【解決手段】止水装置1は、出入口Eの左右の出入口端部体100に水密性を確保しながら着脱可能に取り付けられるものである。止水装置1は、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに、止水板本体3の幅方向にスライド自在に設けたスライド支持体2を備えており、スライド支持体2を出入口端部体100に向けて押圧しながら固定することで、止水板本体3を出入口端部体100に着脱可能に取り付ける。
前記止水板本体が前記スライド支持体に対して相対的に下降されることで、前記スライド支持体を前記出入口端部体に向けてスライドさせるように構成されている、請求項1に記載の止水装置。
前記頭部保持部は、下方側ほど前記上下溝部から離れるように傾斜する頭部スライド面部と、前記頭部スライド面の下方に設けられて前記突起部材の頭部が嵌り込む頭部保持凹部とを備えている、請求項4に記載の止水装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された止水装置では、止水装置を設置する際には、左右の支持体の対向溝に止水装置を落し込むために、止水装置を支持体の対向溝よりも高い位置まで持ち上げる必要がある。止水装置は、高い水圧に耐えられるように十分な強度が必要なので、重量が大きい。したがって、止水装置を支持体の対向溝よりも高い位置(例えば1メートル以上)まで人力で持ち上げるのは困難を伴い、例えば年配者や女性などの非力な作業者が止水装置を設置するのは困難であるという問題があった。
【0006】
本願発明は、このような現状を改善すべく、止水装置を迅速且つ容易に設置できる止水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の止水装置は、出入口の左右の出入口端部体に水密性を確保しながら着脱可能に取り付けられる止水装置であって、止水板本体の屋内向き面部の幅方向端部位に、前記止水板本体の幅方向にスライド自在に設けたスライド支持体を備えており、前記スライド支持体を前記出入口端部体に向けて押圧しながら固定することで、前記止水板本体を前記出入口端部体に着脱可能に取り付けるものである。
【0008】
本願発明の止水装置によれば、スライド支持体を幅方向にスライドさせることで、止水板本体を出入口端部体に取り付けることができるので、止水装置を従来技術のようには持ち上げなくても止水装置を出入口端部体に接続できる。したがって、止水装置を出入口に迅速且つ容易に設置できる。
【0009】
本願発明の止水装置において、前記止水板本体が前記スライド支持体に対して相対的に下降されることで、前記スライド支持体を前記出入口端部体に向けてスライドさせるように構成されているようにしてもよい。
【0010】
このような態様によれば、止水装置を少し持ち上げた状態で左右の出入口端部体の間に左右のスライド支持体を配置した後、スライド支持体の下部を床面に接触させる一方、止水板本体を下降させることで、スライド支持体を出入口端部体に向けてスライドさせて、止水板本体を出入口端部体に取り付けることができる。したがって、出入口への止水装置の取付作業がより迅速且つ容易になる。
【0011】
さらに、前記止水板本体の前記屋内向き面部の前記幅方向端部位に突設された突起部材が、前記スライド支持体に設けられた案内溝に挿通されており、前記案内溝は、前記出入口端部体から離れるほど下方に位置するように斜め下向きに延びる傾斜溝部を備えているようにしてもよい。
【0012】
このような態様によれば、突起部材が案内溝の傾斜溝部の上端側に位置する状態から、スライド支持体の下部を床面に接触させながら止水板本体を下降させると、突起部材は下向きに移動しながら傾斜溝部の内周壁を下向きに付勢し、スライド支持体は出入口端部体に向けてスライドする。このように、簡単な構成でスライド支持体を出入口端部体に向けて確実にスライドさせることができる。また、止水装置の取外し作業の際には、止水板本体を持ち上げることで、突起部材が上向きに移動するとともに傾斜溝部の内周壁を上向きに付勢し、スライド支持体が出入口端部体から離れる方向へスライドするので、止水装置を簡単な操作で出入口から迅速且つ容易に取り外すことができる。
【0013】
