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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-76197(P2020-76197A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】段差吸収式四脚脚立
(51)【国際特許分類】
   E06C 1/18 20060101AFI20200424BHJP
【FI】
   E06C1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-45693(P2017-45693)
(22)【出願日】2017年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】306007624
【氏名又は名称】小林 喜美男
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜美男
【テーマコード(参考)】
2E044
【Fターム(参考)】
2E044BA05
2E044BC06
2E044CA01
2E044CB03
2E044CC01
2E044DA01
2E044DB01
2E044DC01
2E044EA04
2E044EB04
2E044EC04
2E044EC09
(57)【要約】
【課題】4本の各脚部の下端部を平面状態にない設置面に対しても確実に当接させることができ、三脚にはない四脚による高い安定性の確保を図ることのできる段差吸収式四脚脚立を提供することを課題とする。
【解決手段】棒状の2本の脚部(21a、21a)、(22a、22a)を踏み桟21b、22bで連結してなる梯子部21、22を2組設けると共に、これらの梯子部21、22の上端部を天材部3に連結することにより構成されたものであり、天材部3は、一方の梯子部21に連結された第1の天材部31と、他方の梯子部22に連結された第2の天材部32とを備え、第1の天材部31と第2の天材部32とを、互いにねじれの位置となるように所定の回動軸を介して回動可能に連結したもので構成している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の2本の脚部を踏み桟で連結してなる梯子部を2組設けると共に、これらの梯子部の上端部を天材部に連結することにより構成された段差吸収式四脚脚立であって、
前記天材部は、前記一方の梯子部に連結された第1の天材部と、前記他方の梯子部に連結された第2の天材部とを備えており、
前記第1の天材部と前記第2の天材部とは、互いにねじれの位置となるように所定の回動軸を介して回動可能に連結されていることを特徴とする段差吸収式四脚脚立。
【請求項2】
前記第1の天材部と前記第2の天材部との回動を所定の角度範囲に制限する回動制限手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の段差吸収式四脚脚立。
【請求項3】
前記第1の天材部と前記第2の天材部との回動を停止する回動停止手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の段差吸収式四脚脚立。
【請求項4】
前記第1の天材部と前記第2の天材部との間には、前記回動軸の周囲を囲むように座金状の回動用摺動板が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の段差吸収式四脚脚立。
【請求項5】
前記第1の天材部及び前記第2の天材部における互いに対向する合せ面のうち少なくとも一方には、前記回動軸から所定の間隔をおいた位置に、これらの第1の天材部及び第2の天材部の間隔を所定の間隔に維持する揺動用摺動板が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の段差吸収式四脚脚立。
【請求項6】
前記回動軸は、前記第1の天材部及び前記第2の天材部のそれぞれにおける2本の脚部間の中央部に配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の段差吸収式四脚脚立。
【請求項7】
