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特開2020-75831セシウムイオンドープ酸化タングステンを含有するインクジェット用赤外線遮蔽インク組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-75831(P2020-75831A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】セシウムイオンドープ酸化タングステンを含有するインクジェット用赤外線遮蔽インク組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 41/00 20060101AFI20200424BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20200424BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200424BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   C01G41/00 A
   C09D11/38
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-209878(P2018-209878)
(22)【出願日】2018年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】518215105
【氏名又は名称】森 良平
(71)【出願人】
【識別番号】311007545
【氏名又は名称】GSアライアンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591075467
【氏名又は名称】冨士色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 良平
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4G048
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186AA18
2H186FA08
2H186FA10
2H186FA18
2H186FB07
2H186FB10
2H186FB14
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB31
2H186FB48
2H186FB56
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
4J039BA13
4J039BA36
4J039BA39
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039CA06
4J039DA02
4J039DA05
4J039DA07
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インクジェット用インク組成物に配合したとき、低粘度の組成物を得ることができ、高温保存による粘度変化がほとんどない赤外線遮蔽材を提供する。
【解決手段】パラタングステン酸アンモニウム((NH4)10(H2W12O42)・4H2O)を用いて合成したCsWO3をインクジェット用インク組成物に配合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セシウムイオンドープ酸化タングステンの調製方法であって、
炭酸セシウム (Cs2CO3)、パラタングステン酸アンモニウム ((NH4)10(H2W12O42)・4H2O)、水を混合する混合工程;
上記工程で得られた混合物を、加熱還元処理して、セシウムイオンドープ酸化タングステンを調製する調製工程;
を含む、調製方法。
【請求項2】
前記混合工程において、タングステン換算したパラタングステン酸アンモニウム100モルに対して、セシウム換算した炭酸セシウムを1〜40モル使用する、請求項1の調製方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の調製方法により調製されたセシウムイオンドープ酸化タングステン、水および浸透剤を含む、インクジェット用水性インク組成物。
【請求項4】
樹脂成分をさらに含有する、請求項3に記載のインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セシウムイオンドープ酸化タングステンを含有する、赤外線遮蔽インク組成物に関する。特に、本発明は、安定した粘度特性を有するインクジェット用インク組成物およびそのようなインク組成物に適したセシウムイオンドープ酸化タングステンを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、近赤外線を遮蔽するが、可視光線の透過率が高い材料に対する要望が非常に高まっている。このような赤外線遮蔽材を、コーティング剤、樹脂、インキなどに分散させて、建材、乗り物などの窓ガラスに適用すれば、視認性を保ちながら、赤外線による室温の上昇を抑制することが可能である(特許文献1〜3)。また、このような赤外線遮蔽材を含む偽造防止用インキを作成し、赤外線吸収プロファイルを任意に設定すれば、高い精度で真贋判定することができる(特許文献4〜5)。
【0003】
これらの赤外線遮蔽材として、酸化タングステンにアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属などをドープした化合物が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-187323号公報
【特許文献2】特開2012-506463号公報
【特許文献3】特開2012-532822号公報
【特許文献4】国際公開第2016/121801号公報
【特許文献5】特開2016-199715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
赤外線遮蔽材のなかでも、酸化タングステンにセシウムイオンをドープしたCsイオンドープ酸化タングステン(Cs-WO)が良好な赤外遮蔽効果を発揮するが、インク組成物に配合したときに、粘度安定性が低いことが分かった。汎用性の高いサーマル式インクジェットプリンター用のインクは、加熱により発生した気泡により細孔から噴出させるため、粘度が比較的低く、かつ、粘度安定性が高いことが求められる。
しかしながら、従来のCs-WOを配合したインクは粘度安定性が低く、インクジェット用には使用できなかった。
【0006】