さらに、前記突起部材は、前記案内溝に挿通される軸部と、前記軸部の先端部に設けられた頭部とを備え、前記案内溝は、前記傾斜溝部の下端部から下向きに延びる上下溝部を備えており、前記スライド支持体には、前記案内溝の前記上下溝部の側方に、前記突起部材の頭部を保持する頭部保持部が設けられているようにしてもよい。
【0014】
このような態様によれば、スライド支持体を出入口端部体へ向けて押圧した状態で突起部材の軸部を案内溝の上下溝部に位置させることで、スライド支持体の左右方向移動を規制でき、スライド支持体を出入口端部体に強固に固定できる。さらに、突起部材の頭部を頭部保持部に保持させることで、止水板本体の浮き上がりを防止できる。
【0015】
さらに、前記頭部保持部は、下方側ほど前記上下溝部から離れるように傾斜する頭部スライド面部と、前記頭部スライド面の下方に設けられて前記突起部材の頭部が嵌り込む頭部保持凹部とを備えているようにしてもよい。
【0016】
このような態様によれば、止水板本体を下方へ向けて押し込む際に、突起部材の頭部は、頭部保持部の頭部スライド面部に当接し、頭部スライド面部に沿って、案内溝の上下溝部から離れるように斜め下向きに移動する。このとき、止水板本体の屋内向き面部は、スライド支持体及び出入口端部体に近づくように変位し、屋内向き面部の幅方向端部位に設けた側部止水部材が出入口端部体の屋外向き側面に密着当接するとともに押圧変形する。止水板本体がさらに下方へ向けて押し込まれて、突起部材の頭部が頭部保持部の頭部保持凹部に到達すると、弾性体からなる側部止水部材の復元力によって突起部材の頭部が頭部保持凹部に嵌り込む。このように、止水板本体を下方へ向けて押し込むという簡単な操作で、止水装置を出入口端部体に確実に接続できるとともに、止水板本体の上向き移動が規制されて、止水板本体の浮き上がりを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明は、出入口に迅速且つ容易に設置できる止水装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。また、各方向を特定するため、前後・左右の文言を使用するが、建物等の出入口Eの両側を構成する一対の出入口端部体が間隔を空けて設けられる方向(出入口の幅方向)を左右方向とし、これと直交した方向を前後方向と定義している。
【0020】
図1〜
図3に示すように、本実施形態の止水装置1は、例えば地下鉄駅や地下駐車場、建物などの構造物への水の侵入を防止するために、構造物等の出入口Eに設置されるものであり、出入口Eの左右の出入口端部体100に取り付けられる。左右の出入口端部体100は、上下方向に延びて設けられており、屋外側に位置するいわゆる見付面からなる屋外向き側面部101と、いわゆる見込面からなる左右対向側面部102を備えている。屋外向き側面部101と左右対向側面部102は互いに直交している。左右の出入口端部体100は、例えば出入口Eの開口部の縦枠や門柱などで構成される。
【0021】
止水装置1は、左右の出入口端部体100同士の間を塞ぐように床面Fに起立設置される止水板本体3と、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに設けた左右のスライド支持体2を備えている。スライド支持体2は、止水板本体3の幅方向にスライド自在に設けられており、スライド支持体2を出入口端部体100に向けて押圧しながら固定することで、止水板本体3が出入口端部体100に着脱可能に取り付けられるように構成されている。
【0022】
止水板本体3は、屋内向き面部31の左右の幅方向端部位31aが、左右の出入口端部体100の屋外向き側面部101に対向して配置される。スライド支持体2は、止水板本体3の幅方向端部位31aに設けられた突起部材32を介して、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに移動自在に連結されている。左右のスライド支持体2は、対応する出入口端部体100の左右対向側面部102に近接して、左右の出入口端部体100の間に配置される。
【0023】
