【解決手段】この放射線撮影装置1は、画像生成部7bにより生成された放射線画像Pに画像処理を行う画像処理部7cと、画像処理部7cにおいて画像処理が行われた処理後画像P1を表示する表示部9とを備えている。画像処理部7cは、被検体T内に導入されたバルーン81を拡張させた拡張箇所Eが示された処理後画像P1を作成するように構成されている。
前記画像処理部は、前記画像生成部において生成された前記放射線画像のうちの前記被検体内に導入された前記バルーンの拡張を認識した拡張認識画像に基づいて、前記バルーンの前記拡張箇所を取得する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記放射線画像上のバルーンマーカの位置に基づいて取得される前記放射線画像上の前記バルーンを示す部分の画素値の変化に基づいて、前記拡張認識画像を取得する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記放射線画像における前記バルーンの前記拡張箇所に前記バルーンの形状に沿った図形を前記放射線画像に重畳させて前記処理後画像を作成する制御を行うように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記バルーンによる拡張を複数回行う場合、前記バルーンの前記拡張箇所を記憶するとともに、記憶された前回までの前記バルーンの前記拡張箇所を前記放射線画像に示して前記処理後画像を作成する制御を行うように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記画像生成部において生成された前記放射線画像のうちの前記被検体内に導入された前記バルーンの拡張を認識した拡張認識画像よりも前に生成された前記被検体の造影剤を用いて撮影された造影画像に、前記バルーンの前記拡張箇所を示した拡張箇所確認画像を作成する制御を行うように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記画像生成部において生成された前記放射線画像のうちの前記被検体内に導入された前記バルーンの拡張を認識した拡張認識画像上の特徴点の位置と、前記拡張認識画像上の前記特徴点に対応する前記放射線画像上の特徴点の位置との比較に基づく前記被検体の体動または前記被検体中の対象物の周期的な動きによる変位の検出に基づいて、前記処理後画像に示す前記バルーンの前記拡張箇所を補正する制御を行なうように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記被検体内に導入された前記バルーンの拡張を認識した場合、前記被検体の前記放射線画像の取得が終了したことに基づいて、前記画像生成部において生成された前記放射線画像のうちの前記被検体内に導入された前記バルーンの拡張を認識した拡張認識画像に前記拡張箇所を示した前記処理後画像を記憶する制御を行うように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記画像生成部において生成された前記放射線画像のうちの前記被検体内に導入された前記バルーンの拡張を認識した拡張認識画像の取得、および、前記拡張認識画像の取得後に前記被検体内に導入された前記バルーンの収縮を認識した前記放射線画像である収縮認識画像の取得に基づいて、前記バルーンが拡張していた拡張継続時間を取得し、前記拡張継続時間を前記拡張認識画像に関連付けて記憶する制御を行うように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記画像処理部は、前記拡張箇所に加えて、前記拡張継続時間を含む付帯情報を示した前記処理後画像を作成する制御を行うように構成されている、請求項9に記載の放射線撮影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のX線診断装置では、治療対象部位における血管に対して治療を行った場合、治療対象部位を示す目印が無いため、治療後、被検体内においてバルーンにより行われた治療対象部位(血管の拡張箇所)を確認することが困難になるという不都合がある。つまり、上記特許文献1のX線診断装置では、過去の血管の拡張箇所は、治療前の画像と治療後の画像との比較により確認するか、術者の記憶に基づいて確認する必要がある。このため、バルーンの拡張による被検体内の治療の進行状況を容易に確認することができないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、バルーンの拡張による被検体内の治療の進行状況を容易に確認することが可能な放射線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における放射線撮影装置は、被検体を透過した放射線の検出信号に基づく放射線画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された放射線画像に画像処理を行う画像処理部と、画像処理部において画像処理が行われた処理後画像を表示する表示部とを備え、画像処理部は、被検体内に導入されたバルーンを拡張させた拡張箇所が示された処理後画像を作成する制御を行うように構成されている。
【0009】
この発明の一の局面における放射線撮影装置には、上記のように、被検体内に導入されたバルーンを拡張させた拡張箇所が示された処理後画像を作成する制御を行うように構成された画像処理部を設ける。これにより、バルーンによる治療を行った場合でも、治療後、被検体内においてバルーンにより拡張された拡張箇所を確認することができるので、バルーンの拡張による被検体内の治療の進行状況を容易に確認することができる。
【0010】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、画像生成部において生成された放射線画像のうちの被検体内に導入されたバルーンの拡張を認識した拡張認識画像に基づいて、バルーンの拡張箇所を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、バルーンの拡張を画像処理部により自動で認識することができるので、治療を行っている際に術者にかかる負担を低減することができる。また、圧力計などの他の構成を放射線撮影装置に設けることによりバルーンの拡張を認識する場合と異なり、圧力計などの他の構成を追加することなく既存の放射線撮影装置を用いてバルーンの拡張箇所を取得することができるので、放射線撮影装置の大型化および構成の複雑化を抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、画像処理部は、放射線画像上のバルーンマーカの位置に基づいて取得される放射線画像上のバルーンを示す部分の画素値の変化に基づいて、拡張認識画像を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、バルーンマーカは放射線画像上において明確に識別可能であるので、放射線画像上のバルーンを示す部分を正確に取得することができる。この結果、画像処理部によるバルーンの拡張を正確に認識することができる。
