【解決手段】回転子鉄心の製造方法は、鉄心本体と樹脂ガイド部材とを重ね合わせることであって、鉄心本体は磁石挿入孔を含み、樹脂ガイド部材にはその表面から突出する壁体が設けられており、鉄心本体と樹脂ガイド部材とが重ね合わされた状態で、永久磁石が配置された磁石挿入孔内に壁体が位置していることと、樹脂ガイド部材を貫通して延びる少なくとも一つのゲート孔を通じて磁石挿入孔内に溶融樹脂を注入することであって、少なくとも一つのゲート孔の吐出口は壁体の側方近傍に設けられていることとを含む。
鉄心本体と樹脂ガイド部材とを重ね合わせることであって、前記鉄心本体は磁石挿入孔を含み、前記樹脂ガイド部材にはその表面から突出する壁体が設けられており、前記鉄心本体と前記樹脂ガイド部材とが重ね合わされた状態で、永久磁石が配置された前記磁石挿入孔内に前記壁体が位置していることと、
前記樹脂ガイド部材を貫通して延びる少なくとも一つのゲート孔を通じて前記磁石挿入孔内に溶融樹脂を注入することであって、前記少なくとも一つのゲート孔の吐出口は前記壁体の側方近傍に設けられていることとを含む、回転子鉄心の製造方法。
前記鉄心本体と前記樹脂ガイド部材とを重ね合わせることは、前記鉄心本体の下面に前記樹脂ガイド部材を重ね合わせることを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも一つのゲート孔の吐出口は、前記鉄心本体の高さ方向から見て、前記磁石挿入孔に対して偏心した位置に設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0011】
[回転子積層鉄心の構成]
まず、
図1〜
図5を参照して、回転子積層鉄心1の構成について説明する。回転子積層鉄心1(回転子鉄心)は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、図示しないシャフトが回転子積層鉄心1に取り付けられることにより構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。
図1に例示される回転子積層鉄心1は、埋込磁石型(IPM)モータの一部を構成してもよい。
【0012】
回転子積層鉄心1は、
図1〜
図3に示されるように、積層体10(鉄心本体)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを備える。
【0013】
積層体10は、
図1及び
図2に示されるように、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。すなわち、軸孔10aは、積層体10の高さ方向(積層方向)に延びている。一つの例において、積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔10a内には、シャフトが挿通されうる。
【0014】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16が形成されている。磁石挿入孔16は、
図1及び
図2に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、
図3に示されるように、高さ方向に沿って延びるように積層体10を貫通している。高さ方向から見たときの磁石挿入孔16の形状は、積層体10の外周縁に沿って延びる長孔であってもよい。磁石挿入孔16の数は、特に限定されないが、例えば6個であってもよい。磁石挿入孔16の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0015】
積層体10は、
図1〜
図3に示されるように、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。複数の打抜部材Wのうち最上層をなす打抜部材Wtの上面は、積層体10の上端面S1を構成している(
図1及び
図3参照)。複数の打抜部材Wのうち最下層をなす打抜部材Wbの下面は、積層体10の下端面S2を構成している(
図2及び
図3参照)。
【0016】
打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体10の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0017】
高さ方向において隣り合う打抜部材W同士は、
図1〜