止水板本体3は、矩形板状の形態を有し、屋内向き面部31における左右の幅方向端部位31a,31aのそれぞれに、突起部材32と側部止水部材33とを備えている。突起部材32は、屋内向き面部31から屋内向きに延びる軸部32bの先端に幅広の頭部32aを有している。側部止水部材33は、上下方向に延びる弾性体で形成されている。止水板本体3の底面部34には、左右方向に延びる弾性体からなる下部止水部材36が設けられている。
【0024】
図1〜
図4に示すように、左右のスライド支持体2は、止水板本体3の幅方向端部位31aに対向配置される連結面部21と、連結面部21の左右方向外側端部から幅方向端部位31aとは離れる方向(
図1〜
図3の屋内方向、前後方向)へ向けて延びる押圧面部23を備えている。連結面部21には、止水板本体3の突起部材32を案内するための案内溝22が形成されている。案内溝22には、止水板本体3に設けられた突起部材32の軸部32bが挿通されている。
【0025】
止水装置1が左右の出入口端部体100に取り付けられる際には、左右の出入口端部体100の左右対向側面部102同士の間に左右のスライド支持体2を配置するとともに、止水板本体3の幅方向端部位31aを出入口端部体100の屋外向き側面部101に対向配置する。そして、左右のスライド支持体2同士の間隔が広がるように左右のスライド支持体2を左右方向外向きへ移動させて、押圧面部23を出入口端部体100の左右対向側面部102に向けて押圧して、スライド支持体2を出入口端部体100に固定する。一方、止水板本体3に設けた側部止水部材33を出入口端部体100の屋外向き側面部101に密着させるとともに、下部止水部材36を床面Fに密着させる。これにより、止水板本体3と出入口端部体100及び床面Fとの間の水密性が確保される。
【0026】
このように、止水装置1を高く持ち上げることなく左右の出入口端部体100に接続できるので、止水装置1を出入口Eに迅速且つ容易に設置できる。また、止水装置1を高く持ち上げる必要がないので、年配者や女性などの非力な作業者であっても、止水装置1を出入口Eに迅速且つ容易に設置できる。
【0027】
図1〜
図4を参照しながら、止水装置1の詳細な構成について説明する。止水装置1の止水板本体3は、例えば炭素繊維強化プラスチック製又は金属製であり、矩形板状の形態を有し、屋内向き面部31と、底面部34と、屋外向き面部35と、上面部37と、左右の側面部38とを備えている。なお、止水板本体3は、中空部分を有する構造であってもよい。止水板本体3の上面部37には、左右一対の逆U字形の取っ手部39が設けられている。
【0028】
止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31a,31aに、突起部材32と側部止水部材33とが設けられている。本実施形態では、幅方向端部位31aに、上下方向に間隔を空けて並ぶ3つの突起部材32が設けられおり、屋内向き面部31には合計6つの突起部材32が設けられている。各突起部材32は、屋内向き面部31の幅方向端部位31aに突設された軸部32bと、軸部32bの先端部に設けられた頭部32aとを備えている。本実施形態では、頭部32aは球形であり、軸部32bは円柱形(丸棒形)である。
【0029】
側部止水部材33は、ゴムやスポンジ等の弾性体からなり、突起部材32よりも左右方向外側位置に設けられている。側部止水部材33は、屋内向き面部31の幅方向端部位31aの上端部位から下端部位に亘って設けられている。側部止水部材33の下側の端部は、幅方向端部位31aの下端部位から屋外向き面部35に向けて屈曲しており、底面部34に亘って設けられている。側部止水部材33は、高反発ゴムからなる側部第1止水部材33aと、側部第1止水部材33aの左右方向外側位置に隣接配置される低反発ゴムからなる側部第2止水部材33bで構成されている。側部第2止水部材33bの厚み(屋内向き面部31からの突出高さ)は側部第1止水部材33aの厚みよりも大きく設定されている。
【0030】
止水板本体3の底面部34には、左右方向に延びる弾性体からなる下部止水部材36が設けられている。ゴムやスポンジ等の弾性体からなる下部止水部材36の左右方向両端部は、底面部34に延設された側部止水部材33に隙間なく接続されている。下部止水部材36は、高反発ゴムからなる下部第1止水部材36aと、下部第1止水部材36aの屋外側位置に隣接配置される低反発ゴムからなる下部第2止水部材36bで構成されている。下部第2止水部材36bの厚み(底面部34からの突出高さ)は下部第1止水部材36aの厚みよりも大きく設定されている。
