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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-78855(P2020-78855A)
(43)【公開日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/72 20060101AFI20200501BHJP
   B23H 1/00 20060101ALI20200501BHJP
【FI】
   B23Q1/72 A
   B23Q1/72 B
   B23H1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-213739(P2018-213739)
(22)【出願日】2018年11月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】保坂 昭夫
【テーマコード(参考)】
3C048
3C059
【Fターム(参考)】
3C048BC04
3C048EE07
3C048EE08
3C059AA01
3C059JA08
(57)【要約】
【課題】前後方向に移動するラムの前端側の変形を防止可能で、小型、軽量に構成できる工作機械を得る。
【解決手段】前端部に工具を保持して前後方向に移動するラム30を有する工作機械1において、ラム30の長さ方向に沿って延びる回動部材50を設ける。この回動部材50は、その中間位置およびラム30の中間位置に設定された略水平な軸51の周りを回動自在にしてラム30に支持し、上記軸51よりも前側においてラム30の一部に、上記回動による上向きの力を伝達可能に軸52を介して連結させる。回動部材50には前後方向に移動自在にバランスウェイト65を搭載した上で、このバランスウェイト65を、ラム30がベッド12に対してより前方に移動するほどより後方に移動させるバランスウェイト駆動手段、すなわち軸受部60、プーリ61、エンドレスベルト62、および連結部63、64を設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向の一端部である前端部に工具を支持するラムと、
前記ラムを、その長さ方向が略水平に延びる状態にして、前後方向に移動可能に支持するコラムと、
前記ラムを前後方向に移動させるラム駆動手段と、
を有する工作機械において、
前記ラムの長さ方向に沿って延びる状態に配置された部材からなり、該部材およびラムの所定位置に設定された略水平な軸の周りを回動自在にしてラムに支持され、前記軸よりも前側において前記ラムの一部に、前記回動による上向きの力を伝達可能に連結する回動部材と、
前記回動部材に、前後方向に移動自在に搭載されたバランスウェイトと、
前記バランスウェイトを、前記ラムが前記コラムに対してより前方に移動するほどより後方に移動させるバランスウェイト駆動手段と、
を有する工作機械。
【請求項2】
前記回動部材を回動自在にして前記ラムに支持する構造が、該ラムおよび回動部材の一方に形成された孔に、他方に保持された軸体が挿通した構造である、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ラムの一部に前記回動による上向きの力を伝達可能に連結する構造が、該ラムおよび回動部材の一方に形成された孔に、他方に保持された軸体が挿通した構造である、
請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記ラムの長さ方向の中間位置において、上方に起立した状態に固定されたアーム吊下げ部材と、
一端部が前記アーム吊下げ部材に連結され、この連結の位置よりも前側下方において他端部が前記ラムの前端近傍部分に連結された前側アームと、
前記前側アームに対して、連結している前記ラムの部分を引き上げるように作用する張力を付与する第1の張力付与手段と、
一端部が前記アーム吊下げ部材に連結され、この連結の位置よりも後側下方において他端部が前記ラムの後端近傍部分に連結された後側アームと、
前記後側アームに対して、連結している前記ラムの部分を引き上げるように作用する張力を付与する第2の張力付与手段と、
を有する請求項1から3いずれか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械、特に詳細には、ラムの長さ方向の一端部である前端部に工具を保持し、このラムをベッドに対して前後方向に移動させるように構成した工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1や2に示されているように、長さ方向の一端部である前端部に工具を保持する加工ヘッドを取り付けたラムを有し、このラムを前後方向に移動させて工具による加工位置を変えるようにした、放電加工機等の工作機械が知られている。なお本明細書においては、ラムの長さ方向を前後方向と称し、工具を保持する方の端部を前端部と称することとする。この種の工作機械においては、ラムを前後方向に移動自在に支持するコラムに対して、ラムが前方に出る、いわゆるオーバーハングの構造になっている。
【0003】