【0012】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、放射線画像におけるバルーンの拡張箇所にバルーンの形状に沿った図形を放射線画像に重畳させて処理後画像を作成する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、処理後画像におけるバルーンの拡張箇所の視認性を向上させることができるので、バルーンの拡張による被検体内の治療の進行状況をより容易に確認することができる。
【0013】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、バルーンによる拡張を複数回行う場合、バルーンの拡張箇所を記憶させるとともに、記憶された前回までのバルーンの拡張箇所を放射線画像に示して処理後画像を作成する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、処理後画像を参照することにより、術者が過去のバルーンの拡張箇所を確認しながら治療を行うことができるので、バルーンの拡張による被検体内の治療をスムーズ(円滑)に行うことができる。
【0014】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、画像生成部において生成された放射線画像のうちの被検体内に導入されたバルーンの拡張を認識した拡張認識画像よりも前に生成された被検体の造影剤を用いて撮影された造影画像に、バルーンの拡張箇所を示した拡張箇所確認画像を作成する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、血管を鮮明に撮影した造影画像にバルーンの拡張箇所を示すことにより、被検体の血管の狭窄箇所と、バルーンの拡張箇所との整合を確認することができるので、被検体の血管の狭窄箇所に対する治療をより確実に行うことができる。
【0015】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、画像生成部において生成された放射線画像のうちの被検体内に導入されたバルーンの拡張を認識した拡張認識画像上の特徴点の位置と、拡張認識画像上の特徴点に対応する放射線画像上の特徴点の位置との比較に基づく被検体の体動または被検体中の対象物の周期的な動きによる変位の検出に基づいて、処理後画像に示すバルーンの拡張箇所を補正する制御を行なうように構成されている。このように構成すれば、被検体の体動または被検体中の対象物の周期的な動きにより処理後画像上でのバルーンの拡張箇所のずれが生じたとしても、バルーンの拡張箇所を補正することができるので、より正確なバルーンの拡張箇所を術者に教示することができる。
【0016】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、被検体内に導入されたバルーンの拡張を認識した場合、被検体の放射線画像の取得が終了したことに基づいて、画像生成部において生成された放射線画像のうちの被検体内に導入されたバルーンの拡張を認識した拡張認識画像に拡張箇所を示した処理後画像を記憶する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、術者による操作を行うことなく、バルーンの拡張箇所を示した放射線画像を確実かつ容易に記録として保存することができるので、バルーンの拡張による被検体内の治療の進行状況を確実に確認することができる。
【0017】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、画像生成部において生成された放射線画像のうちの被検体内に導入されたバルーンの拡張を認識した拡張認識画像の取得、および、拡張認識画像の取得後に被検体内に導入されたバルーンの収縮を認識した放射線画像である収縮認識画像の取得に基づいて、バルーンが拡張していた拡張継続時間を取得し、拡張継続時間を拡張認識画像に関連付けて記憶する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、術者がストップウォッチなどを用いて計測することなく、拡張継続時間を画像処理部により自動で取得することができるので、治療を行っている際に術者にかかる負担を低減することができる。また、バルーンによる被検体の血管の狭窄箇所の過度な拡張または拡張の不足を確認することができるので、被検体の血管の狭窄箇所に対する治療をより安全に行うことができる。
【0018】
この場合、好ましくは、画像処理部は、拡張箇所に加えて、拡張継続時間を含む付帯情報を示した処理後画像を作成する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、バルーンの拡張による被検体内の治療のより詳細な進行状況を拡張箇所とともに確認することができるので、被検体の血管の狭窄箇所に対する治療をよりスムーズ(円滑)に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、バルーンの拡張による被検体内の治療の進行状況を容易に確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜
図13を参照して、本実施形態によるX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、人体などの被検体Tの外側からX線を照射することによって、被検体T内を画像化したX線画像P(透視画像)を撮影する(X線透視撮影を行う)装置である。なお、X線撮影装置1は、特許請求の範囲の「放射線撮影装置」の一例である。また、X線は、特許請求の範囲の「放射線」の一例である。また、X線画像Pは、特許請求の範囲の「放射線画像」の一例である。また、透視画像とは、所定線量よりも低い線量により被検体Tを撮影した画像である。
【0023】
X線撮影装置1は、
図1に示すように、被検体TにX線を照射する照射部2と、被検体Tを透過したX線を検出するX線検出部3とを備えている。照射部2とX線検出部3とは、それぞれ、被検体Tが載置される天板4を挟んで対向するように配置されている。照射部2およびX線検出部3は、移動機構5に移動可能に支持されている。天板4は、天板駆動部4aにより水平方向に移動可能である。移動機構5および天板駆動部4aを介して照射部2、X線検出部3および天板4が移動されることにより、撮影領域が移動される。撮影領域は、被検体Tのうちで、検査および治療のために撮影の対象となる領域である。
