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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-75966(P2020-75966A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20200424BHJP
【FI】
   C08F299/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-208778(P2018-208778)
(22)【出願日】2018年11月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】池田 順一
(72)【発明者】
【氏名】内木場 尊信
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD441
4J127BD461
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG091
4J127BG09X
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127BG281
4J127BG28X
4J127DA12
4J127DA20
4J127DA61
4J127DA66
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂と無機粉体を均一に混合することが容易であり、このために硬化物が優れた強度を有するものである硬化性樹脂組成物及硬化物を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネート基を有するポリウレタンと末端水酸基含有不飽和単量体を反応から得られるウレタン・不飽和オルガノオリゴマー、(B)下記式(I):

で表わされる邂逅剤を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)繰返し単位として、
−〔O(CHOCO〕−
(n=4〜9)
で表される構造の1又は2以上を含み、末端にヒドロキシ基を有するコポリカーボネートと、有機イソシアネートとが鎖状に連結してなる数平均分子量10〜10のウレタンオリゴマーであり、末端に不飽和オルガノオキシカルボニルイミド基を結合しているウレタン・不飽和オルガノオリゴマー
(B) 下記式(I):
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜22のアルキル基、Rは炭素数1〜22のアルキレン基、Rは炭素数1〜22のアルキル基を示す。但し、R及びRはR−CH−CH−R−部分の炭素数が9〜25となるように選択される。X及びYは、(1)XとYのいずれか一方が−O−(AO)Hであり他方が−O−(AO)H(AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200である。)、(2)XとYのいずれもが−OC(=O)−CHCHC(=O)OH、(3)XとYのいずれか一方が−OPOHであり他方が水酸基、Zは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−、又は−O−を示す。)で表わされる邂逅剤
を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
コポリカーボネートは、数平均分子量800±200である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を硬化させることで得られたものであることを特徴とする硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂組成物は、極めて多くの分野において使用されており、具体的には各種形状に成形した後で熱やエネルギー線によって硬化を行う素材である。このような素材においては、物理的特性・光学特性・化学的特性等において極めて高いレベルの性能が要求され、用途に応じた性能を付与することが求められる。
【0003】
本発明者らは、ポリカーボネート骨格を有し、末端に不飽和オルガノオキシカルボニルイミド基を有するようなウレタンアクリレートを完成した(特許文献1)。このような樹脂は、強度や柔軟性等の物性において優れるものであるが、粘性が高い樹脂であることから、成形良好ではなく、粘性を低下させることが必要とされている。従来は、このような目的で有機溶媒を添加したり、希釈剤として各種モノマーを併用したりすることが行われていた。しかし、このような方法では、充分に硬化物の物性を改善できない場合があった。
【0004】
また、硬化性組成物に導電性や熱伝導性などの機能を付与する場合、具体的には、例えば、粉体成分を併用する場合が考えられる。粉体成分フィラーとして樹脂と混合することは、汎用的な技術である。この場合、粉体が樹脂成分中に均一に分散されなければ、物性の低下の原因となってしまう。しかし、粘性の高い樹脂においては、このような均一な分散は容易ではない。また、本発明者の検討によると、溶媒の併用や各種モノマーの併用では、樹脂が本来有する物性を充分に維持することができず、物性の低下を生じてしまっていた。
【0005】
