特開2020-78851(P2020-78851A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 2020078851-波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法 図000003
  • 2020078851-波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-78851(P2020-78851A)
(43)【公開日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 15/00 20060101AFI20200501BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20200501BHJP
   F16H 55/08 20060101ALI20200501BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20200501BHJP
【FI】
   B23F15/00
   F16H1/32 B
   F16H55/08 Z
   F16H55/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-213717(P2018-213717)
(22)【出願日】2018年11月14日
(71)【出願人】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 修平
【テーマコード(参考)】
3C025
3J027
3J030
【Fターム(参考)】
3C025BB00
3J027GC06
3J030BB06
3J030BC10
(57)【要約】
【課題】従来の歯切加工方法に比べて、より適切な状態で、内歯歯車にかみ合い可能な外歯を備えた外歯歯車を製造すること。
【解決手段】外歯歯車の歯切り加工方法では、歯切り前の外歯歯車製造用の歯車素材3Aが、実際の外歯歯車3の組付け状態と同様に、非円形に撓められた状態で、歯切り盤5に取り付けられる。この状態で、歯車素材3Aに歯切り加工が施され、外歯35が形成される。実際のかみ合い状態と同様に撓められた状態で、外歯35の歯切りが行われるので、真円状態の歯車素材に歯切り加工が施される従来の方法に比べて、内歯歯車2に対して、より適切な状態でかみ合い可能な外歯35を備えた外歯歯車3を製造できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法であって、
歯切り前の外歯歯車製造用の歯車素材を、前記波動歯車装置における前記外歯歯車の組付け状態と同一の非円形に撓められた状態で、歯切り盤に取り付け、
この状態で、前記歯車素材に歯切り加工を施して、外歯を形成することを特徴とする波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記波動歯車装置は、前記外歯歯車を楕円形状に撓めている波動発生器を備え、この波動発生器は、楕円状輪郭の剛性カム板とウエーブベアリングとを備え、前記ウエーブベアリングは、前記剛性カム板の楕円状外周面と前記外歯歯車の内周面との間に装着されており、
前記歯切り盤としてホブ盤を使用し、
前記ホブ盤の回転テーブルに、歯切り前の前記歯車素材を同軸に取り付け、
前記波動発生器と同一の前記楕円状輪郭をした疑似波動発生器を前記歯車素材に嵌め込み、前記歯車素材を楕円形状に撓めた状態を形成し、
前記疑似波動発生器の前記剛性カム板を回転しないように固定して、前記歯車素材における前記楕円形状の長軸が位置する部位が、ホブに正対した状態にし、
この状態で、前記ホブを前記歯車素材に押し当て、当該ホブに同期して前記回転テーブルを回転して歯切り加工を行う波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における波動歯車装置の可撓性の外歯歯車の歯切り加工においては、外歯歯車製造用の歯車素材が真円の状態で治具に取り付けられ、真円の状態でホブカッター等によって歯切り加工が施される。波動歯車装置を組み立てた状態では、外歯歯車が波動発生器によって非円形に撓められて内歯歯車にかみ合う。歯切り加工は真円状態で行われ、完成品の状態では楕円状に撓められて内歯歯車にかみ合う。このため、内歯歯車との間に、適切なかみ合い状態が形成されないことがある。
【0003】
