特開2020-75898(P2020-75898A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-75898(P2020-75898A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】液状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20200424BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200424BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20200424BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20200424BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20200424BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200424BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   A61K8/92
   A61K8/34
   A61K8/04
   A61K8/31
   A61Q5/02
   A61Q19/00
   A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-211530(P2018-211530)
(22)【出願日】2018年11月9日
(71)【出願人】
【識別番号】592215011
【氏名又は名称】東洋ビューティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】西尾 恭史
(72)【発明者】
【氏名】池田 素勉
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
(72)【発明者】
【氏名】久間 將義
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 公男
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB332
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC031
4C083AC032
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC642
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC902
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD162
4C083AD171
4C083AD172
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD662
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC23
4C083DD01
4C083DD23
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】球状の油性スクラブを分散させた化粧料について、使用状態にべたつき感が無く保湿性の高い、優れた製品美観と使用感を有するものとし、かつスクラブに振動安定性があり、しかも油相が確実にスクラブ化するよう製造する。
【解決手段】室温で液体の液状油性物質及び室温で固体の固形油性物質からなる油性スクラブ粒子が外水相に分散している透明または半透明の液状化粧料において、液状油性物質と固形油性物質の質量比を1:(0.05〜10)の範囲に調製し、液状油性物質中に炭化水素油を60質量%以上、固形油性物質中に高級アルコールを60質量%以上含有する透明又は半透明の液状化粧料とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で液体の液状油性物質(B)及び室温で固体の固形油性物質(C)の混合物(A)からなる油性スクラブ粒子が外水相に分散している透明または半透明の液状化粧料において、
前記混合物(A)が、質量比で液状油性物質(B):固形油性物質(C)=1:(0.05〜10)の混合物であり、
前記液状油性物質(B)が、炭化水素油を60質量%以上含有し、
前記固形油性物質(C)が、炭素数14以上の高級アルコールを60質量%以上含有することを特徴とする液状化粧料。
【請求項2】
上記油性スクラブ粒子の液状化粧料100質量%中の含有量が、0.3〜5.0質量%である請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項3】
前記油性スクラブ粒子が、平均粒子径0.2〜2.0mmの油性スクラブ粒子である請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項4】