更に、特許文献2には、特定の構造を有するジェミニ型界面活性剤が記載されており、これをナノカーボン物質の水への分散剤として使用することが記載されている。しかし、ここでは、上述したようなウレタンアクリレートと混合することに関する記載も示唆も存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−166737号公報
【特許文献2】特開2015−178102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、ポリカーボネート骨格を有する特定のウレタンアクリレートにおいて、粘性を改善することで成形性を良好なものとしつつ、本来の強度や柔軟性といった性能を維持することができるような硬化性樹脂組成物及びこれを硬化させることで得られた硬化物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(A)繰返し単位として、
−〔O(CHOCO〕−
(n=4〜9)
で表される構造の1又は2以上を含み、末端にはヒドロキシ基を有するコポリカーボネートと、有機イソシアネートとが鎖状に連結してなる数平均分子量10〜10のウレタンオリゴマーであり、末端に不飽和オルガノオキシカルボニルイミド基を結合しているウレタン・不飽和オルガノオリゴマー、並びに、
(B)下記式(I):
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜22のアルキル基、Rは炭素数1〜22のアルキレン基、Rは炭素数1〜22のアルキル基を示す。但し、R及びRはR−CH−CH−R−部分の炭素数が9〜25となるように選択される。X及びYは、(1)XとYのいずれか一方が−O−(AO)Hであり他方が−O−(AO)H(AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200である。)、(2)XとYのいずれもが−OC(=O)−CHCHC(=O)OH、(3)XとYのいずれか一方が−OPOHであり他方が水酸基、Zは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−、又は−O−を示す。)で表わされる邂逅剤
を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0009】
本発明はまた、上記硬化性樹脂組成物を硬化させることで得られたものであることを特徴とする硬化物でもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレートにおいて、成形性を改善しつつ、硬化物における強度・柔軟性等において優れた物性を得ることができるものである。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、無機フィラー等の粉体成分を配合した場合の混和性及び物性においても優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、特定の化合物を邂逅剤として使用した場合に、成分(A)として表される化合物の粘性制御が容易となり、これによって成型性が改善され、容易に強度・柔軟性等の物性に優れた硬化物を得ることができる。このような効果は、特定の成分(B)を使用した場合に特に顕著に得られる効果である。更に、フィラー成分を配合した場合の強度低下も抑制することができる。
【0012】
このような効果を発現する作用は、邂逅剤の極性基部分がフィラー表面に素早く密に吸着し、ウレタン・不飽和オルガノオリゴマーに非対称な疎水基が配向するためにフィラー同士に滑り性が生まれ、粘性が下がるというものであると推測される。
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は下記成分(A)及び(B)を含有するものである。以下、各成分(A)(B)についてそれぞれ詳述する
【0014】
<A:ウレタン・不飽和オルガノオリゴマー>
本発明のウレタン・不飽和オルガノオリゴマーは繰返し単位として、
−〔O(CHOCO〕−
(n=4〜9)
で表される構造の1又は2以上を含み、末端にはヒドロキシ基を有するコポリカーボネートと、有機イソシアネートとが鎖状に連結してなる数平均分子量10〜10のウレタンオリゴマーであり、末端に不飽和オルガノオキシカルボニルイミド基を結合しているものである。
上記コポリカーボネートは、数平均分子量が800±200であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、特に物性が優れた硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0015】
このようなウレタン・不飽和オルガノオリゴマーは、例えば次式などで表わされる。
【0016】
【化2】
式中のR1 は、両末端から水酸基が脱離した形で表示されるコポリカーボネートの2価の残基で、−〔O(CHOCO〕−(n=4〜9)で表される構造を繰り返し単位に含む共重合基である。
隣接する繰り返し単位相互間では互いに同一でもよく、異なっていてもよい。繰り返しは規則的でもよく不規則でもよい。
【0017】
上記成分(A)の原料となるポリカーボネートは−〔O(CHOCO〕−(n=4〜9)で表される構造が繰り返し単位となって形成される。
上記コポリカーボネートは、末端に水酸基を有するオリゴマーである。上記nは特に限定されず、nが相違する2以上のポリカーボネートの共重合物であってもよい。なかでも、特に、n=5のものとn=6のものとの混合物を使用することが好ましい。これらの混合物である場合、混合比は、9:1〜1:9の範囲内であることが好ましい。特に数平均分子量が700〜800で、しかもヘキサメチレンカーボネート(a) とペンタメチレンカーボネート(b)との比が5:5であるとき、ポリマーに硬化させると一般に伸び400%、強度は200kg・f/cmになるなど、優れた物性を発揮する点で好ましい。
