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特開2020-78260渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-78260(P2020-78260A)
(43)【公開日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20200501BHJP
   A23J 3/06 20060101ALI20200501BHJP
   C07K 14/78 20060101ALI20200501BHJP
   A23L 2/70 20060101ALN20200501BHJP
   A23L 2/02 20060101ALN20200501BHJP
   A23L 2/04 20060101ALN20200501BHJP
   A23L 2/80 20060101ALN20200501BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20200501BHJP
【FI】
   A23L19/00 A
   A23J3/06
   C07K14/78
   A23L2/70 101Z
   A23L2/02 A
   A23L2/04
   A23L2/80
   A23L2/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-212656(P2018-212656)
(22)【出願日】2018年11月13日
(71)【出願人】
【識別番号】518403377
【氏名又は名称】河野 源
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 源
【テーマコード(参考)】
4B016
4B117
4H045
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE05
4B016LG01
4B016LK10
4B016LP01
4B016LP02
4B016LP04
4B117LC10
4B117LG05
4B117LK15
4B117LL09
4B117LP07
4B117LP20
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA53
4H045CA40
4H045CA52
4H045EA60
4H045GA05
(57)【要約】
【課題】渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられた柿果汁を、簡便に且つ低コストで渋柿から製造する方法、及び当該製造方法により得られた柿果汁を提供すること。
【解決手段】渋柿を原料として渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、水溶性柿タンニン含有柿果汁に、加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程を含む、製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渋柿を原料として渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、水溶性柿タンニン含有柿果汁に加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程を含む、製造方法。
【請求項2】
渋柿を原料として、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、
渋柿を破砕及び搾汁する第1工程と、
第1工程で得られたカロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する第2工程と、
第2工程で得られた水溶性柿タンニン含有清澄柿果汁に、加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる第3工程と、
第3工程で水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分を、柿果汁から分離する第4工程とを含む、製造方法。
【請求項3】
渋柿を原料として、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、
渋柿を破砕及び搾汁する第1工程と、
第1工程で得られたカロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する第2工程と、
第2工程で得られた水溶性柿タンニン含有清澄柿果汁に、加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる第3工程と、
第3工程で水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分を、柿果汁から分離する第4工程と、
第4工程で得られた清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁と、第2工程で分離された水不溶性色素画分とを接触させる第5工程とを含む、製造方法。
【請求項4】
