特開2020-78356(P2020-78356A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2020-78356細胞培養装置、細胞培養方法および培養槽
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-78356(P2020-78356A)
(43)【公開日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】細胞培養装置、細胞培養方法および培養槽
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20200501BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20200501BHJP
【FI】
   C12M1/00 D
   C12N5/07
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-37371(P2020-37371)
(22)【出願日】2020年3月5日
(62)【分割の表示】特願2015-154201(P2015-154201)の分割
【原出願日】2015年8月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 博之
(72)【発明者】
【氏名】南 達哉
(72)【発明者】
【氏名】真柄 泰典
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029CC01
4B029DA01
4B029DB01
4B029DG06
4B029GB04
4B065AA90X
4B065BC08
4B065BC24
4B065CA24
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】浮遊細胞培養系の培地交換を簡易にする。
【解決手段】内部に培地および細胞を収容可能な培養槽と、該培養槽に培地を供給する培地供給手段と、前記培養槽から培地を排出する培地排出手段と、を備えた細胞培養装置であって、前記培養槽は、内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割することができる隔壁と、前記培地供給手段が内部に培地を供給するための供給口と、前記培地排出手段が内部から培地を排出するための排出口とを備え、前記排出口は前記上方空間に開口し、前記隔壁は、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態に切替えることができる細胞培養装置。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に培地および細胞を収容可能な培養槽と、
該培養槽に培地を供給する培地供給手段と、
前記培養槽から培地を排出する培地排出手段と、
を備えた細胞培養装置であって、
前記培養槽は、内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割することができる隔壁と、前記培地供給手段が内部に培地を供給するための供給口と、前記培地排出手段が内部から培地を排出するための排出口とを備え、
前記排出口は前記上方空間に開口し、
前記隔壁は複数の部材を備え、該複数の部材の相対位置を変化させることで前記隔壁の少なくとも一部を開口または閉鎖させ、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態に切り替え可能である細胞培養装置。
【請求項2】
前記複数の部材が板状部材である請求項1に記載の細胞培養装置。
【請求項3】
前記板状部材が蛇腹状に折りたたみ可能であり、
該板状部材を、広げたり折りたたんだりすることで、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態に切り替え可能である請求項2に記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記板状部材が支柱に固定されており、該板状部材を前記支柱を軸として回転移動させることで、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態に切り替える請求項2または3に記載の細胞培養装置。
【請求項5】
前記板状部材は、前記培養槽の内壁に固定された第1の板状部材と、回転可能に配置された前記支柱を軸とした第2の板状部材とを備える請求項4に記載の細胞培養装置。
【請求項6】
前記培養槽が、前記下方空間に培地を撹拌する撹拌手段を備える請求項1から5のいずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項7】
前記培養槽が、前記下方空間に第2の排出口を備える請求項1から6のいずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項8】
培養槽内で浮遊細胞を培養する工程と、
前記浮遊細胞を沈殿させる工程と、
