(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-76265(P2020-76265A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】擁壁用コンクリートブロックの基礎ブロック
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20200424BHJP
【FI】
E02D29/02 303
E02D29/02 309
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-210595(P2018-210595)
(22)【出願日】2018年11月8日
(71)【出願人】
【識別番号】309027539
【氏名又は名称】高知県コンクリート製品工業組合
(74)【代理人】
【識別番号】100181571
【弁理士】
【氏名又は名称】栗本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳久
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA27
2D048AA84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】土木構造物築造用のコンクリートブロック擁壁の基礎部に関して、基礎コンクリートでは、本体ブロックとの一体性に課題があり、地盤と基礎ブロックの摩擦抵抗の不足を改善する基礎ブロックを提供する。
【解決手段】内包する空間にコンクリートを充填することによって築造する擁壁の基礎部をなす基礎ブロック1であって、対峙する前面材2及び後面材3並びに該両材を連結する連結部材4を備え、該連結部材4の下面42と基礎ブロック設置面との間に打設する中詰めコンクリートが回り込める貫通部43を有する基礎ブロック1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立するコンクリートブロックを水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間にコンクリートを充填することによって築造する擁壁の基礎部をなす基礎ブロックであって、対峙する前面材及び後面材並びに該両材を連結する連結材を備え、
前記前面材及び後面材の上面は同一高さの水平面を有し、下面は同一の平面を有し、
基礎ブロック設置面と前記連結材の下面との間に、打設する中詰めコンクリートが該連結材の下方を通過できる貫通部を有する、基礎ブロック。
【請求項2】
請求項1の基礎ブロックであって、前面材及び後面材の下面が有する同一の平面が前面材の下面が高い位置となる傾斜面である基礎ブロック。
【請求項3】
請求項1若しくは請求項2の基礎ブロックであって、基礎ブロック設置面と後面材の下面との間に、打設する中詰めコンクリートが該後面材の下方を通過できる貫通部を備えた基礎ブロック。
【請求項4】
請求項1、請求項2若しくは請求項3の基礎ブロックであって、基礎ブロック設置面と前面材の下面との間に、打設する中詰めコンクリートが該前面材の下方を通過できる貫通部を備えた基礎ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁等の土木構造物の築造に係る大型コンクリートブロックの基礎ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常のコンクリート積ブロック(控長35cm〜50cm程度)を用いた土木構造物築造は、背面が比較的安定した地山に対して、「経験に基づく設計法」によって、実施されている。近年、土木工事に関して、省力化や工期短縮を図りつつ、一定の品質を確保するため、プレキャスト製品が広くの活用されている。ブロック積擁壁についても、「もたれ式擁壁の安定計算」基づいて、安定を照査する大型のコンクリートブロックによる構築物築造が頻繁に行われている。
【0003】
種々のコンクリートブロックの中でも、自立性を有する擁壁構築用の大型コンクリートブロックは、前面の勾配が3分〜5分(高さ:横が1:0.3〜1:0.5)のものが主となっている。このようなブロックを用いた擁壁の構築は、
図7に示す以下の工程で行われている。
(1)ブロック設置基礎部について、床掘を行い基礎部の整地や必要に応じて基礎砕石等を行う。
(2)(1)の整地面に対して、ブロック設置に必要な幅で所要の厚みを有するコンクリート基礎(
図7(1))を打設する。
(3)コンクリート基礎硬化後、該コンクリート前後部の埋戻しを行い、第1段目のブロックを載置し、基礎コンクリートに所定間隔で設けている継鉄筋を含めて、ブロック内包空間に
