【解決手段】撮影装置30は、移動する対象物の位置情報となる第1座標値を取得する座標値取得部32と、前記対象物の画像を撮影する撮影部31と、前記第1座標値及び撮影部31の位置情報となる第2座標値に基づいて、撮影部31と前記対象物とを結ぶ光軸の方向及び前記光軸上における前記対象物と撮影部31との間の距離を算出する方向・距離算出部33と、撮影部31の姿勢を、算出された前記光軸の方向に基づいて制御する姿勢制御部34と、撮影部31における前記対象物の撮影倍率を、算出された前記距離に基づいて設定する撮影倍率設定部35と、を備え、移動する前記対象物に対して、撮影部31の姿勢及び前記対象物の撮影倍率を変動させながら前記対象物を撮影する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る撮影装置及び工作機械の実施形態について説明する。
本明細書に添付した図面は、いずれも概念図又は模式図であり、理解のしやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を実物から変更又は誇張している。
【0013】
図1は、本実施形態における工作機械1の構成を示す概念図である。
なお、本明細書及び図面においては、部材の位置、移動方向等を明確にするため、XYZの互いに直交する座標軸を設定した。この座標軸では、工作機械1を水平な床面(不図示)に設置した状態で、工作機械1を正面(後述する主軸11側)から見たときの左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下(鉛直)方向をZ軸方向とする。X軸方向においては、右方向をX1方向、左方向をX2方向とする。Y軸方向においては、前方向をY1方向、後方向をY2方向とする。Z軸方向においては、上方向をZ1方向、下方向をZ2方向とする。また、本明細書においては、「方向」を適宜に「側」ともいう。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の工作機械1は、工作機械本体10と、数値制御装置20と、撮影装置30と、を備える。
工作機械本体10は、主軸11、主軸ヘッド12、コラム13、ベース部14、ワークテーブル15を備える。工作機械本体10の動作は、後述する数値制御装置20(
図2参照)により制御される。
【0015】
<工作機械本体10>
主軸11は、工具ホルダ(不図示)に装着された工具16を回転させたり、工具16が装着された工具ホルダを固定したまま保持したりする部分である。工具16は、加工目的に合わせて複数の種類が用意されている。各工具16は、それぞれ専用の工具ホルダに装着された状態で交換される。工具16には、それぞれ固有の工具番号(識別番号)が割り当てられている。
【0016】
主軸ヘッド12は、主軸11を回転させる駆動機構である。主軸ヘッド12は、主軸11に回転力を付与する主軸モータ220等(
図2参照)を備える。主軸モータ220は、例えば、主軸11に取り付けられた回転工具により切削加工を行う場合、連続的に高速回転するスピンドルモータとして機能する。図示していないが、主軸ヘッド12には、主軸11に取り付けられた工具ホルダを自動的に交換する工具交換装置が設けられている。工具ホルダの交換は、シーケンスプログラムに基づいて自動的に実行される。
【0017】
コラム13は、主軸ヘッド12を上下方向(Z軸方向)に移動自在に支持する部分である。コラム13は、主軸ヘッド12を上下方向に移動させる昇降機構(不図示)を備える。この昇降機構には、主軸ヘッド12を、コラム13に対して上下方向に移動させるためのZ軸モータ226、エンコーダ227(
図2参照)等が設けられている。昇降機構の動作は、Z軸モータ制御部217(後述)により制御される。なお、主軸ヘッド12は、上下方向(Z軸方向)には移動するが、ワークWに対して相対的に左右方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)には移動しない。
【0018】
ベース部14は、コラム13及び昇降機構(不図示)を支持する部分である。また、ベース部14は、ワークテーブル15を支持する。
ワークテーブル15は、ワークWを左右方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動可能に支持する機構である。ワークテーブル15には、後述するX軸モータ222、Y軸モータ224、エンコーダ223、225(
