伸倍率、延伸後の熱固定温度、熱弛緩温度、ポリエステルフィルムの含水率や重合度を変更することで、調節することができる。基材フィルムの熱収縮率が上記範囲内であれば、バリアコート層形成時の乾燥工程等の加熱によって基材フィルムが収縮しても、基材フィルム上に形成された無機酸化物蒸着層やバリアコート層に微細なクラック等が生じにくく、無機酸化物蒸着層やバリアコート層により得られるガスバリア性を維持することができる。そのため、本発明のバリアフィルムは、ガスバリア性(特に水蒸気バリア性)が要求される様々な用途に利用することができる。
【0049】
(ポリエチレンテレフタレートフィルム)
ポリエステルフィルムの種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられ、具体的には、一般的な石化燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることができる。
また、一般的な石化燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム以外にも、以下のポリエステルフィルムを用いることもできる。
【0050】
(ポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT))
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、熱変形温度が高く、機械的強度、電気的特性にすぐれ、成型加工性も良いことなどから、食品等の内容物を収容する包装袋に用いると、レトルト処理を施す際に包装袋が変形したり、その強度が低下したりすることを抑制することができる。ポリブチレンテレフタレートフィルムは、主成分としてポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも記す)を含むフィルムであり、好ましく、60質量%以上のPBTを含む樹脂フィルムである。
【0051】
(バイオマス由来のポリエステルフィルム)
バイオマス由来のポリエステルフィルムは、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールである。バイオマス由来のポリエステルフィルムは、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%含むものであってもよい。
【0052】
バイオマス由来のエチレングリコールは、サトウキビ、トウモロコシ等のバイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
【0053】
ポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0054】
バイオマス由来のポリエステルフィルムを形成する樹脂組成物は、化石燃料由来のポリエステル、化石燃料由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステル、バイオマス由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステルを1種または2種以上含んでもよい。バイオマス由来のポリエステルフィルムを形成する樹脂組成物は、5〜45質量%の割合で、化石燃料由来のポリエステル、化石燃料由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステル、バイオマス由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステルを1種または2種以上含んでもよい。
【0055】
大気中の二酸化炭素には、
14Cが一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中の
14C含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中には
14Cが殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれる
14Cの割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。
本発明において、「バイオマス度」とは、バイオマス由来成分の重量比率を示すものである。PETを例にとると、PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、PET中のバイオマス由来成分の重量比率は31.25%であるため、バイオマス度は31.25%となる(バイオマス由来のエチレングリコール由来の分子量/ポリエステルの重合1単位の分子量=60÷192)。
また、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス由来成分の重量比率は0%であり、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス度は0%となる。本発明において、基材フィルム中のバイオマス度は、5.0%以上であることが好ましく、10.0%以上であることがより好ましい。また、基材フィルム中のバイオマス度は、30.0%以下であることが好ましい。
【0056】
(リサイクルポリエチレンテレフタレート)
メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンテレフタレートを含むポリエチレンテレフタレートフィルムで、具体的には、PETボトルをメカニカルリサイクルによりリサイクルしたPETを含み、このPETは、ジオール成分がエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸を含む。イソフタル酸成分の含有量は、PETを構成する全ジカルボン酸成分中に、0.5モル%以上5モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上2.5モル%以下であることがより好ましい。
【0057】
ここで、メカニカルリサイクルとは、一般に、回収されたPETボトル等のポリエチレンテレフタレート樹脂製品を粉砕、アルカリ洗浄してPET樹脂製品の表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してPET樹脂の内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、PET樹脂からなる樹脂製品の汚れを取り除き、再びPET樹脂に戻す方法である。
【0058】
リサイクルポリエチレンテレフタレートは、リサイクルPETを50重量%以上95重量%以下の割合で含むことが好ましく、ヴァージンPETを含んでいてもよい。ヴァージンPETとしては、一般的なジオール成分がエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸のもの、さらにおよびイソフタル酸を含むものであってもよい。
【0059】
ポリエステルフィルムの膜厚は、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以上2000μm以下であり、より好ましくは7μm以上1000μm以下であり、さらに好ましくは8μm以上100μm以下である。
【0060】
(表面処理)
本発明では、上記の基材フィルムに無機酸化物蒸着膜を形成する前に、予め表面処理をおこなってもよい。これによって無機酸化物蒸着膜との接着性を向上させることができる。同様に、蒸着層上に表面処理を行い、ガスバリア性塗布膜との接着性を向上させることもできる。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理等がある。
【0061】
また、プライマーコート剤、アンダーコート剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理とすることもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0062】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。例えばプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。例えば、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵等を除去すると共にその表面の平滑化、活性化等の表面処理を可能とすることができる。また、蒸着後にプラズマ処理を行い、接着性を向上させることもできる。本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
【0063】
(無機酸化物蒸着層)
基材フィルム上に形成する蒸着層は、化学気相成長法(CVD法)または物理気相成長法(PVD法)により形成される無機酸化物の蒸着膜である。
【0064】
無機酸化物は特に限定されるものではないが、珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム等の酸化物の蒸着膜を使用することができる。特に、無機酸化物蒸着層は、酸化アルミニウムまたは酸化珪素の蒸着膜であることが好ましく、酸化アルミニウムの蒸着膜であることがより好ましい。無機酸化物の表記は、例えば、AlO
X、SiO
X等のようにMO
X(ただし、式中、Mは無機元素を表し、Xの値は無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。本発明においては、透明性やガスバリア性の観点から、Mがアルミニウム(Al)の場合、Xの値は好ましくは0.5〜2.0であり、Mが珪素(Si)の場合、Xの値は好ましくは1〜2である。
【0065】
無機酸化物蒸着層としては、蒸着材料としての扱いやすさから、物理気相成長法により、酸化アルミニウム蒸着膜を設けることが好ましい。物理気相成長法により形成される酸化アルミニウム蒸着膜は、ガスバリア性塗布膜表面との接着性に優れる。物理気相成長法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)が挙げられる。
【0066】
具体的には、アルミニウムまたはその酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、例えば、原料としてアルミニウムまたはその酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、さらに酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。
【0067】
また、無機酸化物蒸着層が酸化珪素蒸着膜の場合、耐屈曲性やガスバリア性の観点から、化学気相成長法により、酸化珪素蒸着膜を設けることが好ましい。化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、さらに、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素蒸着膜を形成することができる。低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0068】
酸化珪素蒸着膜を形成する有機珪素化合物の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0069】
酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とするものであるが、さらに、炭素、水素、窒素、珪素または酸素の1種類または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有してもよい。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、さらに、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合がある。例えば、CH
3部位を持つハイドロカーボン、SiH
3シリル、SiH
2シリレン等のハイドロシリカ、SiH
2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。
【0070】
無機酸化物蒸着層の膜厚は、好ましくは3nm以上100nm以下であり、より好ましくは4nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上30nm以下であり、さらにより好ましくは9nm以上14nm以下である。無機酸化物蒸着層の膜厚が上記範囲内であれば、十分なガスバリア性を発現することができる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、無機酸化物蒸着層は、酸化アルミニウム蒸着膜であり、酸化アルミニウム蒸着膜中には、基材フィルムの表面と酸化アルミニウム蒸着膜との剥離強度を規定する遷移領域が形成されており、該遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される、水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al