図7(1)に示すブロックの高さの中程にある打設線まで中詰めコンクリートを充填する。
(4)ブロック背面に砕石等の裏込め材を敷設後、第2段目のブロックを載置し、前記同様に、打設線まで中詰めコンクリートを充填する。
上記、作業を繰り返すことによって、必要な高さのブロック積を行い、構造物を構築する。また、
図7(2)には、基礎コンクリート換えて、従来型の基礎ブロックを用いた場合を示している。基礎ブロックを用いる場合は、図に示すように、基礎ブロックと本体ブロックにずれ止め凸部とずれ止め凹部を設けている。
【0004】
このような従来工法では、基礎コンクリートを用いる場合は構造物としての一体性確保のため、上記のように基礎構造物とコンクリートブロックとの接合面に継鉄筋を設ける必要がある。この継鉄筋は、基礎コンクリート打設時に、上方に設置されるブロックの中詰めコンクリート部に配置される。しかしながら、基礎コンクリートの厚み20cm〜40cmに継鉄筋を配置すると、コンクリート標準示方書(土木学会編 2012年 p333)に規定する鉄筋の定着長(一定の条件の計算で40cm程度)は、確保できないため、コンクリート基礎とコンクリートブロックの一体性が課題となっている。また、基礎ブロックを基礎として用いる場合は、基礎ブロックと本体ブロックに摩擦抵抗を確保する凹凸で嵌合できる構造にはなっているが、ブロック基礎は、整地面に載置されるのみであり、地山と構造物との摩擦抵抗に関する課題が残る。
【0005】
土留め擁壁用の基礎ブロックとして、ブロックに上下方向に貫通孔を設けて、貫通孔に打設するコンクリートによって、基礎地盤との摩擦を確保しつつ、左右側方の基礎ブロック間凹凸を設けて、左右のブロックの一体性を図る発明が提案されている(特開2012−202202号)が、基礎地盤と基礎ブロックとの摩擦抵抗力は十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−202202号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「道路土工 擁壁工指針」社団法人日本道路協会 平成24年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
土木構造物築造用の大型コンクリートブロックの基礎部の施工に関して、現場における基礎コンクリートを打設し、本体ブロックを設置する場合は、基礎コンクリートと本体ブロックの一体性に課題があり、基礎ブロックを用いて本体ブロックを設置する場合は、基礎地盤と基礎ブロック間の摩擦抵抗が不足するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
自立するコンクリートブロックを水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間にコンクリートを充填することによって築造する擁壁の基礎部をなす基礎ブロックであって、対峙する前面材及び後面材並びに該両材を連結する連結材を備え、
前記前面材及び後面材の上面は同一高さの水平面を有し、下面は同一の平面を有し、
基礎ブロック設置面と前記連結材の下面との間に、打設する中詰めコンクリートが該連結材の下方を通過できる貫通部を有する、基礎ブロック。
【0010】
前記基礎ブロックであって、前面材と後面材の下面が形成する同一の平面が、前面材の下面が高い位置となる傾斜面である基礎ブロック。
【0011】
前記基礎ブロックであって、基礎ブロック設置面と後面材の下面との間に、打設する中詰めコンクリートが該後面材の下方を通過できる貫通部を備えた基礎ブロック。
【0012】
前記基礎ブロックであって、基礎ブロック設置面と前面材の下面との間に、打設する中詰めコンクリートが該前面材の下方を通過できる貫通部を備えた基礎ブロック。
【発明の効果】
【0013】
擁壁等のコンクリート構造物の安定性は、「転倒」、「滑動」、「地盤支持力」の3要素で検討される。本発明の基礎ブロックは、プレキャストコンクリート製品の弱点である滑動に関して改善を図るものである。基礎部の施工に関して、プレキャストコンクリート製品を利用する場合、現場打ちコンクリートと比較して、摩擦抵抗が低くなる。本発明の基礎ブロックについて、基礎ブロックと設置地盤面(基礎ブロック設置面)との接触面は、ほぼ前面材と後面材の平面部分のみであり、基礎ブロック底面の他の面は、全て一面で一体の中詰めコンクリートによる現場打ちコンクリートによって覆われる。このため、本基礎ブロックでは、プレキャストコンクリート製品を用いながら、現場打ちのコンクリートと同等の摩擦抵抗を得ることができ、「滑動」の安定性に寄与する。
