特開2020-76728(P2020-76728A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッドの特許一覧

特開2020-76728非接触物質検査のシステム、装置、方法
<>
  • 特開2020076728-非接触物質検査のシステム、装置、方法 図000014
  • 特開2020076728-非接触物質検査のシステム、装置、方法 図000015
  • 特開2020076728-非接触物質検査のシステム、装置、方法 図000016
  • 特開2020076728-非接触物質検査のシステム、装置、方法 図000017
  • 特開2020076728-非接触物質検査のシステム、装置、方法 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-76728(P2020-76728A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】非接触物質検査のシステム、装置、方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20200424BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   G01N22/00 S
   G01S13/88
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-41126(P2019-41126)
(22)【出願日】2019年3月7日
(31)【優先権主張番号】201821041789
(32)【優先日】2018年11月5日
(33)【優先権主張国】IN
(71)【出願人】
【識別番号】510337621
【氏名又は名称】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ダス、ラジャット クマー
(72)【発明者】
【氏名】シンハライ、アリジット
(72)【発明者】
【氏名】ラニ、スムリティ
(72)【発明者】
【氏名】ギギエ、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】チャクラワルティ、タパス
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、被検査物質の組成を特定及び推定するための物質の非接触検査に関する。
【解決手段】非接触物質検査装置300は、被検査物質に向かい、又は被検査物質から遠くへ摺動するように構成された連続波レーダ302を含む。コントローラユニット306は、モータ304を用いて、CWレーダ302の移動を被検査物質からの距離を変化させるよう制御する。被検査物質からの反射信号に関する極値点での絶対勾配に基づく連続波レーダ式アプローチを提供する。取得されたデータは、コントローラユニット306に記憶され、分類モデル308で被検査物質を分類され、回帰モデル310で被検査物質の組成を推定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラユニットによって、反射信号の経験的に定められた長さ内で極値点を演算するステップであって、前記反射信号は、連続波(CW:Continuous Wave)レーダからの送信信号に応答して、サンプルセット中のサンプル物質から反射された信号である、ステップ(202);
前記コントローラユニットによって、前記極値点に対して二階微分を実行することで、前記極値点から極大点と極小点を特定するステップ(204);
前記コントローラユニットによって、前記特定された極大点及び極小点からの極大点と連続する極小点間の各線の絶対勾配を、関連する振幅及び前記対応するサンプル物質からのCWレーダの距離に基づいて、演算するステップ(206);
前記コントローラユニットによって、前記極値点を演算するステップ、前記極値点の前記極大点及び前記極小点を特定するステップ、及び前記サンプルセットからの各サンプル物質に対応する、各線の前記絶対勾配を演算するステップを複数回繰り返して演算された勾配の平均を含む、第1特徴セットを生成するステップ(208);
前記生成された第1特徴セットを使用して、分類モデルを訓練するステップ(210);及び
前記訓練された分類モデルを使用して、任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、被検査物質を分類するステップ(212)
を含む、プロセッサ処理方法(200)。
【請求項2】
前記反射信号の前記経験的に定められた長さは、2.5λであり、λは、前記反射信号の波長を表す、請求項1に記載のプロセッサ処理方法。
【請求項3】
前記極値点を演算するステップは:
前記サンプル物質から少なくとも6λの距離にある出発点から2.5λ内で、前記CWレーダを、λ/10ずつ移動するステップ;