前記加熱の温度が、40〜100℃の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記固形状ゼラチンが、ゼラチン粉末である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記固形状ゼラチンの使用量が、前記水溶性柿タンニン含有柿果汁に含まれる水溶性柿タンニン1質量部(タンニン酸換算)に対して、0.3質量部以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記渋柿が、不完全渋柿及び完全渋柿から選ばれる1種以上の渋柿である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
水溶性柿タンニンの含有量がタンニン酸換算で0〜2%(w/v)である、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁。
【請求項9】
水溶性柿タンニンの含有量がタンニン酸換算で0〜2%(w/v)であり、カロテノイドの合計含有量が10×10−6〜30×10−4%(w/v)である、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁。
【請求項10】
クリプトキサンチンの含有量が5×10−6〜15×10−4%(w/v)である、請求項9に記載の低渋味柿果汁。
【請求項11】
水溶性柿タンニン含有柿果汁に、加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程を含む、水溶性柿タンニンを吸着したゼラチンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁の製造方法及び当該製造方法により得られた柿果汁等に関する。
【背景技術】
【0002】
柿は東アジアが主な原産地であり、日本には中国から伝わったとされている。2014年のFAO統計によれば、世界の柿生産量は、中国380万4000トン、韓国42万8000トン、スペイン24万5000トン、日本24万1000トン、ブラジル18万2000トン、アゼルバイジャン14万トン、ウズベキスタン6万6000トン、イタリア3万9000トン、イスラエル3万7000トン、ニュージーランド3000トンであり、これら10ヵ国で世界の全生産量519万1000トンのほぼ100%を占める。
【0003】
また、日本で生産されている柿には、完全甘柿(富有、次郎)、不完全甘柿(筆柿、西村早生)、不完全渋柿(平核無、甲州百目、刀根早生、市田柿、会津身知不柿)、完全渋柿(蜂屋、西条、横野、愛宕)等があり、このうち渋柿の生産量は約40%を占める。不完全渋柿は、アルコールや炭酸ガス等で水溶性柿タンニンを不溶化することにより脱渋化されて生食として消費され、完全渋柿は主に干し柿として消費されている。
また、柿栽培に適する年間平均気温は、甘柿が13℃以上、渋柿が10℃以上とされていて、渋柿の主な生産地は山形県、福島県、和歌山県、奈良県、山梨県、長野県、新潟県、愛媛県であるが、主に栽培されているのは、脱渋化後生食される平核無や刀根早生であり、その他は干し柿加工用である。
【0004】
近年、干し柿の消費者離れから需要が低減しているため、その対策として柿一つ一つに固形のアルコールを入れた袋をかけて渋抜きを行う「樹上脱渋法」で生食できるようにする方法が開発されている。しかしながら、「樹上脱渋法」は、袋掛けの作業が重労働であることや、樹上での甘柿化に伴い猿や鳥等の獣害対策(ネット、トタン囲い等)に費用負担が求められること等が問題として挙げられている。
また、生食用の脱渋柿は、近年の価格低迷により生産量が減少傾向にある他、貯蔵中に急激に軟化して商品価値が低下するという問題もあるため、渋柿の生産量を維持・拡大するために新しい用途開発が求められている。
【0005】
このような背景の下、渋柿の加工食品の開発が最近では盛んになってきているが、渋柿は、アルコールや炭酸ガス等で脱渋化しても加熱処理すると渋戻りするため、飲料への加工は困難とされていた。
そこで、加熱による渋戻りを抑えるために、アルコールや炭酸ガスで庄内柿(平核無)を脱渋化した後で、冷凍保存し、搾汁、繊維除去を行うという特殊な加工技術が開発されている。また、山形県鶴岡市の櫛引農工連は、この技術を利用して渋味のない柿ジュースを工場規模で生産することに成功し、平成22年7月から「庄内柿ジュース」の商品名で本格的な販売を始めた(非特許文献1)。
しかしながら、上記柿飲料の製造方法は、アルコールや炭酸ガスを用いた脱渋化等による製造コストが大きい、操作の工程数が多いという問題がある。また、アルコールや炭酸ガスを用いた脱渋化では、水溶性柿タンニン含有量の調整ができず、渋味が感じられない程度に水溶性柿タンニンを残存させるということはできなかった。
【0006】
また、平均分子量3,000〜5,000の水溶性コラーゲンペプチドを渋柿に加えて粉砕・混合することで水溶性柿タンニンを不溶化する技術が、福島県ハイテクプラザにより開発されている(特許文献1、非特許文献2)。また、株式会社河京は、この技術を利用して「柿ピューレ」を製造し、この柿ピューレを練り込んだうどんを「柿うどん」の商品名で販売している。この柿ピューレは、喜多方身不知柿開発研究会の各メンバーの企業商品(「会津みしらず柿入り 三五八漬けの素」、「柿ゼリー 会津見知らず」、「身不知柿の蒸しどら」)にも使用されている。
