【解決手段】互いに対向する2箇所の護岸30の、互いに対向する四方位置において、各護岸30の上部から護岸底部に亘る縦補助鋼材40を設置する縦補助鋼材設置工程と、同一の護岸30に位置する前記縦補助鋼材40同士を横連結部材を介して所定間隔離間させた状態で接合する工程と、対向する護岸30に位置する前記縦補助鋼材40同士の下端部材同士を所定間隔でもって架け渡すように底版支梁材50を設置する底版支梁材設置工程と、前記底版支梁材50の長さ方向両端部に設けられた貫通穴のそれぞれに対し親杭60を挿入しその上端部が護岸上部高さと略同じ高さとなるまで地盤に打ち込む親杭打ち込み工程と、を備え、同一の護岸30に位置する前記親杭60同士の間に護岸30に沿って複数のコンクリート矢板70を積層させて壁体を構成する。
複数の前記コンクリート矢板を積層させた後、当該コンクリート矢板の上端及び前記親杭の上端部を覆うように笠コンクリート部材が打設されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の土留壁の構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されているような、支持杭(親杭)同士の間に構造物(横桁、矢板等)を設置する工事を橋梁下などの狭い空間で行う場合には、大型の建設機械や施工機械を設置するスペースが限られるといった問題や、高さ制限のある橋梁下等には適用できない恐れがあるといった問題がある。
【0007】
また、水路の水をせき止め、別の水路やパイプで迂回路を構成し、水路底での作業を可能にするようないわゆる「水替え工法」といった技術も創案されているが、水路の水量が多い場合、水位が高い場合等には適用できないといった問題や、橋梁下には別の水路を構成することが困難であるといった問題があり、更なる効率的な工法の確立が求められているのが実情である。
【0008】
そこで本発明者らは、例えば橋梁下などのスペースが限られているような状況下で、且つ、排水のできない条件下で既設の護岸(既設鋼矢板等)を利用して新たな土留壁を構築する工法について鋭意検討を行った。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、高さ制限、スペース制限、排水制限といった制約のある橋梁下において水路等の土留壁を効率的に構築する構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、既設の護岸を用いて土留壁を構築する土留壁の構築方法であって、互いに対向する2箇所の護岸の、互いに対向する四方位置において、各護岸の上部から護岸側面を経て護岸底部に亘る縦補助鋼材を設置する縦補助鋼材設置工程と、同一の護岸に位置する前記縦補助鋼材同士を、横連結部材を介して所定間隔T1離間させた状態で接合する工程と、対向する護岸に位置する前記縦補助鋼材同士において、護岸底部において当該縦補助鋼材の下端部材同士を所定間隔T2でもって架け渡すように底版支梁材を設置する底版支梁材設置工程と、前記底版支梁材の長さ方向両端部に設けられた貫通穴のそれぞれに対し親杭を挿入し、当該親杭をその上端部が護岸上部高さと略同じ高さとなるまで地盤に打ち込む親杭打ち込み工程と、を備え、同一の護岸に位置する前記親杭同士の間に、護岸に沿って複数のコンクリート矢板を積層させて壁体を構成することを特徴とする、土留壁の構築方法が提供される。
【0011】
本発明に係る土留壁の構築方法によれば、所定間隔T1離間させた状態で横連結部材を介して縦補助鋼材同士を接合することで、親杭の護岸方向の離間距離を固定し、コンクリート矢板の離脱防止等は図られ、安定した壁体の構成が実現される。また、所定間隔T2でもって架け渡された底版支梁材を通して、対岸において対向する親杭同士の間で土圧を相殺し、その結果、護岸耐力が強化される。また、全ての施工作業が水上からとなり、潜水士等による水中溶接といった水中作業を伴うことなく施工作業を行うことが可能となり、作業効率の向上や工期の短縮、コスト削減等が図られる。
【0012】
対向する2箇所の護岸の上部に、前記コンクリート矢板を搬送する搬送用の引き込み用レールを設置し、前記引き込み用レールにより複数の前記コンクリート矢板を横送りした後、前記親杭同士の間に挿入し積層させることで壁体を構成しても良い。
【0013】
複数の前記コンクリート矢板を積層させた後、当該コンクリート矢板の上端及び前記親杭の上端部を覆うように笠コンクリート部材が打設されても良い。