前記反射信号に対応するベースバンド信号B(t)を、λ/10距離ごとに、測定するステップ;
前記測定されたベースバンド信号B(t)の一階微分を実行するステップ;及び
前記一階微分がゼロの点を、前記極値点として特定するステップ
を含む、請求項2に記載のプロセッサ処理方法。
【請求項4】
前記ベースバンド信号B(t)は、前記反射信号を局部発振器信号T(t)と混合し、その結果生じた信号をローパスフィルタに通すことによって、得られる、請求項3に記載のプロセッサ処理方法。
【請求項5】
前記極大点は、前記二階微分が負になる前記極値点であり、前記ベースバンド信号の勾配は、最初に正であり、その後ゼロを通過して、負になる;及び前記極小点は、前記二階微分が正になる前記極値点であり、前記ベースバンド信号の勾配は、最初に負であり、その後ゼロを通過して、正になる、請求項3に記載のプロセッサ処理方法。
【請求項6】
前記第1特徴セットを生成するステップの後には;
前記コントローラユニットによって、前記第1特徴セット及び前記サンプルセット中の各サンプル物質の組成を含む第2特徴セットを生成するステップ(214);
前記生成された第2特徴セットを使用して、回帰モデルを、訓練するステップ(216);及び
前記訓練された回帰モデルを使用して、任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、前記被検査物質の組成を推定するステップ(218)
が続く、請求項1に記載のプロセッサ処理方法。
【請求項7】
非接触物質検査装置(300)は:
被検査物質に向かい、又は被検査物質から遠くへ摺動するように構成された連続波(CW)レーダ(302);
前記CWレーダを前記被検査物質に向けて、又は前記被検査物質から遠くへ移動するように構成されたモータ(304);
コントローラユニット(306)であって、
命令を記憶するように構成された1つ又は複数のデータ記憶装置;及び
前記1つ又は複数のデータ記憶装置と動作可能に結合された1つ又は複数のハードウェアプロセッサであって、前記命令によって:
前記モータを用いて、前記CWレーダの前記移動を制御し;
反射信号の経験的に定められた長さ内で極値点を演算し、前記反射信号は、前記CWレーダからの送信信号に応答して、サンプルセット中のサンプル物質から反射された信号であり;
前記極値点に対して二階微分を実行することによって、前記極値点から極大点と極小点を特定し;
前記特定された極大点及び極小点からの極大点と連続する極小点との間の各線の絶対勾配を、関連する振幅及び前記対応するサンプル物質からの前記CWレーダの距離に基づいて、演算し;
前記極値点を演算するステップ、前記極値点の前記極大点及び前記極小点を特定するステップ、及び前記サンプルセットからの各サンプル物質に対応する、各線の前記絶対勾配を演算するステップを複数回繰り返して演算された勾配の平均を含む第1特徴セットを生成し;
前記生成された第1特徴セットを使用して、分類モデルを訓練し;
前記第1特徴セット及び前記サンプルセット中の各サンプル物質の組成を含む第2特徴セットを生成し;
前記生成された第2特徴セットを使用して、回帰モデルを訓練するように
構成された1つ又は複数のハードウェアプロセッサ
を含むコントローラユニット(306);
任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、前記被検査物質を分類するように構成された前記分類モデル(308);及び
任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、前記被検査物質の組成を推定するように構成された前記回帰モデル(310)
を含む、非接触物質検査装置(300)。
【請求項8】
1つ又は複数のハードウェアプロセッサ(104)に動作可能に結合され、前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサによって:
反射信号の経験的に定められた長さ内で極値点を演算し、前記反射信号は、連続波(CW)レーダからの送信信号に応答して、サンプルセット中のサンプル物質から反射された信号であり;
前記極値点に対して二階微分を実行することによって、前記極値点から極大点と極小点を特定し;
前記特定された極大点及び極小点からの極大点と連続する極小点との間の各線の絶対勾配を、関連する振幅及び前記対応するサンプル物質からの前記CWレーダの距離に基づいて、演算し;
前記極値点を演算するステップ、前記極値点の前記極大点及び前記極小点を特定するステップ、及び前記サンプルセットからの各サンプル物質に対応する、各線の前記絶対勾配を演算するステップを複数回繰り返して演算された勾配の平均を含む第1特徴セットを生成し;
前記生成された第1特徴セットを使用して、分類モデルを訓練し;
前記第1特徴セット及び前記サンプルセット中の各サンプル物質の組成を含む第2特徴セットを生成し;