前記第1の天材部及び前記第2の天材部の一方における前記梯子部は、その上端部を支点にして、他方の梯子部に近接する方向に回動することが可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の段差吸収式四脚脚立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置面に段差がある場合でも4本の脚部の全てをその設置面に当接させることが可能な段差吸収式四脚脚立に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に四脚脚立は、2本の棒状の脚部を踏み桟で連結した構造の梯子部を2組設け、これらの梯子部の上端部を天材部に連結することにより、各梯子部が下方に向かって互いに間隔が広がるように傾斜したもので構成されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この場合、2組の梯子部による4本の各脚部は、通常長さが等しいもので形成されており、それぞれの下端部が平面上の4点の各位置に当接するようになっている。このため、設置面が平面状であれば、その設置面に4本の各脚部が全て当たることになるので、四脚脚立は当該設置面上に安定的に自立した状態になる。
【0004】
しかしながら、地面等の設置面は種々の凹凸等による段差が生じているのが一般的であることから、一方の梯子部についてはその二つの脚部が設置面に当接するようになっても、他方の梯子部についてはその二つの脚部のうち一つの脚部しか設置面に当接しない場合がある。この場合、対角方向の一対の脚部が設置面に当接し、他の一対の脚部が設置面に当接したり離れたりする不安定な状態になる。
【0005】
このように不安定な状態で四脚脚立を使用して作業する場合には、その作業能率が低下することは勿論であるが、転倒等の事態を招くおそれもある。このため、設置面とこれから浮き上がった脚部との間に詰め物をすることがあるが、このような場合には適当な詰め物を探すのに時間がかかることで、作業能率が低下するという問題がある。
【0006】
また、脚部の長さが調整可能に構成されたものも開発されているが(例えば、引用文献2)、調整後の脚部の長さをピン等で確実に固定することが安全性等を確保する上で必要であることから、その脚部を一定の長さごとにしか調整することができず、従ってこの場合も、四脚脚立の安定的な自立を図ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−057244号公報
【特許文献2】特開2013−087490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、4本の各脚部の下端部を平面状態にない設置面に対しても確実に当接させることができ、三脚にはない四脚による高い安定性の確保を図ることのできる段差吸収式四脚脚立を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、棒状の2本の脚部を踏み桟で連結してなる梯子部を2組設けると共に、これらの梯子部の上端部を天材部に連結することにより構成された段差吸収式四脚脚立であって、前記天材部は、前記一方の梯子部に連結された第1の天材部と、前記他方の梯子部に連結された第2の天材部とを備えており、前記第1の天材部と前記第2の天材部とは、互いにねじれの位置となるように所定の回動軸を介して回動可能に連結されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の天材部と前記第2の天材部との回動を所定の角度範囲に制限する回動制限手段を備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第1の天材部と前記第2の天材部との回動を停止する回動停止手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記第1の天材部と前記第2の天材部との間には、前記回動軸の周囲を囲むように座金状の回動用摺動板が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記第1の天材部及び前記第2の天材部における互いに対向する合せ面のうち少なくとも一方には、前記回動軸から所定の間隔をおいた位置に、これらの第1の天材部及び第2の天材部の間隔を所定の間隔に維持する揺動用摺動板が設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記回動軸は、前記第1の天材部及び前記第2の天材部のそれぞれにおける2本の脚部間の中央部に配置されていることを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の発明において、前記第1の天材部及び前記第2の天材部の一方における前記梯子部は、その上端部を支点にして、他方の梯子部に近接する方向に回動することが可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、第1の天材部と第2の天材部とが互いにねじれの位置となるように所定の回動軸を介して回動可能に連結されているので、一方の梯子部については上端部側を回動軸を支点にして回動することにより、その2本の各脚部の下端部を例えば凹凸等により段差が生じている設置面に当接させることができる。同様にして、他方の梯子部についても、その2本の各脚部の下端部を設置面に当接させることができる。