しかしながら、この方法には、残存した水溶性コラーゲンペプチドの分離が困難という問題があり、また、製造コストも大きかった。また、水溶性柿タンニン含有量が低減され渋味が抑えられた柿果汁を、上記のような水溶性柿タンニンの不溶化による脱渋処理を行うことなく渋柿から製造する方法については、実用化はされておらず、報告すらなかった。
【0007】
また、山形県工業技術センター庄内試験場は、地元企業と連携して、庄内柿を原料とした柿酢及び柿ペーストの商品開発に成功し、庄内地域を代表する柿加工品として販売している(非特許文献3)。
また、加熱処理や凍結後融解処理等の軟化処理を柿果実に予め行っておき、破砕して得られた柿果肉に、ゼラチン、牛乳、卵白、大豆蛋白(豆乳)等のタンパク質を添加して加熱することで、渋味の少ない柿果肉(柿ジャム、柿ゼリー等)が得られること、さらに当該柿果肉を加圧ろ過や吸引ろ過することにより渋味の少ない果汁が得られることが知られている(特許文献2)。
しかしながら、この方法は、柿果肉を原料とするため、加熱処理や凍結融解処理といった柿果実の前処理が必要であり、また、柿果汁の製造方法として実用化もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4822233号公報
【特許文献2】特開昭60−248150号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】荘内日報、平成22年7月23日
【非特許文献2】平成12年度福島県ハイテクプラザ試験研究報告「県農産物の品質特性の把握と加工適性に関する研究」
【非特許文献3】日本食品科学工学会誌、第61巻(第8号)、339−345、2014年、菅原等「庄内柿の機能性を活かした食品加工技術開発と商品開発」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられた柿果汁を、簡便に且つ低コストで渋柿から製造する方法、及び当該製造方法により得られた柿果汁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者は、水溶性柿タンニン含有柿果汁に加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させることによって、渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられた柿果汁を、簡便に且つ低コストで渋柿から製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の<1>〜<12>を提供するものである。
【0013】
<1> 渋柿を原料として渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、水溶性柿タンニン含有柿果汁に加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程を含む、製造方法。
【0014】
<2> 渋柿を原料として、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、
渋柿を破砕及び搾汁する第1工程と、
第1工程で得られたカロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する第2工程と、
第2工程で得られた水溶性柿タンニン含有清澄柿果汁に、加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる第3工程と、
第3工程で水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分を、柿果汁から分離する第4工程とを含む、製造方法。
【0015】
<3> 渋柿を原料として、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、
渋柿を破砕及び搾汁する第1工程と、
第1工程で得られたカロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する第2工程と、
第2工程で得られた水溶性柿タンニン含有清澄柿果汁に、加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる第3工程と、
第3工程で水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分を、柿果汁から分離する第4工程と、
第4工程で得られた清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁と、第2工程で分離された水不溶性色素画分とを接触させる第5工程とを含む、製造方法。
【0016】
<4> 前記加熱の温度が、40〜100℃の範囲内である、<1>〜<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> 前記固形状ゼラチンが、ゼラチン粉末である、<1>〜<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> 前記固形状ゼラチンの使用量が、前記水溶性柿タンニン含有柿果汁に含まれる水溶性柿タンニン1質量部(タンニン酸換算)に対して、0.3質量部以上である、<1>に記載の製造方法。