前記生成された第2特徴セットを使用して、回帰モデルを訓練することを実行するように構成された命令を記憶するように構成された1つ又は複数のデータ記憶装置(102)を含む、システム(100)。
【請求項9】
前記反射信号の前記経験的に定められた長さは、2.5λであり、λは、前記反射信号の波長を表す、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記1つ又は複数のプロセッサは:
前記サンプル物質から少なくとも6λの距離にある出発点から2.5λ内で、前記CWレーダを、λ/10ずつ移動し;
前記反射信号に対応するベースバンド信号B(t)を、λ/10距離ごとに、測定し;
前記測定されたベースバンド信号B(t)の一階微分を実行し;
前記一階微分がゼロの点を、前記極値点として特定することによって、前記極値点を演算するように更に構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ベースバンド信号B(t)は、前記反射信号を局部発振器信号T(t)と混合し、その結果生じた信号をローパスフィルタに通すことによって、得られる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記極大点は、前記二階微分が負になる前記極値点であり、前記ベースバンド信号の勾配は、最初に正であり、その後ゼロを通過して、負になる;及び前記極小点は、前記二階微分が正になる前記極値点であり、前記ベースバンド信号の勾配は、最初に負であり、その後ゼロを通過して、正になる、請求項10に記載のシステム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2018年11月5日付で出願された、特許文献1から、優先権を主張する。前述した出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本明細書における開示は、概して、物質検査に関し、特に、物質の組成を分類及び推定するために、該物質を非接触検査するためのシステム及びコンピュータの処理方法に関する。
【背景技術】
【0003】
物質検査は、通常、被検査物質の特定を伴い、時には被検査物質の品質の調査を伴うこともある。伝統的に、物質検査は、接触式アプローチを伴うものである。また一方、モータの精密制御及び安定したプラットホームが、かかる検査アプローチには要求され、かかるアプローチは、必ずしも実現可能ではないかも知れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】インド国特許出願第201821041789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施形態は、従来のシステムで本発明者らによって認識された1つ又は複数の上記技術的課題に対する解決方法として、技術改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、コントローラユニットによって、反射信号の経験的に定められた長さ内で極値点を演算するステップであって、反射信号は、連続波(CW:Continuous Wave)レーダからの送信信号に応答して、サンプルセット中のサンプル物質から反射された信号である、ステップ;コントローラユニットによって、極値点に対して二階微分を実行することで、極値点から極大点と極小点とを特定するステップ;コントローラユニットによって、特定された極大点及び極小点からの極大点と連続する極小点との間の各線の絶対勾配を、関連する振幅及び対応するサンプル物質からのCWレーダの距離に基づいて、演算するステップ;コントローラユニットによって、極値点を演算するステップ、極値点の極大点及び極小点を特定するステップ、及びサンプルセットからの各サンプル物質に対応する、各線の絶対勾配を演算するステップを複数回繰り返して演算された勾配の平均を含む、第1特徴セットを生成するステップ;生成された第1特徴セットを使用して、分類モデルを訓練するステップ;及び訓練された分類モデルを使用して、任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、被検査物質を分類するステップを含む、プロセッサ処理方法が提供される。
【0007】