隔壁を用いて培養槽の内部空間を重力方向に沿って上方空間と下方空間に分割する工程と、
前記上方空間の培地を排出し、前記上方空間に新しい培地を供給する工程と、
前記隔壁を開口し、前記上方空間と前記下方空間を連通させる工程と、を含む細胞培養方法。
【請求項9】
前記下方空間に沈殿した細胞を回収する工程を含む請求項8に記載の細胞培養方法。
【請求項10】
前記培養槽内で浮遊細胞を培養する工程が、前記培養槽内で培地を攪拌する工程を含み、
前記浮遊細胞を沈殿させる工程が、前記攪拌を停止することにより前記浮遊細胞を前記下方空間に沈殿させる工程を含む請求項8または9に記載の細胞培養方法。
【請求項11】
内部に培地および細胞を収容可能な培養槽であって、
前記培養槽は、
前記培養槽の内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割することができる隔壁と、
前記培養槽の内部に培地を供給するための供給口と、
前記培養槽の内部から培地を排出するための排出口と、
を備え、
前記排出口は前記上方空間に開口し、
前記隔壁は複数の部材を備え、該複数の部材の相対位置を変化させることで前記隔壁の少なくとも一部を開口または閉鎖させ、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態に切り替え可能である培養槽。
【請求項12】
前記複数の部材が板状部材である請求項11に記載の培養槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養中に培養系の培地を交換することができる細胞培養装置、細胞培養方法および培養槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、幹細胞研究・再生医療の進展や抗体医薬等のバイオ医薬の発展に伴い、細胞を大量に培養することが要求されている。細胞を大量に培養する際、フラスコ、シャーレで培養することにかえ、バイオリアクターなどの培養槽(特許文献1)やガス透過性の素材からなる袋状の培養バッグ(特許文献2)を用いることが多くなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−188777号公報
【特許文献2】特開2000−125848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞は培養中に酸素や栄養分等の生育に必要な成分を取り込み、二酸化炭素や老廃物を排出する。したがって、細胞を長期間にわたって培養すると培地は劣化してしまうので定期的に交換する必要がある。培地を交換するには、作業者の手間とコストがかかるとともに、細胞培養系が細菌などにより汚染されるリスクを生じる。
例えば臨床用途の細胞の調製には厳しい基準に適った培養が必要であり、汚染等リスクを下げるために閉鎖系での培養が有効となるが、閉鎖系での培養中に培地交換するのは非常に困難である。
また、培養対象が浮遊細胞の場合、培地交換をする際に遠心分離などにより培地と細胞を分離する必要があることから作業が煩雑になり、作業者の負担がさらに増加する。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、バイオリアクターなどの培養槽を用いた培養系において、簡易に培地の交換をすることができる細胞培養装置、細胞培養方法および培養槽を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、内部に培地および細胞を収容可能な培養槽と、
該培養槽に培地を供給する培地供給手段と、
前記培養槽から培地を排出する培地排出手段と、
を備えた細胞培養装置であって、
前記培養槽は、内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割することができる隔壁と、前記培地供給手段が内部に培地を供給するための供給口と、前記培地排出手段が内部から培地を排出するための排出口とを備え、
前記排出口は前記上方空間に開口し、
前記隔壁は、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態に切替えることができる細胞培養装置を提供する。
【0007】
本態様によって、浮遊細胞を大量に培養をする場合に、簡易に培地交換を行うことが可能である。つまり、遠心分離等の煩雑な作業により浮遊細胞を分離することなく培地交換を行うことができる。
【0008】
本発明の参考例においては、前記隔壁が開口部を有する弾性部材を備え、該弾性部材に外力を加えているときに前記開口部の大きさが大きくなり、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態になり、前記弾性部材に外力を加えていないときに前記開口部の大きさが小さくなり、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態にしても良い。このことにより、簡易な構成で上方空間と下方空間を分割するこができ、浮遊細胞と培地の分離を行うことができる。
【0009】
