【実施例】
【0030】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例および比較例で使用した各種薬品は以下の通りである。
・E−SBR1:JSR(株)製「SBR1723」(乳化重合SBR、ガラス転移温度:−53℃、スチレン含有量:24質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:15モル%、油展ゴム:ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
・E−SBR2:JSR(株)製「SBR1502」(乳化重合SBR、ガラス転移温度:−66℃、スチレン含有量:24質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:18モル%)
・E−SBR3:日本ゼオン(株)製「NIPOL9548」(乳化重合SBR、ガラス転移温度:−40℃、スチレン含有量:35質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:18モル%、油展ゴム:ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
・S−SBR:JSR(株)製「HPR350」(溶液重合SBR、ガラス転移温度:−35℃、スチレン含有量:20質量%、ブタジエン部中のビニル含有量:55モル%)
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・NR:RSS#3
【0032】
・シリカ:エボニック・デグサ社製「Ultrasil7000GR」
・シランカップリング剤:エボニック・デグサ社製「Si69」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS20」
・加工助剤:ランクセス社製「アクチプラストPP」
・オイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・硫黄 :鶴見化学工業(株)製「 粉末硫黄」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・石油系樹脂:東ソー(株)製「ペトロタック90」
【0033】
・水添テルペンフェノール樹脂1:ヤスハラケミカル(株)製「YSポリスターUH115」(水素添加率:92%、水酸基価:25mgKOH/g、軟化点:115℃)
【0034】
・水添テルペンフェノール樹脂2:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製「YSポリスターT160」)100g、イソプロピルアルコール400g、および粉末状の5%パラジウム担持アルミナ触媒2.0gを、反応容器に投入し密閉して、雰囲気を窒素ガスで置換した後に、水素ガスを0.98MPaの圧力で導入した。加熱撹拌し、160℃になったところで水素の圧力を7.8MPaとし、圧力7.8MPaを維持しながら5時間反応させ、水添テルペンフェノール樹脂2(水素添加率:80%、水酸基価:60mgKOH/g、軟化点:166℃)を得た。
【0035】
・水添テルペンフェノール樹脂3:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製「YSポリスターS145」)を用い、水添テルペンフェノール樹脂2と同様の合成法で水添テルペンフェノール樹脂3(水素添加率:90%、水酸基価:130mgKOH/g、軟化点:150℃)を得た。ただし、反応時間は10時間に変更した。
【0036】
実施例および比較例における評価方法は以下の通りである。
・ウェットグリップ性能:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪10%、動歪1%、温度0℃で損失係数tanδを測定し、表1では比較例1の値、表2では比較例3の値、表3では比較例5の値、表4では比較例6の値、表5では比較例8の値をそれぞれ100とした指数で表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れる。
【0037】
・耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N、スリップ率30%の条件で摩耗減量を測定し、測定値の逆数について、表1では比較例1の値、表2では比較例3の値、表3では比較例5の値、表4では比較例6の値、表5では比較例8の値をそれぞれ100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れる。
【0038】
[第1実施例]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0039】
【表1】
【0040】
結果は表1に示す通りである。コントロールである比較例1に対し、石油系樹脂を配合した比較例2では、ウェットグリップ性能は向上したものの、耐摩耗性の向上効果は得られなかった。これに対し、水添テルペンフェノール樹脂を配合した実施例1〜5であると、比較例1に対し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性の双方に顕著な向上効果がみられた。
【0041】
[第2実施例]
下記表2に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0042】
【表2】
【0043】
結果は表2に示す通りであり、第1実施例と同様、石油系樹脂を配合した比較例4では、コントロールである比較例3に対して、ウェットグリップ性能は向上したものの、耐摩耗性の向上効果は得られなかった。これに対し、水添テルペンフェノール樹脂を配合した実施例6,7であると、比較例3に対し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性の双方に顕著な向上効果がみられた。
【0044】
[第3実施例]
下記表3に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0045】
【表3】
【0046】
結果は表3に示す通りである。ガラス転移温度が−66℃の乳化重合SBRを用いた場合でも、第1及び第2実施例と同様、水添テルペンフェノール樹脂を配合した実施例8,9であると、コントロールである比較例5に対して、ウェットグリップ性能と耐摩耗性の双方に顕著な向上効果がみられた。
【0047】
[第1比較例]
下記表4に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0048】
【表4】
【0049】
[第2比較例]
下記表5に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様して、ゴム組成物を調製し、得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を評価した。
【0050】
【表5】
【0051】
表1〜3に示すように、ガラス転移温度が−50℃以下である乳化重合SBRに水添テルペンフェノール樹脂を配合した場合、ウェットグリップ性能とともに耐摩耗性についても顕著な改良効果がみられた。これに対し、表4に示すように、ガラス転移点が−40℃の乳化重合SBRでは、水添テルペンフェノール樹脂を添加することによりウェットグリップ性能の改良効果はみられたが、耐摩耗性の改良効果はみられなかった。また、表5に示すように、溶液重合SBRでも、水添テルペンフェノール樹脂を添加することによりウェットグリップ性能の改良効果はみられたが、耐摩耗性の改良効果はみられなかった。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。