別の態様では、被検査物質に向かい、又は被検査物質から遠くへ摺動するように構成された連続波(CW:Continuous Wave)レーダ;CWレーダを被検査物質に向けて、又は被検査物質から遠くへ移動するように構成されたモータ;コントローラユニットであって、命令を記憶するように構成された1つ又は複数のデータ記憶装置;及び1つ又は複数のデータ記憶装置と動作可能に結合された1つ又は複数のハードウェアプロセッサであって、命令によって:モータを用いて、CWレーダの移動を制御し;反射信号の経験的に定められた長さ内で極値点を演算し、反射信号は、CWレーダからの送信信号に応答して、サンプルセット中のサンプル物質から反射された信号であり;極値点に対して二階微分を実行することによって、極値点から極大点と極小点を特定し;特定された極大点及び極小点からの極大点と連続する極小点との間の各線の絶対勾配を、関連する振幅及び対応するサンプル物質からのCWレーダの距離に基づいて、演算し;極値点を演算するステップ、極値点の極大点及び極小点を特定するステップ、及びサンプルセットからの各サンプル物質に対応する、各線の絶対勾配を演算するステップを複数回繰り返して演算された勾配の平均を含む第1特徴セットを生成し;生成された第1特徴セットを使用して、分類モデルを訓練し;第1特徴セット及びサンプルセット中の各サンプル物質の組成を含む第2特徴セットを生成し;生成された第2特徴セットを使用して、回帰モデルを訓練するように構成された1つ又は複数のハードウェアプロセッサを含むコントローラユニット;任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、被検査物質を分類するように構成された分類モデル;及び任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、被検査物質の組成を推定するように構成された回帰モデルを含む、非接触物質検査装置が提供される。
【0008】
更に別の態様では、1つ又は複数のハードウェアプロセッサに動作可能に結合され、1つ又は複数のハードウェアプロセッサによって:反射信号の経験的に定められた長さ内で極値点を演算し、反射信号は、連続波(CW:Continuous Wave)レーダからの送信信号に応答して、サンプルセット中のサンプル物質から反射された信号であり;極値点に対して二階微分を実行することによって、極値点から極大点と極小点とを特定し;特定された極大点及び極小点からの極大点と連続する極小点との間の各線の絶対勾配を、関連する振幅及び対応するサンプル物質からのCWレーダの距離に基づいて、演算し;極値点を演算するステップ、極値点の極大点及び極小点を特定するステップ、及びサンプルセットからの各サンプル物質に対応する、各線の絶対勾配を演算するステップを複数回繰り返して演算された勾配の平均を含む第1特徴セットを生成し;生成された第1特徴セットを使用して、分類モデルを訓練し;第1特徴セット及びサンプルセット中の各サンプル物質の組成を含む第2特徴セットを生成し;生成された第2特徴セットを使用して、回帰モデルを訓練することを実行するように構成された命令を記憶するように構成された1つ又は複数のデータ記憶装置を含む、システムが提供される。
【0009】
本開示の一実施形態によると、反射信号の経験的に定められた長さは、2.5λであり、λは、反射信号の波長を表す。
【0010】
本開示の一実施形態によると、1つ又は複数のプロセッサは:サンプル物質から少なくとも6λの距離にある出発点から2.5λ内で、CWレーダを、λ/10ずつ移動し;反射信号に対応するベースバンド信号B(t)を、λ/10距離ごとに、測定し;測定されたベースバンド信号B(t)の一階微分を実行し;一階微分がゼロの点を、極値点として特定することによって、極値点を演算するように更に構成される。
【0011】
本開示の一実施形態によると、ベースバンド信号B(t)は、反射信号を局部発振器信号T(t)と混合し、その結果生じた信号をローパスフィルタに通すことによって、得られる。
【0012】
本開示の一実施形態によると、極大点は、二階微分が負になる極値点であり、ベースバンド信号の勾配は、最初に正であり、その後ゼロを通過して、負になる;及び極小点は、二階微分が正になる極値点であり、ベースバンド信号の勾配は、最初に負であり、その後ゼロを通過して、正になる。
【0013】
上述の一般的な記載と以下の詳細な記載の両方共、例示及び説明だけを目的としており、特許請求の範囲に記載されるようには、本発明を制限しないと理解されるべきである。
【0014】
本開示に組込まれ、本開示の一部を構成する添付図は、例示的実施形態を解説し、明細書と共に、開示された原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態による、非接触物質検査のためのシステムに関する例示的なブロック図を示す。
図2A】本開示の一実施形態による、非接触物質検査のためのコンピュータ処理方法の例示的なフロー図を示す。
図2B】本開示の一実施形態による、非接触物質検査のためのコンピュータ処理方法の例示的なフロー図を示す。
図3】本開示の一実施形態による、非接触物質検査装置の略図を示す。
図4】当技術分野で知られるような振幅に基づく特徴セットと比べた、本開示の一実施形態による、勾配に基づく特徴セットのグラフ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的実施形態は、添付図を参照して記載される。図面では、参照番号の最も左側の桁(複数可)は、参照番号が最初に出現した図を特定している。便宜上、同じ参照番号は、同じ又は同様な部品を指すために、全図面を通して使用される。開示された原理の一実施形態及び特徴が本明細書に記載されるが、開示された実施形態の精神及び範囲から逸脱しない範囲で、変形、適合、及び他の実装が可能である。以下の詳細な記載は、例示のみと見なされると共に、以下のクレームによって真の範囲及び精神が示されるものとする。