オーバーハングの構造では、加工ヘッドの質量とラムの自重、とりわけ形彫放電加工機の場合は、保持している工具電極の質量も加わって、ラムの前端近くの部分が下方に撓むように変形し易くなる。工作機械の加工領域を広く設定するために、ラムの前後方向の移動ストロークを大きくするほどオーバーハングは大きくなり、ラムの変形も顕著になる。このようにラムが変形すると、工具を含む加工ヘッドが変位するので、この変位の量に相応する加工精度の低下を招く。なお、ラムの前後方向の移動ストロークが小さければ、ラムのオーバーハングが小さくなって変位の量は小さくなるが、加工精度の低下を完全に防止できるとは限らない。また、ラムが前後方向に移動しない構成となっている場合でも、ラムのオーバーハング量が比較的大きく、あるいは加工ヘッドの質量が大きい場合は、上記と同様の問題が生じ得る。
【0004】
上述のようなラムの変形を防止するためには、物理的に高い剛性を備えるようにラムを形成することも考えられる。しかし、機械の構造物であるラムは基本的に鋳鉄で形成されるので、高剛性のものに形成しようとするとラムの重量が増大し、却って、増大する重量に対応してラムの剛性をより高くすることが求められるという矛盾に陥る。また、ラムが移動体である場合は、ラムの重量が大きくなると、ラムを移動させるサーボモータ等からなる駆動装置に対して、所定の制御応答性を確保するためにより大きい出力が要求されることにもなる。
【0005】
以上述べたラムの変形による加工精度の低下を防止するために、加工ヘッドにおける加工位置の誤差を、ソフトウェアによる補正によって解消することも考えられる。しかしそのような手法は、加工ヘッドが比較的軽量であってそのためラムが比較的小さい場合はある程度有効であるが、大型の工作機械に対しては有効でないことが多い。また、加工ヘッドが移動するので、相対的な誤差の変動に補正が追従できず、高い加工精度を得ることは困難である。
【0006】
従来、以上述べたラムの変形、およびそれによる加工精度の低下を防止しようとするその他の技術も提案されている。例えば特許文献1には、ラムにいくつかのリブを設けることにより、その重量の増大を抑えつつ、高剛性を確保する技術が示されている。また特許文献2には、ラムの後端側をスプリング等によって積極的に変形させて、ラムの前端側の変形を後端側の変形で相殺しようとする技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3837910号公報
【特許文献2】特許第3570006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献1に示された技術は、ラムの重量の増大を抑えることはできるものの、依然として上記従来の課題を根本的に解消できるものではない。また特許文献2に示された技術は、ラムの前端側および後端側双方の変形を防止できるものではない。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、特にラムの前端側がオーバーハング状態となった際にこの前端側のラムの変形を防止可能で、小型、軽量に構成できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による工作機械は、
長さ方向の一端部である前端部に工具を支持するラムと、
ラムを、その長さ方向が略水平に延びる状態にして、前後方向に移動可能に支持するコラムと、
ラムを前後方向に移動させるラム駆動手段と、
を有する工作機械において、
ラムの長さ方向に沿って延びる状態に配置された部材からなり、該部材およびラムの所定位置に設定された略水平な軸の周りを回動自在にしてラムに支持され、前記軸よりも前側においてラムの一部に、上記回動による上向きの力を伝達可能に連結する回動部材と、
この回動部材に、前後方向に移動自在に搭載されたバランスウェイトと、
このバランスウェイトを、ラムがコラムに対してより前方に移動するほどより後方に移動させるバランスウェイト駆動手段と、
を有することを特徴とするものである。
【0011】
なお、「コラム」は、その呼称に拘らず、構成上、コラムと同等の構造物と見做すことができる構造物は、本発明に含まれる。上記の「前後方向」とはラムの長さ方向であって、工具を保持する側を「前」、それと反対側を「後」と定義する。また、回動部材を構成する部材およびラムの「所定位置」とは、回動部材およびラム各々の前端と後端との間に有る位置を指すものであって、回動部材をてこと見做して所定位置における水平な軸をてこの支点としたときに、所定位置は、バランスウェイトの中心位置が常にこの軸の中心よりもラムの後側に位置するように設けられる。
【0012】
また上述のように、回動部材を回動自在にしてラムに支持する構造としては、例えばラムおよび回動部材の一方に形成された円孔や長孔等の孔に、他方に保持された軸体が挿通した構造等が適用可能である。さらに、この回動部材を回動自在にしてラムに支持する構造としては、その他に、ラムおよび回動部材の一方に形成されたゴムブッシュの内部孔に、他方に保持された軸体が挿通した構造や、ラムに設けられた支点の上でラムをシーソー状に支持する構造等も適用可能である。
【0013】