例えば、カップ形状あるいはシルクハット形状の外歯歯車の場合には、非円形に撓められた場合に、外歯の歯筋方向において半径方向の撓み量が異なる撓み状態が形成される。このため、歯筋方向の各位置において適切なかみ合い状態が形成されるように、外歯にレリービング等の歯形修正を施している。例えば、特許文献1の図7には、カップ形状の外歯歯車において、外歯における半径方向の撓み量が多い開口端の側の部分にレリービングを施し、内歯との干渉を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/023710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、波動歯車装置においては、真円状態で加工された外歯歯車が、楕円状などの非円形に撓められた状態で内歯歯車にかみ合う。外歯歯車が非円形に撓められた状態になることに起因して、双方の歯車の間に適切なかみ合い状態を形成することが困難な場合がある。
【0006】
本発明の目的は、この点に鑑みて、内歯歯車と非円形に撓められた状態の外歯歯車との間に適切なかみ合い状態を実現できるように、外歯の歯切り加工を行う波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による波動歯車装置の外歯歯車の歯切り加工方法は、歯切り前の外歯歯車製造用の歯車素材を、波動歯車装置における外歯歯車の組付け状態と同一の非円形に撓められた状態で、歯切り盤に取り付け、この状態で、歯車素材に歯切り加工を施して、外歯を形成することを特徴としている。
【0008】
歯切り前の歯車素材が、波動歯車装置における実際の外歯歯車の組付け状態を再現した状態で、歯切り盤に取り付けられる。真円状態の歯車素材に歯切り加工が施される従来の方法に比べて、内歯歯車に対して、より適切にかみ合い可能な歯形を備えた外歯歯車を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】シルクハット形状の外歯歯車を備えた波動歯車装置を示す概略縦断面図および概略端面図である。
図2図1の外歯歯車の歯切り加工手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明はシルクハット形状の外歯歯車の歯切り加工に、本発明を適用した例である。カップ型波動歯車装置に用いられるカップ形状をした外歯歯車、フラット型波動歯車装置に用いられる円筒形状の外歯歯車の歯切り加工に対しても、本発明を同様に適用可能である。
【0011】
図1(a)はシルクハット型波動歯車装置(以下、単に、「波動歯車装置」と呼ぶ。)の全体構成を示す概略縦断面図であり、図1(b)はその概略端面図である。波動歯車装置1は、環状の剛性の内歯歯車2と、この内側に同軸に配置されたシルクハット形状の可撓性の外歯歯車3と、この内側にはめ込まれた楕円状輪郭の波動発生器4から構成されている。
【0012】
外歯歯車3は、胴部31、ダイヤフラム32およびボス33を備え、全体としてシルクハット形状をしている。胴部31は円筒形状をしており、半径方向に撓み可能である。胴部31の一方の端は開口端34となっており、開口端34の側における胴部外周面部分に、外歯35が形成されている。胴部31の他方の端に連続して、ダイヤフラム32が半径方向の外方に広がっている。ダイヤフラム32の外周縁に連続して、矩形断面の円環状のボス33が形成されている。ボス33は、外歯歯車3を他の部材(図示せず)に取り付けるための剛体部分である。内歯歯車2は、外歯歯車3の外歯35を取り囲む状態に配置されている。内歯歯車2の内周面に形成されている内歯21に、外歯35はかみ合い可能である。
【0013】
波動発生器4は、中空ハブ41と、その外周に嵌めた楕円形の剛性カム板42と、この楕円状外周43に嵌めたウエーブベアリング44から構成されている。波動発生器4によって、外歯歯車3の胴部31における外歯35が形成されている部分は、初期形状の真円から楕円に撓められている。外歯35は、楕円形の長軸両端の2箇所の位置で、内歯歯車2の内歯21にかみ合っている。
【0014】
波動発生器4が中心軸線1aを中心として回転すると、両歯車2、3のかみ合い位置が円周方向に回転する。この回転によって、外歯35と内歯21の歯数差に応じて、外歯歯車3と内歯歯車2の間には相対回転が発生する。例えば、内歯歯車2を固定し、波動発生器4を高速回転入力要素とすれば、外歯歯車3は減速回転出力要素となり、両歯車2、3の歯数差に応じて減速された回転出力が取り出される。
【0015】