図3に示されるように、カシメ部18によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部18に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wにカシメブロックを設け、カシメブロックを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、カシメブロックを当該積層体から除去してもよい。なお、「カシメブロック」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(回転子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0018】
永久磁石12は、
図1及び
図3に示されるように、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、例えば直方体形状を呈していてもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0019】
永久磁石12は、高さ方向から見たときに、磁石挿入孔16の略中央部に位置していてもよいし、磁石挿入孔16に対して偏心した位置に配置されていてもよい。永久磁石12は、
図4及び
図5に例示されるように、後述する凹部22に対して後述する補助凹部24とは反対側における磁石挿入孔16の内壁面寄りに位置していてもよい。
【0020】
固化樹脂14は、
図1〜
図3に示されるように、永久磁石12が挿入された後の磁石挿入孔16内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定する機能と、高さ方向で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。固化樹脂14を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0021】
固化樹脂14の下端部には、
図2及び
図3に示されるように、端部凹部20が形成されている。端部凹部20は、
図4及び
図5により詳しく示されるように、凹部22と、補助凹部24とを含む。
【0022】
凹部22は、下端面S2から永久磁石12に向けて窪んでいる。凹部22は、
図4に例示されるように、下端面S2から永久磁石12まで延びる貫通孔であってもよい。この場合、永久磁石12の下端面の一部は、凹部22を通じて露出しており、凹部22の凹所底面22aをなす。図示はしていないが、凹部22は貫通孔でなくてもよい。すなわち、凹部22の凹所底面22aが固化樹脂14で構成されており、永久磁石12が凹部22を通じて露出していなくてもよい。凹部22は、
図5に例示されるように、磁石挿入孔16の長手方向に沿って延びる凹溝であってもよい。
【0023】
補助凹部24は、
図4及び
図5に示されるように、下端面S2から永久磁石12に向けて窪んでいる。補助凹部24の深さは、凹部22の深さよりも小さい。すなわち、補助凹部24の凹所底面24aは、永久磁石12の下端面に達していない。補助凹部24は、
図5に例示されるように、磁石挿入孔16の長手方向に沿って延びる凹溝であってもよい。
【0024】
補助凹部24は、凹部22の側方近傍に位置している。補助凹部24は、
図4及び
図5に例示されるように、凹部22と連続して隣り合っていてもよい。すなわち、補助凹部24が凹部22と一体化されており、補助凹部24内の空間が凹部22内の空間と連通していてもよい。この場合、補助凹部24と凹部22との間の境界部において階段状の段差が構成される。すなわち、端部凹部20は、断面が階段状を呈する凹部であってもよい。
【0025】
端部凹部20内には、ゲート痕26が設けられている。ゲート痕26は、固化樹脂14と一体的に接続されている。ゲート痕26は、凹部22の凹所底面22a及び補助凹部24の凹所底面24aから外方に向けて突出している。ゲート痕26は、
図4及び
図5に示される例において、凹部22及び補助凹部24の段差に跨がるように設けられている。すなわち、ゲート痕26の一部が凹部22の凹所底面22aから外方に向けて突出しており、ゲート痕26の残部が補助凹部24の凹所底面24aから外方に向けて突出している。ゲート痕26の先端は、下端面S2よりも外側に突出していなくてもよい。すなわち、ゲート痕26は、端部凹部20内に位置していてもよい。
【0026】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、
図6〜
図9を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