他方、ラムの一部に上記回動部材の回動による上向きの力を伝達可能に連結する構造としては、例えばラムおよび回動部材の一方に形成された円孔や長孔等の孔に、他方に保持された軸体が挿通した構造等が適用可能である。また、このようにラムの一部に上記回動部材の回動による上向きの力を伝達可能に連結する構造としては、その他に、回動した回動部材の上昇動する部分に、ラムの一部を上側から当接させる構造等も適用可能である。
【0014】
本発明による工作機械においては、さらに、
ラムの長さ方向の中間位置において、上方に起立した状態に固定されたアーム吊下げ部材と、
一端部が上記アーム吊下げ部材に連結され、この連結の位置よりも前側下方において他端部がラムの前端近傍部分に連結された前側アームと、
前側アームに対して、連結しているラムの部分を引き上げるように作用する張力を付与する第1の張力付与手段と、
一端部がアーム吊下げ部材に連結され、この連結の位置よりも後側下方において他端部がラムの後端近傍部分に連結された後側アームと、
後側アームに対して、連結しているラムの部分を引き上げるように作用する張力を付与する第2の張力付与手段と、
が設けられることが望ましい。
【0015】
ここで、ラムの「前端近傍部分」とは、本発明におけるラムを十分に引き上げる作用効果を得ることができる範囲で前端から中央までの間の部位である。具体的に、材質が鋳鉄の一般的な構造のラムの場合で、前端から中央側にラム全長の20%までの範囲の部分を指すものとする。「後端近傍部分」についても同様とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の工作機械においては、上述した通りの回動部材、バランスウェイトおよびバランスウェイト駆動手段とが設けられたことにより、ラムが前方に移動してオーバーハング量が大きくなった際、回動部材の上記軸よりも後方に位置したバランスウェイトにより、回動部材をその軸の周りに回転させようとするモーメントが作用する。このモーメントは、バランスウェイトが載っている部分の回動部材を押し下げる方向に作用するので、回動部材は上記軸よりも前側においてラムの一部に上向きの力を加えるようになる。それによりラムの前端部が引き上げられて、この前端部が下方に撓むように変形することが防止され、ひいては工具の位置がずれて加工精度が劣化することが防止される。そして本発明の工作機械は、ラム自身を必要以上に高剛性にしなくてよいので、小型、軽量に構成できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態による工作機械を示す平面図
図2図1の工作機械を示す側面図
図3図1の工作機械のA−A線に沿った部分を示す部分正面図
図4図1の工作機械の一部を示す部分側面図
図5図1の工作機械の図2とは異なる状態を示す側面図
図6図1の工作機械の図2とはさらに異なる状態を示す側面図
図7図1の工作機械の要部を示す平面図
図8図1の工作機械の要部を示す側面図
図9】本発明の第2実施形態による工作機械を示す平面図
図10図9の工作機械を示す側面図
図11図9の工作機械のA−A線に沿った部分を示す部分正面図
図12図9の工作機械の一部を示す部分側面図
図13図9の工作機械の図10とは異なる状態を示す側面図
図14図9の工作機械の図10とはさらに異なる状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1図2および図3はそれぞれ、本発明の第1実施形態による工作機械1の平面形状、側面形状および部分正面形状を示している。本実施形態の工作機械1は一例として放電加工機であり、構造物10と、この構造物10の上に搭載されたラム30と、このラム30に組み合わされた回動部材50とを有している。なお図1図3に示すように、水平に配置される長尺部材からなるラム30の前後方向をY軸方向、このY軸方向に直角な水平方向をX軸方向、垂直方向つまり上下方向をZ軸方向と規定する。Y軸方向については、ラム30の前端(後述する放電加工ヘッド31を保持する方の端)側を+Y軸方向とし、ラム30の後端側を−Y軸方向とする。
【0019】
構造物10は、例えば工場の床等である固定面11に水平に固定されたベースである後部のベッド12と、このベッド12の上に配されたスライダ13と、このスライダ13の上に固定されたサドル14とからなりX軸方向に往復移動するコラムとを含んでなる。ベッド12の上面には、X軸方向に延びる一例として2本のレール15が固定されている。これらのレール15の各々には、スライダ13の下面に固定された複数のリニアガイド16が係合しており、それによりコラムはベッド12の上でX軸方向に往復移動可能となっている。
【0020】
ラム30の下面にはY軸方向に延びる一例として2本のレール17が固定されている。これらのレール17の各々は、サドル14の上面に固定された複数のリニアガイド18に係合しており、それによりラム30はサドル14の上でY軸方向に往復移動可能となっている。またラム30の前端に保持された放電加工ヘッド31は、下部に工具電極31aを保持し、内部に収めた不図示の駆動手段により、この工具電極31aをZ軸方向に往復移動させ得るように構成されている。
【0021】