【0014】
前記既設の護岸は橋梁下部に位置する水路の護岸であり、前記所定間隔T1は前記橋梁の幅を超える長さであり、前記所定間隔T2は前記水路底面の幅長さと略同じ長さであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高さ制限、スペース制限、排水制限といった制約のある橋梁下において水路等の土留壁を効率的に構築する構築方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。また、既設の部材等と、本発明に係る部材等で施工時に共通して用いられるものなどについても、同一の符号を付して重複説明を省略する場合がある。
【0018】
(既設の護岸の概略構成)
先ず、一般的な橋梁下に既設されている護岸(鋼矢板等)の概略構成について簡単に説明する。
図1は既設の護岸の概略図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。なお、図中において橋梁及び橋台を破線で示し、護岸(種々の鋼矢板等)や地盤等を実線で図示している。
【0019】
図1に示すように、橋梁10は2箇所に設置され対向する橋台12に支持され、当該橋梁10の下方空間の水路15を跨ぐ構成となっている。水路15の両側には護岸30を構成する鋼矢板20が打設され、当該鋼矢板20の上端部には護岸30を構成するための既設笠コンクリート部材22が敷設されている。
図1(a)に示すように、両側の鋼矢板20により地盤に護岸30を形成し、それら鋼矢板20に挟まれた空間が水路15とされる。即ち、鋼矢板20の外側の地盤高さと、水路15の底面は異なる高さとなるように構成され、その高さの違いが水路15を形成させている。
【0020】
本発明者らは、
図1に示すような従来から既設の橋梁下の護岸30の構成に関し、更に改築工事や開発工事を施工する場合に橋梁10が存在するために高さ制限等の制約条件がある中での効率的な工法について鋭意検討を行った。以下、本発明者らの検討に基づく本発明技術について図面等を参照して説明する。なお、本明細書では、
図1に示した橋梁10や護岸30を構成する鋼矢板20等が既設であるような構成に対し本発明技術に係る工法を適用する場合について図示・説明している。即ち、一般的な橋梁下の既設護岸に対し適用する場合を図示・説明しているが、本発明の適用範囲は橋梁下での施工等に限られるものではなく、例えば、一般的に既設された種々の水路や道路、護岸等の改築工事や開発工事に適用可能である。
【0021】
(本発明の実施の形態に係る土留壁の構築方法)
先ず、
図1に示す既設の護岸に対し、鋼矢板20の上端部に敷設された既設笠コンクリート部材22を撤去する。そして、護岸30の上部から水路15の底部15aに亘る部材として縦補助鋼材40を設置する(縦補助鋼材設置工程)。
図2は縦補助鋼材40の設置についての概略説明図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。
【0022】
図2(a)に示すように、縦補助鋼材40は護岸30の上部から鋼矢板20の水路側の側面(護岸側面)を経て水路15の底部15aに亘って設置される部材であり、鋼矢板20の水路側側面に沿って配置される。縦補助鋼材40の上端は例えば鋼矢板20の上端に位置し、縦補助鋼材40の下端は例えば水路15の底面よりやや下方(図中の底部15a)に位置するように設置される。また、
図2(b)に示すように、縦補助鋼材40は橋梁10を挟んだ護岸30の両側において水路15を挟んだ2箇所ずつの計4箇所(四方位置4箇所)に配置される。ここで、橋梁10を挟んだ2箇所の縦補助鋼材40同士の間隔は、いずれも同じ所定の間隔T1に設定される。この所定間隔T1は橋梁10の幅を超える長さである。
【0023】
また、これら所定の間隔T1だけ離間して配置された縦補助鋼材40同士は、横連結部材42を介して例えばボルトもしくは溶接といった接合方法を用いて接続され、施工中、所定間隔T1を常時保つように所定の位置に位置決めされ設置される。なお、縦補助鋼材40の設置に際し、横連結部材42は、既設の鋼矢板20に対して接合されても良い。横連結部材42は、任意の長尺部材であれば良く、例えば平鋼板、L字型形鋼、コの字型形鋼、棒鋼であっても良い。また、横連結部材42は、縦補助鋼材40の上下方向(縦方向、略鉛直方向)において任意の数、接合されても良く、その接合位置や本数は、縦補助鋼材40の設置位置や、設置された縦補助鋼材40の姿勢が安定するための好適な態様、本数にて設計されれば良い。縦補助鋼材40の詳細な構成については図面を参照して後述する。