【0017】
基本的に、物質検査は、接触式アプローチを伴う侵襲的プロセスである。レーダ式アプローチは、特定の場所にレーダを設置する必要があるが、該設置は、反射信号の振幅が、この距離に左右されるため、難題である。本開示は、この技術的課題を、反射信号に関する極値点での勾配に基づくレーダ式アプローチを提供することによって、解決する。被検査物質の分類を容易にする他に、本開示は、被検査物質の品質チェックも容易にする。本開示の文脈では、物質の分類は、物質の種類、例えば、物質が、物質A又は物質Bであるかを分類することを意味する。同様に、物質の品質チェックは、本開示の文脈では、被検査物質を、既知の組成を有する物質に対して対応付け(mapping)することを意味する。
【0018】
次に、図面、特に図1図4を参照すると、全図面を通して一貫して、同様な参照文字は、対応する特徴を指し、好適な実施形態が示されており、これらの実施形態については、以下の例示的なシステム及び/又は方法に関連して記載される。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態による非接触物質検査のためのシステム100の例示的なブロック図を示す。一実施形態では、システム100は、1つ又は複数のプロセッサ104、通信インタフェース装置(複数可)又は入力/出力(I/O)インタフェース(複数可)106、及び1つ又は複数のプロセッサ104に動作可能に結合される1つ又は複数のデータ記憶装置又はメモリ102を含む。ハードウェアプロセッサである1つ又は複数のプロセッサ104は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央演算処理装置、状態機械、グラフィックスコントローラ、論理回路、及び/又は、動作命令に基づいて信号を操作する任意の装置として、実装できる。他の能力の中では、プロセッサ(複数可)は、メモリに記憶されたコンピュータ可読な命令をフェッチし、実行するように構成される。本開示の文脈では、表現「プロセッサ」及び「ハードウェアプロセッサ」は、同義で使用されてもよい。一実施形態では、システム100は、ラップトップコンピュータ、ノート型パソコン、携帯端末、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、サーバ、ネットワーククラウド等、様々なコンピューティングシステムで実装できる。
【0020】
I/Oインタフェース装置(複数可)106は、例えば、ウェブインタフェース、グラフィカルユーザインタフェース等の様々なソフトウェア及びハードウェアインタフェースを含むことができ、例えば、LANケーブル等の有線ネットワーク、及びWLAN、セルラ又は衛星等の無線ネットワークを含む、多種多様のネットワークN/W及びプロトコルタイプ内で、複数の通信を促進できる。一実施形態では、I/Oインタフェース(複数可)は、多数の装置同士を接続する又は多数の装置を別のサーバに接続するための1つ又は複数のポートを含むことができる。
【0021】
メモリ102は、従来技術で既知の任意のコンピュータ可読な媒体を含んでもよく、該媒体は、例えば、スタティックRAM(SRAM)及びダイナミックRAM(DRAM)等の揮発性メモリ、及び/又は、読出し専用メモリ(ROM:read only memory)、消去可能プログラマブルROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスク、及び磁気テープ等の非揮発性メモリを含む。一実施形態では、システム100の1つ又は複数のモジュール(図示せず)は、メモリ102に記憶できる。
【0022】
一実施形態では、システム100は、1つ又は複数のプロセッサ104と動作可能に結合された1つ又は複数のデータ記憶装置又はメモリ102を含み、1つ又は複数のプロセッサ104によって方法200のステップを実行するように構成された命令を記憶するように構成される。
【0023】
図2A図2Bは、本開示の一実施形態による、非接触物質検査のためのコンピュータ処理方法200に関する例示的なフロー図を示し、図3は、本開示の一実施形態による、非接触物質検査装置300の略図を示している。次に、方法200のステップについて、図3の非接触物質検査装置及び図1のシステム100の構成要素を参照して、詳細に説明されるが、図3のコントローラユニット306は、図1のシステム100の1つ又は複数のプロセッサ104と類似のステップを実行するように構成される。
【0024】