【0027】
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、
図6に示されるように、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、磁石取付装置200(樹脂注入装置)と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0028】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0029】
打抜装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して積層体10を製造する機能とを有する。
【0030】
積層体10は、打抜装置130から排出されると、打抜装置130と磁石取付装置200との間を延びるように設けられたコンベアCvに載置される。コンベアCvは、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、積層体10を磁石取付装置200に送り出す。なお、打抜装置130と磁石取付装置200との間において、積層体10はコンベアCv以外によって搬送されてもよい。例えば、積層体10は、コンテナに載置された状態で、人手によって搬送されてもよい。
【0031】
磁石取付装置200は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。磁石取付装置200は、各磁石挿入孔16に永久磁石12を挿通する機能と、永久磁石12が挿通された磁石挿入孔16内に溶融樹脂を充填する機能とを有する。磁石取付装置200は、
図7に詳しく示されるように、下型210と、樹脂ガイド部材220と、上型230と、複数のプランジャ240とを含む。
【0032】
下型210は、上型230との間で樹脂ガイド部材220及び積層体10を挟持する機能と、図示しない内蔵熱源により積層体10を加熱する機能と、積層体10及び樹脂ガイド部材220を支持する機能とを有する。下型210は、例えば矩形状を呈する板状部材であってもよい。
【0033】
下型210には、下型210を貫通する複数の収容孔210aが設けられている。複数の収容孔210aは、下型210と上型230とで積層体10が挟持された状態において各磁石挿入孔16に対応する箇所に位置するように、所定間隔で並んでいる。各収容孔210aは、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂ペレットPを収容可能である。
【0034】
樹脂ガイド部材220は、ベース部材221と、ベース部材221に設けられた挿通ポスト222とを含む。ベース部材221は、積層体10を載置可能に構成されている。ベース部材221は、例えば矩形状を呈する板状部材であってもよい。挿通ポスト222は、ベース部材221の略中央部に位置しており、ベース部材221の上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト222は、円柱形状を呈しており、積層体10の軸孔10aに対応する外形を有する。
【0035】
ベース部材221には、ベース部材221を貫通する複数のゲート孔221aが設けられている。ゲート孔221aは、下型210と上型230とで積層体10が挟持された状態において各磁石挿入孔16及び各収容孔210aに対応する箇所に位置するように、所定間隔で並んでいる。
【0036】
ベース部材221には、ベース部材221の上面から上方に向けて突出する複数の突起223が設けられている。複数の突起223は、ベース部材221に積層体10が載置された状態において各磁石挿入孔16に対応する箇所に位置するように、挿通ポスト222の周囲に沿って所定間隔で並んでいる。
【0037】
突起223は、
図8及び
図9により詳しく示されるように、端部凹部20に対応する形状を呈している。各突起223は、壁体224と、補助壁体225とを含む。
【0038】
壁体224は、凹部22に対応する形状を呈している。壁体224は、
図8に例示されるように、磁石挿入孔16の長手方向に沿って延びる凸条であってもよい。
【0039】
補助壁体225は、補助凹部24に対応する形状を呈している。補助壁体225の高さは、壁体224の高さよりも低い。補助壁体225は、
図8に例示されるように、磁石挿入孔16の長手方向に沿って延びる凸条であってもよい。補助壁体225は、壁体224の側方近傍に位置していてもよい。補助壁体225は、
