【課題】入力回転体が出力回転体に傾いたり、偏心している場合、位置のずれ分を吸収することができ、動力を精度よく伝達することができる安価なカップリング装置と、それを備える波動歯車式減速機を提供する。
【解決手段】カップリング装置は、中心軸Cを中心として回転する入力回転体41と出力回転体42とを接続する。入力伝達部410は、入力回転体に含まれる。出力伝達部420は出力回転体に含まれる。複数の伝達ピン43は、入力伝達部と出力伝達部との間において、軸方向に平行に延び、入力回転体および出力回転体と同心の仮想円筒上に周方向に間隔をおいて配置される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、波動歯車式減速機の中心軸と平行な方向を「軸方向」、波動歯車式減速機の中心軸に直交する方向を「径方向」、波動歯車式減速機の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0012】
<1.第1実施形態>
<1−1.波動歯車式減速機の全体構成>
以下では、
図1および
図2を参照して、実施形態に係る波動歯車式減速機100の全体的な構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るカップリング装置40を備える波動歯車式減速機100の縦断面図である。
図2は、
図1中のII−II線断面図であり、可撓性外歯と剛性内歯との噛み合いを示している。ただし、
図2においては、図面を見やすくするために、ハッチングを省略してある。
【0013】
本実施形態の波動歯車式減速機100は、後述する剛性内歯歯車(内歯歯車)10と可撓性外歯歯車20との差動(相対回転)を利用して、入力された回転動力を変速する装置である。波動歯車式減速機100は、例えば、小型ロボットの関節に組み込まれ、モータから得られる動力を減速する減速機として用いられる。
図1に示すように、波動歯車式減速機100は、剛性内歯歯車10と、可撓性外歯歯車20と、波動発生器30と、カップリング装置40とを備えている。
【0014】
剛性内歯歯車10は、
図1に示す中心軸Cを中心とする円環状の部材である。剛性内歯歯車10の剛性は、後述する可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の剛性よりも、はるかに高い。したがって、剛性内歯歯車10は、実質的に剛体とみなすことができる。剛性内歯歯車10は、内周面に複数の剛性内歯11を有する。
図2に示すように、複数の剛性内歯11は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。本実施形態の剛性内歯歯車10は、波動歯車式減速機100が搭載される装置の枠体に固定される。
【0015】
可撓性外歯歯車20は、円筒状の胴部21と平板部22とを備える部材である。胴部21は、径方向に撓み変形可能な部位である。円筒状の胴部21の軸方向の一方側の端部には、後述する平板部22が接続される。また、円筒状の胴部21は、軸方向の他方側の端部に、可撓性外歯29が外周面に形成される可撓性歯部23を有する。
【0016】
平板部22は中心軸Cに対して垂直に略平面状に広がる部位である。平板部22は、胴部31よりも撓み変形し難い。平板部22は、円環板状の固定部25と、ダイヤフラム部24とを有する。ダイヤフラム部24は、胴部21との接続箇所に近い側に配置され、軸方向の肉厚が固定部25よりも薄い。ダイヤフラム部24は、円環状の形状を有し、可撓性歯部23よりも小さい撓み性を有する。
【0017】
固定部25は、ダイヤフラム部24の径方向内側に配置される、一定の肉厚を有する部位である。固定部25の撓み性は、ダイヤフラム部24の撓み性よりもはるかに小さい。固定部25には、減速後の動力を取り出すための出力シャフト(図示省略)が同軸上で固定される。
【0018】
波動発生器30は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23を径方向に非真円形状に撓み変形させるための機構である。波動発生器30は、非真円カム31と、波動ベアリング33とを有する。
【0019】
本実施形態の非真円カム31は、楕円形のカムプロフィールを有する板状のカムである。