<7> 前記渋柿が、不完全渋柿及び完全渋柿から選ばれる1種以上の渋柿である、<1>〜<6>のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
<8> 水溶性柿タンニンの含有量がタンニン酸換算で0〜2%(w/v)である、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁。
<9> 水溶性柿タンニンの含有量がタンニン酸換算で0〜2%(w/v)であり、カロテノイドの合計含有量が10×10−6〜30×10−4%(w/v)である、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁。
<10> クリプトキサンチンの含有量が5×10−6〜15×10−4%(w/v)である、<9>に記載の低渋味柿果汁。
【0018】
<11> 水溶性柿タンニン含有柿果汁に、加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程を含む、水溶性柿タンニンを吸着したゼラチンの製造方法。
【0019】
<12> 渋柿を破砕及び搾汁する第1工程と、第1工程で得られたカロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する第2工程とを含む、カロテノイドを含む水不溶性色素画分の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられた柿果汁を、簡便に且つ低コストで渋柿から製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁の製造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁の製造方法>
本発明の柿果汁の製造方法は、渋柿を原料として渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を製造する方法であって、水溶性柿タンニン含有柿果汁に加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程(以下、第3工程とも称する)を含むものである。
また、上記水溶性柿タンニン含有柿果汁は、柿果汁の呈味や製造効率、カロテノイド含有画分の回収効率等の観点から、カロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する工程(以下、第2工程とも称する)によって得るのが好ましい。このようにしてカロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離しておくことによって、第3工程において、カロテノイドがゼラチン画分とともに沈殿することを防ぐことができ、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁をより簡便に且つ効率よく製造できるようになる。
また、上記カロテノイド含有渋柿搾汁液は、渋柿を破砕及び搾汁する工程(以下、第1工程とも称する)によって得ることができる。
ここで、第1工程〜第3工程について詳細に説明する。
【0023】
(第1工程)
渋柿は、カキノキ(Diospyros kaki)の果実のうち、成熟しても果実の中に水溶性柿タンニンが含まれ、渋みがあるものをいう。
本発明で原料として使用する渋柿としては、不完全渋柿(平核無、甲州百目、刀根早生、市田柿、会津身知不柿等)及び完全渋柿(蜂屋、西条、愛宕、横野等)からなる群から選択される1種又は2種以上の渋柿が挙げられるが、品種は限定されるものではない。本発明によれば、完全渋柿を使用した場合であっても、甘みが十分に感じられ、且つ渋味が十分に抑えられた柿果汁を得ることができる。
渋柿は、破砕及び搾汁に先立ち、洗浄することが好ましい。洗浄手法としては、バブリング洗浄、流水洗浄、シャワー洗浄、ローラーブラシ洗浄、スプレー洗浄等が挙げられ、これらのうち1種の手法で洗浄しても2種以上の手法で洗浄してもよい。また、ヘタ(柿蔕)の切断・除去をしておいてもよい。
【0024】
破砕は、ハンマークラッシャー、チョッパー、パルパーフィニッシャー等の通常の破砕機を用いて行うことができる。
また、搾汁は、ベルトプレス、スクリュープレス等の通常の搾汁機を用いて行うことができる。
なお、渋柿を破砕及び搾汁することにより、カロテノイド含有渋柿搾汁液を得ることができるが、一方で、本工程で分離された不溶性果肉や果皮等は、家畜のエサ等とすることができる。
【0025】
(第2工程)
本工程は、カロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する工程である。
本工程で用いるカロテノイド含有渋柿搾汁液は、カロテノイドの他に、水溶性柿タンニンや果皮・果肉由来の微細な不溶性物質等を含む。このような渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離することにより、水溶性柿タンニン含有清澄柿果汁を得ることができる。なお、水不溶性色素画分の分離に先立ち、カロテノイド含有渋柿搾汁液を酸化防止剤で処理してもよい。
ここで、本明細書において「清澄」とは、例えば、日本薬局方の濁度試験法における目視法に準拠して試験した場合に、少なくとも、「澄明」と判定される程度に濁りがないことをいう。
【0026】
水不溶性色素画分を分離する手法としては、例えば遠心分離が挙げられる。遠心分離は、分離板型、円筒型、デカンター型等の通常の遠心分離機を用いて行うことができる。