【0017】
従って、4本の脚部の下端部を平面状態にない設置面に対しても確実に当接させることができるので、三脚にはない四脚による高い安定性を確保することができる。しかも、設置面が例えば工事に伴う弾性変形等により部分的に上下に変位するような特殊な現場においても、その変位に追随するようにして、各脚部が設置面に当接し続けることになるので、安定性の確保を図ることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、第1の天材部と第2の天材部との回動を所定の角度範囲に制限する回動制限手段を備えているので、その回動による変形を安全な角度範囲内に抑えることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、第1の天材部と第2の天材部との回動を停止する回動停止手段を備えているので、例えば持ち運ぶ際などに、第1の天材部と第2の天材部とが回動して、一方及び他方の梯子部が相互にガタつくのを防止することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、第1の天材部と第2の天材部との間には、回動軸の周囲を囲むように座金状の回動用摺動板が設けられているので、その回動時に、第1の天材部及び第2の天材部における例えば互いに対向する合せ面の全体が摺動するのを防止することができる。
【0021】
従って、第1の天材部と第2の天材部とを互いに近接する方向に力を作用させて連結した状態においても、当該第1の天材部と第2の天材部との間の回動抵抗を低減することができる。即ち、第1の天材部と第2の天材部とを互いに近接させる方向に作用する力の増大に基づいて当該第1の天材部と第2の天材部との連結部分の剛性の向上を図ることができると共に、当該第1の天材部と第2の天材部との間の回動抵抗の低減を図ることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、第1の天材部及び第2の天材部における互いに対向する合せ面のうち少なくとも一方には、回動軸から所定の間隔をおいた位置に、これらの第1の天材部及び第2の天材部の間隔を所定の間隔に維持する揺動用摺動板が設けられているので、第1の天材部及び第2の天材部の間隔を所定の間隔に安定的に維持することができると共に、第1の天材部と第2の天材部との間の回動抵抗を低減することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、回動軸が第1の天材部及び第2の天材部のそれぞれにおける2本の脚部間の中央部に配置されているので、4本の脚部に作用する力が天材部のほぼ中央部に集中することになるので、全体の安定性の向上を図ることができる。しかも、回動変位によって生じる全体の変形量を最小限に抑えることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、一方の梯子部は、その上端部を支点にして、他方の梯子部に近接する方向に回動可能に構成されているので、コンパクトな状態に折り畳むことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態として示した段差吸収式四脚脚立であって、開脚後の使用状態を示す正面図である。
図2】同段差吸収式四脚脚立の右側面図である。
図3】同段差吸収式四脚脚立であって、閉脚後の折り畳んだ状態を示す正面図である。
図4】同段差吸収式四脚脚立の上部を示す拡大要部平面図である。
図5】同段差吸収式四脚脚立の拡大要部正面図であって、図4のV矢視方向からの拡大要部正面図である。
図6】同段差吸収式四脚脚立の上部を示す拡大要部側面図であって、(a)は図5のVIa矢視方向からの拡大要部側面図であり、(b)は図5のVIb矢視方向からの拡大上部側面図である。
図7】同段差吸収式四脚脚立における図5のVII−VII線に沿う断面図であって、(a)は第1の天材部と第2の天材部とが相対的に回動することなく互いに平行に重なった状態を示す断面図であり、(b)は第2の天材部が第1の天材部に対して時計方向に最大角度回動した後の状態を示す断面図であり、(c)は第2の天材部が第1の天材部に対して反時計方向に最大角度回動した後の状態を示す断面図である。