本発明の参考例においては、前記弾性部材の開口部を前記下部空間側から塞ぐ弁を備えていてもよい。このことにより、上部空間から培地を排出する際に下部空間から上部空間への培地の流れを止めることができ、細胞が流出するリスクを下げることができる。
【0010】
本発明の参考例においては、前記弾性部材の開口部を押し広げ、培地および細胞が自由に通過可能な網状部材で形成された隔壁押下手段を備えていてもよい。このことにより、簡易な構成で上方空間と下方空間を分割するこができ、浮遊細胞と培地の分離を行うことができる。
【0011】
本発明の上記態様においては、前記隔壁が複数の部材を備え、該複数の部材の相対位置を変化させることで前記隔壁の少なくとも一部を開口または閉鎖させ、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態に切替え可能である。このことにより、簡易な構成で上方空間と下方空間を分割するこができ、浮遊細胞と培地の分離を行うことができる。
【0012】
また、上記態様においては、前記隔壁が蛇腹状に折りたたみ可能な板状部材を備え、該折りたたみ可能な板状部材を、広げたり折りたたんだりすることで、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態に切替えてもよい。このことにより、簡易な構成で上方空間と下方空間を分割するこができ、浮遊細胞と培地の分離を行うことができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記隔壁が支柱に固定された板状部材を備え、該板状部材を前記支柱を軸として回転移動させることで、前記培養槽の内部空間を、前記上方空間と前記下方空間が分割した状態、または、前記上方空間と前記下方空間が連通した状態に切替えてもよい。このことにより、簡易な構成で上方空間と下方空間を分割するこができ、浮遊細胞と培地の分離を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遠心分離等の煩雑な操作によらず、簡易な操作で浮遊細胞と培地の分離を行うことができ、培地交換の作業が簡易となるので、作業者の負担を軽減できるとともに、細菌等による細胞培養系へのコンタミネーションのリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の参考実施形態にかかる細胞培養装置の概略構成を示す説明図である。
図2】本発明の参考実施形態にかかる細胞培養装置の隔壁の概略構成を示す説明図である。
図3】本発明の参考実施形態にかかる細胞培養装置の隔壁の概略構成を示す説明図である。
図4】本発明の参考実施形態にかかる細胞培養装置の変形例の概略構成を示す説明図である。
図5】本発明の参考実施形態にかかる細胞培養装置の変形例の概略構成を示す説明図である。
図6】本発明の参考実施形態にかかる細胞培養装置の隔壁の概略構成を示す説明図である。
図7】本発明の第1実施形態にかかる細胞培養装置の概略構成を示す説明図である。
図8】本発明の第1実施形態にかかる細胞培養装置の隔壁の概略構成を示す説明図である。
図9】本発明の第1実施形態にかかる細胞培養装置の棚部の概略構成を示す説明図である。
図10】本発明の第1実施形態にかかる細胞培養装置の隔壁の概略構成を示す説明図である。
図11】本発明の第2実施形態にかかる細胞培養装置の概略構成を示す説明図である。
図12】本発明の第2実施形態にかかる細胞培養装置を用いた培地交換の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る細胞培養装置について、図面を参照して以下に説明する。
(参考実施形態)
本実施形態に係る細胞培養装置100は、バイオリアクターなどの培養槽で細胞を培養する際に用いる装置で、図1に示される構成の装置である。
細胞培養装置100は、内部に細胞および培地を保持し、内部の環境を細胞培養に適した状態に維持して細胞を培養することができる培養槽1と、培養槽1に培地を供給する培地供給手段3と、培養槽1から培地を排出する培地排出手段4からなる。
【0017】
培養槽1は内部空間を重力方向の上下に隔てる隔壁2を備え、隔壁2は培養槽1の内部を重力方向に上部空間1cと下部空間1dに分けるように培養槽1の内部に配置されている。隔壁2の少なくとも一部は弾性部材からなり、当該弾性部材は小さな開口部2aを有している。弾性部材に外力が加わると開口部2aは広がり大きな開口となり、外力が取り除かれると弾性部材の弾性力より小さな開口に戻る。
開口部2aは、大きな開口の場合は培地および細胞が自由に通過できるが、小さな開口の場合は培地および細胞の通過が阻害される。
【0018】
次に、隔壁2の弾性部材に外力を加える方法の一例について図2を用いて説明する。