2O
4Hを含み、バリアコート層と酸化アルミニウム蒸着膜とをTOF−SIMSを用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、TOF−SIMSを用いて規定される該変成される該遷移領域の割合により定義される遷移領域の変成率が、5%以上60%以下である。これにより、135℃、40分間の湿熱殺菌処理(ハイレトルト処理)後、または121℃、40分間の湿熱殺菌処理(セミレトルト処理)後における、バリアフィルムの基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との界面の常態密着性および耐水密着性を向上することができ、ガスバリア性が劣化し難いものとすることができる。遷移領域の変成率は、5%以上45%以下であることが好ましく、5%以上30%以下であることがより好ましい。
【0072】
遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al
2O
4Hを含み、TOF−SIMSを用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、TOF−SIMSを用いて規定される。
【0073】
二次イオン質量分析(SIMS:secondary Ion MassSpectrometry)は、一次イオンビームを被分析試料表面に照射して、試料表面からスパッタリングされて放出される二次イオンを質量分析する元素濃度分布の分析方法である。この二次イオン質量分析法では、スパッタリングを進行させつつ二次イオン強度を検出する。従って、二次イオン、即ち被検出元素イオンまたは被検出元素と結合した分子イオンのイオン強度の時間推移のデータに対して、推移時間を深さに換算することで、試料表面の深さ方向の被検出元素の濃度分布を知ることができる。
【0074】
推移時間の深さへの換算は、一次イオンの照射により試料表面に形成された窪みの深さを表面粗さ計を用いて測定し、この窪みの深さと推移時間とから平均スパッタ速度を算出し、スパッタ速度が一定であるとの仮定の下に、照射時間(即ち、推移時間)を深さ(スパッタ量)に換算することでなされている。
【0075】
バリフィルムの酸化アルミニウム蒸着膜に対し、Cs(セシウム)イオン銃により上記した一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、酸化アルミニウム蒸着膜由来のイオンと、基材フィルムに由来するイオンを測定することにより、基材フィルム表面と形成された酸化アルミニウム蒸着膜を主体する蒸着膜との間に剥離強度を規定する遷移領域が形成されている。該遷移領域は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いてエッチングを行うことで検出される水酸化アルミニウムに変成する元素結合Al
2O
4Hを含み、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いてエッチングを行うことで規定される酸化アルミニウム蒸着膜に対する、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて規定される該変成される遷移領域の割合により定義される水酸化アルミニウムに変成する遷移領域の変成率を規定することで常態密着性および耐水密着性が向上したバリア性を備えるバリアフィルムを特定できる。
【0076】
具体的には、飛行時間型二次イオン質量分析計を用いてCsにより、酸化アルミニウム蒸着膜の最表面からエッチングを行い、酸化アルミニウム蒸着膜と基材フィルムとの界面の元素結合および蒸着膜の元素結合を測定し、測定された元素および元素結合について、それぞれの実測グラフを得(
図2:グラフ解析図)、酸化アルミニウム蒸着膜における水酸化アルミニウムが形成する基材フィルムと蒸着膜の界面の遷移領域を極力狭くするために、元素結合Al
2O
4Hに注目し、1)元素C
6のグラフの強度が半分になる位置を、基材フィルムと酸化アルミニウムの界面として、表面から界面までを酸化アルミニウム蒸着膜として求め、2)元素結合Al
2O
4Hを表すグラフにおけるピークを求め、そのピークから界面までを遷移領域とし、求め、3)(元素結合Al
2O
4Hのピークから界面までの遷移領域/酸化アルミニウム蒸着膜)×100(%)として遷移領域の水酸化アルミニウムへの変成率を求めるものである。
【0077】
一実施形態において、酸化アルミニウム蒸着膜の成膜は、基材フィルムの表面に、以下で説明するプラズマ前処理装置を用いた酸素プラズマ前処理を行うことが好ましい。これにより、上記遷移領域の変成率を有する酸化アルミニウム蒸着膜の形成することができ、基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との常態密着性および耐水密着性を向上させることができる。酸素プラズマ処理は、基材フィルムに垂直にバイアス電圧を持った状態で行う酸素プラズマ処理である。酸素プラズマ前処理は、各種樹脂のフィルムまたはシートと酸化アルミニウム蒸着膜との常態密着性および耐水密着性をより強化、改善するための前処理であって、次のような装置において実施することができる。
【0078】
酸化アルミニウム蒸着膜を有するバリアフィルムの製造に好適に用いられるローラー式連続蒸着膜成膜装置20は、
図3に示すように、減圧チャンバ22内に隔壁45a〜45cが形成されている。該隔壁45a〜45cにより、基材搬送室22A、プラズマ前処理室22B、成膜室22Cが形成され、特に、隔壁と隔壁45a〜45cで囲まれた空間としてプラズマ前処理室22Bおよび成膜室22Cが形成され、各室は、必要に応じて、さらに内部に排気室が形成される。
【0079】
プラズマ前処理室22B内には、前処理が行われる基材フィルムSを搬送し、かつプラズマ処理を可能にするプラズマ前処理ローラー30の一部が基材搬送室22Aに露出するように設けられており、基材フィルムSは巻き取られながらプラズマ前処理室22Bに移動するようになっている。
【0080】
プラズマ前処理室22Bおよび成膜室22Cは、基材搬送室22Aと接して設けられており、基材フィルムSを大気に触れさせないままに移動可能である。また、前処理室22Bと基材搬送室22Aの間は、矩形の穴により接続されており、その矩形の穴を通じてプラズマ前処理ローラー30の一部が基材搬送室22A側に飛び出しており、該搬送室の壁と該前処理ローラー30の間に隙間が開いており、その隙間を通じて基材フィルムSが基材搬送室22Aから成膜室22Cへ移動可能である。基材搬送室22Aと成膜室22Cとの間も同様の構造となっており、基材フィルムSを大気に触れさせずに移動可能である。
【0081】
基材搬送室22Aは、成膜ローラー33により再度基材搬送室22Aに移動させられた、片面に蒸着膜が成膜された基材フィルムSをロール状に巻き取るため、巻取り手段としての巻き取りローラーが設けられ、蒸着膜を成膜された基材フィルムSを巻き取り可能とするようになっている。
【0082】
酸化アルミニウム蒸着膜を有するバリアフィルムを製造する際、前記プラズマ前処理室22Bは、プラズマが生成する空間を他の領域と区分し、対向空間を効率よく真空排気できるように構成されることで、プラズマガス濃度の制御が容易となり、生産性が向上する。その減圧して形成する前処理圧力は、0.1Pa〜100Pa程度に設定、維持することができ、特に、酸化アルミニウム蒸着膜の好ましい遷移領域の変成率とするため酸素プラズマ前処理の処理圧力としては、1〜20Paが好ましい。
【0083】
基材フィルムSの搬送速度は、特に限定されないが、生産効率の観点から、少なくとも200〜1000m/minにすることができ、特に、酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率とするため酸素プラズマ前処理の搬送速度としては、300〜800m/minが好ましい。
【0084】
プラズマ前処理装置を構成するプラズマ前処理ローラー30は、基材フィルムSがプラズマ前処理手段によるプラズマ処理時の熱による基材の収縮や破損を防ぐこと、酸素プラズマPを基材フィルムSに対して均一にかつ広範囲に適用することを目的とするものである。
前処理ローラー30は、前処理ローラー内を循環させる温度調節媒体の温度を調整することにより、−20℃から100℃の間で、一定温度に調節することが可能であることが好ましい。
【0085】
プラズマ前処理手段は、プラズマ供給手段および磁気形成手段を含むものである。プラズマ前処理手段はプラズマ前処理ローラー30と協働し、基材フィルムS表面近傍に酸素プラズマPを閉じ込める。
【0086】
プラズマ前処理手段は、前処理ローラー30の一部を覆うように設けられている。具体的には、前処理ローラー30の外周近傍の表面に沿ってプラズマ前処理手段を構成するプラズマ供給手段と磁気形成手段を配置して、前処理ローラー30とプラズマ原料ガスを供給するとともにプラズマPを発生させる電極ともなるプラズマ供給ノズル32a〜32cとプラズマPの発生を促進するためマグネット31等を有する磁気形成手段とにより挟まれた空隙を形成するように設置する。
それにより、該空隙の空間にプラズマ供給ノズル32a〜32cを開口させてプラズマを基材表面に向かって噴射し、該空隙内をプラズマ形成領域とし、さらに、前処理ローラー30と基材フィルムSの表面近傍にプラズマ密度の高い領域を形成することで、基材フィルムSの片面にプラズマ処理面を形成する酸素プラズマ前処理が行えるように構成されている。
【0087】
プラズマ前処理手段のプラズマ供給手段は、減圧チャンバ22の外部に設けたプラズマ供給ノズルに接続された原料揮発供給装置28と、該装置から原料ガス供給を供給する原料ガス供給ラインを含むものである。供給されるプラズマ原料ガスは、酸素単独または酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスが、ガス貯留部から流量制御器を介することでガスの流量を計測しつつ供給される。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素なる群から選ばれる、1種または2種以上の混合ガスが挙げられる。プラズマ原料ガスとして酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスが用いられる場合、基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との常態密着性および耐水密着性の観点から、酸素分圧が不活性ガスの分圧よりも高い混合ガスを用いることが好ましい。
【0088】
これら供給されるガスは、必要に応じて所定の比率で混合されて、プラズマ原料ガス単独またはプラズマ形成用混合ガスに形成され、プラズマ供給手段に供給される。その単独または混合ガスは、プラズマ供給手段のプラズマ供給ノズル32a〜32cに供給され、プラズマ供給ノズル32a〜32cの供給口が開口する前処理ローラー30の外周近傍に供給される。
そのノズル開口は前処理ローラー30上の基材フィルムSに向けられ、基材フィルムSの表面全体に均一に酸素プラズマPを拡散、供給させることが可能となるように配置、構成され、基材フィルムSの大面積の部分に均一なプラズマ前処理が可能となる
【0089】
酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率とするため酸素プラズマ前処理としては、酸素ガスと前記不活性ガスとの混合比率、酸素ガス/不活性ガスは、1/1〜6/1が好ましく、3/2.5〜3/1がより好ましい。
混合比率を1/1〜6/1とすることで、基材フィルム上での蒸着アルミニウムの膜形成エネルギーが増加し、さらに3/2.5〜3/1とすることで、水酸化アルミニウムの形成が基材の界面近傍で形成される、すなわち該遷移領域の変成率が低下する。また、混合比率を3/2.5〜3/1とすることで、プラズマ放電を安定させることができる。
【0090】
前記プラズマ供給ノズル32a〜32cは、前処理ローラー30の対向電極として機能するもので、電極機能を有するようにできているものであり、前処理ローラー30との間に供給される高周波電圧、低周波電圧等による電位差によって供給されたプラズマ原料ガスが励起状態になり、プラズマPが発生し、供給される。
【0091】