後部のベッド12の前側において固定面11には前部のベッド20が固定され、このベッド20の上には加工槽21が支持されている。加工槽21の中には加工液22が貯えられると共に、ベッド20上に設けられているテーブルの上に被加工物23が載置される。こうして加工液22の中に配置された被加工物23に対して、水平2軸方向と鉛直1軸方向に相対移動する工具電極31aによって放電加工がなされる。被加工物23における放電加工の位置は、X軸方向についてはスライダ13が不図示の駆動手段により移動され、Y軸方向についてはラム30が不図示の駆動手段により移動され、Z軸方向については放電加工ヘッド31が不図示の駆動手段により移動して、適宜変えられる。
【0022】
なお図2の側面図では、ラム30がスライダ13とサドル14とでなるコラムに対して最も大きく前方(+Y方向)に突出した位置、つまりオーバーハング量が最大の位置を示している。このコラムに対するラム30の相対位置は、被加工物23における放電加工の位置を変更するのに対応して、上記オーバーハング量が中程度となる位置、オーバーハング量が最小となる位置等を取り得る。図5および図6には、ラム30がそれらの位置を取った際の側面形状をそれぞれ示してある。
【0023】
次にラム30と、その周辺の構造について詳しく説明する。ここで図7および図8には、ラム30および該ラム30と一体化した構造を抽出して、それらの平面形状および側面形状を示している。以下ではこれらの図も参照して説明する。ラム30は、例えば鋳鉄からなる長尺状の部材であり、+Y軸方向の端部である前端部に放電加工ヘッド31を保持する。このラム30の長さ方向の中間位置には、上方に起立したアーム吊下げ部材32が固定されている。この「中間位置」とは、ラム30の前端と後端との間の位置を意味するものであり、それら両端からの距離が等しい中央位置であることが望ましいが、それに限るものではない。なお図3は、工作機械1の一部を図2に示すA−A線に沿った部分から見て示す部分正面図であり、この図3では一部のボルト等は省略している。
【0024】
アーム吊下げ部材32は例えば鋼製で、ラム30に固定された基部33と、この基部33の上側において上下方向に移動可能に該基部33に支持されたアーム連結部34とから構成されている。アーム連結部34には、ラム30と各々連結する、例えば鋼製の前側アーム35および後側アーム36が連結されている。すなわち、前側アーム35の一端部はアーム連結部34に連結され、この連結の位置よりも前側下方において、前側アーム35の他端部はラム30の前端近傍部分に連結されている。また、後側アーム36の一端部はアーム連結部34に連結され、この連結の位置よりも後側下方において、後側アーム36の他端部はラム30の後端近傍部分に連結されている。ここで、上記ラム30の「前端近傍部分」、「後端近傍部分」とは、例えば、それぞれラム30の前端、後端からラム全長の20%以下の長さだけラム中央側に入った範囲を指すものとする。
【0025】
より詳しく説明すると、基部33は、複数のボルト43によってラム30の上面に固定されている。またアーム連結部34は、水平方向に延びるように配置されるブラケット(横板)34aと、このブラケット34aから立ち上がった2枚の縦板34bとから構成されている。縦板34bには、X軸方向に延びるアーム上部支持軸44が固定されると共に、このアーム上部支持軸44から後方つまり−Y軸方向に離して、X軸方向に延びるアーム上部支持軸45が固定されている。上述した前側アーム35の一端部は、円孔35aにアーム上部支持軸44を挿通させることにより、該アーム上部支持軸44の周りを回動可能にしてアーム連結部34に連結されている。上述した後側アーム36の一端部は、円孔36aにアーム上部支持軸45を挿通させることにより、該アーム上部支持軸45の周りを回動可能にしてアーム連結部34に連結されている。
【0026】
一方、ラム30の前端近傍部分および後端近傍部分の上面には、それぞれ前端側ブラケット38および後端側ブラケット39が、複数のボルト40によってラム30に固定されている。前端側ブラケット38には、X軸方向に延びるアーム下部支持軸41が固定されている。上述した前側アーム35の他端部は円孔35bにこのアーム下部支持軸41を挿通させることにより、該アーム下部支持軸41の周りを回動可能にして前端側ブラケット38に連結されている。後端側ブラケット39には、X軸方向に延びるアーム下部支持軸42が固定されている。上述した後側アーム36の他端部は円孔36bにこのアーム下部支持軸42を挿通させることにより、該アーム下部支持軸42の周りを回動可能にして後端側ブラケット39に連結されている。前端側ブラケット38および後端側ブラケット39のそれぞれの内側、つまりラム30の中央側においてラム30の上面には、ストッパー38aおよび後端側ブラケット39aが溶接等によって固定されている。
【0027】