図1に示すように、非真円カム31は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の径方向内方に配置される。非真円カム31の中央部には、入力シャフト1が、後述するカップリング装置40を介して、相対回転不能に固定される。具体的には、この入力シャフト1は、例えば電動機の出力シャフトとすることができる。入力シャフト1が回転すると、非真円カム31が、中心軸Cを中心にして減速前の回転数、すなわち入力シャフト1と同一の回転数で回転する。
【0020】
図2に示すように、波動ベアリング33は、内輪331と、複数のボール332と、弾性変形可能な外輪333とを有する。内輪331は、非真円カム31の外周面に固定される。外輪333は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の内周面に固定される。複数のボール332は、内輪331と外輪333の間に介在し、周方向に沿って配列される。外輪333は、回転される非真円カム31のカムプロフィールを反映して、内輪331およびボール332を介して弾性変形(撓み変形)する。
【0021】
カップリング装置40は、入力シャフト1と波動発生器30とを接続するための継手装置である。カップリング装置40は、概ね円筒状である。より具体的には、カップリング装置40は、中心軸Cを中心として回転する入力回転体41と、当該入力回転体41と同軸上に配置された出力回転体42とを、接続する。入力回転体41は、入力シャフト1を含む。入力回転体41は、入力シャフト1と同一の回転数で回転する。このため、入力シャフト1が第1回転数で回転すると、入力回転体41も第1回転数で回転する。そうすると、後に詳述するように、出力回転体42も入力回転体41と同一の第1回転数で回転する。ここで、本実施形態では、波動発生器30の非真円カム31と、出力回転体42の最も後段の部位(出力伝達部420および第2円筒部422)とは、単一の部材である。そのため、入力回転体41が第1回転数で回転すると、波動発生器30の非真円カム31も第1回転数で回転する。なお、カップリング装置40の詳細な構成については、後に詳述する。
【0022】
このように、波動歯車式減速機100においては、入力シャフト1に第1回転数の動力が供給されると、非真円カム31も第1回転数で回転する。また、非真円カム31の回転に伴って、波動ベアリング33を介して、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の内周面が押されることにより、可撓性歯部23が楕円状に径方向に撓み変形する。これにより、
図2のように、可撓性歯部23がなす楕円の長軸の両端の2箇所で、可撓性外歯29と剛性内歯11とが噛み合う。この際、前記楕円の外周のうち上記の2箇所以外の位置では、可撓性外歯29と剛性内歯11とは噛み合わない。
【0023】
非真円カム31が回転すると、前記楕円の長軸の位置が周方向に移動するので、可撓性外歯29と剛性内歯11との噛み合い位置も周方向に移動する。ここで、剛性内歯歯車10の剛性内歯11の数と、可撓性外歯歯車20の可撓性外歯29の数とは、僅かに相違する。このため、非真円カム31の1回転ごとに、剛性内歯11と可撓性外歯29との噛み合い位置が僅かに変化する。その結果、剛性内歯歯車10に対して可撓性外歯歯車20および上記の出力シャフトが、減速された第2回転数で回転する。これにより、減速された動力を装置の外部に取り出すことができる。
【0024】
ここで、継手等のカップリング装置においては、入力回転体の回転を出力回転体へ精度よく伝達できることが望ましいため、カップリング装置の軸方向および捩り方向の剛性を十分に確保することが求められる。その一方で、多少の取付誤差等があってもカップリング装置の機能が損なわれないようにするために、カップリング装置の径方向の剛性には、ある程度の柔軟性が求められる。ところが、一般的には、継手等のカップリング装置において、捩り方向の剛性を高めることと、径方向の柔軟性を高めることとは、トレードオフの関係にあり、両立が難しい。
【0025】
<1−2.カップリング装置の詳細な構成>
この点、本実施形態のカップリング装置40は、特有の構成を有することにより、軸方向および捩り方向の剛性を高く維持しつつ、径方向の柔軟性を向上することを具現化できている。以下では、カップリング装置40のこの特有の構成について、
図1から