具体的には、プラズマ前処理手段のプラズマ供給手段は、プラズマ電源としてプラズマ前処理ローラーを設置し、対向電極との間に周波数が10Hzから2.5GHzの交流電圧を印加し、投入電力制御または、インピーダンス制御等を行い、プラズマ前処理ローラー30との間に任意の電圧を印加した状態にすることができるものであり、基材の表面物性を物理的ないしは化学的に改質する処理ができる酸素プラズマPを正電位にするバイアス電圧を印加できる電源42を備えている。
本発明で採用する単位面積あたりのプラズマ強度として50〜8000W・sec/m2であり、50W・sec/m
2未満では、プラズマ前処理の効果がみられず、また、8000W・sec/m
2を超えると、基材の消耗、破損着色、焼成等プラズマによる基材の劣化が起きる傾向にある。特に、酸化アルミウム蒸着膜の遷移領域の変成率とするため酸素プラズマ前処理のプラズマ強度としては、100〜500W・sec/m
2が好ましい。基材フィルムに垂直にバイアス電圧を持ち上記プラズマ強度を与えることにより、安定的に酸化アルミニウム蒸着膜との常態密着性および耐水密着性を従来法より強化される。
【0092】
プラズマ前処理手段は、磁気形成手段を有している。磁気形成手段として、マグネットケース内に絶縁性スペーサ、ベースプレートが設けられ、このベースプレートにマグネット31が設けられる。マグネットケースに絶縁性シールド板が設けられ、この絶縁性シールド板に電極が取り付けられる。
したがって、マグネットケースと電極は電気的に絶縁されており、マグネットケースを減圧チャンバ22内に設置、固定しても電極は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。
【0093】
電極には電力供給配線41が接続され、電力供給配線41は電源42に接続される。また、電極内部には電極およびマグネット31の冷却のための温度調節媒体配管が設けられる。
マグネット31は、電極兼プラズマ供給手段であるプラズマ供給ノズル32a〜32cからの酸素プラズマPが基材フィルムSに集中して適用するために設けられる。マグネット31を設けることにより、基材表面近傍での反応性が高くなり、良好なプラズマ前処理面を高速で形成することが可能となる。
【0094】
マグネット31は、基材フィルムSの表面位置での磁束密度が10ガウスから10000ガウスである。基材フィルムS表面での磁束密度が10ガウス以上であれば、基材表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良好な前処理面を高速で形成することができる。
【0095】
電極のマグネット31の配置構造によりプラズマ前処理時に形成されるイオン、電子がその配置構造に従って運動するため、例えば、1m
2以上の大面積の基材フィルムSに対してプラズマ前処理をする場合においても電極表面全体にわたり、電子やイオン、基材の分解物が均一に拡散され、基材フィルムSが大面積の場合にも所望のプラズマ強度で、均一かつ安定した目的の前処理が可能となるものである。
【0096】
次に、特殊酸化プラズマ処理された基材フィルムSは、次の成膜室22Cに導くためのガイドロール24a〜24dにより基材搬送室22Aから成膜室22Cに移動し、成膜区画で酸化アルミニウム蒸着膜が形成される。酸化アルミニウム蒸着膜の製膜について、以下説明する。
【0097】
減圧された成膜室22C内に配置され、プラズマ前処理装置で前処理された基材フィルムSの処理面を外側にして基材フィルムSを巻きかけて搬送し、成膜処理する成膜ローラー33と、該成膜ローラーに対向して配置された成膜源34のターゲットを蒸発させて基材フィルム表面に蒸着膜を成膜する。
蒸着膜成膜手段34は抵抗加熱方式であり、アルミニウムを蒸発源としてアルミニウムの金属線材を用い、酸素を供給ししてアルミニウム蒸気を酸化しつつ、基材フィルムSの表面に酸化アルミニウム蒸着膜を成膜させる。
【0098】
一実施形態においては、舟形(「ボートタイプ」という)蒸着容器に、ローラー33の軸方向にアルミニウムの金属線材を複数配置し、抵抗加熱式により加熱する。このようにすることで、供給される熱、熱量を抑えてアルミニウムの金属材料を蒸発させることができ、基材フィルムSの熱的変形性を極力抑えながら酸化アルミニウム蒸着膜を成膜することができる。
【0099】
一実施形態において、内容物のハイレトルト処理を行う包装材料の用途では、酸素ガスと不活性ガスとの混合比率を3/2.5〜3/1、前処理圧力を1〜20Pa、およびプラズマ強度を100〜500W・sec/m
2として酸素プラズマ前処理を行い、さらに、無機酸化物蒸着層の厚さを9〜14nmとすることが特に好ましい。これにより、バリアフィルムの基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との界面の常態密着性および耐水密着性をより向上することができ、ガスバリア性がより劣化し難いものとすることができる。
【0100】
本発明の別の好ましい実施形態において、無機酸化物蒸着層は、酸化アルミニウム蒸着膜であり、酸化アルミニウム蒸着膜中には、Al
3で表される元素結合構造部が分布し、バリアフィルムを、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)で分析した際の、酸化アルミニウム蒸着膜中の最大Al
3濃度元素結合構造部分の強度比率Al
3/Al
2O
3×100が、1以上20以下である。該強度比率を1以上とすることにより、蒸着膜の緻密性が向上して、ガスバリア性をより向上することができる。また、該強度比率を20以下とすることにより、アルミニウムによる着色を抑えることができ、透明性に優れるバリアフィルムとすることができる。該強度比率は、1以上10以下であることが好ましい。
【0101】
酸化アルミニウム蒸着膜中には、Al
3で表される元素結合構造部が分布しており、Al
3で表される元素結合構造部の存在率は、該酸化アルミニウム蒸着膜の深さ位置によって異なっている。
Al
3で表される元素結合構造部の存在率は、Al
2O
3(酸化アルミニウム)との存在比で表現することができ、具体的には、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)によって検出されるAl
3の強度と、Al
2O
3の強度との比である、強度比率Al
3/Al
2O
3によって表現することができる。
【0102】
最大Al
3濃度元素結合構造部分が、酸化アルミニウム蒸着膜の基材フィルムとは反対側の表面から、酸化アルミニウム蒸着膜の膜厚の4%以上45%以下の深さ位置に存在することが好ましい。これにより、酸化アルミニウム蒸着膜の最表面が、酸化度・水酸化度を持った酸化アルミニウム膜になり、バリアコート層との接着が良くなり、ガスバリア性が向上する。また、酸化アルミニウム蒸着膜の膜厚の4%以上45%以下の深さ位置に最大Al
3濃度元素結合構造部分を設けることで、蒸着膜の緻密性を向上させるとともに、バリアコート層を積層させたときにしみ込んだバリアコート組成物とアルミとの反応性が起こりやすく、バリアコート層との接着がさらに良くなる。
【0103】
酸化アルミニウム蒸着膜中の、Al
3濃度とAl
2O
3濃度、さらには、最大Al
3濃度元素結合構造部分の深さ位置は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定され、最大Al
3濃度元素結合構造部分の深さ位置が特定され、強度比率Al
3/Al
2O
3が算出される。
【0104】
ここで、スパッタリングを進行させつつ二次イオン強度を検出することによって、二次イオン、即ち被検出元素イオンまたは被検出元素と結合した分子イオンのイオン強度の時間推移のデータに対して、推移時間を深さに換算することで、該試料表面の深さ方向の被検出元素の濃度分布を知ることができる。
そして、予め、一次イオンの照射により試料表面に形成された窪みの深さを表面粗さ計を用いて測定して、この窪みの深さと推移時間とから平均スパッタ速度を算出しておき、スパッタ速度が一定であるとの仮定の下に、照射時間(即ち、推移時間)または照射サイクル数から、深さ(スパッタ量)を算出することが可能である。
【0105】
バリアフィルムの酸化アルミニウム蒸着膜に対し、好ましくは、深い領域まで測定する為にCs(セシウム)イオン銃を用いて、上記のように一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、酸化アルミニウム蒸着膜層由来のAl
3、Al
2O
3のイオンと、基材フィルムに由来するC
6イオンを測定することにより、各イオンの強度比率を算出できる。
【0106】
また、酸化アルミニウム蒸着膜層、基材フィルムの界面を特定することで、検出されるイオンの最大値が界面からどの深さの位置に存在するか知ることができる。すなわち、C
6のイオンの強度が最大値の半分になる位置を、基材フィルムと酸化アルミニウム膜との界面であると定義することで、検出されるイオンの強度の最大値が、酸化アルミニウム膜のどの深さの位置にあるかを知ることができる。
【0107】
測定結果は、例えば、
図4に示したようなグラフとして得ることができる。
図4のグラフにおいて、縦軸の単位(intensity)は、測定されたイオンの強度であり、横軸の単位(cycle)はエッチングの回数である。
そして、各サイクルにおける酸化アルミニウム蒸着膜内の深さと、Al
3強度、Al
2O
3強度が得られ、強度比率Al
3/Al
2O
3を求め、最大Al
3強度を示した時の、強度比率Al
3/Al
2O
3と、該深さの酸化アルミニウム蒸着膜層厚に対する割合を算出することが出来る。
【0108】
一実施形態において、酸化アルミニウム蒸着膜の成膜は、以下で説明する装置を用いて行うことが好ましい。これにより、上強度比率を有する酸化アルミニウム蒸着膜の形成することができ、バリアフィルムのバリア性を向上させるができる。酸化アルミニウム蒸着膜の成膜は、
図3に示すような、ローラー式連続蒸着膜成膜装置20により行ってもよい。
さらに好ましい実施形態において、酸化アルミニウム蒸着膜の成膜は、基材フィルムの表面に、上記で説明した酸素プラズマ前処理を行うことが好ましい。これにより、バリア性を向上することができると共に、基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との界面の常態密着性および耐水密着性を向上することができる。
以下、酸化アルミニウム蒸着膜の成膜方法について、
図3を参照しながら説明する。
【0109】
酸化アルミニウム蒸着膜を有するバリアフィルムの製造に好適に用いられるローラー式連続蒸着膜成膜装置20は、
図3に示すように、減圧チャンバ22内に隔壁45a〜45cが形成されている。該隔壁45a〜45cにより、基材搬送室22A、プラズマ前処理室22B、成膜室22Cが形成され、特に、隔壁と隔壁45a〜45cで囲まれた空間としてプラズマ前処理室22Bおよび成膜室22Cが形成され、各室は、必要に応じて、さらに内部に排気室が形成される。
【0110】
酸素プラズマ前処理工程については、上述したため、ここでの説明は省略する。
【0111】
酸化プラズマ処理された基材フィルムSは、成膜室22Cに導くためのガイドロール24a〜24dにより基材搬送室22Aから成膜室22Cに移動し、成膜区画で酸化アルミニウム蒸着膜が形成される。
【0112】
減圧された成膜室22C内に配置され、プラズマ前処理装置で前処理された基材フィルムSの処理面を外側にして基材フィルムSを巻きかけて搬送し、成膜処理する成膜ローラー33と、該成膜ローラーに対向して配置された成膜源34のターゲットを蒸発させて基材フィルム表面に蒸着膜を成膜する。
【0113】
蒸着膜成膜手段34は抵抗加熱方式であり、アルミニウムを蒸発源としてアルミニウムの金属線材を用い、酸素を供給ししてアルミニウム蒸気を酸化しつつ、基材フィルムSの表面に酸化アルミニウム蒸着膜を成膜させる。
【0114】
酸素は、酸素単体でも、アルゴンのような不活性ガスとの混合ガスでの供給でもよいが、最大Al
3濃度元素結合構造部分が生じる酸素量の調整が重要である。これにより、高いガスバリア性を有すると共に、透明性に優れるバリアフィルムとすることができる。酸素量の調整は、装置のサイズやポンプの排気量等の要素に応じて適宜設定してもよい。
【0115】
一実施形態においては、舟形(「ボートタイプ」という)蒸着容器に、ローラー33の軸方向にアルミニウムの金属線材を複数配置し、抵抗加熱式により加熱する。このようにすることで、供給される熱、熱量を抑えてアルミニウムの金属材料を蒸発させることができ、基材フィルムSの熱的変形性を極力抑えながら酸化アルミニウム蒸着膜を成膜することができる。
【0116】
(バリアコート層)
無機酸化物蒸着層上に形成するバリアコート層は、ガスバリア性を有する層であり、コーティングによって塗布された塗布膜が、乾燥により硬化した樹脂硬化膜である。
【0117】
バリアコート層の第1の態様としては、金属アルコキシドの加水分解生成物と水溶性高分子との硬化膜を用いることができる。このバリアコート層は、例えば、下記のガスバリア性塗布膜により形成することができる。ガスバリア性塗布膜は、高温多湿環境下でのガスバリア性を保持する塗膜であり、ガスバリア性塗布膜は、高温多湿環境下でのガスバリア性を保持する塗膜であり、一般式R