上記炭化水素油が、スクワラン、α‐オレフィンオリゴマー、流動パラフィンから選ばれる1種以上の炭化水素油である請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項5】
上記固形油性物質が、セタノール、ベヘニルアルコール、水添ナタネ油アルコール、ステアリルアルコールから選ばれる1種以上の固形油性物質である請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項6】
室温で液体の液状油性物質(B)及び室温で固体の固形油性物質(C)の混合物(A)を60〜80℃に加熱して溶解させ、次いで60〜80℃に加熱した水相に投入し、攪拌して前記混合物(A)を球状化した後、冷却して油性スクラブ粒子が外水相に均一分散した透明または半透明の液状化粧料を得る工程からなり、
前記混合物(A)が、質量比で液状油性物質(B):固形油性物質(C)=1:(0.05〜10)の混合物であり、
前記液状油性物質(B)が、炭化水素油を60質量%以上含有し、
前記固形油性物質(C)が、炭素数14以上の高級アルコールを60質量%以上含有する液状化粧料の製造方法。
【請求項7】
前記攪拌が、混合機、分散機、混練機、ホモミキサー、圧力式ホモジナイザーまたは高速攪拌機を用いて粒子径を均一化する攪拌である請求項6に記載の液状化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状化粧料に関し、油性スクラブ粒子が外水相に分散して透明または半透明の状態を示す液状化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な透明又は半透明な液状化粧料としては、化粧水、美容液、オールインワンジェル、シャンプーなどが知られているが、これらは経日安定性や製法の制約により均一な外観であり、油剤の配合量を増やすと外観が白色になることから油剤の配合量は低い。
【0003】
一方で、化粧料として優れた使用感を生み出すためには、油剤の配合を高める必要があり、しかも外観を意図的に不均一にして美観を得る化粧料が求められ、例えば、水相と油相が完全に分離した2層式化粧料や、固形油スクラブを配合した化粧料などが知られている。
【0004】
しかし、2層式化粧料は、容器に充填する際、水相と油相を別々に充填する手間が必要であり、もしくは撹拌をしながら充填可能な特殊な機械を必要とし、さらには低温で油相が融点を下回ると固化することを避けるために、選択可能な油剤の種類が少なく、そのために使用感の改善に充分対応できないという欠点がある。
【0005】
また、化粧料に固形油スクラブを配合する際には、予め固形油をスクラブ化してから配合することが一般に行なわれるが、そのようにするとスクラブ粒子の色や大きさが画一的になって多様な製品の製造が難しく、またスクラブの素材に高融点の油剤を用いると、化粧料を塗布したときに油剤が体温で溶け難く使用感が損なわれるという欠点がある。
【0006】
これらの欠点を解消して優れた製品美観と使用性を両立する化粧料となるように、液状油性物質と固形油性物質を混合した半固体油性物質を加温溶解したものを、加温した水溶性増粘剤相に撹拌しながら投入し、さらに撹拌しながら冷却することで、球状スクラブ化した油性成分を分散させることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−346909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した従来の手法では、液状油性物質と固形油性物質を任意に配合可能ではなく、選択した油剤の種類によっては油相が球状スクラブ化されなかったり、製造中に水相が白濁する場合があり、その場合には、得られた球状スクラブを一旦回収し、洗浄してから別の水相に投入する工程が必要になる。また、球状スクラブが製造できた場合でも使用時や輸送時の振動によって球状スクラブが崩壊したり粘着凝集する場合があった。
【0009】
このように従来の球状スクラブを含有する化粧料は、油相が確実にスクラブ化するように製造することが容易でなく、また得られた化粧料に、優れた製品美観と使用性を持たせると共に振動に対する安定性を担保させることが困難であった。
【0010】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、球状の油性スクラブを分散させた化粧料について、使用状態にべたつき感が無く保湿性の高い、優れた製品美観と使用感を有するものとし、かつスクラブに振動安定性があり、しかも油相が確実にスクラブ化するように製造できることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本願の発明者らは、油性物質を乳化せずに分散させることで特徴的な外観を有する化粧料について鋭意研究を重ねた結果、液状油性物質の主な構成油剤を炭化水素油とし、固形油性物質の主な構成油剤を高級アルコールに限定し、かつ液状油性物質と固形油性物質の混合比を所定範囲内にすることによって、安定して均一性の高い球状油性スクラブを得ることができ、しかもスクラブが振動安定性を有するために品質が安定し、かつ使用感を満足させ得る化粧料となることを見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0012】