図2は隔壁押下手段11により外圧を加える例である。隔壁押下手段11は球体部11aと支柱11bとを備えている。球体部11aを弾性部材の開口部2aに押し付け、支柱11bにより押下すると、弾性部材は下方向に圧力を受けて下部空間1dに向けて突出した状態となると同時に、球体部11aが開口部2aを押し広げた状態となる。ここで、球体部11aは、培地や細胞が自由に通過できる開放空間を形成しており、上部空間1cと下部空間1dを球体部11aを介して連通した状態とすることができる。球体部11aは、例えば、培地や細胞が自由に通過できる網状の部材から形成され、開口部2aを押し広げる圧力に耐え得る強度を有していれば良い。球体部11aの形状は球体に限らず、例えば円錐状の形状をしていても良い。
【0019】
次に、隔壁2の弾性部材に外力を加える方法の別の一例について図3を用いて説明する。
図3は隔壁押下手段12により外圧を加える例である。隔壁押下手段12は、筒状部12aと、筒状部12aの内部に配置された支柱12bと、支柱12bに設置された撹拌手段12cを備えている。
筒状部12aの先端を弾性部材の開口部2aに押し付けて押下すると、弾性部材は下方向に圧力を受けて下部空間1dに向けて突出した状態となると同時に、筒状部12aが開口部2aを押し広げた状態となる。ここで、筒状部12aは、培地や細胞が自由に通過できる開放空間を形成しており、上部空間1cと下部空間1dを筒状部12aを介して連通した状態とすることができる。筒状部12aは、例えば、培地や細胞が自由に通過できる網状の部材から形成され、開口部2aを押し広げる圧力に耐え得る強度を有していれば良い。筒状部12a内部の撹拌手段12cにより培地を撹拌することが可能である。例えば、支柱12bに回転力を与えることで撹拌手段12cを回転させ、培地を撹拌しても良い。
【0020】
培養槽1は、培地供給手段3からの培地が供給される供給口1aと、培地排出手段4へと培地が排出される排出口1bとを備えている。供給口1aおよび排出口1bは上部空間1cに開口している。
排出口1bは、上部空間1c内の培地をほぼ全て排出できるように、上部空間1cの底面付近に開口していることが好ましい。
供給口1aの設置場所は任意であるが、上部空間1cの上部から培地を滴下するように供給できる位置に開口していることが好ましい。こうすることで培地の逆流を防ぐことができ、それより上流部の培地が汚染(コンアタミネーション)されるリスクを軽減できる。また、図1では、上部空間1cに供給口1aが開口しているが、下部空間1dに開口していても良い。
【0021】
次に、本実施形態に係る細胞培養装置100を用いて細胞を培養する手順について一例を説明する。
本装置のユーザは、まず、隔壁押下手段により隔壁2の弾性部材を押下し、上部空間1cと下部空間1dを隔壁押下手段を介して連通した状態とする。この状態で、培養タンク1内に培地および培養対象の細胞(浮遊細胞)を入れ、培養タンク1内を細胞培養に適した温度(例えば37℃)に維持しながら細胞培養を開始する。この時、撹拌手段5により、培地および細胞を適度に撹拌するのが好ましい。
培地交換が必要になった際、ユーザはまず撹拌手段5を停止させ、培地の流れを停止させることにより細胞を重力により沈殿させる。上部空間1cの細胞は、隔壁2に向け沈殿するが、弾性部材が下部空間1dに向けて突出した状態となっているため開口部2aに向け滑り落ち、開口部2aを通過して下部空間1dの底面に沈殿する。
細胞が十分に沈殿した状態で、ユーザは隔壁押下手段を上方向にゆっくりと引き上げ、弾性部材にかかる外力を開放して開口部2aをつぼめ、培養槽1を上部空間1cと下部空間1dに分離する。この際、ほとんどの細胞は下部空間1dに沈殿しており、上部空間1cの培地には若干の細胞が残っているだけの状態となる。
ユーザは、培地排出手段4により上部空間1cの培地を培養槽1から排出し、その後、培地供給手段3により新しい培地を供給する。
ユーザは、隔壁押下手段により隔壁2の弾性部材を押下し、上部空間1cと下部空間1dを隔壁押下手段を介して連通した状態とする。撹拌手段5を作動させ、培地および細胞を適度に撹拌して培養を再開する。
上記工程によれば、上部空間1cに保持された分の培地を新しい培地と交換することができ、培養系の培地の劣化速度を遅くすることが可能となる。
【0022】
次に本実施形態の変形例について説明する。本変形例に係る細胞培養装置200は、図4に示される構成の装置である。
本変形例は、隔壁22が培養槽21から分離可能となっている。隔壁22は枠部22aと枠部22aにはめ込まれた弾性部材22bを備え、弾性部材22bは開口部22cを有している。枠部22aは培養槽21の内部にはまり込む形状をしている。
培養槽21の内部の壁面には棚部21aが固定されており、隔壁22を培養槽21の内部に挿入すると、枠部22aが棚部21aに乗っかる状態となり、培養槽21の内部を上部空間21cと下部空間21dに分離することができる。
細胞培養装置200を用いて、図5に示すように、参考実施形態の細胞培養装置100と同様に細胞培養を行うことができる。図5においては、隔壁押下手段11を用いた例を示したが、隔壁押下手段12を用いても良い。
【0023】
本実施形態および変形例において、図6に示すように、下部空間から上部空間への培地の流れを防止する弁2bを隔壁が備えていても良い。弁2bは、弾性部材に加わる外力が取り除かれ開口部が小さな開口となったときにその開口を塞ぐことができる大きさであれば良い。このことにより、上部空間の培地を培養槽から排出する際に、下部空間から上部空間に培地が流れ込むのを防ぐことができ、細胞を排出してしまうリスクを下げることができる。