本開示の一実施形態によると、図3の非接触物質検査装置300は、被検査物質に向かい、又は被検査物質から遠くへ摺動するように構成された連続波(CW:Continuous Wave)レーダ302を含む。一実施形態では、スタンドは、CWレーダを、下方に被検査物質(図示されたように、サンプルホルダ上に載置された)に対して照準を定めて保持する。スタンドは、CWレーダを被検査物質に向かい又は被検査物質から遠くへ移動するように構成されたモータ304を用いて、スタンドの高さに沿ったCWレーダの摺動を容易にする。一実施形態では、コントローラユニット306は:命令を記憶するように構成された1つ又は複数のデータ記憶装置;及び1つ又は複数のデータ記憶装置と動作可能に結合された1つ又は複数のハードウェアプロセッサを含み、該1つ又は複数ハードウェアプロセッサは、命令によって:CWレーダ302の移動を、モータ304を用いて、良好な解像度で被検査物質からの距離を変化させるよう制御するように、構成される。従って、モータ304及びCWレーダ302の入力/出力は、コントローラユニット306によって制御される。一実施形態では、取得されたデータは、コントローラユニット306の1つ又は複数のデータ記憶装置に記憶されてもよい。また、一実施形態では、非接触物質検査装置300は、被検査物質を分類するように構成された分類モデル308;及び被検査物質の組成を推定するように構成された回帰モデル310を含んでもよい。また、コントローラユニット306は、以下で説明される本開示の方法200による、分類モデルが被検査物質を分類できるようにする、及び回帰モデルが被検査物質の組成を推定できるようにする複数のステップを実行するようにも構成される。
【0025】
プロセスステップ、方法ステップ、技術等は、順番に記載されてもよいが、かかるプロセス、方法及び技術は、別の順序(alternate order)で作動するように構成されてもよい。つまり、記載される可能性があるステップのあらゆる順番又は順序は、必ずしも、その順序でステップが実行される必要性を示しているわけではない。本明細書に記載されたプロセスのステップは、実用的に如何なる順序で実行されてもよい。更に、一部のステップは、同時に実行されてもよい。
【0026】
CWレーダの送信機/局部発振器は、式(1)に従い、電磁波又は信号(図3の入来波又は送信波)を生成する。
【0027】
【数1】
【0028】
式中、fは、送信周波数を表し、T(t)は、送信波であり、L(t)は、局部発振器波を表す。次に、CWレーダの受信機は、式(2)に従い、被検査物質からの反射信号(図3の反射波)を受信する。
【0029】
【数2】
【0030】
【数3】
【0031】
【数4】
【0032】
【数5】
【0033】
式中、反射信号の振幅Arは、式(4)で示されたように、CWレーダのパラメータに応じて変化し、式中、PTは、送信されたアンテナ電力であり、Gは、送信/受信アンテナ利得であり、σは、レーダ断面であり、λは、送信波長(反射波長とも等しい)であり、Zは、入力インピーダンスであり、Γは、反射係数であり、Dは、CWレーダと被検査物質間の距離である。反射係数Γは、順に、εr1及びεr2、空気と被検査物質の比誘電率に其々依存する。
【0034】
反射信号R(t)に対応するベースバンド信号B(t)は、反射信号R(t)を局部発振器信号T(t)と混合し、その結果生じた信号をローパスフィルタに通すことによって、得られる。ベースバンド信号は、式(6)として表される。
【0035】
【数6】
【0036】
【数7】
【0037】
式中、cは、光速度を表す。式(7)では、極値点で最も高い信号振幅を求められることが注目されるかも知れない。また、ベースバンド信号B(t)は、振幅Arと比例することが、式(7)から注目されるかも知れない。式(4)から、振幅Arは、被検査物質の誘電率εr2と、CWレーダと被検査物質間の距離Dとの関数であることが注目されるかも知れない。よって、特徴が距離Dと無関係であれば、被検査物質の誘電率εr2は、物質を分類するためのインジケータとして機能できる。本開示は、この観察結果に焦点を当てて、被検査物質を分類可能にする。
【0038】
本開示によると、まず分類モデル308と回帰モデル310が、第1特徴セット及び第2特徴セットを其々使用して訓練され、該特徴セットは、サンプルセット中の各サンプル物質を使用して生成される。
【0039】
本開示の一実施形態によると、1つ又は複数のプロセッサ104(及び図3のコントローラユニット306)は、ステップ202で、反射信号の経験的に定められた長さ内で極値点を演算するように構成され、反射信号は、CWレーダ(302、図3)からの送信信号に応答して、サンプルセット中のサンプル物質から反射された信号である。一実施形態では、反射信号の経験的に定められた長さは、2.5λであり、その際、λは、反射信号の波長を表す。
【0040】