【0024】
照射部2は、X線源2aを含んでいる。X線源2aは、図示しない高電圧発生部に接続されており、高電圧が印加されることによりX線を発生させるX線管である。X線源2aは、X線出射方向をX線検出部3の検出面に向けた状態で配置されている。照射部2は、制御部6に接続されている。制御部6は、管電圧、管電流およびX線照射の時間間隔などの予め設定された撮影条件に従って照射部2を制御し、X線源2aからX線を発生させる。
【0025】
X線検出部3は、照射部2から照射され、被検体Tを透過したX線を検出し、検出したX線強度に応じた検出信号を出力する。X線検出部3は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)により構成されている。X線検出部3は、所定の解像度の検出信号を画像処理装置7に出力する。画像処理装置7は、X線検出部3から検出信号を取得して、X線画像P(処理後画像P1、
図3参照)を生成する。
【0026】
図2に示すように、被検体T内に導入される医用デバイス8(バルーンカテーテル)は、血管治療用のバルーン81を含む。バルーン81は、たとえば、動脈硬化またはコレステロールの詰まりによって狭くなった血管を拡げて血流を回復させるバルーン血管形成術(治療)に用いられる。バルーン血管形成術は、内部にガイドワイヤを含む医用デバイス8を被検体Tの血管内に導入し、血管を介して医用デバイス8を血管の治療箇所へ到達させて治療を行うものである。また、バルーン血管形成術は、表面に薬剤を塗布したバルーン81を含む医用デバイス8を血管の治療箇所へ到達させた後、バルーン81を拡張させて血管の内壁に接触させることにより、バルーン81の表面の薬剤を血管の内壁に塗布する治療を行ってもよい。
【0027】
バルーン81は、樹脂(ポリエチレンなど)で形成されている。バルーン81は、空気または滅菌水を注入することにより拡張(膨張)する袋形状である。バルーン81は、血管の治療箇所(狭窄箇所)に配置され、拡張することにより狭窄した血管を拡げる。なお、樹脂製のバルーン81は、周囲の体組織および血管よりもX線透過性が小さい。これにより、樹脂製のバルーン81は、X線画像P上において周囲の体組織および血管よりも暗く表示される。
【0028】
バルーン81には、X線透過性の低い(または不透過の)一対のバルーンマーカ82が目印として設けられている。一対のバルーンマーカ82は、それぞれ、バルーン81の長手方向の一方端部および他方端部に設けられている。ここで、一対のバルーンマーカ82は、X線画像P上において周囲の体組織および血管よりも暗く表示される。
【0029】
ここで、上記した治療とは、血管治療用のバルーン81により、被検体T中の血管の治療箇所において血管を拡げることを示す。
【0030】
X線撮影装置1は、
図1に示すように、照射部2および画像処理装置7の制御、および、移動機構5および天板駆動部4aの駆動制御を行う制御部6を備えている。制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory、図示せず)およびRAM(Random Access Memory、図示せず)などを含んで構成されている。制御部6は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、X線撮影装置1の各部を制御する制御部として機能する。
【0031】
X線撮影装置1は、表示部9、操作部10および記憶部11を備える。表示部9は、たとえば液晶ディスプレイなどのモニタである。表示部9は、後述する画像処理部7cにおいて画像処理が行われた処理後画像P1(
図3参照)を表示する。操作部10は、たとえばキーボードおよびマウス、タッチパネルまたは他のコントローラーなどを含んで構成される。記憶部11は、たとえばハードディスクドライブなどの記憶装置により構成される。制御部6は、画像処理装置7により生成された画像を表示部9に表示させる制御を行うように構成されている。また、制御部6は、操作部10を介した入力操作を受け付けるように構成されている。記憶部11は、画像データ、撮影条件および各種の設定値を記憶するように構成されている。表示部9および操作部10の各々は、画像処理装置7に設けられていてもよい。
【0032】
画像処理装置7は、たとえば、ROMおよびRAMなどの記憶部7aと、CPUあるいはGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサとを含んで構成されている。すなわち、画像処理装置7は、記憶部7aに記憶された画像処理プログラム71をプロセッサに実行させることにより構成される。画像処理装置7は、制御部6と同一のハードウェア(CPU)に画像処理プログラム71を実行させることにより、制御部6と一体的に構成されてもよい。
【0033】
記憶部7aは、コンピュータを画像処理装置7として機能させるための画像処理プログラム71を記憶している。記憶部7aは、後述する画像生成部7bにより連続的に生成されたX線画像Pと、後述する画像処理部7cにより作成された処理後画像P1と、造影剤を注入することにより血管を撮影した造影画像P2と、X線画像Pのうちの後述する拡張認識画像P3と、後述する拡張箇所確認画像P5とを含む画像データ72を記憶可能に構成されている。また、記憶部7aは、X線源2a、X線検出部3および天板4の位置と、X線画像Pの背景画素値を含む画素値を記憶可能に構成されている。
【0034】
画像処理装置7は、画像処理プログラム71を実行することによる機能として、画像生成部7bと、画像処理部7cとを含む。画像生成部7bと画像処理部7cとが専用のプロセッサにより個別に構成されていてもよい。
【0035】
画像生成部7bは、被検体Tを透過したX線の検出信号に基づくX線画像Pを生成するように構成されている。画像生成部7bは、X線検出部3の検出信号に基づき、X線画像Pを動画像の形式で連続的に生成する。すなわち、照射部2から被検体Tに対してX線が所定時間間隔で断続的に照射され、被検体Tを透過したX線がX線検出部3により順次検出される。画像生成部7bは、X線検出部3から順次出力される検出信号を画像化することにより、X線画像Pを所定のフレームレートで連続的に生成する。フレームレートは、たとえば約15FPS〜約30FPS程度である。
【0036】
(画像処理部)