図5までを参照して詳細に説明する。
図3は、カップリング装置40の縦断面図と、カップリング装置40を軸方向の一方側からみた図と、軸方向の他方側からみた図とである。
図4は、カップリング装置40が、入力回転体41の出力回転体42に対する偏心に起因する位置のずれ分を吸収する様子を示す縦断面図である。
図5は、カップリング装置40が、入力回転体41の出力回転体42に対する傾きに起因する位置のずれ分を吸収する様子を示す縦断面図である。
【0026】
カップリング装置40は、入力シャフト1を含む入力回転体41と、後段側で波動発生器30および可撓性外歯歯車20を介して出力シャフトに接続される出力回転体42とを、同期回転する態様で接続する。
図3および
図4に示すように、カップリング装置40は、入力回転体41に含まれる部位として、入力伝達部410と、円孔410dと、第1円筒部411と、複数の第1孔410aと、凹部410cとを有する。また、カップリング装置40は、出力回転体42に含まれる部位として、出力伝達部420と、貫通孔420dと、第2円筒部422と、複数の第2孔420bとを有する。さらに、カップリング装置40は、入力回転体41と出力回転体42とを接続するための構成として、複数の伝達ピン43を有する。
【0027】
図3に示す入力伝達部410は、入力回転体41の動力伝達経路の最も後段に位置する部位である。入力伝達部410は、中心軸Cを中心として径方向外方に広がる円板状である。入力伝達部410は、中央部に円孔410dを有する。円孔410dは、入力伝達部410の中央部を軸方向に貫通する。第1円筒部411は、軸方向に延びる円筒状の部位である。第1円筒部411の軸方向の一方側の端部は、円孔410dの縁部に接続される。第1円筒部411の空洞部には、入力シャフト1が挿入される。
図1および
図2に示すように、第1円筒部411の内周部と、入力シャフト1の外周部との間に、キー部材2が挿入されることにより、入力シャフト1は第1円筒部411に対して相対回転不能に固定される。これにより、入力シャフト1は入力伝達部410に対して相対回転不能となっている。
【0028】
入力伝達部410の外周部は、複数の第1孔410aを有する。各第1孔410aは、入力伝達部410の外周部を軸方向に貫通する。複数の第1孔410aは、周方向に沿って一定のピッチで配列される。また、入力伝達部410は、中心軸Cを中心として軸方向に円環状に凹む凹部410cを有する。凹部410cは入力伝達部410の軸方向の他方側の端面に形成される。凹部410cは、複数の第1孔410aよりも径方向内方、かつ、第1円筒部411よりも径方向外方に位置する。
【0029】
出力伝達部420は、出力回転体42の動力伝達経路の最も前段に位置する部位である。出力伝達部420は、中心軸Cを中心として径方向外方に広がる円板状である。出力伝達部420は、中央部に貫通孔420dを有する。貫通孔420dは、出力伝達部420の中央部を軸方向に貫通する。貫通孔420dは、軸方向の他方側からみたときに円形である。貫通孔420dの内径は、上記の第1円筒部411の外径よりも大きい。
【0030】
第2円筒部422は、軸方向に延びる円筒状の部位である。第2円筒部422の軸方向の他方側の端部は、出力伝達部420の外縁部に接続される。第2円筒部422の外周面には、非真円カム31の内周面が結合される。本実施形態では、第2円筒部422と非真円カム31と出力伝達部420とが単一の部材となっている。
【0031】
出力伝達部420の外周部は、複数の第2孔420bを有する。各第2孔420bは、出力伝達部420の外周部を軸方向に貫通する。複数の第2孔420bは、周方向に沿って一定のピッチで配列される。複数の第2孔420bは、上述の複数の第1孔410aに対応して設けられる。
【0032】
複数の伝達ピン43は、軸方向に延びる円柱状の部材である。伝達ピン43は、入力伝達部410および出力伝達部420よりも剛性の高い素材(例えば、鉄等の金属)からなる。伝達ピン43の外径は、第1孔410aおよび第2孔420bの内径と略同じである。伝達ピン43は、軸方向に平行な姿勢で、入力伝達部410と出力伝達部420とによって支持される。具体的には、伝達ピン43の軸方向の一方側の端部は、入力伝達部410の第1孔410aに圧入される。伝達ピン43の軸方向の他方側の端部は、出力伝達部420の第2孔420bに圧入される。複数の伝達ピン43は、周方向に一定のピッチで配列される。別の言い方をすれば、複数の伝達ピン43は、入力回転体41および出力回転体42と同心の仮想円筒E上に、周方向に間隔をおいて配置される。