そこで本発明者は、特に、サーマル式インクジェットプリンター用のインク組成物に適したCs-WOを製造し、そのようなCs-WOを配合した赤外遮蔽性インク組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来のCs-WOは、炭酸セシウム(Cs2CO3)、タングステン酸 (H2WO4)、水を混合してから、その後、還元雰囲気(例えば、N2をキャリアとするH2ガス)中で加熱処理してCsWO3 (セシウムイオンドープ酸化タングステン:赤外線遮蔽材)を合成している。一方、本発明においては、タングステン酸ではなく、パラタングステン酸アンモニウム((NH4)10(H2W12O42)・4H2O)を用いて、CsWO3を合成する。
【発明の効果】
【0008】
従来の方法によって製造されたCsWO3を配合した水系インクジェット用インク組成物は、50℃にて2週間保存により、大きく増粘したが、本発明の方法によって製造されたCsWO3を配合した水系インクジェット用インク組成物は50℃にて2週間保存により、ほぼ変化することがない。すなわち、本発明の方法によって製造されたCsWO3を水系インク組成物に用いれば、高温保存後の増粘がなく、安定したインク組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.赤外線遮蔽材(セシウムイオンドープ酸化タングステン)
本発明によるセシウムイオンドープ酸化タングステンの調製方法は、炭酸セシウム (Cs2CO3)、パラタングステン酸アンモニウム ((NH4)10(H2W12O42)・4H2O)、水を混合する工程;および上記工程で得られた混合物を、加熱還元処理を行う工程を含む。
本発明による調製方法は、セシウム源として炭酸セシウムを用い、タングステン源としてパラタングステン酸アンモニウム ((NH4)10(H2W12O42)・4H2O)を用いることを特徴とする。パラタングステン酸アンモニウムは、従来の調製方法において採用されるタングステン酸よりも水(または熱水)に対する溶解性が高く、セシウム源とタングステン源とが均質な混合した混合物を得やすく、得られたセシウムイオンドープ酸化タングステン微粒子中のセシウムの分散性が高くなるか、微粒子の表面を修飾する官能基が変化すると考えられる。
【0010】
本発明による調製方法は、
炭酸セシウム (Cs2CO3)、パラタングステン酸アンモニウム ((NH4)10(H2W12O42)・4H2O)、水を混合する混合工程;
上記工程で得られた混合物を、加熱還元処理して、セシウムイオンドープ酸化タングステンを調製する調製工程;
を含む。
【0011】
前記混合工程において、タングステン換算したパラタングステン酸アンモニウム100モルに対して、セシウム換算した炭酸セシウムを1〜40モル使用する。Cs以外に、本発明の効果を阻害しない限り、Li, Na, K, Rb, Tiなど他の一価金属イオンを含有させてもよい。
【0012】
前記調製工程における加熱還元処理は、還元剤として、3〜8%H2/N2混合ガスを用い、500〜1000℃にて1〜5時間行う。
【0013】
2.赤外線遮蔽材を含有するインクジェット用水性インク
本発明の水性インク組成物は、少なくとも、上記の方法により調製された赤外線遮蔽材(セシウムイオンドープ酸化タングステン);水;および浸透剤を含む。
【0014】
インク組成物全量中の赤外線遮蔽材(セシウムイオンドープ酸化タングステン)の含有量は、通常、5%、好ましくは、0.1〜30%の範囲である。
【0015】
本発明に用いる「水」は、主たる水性媒体であり、水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等から選択される。
【0016】
本発明に用いる「浸透剤」は、インクを適用する紙媒体などにインクを定着させるために、媒体表面に対するインクの濡れ性および媒体内部への浸透性を向上させるための物質である。浸透剤としては、インクの表面張力を低下させる界面活性剤、エタノールやイソプロパノールなどの低沸点の水溶性有機溶剤などが挙げられる。
これらの浸透剤は、単独で、または、それらのうち2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0017】
本発明の水性インク組成物には、上記以外にも、その使用目的に応じて、さらなる成分を配合することができる。
【0018】
本発明の水性インク組成物には、赤外線遮蔽材の使用目的を阻害しない限り、着色剤を添加することができる。本発明に用いる「着色剤」は、染料または顔料である。染料として水溶性染料が適しており、直接染料、酸性染料、塩基性染料のいずれも用いることができる。直接染料としては、例えば、C.I. Direct Black 17, 19, 22, 32, 38, 51, 71; C.I. Direct Yellow 4, 26, 44, 50; C.I. Direct Red 1, 4, 23, 31, 37, 39, 75, 80, 81, 83, 225, 226, 227; C.I. Direct Blue 1, 15, 71, 86, 106, 119などが挙げられる。酸性染料としては、例えば、C.I. Acid Black 1, 2, 24, 26, 31, 52, 107, 109, 110, 119, 154; C.I. Acid Yellow 7, 17, 19, 23, 25, 29, 38, 42, 49, 61, 72, 78, 110, 127, 135, 141, 142; C.I. Acid Red Direct 8, 9, 14, 18, 26, 27, 35, 37, 51, 52, 57, 82, 87, 92, 94, 115, 129, 131, 186, 249, 254, 265, 276; C.I. Acid Violet 18, 17; C.I. Acid Blue 1, 7, 9, 22, 23, 25, 40, 41, 43, 62, 78, 83, 90, 93, 103, 112, 113, 158; C.I. Acid Green 3, 9, 16, 25, 27などが挙げられる。塩基性染料としては、例えば、C.I. Basic Yellow 1, 2, 21; C.I. Basic Orange 2, 14, 32; C.I. Basic Red 1, 2, 9, 14; C.I. Basic Brown 12; C.I. Basic Black 2, 8; などが挙げられる。
【0019】
顔料は、無機系顔料と有機系顔料に分類される。無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、アルミニウム等の金属微粉末等が挙げられる。また、有機系顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられる。スチレン系樹脂やアクリル系樹脂等の微小樹脂球を塩基性染料で染色した加工顔料を用いることもできる。