図2(a)、(b)は、外歯歯車3の歯切り加工を示す説明図である。歯切り前の外歯歯車製造用の歯車素材3A(被削歯車)は、完成品の外歯歯車3と同様なシルクハット形状をしており、胴部形成部分31a、ダイヤフラム形成部分32a、ボス形成部分33aを備えている。胴部形成部分31aの開口端34aの側の部分が外歯形成部分35aであり、ここに、歯切り加工が施されて、外歯35が形成される。
【0016】
歯切り加工に用いる歯切り盤5は、一般的に使用されるホブ盤と基本的に同一構成である。歯切り盤5は、ホブ6と、回転テーブル7と、昇降式の回転軸8と、回転軸8に同軸に取り付けた疑似波動発生器9とを備えている。回転テーブル7の上面に形成したワーク載せ面71に、加工対象の歯車素材3Aが同軸に取り付けられる。ワーク載せ面71に取り付けた歯車素材3Aに、ホブ6によって歯切り加工が施され、外歯35が形成される。ワーク載せ面71の上方に、同軸に、昇降式の回転軸8が配置されている。回転軸8の下端部に、疑似波動発生器9が同軸に取り付けられている。疑似波動発生器9は、中空ハブ91と、その外周に嵌めた剛性カム板92と、剛性カム板92の楕円状外周面93に嵌めたウエーブベアリング94とを備えている。疑似波動発生器9の輪郭形状(ウエーブベアリング94の外輪外周円形状)は、波動発生器4の輪郭形状と同一である。疑似波動発生器9の剛性カム板92が中空ハブ91を介して昇降式の回転軸8の下端部に固定されている。
【0017】
歯切り加工においては、歯車素材3Aを、回転テーブル7のワーク載せ面71に同軸に取り付ける。ワーク載せ面71への取付けは、完成品の外歯歯車3の場合と同様に、ボス形成部分33aをワーク載せ面71に固定する。
【0018】
次に、回転テーブル7が、その中心軸線72を中心として、回転を開始する。また、回転軸8が降下して、その下端部に取り付けられている疑似波動発生器9が、歯車素材3Aにおける胴部形成部分31aに嵌め込まれる。疑似波動発生器9を胴部形成部分31aに嵌める際には、回転軸8を回転させながら行うと、疑似波動発生器9を胴部形成部分31aに嵌め込み易い。
【0019】
疑似波動発生器9の嵌め込みが完了した後は、回転軸8の回転が止まる。疑似波動発生器9が嵌め込まれると、図2(b)に示すように、歯車素材3Aの外歯形成部分35aは、初期形状である真円形状C1から楕円形状C2に撓められた状態になり、歯車素材3Aは、完成品の外歯歯車3の組付け状態と同様な状態になる。ここで、外歯形成部分35aの楕円形状C2の長軸Lが、常に、ホブ6に正対するように、疑似波動発生器9の剛性カム板92は、回転しないように固定される(回転軸8が固定される)。
【0020】
この状態で、ホブ6の回転に同期して回転テーブル7が回転する。回転するホブ6は、同期して回転する楕円状に撓められている歯車素材3Aの外歯形成部分35aに押し当てられた状態で、回転および歯筋方向に送られる。これにより、外歯形成部分35aが歯切り加工されて、外歯35が形成される。
【0021】
このように、実際に外歯歯車3が組み付けられて変形した状態と同様な状態で、歯車素材3Aが加工される。よって、内歯歯車2と、楕円状に撓められた状態の外歯歯車3との間に適切なかみ合い状態を形成できるように、外歯歯車3に歯切り加工を施すことができる。
【0022】
なお、上記の例は、歯切り盤としてホブ盤を使用した場合であるが、ギヤシェーパー等の歯切り盤を用いる場合も同様である。また、上記の例では、外歯歯車3が楕円状に撓められる場合である。3ローブ形状などのように、楕円形以外の非円形に外歯歯車が撓められる場合には、その非円形に歯車素材を撓めた状態で歯切り加工を行えばよい。例えば、円周方向の3か所の位置で外歯歯車が内歯歯車にかみ合うように、外歯歯車が3ローブ形状に撓められる場合には、歯車素材3Aを3ローブ形状に撓め、その3か所の凸状の外周面部分の一つの位置において、歯車素材3Aに対して歯切り加工を施せばよい。
【0023】
1 波動歯車装置
1a 中心軸線
2 内歯歯車
3 外歯歯車
3A 歯車素材
4 波動発生器
5 歯切り盤
6 ホブ
7 回転テーブル
8 回転軸
9 疑似波動発生器
21 内歯
31 胴部
31a 胴部形成部分
32 ダイヤフラム
32a ダイヤフラム形成部分
33 ボス
33a ボス形成部分
34 開口端
34a 開口端
35 外歯
35a 外歯形成部分
41 中空ハブ
42 剛性カム板
43 楕円状外周
44 ウエーブベアリング
71 ワーク載せ面
72 中心軸線
91 中空ハブ
92 剛性カム板
93 楕円状外周面
94 ウエーブベアリング
図1
図2