図8及び
図9に例示されるように、壁体224と一体的に接続されていてもよい。この場合、補助壁体225と壁体224との間の境界部において階段状の段差が構成される。突起223、断面が階段状を呈する凸部であってもよい。
【0040】
突起223には少なくとも一つのゲート孔221aが設けられている。すなわち、ゲート孔221aは、ベース部材221及び突起223を貫通している。ゲート孔221aの吐出口Nは、突起223の上面に開口されている。
図8及び
図9に示される例においては、ゲート孔221aは、壁体224及び補助壁体225の段差に跨がるように設けられている。すなわち、ゲート孔221aの一部が壁体224を貫通しており、ゲート孔221aの残部が補助壁体225を貫通している。この場合、吐出口Nは、壁体224の上面と、壁体224の側面と、補助壁体225の上面とにかけて設けられている。換言すれば、補助壁体225の上面に設けられている吐出口Nの一部は、壁体224の側方近傍に位置している。
【0041】
上型230は、下型210との間で樹脂ガイド部材220及び積層体10を挟持する機能と、図示しない内蔵熱源により積層体10を加熱する機能とを有する。上型230が下型210と共に積層体10を挟持する際、積層体10には高さ方向から所定の荷重が付与される。上型230は、例えば矩形状を呈する板状部材であってもよい。上型230の略中央部には、上型230を貫通する貫通孔230aが設けられている。貫通孔230aは、挿通ポスト222に対応する形状(略円形状)を呈しており、挿通ポスト222が挿通可能である。
【0042】
複数のプランジャ240は、下型210の下方に位置している。各プランジャ240はそれぞれ、図示しない駆動源と接続されている。各駆動源は、コントローラCtrからの指示に基づいて、対応するプランジャ240を動作させるように構成されている。
【0043】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130及び磁石取付装置200をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに当該指示信号をそれぞれ送信する。
【0044】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、
図7及び
図9を参照して、回転子積層鉄心1の製造方法について説明する。ここでは、打抜装置130により積層体10を形成する工程の説明は省略し、その後の工程について説明する。
【0045】
まず、積層体10を磁石取付装置200に搬送して、
図7に示されるように、挿通ポスト222が軸孔10aに挿通された状態となるように樹脂ガイド部材220に積層体10を載置する。換言すれば、積層体10の下端面S2に樹脂ガイド部材220のベース部材221の上面を重ね合わせる。このとき、積層体10の軸孔10aに挿通ポスト222が挿通されると共に、各突起223が一つずつ、対応する磁石挿入孔16内に位置する。
【0046】
次に、各磁石挿入孔16内に永久磁石12を挿入する。このとき、磁石挿入孔16内に挿入された永久磁石12の下端面は、壁体224の上端に当接する。各磁石挿入孔16内への永久磁石12の挿入は、人手で行われてもよいし、コントローラCtrの指示に基づいて、磁石取付装置200が備えるロボットハンド(図示せず)等により行われてもよい。
【0047】
次に、下型210及び上型230によって積層体10及び樹脂ガイド部材220を挟持し、積層体10を所定の圧力で加圧する。このとき、上型230の貫通孔230a内に挿通ポスト222が挿通されると共に、各ゲート孔221aが、対応する収容孔210aとが重なり合う。これにより、収容孔210aと、ゲート孔221aと、磁石挿入孔16とが連通した状態となる。
【0048】
次に、各収容孔210aに樹脂ペレットPを投入する。この状態で、コントローラCtrの指示に基づき下型210及び上型230の内蔵熱源が動作すると、各収容孔210aに収容された樹脂ペレットPが加熱される。これにより、樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂Mに変化する。なお、積層体10は、内蔵熱源により、例えば140℃〜180℃程度に加熱されてもよい。
【0049】
次にコントローラCtrが駆動源に指示して、プランジャ240を動作させる。これにより、所定の射出圧力にて、溶融樹脂Mがゲート孔221aを通じて磁石挿入孔16内に注入される。このとき、