安全性の観点から、直接染料および酸性染料が好ましい。直接染料は耐水性に優れ、酸性染料は発色性に優れる。
これらの着色剤は、単独で、または、それらのうち2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0020】
インクジェット用インク組成物、特に、サーマル式インクジェットプリンターにおいては、加熱によりインクタンク内で気泡を発生させて、細孔から微小な液滴を吐出する観点から、その初期粘度は、1〜10cps程度が一般的であり、粘度が高くなるにつれ、吐出速度が遅くなり、1滴あたりの体積が小さくなる。粘度が低くなると、対象物の表面上でインクが広がり、にじみが生じる。また、初期粘度が低い分、少しの粘度増加でも細孔に目詰まりを起こすため、高い粘度安定性が求められる。例えば、50℃にて2週間の高温保存下、増粘率が0〜10%であることが好ましい。
また、吐出する際の流動性および、対象物の表面上に付着した際の形状安定性の観点から、チクソ性を有する必要がある。
【0021】
赤外線遮蔽材や着色剤を定着させるためやインク組成物の粘度を調整する樹脂成分として、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)などのポリアルキレン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルホルマール(PVF)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのビニル系樹脂;ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などのポリスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)、MMA−スチレン共重合体などのアクリル系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリビニルピロリドン;エチルセルロース(EC)、酢酸セルロース(CA)、プロピルセルロース(CP)、酢酸・酪酸セルロース(CAB)、硝酸セルロース(CN)などのセルロース系樹脂;ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)などのフッ素系樹脂;ウレタン系樹脂(PU);ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11などのナイロン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)などのポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0022】
インクにチクソトロピー性を付与するゲル化剤として、ローカストビーンガム、グアーガムおよびその誘導体、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、グルコマンナンなどの天然ガム組成物;寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのポリエーテル;ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリカルボン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0023】
本発明のインクジェット用水性インク組成物には、インクの乾燥による固化を防止するために乾燥防止剤を添加することができる。乾燥防止剤としては、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;糖類や糖アルコール類;ヒアルロン酸類、炭素数1〜4のアルキルアルコール類;N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
これらの乾燥防止剤は、単独で、または、それらのうち2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
その他、本発明の水性インク組成物には、アルコールアミン類、アンモニウム塩類、金属水酸化物などのpH調整剤;キレート化剤;水溶性顔料分散剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤;酸化防止剤;抗菌剤;防カビ剤などを適宜添加することができる。
【実施例】
【0025】
1.赤外線遮蔽材(セシウムイオンドープ酸化タングステン)
[製造例1]
炭酸セシウム (Cs2CO3) 2.6 g、パラタングステン酸アンモニウム ((NH4)10(H2W12O42)・4H2O) 62.6 gを水 1000 gに添加し、加熱して溶解させる。その後、90℃で乾燥させて、析出した混合物を、還元雰囲気(N2中5%H2)中600℃にて1時間、加熱還元処理して、CsWO3 (赤外線遮蔽材A)を調製した。
【0026】
[製造例2]
炭酸セシウム (Cs2CO3) 6.5 g、タングステン酸 (H2WO4) 25.0 gを水 1000 gに添加し、溶解させる。溶解混合物を、還元雰囲気(N2中5%H2)中600℃にて1時間、加熱還元処理して、CsWO3 (赤外線遮蔽材B)を調製した。
【0027】
2.赤外線遮蔽材を含有するインクジェット用水性インクの調製
[実施例]
表1に示す配合で、赤外線遮蔽材Aを含有するインクジェット用の水性インクAを調製した。
【0028】
【表1】
【0029】
得られた水性インクAの初期粘度は4cpsであった。50℃にて2週間保存後の粘度は4.2cpsであり、高温で保存してもほぼ増粘することがなかった。
【0030】
[比較例]
実施例において、赤外線遮蔽材Aを赤外線遮蔽材Bに変更する以外は、同様にして、インクジェット用の水性インクBを調製した。
得られた水性インクBの初期粘度は4cpsであった。50℃にて2週間保存後の粘度は112cpsとなり、極度に増粘した。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の方法により製造されたCsドープ酸化タングステン(Cs-WO)は赤外遮蔽効率が高く、かつ、可視光領域での透過性が高く、コーティング剤、樹脂、インキなど様々な分野に適用することができる。さらに、本発明の方法により製造されたCs-WOを含有するインク組成物は高温下でも高い粘度安定性を示し、インクジェット用のインク組成物に好適に配合することができる。