傾斜した設置地盤面への設置に関しても、「滑動」に関する安定を確保する有効な手段である。また、後面材下方や前面材下方において貫通部を設けて後方や前方の埋戻し施工にあたって、埋戻しコンクリートを中詰めコンクリートと同時に打設することについては、現場打ちコンクリートの接触面を拡大することになり、更に安定が求められる場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、水平面型基礎ブロックの構造に関する説明図である。(実施例1)
【
図2】
図2は、水平面型基礎ブロック設置に関する説明図である。(実施例1)
【
図3】
図3は、本体ブロックの構造に関する説明図である。(実施例1、2)
【
図4】
図4は、傾斜面型基礎ブロックの構造に関する説明図である。(実施例2)
【
図5】
図5は、傾斜面型基礎ブロック設置に関する説明図である。(実施例2)
【
図6】
図6は、背面貫通型及び正面貫通型の基礎ブロックの説明図である。(実施例3、4)
【
図7】
図7は、従来型の基礎部構築に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般に擁壁6の築造に関し、擁壁面の空間側を擁壁の「前」といい、地盤側を「後」若しくは「背」呼ぶ。本発明では、擁壁等の土木構造物の築造に用いられるブロックの部位に関しては、空間側に設置される部材を前面材2、地盤側に設置される部材を後面材3という。また、前面材と後面材を連結する部材を連結材4という。本発明の自立するコンクリートブロックとは、該コンクリートブロックが平坦な載置面で倒れることなく設置ができるブロックであり、間知ブロックの様にバランスを取りつつ設置する必要のないブロックである。本発明における基礎コンクリートブロック1(以下、基礎ブロックともいう。)とは、前記コンクリートブロックを積み上げる際、最下段のブロックを設置するためのコンクリートブロックをいう。基礎ブロックに対して、前記コンクリートブロックを本体コンクリートブロック5若しくは本体ブロックともいう。勾配に関しては、水平からの立ち上りが、横0.1乃至0.9に対して縦1.0を1分乃至9分勾配という。
【0016】
本発明における基礎ブロック1に関して、上面に載置する本体ブロック5は自立するブロックであり、載置面は、上方ブロックの凹部58と嵌合し、ずれ止めとなる凸部11を除いて、水平面を形成する。以下の実施例では、本体ブロックの水平面である底面の前面材51下面及び後面材52下面が基礎ブロックの載置面に上載されていることを示す。大型ブロックによる擁壁築造は、一般的に3分〜5分程度の勾配に利用されるが、以下においては、5分勾配を実施例として示す。また、本体ブロックは、正面視で縦×横が1m程度×1.5〜2.0m(1/2調整用ブロックを除く。)程度で、控え(前面材51前面と後面材52後面との間隔をいう。)が0.65m〜2.0m程度の所謂大型コンクリートブロックである。基礎ブロックは、それらの本体ブロックに従った形状となる。ブロックの設置にはクレーン等の機器が不可欠で、基礎ブロックに関しても吊り金具用のアンカーや吊り輪等が設置されているが省略している。
【実施例1】
【0017】
図1に水平基礎地盤63上に設置する基礎ブロック1の構造図を示す。
図1(1)の平面図、(2)の正面図及び(5)の背面図から前面材2及び後面材3並びに2本の連結材4の上面は、ずれ止め凸部11を除いて、同一の水平面を形成していることを示している。2本の連結材に挟まれた中央にある中空部は、
図1(3)底面図及び(4)側面図から連結材下方の連結材貫通部43を通じて一つの空間を形成し、主に前面材及び後面材の下面のみが基礎地盤と接していることを示している。連結材下方の貫通部は、生コンクリートの粗骨材(直径が20mm〜40mm)が通過する高さを有し、前記中空部若しくは左右の連設される基礎ブロック間の空間部から投入された中詰めコンクリート56は基礎ブロック内包空間12に行き渡り、硬化後には基礎基盤に接する一体のコンクリート塊となり、現場打ちコンクリートと同様に構造物と地盤の間の摩擦強度を得ることができる。
【0018】
擁壁6の「滑動」に関する安定性の照査に用いられる滑動に対する抵抗力は、構造物下面における構造物と基礎地盤63に作用する摩擦力と付着力であり、基礎地盤が岩や礫質土の場合、付着力は考慮されず摩擦力のみが作用するとされている(非特許文献1p70)。摩擦力は接触面に作用する鉛直荷重に対して、摩擦角度φの正接(以下、tanφを摩擦係数μともいう。)を乗じたものであり(同p69、p64、p113)、摩擦角度は、場所打ちコンクリート擁壁の場合、φであるのに対して、プレキャストコンクリート擁壁では2/3×φとされている(p69)。しかしながら、本発明における実施例1においては、