図9に例示されるように、ゲート孔221aの吐出口Nから吐出された溶融樹脂Mは、壁体224の側面及び永久磁石12の下端面に阻まれて、補助壁体225側に向けて流動する。続いて、溶融樹脂Mは、補助壁体225に対して壁体224とは反対側における磁石挿入孔の内壁面と永久磁石12との間を流動する。このとき、溶融樹脂Mの圧力により、永久磁石12が矢印Ar側に向けて移動しうる(
図9参照)。
【0050】
その後、溶融樹脂Mの注入がさらに続いて磁石挿入孔16への溶融樹脂Mの充填が完了し、溶融樹脂Mが固化すると、磁石挿入孔16内に固化樹脂14が形成される。こうして、積層体10に永久磁石12が固化樹脂14と共に取り付けられる。磁石取付装置200から積層体10が取り出されると、回転子積層鉄心1が完成する。
【0051】
このとき、固化樹脂14の下端部には、樹脂ガイド部材220の突起223(壁体224及び補助壁体225)に対応する形状の端部凹部20(凹部22及び補助凹部24)が形成される。また、樹脂ガイド部材220が積層体10から取り外される際に、ゲート孔221a内において固化した固化樹脂が吐出口Nの近傍において破断される。そのため、ゲート孔221a内の固化樹脂の一部が、ゲート痕26として固化樹脂14と一体的に接続された状態となる。なお、溶融樹脂Mの圧力により永久磁石12が矢印Ar側に向けて移動した場合には、永久磁石12は、凹部22に対して補助凹部24とは反対側における樹脂ガイド部材220の内壁面寄りに位置する。
【0052】
[作用]
以上の例によれば、ゲート孔221aの吐出口Nから磁石挿入孔16内に吐出された溶融樹脂Mは、壁体224に阻まれて壁体224とは反対側に流動する。そのため、磁石挿入孔16内に配置されている永久磁石12は、壁体224とは反対側に流動した溶融樹脂Mによって、壁体224側に寄せられる。すなわち、溶融樹脂Mの流動により、磁石挿入孔16内の所定の位置に永久磁石12が配置される。したがって、永久磁石12の磁石挿入孔16に対する位置を適切に管理することが可能となる。
【0053】
以上の例によれば、ゲート孔221aの吐出口Nが壁体224及び補助壁体225にかけて設けられている。すなわち、磁石挿入孔16への溶融樹脂Mの注入時において、吐出口Nが積層体10の下端面S2よりも内側に位置している。そのため、樹脂ガイド部材220が積層体10から取り外される際に、ゲート孔221a内の固化樹脂が積層体10の下端面S2よりも内側において破断されやすくなる。したがって、ゲート痕26が発生したとしても、ゲート痕26の先端が下端面S2よりも外側に突出し難くなる。その結果、ゲート痕26と他の部材との接触が抑制されるので、回転子積層鉄心1の動作時においてゲート痕26の脱落を防ぐことが可能となる。
【0054】
以上の例によれば、ゲート孔221aが壁体224及び補助壁体225に跨がるように設けられている。そのため、吐出口Nから吐出された溶融樹脂Mは、直ちに壁体224に衝突して、壁体224とは反対側に流動しやすくなる。したがって、溶融樹脂Mの流動をより精度よくコントロールできる。その結果、永久磁石12の磁石挿入孔16に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0055】
以上の例によれば、樹脂ガイド部材220が積層体10の下端面S2に重ね合わせられた状態で、積層体10の下側から磁石挿入孔16に溶融樹脂Mが注入されている。そのため、磁石挿入孔16の下端側に位置する壁体224によって、磁石挿入孔16内に配置された永久磁石12が支持される。したがって、ゲート孔221aの吐出口Nから吐出された溶融樹脂Mは、壁体224及び永久磁石12の下端面に阻まれて、壁体224とは反対側に流動しやすくなる。その結果、溶融樹脂Mの流動をより精度よくコントロールでき、永久磁石12の磁石挿入孔16に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0056】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0057】
(1)突起223(壁体224又は補助壁体225)が先細りのテーパ形状を呈していてもよい。例えば、突起223は錐台状を呈していてもよい。この場合、溶融樹脂Mの注入及び硬化後に樹脂ガイド部材220を積層体10から取り外す際、突起223が固化樹脂14から離型しやすくなる。
【0058】