遠心分離の回転速度としては、3,000〜100,000rpmが好ましく、5,000〜20,000rpmがより好ましく、5,000〜10,000rpmが特に好ましい。また、大量生産する場合は連続式遠心分離機を用いることが好ましいが、バッチ式遠心分離機を用いることもできる。
【0027】
なお、柿果汁から分離された水不溶性色素画分は、β−カロチン、リコペン、β−クリプトキサンチン等の渋柿由来カロテノイドを含むものである。したがって、抗酸化作用等の生理活性の発現が期待でき、柿果汁飲料や健康食品の素材等として有用である。
【0028】
(第3工程)
本工程は、水溶性柿タンニン含有柿果汁に加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程である。本工程の操作により、柿果汁中の渋味成分である水溶性柿タンニンが、固形状ゼラチンに吸着される。また、この処理をしても、渋柿由来の糖分は柿果汁に残存し、甘みが十分に感じられる柿果汁が得られる。また、この処理によって生成する水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分は、分離特性や沈降性が良好な固形物として生成するため、分離も容易である。また、加熱により、ポリフェノールオキシダーゼ等の渋柿由来の酵素が失活されるとともに殺菌もされるため、柿果汁の品質安定性の向上が期待できる。
【0029】
ここで、固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンが吸着されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、加熱された柿果汁に固形状ゼラチンが添加されたときに、固形状ゼラチン表面のゼラチン分子のヘリックス構造が、温度依存的にランダムコイル状の分子構造となり、これに水溶性柿タンニン分子が速やかに吸着されるものと、本発明者は推察する。また、水溶性柿タンニンを吸着した固形状ゼラチンは、ゲル化せずに沈殿として生成するが、これに関しては、水溶性柿タンニンが速やかに固形状ゼラチンに吸着され、通常のゼラチンゾルを形成できず、水分子の結合による膨潤も抑制され、冷却しても元のらせん構造をとれなくなるためであると、本発明者は推察する。
【0030】
本工程で用いる水溶性柿タンニン含有柿果汁としては、柿果汁の呈味や製造効率等の観点から、水溶性柿タンニン含有清澄柿果汁が好ましい。このような水溶性柿タンニン含有清澄柿果汁を用いることにより、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を簡便に且つ低コストで得ることができる。
本工程で用いる水溶性柿タンニン含有柿果汁に含まれる水溶性柿タンニンの含有量は、タンニン酸換算で、好ましくは1.5%(w/v)超、より好ましくは2%(w/v)超であり、また、好ましくは10%(w/v)以下、より好ましくは7.5%(w/v)以下、特に好ましくは5%(w/v)以下である。
本明細書における水溶性柿タンニンの含有量は、フォーリン・チオカルト法で測定した値をいい、具体的には、実施例の手法と同様にして測定すればよい。
【0031】
また、本工程で用いる水溶性柿タンニン含有柿果汁の糖度(21.4℃)は、柿果汁の甘みの観点から、好ましくは5% Brix以上、より好ましくは10% Brix以上、特に好ましくは12% Brix以上であり、また通常は、25% Brix以下である。
本明細書における糖度は、Brixをいい、具体的には、実施例の手法と同様にして測定すればよい。
【0032】
また、本工程においては、固形状ゼラチンが使用される。そのため、ゼラチン溶液を添加した場合のような柿果汁の希釈化がなく、柿果汁100%の果汁なども簡便に且つ効率よく製造できる。また、ゼラチン溶液を予め調製する工程を省略できるため、簡便であり工業的に有利である。また、固形状ゼラチンでなくゼラチン溶液を使用した場合には、分離特性や沈降性が不良な微細な沈殿が生成される。
【0033】
本工程で用いる固形状ゼラチンとしては、加熱したときに水溶性柿タンニンを吸着するものであれば特に限定されないが、食品用途の市販品があり入手が容易な点で、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンが好ましい。このようなゼラチンとしては、豚(皮、骨)や牛(皮、骨)、魚(皮、鱗)等に由来するものが挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、固形状のゼラチンとしては、ゼラチン粉末、ゼラチン顆粒、板状ゼラチン等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、柿果汁の呈味や製造効率、ハンドリング性等の観点から、ゼラチン粉末が好ましい。
なお、固形状ゼラチンは、公知の方法に従って調製しても市販品を用いてもよい。
【0034】
固形状ゼラチンの使用量は、水溶性柿タンニン含有柿果汁に含まれる水溶性柿タンニンの量に応じて決定すればよい。固形状ゼラチンの使用量は、柿果汁の呈味の観点から、水溶性柿タンニン含有柿果汁に含まれる水溶性柿タンニン1質量部(タンニン酸換算)に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上、特に好ましくは1質量部以上であり、また、製造コストや製造効率の観点から、水溶性柿タンニン含有柿果汁に含まれる水溶性柿タンニン1質量部(タンニン酸換算)に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