図3に示すように、画像処理部7cは、画像生成部7bにより生成されたX線画像Pに画像処理を行うように構成されている。具体的には、本実施形態の画像処理部7cは、X線画像Pにおけるバルーン81の拡張箇所Eにバルーン81の形状に沿った図形S(枠)をX線画像Pに重畳させて処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。すなわち、画像処理部7cは、X線画像Pによりバルーン81を用いた血管拡張を検出し、検出した血管の拡張箇所Eを過去のバルーン81の拡張箇所EとしてX線画像Pに表示した処理後画像P1を作成するように構成されている。そして、制御部6は、画像処理部7cにより被検体T内に導入されたバルーン81を拡張させた拡張箇所Eを示した処理後画像P1を表示部9(
図1参照)に表示させるように構成されている。
【0037】
画像処理部7cでは、上記したバルーン81を拡張させた拡張箇所Eを示した処理後画像P1を作成するために、以下に説明する処理が行われている。なお、以下の説明では、たとえば、バルーン血管形成術(治療)を下肢において行った場合を例として説明を行う。
【0038】
〈バルーンの拡張箇所の認識〉
まず、
図4〜
図6に示すように、画像処理部7cは、画像生成部7bにおいて生成されたX線画像Pのうちの被検体T内に導入されたバルーン81の拡張を認識した拡張認識画像P3に基づいて、バルーン81の拡張箇所Eを取得する制御を行うように構成されている。すなわち、画像処理部7cは、画像生成部7bにおいて生成された複数のX線画像Pから、バルーン81を拡張させたX線画像Pである拡張認識画像P3を選択するように構成されている。
【0039】
具体的には、画像処理部7cは、X線画像P上の一対のバルーンマーカ82の位置に基づいて取得されるX線画像P上のバルーン81を示す部分の画素値の変化に基づいて、拡張認識画像P3を取得する制御を行うように構成されている。すなわち、画像処理部7cは、連続して収集されるX線画像Pから一対のバルーンマーカ82を検出し、一対のバルーンマーカ82同士の間の部分の画素値の変化に基づいてバルーン81の拡張と収縮とを認識するように構成されている。
【0040】
ここで、バルーン81の拡張および収縮の認識について詳細に説明する。
【0041】
画像処理部7cは、
図4に示すように、収集されたX線画像Pから一対のバルーンマーカ82を検出したことに基づいて、一対のバルーンマーカ82のそれぞれの検出位置から一定サイズの関心領域Rを作成するように構成されている。画像処理部7cは、
図5に示すように、収集された複数のX線画像P中の各々の関心領域Rの画素値を平均化した基準画像R1を作成するように構成されている。ここで、収集されたX線画像Pのうち、バルーン81が拡張したX線画像Pの数よりもバルーン81が収縮したX線画像Pの数の方が多くなるので、基準画像R1は、バルーン81が収縮したX線画像Pの画素値よりも小さくバルーン81が拡張したX線画像Pの画素値よりも大きい画素値を有している。
【0042】
画像処理部7cは、作成した基準画像R1と収集された複数のX線画像P中の各々の関心領域Rとの類似度に基づいて、複数の画像のうちのバルーン81の拡張したX線画像Pである拡張認識画像P3を取得する制御を行うように構成されている。つまり、画像処理部7cは、複数のX線画像P中の各々の関心領域Rの画素値の平均値と作成した基準画像R1の画素値の平均値との差分に基づいて、しきい値より小さい場合にはバルーン81の拡張を認識し、しきい値以上の場合にはバルーン81の収縮を認識するように構成されている。
【0043】
なお、画像処理部7cは、たとえば、作成した基準画像R1と、収集された複数のX線画像P中の各々の関心領域Rとの相関係数に基づいて、バルーン81の拡張および収縮を認識してもよい。また、その他の公知の方法に基づいて、複数のX線画像P中の各々の関心領域Rと作成した基準画像R1との類似度を求めてもよい。
【0044】
画像処理部7cは、
図6に示すように、第1経過時間を経過するまでのバルーン81の状態(たとえば、
図7(A)参照)を収縮状態と認識するように構成されている。画像処理部7cは、第1経過時間から第2経過時間までのバルーン81の状態(たとえば、
図7(B)〜
図7(D)参照)を拡張状態と認識するように構成されている。画像処理部7cは、第2経過時間を経過した後のバルーン81の状態(たとえば、
図7(E)参照)を収縮状態と認識するように構成されている。
【0045】
このようにして、画像処理部7cは、バルーン81の拡張および収縮を認識することにより、収集されたX線画像Pのうちから拡張認識画像P3を取得するように構成されている。そして、画像処理部7cは、一対のバルーンマーカ82の一方側から他方側までの部分を拡張箇所Eとして取得するように構成されている。
【0046】
〈拡張箇所の補正〉
次に、
図8〜
図10に示すように、画像処理部7cは、拡張認識画像P3上の特徴点F1と、拡張認識画像P3上の特徴点F1に対応するX線画像P上の特徴点F2とのずれ量に合わせて、処理後画像P1に表示するバルーン81の拡張箇所Eを補正する制御を行なうように構成されている。すなわち、画像処理部7cは、拡張認識画像P3上の特徴点F1の位置と、拡張認識画像P3上の特徴点F1に対応するX線画像P上の特徴点F2の位置との比較に基づく被検体Tの体動による変位の検出に基づいて、処理後画像P1に示すバルーン81の拡張箇所Eを補正する制御を行なうように構成されている。
【0047】
なお、特徴点F1、F2とは、拡張認識画像P3を含むX線画像P上において画素値が周囲の画素値から急激に小さくなる箇所である。また、体動とは、バルーン81による拡張または造影剤の注入の際に感じる違和感などによる被検体Tの動きを示す。
【0048】
具体的には、画像処理部7cは、拡張認識画像P3上の複数の特徴点F1と、拡張認識画像P3上の複数の特徴点F1のそれぞれに対応するX線画像P上の複数の特徴点F2との差分の平均値の分だけ、処理後画像P1に表示するバルーン81の拡張箇所Eを補正する制御を行なうように構成されている。
【0049】
ここで、バルーン81の拡張箇所Eの補正について詳細に説明する。
【0050】
画像処理部7cは、
図8に示すように、拡張認識画像P3の画素値に基づいて、拡張認識画像P3から複数(3個)の特徴点F1(以下、第1特徴点F11、第2特徴点F12および第3特徴点F13)を抽出するように構成されている。画像処理部7cは、X線画像Pの画素値に基づいて、第1特徴点F11、第2特徴点F12および第3特徴点F13のそれぞれに対応する複数(3個)の特徴点F2(以下、第4特徴点F21、第5特徴点F22および第6特徴点F23)を抽出するように構成されている。ここで、X線画像Pは、拡張認識画像P3において認識された拡張箇所Eの情報を図示したいX線画像Pである。
【0051】
画像処理部7cは、