【0033】
このような構成により、入力回転体41が入力シャフト1とともに第1回転数で回転すると、当該回転が複数の伝達ピン43を介して出力回転体42に伝達されて、出力回転体42も第1回転数で回転する。これにより、カップリング装置40が、出力回転体42を入力回転体41に対して同期回転させるための継手として機能する。
【0034】
ここで、伝達ピン43は剛性が高い素材からなり、しかも軸方向に延びているので、伝達ピン43の突っ張り力により、カップリング装置40の軸方向の剛性が高く維持される。また、伝達ピン43は、入力回転体41および出力回転体42の外周部に、周方向に間隔を置いて複数本配置されている。このように、複数の伝達ピン43を集合としてみたときの強度により、カップリング装置40の捩り方向の剛性が高く維持される。
【0035】
ここで、入力伝達部410には、薄肉の凹部410cが環状に設けられている。また、入力伝達部410の軸方向の厚みは、伝達ピン43の直径の半分かそれよりも大きく、かつ、伝達ピン43の直径の2倍かそれよりも小さい。また、より好ましくは、入力伝達部410の軸方向の厚みは、出力伝達部420の軸方向の厚みよりも小さい。これにより、入力伝達部410の外周部は、出力伝達部の外周部よりも、厚み方向に撓み変形しやすくなっている。
【0036】
以上のような構成のカップリング装置40において、取付誤差等に起因して、入力回転体41が出力回転体42に対して厳密に同軸上には配置されない場合が想定される。具体的には、入力回転体41が出力回転体42に対して偏心している場合と、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合とが、想定される。以下では、これらの場合の、カップリング装置40の各部の作用について、詳細に説明する。
【0037】
<1−3.入力回転体が出力回転体に対して偏心している場合について>
図4に、入力回転体41の中心軸Cが、出力回転体42の中心軸Dに対して偏心している場合の、カップリング装置40の各部の様子を示している。この場合、
図4に示すように、入力伝達部410と出力伝達部420とが略平行な状態に保たれながら、伝達ピン43の中途部が軸方向に対して屈曲する。このように複数の伝達ピン43の中途部が屈曲しても、伝達ピン43の突っ張り力、および、複数の伝達ピン43を集合としてみたときの捩り方向の剛性は維持されているので、入力回転体41の回転が、複数の伝達ピン43を介して、出力回転体42へと伝達される。よって、入力回転体41が出力回転体42に対して偏心していても、入力回転体41の回転を精度よく出力回転体42に伝達することができる。
【0038】
<1−4.入力回転体が出力回転体に対して傾いている場合について>
図5に、入力回転体41の中心軸Cが、出力回転体42の中心軸Dに対して傾いている場合の、カップリング装置40の各部の様子を示している。この場合、
図5に示すように、伝達ピン43の中途部が軸方向に対して湾曲する。同時に、入力伝達部410が厚み方向に撓む。詳細には、伝達ピン43は、軸方向の他方側よりも、軸方向の一方側で、より大きく変形している。入力伝達部410においては、凹部410cが撓むことにより、外周部の位置が大きく変化している。一方、出力伝達部420は、ほとんど変形していない。このように複数の伝達ピン43および入力伝達部410が変形しても、伝達ピン43の突っ張り力、および、複数の伝達ピン43を集合としてみたときの捩り方向の剛性は維持されているので、入力回転体41の回転が、複数の伝達ピン43を介して、出力回転体42へと伝達される。よって、入力回転体41が出力回転体42に対して傾斜していても、入力回転体41の回転を精度よく出力回転体42に伝達することができる。
【0039】