【0018】
なお、本明細書における数平均分子量は、昭和電工社製Shodex GPC 101に、カラムとして、昭和電工社製KF−800DとKF−804Lを4本用い、溶媒としてテトラヒドロフランを、流速1.0ml/minとして、試料濃度0.5wt%、注入量100μl、40℃保温下、検出器Shodex RI−74sを用いてポリスチレン換算の数平均分子量として測定した値である。
【0019】
2 は有機イソシアネートがイソシアネート基を脱離させた形で表示される2価の脂肪族基または芳香族基である。適宜に合成反応過程の一例を示しながらその具体例を示す。以下同じである。R2として具体的には例えば、トルエン−2,4-ジイル基、トルエン−2,6-ジイル基、イソホロンジイソシアネートが反応した1-メチレン−1,3,3-トリメチルシクロヘキサン−5-イル基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメチレン基、(o,m, またはp )- キシレンジイル基〔-(CH3)2C6H4-〕、メチレンビス(シクロヘキシニル)基〔-C6H10CH2C6H10- 〕、トリメチルヘキサメチレン基〔-(CH3)3C6H9-〕、シクロヘキサン−1,3-ジメチレン基〔-CH2C6H10CH2- 〕、シクロヘキサン−1,4-ジメチレン基、ナフタレン−1,5-ジイル基、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートが反応したトリフェニレンチオフォスフェイト基〔(-C6H4)3 P=S〕が挙げられる。
【0020】
上記のR1とR2とはウレタン結合してウレタンオリゴマーを形成している。主鎖中には、本発明の効果を損なわない範囲で、水、低分子ポリオール、ポリアミンなどの残基がさらにエーテル結合、あるいはイミノ結合して含まれていると、主鎖の長さが適宜に長くなって好ましい。そのような鎖延長基としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどの残基で、それぞれヒドロキシ基中の水素を脱離させた形で表示されるものが挙げられる。
【0021】
上記式II中のmはオリゴマー中の繰り返し単位数で、一般に1〜100、好ましくは1〜10である。
【0022】
−R=Rは、二重結合を1以上含む不飽和オルガノ基である。R1、R2などからなるウレタンオリゴマーの末端にオキシカルボニルイミド基(−OCONH−)を介して結合している。二重結合をはさむ2つのRの基本骨格は互いに同一でもよく異なっていてもよい。そのような不飽和オルガノ基としては、ヒドロキシエチルアクリレートが反応したジメチレンアクリレート基〔-C2H4OCOCH=CH2〕、ヒドロキシプロピルアクリレートが反応したトリメチレンアクリレート基、ヒドロキシブチルアクリレートが反応したテトラメチレンアクリレート基などが挙げられる。さらにカプロラクトン付加物、あるいは、酸化アルキレン付加物が反応した基が挙げられる。例えば、ヒドロキシエチルアクリレート・カプロラクトン付加物が反応したペンタメチレンカルボニルオキシジメチレン−アクリレート〔-(CH2)5COOC2H4OCOCH= CH2〕、ヒドロキシプロピルアクリレート・カプロラクトン付加物が反応したペンタメチレンカルボニルオキシトリメチレン−アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート・カプロラクトン付加物が反応したペンタメチレンカルボニルオキシテトラメチレン−アクリレート基などが挙げられ、ヒドロキシエチルアクリレート・酸化エチレン付加物が反応したジメチレンオキシジメチレン−アクリレート基〔-C2H4OC2H4OCOCH=CH2 〕、ヒドロキシエチルアクリレート・酸化プロピレン付加物が反応したメチルジメチレンオキシジメチレン−アクリレート基〔-C2H3(CH3)OC2H4OCOCH=CH2〕、ヒドロキシエチルアクリレート・酸化ブチレン付加物が反応したエチルジメチレンオキシジメチレン−アクリレート基〔-C2H3(C2H5)OC2H4OCOCH=CH2 〕などが挙げられる。この他にも次のような基が挙げられる。
【0023】
グリセリンモノアクリレートが反応したヒドロキシトリメチレンアクリレート基〔-C3H5(OH)OCOCH=CH2〕、グリセリンジアクリレートが反応したエチレニルカルボニルオキシ−トリメチレン−アクリレート基〔-C3H5(OCOCH=CH2)2 〕、グリシジルメタクリレートアクリル酸付加物が反応した1-エチレニルカルボニルオキシメチル−5-メチル−3-オキサ−4-オキソ−5-ヘキセン−1-イル基〔-CH(CH2OCOCH=CH2)CH2OCOC(CH3)=CH2 〕、トリメチロールプロパンモノアクリレートが反応した2-エチル−2-ヒドロキシメチル−4-オキサ−5-オキソ−6-ヘプテン−1-イル基〔-CH2C(CH2OH)(CH2CH3)CH2OCOCH=CH2〕、ペンタエリスリトールトリアクリレートが反応した2,2',2" −トリ(エチレニルカルボニルオキシメチル)エチル基〔-CH2C(CH2OCOCH=CH2)3〕、ジペンタエリスルトールペンタアクリレートが反応した4-オキサ−2,2’,6,6’,6”−ペンタ(エチレニルカルボニルオキシメチル)−ヘキシル基〔−CHC(CHOCOCH=CHCHOCHC(CHOCOCH=CH 