図9に示すように、特徴量マッチングにより、拡張認識画像P3において抽出した第1特徴点F11、第2特徴点F12および第3特徴点F13のそれぞれと、X線画像Pにおいて抽出した第4特徴点F21、第5特徴点F22および第6特徴点F23とを関連付けるように構成されている。そして、画像処理部7cは、たとえば画像の左上の隅を基準にして、第1特徴点F11(x
1、y
1)と第4特徴点F21(x
4、y
4)との第1変位(Δx
1、Δy
1)を取得するように構成されている。同様にして、画像処理部7cは、第2特徴点F12(x
2、y
2)と第5特徴点F22(x
5、y
5)との第2変位(Δx
2、Δy
2)および第3特徴点F13(x
3、y
3)と第6特徴点F23(x
6、y
6)との第3変位(Δx
3、Δy
3)を取得するように構成されている。ここで、第1変位、第2変位および第3変位の平均値を平均変位(Δx、Δy)とする。
【0052】
画像処理部7cは、
図10に示すように、拡張認識画像P3における一対のバルーンマーカ82の一方側の位置(x
a、y
a)に、平均変位(Δx、Δy)を加算することにより一対のバルーンマーカ82の一方側の位置を補正するように構成されている。また、画像処理部7cは、拡張認識画像P3における一対のバルーンマーカ82の他方側の位置(x
b、y
b)に、平均変位(Δx、Δy)を加算することにより一対のバルーンマーカ82の他方側の位置を補正するように構成されている。これらにより、画像処理部7cは、補正された一対のバルーンマーカ82のそれぞれの位置に基づいて、拡張箇所Eの位置を補正してX線画像P上に拡張箇所Eを示すように構成されている。
【0053】
このようにして、画像処理部7cは、記憶部7aに記憶させたX線画像Pおよび拡張認識画像P3のそれぞれの背景画素値を含む画素値の情報に基づいて拡張箇所Eの補正を行なうように構成されている。なお、上記した拡張箇所Eの補正の方法は一例を示しただけであり、他の公知の方法により拡張箇所Eの補正を行なってもよい。
【0054】
また、画像処理部7cは、拡張認識画像P3を撮像した際のX線源2a、X線検出部3および天板4の位置と、X線画像Pを撮像した際のX線源2a、X線検出部3および天板4の位置との差に基づいて、X線画像P上の拡張箇所Eの補正を行なうように構成されていることが好ましい。画像処理部7cは、拡張認識画像P3の拡大率とX線画像Pの拡大率との差に基づいて、X線画像P上の拡張箇所Eの補正を行なうように構成されていることが好ましい。
【0055】
〈時間計測〉
画像処理部7cは、
図11(A)および
図11(B)に示すように、拡張認識画像P3の取得、および、拡張認識画像P3の取得後に被検体Tに導入されたバルーン81の収縮を認識したX線画像Pである収縮認識画像P4の取得に基づいて、バルーン81が拡張していた拡張継続時間M(
図6参照)を取得し、拡張継続時間Mを拡張認識画像P3に関連付けて記憶部7aに記憶する制御を行うように構成されている。
【0056】
具体的には、画像処理部7cは、X線画像P上の関心領域Rと基準画像R1との類似度がしきい値より小さくなった時点と、X線画像P上の関心領域Rと基準画像R1との類似度がしきい値以上になった時点との差分を拡張継続時間Mとして記憶部7aに記憶させる制御を行うように構成されている。
【0057】
〈自動保存〉
画像処理部7cは、被検体T内に導入されたバルーン81の拡張を認識した場合、被検体TのX線画像Pの取得が終了したことに基づいて、拡張認識画像P3に拡張箇所Eを示した処理後画像P1を記憶部7aに記憶する制御を行うように構成されている。具体的には、画像処理部7cは、X線画像P(透視画像)の記憶部7aへの保存を術者の指示に基づいて任意に行うように構成されているが、治療箇所でのバルーン81の拡張を認識した場合、被検体Tの治療後に拡張認識画像P3に拡張箇所Eを示した処理後画像P1を透視記録として必ず記憶部7aに保存するように構成されている。なお、透視記録とは、被検体TにX線を照射してX線画像P(透視画像)を撮像した際、記憶部7aに記憶されたX線画像P(透視画像)のことを示す。
【0058】
〈拡張箇所確認画像〉
画像処理部7cは、
図12に示すように、拡張認識画像P3よりも前に生成された被検体Tの造影画像P2に、バルーン81の拡張箇所Eを示した拡張箇所確認画像P5を作成する制御を行うように構成されている。
【0059】
具体的には、画像処理部7cは、バルーン81を被検体Tに導入する前に取得して記憶部7aに記憶させた造影画像P2を取得し、取得した造影画像P2におけるバルーン81の拡張箇所Eに、バルーン81の形状に沿った図形Sを表示させて拡張箇所確認画像P5を作成する制御を行うように構成されている。画像処理部7cは、被検体T内に導入されたバルーン81の拡張を認識した場合に拡張箇所確認画像P5を作成する制御を行うように構成されている。そして、制御部6は、画像処理部7cにより作成された拡張箇所確認画像P5を表示部9に表示させるように構成されている。また、拡張箇所確認画像P5は、記憶部7aに記憶される。
【0060】
〈複数の拡張箇所〉
画像処理部7cは、
図13(A)〜
図13(C)に示すように、バルーン81による拡張を複数回(3回)行う場合、バルーン81の拡張箇所Eを記憶部7aに記憶させるとともに、記憶部7aに記憶された前回(2回目)までのバルーン81の拡張箇所EをX線画像Pに示した処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。
【0061】
具体的には、画像処理部7cは、バルーン81による拡張を行うごとにバルーン81の拡張箇所Eを拡張認識画像P3に関連付けて記憶部7aに記憶させるとともに、記憶部7aに記憶された過去のバルーン81の拡張箇所Eの全てにバルーン81の形状に沿った図形Sを重畳させた処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。そして、制御部6は、画像処理部7cにより作成された記憶部7aに記憶された過去のバルーン81の拡張箇所Eの全てにバルーン81の形状に沿った図形Sを重畳させた処理後画像P1を表示部9に表示させるように構成されている。
【0062】
つまり、画像処理部7cは、
図13(A)に示すように、バルーン81による1回目の拡張を行った場合、バルーン81の1回目の拡張箇所Eを1回目の拡張認識画像P3に関連付けて記憶部7aに記憶させる。
【0063】
また、画像処理部7cは、
図13(B)に示すように、1回目のバルーン81の拡張を行ってから2回目のバルーン81の拡張を終了するまでの間、記憶部7aに記憶された1回目のバルーン81の拡張箇所Eにバルーン81の形状に沿った図形Sを重畳させた処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。そして、制御部6は、画像処理部7cにより作成された処理後画像P1を表示部9に表示させる制御を行うように構成されている。画像処理部7cは、バルーン81による2回目の拡張を行った場合、バルーン81の2回目の拡張箇所Eを2回目の拡張認識画像P3に関連付けて記憶部7aに記憶させる。