次に、基部33とアーム連結部34とを組み付ける構造について説明する。アーム連結部34を構成するブラケット34aの下面と基部33の上面との間には、水平方向に延びるスペーサー46が配置されている。このスペーサー46とブラケット34aには、ブラケット固定ボルト47を挿通させる図示外の複数の円孔が設けられている。複数のブラケット固定ボルト47はブラケット34aの上側から上記円孔に通され、先端部に形成されたボルト部が基部33のネジ孔33aに螺合、締結されている。それによりアーム連結部34は、スペーサー46を介して基部33の上に、水平方向に動かず、垂直方向には動き得る状態で支持されている。また基部33には、上記ネジ孔33aの外方(ラム30の端部側)において複数のネジ孔33bが設けられている。それらのネジ孔33bには、頭部がブラケット34aの下面に接する状態に配置されたジャッキアップボルト48が螺合されている。
【0028】
上記ジャッキアップボルト48は、その頭部がスペーサー46よりも薄く形成されたものである。複数のジャッキアップボルト48は、当初は、ネジ孔33bに最大限深く、つまり頭部下面が基部33の上面に接する状態に螺合されている。この状態で、複数のジャッキアップボルト48を緩める方向に回動して均等に上方に螺進させる。その結果、複数のジャッキアップボルト48は、ブラケット34aを上方に押し上げてブラケット34aの下面と基部33の上面との間に空間を形成する。
【0029】
ここで、アーム連結部34が所定の高さ位置にあるとき、所要の適する張力が前側アーム35と後側アーム36にそれぞれ与えられるものとする。そこで、アーム連結部34が上記所定の高さ位置よりも高い位置まで押し上げられたとき、予め上記所定の高さに合わせた所定の厚さで製作されているスペーサ46を、ブラケット34aの下面と基部33の上面との間に形成された空間に挿入する。そして、複数のジャッキアップボルト48を頭部下面が基部33の上面に接する初期の状態まで再び締め付けてブラケット34aの下面が基部33の上面と接触してから、複数のブラケット固定ボルト47を締結してアーム連結部34を完全に固定する。以上の説明から明らかなように、複数のジャッキアップボルト48および基部33は、前側アーム35に上記張力を付与する第1の張力付与手段、および後側アーム36に上記張力を付与する第2の張力付与手段を構成している。
【0030】
なお、前側アーム35に張力を付与する第1の張力付与手段と、後側アーム36に張力を付与する第2の張力付与手段とは、上述の構成に限るものではなく、互いに別個に構成されても構わない。
【0031】
以上説明したように鋳鉄からなるラム30を、鋼製のアーム吊下げ部材32、前側アーム35および後側アーム36によって吊下げ支持し、それらのアーム35、36に、連結しているラム30の部分を引き上げるように作用する張力を付与しておくことにより、ラム30の前端や後端の近くの部分が下方に撓むように変形することを防止可能となる。特に本実施形態では図2に示した通り、ラム30がサドル14に対して大きくオーバーハングした位置を取り得るようになっている。この状態下ではラム30の前端近くの部分が上記変形を起こし易いので、この変形を防止可能であることは、放電加工の精度を高める上で大いに効果的である。また本実施形態の工作機械1は、ラム30自身が特に高い剛性を備えるように構成したものではないので、小型、軽量に構成できるものとなる。特に、ラム30の前端近傍部分に設けられるアーム下部支持軸41の位置を可能な限り高い位置に配置することによって、単にラム30の変形量を小さくするというだけではなく、ラム30の前端側がより水平に近い状態になるようにラム30を引き上げることができ、放電加工ヘッド31の傾きを軽減して、加工精度をより向上させることができる。
【0032】
なお、ラム30の上記変形を防止する上では、このラム30自身を高い剛性を備えるように構成することも考えられる。しかしそのようにすると、ラム30は自身の重量増加によってさらに変形し易くなるので、さらなる変形防止策を講じる必要が生じる。その結果、ラム30の、ひいては工作機械1の一層の大型化、重量化を招くことになる。特に本実施形態の工作機械1は、X、YおよびZの3軸方向に放電加工ヘッド31を移動させるものであるので、ラム30が重量化すると、その移動の位置決め精度つまりは放電加工の精度を高く保つ上で不利になる。
【0033】
また本実施形態では、前側アーム35および後側アーム36が、ラム30を構成する鋳鉄よりもヤング率が大きい材料である鋼材から構成されている。ちなみに、例えばねずみ鋳鉄、圧延鋼材(SS400)のヤング率はそれぞれ100、206(GPa)である。そのような材料から両アーム35および36を構成すれば、これらのアーム35および36をより軽量でより高剛性のものにして、ラム30の変形を防止する上で有利となる。
【0034】
次に回動部材50と、その周辺の構造について詳しく説明する。板状に形成された回動部材50は、ラム30に対して左右両側外方に、つまり+X側と−X側とに各々1枚配置されている。各回動部材50は図4にも示してあるように、円形の軸孔50aおよび50bを有している。一方ラム30には、X軸方向に延びる円柱状の軸51および52が固定されている。そして回動部材50は、その軸孔50aおよび50bに各々軸51および52を遊嵌状態で挿通させて、ラム30と組み合わされている。
【0035】