図8】同段差吸収式四脚脚立における図6(a)のVIII−VIII線に沿う断面図であって、(a)はロックボルトをロックナットから外し、収容ナットにねじ込んだ状態を示す断面図であり、(b)はロックボルトを収容ナットから外し、ロックナットにねじ込んだ状態を示す断面図であり、(c)はロックボルトをロックナットに完全にねじ込んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態として示した段差吸収式四脚脚立について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この実施形態で示す段差吸収式四脚脚立1は、図1図8に示すように、棒状の2本の脚部21aを踏み桟21bで連結した構造の一方の梯子部21と、同じく棒状の2本の脚部22aを踏み桟22bで連結した構造の他方の梯子部22とを備えたもので構成されている。これらの2組の梯子部21、22は、それぞれに設けられた一方の踏み桟21bと、他方の踏み桟22bとを互いに平行に向き合わされた状態で、一方の脚部21a、21a及び他方の脚部22a、22aの上端部が天材部(天フレーム)3に連結されている。
【0028】
この場合、段差吸収式四脚脚立1は、使用状態においては、図1に示すように、各梯子部21、22が下方に向かって漸次間隔が広がるように所定の角度(例えば地面等の設置面Gに対して75°の角度)で傾斜するように構成されている。
【0029】
天材部3は、一方の各脚部21aの上端部が連結された第1の天材部31と、他方の各脚部22aの上端部が連結された第2の天材部32とを備えた構成になっている。これらの第1の天材部31及び第2の天材部32は、図4に示すように、脚部21a、21aの間の方向及び脚部22a、22aの間の方向(以下これらの方向を「横方向」という。)に長く形成された構造になっている。
【0030】
第1の天材部31及び第2の天材部32は、図4及び図5に示すように、強度メンバーとしての側面板311、321が互いに平行に向き合うように配置され、これらの側面板311、321が回動軸4を介して回動自在に連結されている。また、側面板311、321は、図6に示すように、横方向に長い四角形状であって、下辺が上辺よりやや長い台形状に形成されている。そして、図4及び図5に示すように、各側面板311、321における互いに向き合う面が平面状の合せ面311a、321aとなっている。
【0031】
第1及び第2の天材部31、32における各上面板312、322は、側面板311、321のそれぞれの上辺から直角に折り曲げることによって長方形状の平板によって形成されている。
【0032】
また、第1の天材部31における横方向の各端部には端面板313、313が設けられ、第2の天材部32における横方向の各端部には端面板323、323が設けられている。そして、第1の天材部31の端面板313、313のそれぞれには脚部21a、21aが連結され、第2の天材部32の端面板323、323のそれぞれには脚部22a、22aが連結されている。
【0033】
この場合、脚部21a、21aについては、それぞれの上端部が揺動連結板23、23を介して端面板313、313に連結されている。各揺動連結板23は、下端部側がボルト・ナットBNを介して各脚部21a、21aに連結され、上端部が回動ピン24を介して各端面板313、313に揺動可能に連結されている。なお、ボルト・ナットBNについては、これに代えてリベット等の連結手段を用いてもよい。
【0034】
更に、一方の梯子部21には、図1及び図5に示すように、当該梯子部21を開脚状態に保持する筋交金具21cが設けられている。筋交金具21cは、一端部が脚部21aに回動自在に設けられており、開脚状態において、他端部の係止部を端面板313に設けられた開脚固定ピン313aに係止させることにより、当該脚部21aを開脚状態に保持するようになっている。
【0035】
また、筋交金具21cは、その係止部を脚部21aに設けられた係止ピン21dに係止させることにより、当該脚部21aに一体的に保持されるようになっている。この筋交金具21c、開脚固定ピン313a及び係止ピン21dについては、一方の脚部21aの側に設けるだけでもよいが、双方の脚部21aの側に設けることが好ましい。
【0036】
更に、図1及び図3に示すように、対向する所定の段の踏み桟21b、22bが柔軟性を有する紐状部材20で連結されている。この紐状部材20は、一方の梯子部21が開脚状態から更に開く方向に変位するのを防止するストッパとして機能するようになっていると共に、当該一方の梯子部21が閉脚方向に移動するのを許容するようになっている。紐状部材20としては、ワイヤや鎖等が用いられる。なお、紐状部材20は、最上段における踏み桟21b、22bにおける上述した横方向(この場合は踏み桟21b、22bの長手方向と同じ方向)の中央部を連結するように設けることが好ましい。