〕、ジトリメチロールプロパントリアクリレートが反応した2,6,6'- トリ(エチレニルカルボニルオキシメチル)−2-エチル−4-オキサ−オクチル基〔-CH2C(CH2CH3)(CH2OCOCH=CH2)CH2OCH2C(CH2OCOCH=CH2)2CH2CH3〕、トリメチロールプロパン・酸化エチレン付加物・ジアクリレートが反応した2-エチル−2-エチレニルカルボニルオキシメチル−4,7-ジオキサ−8-オキソ−9-デセン−1-イル基〔-CH2C(C2H5)(CH2OCOCH=CH2)CH2OC2H4OCOCH=CH2〕、5,5'- ジ(エチレニルカルボニルオキシメチル)−3-オキサ−ヘプチル基〔-CH2CH2OCH2C(CH2OCOCH=CH2)2C2H5 〕、トリメチロールプロパン・酸化プロピレン付加物ジアクリレートが反応した4,7-ジオキサ−2-エチル−2-エチレニルカルボニルオキシメチル−5-メチル−8-オキソ−9-デセン−1-イル基〔-CH2C(C2H5)(CH2OCOCH=CH2)CH2OC2H3(CH3)OCOCH=CH2 〕、2-メチル−5,5'- ジ(エチレニルカルボニルオキシメチル)−3-オキサ−ヘプチル基〔-C2H3(CH3)OCH2C(CH2OCOCH=CH2)2C2H5〕などが挙げられる。このほか、各エチレニル基が部分的に1-メチルエチレニル基〔-(CH3)C=CH2 〕に変わっている基などが挙げられる。また、これらのアクリレート置換部のかわりにメタクリレート置換部を有するものも挙げることができる。
【0024】
このようなウレタン・不飽和オルガノオリゴマーは、例えば、次のようにして合成することができる。
【0025】
繰返し単位として、−〔O(CHOCO〕−(n=4〜9)で表される構造の1又は2以上を含み、末端にはヒドロキシ基を有するコポリカーボネートと、有機イソシアネートとを重付加反応させ、末端にイソシアネート基(−N=C=O)を有するウレタンオリゴマーを形成し、末端のイソシアネート基にヒドロキシ不飽和化合物のヒドロキシ基を付加反応させる。
【0026】
有機イソシアネートと重付加反応させるコポリカーボネートとしては、−〔O(CHOCO〕−(n=4〜9)で表される構造が繰り返し単位となって、所定の割合で鎖状に結合し、さらに両末端にヒドロキシ基を有し、上記の分子量を有しているコポリカーボネートを用いる。コポリカーボネートは、所定のポリオールを反応器に仕込み、分子量を調節しながら例えばホスゲンと反応させれば合成される。
【0027】
コポリカーボネートと反応させる有機イソシアネートとしては、例えば次のような公知の芳香族ジイソシアネート、あるいは脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
2,4-トルエンジイソシアネート(分子量174)〔CH3C6H3(NCO)2 〕、2,6-トルエンジイソシアネート(分子量174)、イソホロンジイソシアネート(分子量 222)〔(CH3)3C6H7(NCO)(CH2NCO) 〕、ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)〔OCN(CH2)6NCO〕、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)〔(C6H5)2C(NCO)2〕、(o,p,又はm)- キシレンジイソシアネート(分子量188)〔(CH3)2(C6H2)(NCO)2〕、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(分子量262)〔CH2[(C6H10)(NCO)]2〕、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(分子量210)〔(CH3)3C6H9(NCO)2〕、1,3-または1,4-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(分子量194)〔C6H10(CH2NCO)2〕、1,5-ナフタレンジイソシアネート(分子量210)〔C10H6(NCO)2 〕、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェイト(分子量417)〔[C(NCO)] P=S〕などが挙げられる。なお、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)はその2量化重合体でもよい。さらに有機イソシアネートとしては、上記の具体的な有機イソシアネートのイソシアヌレート化変性物、カルボジイミド化変性物、あるいはビウレット化変性物なども挙げることができる。
【0028】
コポリカーボネートと有機イソシアネートとを反応させるには、例えばコポリカーボネートに対し0.01〜1.0モル、好ましくは0.1〜1.0モル(水酸基及びイソシアネート基のモル比基準)過剰に有機イソシアネートを混合し、触媒としてジブチルスズジラウリラート〔[CH3(CH2)3]2Sn[OCO(CH2)10CH3]2〕を加え、60〜120℃で反応物を加温すればよい。なお、過剰率を0.1モルとしたとき、一般に式II中の繰り返し単位数nは10となる。
【0029】
また、コポリカーボネートと有機イソシアネートとの重量比は、1:2〜3:4であることが好ましい。上記範囲内とすることで、より好適な物理的性能が得られる点で好ましい。
【0030】