すなわち、この発明においては、上記の課題を解決するために、室温で液体の液状油性物質(B)及び室温で固体の固形油性物質(C)の混合物(A)からなる油性スクラブ粒子が外水相に分散している透明または半透明の液状化粧料において、
前記混合物(A)が、質量比で液状油性物質(B):固形油性物質(C)=1:(0.05〜10)の混合物であり、
前記液状油性物質(B)が、炭化水素油を60質量%以上含有し、
前記固形油性物質(C)が、炭素数14以上の高級アルコールを60質量%以上含有することを特徴とする液状化粧料としたのである。
なお、上記した室温とは、日本薬局方で定められる1〜30℃の温度範囲である。
【0013】
上記炭化水素油としては、スクワラン、α‐オレフィンオリゴマー、流動パラフィンから選ばれる1種以上の炭化水素油を用いることが好ましい。
また、上記固形油性物質としては、セタノール、ベヘニルアルコール、水添ナタネ油アルコール、ステアリルアルコールから選ばれる1種以上の固形油性物質であることが好ましい。
【0014】
上記したように構成されるこの発明に係る液状化粧料は、油性スクラブ粒子を構成する成分である液状油性物質と固形油性物質の主構成油剤を、所定量の炭化水素油と高級アルコールからなり、かつ液状油性物質と固形油性物質の配合比を所定割合にしたので、油性スクラブ粒子径が適度な大きさで揃っていて粒度分布にバラつきが少なく、かつ均一分散した液状化粧料になる。そのため、均質な性状が実感される優れた製品美観を有し、透明あるいは半透明化粧料であっても比較的多量の油剤を配合可能になり、優れた使用感を有し、さらに油性スクラブ粒子が、振動安定性に優れていて長時間の流通や保存にも耐える品質安定性をも備えた化粧料になる。
【0015】
上記のような優れた特徴をより確実に奏する化粧料とするために、油性スクラブ粒子が化粧料100質量%中に0.3〜5.0質量%配合される化粧料とすることが好ましい。
【0016】
さらに、上記のような優れた特徴をより確実に奏する化粧料とするためには、外水相に分散している油性スクラブ粒子の平均粒子径が0.2〜2.0mmである化粧料とすることが好ましい。
【0017】
さらに、上記のような優れた特徴をより確実に奏する化粧料を製造するために、室温で液体の液状油性物質(B)及び室温で固体の固形油性物質(C)の混合物(A)を60〜80℃に加熱して溶解させ、次いで60〜80℃に加熱した水相に投入し、攪拌して前記混合物(A)を球状化した後、冷却して油性スクラブ粒子が外水相に均一分散した透明または半透明の液状化粧料を得る工程からなり、上記(A)、(B)、(C)の配合成分の要件を備えた液状化粧料の製造方法とすることが好ましい。
【0018】
前記攪拌する際には、混合機、分散機、混練機、ホモミキサー、圧力式ホモジナイザーまたは高速攪拌機を用いて粒子径を均一化するように攪拌することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、所定の混合物からなる油性スクラブ粒子が外水相に分散している液状化粧料であって、混合物の液状油性物質と固形油性物質の成分及び配合割合を所定範囲に調製したので、適度な大きさの球状スクラブが分散することで優れた製品美観を有し、透明化粧料にもかかわらず多量の油剤を配合することで優れた使用感を有し、さらにはスクラブが振動安定性を有し、優れた品質安定性を有する化粧料となる利点がある。
【0020】
また、この発明の製造方法では、上記のような優れた特徴を奏する化粧料を効率よく安定した品質で製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例4及び実施例5の化粧水をそれぞれ充填した透明容器を左右に並べて示す図面代用写真
図2】比較例6及び比較例7の化粧水をそれぞれ充填した透明容器を左右に並べて示す図面代用写真
図3】実施例15の化粧水中の油性スクラブ粒子を示す図面代用の顕微鏡写真
図4】実施例16の化粧水中の油性スクラブ粒子を示す図面代用の顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態の液状化粧料は、室温で液体であり「炭化水素油を60質量%以上含有する液状油性物質(B)」及び室温で固体であり「炭素数14以上の高級アルコールを60質量%以上含有する固形油性物質(C)」を「所定の割合で配合した混合物(A)」からなる油性スクラブ粒子を、外水相に分散させた透明または半透明の液状化粧料である。
【0023】
この発明における液状油性物質(B)は、室温、例えば25℃で液体であり、通常の化粧料に配合される皮膚に無害な炭化水素類、エーテル類、エステル類、高級アルコール類、脂肪酸類、植物油類、シリコーン油類などを好適に用いることができる。