【0031】
なお、側部止水部材33及び下部止水部材36は、出入口端部体100の屋外向き側面部101又は床面Fへ向けて押圧されて、屋外向き側面部101又は床面Fに密着して水密性を確保できる弾性体であればよい。
【0032】
次に、スライド支持体2の構成について説明する。左右のスライド支持体2は、左右対称に設けられている。上述のように、左右のスライド支持体2は、止水板本体3の幅方向端部位31aに対向配置される連結面部21と、連結面部21の左右方向外側端部から幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて延びる押圧面部23を備えている。本実施形態では、スライド支持体2は、横断面がL型の山形鋼(いわゆるアングル)で形成されており、上下方向に延びて配置されている。連結面部21と押圧面部23は互いに直交している。
【0033】
連結面部21には、上下方向に間隔を空けて並ぶ3つの案内溝22が形成されている。案内溝22は、止水板本体3の突起部材32を案内するための溝であり、3つの突起部材32に対応する位置に設けられている。3つの案内溝22は、同一形状を有し、それぞれ連結面部21を貫通している。
【0034】
案内溝22の溝幅寸法は、突起部材32の軸部32bの径よりも大きく、かつ突起部材32の頭部32aの径よりも小さく設定されている。案内溝22は、出入口端部体100から離れるほど下方に位置するように斜め下向きに延びる傾斜溝部22aと、傾斜溝部22aの下端部から下向きに延びる上下溝部22bを備えている。
【0035】
各案内溝22には、対応する突起部材32の軸部32bが挿通されており、スライド支持体2の連結面部21が突起部材32の頭部32aと止水板本体3の屋内向き面部31との間に配置されることで、スライド支持体2と止水板本体3とが抜け不能に連結されている。
【0036】
スライド支持体2と止水板本体3は、案内溝22内を突起部材32の軸部32bが移動することで、相対移動自在に設けられている。突起部材32の軸部32bが案内溝22の上端部(傾斜溝部22aの上端部)に位置する状態で、スライド支持体2の下部が止水板本体3の下部よりも下方に位置するように構成されている。また、突起部材32の軸部32bが案内溝22の下端部(上下溝部22bの下端部)に位置する状態、厳密には突起部材32の頭部32aが後述する頭部保持部30の頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、スライド支持体2の下部と止水板本体3の下部(下部止水部材36)が概ね同じ高さ位置になるように構成されている。
【0037】
スライド支持体2の連結面部21に、突起部材32の頭部32aを保持する頭部保持部30が設けられている。頭部保持部30は、連結面部21の止水板本体3に対向する面とは反対側の面に設けられており、3つの案内溝22のうち一番上の案内溝22と一番下の案内溝22の上下溝部22bの左右側方に設けられている。本実施形態では、1つの案内溝22に対して左右一対の頭部保持部30が設けられている。
【0038】
頭部保持部30は、略楔形の形態を有し、下方側ほど連結面部21の上下溝部22bから離れるように傾斜する頭部スライド面部30aと、頭部スライド面部30aの下方に設けられて突起部材32の頭部32aが嵌り込む頭部保持凹部30bとを備えている。左右一対の頭部保持部30において、各頭部保持凹部30bは、頭部保持部30のうち頭部スライド面部30aの下方で互いに対向する角部に設けられている。頭部保持凹部30bは、当該角部を切り欠いて形成されており、例えば凹球面を略半割した形状としてもよい。左右の頭部保持凹部30bは左右対称に形成されている。なお、頭部保持凹部30bの形状は、凹球面に限定されず、例えば横長凹溝形状など、突起部材32の頭部32aが嵌り込む形状であればよい。
【0039】
また、スライド支持体2の押圧面部23には、出入口端部体100の左右対向側面部102に対向する面に、ゴムやスポンジ等の弾性体からなる押圧弾性部材24が設けられている。本実施形態では、押圧弾性部材24は、粘着性の高い板状ゴムで形成され、押圧面部23の上下長手方向に沿って上下縦長に設けられている。