なお、得られる柿果汁中の水溶性柿タンニン含有量が所望の含有量になるような固形状ゼラチン使用量を、水溶性柿タンニン含有柿果汁中の水溶性柿タンニン濃度から予備試験の結果に基づいて決定することにより、得られる柿果汁中の水溶性柿タンニン含有量を微調整することもでき、僅かに渋味が感じられるような複雑な味わいの柿果汁を得ることもできる。
【0035】
また、水溶性柿タンニン含有柿果汁に固形状ゼラチンを添加する時の温度は、水溶性柿タンニンの固形状ゼラチンへの吸着率の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上であり、また、製造コストや製造効率の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。
水溶性柿タンニン含有柿果汁の加熱は、プレート式熱交換器、チューブラー式熱交換器等の熱交換器等を用いて行うことができる。また、加熱及び混合時は混合槽のジャケットを介して処理温度を一定に維持することが好ましい。加熱した水溶性柿タンニン含有柿果汁に添加した固形状ゼラチンを混合する時間は、水溶性柿タンニン含有柿果汁の液量に応じて適宜調整すればよい。
なお、「水溶性柿タンニン含有柿果汁に加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加する」具体的な操作としては、例えば、加熱及び混合している水溶性柿タンニン含有柿果汁に、固形状ゼラチンを(徐々に)添加する操作が挙げられる。このようにして予め加熱しておいてから水溶性柿タンニン含有柿果汁と固形状ゼラチンを接触させることによって、凝集体の発生が抑えられ、水溶性柿タンニンの吸着が進行しやすくなる。
【0036】
(第4工程)
本発明の柿果汁の製造方法としては、第3工程で水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分を、柿果汁から分離する第4工程を更に含む方法が好ましい。水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分は、分離特性や沈降性が良好な固形物であるため、遠心分離、ろ過、スクリュープレス等の固液分離操作で、柿果汁から簡便に分離することができる。
【0037】
上記固液分離操作のうち遠心分離は、分離板型、円筒型、デカンター型等の通常の遠心分離機を用いて行うことができる。遠心分離の回転速度としては、3,000〜100,000rpmが好ましく、5,000〜20,000rpmがより好ましく、5,000〜10,000rpmが特に好ましい。また、大量生産する場合は連続式遠心分離機を用いることが好ましいが、バッチ式遠心分離機を用いることもできる。
【0038】
なお、第4工程により、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を得ることができるが、柿果汁から分離された、水溶性柿タンニンを吸着したゼラチン画分は、溶媒抽出等によって水溶性柿タンニンとゼラチンに分離することができる。このゼラチンは、水溶性柿タンニンの吸着に再利用することができ、ゼラチンから分離された水溶性柿タンニンは、殺菌剤や柿渋、石けん、消臭剤、化粧品、塗料などとして使用できる。
【0039】
(第5工程)
また、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁を製造する場合においては、本発明の柿果汁の製造方法としては、第4工程で得られた清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁と、カロテノイド含有組成物とを接触(好ましくは混合)させる第5工程を更に含む方法が好ましい。
カロテノイド含有組成物としては、製造コストや製造効率の観点から、第2工程で分離された水不溶性色素画分が好ましい。第4工程で得られる清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁、第2工程で分離される水不溶性色素画分は、水溶性柿タンニン含有量がともに低いため、第2工程で分離された水不溶性色素画分を用いた場合には、渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられていながら、カロテノイドは含有している柿果汁を得ることができる。
第2工程で分離されたカロテノイド含有水不溶性色素画分を使用する場合、その使用量は、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁1質量部に対して、0.01〜0.1質量部の範囲で調節できる。
【0040】
また、清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁を製造する場合は、第3〜4工程を含む方法で製造するのが好ましく、第2〜4工程を含む方法で製造するのがより好ましく、第1〜4工程を含む方法で製造するのが特に好ましい。