【0024】
このような液状油性物質の具体例としては、炭化水素類として、流動パラフィン、α‐オレフィンオリゴマーおよびスクワランなどが挙げられる。また、エーテル類として、ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテルおよびグリセロールモノオレイルエーテルなどが挙げられ、エステル類として、トリ2‐エチルヘキサン酸グリセリル、2‐エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2‐エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2‐エチルヘキサン酸セトステアリル、2‐エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、トリカプリル酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、およびイソステアリン酸オクチルドデシルなどが挙げられる。また、高級アルコール類として、ラウリルアルコール、オレイルアルコールおよびイソステアリルアルコールなどが挙げられ、脂肪酸類として、オレイン酸およびイソステアリン酸などが挙げられる。また、植物油類として、オリーブ油、大豆油およびホホバ油などが挙げられ、シリコーン油類として、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンおよびメチルシクロポリシロキサンなどが挙げられる。
【0025】
この発明における液状油性物質(B)は、炭化水素油が占める割合が60質量%以上(60〜100質量%)である。
炭化水素油は、炭素と水素からなる周知の液状化合物であり、通常の化粧料に配合される皮膚に無害なものを適用できる。
炭化水素油の配合量が60質量%未満では、スクラブが崩壊しやすくなったり、平均粒子径0.2mm未満またはそれより極端に小さなスクラブが生成されることになり、外水相が白濁したり、炭化水素油以外の油剤に由来するべたつきが強く使用感が損なわれやすくなる等、化粧料の優れた製品美観と優れた使用感の確実な両立が難しくなるからである。
【0026】
この発明における固形油性物質(C)は、ヒトの皮膚に接する時に固体であるように、例えば40℃以下で固体であり、化粧料に配合可能な融点40℃以上の皮膚に無害なロウ類、脂肪酸類、高級アルコール類、エーテル類、エステル類などを好適に用いることができる。
【0027】
上記固形油性物質の具体例としては、ロウ類として、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ラノリン、ミツロウなどが挙げられ、脂肪酸類として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。また高級アルコール類として、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、水添ナタネ油アルコール、アラキルアルコールなどが挙げられ、エーテル類として、バチルアルコール、キミルアルコールなどが挙げられ、さらにまたエステル類として、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、テトラミリスチン酸ペンタエリスリトール、乳酸セチル、ステアリン酸コレステリル等が挙げられる。
【0028】
また、この発明の液状化粧料には、必要に応じて界面活性剤を添加してもよく、例えばポリオキシエチレンベヘニルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルアミン等を添加してもよい。
【0029】
この発明における固形油性物質(C)は、高級アルコール類が占める割合が60質量%以上(60〜100質量%)である。上記高級アルコールは、一般式R−OH(R:脂肪族残基)で表される化合物のうち炭素数が14以上のものであり、通常の化粧料に配合される皮膚に無害なものを好適に用いることができる。因みに、炭素数14の高級アルコールの融点は約38℃である。
【0030】
この発明における固形油性物質の配合量が60質量%未満では、スクラブが崩壊しやすくなったり、逆にスクラブが粘着質になる等するため、使用時や輸送時の振動で崩壊や粘着凝集したり、高級アルコール以外の油剤に由来するべたつきが強く使用感が損なわれたりして、化粧料の優れた製品美観と優れた使用感の確実な両立が難しくなるからである。
【0031】
また、この発明における混合物(A)の液状油性物質(B)と固形油性物質(C)の配合割合は、質量比で(B):(C)=1:(0.05〜10)の範囲である。
なぜなら、液状油性物質(B)に対する固形油性物質(C)の質量比(B):(C)が1:0.05未満では、油性スクラブ粒子の融点が低くなり、製造後に液状のままで合一しやすくなるからであり、また前記質量比が1:10を超えると、油性スクラブ粒子の融点が高くなり、使用時に体温でスクラブが溶けずに体感できる固形物として皮膚上に残り使用感を損なうなど、化粧料の優れた製品美観と優れた使用感の両立を確実に維持することが難しいからである。