【0040】
スライド支持体2の下部には、連結面部21の下端部から止水板本体3の幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて延びる四角板状の底面部25の下面に、車輪26が設けられている。車輪26は、左右方向(出入口Eの幅方向と平行な方向)に転動可能に設けられている。なお、本実施形態では、スライド支持体2の左右方向移動をより円滑にするためにスライド支持体2の下部に左右一対の車輪26を設けているが、車輪26に替えて、床面F表面を横滑り可能な硬質樹脂部材や金属部材をスライド支持体2の下部に設けることも可能である。
【0041】
また、スライド支持体2には、連結面部21と押圧面部23とを連結する三角形状の補強リブ27が設けられている。補強リブ27は、上下方向で隣り合う案内溝22同士の間の位置に設けられており、上下2つの補強リブ27が設けられている。
【0042】
止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aと、スライド支持体2の連結面部21との間には、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢する弾性体からなる弾性部材40が設けられている。本実施形態では、弾性部材40は、圧縮コイルばねであり、上下に並ぶ3つの突起部材32のうち真ん中の突起部材32の軸部32bが挿通されている。
【0043】
弾性部材40は、前後方向(軸部32bが延びる方向)で圧縮変形(弾性変形)した状態で配置される。スライド支持体2は、弾性部材40の復元力によって幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢される一方、突起部材32の頭部32aが案内溝22の傾斜溝部22aの周囲部又は頭部保持部30に当接することで、幅方向端部位31aとは離れる方向への移動が制限される。
【0044】
また、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aと、スライド支持体2の連結面部21との間には、スライド支持体2の幅方向端部位31a側への移動を制限するスペーサ部材41が設けられている。本実施形態では、スペーサ部材41は、円筒状の形態を有し、金属、樹脂又はゴム等の弾性体からなり、幅方向端部位31aに固定されている。上下に並ぶ3つの突起部材32のうち上下2つの突起部材32の軸部32bはスペーサ部材41に挿通されている。スペーサ部材41は、スライド支持体2と止水板本体3との間の隙間を確保するためのものである。
【0045】
次に、
図4〜
図9を参照しながら、出入口Eへの止水装置1の取付け操作について説明する。なお、
図11〜
図15では、左右のスライド支持体2のうち屋内側から見て右側のスライド支持体2のみを図示しているが、上述のようにスライド支持体2は左右対称に設けられるので、左側のスライド支持体2についても同様の動作が行われる。
【0046】
図4及び
図9(A)に示すように、初期状態では、止水板本体3に設けられた突起部材32の軸部32bは、スライド支持体2の連結面部21に設けられた案内溝22の傾斜溝部22aの上端部に位置している。取っ手部39を把持して止水装置1を持ち上げた状態で、幅方向端部位31aが出入口Eの出入口端部体100の屋外向き側面部101に対向するように屋内向き面部31を出入口Eの屋内側へ向けて止水板本体3を配置する。
【0047】
左右のスライド支持体2を左右の出入口端部体100の間の位置に配置する。スライド支持体2の押圧面部23(押圧弾性部材24)が出入口端部体100の左右対向側面部102に対向するように配置される。止水装置1を持ち上げる力を緩めて止水装置1を下降させて、スライド支持体2の下部の車輪26を床面Fに接触させる。止水装置1を下降させる際に、止水板本体3の側部止水部材33を出入口端部体100の屋外向き側面部101に接触させることが好ましいが、側部止水部材33が屋外向き側面部101に近接配置される状態で止水装置1を下降させてもよい。
【0048】