本発明において使用する成分(A)において、不飽和基は不飽和基当量1/1000〜1/2000の範囲内のものであることが好ましい。このような割合で不飽和基を有するものとすることで、良好な強度・柔軟性を得ることができる点で好ましい。
【0031】
コポリカーボネートと有機イソシアネートとの反応にあたり、既に上記した水、低分子ポリオール、ポリアミンなどを共存させると、主鎖の長さが適宜に長くなる。
【0032】
本発明の成分(A)ウレタン・不飽和オルガノオリゴマーの含有量は、硬化性樹脂組成物に対して60〜95重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがさらに好ましい。
75〜85重量%であると塗工可能な粘度を保持しながら最大限粉体添加量を増やせるという効果が得られる。
なお、本発明の硬化性樹脂組成物が無機粉体を含有するものである場合、上述した硬化性樹脂組成物の配合割合は、無機粉体を除いた樹脂成分に対する割合を意味する。
【0033】
<B:邂逅剤>
本発明の邂逅剤は樹脂の粘度を低下させる目的で添加されるものである。これにより、無機フィラーと硬化性樹脂組成物との混和性を良好にし、強度等に優れた硬化性樹脂組成物とすることが可能となる。
【0034】
本発明の邂逅剤(B)は、下記式(I)で表される化合物である:
【化3】
【0035】
(式中、Rは炭素数1〜22のアルキル基、Rは炭素数1〜22のアルキレン基、Rは炭素数1〜22のアルキル基を示す。但し、R及びRはR−CH−CH−R−部分の炭素数が9〜25となるように選択される。X及びYは、(1)XとYのいずれか一方が−O−(AO)Hであり他方が−O−(AO)H(AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200である。)、(2)XとYのいずれもが−OC(=O)−CHCHC(=O)OH、(3)XとYのいずれか一方が−OPOHであり(Mは水素イオンを示す。)他方が水酸基、Zは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−、又は−O−を示す。
【0036】
上記式(I)で表される化合物のナトリウム塩、アンモニウム塩等は、ジェミニ型界面活性剤と呼ばれるものである。本発明では塩ではなく、カルボン酸、リン酸等の酸の構造、又はアルキレンオキサイド付加タイプのものを邂逅剤として用いている。上記式(I)で表される化合物は、工業的に入手し易い天然由来の不飽和脂肪酸や不飽和脂肪族アルコール等を原料に用いて、その末端のカルボキシル基やアルコール由来のアルコキシド等の官能基に、脂肪族アルコールやハロゲン化アルキル等のアルキル基含有化合物を導入して、アルキルエステル基、アルキルエーテル基等とした炭化水素鎖としたものである。原料の二重結合部位が上記一般式(I)の連結基となり、その二重結合部分を酸化して得られた2つの水酸基部分に、コハク酸モノエステル導入したジェミニ型の分子構造を備えている。
【0037】
式(I)において、Rは炭素数1〜22のアルキル基を示す。
【0038】
アルキル基Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ノナデシル基が好ましい。
【0040】
式(I)において、Rは炭素数1〜22のアルキレン基を示す。
【0041】
アルキレン基Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ぺンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−テトラデシレン基、n−ペンタデシレン基、n−ヘキサデシレン基、n−ヘプタデシレン基、n−オクタデシレン基、n−ノナデシレン基、n−イコシレン基、n−ヘンイコシレン基、n−ドコシレン基等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−ペンタデシレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基がより好ましい。
【0043】
式(I)において、R及びRは、−R−CH−CH−R部分の炭素数が9〜25となるように選択される。
【0044】
−R−CH−CH−R部分としては、例えば、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−CH、−CH−CH−CH−(CH−CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH11CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH13CH、−(CH−CH−CH−(CH12CH、−(CH−CH−CH−(CH10CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH10−CH−CH−(CHCH、−(CH11−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CH11CH、−(CH12−CH−CH−(CHCH、−(CH13−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CH18CH、−(CH15−CH−CH−(CHCH、−(CH15−CH−CH−(CHCH等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、−CH−CH−CH−(CH−CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH11CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH13CH、−(CH−CH−CH−(CH12CH、−(CH−CH−CH−(CH10CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH10−CH−CH−(CHCH、−(CH11−CH−CH−(CHCHが好ましい。