本開示の一実施形態によると、極値点を演算するステップは、最初に、出発点から2.5λ内で、CWレーダ302をλ/10ずつ移動することを含む。一実施形態では、出発点は、サンプル物質から少なくとも6λの距離にあってもよい。反射信号に対応するベースバンド信号B(t)は、その後、λ/10距離ごとに測定される。測定されたベースバンド信号B(t)の一階微分が実行される。一階微分がゼロの点は、極値点として特定される。
【0041】
本開示の一実施形態によると、1つ又は複数のプロセッサ104(及び図3のコントローラユニット306)は、ステップ204で、二階微分を実行することによって、極値点から極大点及び極小点を特定するように構成される。一実施形態では、極大点は、二階微分が負になる極値点であり、ベースバンド信号の勾配は、最初に正であり、その後ゼロを通過して、負になる。また、一実施形態では、極小点は、二階微分が正になる極値点であり、ベースバンド信号の勾配は、最初に負であり、その後ゼロを通過して、正になる。
【0042】
本開示の一実施形態によると、1つ又は複数のプロセッサ104(及び図3のコントローラユニット306)は、ステップ206では、特定された極大点及び極小点からの極大点と連続する極小点との間の各線の絶対勾配を、関連する振幅及び対応するサンプル物質からのCWレーダの距離に基づいて、演算するように構成される。
【0043】
各線の絶対勾配は、以下の式(8)〜(11)に従い、表されてもよい。
【0044】
【数8】
【0045】
【数9】
【0046】
【数10】
【0047】
【数11】
【0048】
式中、各極値点における、A1、A2、A3、A4、A5は、振幅を表し、D1、D2、D3、D4、D5は、サンプル物質からのCWレーダの対応する距離を表す。
【0049】
本開示の一実施形態によると、1つ又は複数のプロセッサ104(及び図3のコントローラユニット306)は、ステップ208で、極値点を演算するステップ、該極値点の極大点及び極小点を特定するステップ、及びサンプルセットからの各サンプル物質に対応する、各線の絶対勾配を演算するステップを複数回繰り返して演算された勾配(Slope1、Slope2、Slope3、Slope4)の平均を含む、第1特徴セットを生成するように構成される。
【0050】
図4は、当技術分野で知られるような振幅に基づく特徴セットと比べた、本開示の一実施形態による勾配に基づく特徴セットのグラフ図を示している。極値点の勾配は、当技術分野で使用される振幅とは異なり、多少一定であり、その結果、被検査物質を分類するためのより信頼できる特徴を提供する点が注目されるかも知れない。
【0051】
本開示の一実施形態によると、1つ又は複数のプロセッサ104(及び図3のコントローラユニット306)は、ステップ210で、上述のような生成された第1特徴セットを使用して、分類モデル308を訓練するように構成される。実際には、これらのステップは、各サンプル物質が、機械学習アルゴリズムのための適切な訓練データを生成するように、約40回繰り返されてもよい。しかしながら、被検査物質をテストする際には、2極値点だけが、勾配を評価するのに必要である。従って、本開示の一実施形態では、1つ又は複数のプロセッサ104(及び図3のコントローラユニット306)は、ステップ212で、訓練された分類モデル308を使用して、任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、被検査物質を分類するように構成される。
【0052】
本開示のシステム及び方法の別の用途は、被検査物質の組成を推定することである。 例えば、乳化燃料中の水の割合。回帰ベースの分析は、このために使用され、その際、回帰は、変数間の関係、及びどのように1つの変数(独立変数)が、1つ又は複数の変数(従属変数)によって影響を受ける可能性があるかについて調査するのに使用される統計的尺度である。一旦回帰モデルが訓練され、回帰曲線が得られると、該回帰曲線は、被検査物質の組成比を推定するのに使用されてもよい。
【0053】
従って、本開示の一実施形態では、1つ又は複数のプロセッサ104(及び図3のコントローラユニット306)は、ステップ214で、第1特徴セット(平均勾配)及びサンプルセット中の各サンプル物質の組成を含む第2特徴セットを生成するように構成される。次に、回帰モデル310は、ステップ216で、生成された第2特徴セットを使用して、訓練される。次に、訓練された回帰モデル310は、ステップ218で、訓練された回帰モデル310を使用して、任意の2連続極値点を使用して演算された絶対勾配に基づいて、被検査物質の組成を推定するのに使用されてもよい。
【0054】
従って、本開示のシステム及び方法は、被検査物質の分類を容易にするだけではなく、非接触アプローチによって組成を推定できる。
【0055】
本明細書は、全ての当業者が実施形態を作製及び使用できるように、本明細書における主題を記載する。主題の実施形態の範囲は、クレームで規定され、当業者が着想する他の変形例を含んでもよい。かかる他の変形例は、クレームの文言と異ならない同様の要素を有するならば、又はクレームの文言とごく僅かな相違点を有する同等な要素を含むならば、クレームの範囲内にあるものとする。