【0064】
また、画像処理部7cは、
図13(C)に示すように、2回目のバルーン81の拡張を行ってから3回目のバルーン81の拡張を終了するまでの間、記憶部7aに記憶された1回目および2回目のバルーン81のそれぞれの拡張箇所Eにバルーン81の形状に沿った図形Sを重畳させた処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。そして、制御部6は、画像処理部7cにより作成された処理後画像P1を表示部9に表示させる制御を行うように構成されている。画像処理部7cは、バルーン81による3回目の拡張を行った場合、バルーン81の3回目の拡張箇所Eを3回目の拡張認識画像P3に関連付けて記憶部7aに記憶させる。
【0065】
〈付帯情報〉
画像処理部7cは、
図13(B)および
図13(C)に示すように、拡張箇所Eに加えて、拡張継続時間Mを含む付帯情報Dを示した処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。具体的には、画像処理部7cは、バルーン81による拡張を複数回行う場合、バルーン81の拡張箇所Eおよび拡張継続時間Mを含む付帯情報Dを記憶部7aに記憶させる制御を行うように構成されている。また、画像処理部7cは、記憶部7aに記憶された前回までのバルーン81の拡張箇所Eと、前回までのバルーン81の拡張箇所Eに関連付けられた付帯情報Dとを、X線画像Pに示した処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。付帯情報Dは、バルーン81の拡張箇所Eに対応させた位置に示されている。
【0066】
ここで、付帯情報Dとは、血管治療用のバルーン81により、被検体T中の血管の治療箇所において血管を拡げる治療に関する情報を示す。つまり、付帯情報Dは、拡張継続時間Mだけでなく、X線画像P上の関心領域Rと基準画像R1との類似度がしきい値より小さくなった時点である拡張時刻(第1経過時間)、術者による任意のコメント、治療した順番を示す数字または色などを含む概念である。
【0067】
(バルーン拡張箇所表示処理)
以下に、バルーン拡張箇所表示処理について
図14を参照して説明する。バルーン拡張箇所表示処理は、被検体T内においてバルーン81の拡張による治療が行われた拡張箇所E(バルーン拡張箇所)をX線画像Pなどに示す処理である。
【0068】
図14に示すように、ステップS1において、画像処理装置7では、術者の造影剤の注入により、画像処理部7cによる造影画像P2の取得および記憶が行われる。そして、術者により、被検体Tの治療箇所(狭窄箇所)の特定が行われた後、被検体Tの治療箇所の治療が行われる。ステップS2において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、被検体Tを透過したX線のX線検出部3における検出信号を画像生成部7bにより画像化したX線画像Pが取得される。ステップS3において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、バルーン81の拡張を認識したか否かが判断される。すなわち、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、一対のバルーンマーカ82を基準にした関心領域Rにおける画素値の変化からバルーン81の拡張が認識される。画像処理装置7では、バルーン81の拡張を認識した場合には、ステップS4に進み、バルーン81の拡張を認識していない場合には、ステップS2に戻る。
【0069】
ステップS4において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、バルーン81の拡張を認識したことに基づいて、拡張認識画像P3(X線画像P)が取得される。このとき、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、バルーン81の拡張を認識した時間が拡張継続時間Mとして記憶部7aに記憶される。ステップS5において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、X線源2a、X線検出部3および天板4の位置が取得される。そして、画像処理装置7では、画像処理部7cによりX線源2a、X線検出部3および天板4の位置が記憶部7aに記憶される。ステップS6において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、拡張認識画像P3上のバルーンマーカ82の位置が取得される。ステップS7において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、拡張認識画像P3の画素値が取得される。
【0070】
ステップS8において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、バルーン81による拡張前の過去の画像(造影画像P2)にバルーン拡張箇所(拡張箇所E)が図示される。すなわち、治療の最初(バルーン81を被検体Tの体内に導入する前)に取得した造影画像P2にバルーン拡張箇所(拡張箇所E)としてバルーン81の形状に沿った図形Sが表示される。そして、被検体Tの治療箇所の治療が再開される。すなわち、術者により、被検体Tの他の治療箇所の治療が行われる。ステップS9において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、画像生成部7bにおいて生成されたX線画像Pが取得される。ステップS10において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、X線画像P上にバルーン拡張箇所が図示される。
【0071】
ステップS11において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、被検体Tの動き(体動)ありか否かが判断される。画像処理装置7では、被検体Tの動きがあった場合には、ステップS12に進み、被検体Tの動きがない場合には、ステップS13に進む。ステップ12において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、被検体Tの動きの分だけ、X線画像P上に図示されるバルーン拡張箇所が補正される。ステップS13において、画像処理装置7では、術者の造影剤の注入により、画像処理部7cによって再度造影画像P2が取得される。すなわち、予定された治療が完了した際、術者により再度造影画像P2が撮影される。