図5に示すように、止水板本体3の自重で、又は作業者が止水板本体3を下方へ押し込むことで、止水板本体3を下方へ移動させる。突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22aの上端側に位置する状態(初期状態)から、スライド支持体2の下部の車輪26を床面Fに接触させながら止水板本体3を下降させると、突起部材32の軸部32bは、下向きに移動しながら案内溝22の傾斜溝部22aの下側の傾斜面(下側の内壁)を下向きに付勢する。これにより、傾斜溝部22aの下側の傾斜面に出入口端部体100側へ向かう力が掛かり、スライド支持体2は、車輪26を転動させながら出入口端部体100に向けてスライドする。このように、簡単な構成でスライド支持体2を出入口端部体100に向けて確実にスライドさせることができる。
【0049】
なお、弾性部材40は、真ん中の突起部材32の軸部32bに挿通されているので、止水板本体3とともに下方へ移動する。突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22a内を移動するときは、弾性部材40の復元力によって、突起部材32の頭部32aが連結面部21における傾斜溝部22aの周囲部位に当接する状態が維持されるので、スライド支持体2と止水板本体3との間隔は概ね一定である。
【0050】
止水板本体3が下降するとともに、突起部材32の軸部32bが下降し、スライド支持体2が出入口端部体100に近づくようにスライドする。そして、突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22aの中途部に到達したときに、スライド支持体2の押圧面部23に設けた押圧弾性部材24が出入口端部体100の左右対向側面部102に接触する。
【0051】
図6及び
図9(B)に示すように、止水板本体3がさらに下降されて、突起部材32の軸部32bが案内溝22の傾斜溝部22aの下端部(傾斜溝部22aと上下溝部22bとの接続部)近傍まで移動する。このとき、突起部材32の軸部32bは案内溝22の傾斜溝部22aを付勢しながら下降し、スライド支持体2が出入口端部体100側へさらにスライドする。押圧弾性部材24が押圧面部23と左右対向側面部102との間で圧縮変形するとともに左右対向側面部102に密着する。
【0052】
図7に示すように、作業者が止水板本体3をさらに下方へ押し込むと、突起部材32の軸部32bは案内溝22の上下溝部22b内に移動する。これにより、スライド支持体2の左右方向への移動が規制され、スライド支持体2を出入口端部体100に向けて押圧しながら位置固定できる。
【0053】
一方、突起部材32の頭部32aは、頭部保持部30の頭部スライド面部30aに当接し、頭部スライド面部30aに沿って、スライド支持体2の連結面部21(上下溝部22b)から離れるように斜め下向きに移動する。このとき、止水板本体3の屋内向き面部31は、スライド支持体2及び出入口端部体100に近づくように変位し、側部止水部材33が屋外向き側面部101に密着当接するとともに圧縮変形する。これにより、止水板本体3と出入口端部体100との間に高い水密性を確保できる。
【0054】
図8及び
図9(C)に示すように、止水板本体3をさらに下方へ押し込むと、突起部材32の頭部32aが頭部保持部30の頭部保持凹部30bに到達して、頭部32aの軸部32b寄り部位が頭部保持凹部30bに嵌り込む。頭部32aは、弾性体からなる側部止水部材33の復元力によって頭部保持凹部30bに付勢されて、頭部保持凹部30b内に保持される。これにより、止水板本体3の上向き移動が規制されて、止水板本体3の浮き上がりを防止できる。なお、頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、スライド支持体2と止水板本体3との間に設けられた弾性部材40は圧縮変形しているので、頭部32aは、弾性部材40の復元力によっても、頭部保持凹部30bに付勢される。
【0055】
また、突起部材32の頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込んだ状態で、止水板本体3の下側の下部止水部材36が床面Fに密着当接するとともに圧縮変形する。これにより、止水板本体3と床面Fとの間に高い水密性を確保できる。