(2)ゲート孔221aの吐出口N近傍の内周面が、先端に向けて先細りのテーパ形状を呈していてもよい。この場合、溶融樹脂Mの注入及び硬化後に樹脂ガイド部材220を積層体10から取り外す際、ゲート孔221a内の吐出口N近傍の固化樹脂に応力が作用しやすくなる。そのため、ゲート痕26を小さくすることができる。したがって、ゲート痕26と他の部材との接触がいっそう抑制されるので、回転子積層鉄心1の動作時においてゲート痕26の脱落を効果的に防ぐことが可能となる。
【0059】
(3)
図10(a)に示されるように、吐出口Nの全部が補助壁体225の上面に開口されていてもよい。すなわち、ゲート孔221aが壁体224を貫通していなくてもよい。
【0060】
(4)
図10(b)に示されるように、突起223が補助壁体225を含んでいなくてもよい。このとき、吐出口Nは、突起223(壁体224)の側方近傍に位置するように、ベース部材221の上面に開口されていてもよい。
【0061】
(5)
図11(a)に示されるように、壁体224が部分的に分割されていてもよい。換言すれば、壁体224に切欠部224aが形成されていてもよい。
【0062】
(6)
図11(b)に示されるように、一つの磁石挿入孔16内に複数の突起223からなる一組の突起ユニットが位置するように、当該突起ユニットがベース部材221に設けられていてもよい。
【0063】
(7)
図12(a)に示されるように、突起223が補助壁体225を含んでいなくてもよい。このとき、ゲート孔221aの一部が突起223(壁体224)に跨がっていてもよい。すなわち、吐出口Nは、ベース部材221の上面と、突起223(壁体224)の側面と、突起223(壁体224)の上面とにかけて設けられていてもよい。この場合、ベース部材221の上面に設けられている吐出口Nの一部は、壁体224の側方近傍に位置している。
【0064】
(8)
図12(b)に示されるように、突起223に設けられている少なくとも一つのゲート孔221aが、全体として突起223に対して偏在していてもよい。すなわち、少なくとも一つのゲート孔221aの吐出口Nは、高さ方向から見て、全体として磁石挿入孔16に対して偏心した位置に設けられていてもよい。この場合、ゲート孔221aの吐出口Nから吐出された溶融樹脂Mは、吐出口Nから離れた空間(
図12(b)の例によれば右側)に向けて、磁石挿入孔16内を斜めに流動しやすくなる。そのため、溶融樹脂Mの流動により、磁石挿入孔16内に対してより柔軟に永久磁石を配置することができる。したがって、永久磁石12の磁石挿入孔16に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0065】
(9)
図8に示されるように、突起223に複数のゲート孔221aが設けられている場合、各ゲート孔221aから注入される溶融樹脂Mの注入条件が異なっていてもよい。例えば、各ゲート孔221aに対して収容孔210a及びプランジャ240が一つずつ対応付けられており、コントローラCtrによって各プランジャ240が独立して駆動されてもよい。この場合、異なる条件(例えば、吐出タイミング、樹脂流量、圧力など)で溶融樹脂Mを複数のゲート孔221aから磁石挿入孔16内に吐出することで、磁石挿入孔16内における溶融樹脂Mの流動に偏りが生ずる。そのため、溶融樹脂Mが全体として磁石挿入孔16内を斜めに流動しやすくなる。したがって、溶融樹脂Mの流動により、磁石挿入孔16内に対してより柔軟に永久磁石12を配置することができる。その結果、永久磁石12の磁石挿入孔16に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0066】
(10)ベース部材221と積層体10との間に樹脂ガイド部材(カルプレート)が配置されていてもよい。この場合、溶融樹脂を磁石挿入孔16に導く樹脂流路(例えば、ランナ溝、ゲート孔)及び突起223が樹脂ガイド部材に形成されていてもよい。積層体10とベース部材221とが直接接しており、ベース部材221側から溶融樹脂が磁石挿入孔16内に注入される場合には、収容孔210aから延びる樹脂流路(ランナ溝)が下型210の上面に設けられていてもよいし、ゲート孔221aから収容孔210aに向けて延びる樹脂流路(ランナ溝)がベース部材221の下面に設けられていてもよい。
【0067】
(11)
図13に示されるように、樹脂ガイド部材220が積層体10の上端面S1に重ね合わされた状態で、積層体10の上側から磁石挿入孔16に溶融樹脂Mが注入されてもよい。
【0068】
図13に示される例において、下型210は、ベース部材211と、ベース部材211に設けられた挿通ポスト212とを含む。挿通ポスト212は、ベース部材211の略中央部に位置しており、ベース部材211の上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト212は、円柱形状を呈しており、積層体10の軸孔10aに対応する外形を有する。