1nM(OR
2)
m(ただし、式中、R
1、R
2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上の金属アルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるバリアコート組成物からなる塗布膜である。
【0118】
上記一般式R
1nM(OR
2)
m中、R
1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等を挙げることができる。
【0119】
上記一般式R
1nM(OR
2)
m中、R
2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR
2)が存在する場合には、(OR
2)は同一であっても、異なってもよい。
【0120】
上記一般式R
1nM(OR
2)
m中、Mで表される金属原子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等を例示することができる。
【0121】
上記一般式R
1nM(OR
2)
mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、さらに、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
【0122】
本発明では、上記一般式R
1nM(OR
2)
mで表されるアルコキシドとして、MがSiであるアルコキシシランを好適に使用することができる。好適なアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシランSi(OCH
3)
4、テトラエトキシシランSi(OC
2H
5)
4、テトラプロポキシシランSi(OC
3H
7)
4、テトラブトキシシランSi(OC
4H
9)
4、メチルトリメトキシシランCH
3Si(OCH
3)
3、メチルトリエトキシシランCH
3Si(OC
2H
5)
3、ジメチルジメトキシシラン(CH
3)
2Si(OCH
3)
2、ジメチルジエトキシシラン(CH
3)
2Si(OC
2H
5)
2等が挙げられる。本発明において、これらのアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン等を使用することができる。
【0123】
本発明では、上記一般式R
1nM(OR
2)
mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。好適なジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH
3)
4、テトラエトキシジルコニウムZr(OC
2H
5)
4、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−OC
3H
7)
4、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC
4H
9)
4等を例示することができる。
【0124】
また、上記一般式R
1nM(OR
2)
mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドも好適に使用することができる。好適なチタニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH
3)
4、テトラエトキシチタニウムTi(OC
2H
5)
4、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC
3H
7)
4、テトラnブトキシチタニウムTi(OC
4H
9)
4等を例示することができる。
【0125】
また、上記一般式R
1nM(OR
2)
mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドも好適に使用することができる。好適なアルミニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH
3)
4、テトラエトキシアルミニウムAl(OC
2H
5)
4、テトライソプロポキシアルミニウムAl(iso−OC
3H
7)
4、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC
4H
9)
4等を例示することができる。
【0126】
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるバリアフィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができる。また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。
【0127】
本発明で使用する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
【0128】
ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。
【0129】
エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。
【0130】
また、バリアコート層にシランカップリング剤を添加してもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、アセトキシ基、アミノ基、エポキシ基等の反応基を有するシランカップリング剤が、使用できる。具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、あるいは、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。
【0131】
さらに、上記のバリアコート組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等を用いることができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤等を含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。
【0132】
バリアコート層は、以下の方法で製造することができる。まず、上記金属アルコキシド、必要に応じてシランカップリング剤、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒等を混合し、バリアコート組成物(バリアコート液)を調製する。
【0133】
次いで、該バリアコート組成物を上記無機酸化物蒸着層の上に塗布する。バリアコート組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができる。
【0134】
次いで、上記バリアコート組成物を塗布したフィルムを120℃〜200℃、かつバリアフィルムの基材フィルムの樹脂フィルムの融点以下の温度、好ましくは130℃〜180℃、より好ましくは140℃〜160℃の範囲の温度で、3秒〜10分間加熱・乾燥する。これによって、重縮合が行われ、バリアコート層を形成することができる。また、上記バリアコート組成物を無機酸化物蒸着層の上に重ねて塗布して塗布膜を2層以上重層し、120℃〜200℃、かつ、上記樹脂基材の融点以下の温度で3秒〜10分間加熱乾燥処理して、バリアコート層を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。以上により、上記バリアコート組成物によるバリアコート層を1層ないし2層以上形成することができる。
【0135】
バリアコート層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10nm以上5000nm以下であり、より好ましくは50nm以上1000nm以下であり、さらに好ましくは100nm以上500nm以下であり、さらにより好ましくは150nm以上400nm以下である。バリアコート層の厚さが上記範囲程度であれば、ガスバリア性が発現できて、かつ柔軟性を備えた層として無機酸化物蒸着層表面を被覆することができる。
【0136】
バリアコート層の第2の態様としては、金属酸化物とリン化合物とが反応してなる反応生成物を含む樹脂硬化膜を用いることができる。この樹脂硬化膜はガスバリア性を有し、800〜1400cm-1の範囲における赤外線吸収スペクトルの赤外線吸収が最大となる波数が1080〜1130cm-1の範囲にあるものである。
【0137】
前記反応生成物において、金属酸化物を構成する金属原子(M)とリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM−O−Pで表される結合が生成すると、M−O−Pの結合に基づく吸収ピークが、1080〜1130cm-1の範囲に800〜1400cm-1の領域における最大吸収波数の吸収ピークとして現れるものと考えられている。
【0138】
この赤外線吸収スペクトルは、バリアコート層の表面を全反射測定法で測定するか、または、バリアコート層をかき取った成分の赤外線吸収スペクトルをKBr法で測定することによって得ることができる。
【0139】
金属酸化物は、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム等の酸化物である。
【0140】
そして、金属酸化物は、当該金属原子を含む化合物を加水分解して得ることができ、金属酸化物を加水分解によって生成することができる化合物としては、塩化アルミニウム、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリノルマルプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリノルマルブトキシド、アルミニウムトリs−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシド、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート、硝酸アルミニウム、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ(2−エチルヘキソキシド)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0141】
リン化合物は、ハロゲン原子または酸素原子がリン原子に直接結合した構造を有するものを用いることができる。具体的には、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体であり、ポリリン酸としては、ピロリン酸、三リン酸、4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸等であり、誘導体の例としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸の、塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物(塩化物等)、脱水物(五酸化ニリン等)等である。
【0142】
反応生成物は、金属酸化物とリン化合物とを混合し反応させることにより形成することができる。その際、混合されるリン化合物は、そのものの形態或いはリン化合物と添加樹脂を含む組成物の形態でも良い。
【0143】
このような添加樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸/メタクリル酸)およびそれらの塩、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のけん化物等である。
【0144】
本発明においては、このバリアコート層は無機酸化物蒸着層に、金属酸化物とリン化合物が混合した塗布液をコーティングし、乾燥することで積層することができ、その厚さは、0.05〜1μmである。
【0145】
なお、前記塗布液は、まず、金属酸化物を加水分解によって生成することができる化合物を分散・溶解して金属酸化物が生成した水溶液を、リン化合物を分散・溶解した溶媒、或いはリン化合物と添加樹脂を含む組成物を分散・溶解した溶媒に加えることで作ることができる。
【0146】
バリアコート層の第3の態様としては、多価金属化合物によって架橋されたカルボキシル基含有重合体を含む樹脂硬化膜を用いることができる。この樹脂硬化膜はガスバリア性を有する。
【0147】
カルボキシル基含有重合体は、カルボキシル基を2個以上含有する重合体であって、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、あるいはこれらの2種以上の混合物である。