図2参照)等が設けられている。本実施形態の工作機械本体10は、ワークWをX−Y軸方向に移動させながら、工具16をZ軸方向に移動させることによりワークWを加工する。
【0019】
<数値制御装置20>
次に、工作機械本体10の動作を制御する数値制御装置20の構成について説明する。
図2は、工作機械本体10及び数値制御装置20の電気的な構成を示すブロック図である。
数値制御装置20は、工作機械本体10に所定の切削加工を実行させたり、昇降機構(不図示)の動作を制御したりする装置である。数値制御装置20は、例えば、シーケンスプログラムに基づいて、各軸に対する移動指令、各部を駆動するモータへの回転指令等を含む動作指令を作成し、この動作指令を工作機械本体10に送信する。これにより、数値制御装置20は、各装置に設けられたモータを制御して、工作機械本体10による切削加工を実行する。
【0020】
図2に示すように、数値制御装置20は、プロセッサ201、ROM202、RAM203、SRAM204、PMC205、I/Oユニット206、表示部207、表示制御部208、操作入力部209、入力制御部210を備える。また、数値制御装置20は、スピンドル制御部211、スピンドルアンプ212、X軸モータ制御部213、サーボアンプ214、Y軸モータ制御部215、サーボアンプ216、Z軸モータ制御部217、サーボアンプ218を備える。数値制御装置20において、上記各部が直接的又は間接的にバス219を介して相互に電気的に接続されている。また、数値制御装置20には、主軸モータ220、ポジションコーダ221、X軸モータ222、エンコーダ223、Y軸モータ224、エンコーダ225、Z軸モータ226、エンコーダ227が電気的に接続されている。
【0021】
プロセッサ(CPU)201は、ROM202に格納されたシステムプログラムを読み出し、そのシステムプログラムに従って数値制御装置20の全体を制御する。
RAM203には、プロセッサ201により使用される計算データ、表示データ、オペレータにより入力された各種データが一時的に格納される。また、RAM203には、例えば、工具番号と対応付けられた情報(長さL、拡大率r0)、工具16の座標値(X軸座標値Xt、Y軸座標値Yt、Z軸座標値Zt)、カメラ31の座標値(X軸座標値Xc、Y軸座標値Yc、Z軸座標値Zc)、カメラ31で撮影された画像データ等が格納される。なお、RAM203に保存される各種データの少なくとも一部を、撮影装置30(後述)に記憶させてもよい。
SRAM204は、数値制御装置20の電源がオフしても記憶内容が保持される不揮発性メモリとして構成される。
【0022】
PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)205は、数値制御装置20に内蔵されたシーケンスプログラムで定められた順序、加工条件等に従って工作機械本体10を制御する。PMC205は、シーケンスプログラムにより変換された各種信号を、I/Oユニット206を介して撮影装置30及び外部装置(不図示)に出力する。また、PMC205は、オペレータが操作入力部209から入力した信号を取得し、所定の信号処理を施した後、プロセッサ201へ受け渡す。
【0023】
表示部207は、各種データ、設定内容、オペレーションの状態等を表示可能なディスプレイ装置である。表示制御部208は、表示部207の表示内容を制御する。操作入力部209は、オペレータが各種の設定データ、数値データ、動作指示等を入力可能な装置である。操作入力部209は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等(不図示)により構成される。入力制御部210は、操作入力部209から入力されたデータ、指示等を取得して、RAM203等に格納する。
【0024】
スピンドル制御部211は、主軸11の回転を制御する。スピンドル制御部211は、プロセッサ201からの主軸回転指令を受けて、スピンドルアンプ212にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ212は、スピンドル速度信号に指令された回転速度で主軸モータ220を駆動する。ポジションコーダ221は、主軸モータ220の回転に同期した帰還パルスをスピンドル制御部211に出力する。スピンドル制御部211は、ポジションコーダ221から出力された帰還パルスに基づいて、主軸モータ220の速度のフィードバック制御を行う。