【0072】
ステップS14において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、再度取得した造影画像P2に全てのバルーン拡張箇所および付帯情報Dが図示される。ステップS15において、画像処理装置7では、画像処理部7cにより、バルーン拡張箇所および付帯情報Dを図示した造影画像P2が記憶部7aに記憶された後、バルーン拡張箇所表示処理が終了される。すなわち、バルーン拡張箇所および付帯情報Dを図示した造影画像P2が治療結果の記録として利用できように記憶部7aに記憶される。
【0073】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
本実施形態では、上記のように、X線撮影装置1に、画像処理部7cは、被検体T内に導入されたバルーン81を拡張させた拡張箇所Eが示された処理後画像P1を作成する制御を行うように構成されている。これにより、バルーン81による治療を行った場合でも、治療後、被検体T内においてバルーン81により拡張された拡張箇所Eを確認することができるので、バルーン81の拡張による被検体T内の治療の進行状況を容易に確認することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、拡張認識画像P3に基づいて、バルーン81の拡張箇所Eを取得する制御を行うように構成する。これにより、バルーン81の拡張を画像処理部7cにより自動で認識することができるので、治療を行っている際に術者にかかる負担を低減することができる。また、圧力計などの他の構成をX線撮影装置1に設けることによりバルーン81の拡張を認識する場合と異なり、圧力計などの他の構成を追加することなく既存のX線撮影装置1を用いてバルーン81の拡張箇所を取得することができるので、X線撮影装置1の大型化および構成の複雑化を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、X線画像P上のバルーンマーカ82の位置に基づいて取得されるX線画像P上のバルーン81を示す部分の画素値の変化に基づいて、拡張認識画像P3を取得する制御を行うように構成する。これにより、バルーンマーカ82はX線画像P上において明確に識別可能であるので、X線画像P上のバルーン81を示す部分を正確に取得することができる。この結果、画像処理部7cによるバルーン81の拡張を正確に認識することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、X線画像Pにおけるバルーン81の拡張箇所Eにバルーン81の形状に沿った図形SをX線画像Pに重畳させて処理後画像P1を作成する制御を行うように構成する。これにより、処理後画像P1におけるバルーン81の拡張箇所Eの視認性を向上させることができるので、バルーン81の拡張による被検体T内の治療の進行状況をより容易に確認することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、バルーン81による拡張を複数回行う場合、バルーン81の拡張箇所Eを記憶部7aに記憶させるとともに、記憶部7aに記憶された前回までのバルーン81の拡張箇所EをX線画像Pに示して処理後画像P1を作成する制御を行うように構成する。これにより、処理後画像P1を参照することにより、術者が過去のバルーン81の拡張箇所Eを確認しながら治療を行うことができるので、バルーン81の拡張による被検体T内の治療をスムーズ(円滑)に行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、造影画像P2に、バルーン81の拡張箇所Eを示した拡張箇所確認画像P5を作成する制御を行うように構成する。これにより、血管を鮮明に撮影した造影画像P2にバルーン81の拡張箇所Eを示すことにより、被検体Tの血管の狭窄箇所と、バルーン81の拡張箇所Eとの整合を確認することができるので、被検体Tの血管の狭窄箇所に対する治療をより確実に行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、拡張認識画像P3上の特徴点F1の位置と、X線画像P上の特徴点F1の位置との比較に基づく被検体Tの体動による変位の検出に基づいて、処理後画像P1に示すバルーン81の拡張箇所Eを補正する制御を行なうように構成する。これにより、被検体Tの体動により処理後画像P1上でのバルーン81の拡張箇所Eのずれが生じたとしても、バルーン81の拡張箇所Eを補正することができるので、より正確なバルーン81の拡張箇所Eを術者に教示することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、被検体T内に導入されたバルーン81の拡張を認識した場合、被検体TのX線画像Pの取得が終了したことに基づいて、拡張認識画像P3に拡張箇所Eを示した処理後画像P1を記憶部7aに記憶する制御を行うように構成する。これにより、術者による操作を行うことなく、バルーン81の拡張箇所Eを示したX線画像Pを確実かつ容易に記録として保存することができるので、バルーン81の拡張による被検体T内の治療の進行状況を確実に確認することができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、拡張認識画像P3の取得、および、収縮認識画像P4の取得に基づいて、バルーン81が拡張していた拡張継続時間Mを取得し、拡張継続時間Mを拡張認識画像P3に関連付けて記憶部7aに記憶する制御を行うように構成する。これにより、術者がストップウォッチなどを用いて計測することなく、拡張継続時間Mを画像処理部7cにより自動で取得することができるので、治療を行っている際に術者にかかる負担を低減することができる。また、バルーン81による被検体Tの血管の狭窄箇所の過度な拡張または拡張の不足を確認することができるので、被検体Tの血管の狭窄箇所に対する治療をより安全に行うことができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部7cを、拡張箇所Eに加えて、拡張継続時間Mを含む付帯情報Dを示した処理後画像P1を作成する制御を行うように構成する。これにより、バルーン81の拡張による被検体T内の治療のより詳細な進行状況を拡張箇所Eとともに確認することができるので、被検体Tの血管の狭窄箇所に対する治療をよりスムーズ(円滑)に行うことができる。
【0084】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0085】