【0148】
多価金属化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムの金属化合物およびそれらの酸化物、炭酸塩、有機酸塩である。これら酸化物、炭酸塩としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト等の酸化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;乳酸カルシウム、乳酸亜鉛、アクリル酸カルシウム等の有機酸塩である。多価金属化合物によって架橋されたカルボキシル基含有重合体を含む樹脂膜は、カルボキシル基含有重合体と多価金属化合物を混合した樹脂硬化膜として作ることができる。
【0149】
また、この樹脂膜の別の形態としては、カルボキシル基含有重合体を含む樹脂層に隣接して多価金属化合物を含む層を積層した2層構成とすることで、作ることができる。カルボキシル基含有重合体を含む樹脂層が、離接している多価金属化合物を含む層から移行した多価金属イオンによってイオン架橋されて、硬化樹脂膜となる。
【0150】
カルボキシル基含有重合体を含む樹脂層には、カルボキシル基を2個以上含有する重合体のほか、ポリビニールアルコール、グリセリンのようなポリアルコール類を含むことができる。そして、カルボキシル基を2個以上含有する重合体とポリビニールアルコールは、99:1〜20:80の重量比で混合される。
【0151】
多価金属化合物を含む層は、上述した金属化合物を、混合用樹脂のアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、イソシアネートの群から選ばれた少なくとも一種の樹脂に混在させた層である。多価金属化合物と樹脂との重量割合(金属化合物/樹脂)は、0.01〜1000である。多価金属化合物は、平均粒径が15nm〜500nmの粒子の形で樹脂層に混在している。
【0152】
本発明においては、このバリアコート層は無機酸化物蒸着層に、カルボキシル基含有重合体と多価金属化合を混合した樹脂を水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルの単体あるいは混合液に分散・溶解した塗布液をコーティングし、乾燥することで積層することができ、その厚さは、0.1〜10μmである。
【0153】
別の方法としては、無機酸化物蒸着層に、まず、カルボキシル基含有重合体を含有する層を積層する。この積層は、カルボキシル基含有重合体とその他必要な添加物を、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解または分散させた塗布液をコーティングし、乾燥することでなされ、その厚さは、0.1〜10μmである。
【0154】
次に、多価金属化合物と樹脂を、前記溶媒のほか、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて、カルボキシル基含有重合体を含む樹脂層のコーティングし乾燥することで、多価金属化合物を含む層を、厚さ0.1〜10μmで積層する。
【0155】
このようにカルボキシル基含有重合体を含む樹脂層上に多価金属化合物を含む層を積層することにより、多価金属化合物を含む層から移行した多価金属イオンによってカルボキシル基含有重合体イオン架橋されて、樹脂硬化膜となる。多価金属イオンの移行促進のため、2層を形成した後に、30〜130度の加温環境下でエージングを行うことがある。
【0156】
<包装材料>
本発明による包装材料は、ヒートシール層と、接着層と、上記のバリアフィルムからなるバリア層とをこの順に備えてなるものであり、本発明の包装材料はこのような層構成であるため、高いガスバリア性が要求される包装製品用の包装材料として好適に用いることができる。
【0157】
本発明の包装材料の層構成を、図面を参照しながら説明する。
図5に示す包装材料50は、最外層側から順に、基材フィルム52(最外層)、無機酸化物蒸着層53、およびバリアコート層54を有するバリア層51(バリアフィルム)を備え、バリア層51のバリアコート層54側(内側)に、接着層55と、ヒートシール層56(最内層)とをこの順に備える。また、
図6および
図7に示すように、包装材料50は、バリアコート層54と接着層55の間、または接着層55とヒートシール層56の間に、中間層57をさらに備えてもよい。さらに、包装材料50が中間層57を備える場合には、
図8に示すように、包装材料50は、バリアコート層54と中間層57の間、および中間層57とヒートシール層56の間に、それぞれ接着層55を備えてもよい。
【0158】
包装材料は、JIS K6854−2に準拠して測定された基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との水付け剥離強度が、好ましくは1.0N以上であり、より好ましくは2.0N以上である。本発明における水付け剥離強度は、以下の方法によって測定されたものである。
【0159】
引張試験機としては、株式会社オリエンテック社製のテンシロン万能材料試験機を用いる。まず、
図9に示すように、例えば、基材フィルム52側と、ヒートシール層56側(例えば、無機酸化物蒸着層53、バリアコート層54、接着層55およびヒートシール層56)とを長辺方向において15mm剥離させた状態の矩形状の試験片60を準備する。試験片60の幅(短辺の長さ)は15mmとする。
次に、試験片の長手方向にそってみた場合における、基材フィルム52とヒートシール層56側とが接合を維持している部分と、基材フィルム52側とヒートシール層56側とが引き剥がされている部分との境界部分にスポイトで水を滴下した。
その後、
図10に示すように、基材フィルム52側およびヒートシール層56側のうち既に剥離されている部分をそれぞれ、測定器のつかみ具61およびつかみ具62で把持する。また、つかみ具61,62をそれぞれ、基材フィルム52側とヒートシール層56側とがまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに(180°剥離:T字剥離法)、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域(
図11参照)における引張応力の平均値を測定する。引っ張りを開始する際の、つかみ具61,62間の間隔Sは30mmとし、引っ張りを終了する際の、つかみ具61,62間の間隔Sは60mmとする。
図11は、つかみ具61,62間の間隔Sに対する引張応力の変化を示す図である。
図11に示すように、間隔Sに対する引張応力の変化は、第1領域を経て、第1領域よりも変化率の小さい第2領域(安定領域)に入る。安定領域における引張応力の平均値を測定し、その値をバリアフィルムの基材フィルムと酸化アルミウム蒸着膜との剥離強度とする。
【0160】
包装材料は、135℃で40分間の湿熱殺菌処理後に、温度23℃および湿度90%RHの環境下でJIS K7126法に準拠して測定した酸度透過度が、好ましくは0.50cc/m
2・atm・day以下であり、より好ましくは0.30cc/m
2・atm・day以下であり、さらに好ましくは0.20cc/m
2・atm・day以下である。包装材料は、湿熱殺菌処理後の酸素透過度が上記数値範囲を満たせば、好適な酸素バリア性を有しているため、レトルト包装製品であっても包装材料の内容物に対する悪影響を抑制することができる。
【0161】
包装材料は、135℃で40分間の湿熱殺菌処理後に、温度40℃および湿度100%RHの環境下でJIS K7129法に準拠して測定した水蒸気透過度が、好ましくは1.20g/m
2・day以下であり、より好ましくは1.00g/m
2・day以下であり、さらに好ましくは0.70g/m
2・day以下であり、さらにより好ましくは0.50g/m
2・day以下であり、特に好ましくは0.40g/m
2・day以下である。包装材料は、湿熱殺菌処理後の水蒸気透過度が上記数値範囲を満たせば、好適な水蒸気バリア性を有しているため、レトルト包装製品であっても包装材料の内容物に対する悪影響を抑制することができる。
【0162】
包装材料は、135℃で40分間の湿熱殺菌処理後に、JIS K6854−2に準拠して測定された基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との常態剥離強度が、好ましくは1.0N以上であり、より好ましくは2.0N以上である。本発明における常態剥離強度は、以下の方法によって測定されたものである。
【0163】
引張試験機としては、株式会社オリエンテック社製のテンシロン万能材料試験機を用いる。まず、
図12に示すように、例えば、基材フィルム52側と、ヒートシール層56側(例えば、無機酸化物蒸着層53、バリアコート層54、接着層55、中間層57、接着層55およびヒートシール層56)とを長辺方向において15mm剥離させた状態の矩形状の試験片60を準備する。試験片60の幅(短辺の長さ)は15mmとする。その後、
図13に示すように、基材フィルム52側およびヒートシール層56側のうち既に剥離されている部分をそれぞれ、測定器のつかみ具61およびつかみ具62で把持する。また、つかみ具61,62をそれぞれ、基材フィルム52側とヒートシール層56側とがまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに(180°剥離:T字剥離法)、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域(
図11参照)における引張応力の平均値を測定する。引っ張りを開始する際の、つかみ具61,62間の間隔Sは30mmとし、引っ張りを終了する際の、つかみ具61,62間の間隔Sは60mmとする。
図11は、つかみ具61,62間の間隔Sに対する引張応力の変化を示す図である。
図11に示すように、間隔Sに対する引張応力の変化は、第1領域を経て、第1領域よりも変化率の小さい第2領域(安定領域)に入る。安定領域における引張応力の平均値を測定し、その値をバリアフィルムの基材フィルムと酸化アルミウム蒸着膜との剥離強度とする。
【0164】
包装材料は、135℃で40分間の湿熱殺菌処理後に、JIS K6854−2に準拠して測定された基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜との水付け剥離強度が、好ましくは1.0N以上であり、より好ましくは2.0N以上である。本発明における水付け剥離強度は、以下の方法によって測定されたものである。
【0165】
135℃で40分間の湿熱殺菌処理後の水付け剥離強度は、以下に記載する点を除き、135℃で40分間の湿熱殺菌処理後の常態剥離強度を測定する方法と同様の方法によって測定する。水付け剥離強度の測定においては、試験片の基材フィルム側とヒートシール層側とを15mm引き剥がした上で、基材フィルム側とヒートシール層側との接着界面の剥離強度を測定する。また、水付け剥離強度の測定においては、剥離強度の測定を行う際に、試験片の長手方向にそってみた場合における、基材フィルム側とヒートシール層側とが接合を維持している部分と、基材フィルム側とヒートシール層側とが引き剥がされている部分との境界部分にスポイトで水を滴下した状態で、測定を行う。
【0166】
以下、本発明の包装材料を構成する各層について説明する。なお、包装材料におけるバリア層は、既に詳述したバリアフィルムであるため、ここでの説明は省略する。
【0167】
(中間層)
本発明の包装材料において、包装材料としての耐久性や耐屈曲性等を付与するための中間層として各種の樹脂層や樹脂フィルムを用いることができる。例えば、中間層としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、または、ポリアミド系樹脂を用いることができ、ポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。ポリアミド系樹脂としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−9−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)等のナイロン類を挙げることができる。また、ナイロン6とナイロン6,6 との共重合体であるナイロン6−6,6、ナイロン6とナイロン6−12との共重合体であるナイロン6−12等も用いることができる。これらのナイロン類を用いることで、包装材料に耐屈曲性を付与することができる。中間層の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法により形成することができる。例えば、中間層は、樹脂を押出成形により形成してもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