【0046】
式(I)において、Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。
【0047】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0049】
式(I)においてはRがC17、RがC14、RがC1021及びZが−C(=O)−O−である化合物は樹脂との相溶性がいいという性質を示すため、特に好ましい。
【0050】
式(I)において、X及びYは、上記(1)〜(3)のいずれかの基を示す。
【0051】
上記(1)において、X及びYは、XとYのいずれか一方が−O−(AO)Hであり他方が−O−(AO)H(AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200である。)である。
【0052】
AOのアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが用いられ、これらは併用することができる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドを併用した場合、ポリオキシアルキレン鎖はエチレンオキシドとプロピレンオキシドがランダムに付加重合したものであってもよく、ブロック状に付加重合したものであってもよい。
【0053】
式(I)で表される邂逅剤の水酸基1個当たりのアルキレンオキシドの付加重合モル数は、100モル以下であるが、50モル以下が好ましく、2つの水酸基へのアルキレンオキシドの付加重合の合計モル数は、1〜200モルであるが、1〜100モルが好ましい。
【0054】
各水酸基にアルキレンオキシドを付加重合させて形成されるポリオキシアルキレン鎖は、アルキレンオキシド付加モル数が同モル数であっても異なるモル数であってもよく、異なるアルキレンオキシドが付加重合して構成されていてもよい。
【0055】
上記(2)において、X及びYは、XとYのいずれもが−OC(=O)−CHCHC(=O)OHである。
【0056】
上記(3)において、X及びYは、XとYのいずれか一方が−OPOHであり他方が水酸基である。
【0057】
本発明の邂逅剤(B)として使用することができる化合物について、以下、具体的な構造式を示す。なお、本発明に使用できる邂逅剤(B)は、下記一般式で記載したものに限定されるものではない。
【0058】
【化4】
【0059】
【化5】
【0060】
【化6】
【0061】
本発明の邂逅剤(B)の配合量は、硬化性樹脂組成物全量に対して0.1〜1.0重量%であることが好ましく、0.3〜0.7重量%であることがより好ましい。
特に0.4〜0.6重量%の範囲である場合は微粒子の高充填時に粘度低下効果が認められ、好ましい効果が得られるものである。なお、1%以上添加してもそれ以上の粘度低下効果は認められにくい。
なお、本発明の硬化性樹脂組成物が無機粉体を含有するものである場合、上述した邂逅剤の配合割合は、無機粉体及び樹脂成分を含めた組成物全量に対する割合を意味する。
【0062】
<C:無機フィラー>
本発明の硬化性樹脂組成物は、成分(C)として無機フィラーを含有するものであってもよい。本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したように優れた強度及び柔軟性を有するものである。一方無機フィラーを配合した場合に、これらの性能が低下する場合が多い。本発明においては、樹脂本来の強度・柔軟性が優れていること、及び、樹脂組成物の粘性が改善されたものであることから、樹脂成分とフィラーとが容易に均一に混合できることから、無機フィラーを配合する場合でも、良好な強度・柔軟性を得ることができる点で好ましいものである。
【0063】
本発明において使用できる無機フィラーとして、その種類は限定されないが、例えば金属としては、鉄、金、白金、銀、銅、亜鉛、鉛、アルミニウム、マグネシウム、チタン、及びニッケル等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化銀(I)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ、マグネシア、チタニア、イットリア、及び酸化ニッケル等が挙げられる。またガラスとして、石英ガラス、硼珪酸ガラス、及び無アルカリガラス等が挙げられる。セラミックスとして、シリカ、ジルコニア、セリア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化チタン、及びダイヤモンド等が挙げられる。さらに、タルク、クレー、マイカ、及び水酸化アルミニウム、塩化カルシウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物等が挙げられる。
【0064】
本発明の無機フィラーは単独で又は互いに異なる2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