一方、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁を製造する場合は、第3〜5工程を含む方法で製造するのが好ましく、第2〜5工程を含む方法で製造するのがより好ましく、第1〜5工程を含む方法で製造するのが特に好ましい。
【0041】
そして、本発明の柿果汁の製造方法によれば、渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられた柿果汁を、簡便に且つ低コストで工業的に有利に、渋柿から製造することができる。この製造方法で得られた柿果汁は、そのまま又は適当な加工を行うことで、飲料、醸造酒、ゼリー等とすることができる。また、容器に詰めて容器詰柿果汁としてもよい。
【0042】
<清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁>
次に、本発明の柿果汁の製造方法で得られる柿果汁のうち、「清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁」について説明する。
清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁に含まれる水溶性柿タンニンの含有量はタンニン酸換算で、好ましくは0%(w/v)以上、より好ましくは0.0001%(w/v)以上、更に好ましくは0.001%(w/v)以上、特に好ましくは0.005%(w/v)以上であり、また、好ましくは2%(w/v)以下、より好ましくは1.5%(w/v)以下、更に好ましくは1%(w/v)以下、更に好ましくは0.75%(w/v)以下、特に好ましくは0.5%(w/v)以下である。水溶性柿タンニンの含有量をこのような範囲とすることにより、渋味が感じられない程度の低濃度でありながらも水溶性柿タンニンの抗酸化作用や抗ウイルス作用等の生理活性の発現は期待できるものとなる。
【0043】
そして、この清澄な渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁は、渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられており、清澄な外観を有するため、商品価値が高く、飲料、醸造酒、ゼリー等として有用である。
【0044】
<渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁>
次に、本発明の柿果汁の製造方法で得られる柿果汁のうち、「渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁」について説明する。
【0045】
渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁に含まれる水溶性柿タンニンの含有量はタンニン酸換算で、好ましくは0%(w/v)以上、より好ましくは0.0001%(w/v)以上、更に好ましくは0.001%(w/v)以上、特に好ましくは0.005%(w/v)以上であり、また、好ましくは2%(w/v)以下、より好ましくは1.5%(w/v)以下、更に好ましくは1%(w/v)以下、更に好ましくは0.75%(w/v)以下、特に好ましくは0.5%(w/v)以下である。水溶性柿タンニンの含有量をこのような範囲とすることにより、渋味が感じられない程度の低濃度でありながらも水溶性柿タンニンの抗酸化作用や抗ウイルス作用等の生理活性の発現は期待できるものとなる。
【0046】
カロテノイドの合計含有量は、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁中、10×10−6〜30×10−4%(w/v)の範囲に調節できるが、好ましくは10×10−5〜20×10−4%(w/v)の範囲である。
カロテノイドの合計含有量は、吸光光度法で測定される渋柿由来のカロテノイド(β−カロチン、リコペン、β−クリプトキサンチン等)の合計含有量をいう。
【0047】
また、クリプトキサンチンの含有量は、渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁中、5×10−6〜15×10−4%(w/v)の範囲に調節できるが、好ましくは5×10−5〜10×10−4%(w/v)の範囲である。
クリプトキサンチンの含有量は、高速液体クロマトグラフィー法で測定した値をいう。
【0048】
そして、この渋柿由来糖分及びカロテノイド含有低渋味柿果汁は、渋柿由来の糖分を含有し甘みが十分に感じられ、且つ渋味が抑えられたものである。また、渋柿由来カロテノイド(β−カロチン、リコペン、β−クリプトキサンチン等)を含有するため、鮮やかな橙色を呈しており、また、渋柿由来カロテノイドの抗酸化作用等の生理活性の発現が期待でき、商品価値が高く、飲料、醸造酒、ゼリー等として有用である。
【0049】
<水溶性柿タンニンを吸着したゼラチンの製造方法>
また、本発明は、水溶性柿タンニン含有柿果汁に加熱及び混合下で固形状ゼラチンを添加して、当該固形状ゼラチンに水溶性柿タンニンを吸着させる工程を含む、水溶性柿タンニンを吸着したゼラチンの製造方法も提供するものである。この製造方法における固形状ゼラチンの添加工程は、本発明の柿果汁の製造方法における第3工程と同様にして行えばよく、各種文言の意義、各成分の使用量等は「渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁の製造方法」について説明したものと同様である。