【0037】
なお、筋交金具21c及び紐状部材20については、これらの一方のみを設けるようにしてもよい。
【0038】
また、他方の梯子部22については、図4及び図5に示すように、各脚部22a、22aの上端部がそれぞれ各端面板323にボルト・ナットBNを介して固定的に連結されている。なお、この場合も、ボルト・ナットBNに代えて、リベット等の連結手段を用いてもよい。
【0039】
更に、他方の梯子部22の脚部22aには、図1及び図3に示すように、一方の梯子部21を閉脚状態に保持する閉脚金具22cが設けられている。この閉脚金具22cは、一端部が脚部22aに回動自在に設けられており、図3に示す閉脚状態においては、他端部の係止部を一方の梯子部21の脚部21aに設けられた閉脚固定ピン21eに係止させることにより、当該一方の梯子部21と他方の梯子部22とを閉脚状態に保持するようになっている。
【0040】
また、閉脚金具22cは、その係止部を脚部22aに設けられた係止ピン22dに係止させることにより、当該脚部22aに一体的に保持されるようになっている。この閉脚金具22c、閉脚固定ピン21e及び係止ピン22dについては、一方の脚部22aの側にだけ設けても、双方の脚部22bの側に設けてもよい。
【0041】
一方、回動軸4は、図2図4及び図6に示すように、第1の天材部31と第2の天材部32とを、その側面板311、321が重なった位置及び互いにねじれの位置となるように回動可能に連結するようになっている。この回動軸4は、図4に示すように、ボルトによって構成されたものであり、第1の天材部31及び第2の天材部32のそれぞれにおける脚部21a、21aの間の中央部及び脚部22a、22aの間の中央部に配置されている。
【0042】
即ち、回動軸4は、その軸部4aが、図4に示すように第1の天材部31の側面板311における上記横方向の中央部であって、図6に示すように当該側面板311の幅方向(図6において上下方向)(以下この方向を「縦方向」という。)の中央部を貫通し、かつ当該第1の天材部31の内方から第2の天材部32に向かって当該第2の天材部32の側面板321における横方向及び縦方向の中部を貫通して突出するように設けられている。この場合、回動軸4の頭部4bは、側面板311の内面に溶接により固定されている。
【0043】
更に、回動軸4は、その軸部4aにおける側面板321を貫通して第2の天材部32内に突出した先端部分に平座金41を介してナット42が螺合されている。ナット42は、緩み止め機能を有する例えばナイロンナットが用いられている。なお、このナット42については、例えば当該ナット42と軸部4aとを割りピンを通して固定するなどの他の緩み止め機能を有するものであってもよい。
【0044】
更に、第1の天材部31と第2の天材部32との間には、図4に示すように、回動軸4の軸部4aの周囲を囲むように座金状の回動用摺動板43が設けられている。即ち、回動用摺動板43は、円環状の平面板によって形成されたものであり、その各面が側面板311、321の合せ面311a、321aそれぞれに接触した状態で軸部4aに嵌合している。この回動用摺動板43は、アルミニウムによって形成されている。なお、回動用摺動板43については、他のアルミニウム系、銅系その他の低摩擦性、潤滑性、耐摩耗性等を有する金属や合金、また含油プレート等の無給油プレートによって形成されたものであってもよい。
【0045】
また、天材部3には、図4図8に示すように、回動軸4回りの第1の天材部31と第2の天材部32との回動角度を所定の範囲に制限する回動制限手段5が回動軸4に対して横方向の左右の各端部位置に配置されている。
【0046】
回動制限手段5は、固定ボルト51、座金52、ナット53及び円弧状長孔54を備えた構成になっている。
【0047】
固定ボルト51は、その軸部51aが側面板311、321における回動軸4から横方向に左右均等となる位置であって、当該側面板311、321の縦方向の中央の部分を貫通し、第1の天材部31の内方から第2の天材部32に向かって突出するように設けられている。この場合、固定ボルト51の頭部51bは、側面板311の内面に溶接により固定されている。
【0048】
更に、固定ボルト51は、図6及び図7に示すように、その軸部51aが第2の天材部32の側面板321に形成された円弧状長孔54を貫通し、その貫通した軸部51aの先端部に平座金52を介してナット53が螺合されている。
【0049】