図1(3)に示す底面図では、基礎構造全体の基礎地盤との接触面に対して、中詰めコンクリートの占める面積割合は約67%である。プレキャスト使用による摩擦角度の減少割合が前記の2/3とすると、仮に面積割合によって減少割合を補正できるとすると(2/3×0.33+1×0.67)となり、摩擦角度の減少割合が0.89となり、改善効果の数値が推定される。なお、これは、「0005」記載の従来発明における基礎ブロック1に上下方向に貫通孔を設けて、貫通孔に打設するコンクリートによって、基礎地盤との摩擦を確保した場合における接触面積の拡大にかかる改善ではない。部分的に接触面を設けるのではなく、基礎地盤に対して、十分に締め固められた一体で一面の接触面を設けた中詰めの生コンクリートの打設であり、その効果は、従来発明の接触面積比では参酌できないものである。中詰めコンクリート56の一体性に関して、次の「0019」に記載するように中詰めコンクリートは、本体ブロック5の中詰めコンクリートと同時に打設し、
図3に示すI型の本体ブロックと基礎ブロック1間においても、それぞれの接面は前面材2と後面材3のみであり、本体ブロックと基礎ブロック間の内包空間に充填される中詰めコンクリートは連結部材4を包み込む一体のものとして打設される。
【0019】
図2に、
図1に示す基礎ブロック1及び本体ブロック5の設置を含む擁壁6の構造及び施工手順を示す。構造物は、基礎ブロック上に本体ブロックを4段積上げ、擁壁前面61が5分勾配の山留擁壁となるものであり、擁壁正面からの正面図を
図2(2)に示す。
図2(1)は、展開
図A−Aの断面図である。本体ブロックの簡単な構造図は、
図3に示す。I型の本体ブロックは、本体ブロックの前面材51と後面材52を連結する1本の連結材53で、構成される。基礎ブロックと本体ブロックの上下方向の連設に関しては、基礎ブロックの前面材2及び後面材3が本体ブロックの前面材及び後面材と水平面で接する。但し、該水平面には、基礎ブロックと本体ブロックの横方向の滑り抵抗や施工性を勘案した基礎ブロックの凸部11、該凸部と嵌合する本体ブロック凹部58を4箇所設置している。基礎ブロック内包空間12と本体ブロック内包空間55に関しては、前面材及び後面材を除き、一体の内包空間となり、全ての内包空間は、連続した中詰めコンクリートとなる。また、本体ブロック間の連結性については、本体ブロックの前面材51と後面材52及びの連結材53の上下部及び中央部の貫通孔を通じて、ブロック内包の空間及び左右の連設ブロックの内包空間が一体となり、上下方向の連設ブロックに対しては、本体ブロック前面材及び後面材の上下面を除いて、一体の内包空間となっている。
また、本例では、正面図を
図2(2)に示すように、基礎ブロックと本体ブロック間及び本体ブロック間を交互に設置する所謂千鳥の配置としている。これは、ブロック間の一体性を更に強化する意味で有効である。ずれ止め凹部及び凸部の配置をブロック側面からブロック横幅の1/4の位置に配しているため、実施可能である。また、擁壁側辺部の留め型枠68設置面の直線性を確保するために、基礎ブロック及び本体ブロックに1/2調整ブロック54を設けている。
【0020】
図2(1)に基づき、以下に施工手順を示す。
(1)元の地山に対して、a、bに示す切土をおこなう。
(2)基礎ブロック1設置の床掘を行う。
(3)下部床掘面66を整地、必要に応じて、基礎砕石、均しコンクリート63を行う。
(4)基礎ブロック1を設置する。基礎ブロック前面23及び後面34の埋戻しを行う。
(5)第1段目の本体ブロック5を設置する。
(6)埋戻し線までの埋戻し67と裏込め砕石若しくは栗石57の投入締固めを行う。
(7)基礎ブロック及び本体ブロックの中詰めコンクリート56を
図2(1)に示すhの線まで、投入し、締固めを行う。
(8)(5)〜(6)の作業を繰り返して、最上段まで施工し、天端コンクリート69を打設する。
なお、
図6及び上記の作業において、擁壁背後からの前面への水抜きに関しては、省略している。
【0021】
上記の手順で、基礎ブロック1設置後の埋戻し67は、本体ブロック5載置における安定性を配慮したもので、中詰めコンクリート56打設前の埋戻し、裏込め材57の投入に関しても同様である。中詰めコンクリートに関しては、第1段目の本体ブロックの投入線は、基礎ブロックと基礎地盤との一体性、基礎ブロックと本体ブロックとの一体性を図る目的で、同時に打設され、硬化後は前記の通り、一つの連続したコンクリート塊となり、基礎ブロック及び本体ブロックを一体のものとすることができる。なお、本体ブロック中程の投入線から次の上方へ連設する本体ブロックも同様な投入線まで中詰めコンクリートを打設するのは、上下の本体ブロック間の接面の構造物の弱点を補うためである。
【実施例2】
【0022】
図4に傾斜する基礎地盤63上に設置する基礎ブロック1の構造図を示す。
図4(1)の平面図、(2)の正面図及び(5)の背面図の上面の形状は、