各回動部材50の左右側外方に当たる位置においてサドル14の上には、後述するバランスウェイト65を駆動するための軸受部60および、その上に搭載されたプーリ61の組が、Y軸方向に互いに間隔を置いて配設されている。そして2つのプーリ61には、エンドレスベルト62が巻き懸けされている。こうして2つのプーリ61の間では、1本のエンドレスベルト62の2つの部分が、互いにX軸方向に離れて延びる状態となっている。それら2つの部分のうち回動部材50に近い方の部分は第1の連結部63を介して回動部材50に、回動部材50から遠い方の部分は第2の連結部64を介してバランスウェイト65に連結されている。
【0036】
バランスウェイト65は、各回動部材50の側外方にそれぞれ配置されている。なお図1においてこのバランスウェイト65は水平面(X−Y面)内で切断して示しているが、図の煩雑化を避けるためにハッチングは付していない。2つのバランスウェイト65は、各々の上部に橋渡しされた連結部材66により連結して、一体化されている。各回動部材50の上面にはそれぞれレール55が固定されており、各バランスウェイト65はこのレール55の上につまり回動部材50の上に搭載されて、レール55に沿って走行可能とされている。すなわち、各バランスウェイト65の上部はやや回動部材50側に向かうように折れ曲がった形状とされ、その上部の下面に取り付けられたリニアガイド67が、上方からレール55に係合している。また各バランスウェイト65には、回動部材50に側外方から接するゴム等からなる車輪68が、垂直な回転軸を中心に回転可能に保持されている。これらの車輪68は、バランスウェイト65のX軸方向位置を規定する。
【0037】
前述したように、被加工物23における放電加工の位置を変更するのに対応して、サドル14に対する(つまりコラムに対する)ラム30のY軸方向位置が図2図5および図6に示すように変わると、ラム30の動きが回動部材50および第1の連結部63を介してエンドレスベルト62に伝えられ、エンドレスベルト62が回転する。そしてこのエンドレスベルト62の回転は、第2連結部64を介してバランスウェイト65に伝えられ、該バランスウェイト65がY軸方向に移動する。エンドレスベルト62において第1の連結部63が連結している部分と、第2の連結部64が連結している部分とは、Y軸方向に関して互いに反対方向に移動する。そこで、ラム30のY軸方向位置が図2図5および図6に順次示すように−Y方向に移動するのに伴って、バランスウェイト65は順次+Y方向に移動する。
【0038】
つまりバランスウェイト65は、ラム30がコラムに対してより前方(+Y方向)に移動するほど、より後方に移動する。なお軸受部60、プーリ61、エンドレスベルト62、第1の連結部63および第2の連結部64は、バランスウェイト65を上述のように移動させるバランスウェイト駆動手段を構成している。ラム30がコラムよりも前方に突出したオーバーハングの量が大きくなるほど、前端部に重い放電加工ヘッド31を保持しているラム30は、この前端部が下方に撓むように変形し易い。
【0039】
しかしここで、レール55の上に載っているバランスウェイト65が、ラム30の位置に応じて上述のように移動するようになっていると、バランスウェイト65が軸51よりもラム30の後端側に(−Y側に)位置した際に、回動部材50を軸51周りに図2中で時計方向に回転させようとするモーメントが作用する。そしてこのモーメントは、ラム30の上記オーバーハングの量が大きいほど、より大となる。回動部材50にこのモーメントが作用すると、該回動部材50の前端部は軸孔50bおよび軸52を介してラム30に、上向きの力を加えるようになる。それによりラム30の前端部が引き上げられて、この前端部が下方に撓むように変形することが防止され、ひいては放電加工ヘッド31がZ軸から傾いて加工精度が劣化することが防止される。
【0040】
また上記モーメント以外の点からも、ラム30のオーバーハングが生じても、ラム30の変形がより小さく抑えられるようになっている。以下、この点について詳しく説明する。図2図5および図6にはそれぞれ、レール15に荷重を掛けているX軸方向移動体(つまりリニアガイド16から上の構造)からバランスウェイト65およびそれに付随するリニアガイド67と車輪68、並びに連結部材66を除いた構造のY軸方向重心位置を1点鎖線C1で、また上記X軸方向移動体のY軸方向重心位置を1点鎖線C2でそれぞれ示している。
【0041】
上記2つの重心位置の比較から分かる通り、移動するバランスウェイト65および連結部材66が設けられていることにより、それらが無い場合と比べてX軸方向移動体の重心位置は、Y軸方向に離れた2つの移動体支持位置(2本のレール17の間)のより中央側に位置するようになっている。そうなっていれば、ラム30のオーバーハングが生じた際、上記2つの移動体支持位置の外側に有る部分に掛かる荷重が低減するので、ラム30の変形がより確実に防止される。
【0042】
ラム30のオーバーハングが生じた際、上記2つの移動体支持位置の外側に有る部分に掛かる荷重を低減する上では、ベッド12の幅つまりY軸方向寸法を大きくして、2つの移動体支持位置の間隔をより大きく設定することが望ましい。しかし、上述のようにしてX軸方向移動体の重心位置を、Y軸方向に離れた2つの移動体支持位置のより中央側に位置するようにしておけば、ベッド12の幅をより小さく設定できるので、工作機械1の小型軽量化を図る上で有利となる。
【0043】