【0032】
また、この発明において調整する化粧料は、油性スクラブ粒子の総配合量が化粧料中に0.3〜5.0質量%となることが好ましい。なぜなら、0.3質量%未満の配合量では、使用時のエモリエント感が足らず、目的とする使用感を満足させられず、5.0質量%を超える配合量では、べたつきが強く、目的とする使用感を満足させられないことや、スクラブが多すぎて適切な分散ができずに製品美観を損なうなどにより、化粧料の優れた製品美観と優れた使用感の両立を確実に維持することが難しいからである。
【0033】
さらにまた、この発明において調整する化粧料は、外水相に分散している油性スクラブ粒子の平均粒子径が0.2〜2.0mmであることが好ましい。なぜなら、0.2mm未満の小さな平均粒子経では、極端に小さいスクラブが生成されやすくなって外水相に濁りが生じやすくなり、また2.0mmを超える大きな平均粒子経では、使用時にスクラブがなかなか体温で溶解せずに使用感を損ねたり、製造時の粒子径調節が難しくて製造効率が低下するからである。
【0034】
さらに、この発明において調整する化粧料は、一般的に化粧料製造に使用される機器を用いて製造できるが、攪拌工程では、混合機、分散機、混練機、ホモミキサー、圧力式ホモジナイザーまたは高速攪拌機、より具体的には複合型攪拌機や薄膜旋回型高速ミキサーなどを用いて油性スクラブ粒子と水相を混合することで、油性スクラブ粒子の粒子径を均一化することが好ましい。
【0035】
例えば薄膜旋回型高速ミキサーは、高速で旋回する筒形容器内壁面に遠心力で薄膜状の液層を形成し、その内部で攪拌、混合、分散が行われるものであって、例えば旋回する容器内壁面の液層の周速を0.5〜5.0m/s、薄膜内での攪拌混合に要する滞留時間を15〜60秒で行なうことにより、平均粒子径0.8mm程度で粒度分布の範囲が狭く粒子径のばらつきの小さい油性スクラブ粒子群を形成できる。
【0036】
このような攪拌・混合・分散は、市販の薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス社製:フィルミックス)を用いて達成することができ、油性スクラブ粒子の粒子径を均一化すると、液状化粧料の製品美観がより優れたものになるだけでなく、品質が安定して使用感のばらつきも少なくなる。
【0037】
油性スクラブ粒子の粒子径の均一化は、油性スクラブ粒子の平均粒子径が0.2〜2.0mmである場合に、粒子径のばらつき(標準偏差)を0.10〜0.20mmの範囲(後述する実施例15、16ではそれぞれ0.18mm、0.13mm)として所期した効果が得られている。
【0038】
この発明において調整される化粧料の外水相の成分は特に限定されないが、配合する化粧料によって適宜選択する方が好ましい。また、この発明の化粧料の調整方法は、特に限定されず、配合する化粧料に対応させて適宜選択することができる。
【実施例】
【0039】
〔実施例1〜3、比較例1〜4〕
表1に示す(B)成分および(C)成分を混合し、その混合物を60〜80℃に加熱して溶解し、次いで前記溶解した60〜80℃の範囲内の温度に加熱した(B)(C)成分以外の成分からなる水相に液状の前記混合物を投入し、攪拌機(東京理化器械社製:マゼラNZ−1100)を用いて回転数100〜500rpmで撹拌しながら冷却することで、平均粒子径が約0.8mmの油性スクラブ粒子を均一に分散させた化粧水を調製した。
得られた化粧水について、以下の評価方法で製造直後及び振動試験後の製品美観並びに使用感を判定した。
【0040】
〔評価方法〕(製品美観-製造直後)
製造直後の化粧水を透明容器(竹本容器社製:OPT−100)に充填して静置し、油滴の粒径や形、色などを目視にて観察した。
【0041】
[判定]
◎:大変優れた製品美観を有する。(油滴の粒径や形が適切かつ均一で、適切に分散している)
○:優れた製品美観を有する。(油滴の粒径や形にわずかにばらつきがある)
△:好ましくない製品美観を有する。(油滴の粒径や形が不適切であり、分散できていない油相が残存している)
×:大変好ましくない製品美観を有する。(油相が分散していない)
【0042】
〔評価方法〕(製品美観-振動試験後)
得られた化粧水を透明容器に充填し、油滴の粒径や形、色などを目視にて観察した後、容器を振動させ、振動後の油滴の粒径や形、色などを目視で比較観察した。容器の振動は、温度23〜27℃、湿度40〜60%環境下において、容器を180度転倒後に元に戻す操作を30回繰り返すことにより行なった。
【0043】
[判定]
◎:振動後も製品美観が全く損なわれない。(振動後も製品外観が変化しない)
○:振動後も製品美観がほとんど損なわれない。(振動により油滴が若干小さくなったり、水相が若干白濁する)
△:振動後は製品外観が損なわれる。(振動により油滴が非常に小さくなり、水相が白濁する)