【0056】
このように、止水板本体3を下方へスライドさせるという簡単な操作で、止水板本体3をスライド支持体2に確実に接続できる。
【0057】
また、止水部材33,36は、出入口端部体100の屋外向き側面部101又は床面Fに密着当接する際に、まず、低反発弾性体からなる第2止水部材33b,36bが屋外向き側面部101又は床面Fに当接する。その後、第2止水部材33b,36bが圧縮変形しながら高反発弾性体からなる第1止水部材33a,36aが屋外向き側面部101又は床面Fに当接して圧縮変形する。これにより、止水部材33,36は、低反発弾性体からなる第2止水部材33b,36bによって屋外向き側面部101又は床面Fとの間に高い水密性を確保しながら、水圧による第2止水部材33b,36bの左右内向き又は屋内向きへの移動を高反発弾性体からなる第1止水部材33a,36aによって規制できる。
【0058】
また、止水装置1の取外し作業の際には、止水板本体3を持ち上げることで、突起部材32の頭部32aを頭部保持部30の頭部保持凹部30bから離脱させる。止水板本体3をさらに持ち上げることで、突起部材32の軸部32bが上向きに移動するとともに案内溝22の上下溝部22bから傾斜溝部22aへ移動する。軸部32bは上向きに移動しながら傾斜溝部22aの上側の傾斜面(上側の内壁)を上向きに付勢する。これにより、傾斜溝部22aの上側の傾斜面に出入口端部体100側へ向かう方向とは逆向きに力が掛かり、スライド支持体2は、車輪26を転動させながら出入口端部体100とは離れる方向へ向けてスライドし、スライド支持体2と出入口端部体100との連結が解除される。このように、止水装置1を簡単な操作で出入口Eから迅速且つ容易に取り外すことができる。
【0059】
次に、
図10を参照しながら、止水装置の他の実施形態について説明する。本実施形態の止水装置1Aにおいて、上記実施形態の止水装置1と同一部分には同じ符号を付し、それらの部分の詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施形態の止水装置1Aでは、上記実施形態の止水装置1と比較して、止水装置1において上下に並ぶ3つの突起部材32及び案内溝22のうち真ん中の突起部材32及び案内溝22が設けられていない。すなわち、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに上下2つの突起部材32が設けられ、スライド支持体2の連結面部21に上下2つの案内溝22が設けられている。
【0061】
また、上下の突起部材32の軸部32bには、スペーサ部材41(
図4等参照)に替えて、圧縮コイルばねからなる弾性部材40が挿通されている。弾性部材40は、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢する。
【0062】
本実施形態では、上下2つの弾性部材40によってスライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢するので、止水装置1を出入口Eに設置する際に、スライド支持体2と止水板本体3とが互いに平行に保たれやすくなり、止水装置1の設置作業の容易性を向上できる。
【0063】
なお、弾性部材40は、圧縮コイルばねに限定されず、例えば板ばねやゴムなど、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢できる弾性体であればよい。また、弾性部材40は、突起部材32の周囲に配置される構成に限定されず、スライド支持体2を幅方向端部位31aとは離れる方向へ向けて付勢できる構成であればよい。また、対となる突起部材32及び案内溝22を2又は3つで構成するものとしたが、その数について限定するものではない。
【0064】
以上のように、止水装置1,1Aは、出入口Eの左右の出入口端部体100に水密性を確保しながら着脱可能に取り付けられるものであって、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに、止水板本体3の幅方向にスライド自在に設けたスライド支持体2を備えており、スライド支持体2を出入口端部体100に向けて押圧しながら固定することで、止水板本体3を出入口端部体100に着脱可能に取り付ける。これにより、止水装置1,1Aを従来技術のようには持ち上げなくても出入口端部体100に接続できるので、止水装置1,1Aを出入口Eに迅速且つ容易に設置できる。