【0025】
X軸モータ制御部213は、ワークテーブル15の左右方向(X軸方向)の移動を制御する。X軸モータ制御部213は、プロセッサ201からの移動指令量を受けて、サーボアンプ214にトルク指令値を出力する。サーボアンプ214は、X軸モータ制御部213から出力されたトルク指令値に従って、X軸モータ222に駆動電流を供給する。エンコーダ223は、X軸モータ222の位置、速度を検出して、X軸モータ制御部213に位置・速度フィードバック信号を出力する。X軸モータ制御部213は、エンコーダ223から出力された位置・速度フィードバック信号に基づいて、X軸モータ222の位置、速度のフィードバック制御を行う。このフィードバック制御により、ワークテーブル15の左右方向(X軸方向)の位置が調整される。
【0026】
Y軸モータ制御部215は、ワークテーブル15の前後方向(Y軸方向)の移動を制御する。Y軸モータ制御部215がY軸モータ224の動作を制御するプロセスは、上述したX軸モータ制御部213と同じであるため、説明を省略する。Y軸モータ制御部215によりY軸モータ224の位置、速度のフィードバック制御が行われることにより、ワークテーブル15の前後方向(Y軸方向)の位置が調整される。
【0027】
Z軸モータ制御部217は、主軸ヘッド12の昇降機構(不図示)において、主軸ヘッド12の上下方向(Z軸方向)の移動を制御する。Z軸モータ制御部217が主軸ヘッド12に設けられたZ軸モータ226の動作を制御するプロセスは、上述したX軸モータ制御部213と同じであるため、説明を省略する。Z軸モータ制御部217によりZ軸モータ226の位置、速度のフィードバック制御が行われることにより、主軸ヘッド12の上下方向(Z軸方向)の位置が調整される。
【0028】
<撮影装置30>
次に、撮影装置30の構成について説明する。
図3は、撮影装置30の電気的な構成を示すブロック図である。
図4Aは、工具16とカメラ31との位置関係を概念的に示す平面図である。
図4Bは、工具16とカメラ31との位置関係を概念的に示す側面図である。
図5は、工具16とカメラ31との位置関係を概念的に示す斜視図である。
図3に示すように、撮影装置30は、カメラ(撮影部)31、情報取得部(座標値取得部、長さ情報取得部、拡大率取得部)32、方向・距離算出部33、姿勢制御部34及び撮影倍率設定部35を備える。
【0029】
カメラ31は、主軸11に装着された工具16(対象物)がワークWを加工する画像を撮影する装置(ビデオカメラ)である。カメラ31(後述)の撮影倍率は、ズーム倍率を調節することにより変更できる。カメラ31は、XYZ軸方向の中心位置(後述する基準点A3)が固定された状態で、姿勢制御部34(後述)により姿勢が制御される。カメラ31の姿勢が制御されることにより、カメラ31の光軸の方向が調整される。カメラ31で撮影された画像(動画像)は、撮影装置30の本体を介して数値制御装置20に送信され、RAM203(
図2参照)に格納される。なお、カメラ31は、静止画像を撮影する装置(スチルカメラ)であってもよい。
【0030】
情報取得部32は、座標値、工具番号(識別番号)、工具番号に対応付けられた各種の情報を取得する。
情報取得部32は、座標値取得部として、上下方向(Z軸方向)に移動する工具16の位置情報となる第1座標値を取得する。工具16の第1座標値は、
図4Bに示すように、工具16の先端部Tの位置となる。工具16の第1座標値は、ワークテーブル15の基準点A1を基準として、X軸座標値Xt、Y軸座標値Yt、Z軸座標値Ztにより表される。このうち、X軸座標値Xt及びY軸座標値Ytは、
図4Aに示すように、平面視において、ワークテーブル15の基準点A1と一致する。情報取得部32は、工具16の第1座標値を、RAM203(数値制御装置20)から取得する。
【0031】
