特開2020-77532(P2020-77532A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-77532ボルト・バスバー固定方法および固定構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-77532(P2020-77532A)
(43)【公開日】2020年5月21日
(54)【発明の名称】ボルト・バスバー固定方法および固定構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/24 20060101AFI20200424BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20200424BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20200424BHJP
【FI】
   H01R43/24
   H01R4/34
   H01R4/58 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-210347(P2018-210347)
(22)【出願日】2018年11月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】鯵坂 俊治
【テーマコード(参考)】
5E012
5E063
【Fターム(参考)】
5E012BA12
5E063JB01
5E063JB04
5E063JB10
5E063XA01
(57)【要約】
【課題】かしめボルトと比べ低コストの標準ボルトを使いつつ樹脂の漏出を抑えたボルト・バスバー固定方法および固定構造を提供する。
【解決手段】バスバー51に設けられたボルト挿通孔511に、軸部521と頭部522とを有するボルト52の軸部521を挿通させ、ボルト52の軸部521にナット80を螺合させてボルト52の頭部521との間にバスバー51を挟み、バスバ51およびボルト52を金型70にセットして、頭部522全域を覆うように樹脂を金型70に流し込み、ナット80をボルト52から取り外す。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーに設けられたボルト挿通孔に、軸部と頭部とを有するボルトの軸部を挿通させ、
前記ボルトの軸部にナットを螺合させて該ボルトの頭部との間にバスバーを挟み、
前記バスバーおよび前記ボルトを金型にセットして、
前記頭部全域を覆うように樹脂を金型に流し込み、
前記ナットを前記ボルトから取り外すことを特徴とするボルト・バスバー固定方法。
【請求項2】
前記ナットが、基部と、該基部の外径より大きな外径を有するフランジとを具備するナットであることを特徴とする請求項1に記載のボルト・バスバー固定方法。
【請求項3】
ボルト挿通孔が設けられたバスバーと、
軸部と、該軸部側を向いた平坦面を有する頭部とを有し、該軸部が前記ボルト挿通孔に挿通され、該平坦面が前記バスバーの該ボルト挿通孔の周りに押し当てられたボルトと、
前記頭部全域を覆う一様な材料からなる樹脂とを備えたことを特徴とするボルト・バスバー固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトとバスバーを樹脂で固定するボルト・バスバー固定方法およびボルトとバスバーが樹脂で固定されたボルト・バスバー固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バスバーと呼ばれる金属板に設けられたボルト挿通孔にボルトが挿し込まれてボルトとバスバーとが樹脂で固定されたボルト・バスバー固定構造を有する電装品が知られている。そして、そのボルトを、孔の開いたもう1つのバスバーや丸型端子等に差し込んでナットで固定する。こうして電気的な配線を実現する。このボルト・バスバー固定構造を構成しているバスバーの、別のバスバーや丸型端子等が固定される側の面に樹脂が漏出していると、接触不良のおそれがある。したがって、このボルト・バスバー固定構造を有する電装品の作製にあたっては、この漏出を防止することが重要である。
【0003】
特許文献1には、かしめボルトを使用したボルト・バスバー固定構造が開示されている。この特許文献1では、かしめボルトをバスバーに食い込ませることにより、上記の漏出を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−28969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のボルト・バスバー固定構造の作製にあたってかしめボルトを使用すると上記の漏出を強く抑えることができる。しかしながら、かしめボルトは、かしめの機能のない標準ボルトと比べ高価であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、かしめボルトと比べ低コストのボルトを使い、しかも上記の漏出を抑えたボルト・バスバー固定方法および固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のボルト・バスバー固定方法は、
バスバーに設けられたボルト挿通孔に、軸部と頭部とを有するボルトの軸部を挿通させ、
ボルトの軸部にナットを螺合させてボルトの頭部との間にバスバーを挟み、
バスバーおよびボルトを金型にセットして、
頭部全域を覆うように樹脂を金型に流し込み、
ナットをボルトから取り外すことを特徴とする。
【0008】
本発明のボルト・バスバー固定方法によれば、ボルトの軸部にナットを螺合させてボルトの頭部とナットの間にバスバーを挟んでから樹脂を金型に流し込む。これにより、ボルトの軸部側への樹脂の漏出、及びボルトとバスバーとの間への樹脂の入り込みが抑えられる。
【0009】
ここで、本発明のボルト・バスバー固定方法は、上記ナットが、基部と、基部の外径より大きな外径を有するフランジとを具備するナットであることが好ましい。