【0024】
次いで、縦補助鋼材40の設置後、水路15を挟んで対向する縦補助鋼材40同士を水路15の底部15aにおいて接続する底版支梁材50が設置される(底版支梁材設置工程)。
図3は底版支梁材50の設置についての概略説明図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。
【0025】
図3に示すように、底版支梁材50は水路15を挟んで対向する縦補助鋼材40の下端部の間を架け渡すように設置される。底版支梁材50は橋梁10を挟んだ2箇所において水路15の底部において設置され、その上面が従前の水路15の略底面高さとなるような位置に設置される。この底版支梁材50の長手方向長さは施工条件等によって規定される所定長さであり、
図3(b)に示すように、底版支梁材50を設置することで、水路15を挟んで対向する縦補助鋼材40同士の間隔が施工条件等によって規定される所定間隔T2(略水路15の底面幅長さ)で固定される。この底版支梁材50の詳細な構成については図面を参照して後述する。
【0026】
以上説明した縦補助鋼材40の敷設、及び、底版支梁材50の設置により、
図2(b)に示すように、橋梁10を挟んだ2箇所の縦補助鋼材40同士の間隔が所定の間隔T1に設定され、
図3(b)に示すように、水路15を挟んで対向する縦補助鋼材40同士の間隔が所定の間隔T2に設定されて施工される。これにより、4箇所の縦補助鋼材40が所望の位置に位置決め固定される。
【0027】
続いて、底版支梁材50の設置後、当該底版支梁材50の長さ方向(水路幅方向)両端部に設けられているガイド用の貫通穴50a、50bのそれぞれに親杭60を貫通させ、水路15の底面地盤中に打ち込む、親杭打ち込み工程が行われる。
図4は、親杭60の打ち込みについての概略説明図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。
【0028】
図4に示すように、親杭60は設置済みの各底版支梁材50に構成されている貫通穴50a、50bを鉛直方向に貫通させるように水路15の底面地盤中に打ち込まれる。その際、
図4(a)のように、親杭60の上端部が護岸30上部より笠コンクリート(後述する笠コンクリート部材80)底面高さと略同じ高さとなる程度まで打ち込みが行われることが好ましい。なお、親杭60は図示の通り、2本の底版支梁材50両端の貫通穴50a、50bのそれぞれ、計4箇所に打ち込まれる。また、
図4(b)に示すように、親杭60の断面は略H形状であることが好ましく、親杭60はいわゆる一般的なH形鋼であっても良い。
【0029】
続いて、設置された親杭60において、橋梁10を挟んで対向する2本の(同一護岸側に沿った一対の)親杭60間に、コンクリート矢板70が設置される(コンクリート矢板設置工程)。
図5は、コンクリート矢板70の設置についての概略説明図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。
【0030】
図5に示すように、コンクリート矢板70は、同一側の護岸30に沿って、1対の親杭60の間に挿入・設置される。このコンクリート矢板70の挿入・設置は、例えば当該コンクリート矢板70の長手方向両端部(即ち、橋梁10の幅方向からはみ出した部位)をクレーン等によって吊り上げて移動させることで行われる。また、
図5(b)に示すように、コンクリート矢板70は、例えばH形鋼である親杭60の内側に嵌め込むことが可能な両端部形状を有したプレキャストコンクリート部材であり、その長手方向長さは、上述した2箇所の縦補助鋼材40同士の間隔T1に基づいて設計される。なお、
図5(a)に示すように、コンクリート矢板70は鉛直方向(親杭60延伸方向)に複数重ねて挿入・設置されても良く、一例としては図示のように1箇所に3枚のコンクリート矢板70が積層される。このように、複数枚のコンクリート矢板70を積層させることで、水路15の両側に護岸30に沿った壁体が構成される。
【0031】