円弧状長孔54は、回動軸4の軸心を中心とする円弧状に形成されたものであり、固定ボルト51の軸部51aが貫通した状態でその円弧に沿って移動可能な幅に形成されている。そして、円弧状長孔54は、その円弧方向の各端部に固定ボルト51の軸部51aが当接することにより、第2の天材部32が第1の天材部31に対して回動軸4回りに回動する角度範囲を制限するようになっている。
【0050】
ナット53は、上記ナット42と同様にナイロンナットが用いられており、軸部51aに対して緩み止めがなされたものとなっている。なお、このナット53についても、軸部51aに対して割りピン等により緩み止めを図ったものであってもよい。
【0051】
更に、第1の天材部31の側面板311には、その合せ面311aに、第1の天材部31の側面板311と第2の天材部32の側面板321との間隔を所定の間隔に維持する揺動用摺動板6が設けられている。この揺動用摺動板6は、左右の各円弧状長孔54の横方向の外側に配置されていると共に、当該円弧状長孔54に沿うように湾曲する円弧状の板によって形成されている。この揺動用摺動板6についても、アルミニウム系、銅系その他の低摩擦性、潤滑性、耐摩耗性等を有する金属や合金、また含油プレート等の無給油プレートによって形成されたものであってもよい。また、揺動用摺動板6は、回動用摺動板43と同等の厚さに形成されている。
【0052】
なお、揺動用摺動板6については、第2の天材部32側の側面板321における合せ面321aに設けるように構成してもよい。また、円弧状長孔54の横方向の内側に配置してもよく、更に円弧状長孔54の横方向の内側及び外側の双方に配置してもよい。
【0053】
また、第1の天材部31と第2の天材部32とは、図8に示すように、回動停止手段7によって、回動を停止した状態に保持することが可能に構成されている。この回動停止手段7は、ロックボルト71と、ロックナット72と、収容ナット73とを備えた構成になっている。ロックボルト71は、雄ネジ部711aの一端部に六角形状の頭部711bを有するボルト部711と、頭部711bの頂面に溶接されたハンドル部712と、座金713を有する構成になっている。この場合、雄ネジ部711aとハンドル部712とはT字状をなすように形成されている。ハンドル部712は断面円形状の鋼管によって形成されている。
【0054】
ロックナット72は、図6(a)に示すように、第1の天材部31の側面板311の内面に溶接により固定されている。この場合、ロックナット72は、その中心が、2つの固定ボルト51の頭部51b及び回動軸4の頭部4bの中心を結ぶ直線L上にあって、一方の固定ボルト51の頭部51bと回動軸4の頭部4bとの間の当該固定ボルト51に寄った位置に配置されている。ロックナット72のネジ孔は、図8(b)に示すように、ロックボルト71の雄ネジ部711aが螺合可能なように形成されている。また、側面板311には、図8(a)に示すように、ロックナット72のネジ孔よりやや大きな径の貫通孔7aが当該ロックナット72と同軸状に形成されている。
【0055】
一方、第2の天材部32の側面板321には、図6(b)に示すように、当該第2の天材部32と第1の天材部31とがねじれの位置にない平行におかれた状態において、前記貫通孔7aに対応する位置に、縦方向に長い長孔7bが形成されている。この長孔7bの幅は貫通孔7aの径と同等の寸法に形成されている。即ち、長孔7bは、図6(b)及び図8に示すように、第1の天材部31と第2の天材部32とが回動軸4回りに若干回動した状態においても、またロックナット72の取り付け位置や、貫通孔7a及び長孔7bの寸法、位置等が公差範囲内で変化した場合においても、当該長孔7bに挿入した雄ネジ部711aがロックナット72のネジ孔に確実にねじ込まれることになるように、その幅及び長さが設定されている。
【0056】
また、収容ナット73、図8に示すように、第2の天材部32の側面板321の内面に溶接により固定されている。この場合、収容ナット73は、長孔7bと回動軸4との間に配置されている。収容ナット73のネジ孔は、ロックボルト71の雄ネジ部711aが螺合可能なものとなっている。即ち、収容ナット73は、ロックナット72と同一の規格のものが用いられている。
【0057】
上記のように構成された段差吸収式四脚脚立1においては、第1の天材部31と第2の天材部32とが互いにねじれの位置となるように所定の回動軸4を介して回動可能に連結されているので、一方の梯子部21については上端部側における回動軸4を支点にして回動することにより、その2本の各脚部21a、21aの下端部を例えば凹凸等により段差が生じている設置面Gに当接させることができる。同様にして、他方の梯子部22についても、その2本の各脚部22a、22aの下端部を設置面Gに当接させることができる。