【0065】
また、止水装置1,1Aは、止水板本体3がスライド支持体2に対して相対的に下降されることで、スライド支持体2を出入口端部体100に向けてスライドさせるように構成されている。これにより、止水装置1,1Aを少し持ち上げた状態で左右の出入口端部体100の間に左右のスライド支持体2を配置した後、スライド支持体2の下部を床面Fに接触させる一方、止水板本体3を下降させることで、スライド支持体2を出入口端部体100に向けてスライドさせて出入口端部体100に取り付けることができる。したがって、出入口への止水装置の取付作業がより迅速且つ容易になる。
【0066】
また、止水装置1,1Aは、止水板本体3の屋内向き面部31の幅方向端部位31aに突設された突起部材32が、スライド支持体2に設けられた案内溝22に挿通されており、案内溝22は、出入口端部体100から離れるほど下方に位置するように斜め下向きに延びる傾斜溝部22aを備えている。これにより、突起部材32が案内溝22の傾斜溝部22aの上端側に位置する状態から、スライド支持体2の下部を床面Fに接触させながら止水板本体3を下降させると、突起部材32は下向きに移動しながら傾斜溝部22aの内周壁を下向きに付勢し、スライド支持体2は出入口端部体100に向けてスライドする。このように、簡単な構成でスライド支持体2を出入口端部体100に向けて確実にスライドさせることができる。また、止水装置1,1Aの取外し作業の際には、止水板本体3を持ち上げることで、突起部材32が上向きに移動して傾斜溝部22aの内周壁を上向きに付勢し、するとともにスライド支持体2が出入口端部体100から離れる方向へスライドするので、止水装置1,1Aを簡単な操作で出入口Eから迅速且つ容易に取り外すことができる。
【0067】
また、突起部材32は、案内溝22に挿通される軸部32bと、軸部32bの先端部に設けられた頭部32aとを備え、案内溝22は、傾斜溝部22aの下端部から下向きに延びる上下溝部22bを備えており、スライド支持体2には、案内溝22の上下溝部22bの側方に、突起部材32の頭部32aを保持する頭部保持部30が設けられている。これにより、スライド支持体2を出入口端部体100へ向けて押圧した状態で突起部材32の軸部32bを案内溝22の上下溝部22bに位置させることで、スライド支持体2の左右方向移動を規制でき、スライド支持体2を出入口端部体100に強固に固定できる。さらに、突起部材32の頭部32aを頭部保持部30に保持させることで、止水板本体3の浮き上がりを防止できる。
【0068】
また、頭部保持部30は、下方側ほど上下溝部22bから離れるように傾斜する頭部スライド面部30aと、頭部スライド面部30aの下方に設けられて突起部材32の頭部32aが嵌り込む頭部保持凹部30bとを備えている。これにより、止水板本体3を下方へ向けて押し込む際に、突起部材32の頭部32aは、頭部保持部30の頭部スライド面部30aに当接し、頭部スライド面部30aに沿って、案内溝22の上下溝部22bから離れるように斜め下向きに移動する。このとき、止水板本体3の屋内向き面部31は、スライド支持体2及び出入口端部体100に近づくように変位し、屋内向き面部31の幅方向端部位31aに設けた側部止水部材33が出入口端部体100の屋外向き側面部101に密着当接するとともに押圧変形する。止水板本体3がさらに下方へ向けて押し込まれて、突起部材32の頭部32aが頭部保持部30の頭部保持凹部30bに到達すると、弾性体からなる側部止水部材33の復元力によって突起部材32の頭部32aが頭部保持凹部30bに嵌り込む。このように、止水板本体3を下方へ向けて押し込むという簡単な操作で、止水装置1を出入口端部体100に確実に接続できるとともに、止水板本体3の上向き移動が規制されて、止水板本体3の浮き上がりを防止できる。
【0069】
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。