また、コンクリート矢板70の設置に際しては、橋梁10の下の護岸30上に、水路15に沿った方向の部材搬送用の引き込み用レール75を設けても良い。この場合、引き込み用レール75を介してコンクリート矢板70を橋梁10の下方まで横送りした後、親杭60の内側へと嵌め込むといった工程を繰り返すことで、複数枚のコンクリート矢板70が積層される。なお、引き込み用レール75の構成としては、
図5(a)の拡大図に示したように、レールとしての溝型鋼76と、当該溝型鋼76の溝側にベアリング77を介してガイド78を設けた構成が例示される。
【0032】
更に、複数枚のコンクリート矢板70を積層させた後、コンクリート矢板70の上端及び親杭60の上端部を覆うように笠コンクリート部材80を打設しても良い。
図6は、笠コンクリート部材80の打設についての概略説明図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。なお、
図6(b)では説明のために笠コンクリート部材80の下方に位置する部材についても一部図示している。
【0033】
図6に示すように、笠コンクリート部材80はコンクリート矢板70の上端及び親杭60の上端部を覆うように打設され、水路15長手方向に十分な長さを有する構成にて打設される。この笠コンクリート部材80の打設は、例えば当該笠コンクリート部材80の長手方向両端部をクレーン等によって吊り上げて移動させることで行われる。なお、笠コンクリート部材80はプレキャストコンクリート部材でも良い。
【0034】
以上、
図1〜
図6を参照して説明した構築方法により、水路15の側壁(護岸30)には既設の鋼矢板20に代わり、縦補助鋼材40、底版支梁材50、親杭60、コンクリート矢板70、笠コンクリート部材80等によって構成される壁体である土留壁100が構築される。
【0035】
(縦補助鋼材の構成)
上記縦補助鋼材40の構成の一例について説明する。
図7は縦補助鋼材40の概略図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図7に示すように、縦補助鋼材40は、護岸30の上部に設置される略矩形形状の板状部材である上端部材43と、水路15の底部に設置される2つの下端部材44を有する。ここでは、上端部材43の一方の長辺両端部2箇所にそれぞれ接続する下端部材を44a、44bとして図示している。上端部材43と下端部材44a、44bは、平面視で略矩形形状の上端部材43の一方の長辺両端部2箇所から上端部材43と直交する方向に伸びる2本の接続部材45によってそれぞれ接続している。下端部材44(44a、44b)は接続部材45に対し直交し、且つ、平面視で上端部材43とは逆の方向に向かって突出する形状を有している。
【0036】
また、下端部材44a、44bには、互いに対向する2つの下端部材44a、44bに向かう方向に突出する突出部46a、46bが設けられ、それら突出部46a、46bの略中央上面には、鉛直方向上方に板状に伸びる位置決め部材47a、47bが設けられている。
図3を参照して上述したように、突出部46a、46bの上面には底版支梁材50が設置され、位置決め部材47a、47bはその際の底版支梁材50の位置決めを行うのに用いられる。
【0037】
なお、
図7に示す縦補助鋼材40の構成は一例であり、本発明はこれに限られるものではない。即ち、縦補助鋼材40は、護岸30及び水路15の底部に亘って設置され、回転してしまうといった位置ずれ等が生じないような構成の部材であれば良く、底版支梁材50を好適な位置に位置決めし、固定させることが可能な構成の部材であれば良い。
【0038】
(底版支梁材の構成)
上記底版支梁材50の構成の一例について説明する。
図8は底版支梁材50の概略斜視図である。
図8に示すように、底版支梁材50は、長尺の接続部材53と、当該接続部材53の長手方向両端部に設けられる親杭支持部材54、55からなる。親杭支持部材54、55は、鉛直方向に貫通穴50a、50bが形成された中空の角筒形状を有している。
図4を参照して上述したように、貫通穴50a、50bを貫通させるように地盤中に親杭60が打ち込まれる。
【0039】
角筒形状である親杭支持部材54、55は、その寸法を親杭60の断面形状に合わせた寸法に設計されることが好ましい。これにより、親杭60打ち込み時に、親杭60を所定の位置に固定させた状態で打ち込むことができ、施工の安定化が図られる。
【0040】
(作用効果)
以上、
図1〜