前述したように、主軸ヘッド12は、ワークWに対して相対的に左右方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)には移動しない。そのため、工作機械1の平面視において、工具16のX軸座標値Xt及びY軸座標値Ytは、固定値(0,0)となる。一方、Z軸座標値Ztは、主軸ヘッド12が上下方向(Z軸方向)に移動したり、工具16が交換されたりすることにより変化する。例えば、工具16が交換されると、その工具16の長さLに応じて、工具16(先端部T)のZ軸方向の位置が変化する。
なお、主軸ヘッド12が、ワークWに対して相対的に左右方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動する工作機械の場合、X軸座標値Xt、Y軸座標値Ytは、ワークテーブル15の基準点A1からの値となる。
【0032】
Z軸座標値Ztは、ワークテーブル15の基準点A1からの高さで表される。
図4Bに示すように、主軸ヘッド12の基準点A2おけるZ軸方向の座標値をZとし、工具16の長さをLとすると、先端部TのZ軸座標値Ztは、Z−Lにより求められる。主軸ヘッド12の座標値Zは、情報取得部32において、主軸ヘッド12のZ軸方向の位置情報としてリアルタイムに取得される。
【0033】
情報取得部32は、長さ情報取得部として、工具16の工具番号(識別番号)に対応付けられた、工具16の長さLを取得する。方向・距離算出部33(後述)は、情報取得部(長さ情報取得部)32で取得された工具16の長さLに基づいて、第1座標値のZ軸座標値Ztを変更する。
【0034】
また、情報取得部32は、拡大率取得部として、工具16の工具番号(識別番号)に対応付けられた、工具16の拡大率r0を取得する。
情報取得部32は、シーケンスプログラムに指定された工具番号に基づいて、RAM203(数値制御装置20)を検索し、その工具番号に対応付けられた工具16の情報として、長さL及び拡大率r0を取得する。
【0035】
方向・距離算出部33は、工具16の第1座標値(X軸座標値Xt、Y軸座標値Yt、Z軸座標値Zt)、及びカメラ31の位置情報となる第2座標値(X軸座標値Xc、Y軸座標値Yc、Z軸座標値Zc)に基づいて、カメラ31と工具16の先端部とを結ぶ光軸OAの方向及び光軸OA上における工具16の先端部Tとカメラ31との間の距離dを算出する。
【0036】
図4A及び
図4Bに示すように、カメラ31の基準点A3を示す第2座標値(X軸座標
値Xc、Y軸座標値Yc、Z軸座標値Zc)は、ワークテーブル15の基準点A1からの座標値で表される。カメラ31は、XYZ軸方向の中心位置となる基準点A3が固定されている。そのため、X軸座標値Xc、Y軸座標値Yc、Z軸座標値Zcは、いずれも固定値となる。
【0037】
方向・距離算出部33は、カメラ31と工具16の先端部Tとを結ぶ光軸OAの方向を、下記の式(1)により方向ベクトルmとして算出する。
m=(Xt−Xc,Yt−Yc,Zt−Zc)・・・(1)
図5に示すように、工具16(
図4B参照)の先端部TがZ軸座標値Zt1に存在する場合、光軸は、光軸OA1の方向(方向ベクトルm1)となる。また、工具16の先端部TがZ軸座標値Zt1から上側(Z1側)に移動して、Z軸座標値Zt2に存在する場合、光軸は、光軸OA2の方向(方向ベクトルm2)となる。
また、方向・距離算出部33は、工具16の先端部Tとカメラ31との間の距離d(
図5参照)を、下記の式(2)により算出する。
d=√((Xt−Xc)
2+(Yt−Yc)
2+(Zt−Zc)
2)・・・(2)
距離dは、撮影倍率設定部35(後述)において、工具16の撮影倍率を設定する際に使用される。
【0038】
姿勢制御部34は、カメラ31の姿勢を、方向・距離算出部33で算出された光軸OA方向(方向ベクトルm)と平行となるように制御する。例えば、
図5に示すように、工具16の先端部TがZ軸座標値Zt1にある場合、カメラ31と工具16の先端部Tとを結ぶ光軸OA1の方向は、式(1)において、X軸座標値Xc、Y軸座標値Yc及びZ軸座標値Zcにそれぞれ固定値を代入すると共に、Z軸座標値ZtにZt1を代入することにより、方向ベクトルm1として算出される。
【0039】
姿勢制御部34において、カメラ31の姿勢を、光軸OA1方向と平行となるように制御することにより、カメラ31で撮影される画像において、画面の中心と工具16の先端部Tとを一致させることができる。姿勢制御部34によるカメラ31の姿勢及び後述する撮影倍率の制御は、例えば、100ms間隔で行われる。これにより、カメラ31は、移動する工具16の先端部Tを、画面上の中心に位置させた状態で連続的に撮影できる。