【0168】
中間層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5μm〜100μm程度であり、より好ましくは10μm〜50μm程度である。
【0169】
(ヒートシール層)
本発明の包装材料において、ヒートシール層としては熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、これらのポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を使用することができる。
【0170】
上記の1種ないし2種以上の熱可塑性樹脂を使用して、これを押出機等を用いて、所望によりアンカーコート層等を介して中間層上に溶融押出して、ヒートシール層を形成することができる。あるいは、上記の1種ないし2種以上の熱可塑性樹脂を使用して、予め該樹脂のフィルムないしシートを製造し、製造したフィルムないしシートを、ラミネート用接着剤層等を介して中間層上にドライラミネート積層して、ヒートシール層を形成することもできる。
【0171】
所望の性質を得るために、上記の樹脂に、他の樹脂をブレンドして用いることもできる。また、種々の添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、染料、顔料等を任意に添加して使用することができる。
【0172】
ヒートシール層の厚さは、特に限定されないが、シール不良を防ぐために、好ましくは10μm〜300μm程度であり、より好ましくは20μm〜100μm程度である。
【0173】
(接着層)
本発明の包装材料において、包装材料は、バリア層と中間層の間、および/または中間層とヒートシール層の間に、接着層をさらに備えてもよい。接着層としては、接着性樹脂層や接着剤層等が挙げられる。包装材料は接着層を備えることにより、各層の界面のラミネート強度を向上させることができる。
【0174】
接着性樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂等を用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネン等の環状ポリオレフィン等を用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。
【0175】
接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等の接着剤を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法でバリア性積層体を構成する層の塗布面に塗布することができる。塗布量としては、0.1g/m
2以上10g/m
2以下(乾燥状態)が好ましく、1g/m
2以上5g/m
2以下(乾燥状態)がより好ましい。
【実施例】
【0176】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0177】
<<実験I>>
[実施例1−1〜1−4]、[比較例1−1〜1−5]
<バリアフィルムの製造>
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「フィルムI」という)を準備した。なお、フィルムIは、フィルム延伸倍率、延伸後の熱固定温度、熱弛緩温度、PETフィルムの含水率や重合度を調節して、熱収縮率が異なるものを9種類用意した。
【0178】
(無機酸化物蒸着層の形成)
各フィルムIの無機酸化物蒸着層を形成する面にプラズマ前処理を施し、連続してプラズマ処理面上に下記条件において真空蒸着法の加熱手段として反応性抵抗加熱方式により、厚さ12nmの酸化アルミニウム蒸着膜(無機酸化物蒸着層)を形成したPETフィルム(以下、「フィルムII」という)を得た。
(酸化アルミニウム成膜条件)
・真空度:8.1×10
−2Pa
【0179】
(バリアコート層の形成)
また、表1に示す組成に従って、調製した組成Aの混合液に、予め調製した組成Bの加水分解液を加えて攪拌し、無色透明のバリアコート組成物を得た。
【表1】
【0180】
次に、各フィルムIIの酸化アルミニウム蒸着膜上に、上記で調製したバリアコート組成物をダイレクトグラビア法によりコーティングした。その後、150℃で60秒間、加熱処理して、厚さ300nm(乾操状態)のバリアコート層を形成し、バリアフィルム(以下、「フィルムIII」という)を得た。
【0181】
(熱収縮率の測定)
上記で製造した各フィルムI〜IIIについて、縦20mm、横5mmの大きさで、PETフィルムのMD方向が縦方向となるように試験片を作製した。作製した試験片について、熱機械分析装置(TMA、セイコーインスツル株式会社、機種名:EXSTAR6000)を用いて、フィルムに単位断面積当たり荷重2.92×10
6N/m
2を負荷しながら、温度20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、温度150℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で20℃まで降温させた。その後、PETフィルムのMD方向の熱収縮率(%)を測定した。測定結果を表2に示した。
【0182】
(水蒸気透過度の測定)
上記で製造した各フィルムII〜IIIについて、水蒸気透過度測定装置(モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN)3/33〕)を用いて、センサー側がバリアフィルムの基材フィルム面となるようにセットし、40℃、100%RH雰囲気下の測定条件で、JIS K7129法に準拠して、水蒸気透過度(g/m
2・day)を測定した。測定結果を表2に示した。
【0183】
(酸素透過度の測定)
上記で製造した各フィルムII〜IIIについて、酸素透過度測定装置(モダンコントロール(MOCON)社製〔機種名:オクストラン(OX−TRAN)2/21〕)を用いて、酸素供給側がバリアフィルムの基材フィルム面となるようにセットし、23℃、90%RH雰囲気下の測定条件で、JIS K7126法に準拠して、酸素透過度(cc/m
2・atm・day)を測定した。測定結果を表2に示した。
【0184】
【表2】
【0185】
表2の結果から、延伸ポリエステルフィルム単体のフィルムIやバリアコート層形成前のフィルムIIの熱収縮率の値に関わらず、バリアコート層形成後のフィルムIIIは、バリアコート層形成前のフィルムIIに比べて酸素透過度を向上できていた。
また、フィルムIIの熱収縮率の値が0.75%以下のものでは、バリアコート層形成後のフィルムIIIは、フィルムIIに比べて水蒸気透過度を向上できていたが、一方で、フィルムIIの熱収縮率の値が0.75%を超えるものでは、フィルムIIIは、フィルムIIに比べて水蒸気透過度が劣化していた。この理由は、フィルムIIの熱収縮率の値が0.75%を超えるものでは、バリアコート層の150℃での乾燥時に、基材フィルムの熱収縮に無機酸化物蒸着層やバリアコート層が追従できず、基材フィルムと無機酸化物蒸着層の界面で僅かな剥がれが発生したり、無機酸化物蒸着層やバリアコート層に微細なクラックが発生したりすることで、酸素に比べて分子の小さい水に対するバリア機能が低下するものと考えられる。
【0186】
<包装材料の製造>
上記で得られた実施例1−1〜1−4のバリアフィルム(フィルムIII)のバリアコート層上に、接着剤を介して、無軸延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚さ70μm)を積層して、包装材料(層構成:基材フィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層/接着層/CPPフィルム(ヒートシール層))を得た。
【0187】
得られた実施例1−1〜1−4の包装材料について、バリアフィルムの測定と同様にして水蒸気透過度および酸素透過度を測定したところ、いずれも、水蒸気透過度は0.5g/m
2・day以下であり、酸素透過度は0.5cc/m
2・atm・day以下であった。
【0188】
<<実験II>>
[実施例2−1]
<酸化アルミニウム蒸着膜の形成>
まず、基材フィルムである厚さ12μmの化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(フィルムI)を巻き取ったロールを準備した。
次に、このフィルムIの無機酸化物蒸着層を設ける面に、酸素プラズマ前処理装置を配置した前処理区画と成膜区画を隔離した連続蒸着膜成膜装置を用いて、前処理区画において下記条件下でプラズマ供給ノズルからプラズマを導入し、搬送速度400m/minで酸素プラズマ前処理を施し、連続搬送した成膜区画内で、酸素プラズマ処理面上に、下記条件において真空蒸着法の加熱手段として反応性抵抗加熱方式により、厚さ12nmの酸化アルミニウム蒸着膜(無機酸化物蒸着層)をフィルムI上に形成した(フィルムII)。
(酸素プラズマ前処理条件)
・プラズマ強度:200W・sec/m
2
・プラズマ形成ガス比:酸素/アルゴン=2/1
・前処理ドラム−プラズマ供給ノズル間印加電圧:340V
・前処理圧力:3.8Pa
(酸化アルミニウム成膜条件)
・真空度:8.1×10
−2Pa
・搬送速度:400m/min
・酸素ガス供給量:20000sccm
【0189】
<バリアコート層の形成>
水385g、イソプロピルアルコール67gおよび0.5N塩酸9.1gを混合し、pH2.2に調整した溶液に、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン175gと、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン9.2gを10℃となるよう冷却しながら混合させて溶液Cを調製した。
水溶性高分子として、ケン価度99%以上の重合度2400のポリビニルアルコール14.7g、水324g、イソプロピルアルコール17gを混合した溶液Dを調製した。
C液とD液を重量比6.5:3.5となるよう混合して得られた溶液をバリアコート組成物とした。
上記のフィルムIIの酸化アルミニウム蒸着膜上に、上記で調製したバリアコート組成物をスピンコート法によりコーティングした。
その後、180℃で60秒間、オーブンにて加熱処理して、厚さ約400nmのバリアコート層を酸化アルミニウム蒸着膜上に形成して、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0190】
[実施例2−2]
酸素プラズマ前処理において、プラズマ強度を100W・sec/m
2に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0191】
[実施例2−3]
基材フィルムとして厚さ12μmのバイオマス由来のPETフィルムを使用したこと、および酸素プラズマ前処理において、プラズマ強度を150W・sec/m
2に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
なお、バイオマス由来のPETフィルムは以下の方法により得られたものである。
【0192】
テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、ついでその重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行った。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。そのペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC−60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のポリエチレンテレフタレートと同等であった。また、得られたバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス度は31.25%であった。
次いで得られたポリエチレンテレフタレートを60質量部と、リサイクルPET(フィルム製膜時の耳ロス等の製造工程内ロス部分をリペレットしたもの)30質量部と、滑剤として平均粒子径0.9μmの多孔性シリカを200ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12μmである二軸延伸PETフィルム(バイオマス度:18.8%)を得た。
【0193】
[実施例2−4]
基材フィルムとして厚さ12μmの化石燃料由来のポリブチレンテレフタレートフィルム(以下、PBTフィルム)を使用したこと、酸化アルミニウム蒸着膜の厚さを10nmに変更したこと、および酸素プラズマ前処理において、プラズマ強度を150W・sec/m
2に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0194】