たとえば、上記実施形態では、バルーン血管形成術(治療)を下肢において行う場合に、画像処理部7cが、バルーン81を拡張させた拡張箇所Eを示した処理後画像P1を作成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、下肢以外の部位において、画像処理部が、バルーンを拡張させた拡張箇所を示した処理後画像を作成してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、画像処理部7cは、X線画像Pにおけるバルーン81の拡張箇所Eにバルーン81の形状に沿った図形S(枠)をX線画像Pに重畳させて処理後画像P1を作成する制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部は、X線画像におけるバルーンの拡張箇所に、矢印または円などをX線画像に重畳させて処理後画像を作成する制御を行うように構成されてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、画像処理部7cは、X線画像P上の一対のバルーンマーカ82の位置に基づいて取得されるX線画像P上のバルーン81を示す部分の画素値の変化に基づいて、拡張認識画像P3を取得する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部は、医用デバイスに接続される圧力計の測定値またはバルーン拡張による画素値の変化に基づいて、拡張認識画像を取得する制御を行ってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、バルーン81には、一対(2個)のバルーンマーカ82が目印として設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、バルーンには、1個または3個以上のバルーンマーカが目印として設けられていてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、画像処理部7cは、被検体Tの体動による変位の検出に基づいて、処理後画像P1に表示するバルーン81の拡張箇所Eを補正する制御を行なうように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。画像処理部は、被検体の周期的に動く臓器(心臓など)といった対象物による変位の検出に基づいて、処理後画像に表示するバルーンの拡張箇所を補正する制御を行なうように構成されていてもよい。つまり、画像処理部は、心拍および呼吸などの周期的な動きの変化に基づく位相情報を、個々のX線画像を解析することによって取得するように構成されていてもよい。なお、X線画像から取得した位相情報に基づいて、位相情報を取得したX線画像と略一致する位相のX線画像を選択して、異なるX線画像から同一物体の位置を特定する方法としては、本出願人による特開2017−94006号公報に詳細に開示された内容を採用することができる。本明細書では、この特開2017−94006号公報の記載を参照により引用する。
【0090】
また、上記実施形態では、画像処理部7cは、被検体TにX線を曝射している際に画像生成部7bにおいて生成されたX線画像Pに拡張箇所Eを示した処理後画像P1を作成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部は、記憶部に記憶された収集済みのX線画像、記憶部に記憶された収集済みの複数のX線画像を繋げた長尺画像、または、術者により造影剤を注入して撮影された造影画像に拡張箇所を示した処理後画像を作成してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、画像処理部7cは、拡張認識画像P3の画素値に基づいて、拡張認識画像P3から3個の特徴点F1を抽出するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部は、拡張認識画像の画素値に基づいて、拡張認識画像から1、2または4個以上の特徴点を抽出するように構成されてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、画像処理部7cは、X線画像P上の関心領域Rと基準画像R1との類似度がしきい値より小さくなった時点と、X線画像P上の関心領域Rと基準画像R1との類似度がしきい値以上に時点との差分を拡張継続時間Mとして記憶部7aに記憶させる制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部は、拡張継続時間を取得した後の処理において、術者により拡張継続時間の変更の指示を受け付けた場合には、拡張継続時間の変更を可能なように構成されていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、バルーン81による拡張が3回行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、バルーンによる拡張が2または4回以上行われてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、画像処理部7cは、治療の最初(バルーン81を被検体Tの体内に導入する前)に取得した造影画像P2に拡張箇所Eとしてバルーン81の形状に沿った図形Sを表示する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部は、造影画像にバルーン拡張箇所としてバルーンの形状に沿った図形を表示する制御を行なわないように構成されていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、画像処理部7cの処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、治療対象部位に対してバルーン81を拡張する治療について、バルーン81を拡張させた拡張箇所Eが示された処理後画像P1を作成する構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、バルーンの拡張により治療対象部位に対してステントなどのデバイスを留置する治療に対しても適用することができる。一般的に、ステントなどのデバイスを放射線画像上で視認することは困難であり、視認のためにはステントなどのデバイスの強調処理等の特殊な処理が必要となる。しかしながら、本発明の適用により、ステントなどのデバイスの留置箇所が示された処理後画像を容易に作成することができるため、術者はステントなどのデバイスの留置箇所を放射線画像上で容易に視認することができる。