【0024】
本実施形態および変形例において、排出口が上部空間に開口している例を示したが、さらに下部空間にも排出口が開口していても良い。このことにより、培養が終了した際に培
地および細胞を回収しやすくなる。
【0025】
(第1実施形態)
本実施形態に係る細胞培養装置300は、図7に示される構成の装置であり、隔壁2に代え、隔壁32を備えている点で参考実施形態と異なっている。それ以外は、参考実施形態と同様である。
【0026】
隔壁32は、参考実施形態の隔壁2と異なり弾性部材を備えておらず、隔壁32を構成する板状部材を移動させることにより、上部空間1cと下部空間1dを連通させたり分離したりすることができる隔壁である。
【0027】
隔壁32の一例を図8に示す。隔壁32は2枚のプロペラ様の板状部材32aおよび板状部材32bを備えており、それぞれ支柱33を同軸として軸周りに相対的に回転できるようになっている。この様な2枚の板状部材が相対的に回転することで、上部空間1cと下部空間1dを連通させたり(図8(b))、上部空間1cと下部空間1dを分離したり(図8(c))することができる。
【0028】
例えば、板状部材32aが培養槽の内壁に固定され、板状部材32bが支柱33に固定されている場合、支柱33を軸として回転させると板状部材32bが板状部材32aに対して相対的に回転し、図8(b)や図8(c)の状態にすることができる。
この時、板状部材および支柱を培養槽内部の所定の場所に配置するために、培養槽内部に棚部を設置し、そこに板状部材および支柱を配置しても良い。例えば図9に示すように、棚部が所定に間隔をあけて培養槽の内壁に固定された2つのリング状部材34から構成され、板状部材32aおよび板状部材32bを2つのリング状部材34の間に配置しても良い。この時、板状部材32aがリング状部材34に固定され、支柱33に固定された板状部材32bが2つのリング状部材34間で可動に配置されていても良い。こうすることで、支柱33を軸として板状部材32bを回転させ、図8(b)や図8(c)の状態にすることができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る細胞培養装置300を用いて細胞を培養する手順について一例を説明する。
本装置のユーザは、まず、支柱33を回転させて2枚の板状部材を相対的に回転させ、上部空間1cと下部空間1dを連通させた状態(図8(b))とする。この状態で、培養タンク1内に培地および培養対象の細胞(浮遊細胞)を入れ、培養タンク1内を細胞培養に適した温度(例えば37℃)に維持しながら細胞培養を開始する。この時、撹拌手段5により、培地および細胞を適度に撹拌するのが好ましい。
培地交換が必要になった際、ユーザはまず撹拌手段5を停止させ、培地の流れを停止させることにより細胞を重力により沈殿させる。上部空間1cの細胞は、隔壁32の開口を通過して下部空間1dの底面に沈殿する。
細胞が十分に沈殿した状態で、ユーザは支柱33を回転させて2枚の板状部材を相対的に回転させ、上部空間1cと下部空間1dを分離した状態(図8(c))にする。この際、ほとんどの細胞は下部空間1dに沈殿しており、上部空間1cの培地には若干の細胞が残っているだけの状態となる。
ユーザは培地排出手段4により上部空間1cの培地を培養槽1から排出し、その後、培地供給手段3により新しい培地を供給する。
ユーザは、支柱33を回転させて2枚の板状部材を相対的に回転させ、上部空間1cと下部空間1dを連通させた状態(図8(b))とする。撹拌手段5を作動させ、培地および細胞を適度に撹拌して培養を再開する。
上記工程によれば、上部空間1cに保持された分の培地を新しい培地と交換することができ、培養系の培地に劣化速度を遅くすることが可能となる。
【0030】
隔壁32の他の一例を図10に示す。隔壁32は蛇腹状に折りたたむことができる板状部材32cを備えている。板状部材32cは支柱33に固定され、それを軸として回転させながら広げたり、折りたたんだりすることができる構成となっている。例えば、板状部材32cの一端が培養槽の内壁に固定され、支柱33を軸として回転させると板状部材32cを広げたり、折りたたんだりすることができ、上部空間1cと下部空間1dを連通させたり(図9(a))、分離したり(図9(b))することができる。
この時、板状部材32cおよび支柱33を培養槽1内部の所定の場所に配置するために、培養槽1内部に棚部35を設置しても良い。
【0031】
(第2実施形態)
本実施形態に係る細胞培養装置400は、図11に示される構成の装置であり、下部空間41dにも排出口を41e有し、当該排出口41eを介して培地排出手段46へ培地が排出される点で上記各実施形態と異なっている。それ以外は、上記各実施形態と同様である。
【0032】
細胞培養装置400は、内部に細胞および培地を保持し、内部の環境を細胞培養に適した状態に維持して細胞を培養することができる培養槽41と、培養槽1に培地を供給する培地供給手43と、培養槽1から培地を排出する培地排出手段44および培地排出手段46とからなる。