[実施例2−5]
高湿度下で長期保管することで含水率の高まった、厚さ12μmの化石燃料由来のPETフィルムを用いたこと、および酸化アルミニウム蒸着膜の厚さを14nm変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0195】
[実施例2−6]
酸化アルミニウム蒸着膜の厚さを10nm変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、バリアフィルムを得た。
【0196】
[実施例2−7]
酸化アルミニウム蒸着膜の厚さを14nm変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0197】
[実施例2−8]
酸化アルミニウム蒸着膜の厚さを10nm変更したこと以外は、実施例2−3と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0198】
[実施例2−9]
酸化アルミニウム蒸着膜の厚さを14nm変更したこと以外は、実施例2−3と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0199】
[実施例2−10]
酸素プラズマ前処理を行わなかった以外は、実施例2−1と同様にしてバリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0200】
[比較例2−1]
酸素プラズマ前処理において、プラズマ形成ガス比を、酸素/アルゴン=4/1にしたこと以外は、実施例2−1と同様にして酸素プラズマ前処理を行った。プラズマ放電が安定せず、酸素プラズマ前処理ができなかった。
【0201】
[比較例2−2]
酸素プラズマ前処理において、前処理圧力を50Paにしたこと以外は、実施例2−1と同様にして酸素プラズマ前処理を行った。プラズマ放電が安定せず、酸素プラズマ前処理ができなかった。
【0202】
[参考例2−1]
酸素プラズマ前処理において、プラズマ強度を1200W・sec/m
2にしたこと以外は、実施例2−1と同様にして酸素プラズマ前処理を行った。PETフォルムが着色した。
【0203】
実施例2−1〜2−10、比較例2−1〜2−2、および参考例2−1の各条件を表3に示す。
【0204】
【表3】
【0205】
<評価項目の測定方法>
上記の実施例2−1〜2−10に示した条件下で製造したバリアコート層を備えるバリアフィルム(フィルムIII)を測定用のサンプルとし、熱収縮率の測定、蒸着膜の遷移領域の変成率、酸素透過度、水蒸気透過度、および密着性について、下記の方法を用いて測定した。評価結果を表4に示す。
また、上記の実施例2−1と、PETフィルムが着色した上記参考例2-1については、色味の測定を行った。評価結果を表5に示す。
なお、比較例2−1および2−2については、酸素プラズマ前処理ができなかったため、上記評価項目の測定は行わなかった。
【0206】
(熱収縮率の測定)
上記バリアフィルム(フィルムIII)について、縦20mm、横5mmの大きさで、PETフィルムのMD方向が縦方向となるように試験片を作製した。作製した試験片について、熱機械分析装置(TMA、セイコーインスツル株式会社、機種名:EXSTAR6000)を用いて、フィルムに単位断面積当たり荷重2.92×10
6N/m
2を負荷しながら、温度20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、温度150℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で20℃まで降温させた。その後、PETフィルムのMD方向の熱収縮率(%)を測定した。
【0207】
(遷移領域の変成率)
蒸着膜の遷移領域の変成率は、バリアフィルム(フィルムIII)のバリアコート層表面にCs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、バリアコート層由来のイオンと、無機酸化物蒸着層由来のイオンと、基材フィルムに由来するイオンを測定することにより
図2のグラフ解析図が得られる。ここで、グラフの縦軸の単位(intensity)は、測定されたイオンの強度、横軸の単位(cycle)は、エッチングの回数である。
上記TOF−SIMSに用いられる飛行時間型二次イオン質量分析計としてはION TOF社製、TOF.SIMS5を用い、下記測定条件で測定を行なった。
【0208】
(TOF−SIMS測定条件)
・一次イオン種類:Bi
3++(0.2pA,100μs)
・測定面積:150×150μm
2
・エッチング銃種類:Cs(1keV、60nA)
・エッチング面積:600×600μm
2
・エッチングレート:3sec/Cycle
なお、測定対象となる酸化アルミニウム由来のイオンを測定するためにイオン銃としては、通常、複数ある酸化アルミニウム由来のイオンの中から他の成分由来のイオンとの切り分けが必要であり、且つ十分な強度を有するものを選択する必要があることおよび、特に元素結合Al
2O
4Hの濃度分布に近似換算できる深さ分布を得る目的から、Csイオンを選択することとした。
【0209】
Csを用いて、バリアコート層の最表面からエッチングを行い、バリアコート層と酸化アルミウム蒸着膜とポリエステルフィルム等の基材フィルムとの界面の元素結合および蒸着膜の元素結合の分析を実施し、測定された元素および元素結合の各グラフを得た。グラフにおいて、バリアコート層の構成元素であるSiO
2(質量数59.96)の強度が、先ず、バリアコート層の半分になる位置をバリアコート層と酸化アルミニウム蒸着膜の界面として、次いで、基材フィルムの構成材料であるC
6(質量数72.00)の層部分の半分になる位置を、基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜の界面として、最初の界面から2番目の界面までを酸化アルミニウム蒸着膜とした。
次に、測定された元素結合Al
2O
4H(質量数118.93)を表すグラフにおけるピークを求め、そのピークから界面までを遷移領域とし、求めることができる。
ただし、バリアコート層の成分がAl
2O
4H(質量数118.93)と同じ質量数の材料で構成させる場合、118.93の波形を分離する必要がある。
今回のケースでは、バリアコート層と酸化アルミニウム蒸着膜の界面に、バリアコート層との界面に生じる反応物AlSiO
4と、水酸化物Al
2O
4Hが生じるため、それらとフィルム界面に存在するAl
2O
4Hを分離する。これはバリアコート層の材料によって適宜対応する。
波形分離の方法例を以下に示す。TOF−SIMSで得られた、質量数118.93のプロファイルを、Gaussian関数を用いて非線形のカーブフィッティングを行い最小二乗法Levenberg Marquardt アルゴリズムを使用して重複ピークの分離を行う。
以上の操作を行い、酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率を(元素結合Al
2O
4Hのピークから界面までの遷移領域厚/酸化アルミニウム蒸着膜厚)×100(%)として求めた。
【0210】
(酸素透過度の測定)
酸素透過度測定装置(モダンコントロール(MOCON)社製〔機種名:オクストラン(OX−TRAN)2/21〕)を用いて、測定のために作製したバリアフィルム/接着剤/ナイロンフィルム15μm/接着剤/CPP70μmの包装材料とし、酸素供給側がバリアフィルムの基材フィルム面となるように上記試験用サンプルをセットし、23℃、90%RH雰囲気下の測定条件で、JIS K7126 B法に準拠して測定した。
測定サンプルとして、
1)レトルト処理前の複合積層フィルム
2)ハイレトルト処理条件:135℃、40分間の処理をした袋の状態にした包装材料の袋片面の包装材料
3)セミレトルト処理条件:121℃、40分間の処理をした袋の状態にした包装材料の袋片面の包装材料
を用いた。
【0211】
(水蒸気透過度の測定)
水蒸気透過度測定装置(モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN)3/33〕)を用いて、センサー側がバリアフィルムの基材フィルム面となるように上記試験用サンプルをセットし、40℃、100%RH雰囲気下の測定条件で、JIS K7126 B法に準拠し、測定した。
測定サンプルとして、
1)レトルト処理前の包装材料
2)ハイレトルト処理条件:135℃、40分間の処理をした袋の状態にした包装材料の袋片面の包装材料
3)セミレトルト処理条件:121℃、40分間の処理をした袋の状態にした包装材料の袋片面の包装材料
を用いた。
【0212】
(基材と酸化アルミニウム蒸着膜間の密着性の評価)
[剥離強度の測定(1);レトルト処理後の常態剥離強度]
バリアフィルム(フィルムIII)のバリアコート層側に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を塗工し、乾燥処理したものと、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムに2液硬化型ポリウレタン系接着剤と厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムと貼り合わせたフィルムとをドライラミネートし、包装材料を作製した。
上記包装材料を用いてB5サイズに作製した四方パウチに水100mLを注入し、135℃、40分間で熱水式レトルト処理(ハイレトルト処理)を行った。該レトルト処理後、中身の水を抜いた四方パウチから15mm幅の短冊状にカットしたサンプルを作成した。このサンプルについて、引張試験機(株式会社オリエンテック社製[機種名:テンシロン万能材料試験機])を用いてJIS K6854−2に準拠し、バリアフィルムの基材フィルムと酸化アルミウム蒸着膜との剥離強度を測定した。なお、実施例2−4については、121℃、40分間で熱水式レトルト処理(セミレトルト処理)を行った。
測定は、まず、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とを長辺方向において15mm剥離させた状態の矩形状の試験片を準備した。その後、基材フィルム側および無延伸ポリプロピレンフィルム側のうち既に剥離されている部分をそれぞれ、測定器のつかみ具およびつかみ具で把持した。また、つかみ具をそれぞれ、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とがまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに(180°剥離:T字剥離法)、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域における引張応力の平均値を測定した。引っ張りを開始する際の、つかみ具間の間隔は30mmとし、引っ張りを終了する際の、つかみ具間の間隔は60mmとした。間隔に対する引張応力の変化は、第1領域を経て、第1領域よりも変化率の小さい第2領域(安定領域)に入る。安定領域における引張応力の平均値を測定し、その値をバリアフィルムの基材フィルムと酸化アルミウム蒸着膜との剥離強度とした。
【0213】
[剥離強度の測定(2);レトルト処理後の水付け剥離強度]
水付け剥離強度は、以下に記載する点を除き、常態剥離強度を測定する方法と同様の方法によって測定した。水付け剥離強度の測定においては、試験片の基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とを15mm引き剥がした上で、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側との接着界面の剥離強度を測定した。また、水付け剥離強度の測定においては、剥離強度の測定を行う際に、試験片の長手方向にそってみた場合における、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とが接合を維持している部分と、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とが引き剥がされている部分との境界部分にスポイトで水を滴下した状態で、測定を行った。
【0214】
(色味の測定)
分光測色計(コニカミノルタ株式会社製〔機種名:CM−700d〕)を用いて、測定用のサンプル1枚(基材フィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層)のL
*a
*b
*表色系におけるL
*値、a
*値およびb
*値を測定した。
【0215】
【表4】
【0216】
【表5】
【0217】
上記表4において、実施例2−1〜2−9に示されているように、酸化アルミニウム蒸着膜の遷移領域の変成率が5%以上60%以下のバリアフィルムは、レトルト処理後も良好な酸素透過度と水蒸気透過度を示し、良好な常態密着性および耐水密着性を示した。