【0069】
図13に示される例において、樹脂ガイド部材220は、挿通ポスト222を含んでおらず、ベース部材221の略中央部にベース部材221を貫通する貫通孔221bが設けられている。貫通孔221bは、挿通ポスト212に対応する形状(略円形状)を呈しており、挿通ポスト212が挿通可能である。樹脂ガイド部材220が積層体10の上端面S1に重ね合わされた状態において、壁体224の先端は、永久磁石12の上端面に接触していてもよいし、わずかに離間していてもよい。
【0070】
図13に示される例において、上型230には、上型230を貫通する複数の収容孔230bが設けられている。複数の収容孔230bは、下型210と上型230とで積層体10が挟持された状態において各磁石挿入孔16に対応する箇所に位置するように、所定間隔で並んでいる。各収容孔230bは、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂ペレットPを収容可能である。
【0071】
(12)複数の永久磁石12が、一つの磁石挿入孔16内に挿入されていてもよい。この場合、複数の永久磁石12は、一つの磁石挿入孔16内において高さ方向に沿って隣り合うように並んでいてもよいし、磁石挿入孔16の長手方向に沿って隣り合うように並んでいてもよい。
【0072】
(13)端部凹部20内にゲート痕26が設けられていなくてもよい。この場合、
図14に示されるように、補助凹部24の凹所底面24aから永久磁石12に向けて延びる空隙部28が固化樹脂14の下端部に設けられていてもよい。空隙部28は、樹脂ガイド部材220が積層体10から取り外される際に、ゲート孔221a内の固化樹脂が、ゲート孔221aの先端近傍(吐出口Nの先端近傍)において破断して、樹脂ガイド部材220と共に除去されることで生ずる。空隙部28が永久磁石12に到達しており、空隙部28を通じて永久磁石12が露出していてもよい。空隙部28は、凹部22及び補助凹部24の段差に跨がるように延びる溝状部であってもよいし、当該段差に跨がることなく補助凹部24の凹所底面24aに開口された凹部であってもよい。
【0073】
[例示]
例1.本開示の一つの例に係る回転子鉄心(1)の製造方法は、鉄心本体(10)と樹脂ガイド部材(220)とを重ね合わせることであって、鉄心本体(1)は磁石挿入孔(16)を含み、樹脂ガイド部材(220)にはその表面から突出する壁体(224)が設けられており、鉄心本体(10)と樹脂ガイド部材(220)とが重ね合わされた状態で、永久磁石(12)が配置された磁石挿入孔(16)内に壁体(224)が位置していることと、樹脂ガイド部材(220)を貫通して延びる少なくとも一つのゲート孔(221a)を通じて磁石挿入孔(16)内に溶融樹脂(M)を注入することであって、少なくとも一つのゲート孔(221a)の吐出口(N)は壁体(224)の側方近傍に設けられていることとを含む。この場合、ゲート孔の吐出口から磁石挿入孔内に吐出された溶融樹脂は、壁体に阻まれて壁体とは反対側に流動する。そのため、磁石挿入孔内に配置されている永久磁石は、壁体とは反対側に流動した溶融樹脂によって、壁体側に寄せられる。すなわち、溶融樹脂の流動により、磁石挿入孔内の所定の位置に永久磁石が配置される。したがって、永久磁石の磁石挿入孔に対する位置を適切に管理することが可能となる。
【0074】
例2.例1の方法において、樹脂ガイド部材(220)には、壁体(224)の側方近傍において樹脂ガイド部材(220)の表面から突出し且つ壁体(224)よりも高さが低い補助壁体(225)が設けられており、少なくとも一つのゲート孔(221a)の吐出口(N)は補助壁体(225)の上面に設けられていてもよい。ところで、溶融樹脂が固化した後に樹脂ガイド部材と鉄心本体とを分離する際に、ゲート孔内の固化樹脂はゲート孔の先端近傍において破断され、磁石挿入孔内の固化樹脂と一体的に接続された状態で回転子鉄心にゲート痕として残ることがある。しかしながら、例2によれば、ゲート孔の吐出口が補助壁体の上面に設けられている。すなわち、当該吐出口が、鉄心本体の端面よりも内側に位置している。そのため、ゲート痕が発生したとしても、ゲート痕の先端が鉄心本体の端面よりも外側に突出し難くなる。したがって、ゲート痕と他の部材との接触が抑制されるので、回転子鉄心の動作時においてゲート痕の脱落を防ぐことが可能となる。
【0075】