【0040】
撮影倍率設定部35は、カメラ31による工具16の撮影倍率rを、下記の式(3)により算出する。
r=d/d0・・・(3)
ここで、dは、式(2)で算出される距離である。d0は、撮影倍率を「1」とする基準距離であり、工具毎に異なる。基準距離d0は、工具16を基準距離d0で撮影した場合に、工具16の画像が画面上で最適なサイズとなるように設定される。カメラ31と工具16(先端部T)との間の距離dが基準距離d0よりも短い場合、撮影倍率rが小さくなるため、工具16の画像が画面上で過大になることを抑制できる。また、カメラ31と工具16(先端部T)との間の距離dが基準距離d0よりも長い場合、撮影倍率rが大きくなるため、工具16の画像が画面上で過小になることを抑制できる。なお、基準距離d0は、すべての工具16に共通の固定値としてもよい。また、基準距離d0を、オペレータが操作入力部209(
図2参照)を介して変更できるようにしてもよい。
【0041】
撮影倍率設定部35は、情報取得部32により取得された、工具16の拡大率r0に基づいて撮影倍率rを補正する。撮影倍率rの補正は、工具16の工具径、先端形状等に応じて実行される。そのため、工具16の種類によっては、撮影倍率rが補正されないこともある。
図6A〜
図6Cは、工具の形状と撮影倍率との関係を説明する図である。
図6A〜
図6Cにおいて、枠100は、カメラ31で撮影される画面の大きさを表している。各図において、枠100の大きさは、共通とする。
【0042】
図6Aに示す工具161と
図6Bに示す工具162は、長さLが共に同じである。しかし、
図6Bに示す工具162は、先端に円盤状の刃162aが設けられている。そのため、工具162を工具161と同じ撮影倍率で撮影すると、
図6Bに示すように、画面上において、工具162の画像が過大になる。そこで、撮影倍率設定部35は、工具162について取得された拡大率r0に基づいて撮影倍率rを補正する。工具の拡大率r0は、例えば、下記の表1のように設定される。
【0044】
表1において、工具番号1は、
図6Aの工具161に対応する。工具番号2は、
図6Bの工具162に対応する。表1に示す工具番号と拡大率とを対応付けたデータは、RAM203(
図2参照)に保存されている。撮影倍率設定部35は、表1に示すデータを参照して、工具番号2の拡大率r0として、0.4を取得する。なお、表1に示す工具番号と拡大率とを対応付けたデータは、一例であり、更に多くの工具について工具番号と拡大率とを対応付けたデータが保存されていてもよい。
【0045】
次に、撮影倍率設定部35は、下記の式(4)により、補正した撮影倍率rを算出する。
r=r0×d/d0・・・(4)
撮影倍率rの補正された工具162の画像は、
図6Cに示すように、画面上において、最適なサイズとなる。なお、拡大率r0は、撮影倍率rが小さくなるように補正するだけでなく、撮影倍率rが大きくなるように補正することもある。例えば、工具の長さLが同じでも、工具径がより細い場合、拡大率は、例えば、1.5に設定される。その場合、撮影倍率設定部35において、撮影倍率rが大きくなるように補正される。撮影倍率設定部35は、最終的に算出された撮影倍率rに基づいて、カメラ1のズーム倍率を制御する。
【0046】
次に、本実施形態の撮影装置30におけるカメラ31の姿勢及び撮影倍率の制御について説明する。
図7は、撮影装置30で実行されるカメラ31の姿勢及び撮影倍率の制御処理を示すフローチャートである。なお、カメラ31による工具16の撮影は、姿勢及び撮影倍率の制御を除いて、撮影装置30における通常の撮影プログラムにより実行される。また、以下に説明するカメラ31の姿勢及び撮影倍率の制御処理は、例えば、100ms毎に実行される。
【0047】
図7のステップS101において、情報取得部32は、工具16の位置情報となる第1座標値(X軸座標値Xt、Y軸座標値Yt、Z軸座標値Zt)を取得する。なお、カメラ31の第2座標値(X軸座標値Xc、Y軸座標値Yc、Z軸座標値Zc)は、固定値として撮影装置30の内部メモリ(不図示)に保存されているものとする。
【0048】