【0056】
保護の範囲は、かかるプログラム、更にそこにメッセージを有するコンピュータ可読な手段に拡大されると理解されるべきである;かかるコンピュータ可読な記憶手段は、プログラムがサーバ又はモバイル装置又は任意の適当なプログラム可能装置上で走る際に、本方法の1ステップ又は複数のステップを実装するためのプログラム−コード手段を含有する。ハードウェア装置は、サーバ又はパーソナルコンピュータ等のような任意の種類のコンピュータ、又はそれらの組合せを含む、プログラムできる任意の種類の装置とすることができる。また、該装置は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC:application−specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような、例えばハードウェア手段、或いは、例えば、ASICとFPGA、又は少なくとも1つのマイクロプロセッサと内部にソフトウェアモジュールが配置された少なくとも1つのメモリとといったハードウェアとソフトウェア手段の組合せとしてもよい。従って、これらの手段は、ハードウェア手段とソフトウェア手段との両方を含むことができる。本明細書に記載された方法の実施形態は、ハードウェア及びソフトウェアに実装し得る。また、装置は、ソフトウェア手段を含んでもよい。或いは、実施形態は、例えば複数のCPUを使用して、異なるハードウェア装置上に実装されてもよい。
【0057】
本明細書中の実施形態は、ハードウェア要素及びソフトウェア要素を含むことができる。ソフトウェアに実装される実施形態は、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載された様々なモジュールによって実行される機能は、他のモジュール又は他のモジュールの組合せにおいて実装されてもよい。本明細書の目的のために、コンピュータ使用可能な又はコンピュータ可読な媒体は、命令実行システム、機器、若しくは装置によって、又はそれらと接続して使用するプログラムを、含む、記憶する、通信する、伝搬する、又は移植できる任意の機器とすることができる。
【0058】
解説されたステップは、図示された一例示実施形態について説明するために提示されたもので、現在進行中の技術開発が、特定機能が実行される様式を変化させるであろうことは、見込まれるべきである。これらの一実施形態は、限定ではなく、説明目的で本明細書に提示されている。更に、機能を構築する各ブロックの境界は、記載の便宜上、本明細書では恣意的に規定されている。代替的境界は、それらの指定された機能及び関係が適切に実行される限りにおいて、規定され得る。代替手段(本明細書に記載されたものの、同等物、拡張物、変形物、仕様変更物(deviation)等を含む)は、本明細書に含有される教示に基づいて、関連技術の当業者には明らかであろう。かかる代替手段は、開示された実施形態の範囲及び精神の範囲内にある。また、単語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」及び「含む(including)」、及び他の同様な形は、意味において同等であり、これらの単語のいずれか1つに続く一項目若しくは複数の項目が、かかる項目又は複数の項目の総記を意味せず、又は列記された項目若しくは複数の項目だけに限定されることを意味しない点で、オープンエンドであると意図される。また、本明細書及び付記されるクレームで使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、その文脈で別段明記していない限り、複数の参照物も含むことにも、注意されねばならない。
【0059】
更に、1つ又は複数のコンピュータ可読な記憶媒体が、本開示に沿った実施形態を実装する際に利用されてもよい。コンピュータ可読な記憶媒体は、プロセッサによって可読な情報又はデータが記憶されてもよいあらゆる種類の物理的なメモリを指す。従って、コンピュータ可読な記憶媒体は、本明細書に記載された実施形態に沿ったステップ又は段階をプロセッサに実行させる命令を含む、1つ又は複数のプロセッサによって実行する命令を記憶してもよい。用語「コンピュータ可読な媒体」は、有形なアイテムを含み、搬送波及び過渡信号を除外する、即ち非一時的なものと理解されるべきである。一実施形態は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードドライブ、CD ROM、DVD、フラッシュドライブ、ディスク、及びあらゆる他の既知の物理的記憶媒体を含む。
【0060】
本開示及び一実施形態は、例示のみと見なされ、開示された実施形態の真の範囲及び精神は、以下のクレームによって示されるものとする。

図1
図2A
図2B
図3
図4
【外国語明細書】
2020076728000001.pdf