ここで、バランスウェイト65の好ましい重量について考える。バランスウェイト65を除いたY軸方向移動体の重量をW1、バランスウェイト65の重量をW2とする。なお、ここでは、バランスウェイト65に付随するリニアガイド67と車輪68、並びに連結部材66については考慮外とする。前進するラム30に対してカウンタバランスを与えることによって重心が前方に移動してラム30が傾斜するということが生じないようにするためには、少なくとも、重量W1と重量W2との和で計算されるバランスウェイト65とY軸方向移動体を含む全体の重心の位置が前側に配置されているリニアガイド18の位置よりも後方に位置していないとならないことが明らかである。このとき、付与されるバランスウェイトの重量W2は、移動体全体の重量を不必要に増大させないために可能な限り小さいほうが望ましく、一方でバランスを付与することができる程度に十分な大きさも必要である。このことから、重量W2は、仮に重量W1を重量W2との相対比で“1”としたときに、重量W1の4分の1から2分の1程度にしておけば十分であると言える。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9図10および図11はそれぞれ、本発明の第2実施形態による工作機械2の平面形状、側面形状および部分正面形状を示している。なおこれらの図9図11において、先に説明した図1図3中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。なお図11は、工作機械2の一部を図10に示すA−A線に沿った部分から見て示すものである。
【0045】
本実施形態の工作機械2も一例として放電加工機であるが、第1実施形態の工作機械1と対比すると、アーム吊下げ部材32、前側アーム35および後側アーム36等からなるラム吊下げ機構がない点、2枚の回動部材50に代えて1枚の回動部材250が用いられている点、および、バランスウェイトを移動させる機構が縦形のものとされている点で基本的に相違している。
【0046】
上記1枚の回動部材250はY軸方向に延びる部材であり、ラム30に対して、その幅方向つまりX軸方向の中央位置に配置されている。図12は、これらのラム30および回動部材250を分解して示すものであり、以下、この図12も参照して説明する。回動部材250は、円形の軸孔250aおよび250bを有している。一方ラム30には、X軸方向に延びる円柱状の軸51および52が固定される。すなわち、回動部材250の軸孔250aおよび250bに各々軸51および52が遊嵌状態で挿通された後、軸51および52がラム30に固定されて、回動部材250がラム30と組み合わされる。
【0047】
回動部材250の上面には、その長さ方向つまりY軸方向に延びる1本のレール55が固定されている。バランスウェイト265は上部が屋根形の形状とされたものであり、最上部下面に固定されたリニアガイド67を介してレール55に係合している。こうしてバランスウェイト265はレール55の上に、つまり回動部材250の上に搭載されて、レール55に沿って移動可能とされている。またバランスウェイト265には、ラム30に左側外方および右側外方からそれぞれラム30に接するゴム等からなる車輪68が、垂直な回転軸を中心に回転可能に保持されている。これらの車輪68は、バランスウェイト265のX軸方向位置を規定する。
【0048】
ラム30の左側外方、右側外方に当たる位置においてサドル14の上には、それぞれ2つの軸受部60が配設されている。ラム30の左側外方においても、また右側外方においても、2つの軸受部60は互いにY軸方向に間隔を置いて配設されている。そして各軸受部60には、X軸と平行な方向に延びる回転軸の周りに回転可能にして、プーリ61が支持されている。
【0049】
このように支持された2つのプーリ61には、エンドレスベルト62が巻き懸けされている。こうして2つのプーリ61の間では、1本のエンドレスベルト62の2つの部分が、互いに上下方向、つまりZ軸方向に離れて延びる状態となっている。それら2つのベルト部分のうち下側の部分は第1の連結部63を介してラム30に、上側の部分は第2の連結部64を介してバランスウェイト265に連結されている。
【0050】
以上の構成を有する本実施形態の工作機械2においても、被加工物23における放電加工の位置を変更するのに対応して、サドル14に対する(つまりコラムに対する)ラム30のY軸方向位置が図10図13および図14に順次示すように−Y方向に移動すると、それに伴ってバランスウェイト265が順次+Y方向に移動する。つまり本実施形態でもバランスウェイト265は、ラム30がコラムに対してより前方(+Y方向)に移動するほど、より後方に移動するようになっている。
【0051】
なお図10の側面図では、ラム30がサドル14に対して最も大きく前方(+Y方向)に突出した位置、つまりオーバーハング量が最大の位置を示している。このサドル14に対するラム30の相対位置は、被加工物23における放電加工の位置を変更するのに対応して、上記オーバーハング量が中程度となる位置、オーバーハング量が最小となる位置等を取り得る。図13および図14には、ラム30がそれらの位置を取った際の側面形状をそれぞれ示してある。なお図10図13および図14には、レール15に荷重を掛けているX軸方向移動体からバランスウェイト265およびそれに付随するリニアガイド67および車輪68を除いた構造のY軸方向重心位置を1点鎖線C1で、また上記X軸方向移動体のY軸方向重心位置を1点鎖線C2でそれぞれ示している。