【0010】
いわゆる標準ボルトや標準のフランジ付きナットは、フランジ外径とナットのネジ穴の寸法の精度が不十分であり、このため、バスバーに対するボルトの固定位置精度が不十分となりがちである。治具としてのフランジ付きナットであれば十分な精度のナットを作製することができる。そして、その治具としての高精度のナットを使用することで、ボルトの位置を高精度に調整することができる。この場合、治具としてのナットの作製費がかかるが、このナットは取り外して何度でも再利用可能であり、コスト上の大きな負担にならない。
【0011】
また、本発明のボルト・バスバー固定構造は、
ボルト挿通孔が設けられたバスバーと、
軸部と、軸部側を向いた平坦面を有する頭部とを有し、軸部がボルト挿通孔に挿通され、頭部の平坦面がバスバーのボルト挿通孔の周りに押し当てられたボルトと、
頭部全域を覆う一様な材料からなる樹脂とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、上記の平坦面を有する、かしめ機能のない、いわゆる標準ボルト等が使用されたボルト・バスバー固定構造が実現する。
【発明の効果】
【0013】
上記の本発明によれば、かしめボルトと比べ低コストのボルトを使いつつ上記の漏出を抑えたボルト・バスバー固定方法および固定構造が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ボルトとバスバーとを樹脂でオーバーモールドしたコネクタを示した正面図である。
図2図1に示した矢印X−Xに沿う断面図である。
図3】本発明のボルト・バスバー固定方法の一実施形態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
ここでは先ず、本発明の一実施形態としてのボルト・バスバー固定構造を有する電装品の一例についてその概要を説明する。
【0017】
図1は、ボルトとバスバーとを樹脂でオーバーモールドしたコネクタを示した正面図である。
【0018】
このコネクタ50は、例えばインバータ等のアルミニウム製のケース10の内部回路と外部の回路とを電気的に繋ぐコネクタである。このコネクタ50は、バスバー51とボルト52を備えた、大電流伝送用のコネクタである。
【0019】
図2は、図1に示した矢印X−Xに沿う断面図である。
【0020】
この図2には、コネクタ50に設けられたボルト・バスバー固定構造が示されている。
【0021】
このコネクタ50は、図1にも示した通り、バスバー51とボルト52を備えている。
【0022】
バスバー51は、インバータのケース10の内部から延びていて、コネクタ50の表面 の、ボルト52の周りに露出している。このバスバー51には、ボルト挿通孔511が 設けられている。ボルト52は軸部521と頭部522を有し、軸部521がボルト挿 通孔511に挿通され、頭部522のフランジ523の平坦面525がバスバー51の ボルト挿通孔511の周りの部分に接触している。そして、ボルト52の頭部522お よび頭部522側のバスバー51が樹脂53で固定されている。この図2に一点鎖線で 示すように、外部のバスバー61の孔にボルト52の軸部521が差し込まれ、ナット 62により2つのバスバー51,61が接触した状態に固定される。これにより、ケー ス10の内外に繋がる電流路が形成される。
【0023】
図3は、本発明のボルト・バスバー固定方法の一実施形態を示した模式図である。
【0024】
この図3に示したバスバー51およびボルト52は、図2に示したバスバー51およびボルト52とそれぞれ同一のものである。
【0025】
ここでは、ボルト52のフランジ523の平坦面525をバスバー51に押し当てるにあたり、フランジ82付きのナット80が使用される。一例として、このナット80の基部81の外形は6角形状であり、フランジ82の外形は円形である。このフランジ82の外径は基部81の外径より大きい。ここで使用されるナット80は、例えば±1/100mmの寸法精度を持った、高精度の治具として作製されたナットである。
【0026】
このナット80がボルト52に螺入される。そして、バスバー51の、ボルト挿通孔511の周りの部分を、このナット80のフランジ82とボルト52のフランジ523とで挟んで締め付ける。こうすることで、ボルト52のフランジ523がバスバー51に強く(例えば4000N程度の力で)押し当てられる。
【0027】
これにより、図3に示した矢印Rの経路が塞がれ、金型70に樹脂を流し込んでも、その樹脂がボルト52の軸部521側に漏れ出ることが強く抑制される。
【0028】
また、ナット80は、高精度に作製された治具である。このナット80のフランジ82の外径を利用することによって、金型内でボルト52が高精度に位置決めされる。
【0029】
さらに、このナット80を使うことによって、頭部522の窪み524を金型70の可動部(図示せず)で押さえる必要がなくなり、金型70から可動部をなくすことができる。これにより、ボルト52の頭部522は、図2に示したように均一な樹脂で覆われ、ポッティング剤の注入等の後処理は不要となる。また、金型70の長寿命化が図られる。
【0030】
金型70に流し込んだ樹脂が固化したのち、バスバー51等が金型70から取り出され、ボルト52からナット80が取り外される。このナットは、繰り返し再利用される。
【0031】
なお、ここでは、ナット80は高精度に作製された治具であるとして説明したが、ボルト52の位置精度を高くする必要がない場合は、治具としてのナット80を作製する必要はなく、市販のフランジ付きのナットを使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 インバータのケース
50 コネクタ
51 バスバー
511 ボルト挿通孔
52 ボルト
521 軸部
522 頭部
523 フランジ
524 窪み
525 平坦面
53 樹脂
61 外部のバスバー
62 ナット
70 金型
80 ナット
81 ナットの基部
82 ナットのフランジ
図1
図2
図3