【0050】
<カロテノイドを含む水不溶性色素画分の製造方法>
また、本発明は、渋柿を破砕及び搾汁する第1工程と、第1工程で得られたカロテノイド含有渋柿搾汁液から、カロテノイドを含む水不溶性色素画分を分離する第2工程とを含む、カロテノイドを含む水不溶性色素画分の製造方法も提供するものである。この製造方法における第1工程、第2工程は、本発明の柿果汁の製造方法における第1工程、第2工程と同様にして行えばよく、各種文言の意義、各成分の使用量等は「渋柿由来糖分含有低渋味柿果汁の製造方法」について説明したものと同様である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、水溶性柿タンニン濃度は、タンニン酸(米山薬品工業製)を標準品としてフェノール試薬(ナカライテスク製)を使用してフォーリン・チオカルト法で測定した。
また、「苦味・渋味及び甘みの評価」については、下記表1に示す基準にしたがってパネラー5名にサンプルを評価してもらい、その平均値を算出して官能評価の点数とした。
【0052】
【表1】
【0053】
(調製例1:渋柿原料からの水溶性柿タンニン含有柿果汁の調製)
渋柿(愛媛県産の愛宕)約10Kgから、ジューサー(パナソニック社「MJ−L500−S」)を用いて搾汁液を約8Kg(7.4L)得た。搾汁液は、カロテノイドに由来する橙色を呈し、濁度があったので、高速冷却遠心分離機を使用して、9,500rpmで遠心分離を30分間行い、水不溶性カロテノイド含有沈殿画分を除去した。
これにより、清澄な水溶性柿タンニン含有柿果汁(以下、単に「水溶性柿タンニン含有柿果汁」とも称する):約7.5Kg(全回収率約75%)と、水不溶性カロテノイド含有沈殿画分:約0.5Kg(全回収率約5%)とを得た。
水溶性柿タンニン含有柿果汁の水溶性柿タンニン濃度をフォーリン・チオカルト法で、糖度をポータブル型デジタル糖度計(ハンナ インスツルメンツ・ジャパン社「HI 96811」)でそれぞれ測定した結果、水溶性柿タンニン濃度:24.2mg/mL(タンニン酸換算)、糖度:15.2% Brix(21.4℃)であった。
【0054】
(調製例2:固形状ゼラチンの脱渋効果に及ぼす添加時の温度の影響について)
調製例1で得られた水溶性柿タンニン含有柿果汁100mL(水溶性柿タンニン濃度:24.2mg/mL(タンニン酸換算))に、表2に示す温度及び混合下でゼラチン粉末(新田ゼラチン社製)3.6gを徐々に添加し、その温度のまま10分間程度十分に混合攪拌した後、6,800rpmで遠心分離を30分間行った。
得られた遠心上清について、水溶性柿タンニン濃度測定と官能評価を行った。また、調製例1で得られた水溶性柿タンニン含有柿果汁についても同様に官能評価を行った。
結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示すとおり、水溶性柿タンニン含有柿果汁に、40℃以上の温度で固形状ゼラチンを徐々に添加した場合には、水溶性柿タンニンが固形状ゼラチンに吸着され、柿果汁から分離が容易な沈殿が形成された。この沈殿を分離した柿果汁は、渋柿中の糖分由来の甘みが十分に感じられ、且つ水溶性柿タンニン濃度が低く渋味が抑えられたものであった。
また、加熱温度60℃以上の場合に特に甘みが強く渋味が弱いものとなった。
【0057】
(調製例3:固形状ゼラチン添加量の脱渋効果への影響について)
調製例1で得られた水溶性柿タンニン含有柿果汁100mL(水溶性柿タンニン濃度:24.2mg/mL(タンニン酸換算))に、60〜70℃の加熱及び混合下で、水溶性柿タンニン含有柿果汁中の水溶性柿タンニン1質量部(タンニン酸換算)に対して0.5質量部、0.75質量部、1.0質量部又は1.5質量部のゼラチン粉末(新田ゼラチン社製)を徐々に添加し、その温度のまま10分間程度十分に混合攪拌した後、6,800rpmで遠心分離を30分間行った。
得られた遠心上清について、水溶性柿タンニン濃度測定と官能評価を行った。また、調製例1で得られた水溶性柿タンニン含有柿果汁についても同様に官能評価を行った。
結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
固形状ゼラチンの使用量を、水溶性柿タンニン1質量部(タンニン酸換算)に対して、0.7質量部以上(特に1質量部以上)とした場合に、特に甘みが強く渋味が弱いものとなった。
【0060】
(調製例4:カロテノイド含有脱渋柿果汁の調製)
調製例1で得られた水溶性柿タンニン含有柿果汁100mL(水溶性柿タンニン濃度:24.2mg/mL(タンニン酸換算))に、60〜70℃の加熱及び混合下でゼラチン粉末(新田ゼラチン社製)2.4gを徐々に添加し、水溶性柿タンニンをゼラチン粉末に吸着させ、その温度のまま10分間程度十分に混合攪拌した後、6,800rpmで遠心分離を30分間行い、清澄な脱渋柿果汁約80mL(水溶性柿タンニン濃度:1mg/mL(タンニン酸換算))を得た。
この清澄な脱渋柿果汁に、調製例1で得られた水不溶性カロテノイド含有沈殿画分4gを加え、混合攪拌してカロテノイド含有脱渋柿果汁を得た。
このカロテノイド含有脱渋柿果汁について、総カロテノイド含有量を吸光光度法で、クリプトキサンチン含有量を高速液体クロマトグラフィー法で、それぞれ測定したところ、総カロテノイド含有量は11μg/mLであり、クリプトキサンチン含有量は5μg/mLであった。
図1
図2