以上に示したように、本実施形態に係るカップリング装置40は、入力伝達部410と、出力伝達部420と、複数の伝達ピン43とを備える。複数の伝達ピン43は、入力伝達部410と出力伝達部420との間において、軸方向に平行に延びる。複数の伝達ピン43は、入力回転体41および出力回転体42と同心の仮想円筒E上に周方向に間隔をおいて配置される。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合や、偏心している場合においても、傾きや偏心に起因する位置のずれ分が、複数の伝達ピン43が変形することで吸収されて、入力回転体41の回転を出力回転体42へ精度よく伝達することができる。また、カップリング装置40の構成をシンプルにすることができるので、製造コストを抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態に係るカップリング装置40においては、伝達ピン43の軸方向の一方側の端部は、入力伝達部410の第1孔410aに圧入される。また、伝達ピン43の軸方向の他方側の端部は、出力伝達部420の第2孔420bに圧入される。これにより、カップリング装置40の運転時のガタつきを少なく抑えることができ、振動や騒音を軽減することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るカップリング装置40においては、入力伝達部410は、出力伝達部420よりも撓み変形しやすい。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合においても、傾きに起因する位置のずれ分が、複数の伝達ピン43が撓み変形することと、入力伝達部410が撓み変形することと、の双方により、吸収されて、入力回転体41の回転を出力回転体42へ精度よく伝達することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るカップリング装置40においては、入力伝達部410は出力伝達部420よりも撓み変形しやすいため、傾きや偏心に起因する位置のずれ分を吸収する際に、出力伝達部420はあまり変形しない。よって、動力の出力部分に歪みが伝わってしまうことを抑制できる。その結果、動力の出力部分で精度のよいアウトプットを実現することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るカップリング装置40においては、伝達ピン43は、入力伝達部410および出力伝達部420よりも剛性の高い素材により構成される。これにより、カップリング装置40を、入力回転体41の出力回転体42に対する多少の傾きや偏心は許容するものとしつつ、軸方向および捩り方向の剛性は高く維持することができ、入力回転体41の回転を精度よく出力回転体42に伝達することが可能となる。
【0044】
さらに、本実施形態に係るカップリング装置40においては、軸方向の他方側の端部において、入力回転体41の第1円筒部411の外周面と、出力回転体42の出力伝達部420に形成された貫通孔420dの内周面と、の間にはクリアランスが設けられている。これにより、入力回転体41の出力回転体42に対する傾きや偏心を、許容することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係るカップリング装置40においては、伝達ピン43は、入力伝達部410および出力伝達部420の外周部に配置される。これにより、複数の伝達ピン43のピッチ円直径(Pitch Circle Diameter)を大きくすることができる。その結果、カップリング装置40の捩り方向の剛性を向上させることができ、入力回転体41の回転を精度よく出力回転体42に伝達することが可能となる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るカップリング装置40においては、複数の伝達ピン43はいずれも円柱状であり、周方向に等間隔に配置される。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して360°のどの方向に傾いたり偏心したりしている場合においても、伝達ピン43が均等に撓み変形する。したがって、傾きや偏心の方向に拘らず、傾きや偏心に起因する位置のずれ分を、伝達ピン43の変形により吸収することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る波動歯車式減速機100は、本発明の一実施形態に係るカップリング装置40と、波動発生器30と、可撓性外歯歯車20と、剛性内歯歯車(内歯歯車)10とを備える。