【0033】
培養槽1は内部空間を重力方向の上下に隔てる隔壁42を備え、隔壁42は培養槽41の内部を重力方向に上部空間41cと下部空間41dに分けるように培養槽41の内部に配置されている。隔壁42は参考実施形態または第1実施形態に示された隔壁を採用できる。
【0034】
培養槽41は、培地供給手段43からの培地が供給される供給口41aと、培地排出手段44へと培地が排出される排出口41bと、培地排出手段46へと培地が排出される排出口41eとを備えている。供給口41aおよび排出口41bは上部空間41cに開口し、排出口41eは下部空間41dに開口している。
排出口41bは、上部空間41c内の培地をほぼ全て排出できるように、上部空間41cの底面付近に開口していることが好ましい。排出口41eは、下部空間41d内の培地をほぼ全て排出できるように、下部空間41dの底面付近に開口していることが好ましい。
供給口41aの設置場所は任意であるが、上部空間41cの上部から培地を滴下するように供給できる位置に開口していることが好ましい。こうすることで培地の逆流を防ぐことができる。また、図10では、上部空間41cに供給口41aが開口しているが、下部空間41dに開口していても良い。
【0035】
次に、本実施形態に係る細胞培養装置400を用いて細胞を培養する手順の一例について図12で説明する。
本装置のユーザは、まず、隔壁42を開口することで上部空間41cと下部空間41dを連通した状態とする。この状態で、培養タンク41内に培地および培養対象の細胞(浮遊細胞)を入れ、培養タンク41内を細胞培養に適した温度(例えば37℃)に維持しながら細胞培養を開始する。この時、撹拌手段45により、培地および細胞を適度に撹拌するのが好ましい(a)。
培地交換が必要になった際、ユーザはまず撹拌手段45を停止させ、培地の流れを停止させることにより細胞を重力により沈殿させる。上部空間41cの細胞は、隔壁42の開口を通過して下部空間41dの底面に沈殿する。
細胞が十分に沈殿した状態で、ユーザは隔壁42の開口を閉じて培養槽41を上部空間
41cと下部空間41dに分離する。この際、ほとんどの細胞は下部空間41dに沈殿しており、上部空間41cの培地には若干の細胞が残っているだけの状態となる(b)。
ユーザは、培地排出手段46により下部空間41dの培地および細胞を培養槽41から回収する(c)。
ユーザは、隔壁42を開口することで上部空間41cと下部空間41dを連通した状態にして、上部空間41cの培地を下部空間41dへ移動させる(d)。
ユーザは、培地供給手段43により新しい培地を培養槽41に供給し、撹拌手段45を作動させ、培地および細胞を適度に撹拌して培養を再開する(e)。
上記工程によれば、下部空間41dに沈殿した細胞を回収することができ、上部空間41cに残った細胞を基にして細胞培養を継続することができる(細胞の継代に相当する)。この時、下部空間41dから排出された分に相当する培地を新しい培地と交換することができ、培養系の培地の劣化速度を遅くすることが可能となる。
【0036】
本発明の培養槽は、バイオリアクターのような大型のものでも良いし、フラスコのような小さな培養容器でも良い。また、袋状の培養バッグを使い捨てのバイオリアクターとして使用しても良い。
【0037】
本発明によれば、内部に培地および細胞を収容可能であり、内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割した状態、または、上方空間と下方空間が連通した状態に切替えることができる隔壁を備えた培養槽を用いて浮遊細胞を培養する方法であって、次のステップを繰り返す方法を提供する。
・培養槽で浮遊細胞を培養するステップ
・浮遊細胞を沈殿させるステップ
・隔壁により培養槽の内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割するステップ
・上方空間の培地を新しい培地に交換するステップ
・上方空間と下方空間を連通させるステップ
【0038】
本発明によれば、内部に培地および細胞を収容可能であり、内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割した状態、または、上方空間と下方空間が連通した状態に切替えることができる隔壁を備えた培養槽を用いて浮遊細胞を培養する方法であって、次のステップを繰り返す方法を提供する。
・培養槽で浮遊細胞を培養するステップ
・浮遊細胞を沈殿させるステップ
・隔壁により培養槽の内部空間を重力方向で上方空間と下方空間に分割するステップ
・下方空間の培地および細胞を回収するステップ
・上方空間と下方空間を連通させるステップ
・上方空間に新しい培地を供給するステップ
【符号の説明】
【0039】
1 培養槽
2 隔壁
3、43 培地供給手段
4、44,46 培地排出手段
5、45 撹拌手段
11 隔壁押下手段
12 隔壁押下手段
21 培養槽
22 隔壁
32 隔壁
33 支柱
34 リング状部材
35 棚部
41 培養槽
42 隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12