上記表4において、実施例2−10では、元素結合Al
2O
4Hピークが、ピークが小さすぎて基材フィルム界面側に隠れ、分離できなかった為に、該遷移領域の変成率が計算できない結果(0%以下の数値)となった。実施例2−10は、実施例2−1〜2−9よりもレトルト後の常態密着性および耐水密着性は劣るものの、レトルト処理の前後において、バリア性の劣化は見られなかった。
また、上記表5において、実施例2−1は、b
*値が参考例2−1よりも低い数値であることより、実施例2−1の方が参考例2−1よりも透明性に優れていることが分かる。
【0218】
<<実験III>>
[実施例3−1]
まず、基材フィルムである厚さ12μmの化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(フィルムI)を巻き取ったロールを準備した。
次に、このフィルムIの無機酸化物蒸着層を設ける面に、酸素プラズマ前処理装置を配置した前処理区画と成膜区画を隔離した連続蒸着膜成膜装置を用いて、前処理区画において下記条件下でプラズマ供給ノズルからプラズマを導入し、搬送速度400m/minで酸素プラズマ前処理を施し、連続搬送した成膜区画内で、酸素プラズマ処理面上に、下記条件において真空蒸着法の加熱手段として反応性抵抗加熱方式により、厚さ12nmの酸化アルミニウム蒸着膜(無機酸化物蒸着層)をフィルムI上に形成した(フィルムII)。
(酸素プラズマ前処理条件)
・プラズマ強度:150W・sec/m
2
・プラズマ形成ガス比:酸素/アルゴン=2/1
・前処理ドラム−プラズマ供給ノズル間印加電圧:340V
・前処理圧力:3.8Pa
(酸化アルミニウム成膜条件)
・真空度:8.1×10
−2Pa
・搬送速度:400m/min
・酸素ガス供給量:8000sccm
【0219】
<バリアコート層の形成>
水226g、イソプロピルアルコール39gおよび0.5N塩酸5.3gを混合し、pH2.2に調整した溶液に、テトラエトキシシラン167gを10℃となるよう冷却しながら混合させて溶液Eを調製した。
ケン価度99%以上の重合度2400のポリビニルアルコール23.3g、水513g、イソプロピルアルコール27gを混合した溶液Fを調製した。
E液とF液を重量比4.4:5.6となるよう混合して得られた溶液をバリアコート組成物とした。
上記のフィルムIIの酸化アルミニウム蒸着膜上に、上記で調製したバリアコート組成物をスピンコート法によりコーティングした。
その後、180℃で60秒間、オーブンにて加熱処理して、厚さ約400nmのバリアコート層を酸化アルミニウム蒸着膜上に形成して、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0220】
[実施例3−2]
酸化アルミニウムの成膜において、酸素供給量を10000sccmに変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0221】
[実施例3−3]
酸素プラズマ前処理を行わなかった以外は、実施例3−1と同様にしてバリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0222】
[実施例3−4]
基材フィルムとして厚さ12μmの上記バイオマス由来のPETフィルムを使用したこと、および酸素プラズマ前処理において、プラズマ強度を250W・sec/m
2に変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0223】
[比較例3−1]
酸素プラズマ前処理において、プラズマ形成ガス比を、酸素/アルゴン=5/1にしたこと以外は、実施例3−1と同様にして酸素プラズマ前処理を行った。プラズマ放電が安定せず、酸素プラズマ前処理ができなかった。
【0224】
[参考例3−1]
酸化アルミニウムの成膜において、酸素供給量を20000sccmに変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。
【0225】
[参考例3−2]
酸化アルミニウムの成膜において、酸素供給量を6000sccmに変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、バリアフィルム(フィルムIII)を得た。酸化アルミニウム蒸着膜が着色した。
【0226】
実施例3−1〜3−4、比較例3−1、および参考例3−1〜3−2の各条件を表6に示す。
【0227】
【表6】
【0228】
上記の実施例3−1〜3−4に示した条件下で製造したバリアコート層を備えるバリアフィルム(フィルムIII)を測定用のサンプルとし、熱収縮率の測定、TOF−SIMSにおける強度比率Al
3/Al
2O
3、酸素透過度、水蒸気透過度、および密着性について、下記の方法を用いて測定した。評価結果を表7に示す。
また、上記実施例3−1および参考例3−1のバリアフィルム(フィルムIII)においては、全光線透過率およびヘイズを下記の方法を用いて測定した。評価結果を表7に示す。
さらに、上記の実施例3−1、実施例3−4、およびPETフィルムが着色した上記参考例3−2については、色味の測定を行った。評価結果を表8に示す。
なお、比較例3−1については、酸素プラズマ前処理ができなかったため、上記評価項目の測定は行わなかった。
【0229】
(熱収縮率の測定)
上記バリアフィルム(フィルムIII)について、縦20mm、横5mmの大きさで、PETフィルムのMD方向が縦方向となるように試験片を作製した。作製した試験片について、熱機械分析装置(TMA、セイコーインスツル株式会社、機種名:EXSTAR6000)を用いて、フィルムに単位断面積当たり荷重2.92×10
6N/m
2を負荷しながら、温度20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、温度150℃で10分間保持した後、降温速度10℃/分で20℃まで降温させた。その後、PETフィルムのMD方向の熱収縮率(%)を測定した。
【0230】
(TOF−SIMSにおける強度比率Al
3/Al
2O
3)
上記バリアフィルム(フィルムIII)について、飛行時間型二次イオン質量分析計(ION TOF社製、TOF.SIMS5)を用いて、下記測定条件で、バリアフィルムのバリアコート層側から、Cs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、基材フィルム由来のC
6(質量数72.00)、酸化アルミニウム蒸着膜由来のAl
3(質量数80.94)、Al
2O
3(質量数101.94)、バリアコート層由来のSiO
2(質量数59.96)イオンの質量分析を行った。
バリアコート層の構成元素であるSiO
2の強度が、先ず、バリアコート層の半分になる位置をバリアコート層と酸化アルミニウム蒸着膜の界面として、次いで、基材フィルムの構成材料であるC
6の層部分の半分になる位置を、基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜の界面として、最初の界面から2番目の界面までを酸化アルミニウム蒸着膜とした。
そして、酸化アルミニウム蒸着膜内でAl
3の強度が最も高い位置を求め、その位置でのAl
3の強度とAl
2O
3との強度比率Al
3/Al
2O
3から、Al
3の強度が最大を示した時の強度比率Al
3/Al
2O
3と、該深さの酸化アルミニウム蒸着膜層厚に対する割合を算出した。
【0231】
(TOF−SIMS測定条件)
・一次イオン種類:Bi
3++(0.2pA,100μs)
・測定面積:150×150μm
2
・エッチング銃種類:Cs(1keV、60nA)
・エッチング面積:600×600μm
2
・エッチングレート:10sec/Cycle
【0232】
(酸素透過度の測定)
酸素透過度測定装置(モダンコントロール(MOCON)社製〔機種名:オクストラン(OX−TRAN)2/21〕)を用いて、バリアフィルム(フィルムIII)の基材フィルム側が酸素供給側になるようにセットして、JIS K 7126 B法に準拠して、23℃、90%RH雰囲気下における酸素透過度を測定した。
【0233】
(水蒸気透過度の測定)
水蒸気透過度測定装置(モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN)3/33〕)を用いて、バリアフィルム(フィルムIII)の基材フィルム層側がセンサー側になるようにセットして、JIS K 7126 B法に準拠して、40℃、100%RH雰囲気下における水蒸気透過度を測定した。
【0234】
(全光線透過率の測定)
光学計測装置(須賀試験機株式会社製の測定器〔機種名:ヘーズメータ〕)を用いて、バリアコート層を備えるバリアフィルム(フィルムIII)の基材フィルム側が光源側を向くようにセットして、JIS K7136に準拠して測定した。
【0235】
(ヘイズの測定)
光学計測装置(須賀試験機株式会社製の測定器〔機種名:ヘーズメータ〕)を用いて、バリアコート層を備えるバリアフィルム(フィルムIII)の基材フィルム側が光源側を向くようにセットして、JIS K7136に準拠して測定した。
【0236】
(基材フィルムと酸化アルミニウム蒸着膜間の密着性の評価)
[剥離強度の測定;水付け剥離強度]
バリアフィルム(フィルムIII)のバリアコート層側に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を塗工し、乾燥処理したものと、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム貼とをドライラミネートし、包装材料を作製した。
測定は、まず、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とを長辺方向において15mm剥離させた状態の矩形状の試験片を準備した。
次に、試験片の長手方向にそってみた場合における、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とが接合を維持している部分と、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とが引き剥がされている部分との境界部分にスポイトで水を滴下した。
その後、基材フィルム側および無延伸ポリプロピレンフィルム側のうち既に剥離されている部分をそれぞれ、測定器のつかみ具およびつかみ具で把持した。また、つかみ具をそれぞれ、基材フィルム側と無延伸ポリプロピレンフィルム側とがまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに(180°剥離:T字剥離法)、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域における引張応力の平均値を測定した。引っ張りを開始する際の、つかみ具間の間隔は30mmとし、引っ張りを終了する際の、つかみ具間の間隔は60mmとした。間隔に対する引張応力の変化は、第1領域を経て、第1領域よりも変化率の小さい第2領域(安定領域)に入る。安定領域における引張応力の平均値を測定し、その値をバリアフィルムの基材フィルムと酸化アルミウム蒸着膜との剥離強度とした。
【0237】
(色味の測定)
分光測色計(コニカミノルタ株式会社製〔機種名:CM−700d〕)を用いて、測定用のサンプル1枚(基材フィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層)のL
*a
*b
*表色系におけるL
*値、a
*値およびb
*値を測定した。
【0238】
【表7】
【0239】
【表8】
【0240】
上記表7において、実施例3−1〜3−4に示されているように、最大Al
3濃度元素結合構造部分における強度比率Al
3/Al
2O
3×100が1以上20以下であり、該最大Al
3濃度元素結合構造部分は酸化アルミニウム蒸着膜の膜厚の4%以上45%以下の深さ位置に存在し、酸素透過度及び水蒸気透過度が低く、良好なガスバリア性を示した。また、酸素プラズマ前処理を行わなかった実施例3−3よりも、酸素プラズマ前処理を行った実施例3−1、3−2、および3−4の方が、強い酸化アルミニウム蒸着膜/基材フィルム間の耐水密着性を示した。
実施例3−1〜3−4のバリアフィルムは、最大Al
3濃度元素結合構造部分における強度比率Al
3/Al
2O
3×100が1未満である参考例3−1よりもガスバリア性に優れるものであった。
また、上記表8において、実施例3−1および3−4は、L
*値が参考例3−2よりも高い数値であり、かつb
*値が参考例3−2よりも低い数値であることより、実施例3−1および3−4の方が参考例3−2よりも透明性に優れていることがわかる。
さらに、酸化アルミニウムの着色が確認されなかったことより、実施例3−1〜3−4のバリアフィルムは、参考例3−2のバリアフィルムよりも印刷適性の優れるものである。