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いたり、偏心したりしていても、傾きや偏心に起因する位置のずれを、カップリング装置40が吸収するため、可撓性外歯歯車20と剛性内歯歯車10との噛み合いが良好に保たれる。しかも、カップリング装置40は、軸方向および捩り方向には変形し難いので、入力回転体41の回転を波動発生器30へ精度よく伝達できる。結果として、波動歯車式減速機100の回転性能を損ねることなく動力の伝達効率を向上させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る波動歯車式減速機100においては、出力伝達部420および波動発生器30は、入力シャフト1の径方向外方に位置する。入力伝達部410は、出力伝達部420および波動発生器30よりも、軸方向の一方側に位置する。これにより、波動歯車式減速機100の軸方向のサイズを小型化しつつ、伝達ピン43の軸方向の長さをある程度確保することができる。よって、入力回転体41の出力回転体42に対する多少の傾きや偏心は許容しつつ、軸方向および捩り方向の剛性は高く維持した、コンパクトな波動歯車式減速機100を実現することができる。
【0049】
<2.変形例>
上記の実施形態では、第2円筒部422と非真円カム31と出力伝達部420とは、単一の部材であったが、これに限らない。すなわち、第2円筒部422と非真円カム31とを個別の部材として、第2円筒部422の外周面に非真円カム31の内周面が結合されていてもよい。斯かる構成とした場合の、カップリング装置400の具体例を、
図6に示している。なお、
図6中では、第1実施形態で示したのと同様の機能・構成の部材に、第1実施形態のものと同一の符号を付してある。
【0050】
上記の実施形態では、伝達ピン43の軸方向の一方側の端部は、圧入により、入力伝達部410に固定されていたが、これに代えて、圧入と、接着剤等による接着とを、併用してもよい。同様に、上記の実施形態では、伝達ピン43の軸方向の他方側の端部は、圧入により、出力伝達部420に固定されていたが、これに代えて、圧入と、接着剤等による接着とを、併用してもよい。
【0051】
上記の実施形態では、入力伝達部410の他方側の端面から、軸方向の他方側、すなわち出力伝達部420が配置される側に向かって、第1円筒部411が延びていたが、これに限定されない。上記に代えて、入力伝達部410の一方側の端面から、軸方向の一方側、すなわち出力伝達部420が配置される側とは反対側に向かって、第1円筒部が延びていてもよい。その場合、出力伝達部420の他方側の端面から軸方向の他方側に向かって円筒状の部位が延びている構成とし、この円筒状の部位に出力シャフトを取り付けてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、入力伝達部410は中心軸Cを中心にして軸方向に環状に凹む凹部410cを有していたが、凹部は必ずしも周方向の全周に設けられていなくてもよい。上記に代えて、凹部が、中心軸Cを中心にして周方向に間欠的に配列されていてもよい。
【0053】
上記の実施形態では、入力伝達部410が出力伝達部420よりも撓み変形しやすかったが、これに代えて、出力伝達部が入力伝達部よりも撓みやすくてもよい。その場合、凹部410cと同様の凹部が出力伝達部に設けられていてもよい。
【0054】
上記の実施形態では、入力伝達部410および出力伝達部420はそれぞれ円板状であったが、これに限定されない。上記に代えて、例えば、入力伝達部および出力伝達部を、多角形状としたり、あるいは、軸方向にみたときにピンが配置される位置同士の間に切り欠きを有する形状としたりしてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、剛性内歯歯車10が装置に対して固定的に設けられ、剛性内歯歯車10に対する可撓性外歯歯車20の回転が出力として取り出されていたが、これに限らない。上記に代えて、可撓性外歯歯車が装置に対して固定的に設けられている構成とし、可撓性外歯歯車に対する剛性内歯歯車の回転を出力として取り出してもよい。
【0056】
上記の実施形態では、カップリング装置40は、波動歯車式減速機100に搭載されていたが、これに限らない。本発明に係るカップリング装置は、公知の様々な機器に、幅広く適用可能である。