図1と同様であり、前面材2、後面材3及び連結材4の上面は、ずれ止め凸部11を除いて、同一の水平面を形成している。
図4(4)側面図、(6)断面図から基礎地盤の前後方向角度(傾斜角度14)が約11.3°であり、滑動に関する安全性を高める効果を有する。
【0023】
基礎ブロック1底面を傾斜面にした場合の滑動の安定性に関する効果を以下に示す。基礎ブロックの底面に作用する鉛直方向荷重をQ
vとし水平方向荷重をQ
hとすると、底面が水平の場合の滑動の安全率は、
μ×Q
v/Q
hで求められ、
底面が傾斜面で傾斜角度14がθの場合は
μ×(Q
v×cosθ+Q
h×sinθ)/(Q
h×cosθ−Q
v×sinθ)となる。
従って、底面が水平の場合と比較して、滑動に対する抵抗についてQ
h×sinθ/cosθが加わり、滑動力に関してQ
v×sinθ/cosθが減じられたことから、明らかにその効果が理解できる。しかしながら、底面に傾斜面を設けることは、構造物背面からの土圧に関わるすべり面を後退させることになり、転倒に関して不安定性を増加することになるため、本例では、擁壁とは逆方向に5割(縦横の比率が1:5)の勾配の−11.3°を用いているが、地盤の状況、擁壁の高さ、背面の地山状況に応じた勾配を検討するのが望ましい。
【0024】
図5に傾斜角度14がθの傾斜地盤上に設置する基礎ブロック1を用いた擁壁6の構築状況を示す。
図5に示すように路側擁壁等の背面に盛土部(元の地山64と擁壁後面62の間)を有する場合などに用いられる。盛土部においては、
図2に示した山留擁壁と比較して、基礎ブロック底面に大きな滑動力が作用し、構造物の滑動に関して不安定になる場合が多いからである。盛土部を有する場合において基礎ブロックを用いるとき、
図5に示すように、基礎地盤63が充分な強度を有する土質或いは岩盤基礎が望ましい。
【実施例3】
【0025】
図6(1)、(2)、(3)、(7)に水平基礎地盤上に設置する基礎ブロック1で、前面材2及び後面材3の下方に貫通部を設けたものの構造図を示す。
図6(1)正面図に前面材下方に示す貫通部25は、連結材貫通部43と同様に中詰めコンクリート56が通過できる程度の高さを基礎地盤上に確保している。本例では、併せて
図6(2)背面図に示すように後面材貫通部35を設けている。前面材貫通部は、基礎ブロック前面の埋戻し部と同時に中詰めコンクリート56を打設でき、基礎ブロック下面における場所打ちコンクリート面の増加による滑動に対する抵抗力増加を見込める。更に、前面23の埋戻し部のコンクリートと擁壁の一体性が見込める場合、転倒の安全性の検討に係る転倒モーメントの支点である擁壁の爪先を前方にし、安全性を高める効果もあり得る。後面材下方の貫通部に関しても基礎ブロック後方埋戻し部の埋戻しコンクリート同時に中詰めコンクリートを打設することによって、基礎ブロック下面における場所打ちコンクリート面の増加による滑動に対する抵抗力増加を見込める。本例は前面材及び後面材の何れにも貫通部を設けているが、いずれか一方の貫通部でも効果は有する。施工手順に関しては、前記「0020」の(4)、(5)、(6)、(7)について、(4)の基礎ブロック設置後、引き続き
(5)の本体ブロックを設置し、更に引き続き(7)の中詰めコンクリートと(4)の埋戻しを同時に行うことになる。従って、施工における安全性や基礎ブロックと基礎地盤との接触面における地盤支持力を勘案して採用の可否を決定するのが望ましい。
【実施例4】
【0026】
図6(4)、(5)、(6)、(8)に傾斜基礎地盤上に設置する基礎ブロック1で、前面材2及び後面材3に前面材貫通部25及び後面材35を設けたものの構造図を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 基礎ブロック、11 ずれ止め凸部、12 基礎ブロック内包空間、13 1/2調整用基礎ブロック、 14 傾斜角度(θ)
2 前面材、21 前面材上面、22 前面材底面、23 前面材前面、24 前面材後面、25 前面材貫通部
3 後面材、31 後面材上面、32 後面材底面、33 後面材前面、34 後面材後面、35 後面材貫通部
4 連結材、41 連結材上面、42 連結材底面、43 連結材貫通部
5 本体ブロック、51 本体ブロック前面材、52 本体ブロック後面材、53 本体ブロック連結材、54 1/2調整用本体ブロック、55 本体ブロック内包空間、56 中詰めコンクリート、57 裏込め材、58 ずれ止め凹凸部
6 擁壁、61 擁壁前面、62 擁壁後面、63 基礎地盤、基礎砕石若しくは均しコンクリート、64 元の地山、65 切取傾斜面、66 床掘面、67 埋戻し、68 留め型枠、69 天端コンクリート、70 基礎コンクリート、71 継鉄筋、72 基礎岩盤線