×:振動後は製品外観を完全に損なわれる。(振動により油滴が見えなくなり、均一で白濁な外観となる)
【0044】
〔評価方法〕(使用感)
評価パネル20名(20歳代〜40歳代の成人男女各10名)により、皮膚に塗布した際の使用感(べたつき感など)を下記基準にて5段階評価し、さらにその平均点から判定した。
【0045】
[評価]
5点:非常に良い。
4点:良い。
3点:普通。
2点:悪い。
1点:非常に悪い。
【0046】
[判定]
◎:平均点4点以上
○:平均点3点以上4点未満
△:平均点2点以上3点未満
×:平均点2点未満
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示される結果からも明らかなように、実施例1、2では、液状油性物質(B)として炭化水素油を用いているため、優れた製品美観および使用感を有する化粧水が得られた。
【0049】
一方、比較例1、2では、液状油性物質(B’)としてエステル油や脂肪酸を用いており、そのために粒子が崩れやすくなり、撹拌工程により粒子が必要以上に微細化された化粧水が得られた。これらは、振動試験により、粒子がさらに微細化されたため、製品美観を保つことができなかった。
【0050】
また、比較例3は、液状油性物質(B’)としてシリコーン油を用いており、固形油性物質(C)との相溶性が悪かったため、製造工程中に液状油性物質(B’)と固形油性物質(C)が分離し、均一な球状の油性スクラブ粒子を形成することができなかった。また、得られた化粧水を透明容器に充填すると、シリコーン油は容器壁面に付着し、使用に際してシリコーン油を容器から取り出すことが困難であった。
【0051】
また、比較例4は、実施例1と比較例1の中間の組成により得られた化粧水であり、比較例1と同様に粒子が微細化されやすく、優れた製品美観を有していなかった。
比較例4から液状油性物質(B)中の炭化水素油比率をさらに高めた実施例3の化粧水は、粒子がある程度微細化され難くなり、振動試験で製品仕様が損なわれなかった。
【0052】
〔実施例4〜5、比較例5〜9〕
表2に示す組成の成分を用いること以外は、実施例1と全く同様にして化粧水を調製し、前記及び以下に記載する評価方法を用いて、製造直後及び振動試験後の製品美観、使用感並びに平均粒子径について判定した。また、製造直後の実施例4、実施例5、比較例6、及び比較例7の製品美観については、それぞれ化粧水を充填した透明容器の写真を図1または図2に示した。
【0053】
〔評価方法〕(平均粒子径)
得られた化粧料をマイクロスコープ(VHX-6000(株式会社キーエンス製))で観察し、得られた画像を内蔵システム(メイン計測システム)にて処理することにより平均粒子径を算出した。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示される結果からも明らかなように、実施例4の化粧水は、固形油性物質(C)として炭素数22のベヘニルアルコールを用いており、優れた製品美観及び使用感を有していた。すなわち、図1の写真の左側に示される透明容器に充填された実施例4の化粧水は、油滴が適切な大きさで均一に分散し、外水相も透明で美しい美観を呈していた。
【0056】
一方、比較例5の化粧水は、固形油性物質(C’)としてロウ類を用いたものであり、粒子にロウ類特有の粘りが付与され、製造工程中や振動試験において粒子同士が接着して製品美観が損なわれ、また使用感においてもべたつきが非常に強く認められた。
【0057】
また、比較例6−8では、固形油性物質(C’)として、それぞれ脂肪酸、エステル油、親水性界面活性剤を単独で用いたところ、炭素数14以上の高級アルコールが所定量含まれていないため、粒子が崩れやすくなり、製造工程や振動試験において粒子が微細化されやすく、所期した粒径の油性スクラブ粒子が分散せず、製品美観の好ましい化粧水は得られなかった。
【0058】
図2の写真に示される透明容器に充填された比較例6(同写真左側)及び比較例7(同写真右側)の化粧水は、油性スクラブの粒子径が小さすぎ、また粒子径が小さくなり過ぎた影響で化粧水全体が白濁し、製品美観が損なわれていた。
また、比較例9は、実施例4と比較例6の中間の組成により得られた化粧水であるが、比較例6と同様に粒子が微細化されやすいものであり、透明性のある所期した製品美観を呈しなかった。
【0059】
また、実施例5は、比較例9から固形油性物質(C)の含有する炭素数14以上の高級アルコール比率を高めたものであり、粒子がある程度微細化され難く、振動試験でも製品美観の損なわれない化粧水であった。すなわち、図1の写真の右側に示される透明容器に充填された実施例5の化粧水は、油滴が適切な大きさで均一に分散し、外水相も透明で美しい美観を呈していた。
【0060】
〔実施例6〜10、比較例10〜11〕
表3に示す組成の成分を用いること以外は、実施例1と全く同様にして化粧水を調製し、前記した評価方法を用いて、製造直後及び振動試験後の製品美観並びに使用感について判定した。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示される結果からも明らかなように、実施例7−9は、液状油性物質(B)と固形油性物質(C)の質量比が、1:(0.10〜5.0)の範囲内の混合物からなる油性スクラブ粒子が分散し、優れた製品美観及び使用感を有する化粧水が得られた。