ステップS102において、方向・距離算出部33は、工具16が交換されている場合、その工具16の工具番号に対応付けられた長さLに基づいて、第1座標値のZ軸座標値Ztを変更する。工具番号に対応付けられた長さLは、情報取得部32により取得される。また、工具16が交換されていない場合には、本ステップをスキップして、処理はステップS103へ移行する。
【0049】
ステップS103において、方向・距離算出部33は、工具16の第1座標値及びカメラ31の第2座標値に基づいて、カメラ31と工具16の先端部とを結ぶ光軸OAの方向及び光軸OA上における工具16の先端部Tとカメラ31との間の距離dを算出する。
ステップS104において、姿勢制御部34は、カメラ31の姿勢を、ステップS103で算出された、光軸OA方向(方向ベクトルm)と平行となるように制御する。
【0050】
ステップS105において、撮影倍率設定部35は、カメラ31による工具16の撮影倍率rを算出する。また、撮影倍率設定部35は、工具16の拡大率r0に基づいて撮影倍率rを補正する。工具16の拡大率r0は、情報取得部32により取得される。撮影倍率設定部35は、最終的に算出された撮影倍率rに基づいて、カメラ1のズーム倍率を制御する。ステップS105の処理が終了した後、本フローチャートの処理は、終了する。
【0051】
以上説明した本実施形態の撮影装置30及び工作機械1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の撮影装置30は、移動する工具16及びカメラ31のそれぞれの座標値に基づいてカメラ31と工具16の先端部Tとを結ぶ光軸OAの方向及び距離dを算出する。そして、撮影装置30は、カメラ31の姿勢を光軸OAの方向(方向ベクトルm)と平行となるように制御すると共に、カメラ31の撮影倍率rを距離dに基づいて設定する。そのため、撮影装置30においては、移動する工具16の先端部Tを、画面上の中心に位置させた状態で且つ画像が画面上で最適なサイズとなるように撮影できる。
【0052】
本実施形態の撮影装置30において、カメラ31の姿勢及び撮影倍率rの制御は、工作機械1の加工プログラムとは別のプログラムにより実行される。これによれば、オペレータは、カメラ31の姿勢及び撮影倍率rの制御を、加工プログラムのコマンドにより指示しなくてもよいため、オペレータによる作業の負担を軽減できる。また、本実施形態の撮影装置30において、カメラ31の姿勢及び撮影倍率rを制御するために、工作機械1の加工プログラムを変更する必要がないので、既存の工作機械にも容易に適用できる。
【0053】
本実施形態の撮影装置30は、工具番号と対応付けられた長さLに基づいて、工具16の座標値(Z軸座標値Zt)を変更する。そのため、撮影装置30は、工具16が交換されることにより、工具16の長さLが変化しても、移動する工具16の先端部Tを画面上の中心に位置させた状態で撮影できる。
本実施形態の撮影装置30は、工具番号に対応付けられた拡大率r0に基づいて、画像の撮影倍率rを補正する。そのため、撮影装置30は、工具16の長さLが同じで、工具径、先端形状等が異なる場合においても、工具16の先端部Tを画面上において最適なサイズで撮影できる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0055】
(変形形態)
実施形態では、主軸ヘッド12に装着された工具16が上下方向(Z軸方向)に移動する縦型の工作機械1について説明したが、これに限定されない。工作機械は、主軸ヘッドに装着された工具が左右方向(X軸方向)又は前後方向(Y軸方向)に移動する横型の工作機械であってもよい。
実施形態では、移動する対象物として、工作機械用の工具を例として説明したが、これに限定されない。移動する対象物は、例えば、ロボットのアームでもよいし、そのアームに取り付けられるグリッパー、溶接用のガン等であってもよい。
【0056】
実施形態では、撮影装置30において、一台のカメラを備える例について説明したが、これに限定されない。工作機械本体10の周囲に複数のカメラを配置し、対象物を撮影する方向に応じてカメラを切り替えるようにしてもよい。
実施形態では、姿勢制御部34において、カメラ31の姿勢を、方向・距離算出部33で算出された光軸OA方向(方向ベクトルm)と平行となるように制御する例について説明したが、これに限定されない。姿勢制御部34において、カメラ31の姿勢を、光軸OA方向に対して、予め設定された角度分だけ傾けるように制御してもよい。