例3.例2の方法において、補助壁体(225)は壁体(224)に一体的に接続されており、少なくとも一つのゲート孔(221a)の吐出口(N)は補助壁体(225)と壁体(224)とに跨がるように設けられていてもよい。この場合、吐出口から吐出された溶融樹脂は、直ちに壁体に衝突して、壁体とは反対側に流動しやすくなる。そのため、溶融樹脂の流動をより精度よくコントロールできる。したがって、永久磁石の磁石挿入孔に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0076】
例4.例1〜例3のいずれかの方法において、鉄心本体(10)と樹脂ガイド部材(220)とを重ね合わせることは、鉄心本体(220)の下面(S2)に樹脂ガイド部材(220)を重ね合わせることを含んでいてもよい。この場合、壁体が磁石挿入孔の下端側に位置するので、磁石挿入孔内に配置された永久磁石は壁体によって支持される。そのため、ゲート孔の吐出口から吐出された溶融樹脂は、壁体及び永久磁石の下端面に阻まれて、壁体とは反対側に流動しやすくなる。したがって、溶融樹脂の流動をより精度よくコントロールできる。その結果、永久磁石の磁石挿入孔に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0077】
例5.例1〜例4のいずれかの方法において、少なくとも一つのゲート孔の吐出口(221a)は、鉄心本体(10)の高さ方向から見て、磁石挿入孔(16)に対して偏心した位置に設けられていてもよい。この場合、ゲート孔の吐出口から吐出された溶融樹脂は、当該吐出口から離れた空間に向けて、磁石挿入孔内を斜めに流動しやすくなる。そのため、溶融樹脂の流動により、磁石挿入孔内に対してより柔軟に永久磁石を配置することができる。したがって、永久磁石の磁石挿入孔に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0078】
例6.例1〜例5のいずれかの方法において、少なくとも一つのゲート孔(221a)は複数のゲート孔(221a)を含み、磁石挿入孔(16)内に溶融樹脂(M)を注入することは、複数のゲート孔(221a)を通じて異なる条件で磁石挿入孔(16)に溶融樹脂(M)を注入することを含んでいてもよい。この場合、異なる条件(例えば、吐出タイミング、樹脂流量、圧力など)で溶融樹脂を複数のゲート孔から磁石挿入孔内に吐出することで、磁石挿入孔内における溶融樹脂の流動に偏りが生ずる。そのため、溶融樹脂が全体として磁石挿入孔内を斜めに流動しやすくなる。したがって、溶融樹脂の流動により、磁石挿入孔内に対してより柔軟に永久磁石を配置することができる。その結果、永久磁石の磁石挿入孔に対する位置をより適切に管理することが可能となる。
【0079】
例7.本開示の他の例に係る回転子鉄心(1)は、磁石挿入孔(16)が設けられた鉄心本体(10)と、磁石挿入孔(16)内に配置された永久磁石(12)と、永久磁石(12)を磁石挿入孔(16)内に保持するように磁石挿入孔(16)内に設けられた固化樹脂(14)とを備える。固化樹脂(14)は、鉄心本体(10)の一方の端面(S2)側における端部に形成された凹部(22)と、端部に形成され且つ凹部(22)よりも深さが浅い補助凹部(24)とを含む。補助凹部(24)は凹部(22)の側方近傍に位置している。永久磁石(12)は、凹部(22)に対して補助凹部(24)とは反対側における磁石挿入孔(16)の内壁面寄りに位置している。この場合、樹脂ガイド部材の壁部の存在により、固化樹脂に凹部が形成されると共に、磁石挿入孔内の所定の内壁面寄りに永久磁石が配置される。そのため、永久磁石の磁石挿入孔に対する位置を適切に管理することが可能となる。
【0080】
例8.例7の回転子鉄心(16)において、凹部(22)と補助凹部(24)とは、境界部において階段状をなすように連続して隣り合っていてもよい。
【0081】
例9.例7又は例8の回転子鉄心は、補助凹部(24)の凹所底面(24a)から外方に向けて突出するように固化樹脂(14)に一体的に接続されたゲート痕(26)をさらに備え、ゲート痕(26)の先端は端面(S2)よりも外側には突出していなくてもよい。この場合、ゲート痕と他の部材との接触が抑制されるので、ゲート痕の脱落を防ぐことが可能となる。
【0082】
例10.例7又は例8の回転子鉄心(16)は、補助凹部(24)の凹所底面(24a)から永久磁石(12)に向けて延びる空隙部(28)をさらに備えていてもよい。この場合、ゲート痕が補助凹部内に存在しないので、ゲート痕の脱落の懸念がなくなる。