【0063】
また、上記質量比が1:0.05となる実施例6の化粧水では、固形油の硬さが粒子に付与されにくいために振動試験により粒子が僅かに微細化されたが、使用感に問題はなかった。
また、実施例6からさらに固形油性物質比率を下げた比較例10では、振動試験での粒子微細化が顕著となり、製品美観を保つことができなくなった。
【0064】
上記質量比が1:10となる実施例10の化粧水は、油性スクラブ粒子の融点が高くなり、塗布時に溶解するまでに時間が長くなったが、使用に耐えるものであった。
実施例10からさらに固形油性物質(C)の比率を上げた比較例11は、使用時に粒子が溶解せず使用感が損なわれ、また通常の製造温度では撹拌分散工程中に油性スクラブ粒子が一部固化してしまい、好ましくない美観を呈する化粧水となった。
【0065】
〔実施例1、11〜14、比較例12〜13〕
表4に示す組成の成分を用いること以外は、実施例1と全く同様にして化粧水を調製し、前記した評価方法を用いて、製造直後及び振動試験後の製品美観並びに使用感について判定した。なお、参考のために実施例1も同表中に併記した。
【0066】
【表4】
【0067】
表4に示される結果からも明らかなように、油性スクラブ粒子の含有量として[(B)+(C)]が化粧料100質量%中に0.5〜1.0質量%配合された実施例12、13、実施例1の化粧水は、優れた製品美観及び使用感を有していた。
【0068】
油性スクラブ粒子の配合割合を0.3質量%とした実施例11の化粧水は、油性物質によるべたつき感が僅かに弱い使用感であった。
油性スクラブ粒子の配合割合が実施例11より少ない比較例12は、油性物質によるべたつき感がほとんど感じられず、あまり好ましくない使用感であった。
【0069】
油性スクラブ粒子の配合割合が5.0質量%の実施例14は、油性物質によるべたつき感が適度にある使用感であり、また化粧水中の油滴の密度が高くなり、製品美観も良い化粧水であった。
油性スクラブ粒子の配合割合を実施例14より増加させた比較例13は、油性物質によるべたつき感が強くなり過ぎて使用感が損なわれ、また適切に油滴を分散させることができなかった。
【0070】
〔実施例15〜16〕
実施例15は、表5に示す成分を用いたこと以外は実施例1と全く同様にして化粧水を調製し、実施例16は、表5に示す成分を用いたこと及び高速攪拌機として薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス社製:フィルミックス)を用いて周速0.5〜1.0m/s、攪拌機内の滞留時間20〜30秒の製造条件としたこと以外は実施例1と全く同様にして、各実施例についてサンプル数9個(ロット単位3個の3ロット)の化粧水を調製した。
【0071】
そして、前記および以下に記載する評価方法を用いて、製造直後及び振動試験後の製品美観、使用感を調べ、実施例4と同様にして平均粒子径、並びに以下の評価方法で粒子径のばらつきを評価し判定した。また、実施例15、16の化粧水中の油性スクラブ粒子の形態を示す顕微鏡写真を図3図4に示した。
【0072】
〔評価方法〕(粒子径のばらつき)
同一組成で3ロット製造して得られたた化粧水をマイクロスコープ(キーエンス社製:VHX-6000)で観察し、得られた画像を内蔵システム(メイン計測システム)にて処理することにより平均粒子径およびそのばらつきとして標準偏差を算出した。さらに、評価パネル20名(20歳代〜40歳代の成人男女各10名)により、皮膚に塗布した際の使用感(べたつき感など)を評価することで、ロット間のばらつきを判定した。
【0073】
[判定]
◎:ロット間で粒子径および使用感のばらつきがほとんどない。
○:ロット間で粒子径のばらつきがわずかにあるが、使用感への影響はほとんどない。
△:ロット間で粒子径のばらつきが大きく、使用感にも影響する。
×:ロット間で粒子径のばらつきが非常に大きく、使用感も異なる。
【0074】
【表5】
【0075】
表5に示される結果からも明らかなように、攪拌工程で、薄膜旋回型高速ミキサーを使用しない実施例15の化粧水は、平均粒子径は0.46mm、粒子径のばらつき(標準偏差は約0.18mm)はわずかであった。また実施例15の化粧水は、図3の顕微鏡写真からも明らかなように、粒子径のばらつきが大きく、また小さくいびつな形状の粒子が形成されていた。
【0076】
薄膜旋回型高速ミキサーを使用した実施例16の化粧水は、平均粒子径が0.47mm、粒子径のばらつき(標準偏差は約0.13mm)は殆どなかった。また実施例16の化粧水は、図4の顕微鏡写真からも明らかなように、粒子径のばらつきが比較的小さく、いびつな形状の粒子の形成は見られなかった。
この発明の実施形態と同様に製造可能な各種化粧料の処方例(組成)を以下の表6にまとめて示した。
【0077】
【表6】
図1
図2
図3
図4