無機フィラーの粒形は特に限定されないが、例えば粒状、フレーク状、球状、鱗片状等が挙げられる。
【0066】
無機フィラーの平均粒径は特に限定されるものではないが、0.005μm〜500μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがさらに好ましい。平均粒径は、具体的には、島津製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置SALD−2300に小容量測定システムSALD−BC23を用いて粒子分散液の粒径を測定し、平均値を算出し、これをフィラーの平均粒径とした。
【0067】
本発明において無機フィラーを配合する場合、その配合量は特に限定されるものではないが、例えば、硬化性樹脂組成物全量に対して60重量%以上、より好ましくは70重量%、更に好ましくは80重量%という高い割合で配合するものであっても、成形性が良好であり、強度や柔軟性といった性能を損なわないものである。上記配合量の上限は特に限定されるものではないが、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることが更に好ましい。
【0068】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物には必要に応じて上記の(A)、(B)及び(C)以外のその他の成分を添加してもよい。例えば、顔料、染料、可塑剤、安定剤、酸化防止剤等を添加することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の単官能アクリレートや多官能アクリレートのほか、フェノキシエチルアクリレート(PO−A)〔CH2=CHCOOC2H4OC6H5〕あるいは、トリメチロールプロパン−酸化エチレン付加物−トリアクリレートなどの希釈剤を含有するものであってもよい。光熱デュアル硬化の場合単官能、多官能脂環式エポキシドやオキセタン化合物を含有するものであってもよい。
更に、有機溶媒を併用するものであってもよい。但し、本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶媒や希釈剤を使用しなくても、良好な性能が得られるものであることから、有機溶媒・希釈剤を含有しないものであってもよい。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては特に制限されることなく公知の方法が使用できる。
例えば成分(A)の樹脂、成分(B)の化合物および必要に応じて使用するその他の成分を加温下、プラネタリーミキサーで練ればよい。予備混合ののち開始剤等添加剤を投入し混錬する。
【0070】
<硬化物>
本発明の硬化物は上記硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られるものである。
【0071】
硬化方法としては特に限定されるものではないが、公知のエネルギー線硬化、熱硬化等の方法により製造することができる。特にエネルギー線硬化によって行うと、加熱されることがなく汎用性が広い点で好ましい。
【0072】
エネルギー線硬化を行う場合、硬化性樹脂組成物は光重合開始剤を含有するものであることが好ましい。本発明において光重合開始剤として使用できるものとしては、例えば、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製イルガキュア#184)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(チバ社製イルガキュア#651)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ社製ダロキュア#1173)、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(チバ社製TPO)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニルブタノン(チバ社製イルガキュア#369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(チバ社製イルガキュア#907)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ社製イルガキュア#819)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、川崎化成社アントラキュアーUVS−581等の増感剤を併用することもできる。
【0073】
これらのなかでも、特に、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製イルガキュア#184)、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(チバ社製TPO)を単独もしくは併用することが好ましい。
【0074】
上記光重合開始剤を配合する場合、硬化性樹脂組成物の全量に対して1〜10重量%の割合で配合することが好ましい。
【0075】