【0058】
従って、4本の脚部21a、21a、22a、22aの下端部を平面状態にない設置面Gに対しても確実に当接させることができるので、三脚にはない四脚による高い安定性を確保することができる。しかも、設置面Gが例えば工事に伴う弾性変形等により部分的に上下に変位するような特殊な現場においても、その変位に追随するようにして、各脚部が設置面Gに当接し続けることになるので、安定性の確保を図ることができる。
【0059】
また、第1の天材部31と第2の天材部32との回動を所定の角度範囲に制限する回動制限手段5を備えているので、その回動による変形を安全な角度範囲内に抑えることができる。
【0060】
更に、第1の天材部31と第2の天材部32とをほぼ平行にした状態に保持する回動停止手段7を備えているので、例えば運びやすい形状に保持することが可能になると共に、その運ぶ際等に第1の天材部31と第2の天材部32とが回動して、一方及び他方の梯子部21、22が相互にガタつくのを防止することができる。
【0061】
また、第1の天材部31と第2の天材部32との間には、回動軸4の周囲を囲むように座金状の回動用摺動板43が設けられているので、その回動時に、第1の天材部31及び第2の天材部32における例えば互いに対向する合せ面311a、321aの全体が摺動するのを防止することができる。
【0062】
従って、第1の天材部31と第2の天材部32とを互いに近接する方向に力を作用させて連結した状態においても、当該第1の天材部31と第2の天材部32との間の回動抵抗を低減することができる。即ち、第1の天材部31と第2の天材部32とを互いに近接させる方向に作用する力の増大に基づいて当該第1の天材部31と第2の天材部32との連結部分の剛性の向上を図ることができると共に、当該第1の天材部31と第2の天材部32との間の回動抵抗の低減を図ることができる。
【0063】
また、第1の天材部31の合せ面311aには、回動軸4から横方向の左右に所定の間隔をおいた位置に、これらの第1の天材部31及び第2の天材部32の間隔を所定の間隔に維持する揺動用摺動板6が設けられているので、第1の天材部31及び第2の天材部32の間隔を所定の間隔に安定的に維持することができると共に、第1の天材部31と第2の天材部32との間の回動抵抗を低減することができる。
【0064】
更に、回動軸4が第1の天材部31及び第2の天材部32のそれぞれにおける2本の脚部間、即ち脚部21a、21aの間及び脚部22a、22aの間の中央部に配置されているので、4本の脚部21a、21a、22a、22aに作用する力が天材部3のほぼ中央部に集中することになるので、全体の安定性の向上を図ることができる。しかも、回動変位によって生じる全体の変形量を最小限に抑えることができる。
【0065】
また更に、一方の梯子部21がその上端部を支点にして、他方の梯子部22に近接する方向に回動可能に構成されているので、コンパクトな形状に折り畳むことができるという利点もある。
【0066】
なお、上記実施形態においては、左右の各固定ボルト51の軸部51aがこれらに対応する各円弧状長孔54に沿って縦方向(上下方向)に移動可能なストロークは50mmとなっている。従って、このストロークに対応する範囲で各脚部21a、21a、22a、22aの下端部を上下に変位させることができるので、その上下に変位する範囲で段差が生じている設置面Gに対して安定的に設置することができる。また、上記ストロークを種々の値に設定することにより、段差のレベルの異なる種々の設置面Gに対して安定的に設置可能なものを得ることができる。
【0067】
また、ロックボルト71については、図8(c)に示すように、その座金713が第2の天材部32の側面板321の内面に当たるように雄ネジ部711aをロックナット72に完全にねじ込んだ状態において、その雄ネジ部711aの先端部がロックナット72から大きく突出することとなるように、当該雄ネジ部711aの長さを設定したが、この雄ネジ部711aについてはその先端部がロックナット72からわずかに突出する程度の長さのもので構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 段差吸収式四脚脚立
3 天材部
4 回動軸
5 回動制限手段
6 揺動用摺動板
7 回動停止手段
21 一方の梯子部
21a、21a 一方の脚部
21b 一方の踏み桟
22 他方の梯子部
22a、22a 他方の脚部
22b 他方の踏み桟
31 第1の天材部
32 第2の天材部
43 回動用摺動板
311a 一方の合せ面
321a 他方の合せ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8