【0052】
バランスウェイト265を上述のように移動させることにより本実施形態でも、バランスウェイト265が軸51よりもラム30の後端側に(−Y側に)位置した際に、回動部材250を軸51周りに図10中で時計方向に回転させようとするモーメントが作用する。そしてこのモーメントは、ラム30の上記オーバーハングの量が大きいほど、より大となる。回動部材250にこのモーメントが作用すると、該回動部材250の前端部は軸孔250bおよび軸52を介してラム30に、上向きの力を加えるようになる。それによりラム30の前端部が引き上げられて、この前端部が下方に撓むように変形することが防止され、ひいては放電加工ヘッド31がZ軸から傾いて加工精度が劣化することが防止される。
【0053】
第2実施形態におけるラム30の前端側を持ち上げる作用をてこの原理に例えると、回動部材250が回動する中心の水平な軸51は、てこの支点に相当する。そのため、軸51から軸52までの距離をαとし、軸51からバランスウェイト265の中心までの距離をβとし、バランスウェイトの質量をW3とするときに、ラム30の前端側を持ち上げる力は、(β/α)×W3であり、バランスウェイト265の中心が常に軸51よりもラム30の後側に位置していないと力が与えられないことが明らかである。したがって、第2実施形態において、より効果的にラム30の前端を持ち上げるためには、ラム30が最も前進したときにα<βであることが望ましく、αとβの比が1対1から1対2程度の関係であることが望ましい。また、軸51の位置は、ラム30の中央により近く、ラム30が最も前進したときにリニアガイド18の前側の軸受の近くにあることが望ましい。
【0054】
さらに、バランスウェイト265を上述のように移動させることにより本実施形態でも第1実施形態におけるのと同様に、バランスウェイト265が無い場合と比べてX軸方向移動体の重心位置(上記1点鎖線C2参照)は、Y軸方向に離れた2つの移動体支持位置、つまり2本のレール17の間のより中央側に位置するようになる。そうなっていれば、ラム30のオーバーハングが生じた際、上記2つの移動体支持位置の外側に有る部分に掛かる荷重が低減するので、ラム30の変形がより確実に防止される。
【0055】
以上、アーム吊下げ部材32、前側アーム35および後側アーム36等からなるラム吊下げ機構を持たない工作機械において、1枚の回動部材250が用いられ、そしてバランスウェイトを移動させる縦形の機構が用いられた第2の実施形態について説明したが、1枚の回動部材250を用い、そしてバランスウェイトを移動させる縦形の機構を用いる構成は、ラム吊下げ機構を有する工作機械においても同様に適用可能である。
【0056】
第1実施形態における回動部材50は、ラム30を構成する材料よりもヤング率が大きい材料から構成されることが望ましい。そのような材料の組合せとしては、第1実施形態において、両アーム35および36とラム30の材料として例示した圧延鋼材(SS400)とねずみ鋳鉄との組合せ等が挙げられる。そのような材料から回動部材50とラム30とを構成すれば、回動部材50をより軽量でより高剛性のものにして、ラム30の変形を防止する上で有利となる。また、第2実施形態の場合は、バランスウェイトを移動させることによって、カウンタバランスを与えながら、てこの原理でラム30を引き上げる構造であるから、回動部材250が高剛性であることが要求されず、例えば、回動部材250の材質として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のような軽量の素材を用いることができる利点がある。
【0057】
また、以上説明した2つの実施形態の工作機械はいずれも放電加工機であるが、本発明は放電加工機に限らず、ラムの長さ方向の一端部である前端部に工具を保持し、このラムをベッドに対して前後方向に移動させるように構成したあらゆる工作機械に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、2 工作機械
10 ベース
12 ベッド
13 スライダ
14 コラム
15、17 レール
16、18 リニアガイド
21 加工槽
22 加工液
23 被加工物
30 ラム
31 放電加工ヘッド
32 アーム吊下げ部材
33 アーム吊下げ部材の基部
34 アーム吊下げ部材のアーム連結部
35 前側アーム
36 後側アーム
38 前端側ブラケット
39 後端側ブラケット
41、42 アーム下部支持軸
44、45 アーム上部支持軸
46 スペーサー
47 ブラケット固定ボルト
48 ジャッキアップボルト
51、52 軸
50、250 回動部材
60 軸受部
61 プーリ
62 エンドレスベルト
63 第1の連結部
64 第2の連結部
65、265 バランスウェイト
66 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14