熱硬化を行う場合、硬化性樹脂組成物はラジカル重合開始剤を含有するものであることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートのような過酸化物系重合開始剤;2,2−アゾビス(イソバレロニトリル)、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート、4,4−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、1,1−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)のようなアゾ系重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、夫々単独で用いてもよく、併用して用いてもよい。
【0076】
上記ラジカル重合開始剤を配合する場合、硬化性樹脂組成物の全量に対して1〜10重量%の割合で配合することが好ましい。
【0077】
光・熱デュアル硬化の場合、光カチオン重合開始剤として、光酸発生剤富士フィルム和光純薬社製WPI-113、116、169や170を前記光ラジカル重合開始剤および増感剤を併用することができる。
【0078】
上記光カチオン重合開始剤を配合する場合、硬化性樹脂組成物の全量に対して0.1〜3 重量%の割合で配合することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物の成型方法としては特に限定されるものではないが、基材上に塗布し、これに対して公知の手法によってエネルギー線照射、熱処理等の硬化処理することで行うことができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例に記載したものに限定されるものではない。
なお、実施例中において特に限定されない限り、配合量は重量%を示す。
【0080】
(実施例1)
2官能ウレタンアクリレート10g、下記一般式(1)〔化7〕で表される化合物 0.5g、フィラー(堺化学社製高純度ペロブスカイト(平均粒径300nm))90g、イルガキュア#184 3.0g、ルシリンTPO 1.0gを加え90℃に加温したのち、混錬することでペーストを得た。
【0081】
得られたペーストを片面125μm厚の未処理PETフィルム、もう一方を125μm厚の易接着PETに挟み、0.1mm厚とし、ヒュージョン社製Dバルブを備えたUV照射装置を用い、両面に各々4,000mJ/cm2UV照射し、シートを得た。
【0082】
得られたシートは50×100mmとし、未処理面をはがし円筒型マンドレル屈曲試験器を用いて180°屈曲させ、シートの割れが観察されるまでより小さなものに変え、割れが初めて起こったマンドレルの直径を記録した。本品の場合2mmであった。また、シート作成時に両面未処理PETフィルムを用いて上記同様UV硬化シートを作成、10×50mmのテストピースとし、両面のPETフィルムをはがしたのち、島津製作所製オートグラフのチャックに挟み、300mm/minで破断強度を測定した結果、3MPaであった。
【0083】
上記2官能ウレタンアクリレートは、請求項に記載した一般式において、n=2であり、コポリカーボネートの数平均分子量は、800であり、オリゴマーとしての数平均分子量は、ポリスチレン換算で3270であるものを使用した。さらに、上記一般式(II)におけるR2は、イソホロンジイソシアネートに由来する構造であり、末端のR=RO−は、CH=CHOOCHCHO−の構造(すなわち、ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造)であるものを使用した。当該化合物の合成は、特開平6−166737号に記載した方法に基づいて行った。
【0084】
【化7】
【0085】
(実施例2)
実施例1において上記〔化7〕式で表される化合物に替え上記〔化5〕式で表される化合物を使用した以外は実施例1と同じ条件で行った。マンドレル試験の結果、割れが初めて起こったマンドレルの直径は2mmであった。
【0086】
(実施例3)
実施例1において上記〔化7〕式で表される化合物に替え上記〔化6〕式で表される化合物を使用した以外は実施例1と同じ条件で行った。マンドレル試験の結果、割れが初めて起こったマンドレルの直径は2mmであった。
【0087】
(比較例1)
実施例1において上記〔化7〕式で表される化合物を使わなかった以外は実施例1と同じ条件で行った。その結果、フィラーが混ざらず、シートは得られなかった。
【0088】
(比較例2)
2官能ウレタンアクリレートを、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール、n=2とした数平均分子量3750とした以外は実施例1と同じ条件でペーストを調製、同条件でシート化した。マンドレル試験の結果、割れが初めて起こったマンドレルの直径は5mmであり、引張強度は0.3MPaであった。
【0089】
(比較例3)
2官能ウレタンアクリレートを、数平均分子量850のポリテトラメチレングリコール、n=2とした数平均分子量4700とした以外は実施例1と同じ条件でペーストを調製、同条件でシート化した。マンドレル試験の結果、割れが初めて起こったマンドレルの直径は4mmであり、引張強度は0.5MPaであった。
【0090】
上記実施例、比較例の結果より、本発明の硬化性樹脂組成物は、優れた混和性を有し、かつ、硬化後の樹脂組成物の物性が優れることが明らかとなった。また、フィラーを高濃度で添加した場合にこれらの効果が顕著なものであることも明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、電気製品、電子材料、建築材料、自動車用塗装等の各種の分野における硬化性樹脂として使用することができる。