図8を参照して説明した、既設の鋼矢板20を利用し、縦補助鋼材40、底版支梁材50、親杭60、コンクリート矢板70、笠コンクリート部材80等の各部材を用いて構成される土留壁100の構築方法においては、縦補助鋼材40が既設鋼矢板20の所定の位置に設置され、所定寸法の横連結部材42や底版支梁材50が更に設置されることで、各部材が所望の位置に位置決めされた状態となる。そして位置決めされた底版支梁材50の貫通穴50a、50bに親杭60を貫通させて打ち込むことで、所望の位置に安定して親杭60を打ち込むことができる。
【0041】
所望の位置の4箇所に打ち込まれた親杭60を用いて、当該親杭60間に、コンクリート矢板70を挿入・設置し、複数のコンクリート矢板70を積層させ、その上端に笠コンクリート部材80を打設することで壁体である土留壁100が構成される。このように構築された土留壁100は、所望された位置に高精度で構築されるため、改築工事や開発工事に適用することで施工の正確性や容易性が向上するといった利点がある。
【0042】
特に、高さ制限等、スペースに制限のある橋梁下において水路等の土留壁を構築する場合に、親杭60の打ち込みを橋梁下以外の場所にて行い、引き込み用レール75を用いてコンクリート矢板70を橋梁10の下方まで横送りするといった方法を採っているため、橋梁下の空間において高さを伴う施工を行うことなく所望された位置に高精度で土留壁100を構築させることができる。即ち、高さ制限のある橋梁下等においても、水路等の土留壁を効率的に構築することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
(本発明の変形例)
上記実施の形態では
図7を参照して縦補助鋼材40の形状や構成の一例を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、本発明の変形例として、縦補助鋼材40に親杭60の打ち込み時に当該親杭60を鉛直方向に正確に打ち込むためのガイド部材を設ける構成が考えられる。
【0045】
図9は本発明の変形例に係る縦補助鋼材40’の概略説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。なお、
図9では、上記実施の形態において
図7を参照して説明した縦補助鋼材40と共通の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する場合がある。また、
図9には、説明のため、打ち込み後の親杭60を破線で図示している。
【0046】
図9に示すように、本変形例に係る縦補助鋼材40’においては、接続部材45の略中間位置にガイド部材49が設けられている。ガイド部材49は、接続部材45の長手方向略中間位置において下端部材44と同じ方向に突出し、2本の接続部材45を架け渡すように両方の接続部材45に固着して設けられる略直方体形状の部材である。ガイド部材49は、打ち込まれた状態の親杭60がH形鋼である場合にはその一方のフランジ外側面に当接し、親杭60が鉛直方向に高精度で打ち込まれるように、当該親杭60の位置ずれ等を防止する役割を担うものである。このガイド部材49により、所望の位置に高精度で安定して親杭60を打ち込むことができる。
【0047】
なお、
図9に示したガイド部材49の構成は一例であり、親杭60の形状や打ち込みの態様等に応じ、ガイド部材49の配置、構成や形状等は任意に変更可能である。
【0048】
また、上記実施の形態においては、土留壁100を橋梁10の下方(いわゆる橋梁下)の水路に構築する場合について図示し、説明したが、本発明に係る土留壁の構築方法の適用は橋梁下に限られるものではない。例えば、一般的なあらゆる水路や河川等の改築工事、開発工事に適用可能であり、既設の護岸(鋼矢板等)が存在する様々な区域に対し適用可能である。また、構築対象となる構造体は水路に限らず、道路等の構造体に対しても有用である。本発明技術は、様々な改築工事や開発工事の現場において、縦補助鋼材40、底版支梁材50といった部材を用いて親杭60を高精度で所望の位置に位置決めして打ち込み、土留壁を精度良く効率的に構築することができる。
【0049】
また、上記実施の形態では、親杭60をH形鋼として図示・説明したが本発明はこれに限られるものではない。親杭60は底版支梁材50両端の貫通穴50a、50bを位置ずれしないように好適に貫通させることができるような種々の杭状部材であれば良く、I形鋼、T形鋼、溝型鋼等を用いることができる。